「 公共的差止訴訟」 における
救済過程の構造 とその展開 (3)
‑ ア メ リカ にお け る 「 公 共 的 イ ン ジ ャ ンク シ ョ ン訴 訟 」 につ いて ‑
川 嶋 四 郎
吹
第
1章 序論
‑ 問題 の提起 ‑ 第
1節 は じめに 第
2節 私見の概略 第
3節 考察の視角
第
2章 「公共的 イ ンジャンクション訴訟」事件 の典型例
‑ その生成 と展開 ‑ 第 1 節 は じめに 第
2節
Brown事件 第
3節
Wyatt事件 第
4節 若干の分析 第
3章 救済方法 の形成過程
第
1節 基本的な諸 問題
1. は じめに
‑ 問題 の限定 ‑
( 以上
39巻
4号)
2.
救済方法 の形成過程 における
2つの段階 と裁判官 の役割
3.
権利侵害 と救済方法 1) 救済権限の基礎
‑ 「 包括的権利侵害 」 の認定 ‑
2)権利 と救済方法 との結合度
‑ 救済方法 を形成す るための基本的な方向性 ‑
4.
「 社会的情報」 の収集 と評価
5.
被告 の非協力的な. 態度
第
2節 具体的救済方法 を形成す るための選択的 アプ ローチ
1. は じめに
2.
当事者等主導型
1) 被告依拠型 (アプローチ( 9)
〔51〕
( 以上
40巻
3号)
52
商 学 討 究 第
40巻 第
4号
2)裁判所選定型 (アプローチ②)
3.
裁判所主導型
1) 裁判所独 自形成型 ( アプローチ③)
‑ 伝統的な救済形成方法 ‑
2)
スペ シャル iマスター委託型 (アプローチ④)
‑ 新たな救済形成方法 ‑
4.
和解尊重型 ( アプローチ⑤)
5.
若干 の分析
第
3節 裁判所 による裁量的な救済形成 1. エクイテ ィ上の裁量権
2
.救済形成の指針 1)救済方法の有効性
2)救済方法の非干渉性3.
判決内容 の特定 と違憲性
4.
裁判官の積極的活動の源泉
第
4章 救済方法の実現過程
第
5章 救済方法の形成および実現 に対す るコン トロール 第
6章 一般的特質 と 「 公共的 イ ンジャンクション 」
第
7章 結論
‑ 「 救済法」 の構造 と日本法人の示唆 ‑
( 以上本号)
第 3 章 救済方法 の形成過程 ( 承前)
第 2 節 具体的救済方法を形成するための選択的アプローチ
1.は じめに
救済方法の多様性 という特質 に特徴づけ られる 「 公共的イ ンジャンクション 訴訟」事件 においては, これまで述べて来 たように,裁判所 は,質的に異 なる 様々な具体的救済方法の中か ら,当該事案 に最適な ものを創造的に形成 しなけ ればな らない。そのための方法 として,今 日に至 るまで裁判所により考案 され て来た多種多様のアプローチを,裁判例の中に見出す ことができる
。確かに,個 々の事件では, いかなる具体的な内容を もっ救済方法を形成すべ
きか といういわば 「 救済形成 の実体的側面」 については,実体的な紛争類型の
差異や事件固有の多種多様な利害の錯綜 により,救済内容を考案す るための実
「 公共的差止訴訟」における救済過程の構造とその展開
(3) 53体的 な法準則 が必 ず しも明確 には確立 されていない
(256)と言 われている。しか し なが ら,裁判所が, どのよ うな手段 を用 いて具体的救済方法 を形成 して行 くべ きか とい ういわば 「 救済形成 の手続的側面」 について は,多 くの裁判例 の蓄積 によ り, その内容 も次第 に明確化 されて来 たのであ る。 これ は, 先 に述べた
1954
年
・55年 の
BrownI・Br10WnlI両判決 ( ‑第
2章第
2節)以来 の具体的 な成果であ る。 したが って,今 日, この種 の事件類型 と取 り組 む裁判所 は,少 な くとも救済方法 の形成手続 につ いて は,決 して 「 処女地 の開拓者」 で はない のであ る
(257)。
「 公共的 イ ンジャンクション」判決 は,勿論最終的 には裁判所が言 い渡す もの であ るが, そのよ うな救済方法 を形成す るために裁判所 が採 ることので きる選 択的 アプ ローチは,次 の 5 つに類型化す ることがで きる
(258)。
① 被告依拠型 これは,裁判所 が,具体的救済方法 の原案の作成 を被告 に委 ね,基本的 にはそれに依拠 して判決 を形成 す るアプ ローチであ る。
( 彰 裁判所選定型 これ は,両 当事者 やその他 の訴訟関与者 の提 出 した複数 の 具体的救済方法 の原案 の中か ら,裁判所 が最適 な ものを選定す ることによ り 判決 を形成す るアプローチであ る
。③ 裁判所独 自形成型 裁判所 が,具体的救済方法 の形成 のために特別 な補助 者 を利用す ることな く独 自に判決 を形成 す るとい う伝統的なアプ ローチであ
る。
④ スペ シャル ・マスター委託型 スペ シャル ・マスター等 の補助者 を用 いて 具体的救済方法 の原案 を作成 させ, それに基づ いて判決 を形成す るアブロー
㈱ W.Fletcher,DiscrletionalyConstitution.suprlanote116at696 〔W.Fletcher
教授は,その理由として
,「 公共的インジャンクショ. ン訴訟」事件では,当事者とその 利害がそれぞれ多極的な
(polycentric)様相を呈すること,および,そこで問題とさ れる利益が法的でないものにも及ぶということが挙げられている
。〕.脚
F.Coffin,FrontierofRemedies.suPrlanote128at985.㈱ 本節の叙述は,主として
,SpecialProject:RemedialProcess.supr7anote26at 796‑813に負っている。この文献は,この種の訴訟事件の救済形成過程において,戟
判所が利用 している様々なテクニックを初めて類型化 した画期的なものである。
54 商 学 討 究 第
40巻 第
4号 チである。
( 彰 和解尊重型 これは,主 として裁判外 における当事者の自主的な交渉 によ り,具体的な救済方法の原案が作成 され,それが,当事者の申立てに基づ き, 裁判所 によりコンセ ン ト・ディ. ク リーとして言 い渡 され る場合である
。( D〜( 彰のアプローチは,裁判上 における救済方法の形成手段を,裁判所の職 権発動の程度の弱 いものか ら順 に並べたものである。① と( 丑は,当事者等の主 導 による救済形成 のアプ ローチであ り,③ と④ は,裁判所 の主導 によるアプ
ローチである
。これ らを被告の側か ら見れば,被告である制度 ・組織 に対す る 裁判所の干渉の度合 いの少ない順 に救済形成 テクニ ックを並べた ものである
。そ して,⑤ は,主 として裁判外で,救済方法が形成 される場合である
。これは, ( D〜( 彰のアプローチと比較 して,最 も職権発動の色彩の薄 いものである ( ただ
し,後述 のように,( 釘のアプローチで も,和解条項の公正 さについて裁判所 に よる審査を経 ることになるので,裁判所が救済形成 に全 く関与 しないというこ とはない。) o また,( 彰のアプローチは,( Dと同様 に,被告の側か ら見た場合 に は,裁判所 による干渉性の最 も少ないものである
。これ らの選択的 アプローチは,当事者が継続的な訴訟関与 により救済内容を 自己決定すべ き要請 と,具体的救済方法の内容的妥当性 に関 して司法的なコン
トロールを行 な うべ き要請 との種 々の調整方法 を反映 している
(259)と言 うこと もで きるであろう
。当事者が,救済方法の形成 に関与す る度合 いにも, ヴァリ エーションが存在す るのである。 また, これ らのテクニ ックを通 じて, この種 の訴訟事件で一般 には能動的かつ積極的に活動 していると言われている裁判官 の姿勢 にも,極 めて様 々な態様が見 られることが明 らかになるであろう。 そ し てそれが,具体的な事件内容 に応 C,あるいは
1個の事件であ って も訴訟 の段 階に応 じて可変的であり, しか も,裁判官の裁量的な判断により,柔軟かつ独 創的な手続形成が行なわれていることを知 ることができるであろう。
鰯 Cf.Special Project:Remed
i a
lProcess.supy7anote26at797.「 公共的差止訴訟」 における救済過程の構造 とその展開
(3) 55このよ うな手続的な工夫 は,一面 では形成 され るべ き実体的な救済内容 の多 様性 とい う特質 の影響 を も受 けているよ うに虚われ る。 たとえば,人種 による 別学 の解消が問題 とされた事件で は,まず , 「 完全 な」平等を内容 とした救済 プ ランは実際 には創造不可能 であ り, また裁判所 峠, その現実 の履行者である被 告の反応
(「 完全 な」平等の実現 に見合 った厳 しい義務 を課す判決 に対する被告 の抵抗) を予 め考慮 して, その種 の救済 プ ランを認 めることはないと考え られ るので, いわば 「 一定 レベル」の平等の達成で満足せざるを得な い。 したが っ て
,そのよ うな救済内容 は,唯一 ではな く多様 な ものが考え られる. しか もま た, そのよ うな様 々な救済 内容 を達成す るための方法 も多数存在す るのであ る
。それゆえ,通常 「 権利侵害 についての判決」 は, それ自体ではほとん ど具 体的救済方法 を形成す るための手段 を示 してはいないのである( 2 6 0 ' 。そ こで,戟 判所 は,種 々のテクニ ック ( 手続的な工夫)を用 いて,当該事件 に最適 な救済 内容を確 保す るために腐心す ることになるのである。
以下では,裁判所が採用す ることがで きるこれ らの各 アプ ローチについて, その内容 を見つつ論 じて行 くことに したい。
2.
当事者等主導型
1
)被告依拠型 ( アプ ローチ①)
一般 に,裁判所 は,被告 によって形成 された具体的救済方法の原案 に最 も好 意 を示す ( ‑本章第
1節
5)。 したが って,「 公共的 イ ンジャンクション訴訟」
の救済形成過程 において,裁判所 は, まず,具体的救済方法を自 らが形成す る
㈱
See Special Project :RemedialHocess.S
ubra note 26 at 804,Note,ImPlementationPr10blems.Supra note50 at437‑38.Seealsoe.g.Evansv.
Buchanan,379F.Supp.1218,1224(D.Del.1974)
〔 本件 は,デラウェア州 ウィ
ル ミン トン学区における人種 による別学の解消が求め られた訴訟事件である。 ここで
は,被告 ( および原告)に対 して,具体的救済方法の原案の提出が命 じられたが,そ
のさい裁判所 は,当該事件の現実的な状況を考慮 に入れたうえで,実際に行 なわれて
いる別学状態をで きる限 り解決するためのあ らゆる措置を取 るように,当事者に対 し
て注意を喚起 したのである
。〕.56
商 学 討 究 第
40巻 第
4号
ことを差 し控えて,被告 にその具体案の提出を求 め,被告の提出 した救済プラ ンの評価だけに, 自己の役割を自制す るのである
(261) 。 これは, 「 救済的な自制
(remedialabstention)」(262)と,呼ばれることがあ り,文字通 り,あ くまで も被 害者救済を目的 とした裁判所の自己抑制である。
このよ うなアプ ローチが,救済形成過程でまず第 1 に採 られ る理 由 として は, い くつかの ものを挙 げることがで きる。
まず , 「自制」という用語が示すように,公的な制度 ・組織の改善が不可欠で あるとして も,三権分立の原則の下 における司法部 ( 裁判所)の機能的な限界 に関す る疑義 を極小化す るには, まず理論的には,被告‑の干渉の度合 いの最 も小 さいこのアプローチが最善 と考え られるか らである
(263)。これには,被告 に
鮒
Seee.g.A
.Chayes,RoleoftheJudge.suprlanote24at1298‑1301,・Special Project:Remedial伽 cess.supyianote26at797,R
.Goldstein,Su)annSong.SuPranote129at65,C.Diver,PoliticalPowerbl10ker.Supranote26at82‑83
,
Developments‑Section 1983.Supra note 133 at 1248,J.Weinberg.The JudicialAdjunctandPublicLaw Remedies,lYALEL.&
PoL'YREV.367,386 (1983)〔hereinaftercitedasJ.・Weinberg,JudicialAdjunct.〕 〔 救済形成過程では, 裁判所 は, まず当事者が異体的救済方法を提案 し実現す ることを要求 し, また,立法 府に制度の改善 に関す る個別立法を制定す るように求 めることもあるとされ る。〕.
なお,伝統的なインジャンクション訴訟 において も,裁判所 は,被告 に対 して,救 済原案の作成を依頼す ることがある
。SeeDevelopments‑Injunctions.suprlanote185at1067.
See generally Comment (T.Young),Equitable Remedies Available to a FederalCourtafterDeclan‑ng′an EntitlePrison System Violates theEighth Amendment,ICAP.
U. L .
REV.101(1972)thereinaftercited asT.Young,EquitableRemedies.).
㈱ なお,連邦裁判所 の裁判権 の不行使 に関す るいわ ゆ る 「自制理論
(abstention doctrine)」一般 については
,SeeC.WRIGHT,THELAW OFFEDERALCoURTS4th ed.,302‑319(West1983),M.Redish,Abstention,SepwationofPowers,and theLimitsoftheJudicialFunction,94YALEL.J.71(1984)[hereinaftercited asM.Redish,Abstention.].また,D
・Zeigler,RightsRequireRemedies・sypranote101at682‑708〔 伝続 的な事件 についてであるが,原則 として 「自制理論」の廃棄を主張されている。 〕も参 照。
㈱)
Seee.g.F.Johnson,RoleoftheJudiciary.SuPrlanote175at471.「 公共的差止訴訟」における救済過程の構造とその展開
(3) 57現状 を認識 させっっ, いわば 「 同意 による自浄作用」を促す ことは,司法権 の 限界 を越え ることはないとの考慮 が働 いているとも言え るであろ う。 このアプ ローチは,被告の救済 プ ランを受 け容れて形成 された判決 こそが,連邦制度 の 維持 の要請( 2 6 4 ) や,エクイテ ィ上 の裁量権限を行使す るさいには裁判所 はより干 渉的ではない具体的救済方法を形成すべ きであるとい う要請
(265)に も合致す る。
しか も,被告である制度 ・組織 の活動 を尊重 し,そ こへの介入 を最小限 に押え ることがで きる( 2 6 6 ) という考慮 を も反映 しているのである
。また,実際的に考 えて も,被告 の提 出 した救済案か ら形成 された 「 公共的 イ ンジャンクション」判決 は,紛争 を首尾 よ く解決 しうる可能性 が最 も大 きいの である( 2 6 7 ) 。すなわち,まず被告 は,通常改善 の求 め られた制度 ・組織 の内情 に 精通 してお り, しか も特定 の分野 に関す る専門技術的な情報 を有 していると考
え られ る
(268)ので,そのような卓越 した知識 を活用すれば,最適 な具体的救済方 法の原案が形成で きる可能性が大 きい。 しか も, そのように して形成 された判 決 は,被告 自 らが形成 し, いわば実行可能性 を裏書 きしたよ うな具体的救済方 法であるゆえに,後 にその実現 にさい して,被告 による自発的な判決 の遵守 を 引 き出す ことがで きる蓋然性 が高 くなるか らである。 さらに, このよ うに,一 方 当事者 に判決原案の作成が求 め られた場合 には,原案作成者 は, 自己が提出
伽
)SeeSpecialProject:RemedialHocess.suprlanote26at799.Seealsosupra note204.㈱ 後述す る本章第
3節
2 2)を参照。
㈱
SeeSpe.cialProject:RemedialProcess.Supranote26at799.㈲ See e.a.Note,Implementation Problems.SuPra note 50 at439,Special Project:RemedialPy10CeSS.SuPlla note26at798,Note,JudicialIntervention.
suPTlanote233at523‑25,T.Wilton,LegitimacyinSocialReform Litigation:
AnEmpiricalStudy,15J
.L
.REFORM 189,204(1982)〔hereinaftercitedasT.Wilton,Legitimacy
. ] .
SeealsoC.Diver,PoliticalPowerbroker.Supranote26at70‑73.
㈱
Seee.g.A.Chayes,RoleofikeJudge.supyla note24 at1298 n.80,R.
Goldstein,Swann Song.Supra note 129 at47,65,F.Coffin,Frontiertof Remedies.suPrlanote128at994.
58
商 学 討 究 第
40巻 第
4号
す る原案 に対 して相手方か ら異議 が述べ られる可能性 のあることや,裁判所の
「 承認」を得 なければな らないことを了解 しているので,その原案 を予 め相手方 に渡 して見解 の相違 を解消 で きないか否 かを調査す るとも考 え られ る
。した が って,当事者間おノ よび当事者 と裁判所 との間で救済 内容 に関す る交渉が行な われ る機会が必然的 に増え るので,裁判所 自体が,救済 に関す る諸問題 を解決 す る必要性 も減少 して行 くに違 いない
(269)とも言われているのである。
連邦最高裁判所 は , 「 公共的イ ンジャシクション訴訟」事件 に取 り組み始 めた とき,まず最初 に
,BylDWnIJ判決
(270 ) で,このアプ ローチを正当化 した。この公 立学校 にお ける人種 による別学 の解消が問題 とされた事件 では,被告 である
「 教育委員会が,諸問題 を解明 し評価 し解決す るための第
1次的責任 を負 って いる。
」(
27 1 )と,判示 されたのである。そ して一般 に,司法積極主義的な態度が適 切であると認識 された
1971年 の
Sujann判決
(272)に至 るまで,裁判所 は,このア
プローチに固執 していた
(273)とされ る。つ まり, これは,司法消極主義的な態度 の下で,公的な制度 ・施設 を改善 して行 くために,裁判所が採用す ることので きるテクニ ックのひとつであ っ、 たのである。
このよ うなアプローチが,最 も重要 な意義 を もつ とされ るのは,議員定数 の 不均衡 の是正が求 め られた訴訟事件である
(27 4 ) 。この事件類型では,まず第
1に 立法府 による定数是正の機会 を与 えるために, これまで時折,具体的な形での
㈱
A.Chayes,RoleoftheJudge.suPrlanote24at1298‑99.( 獅
Brown IIcase.supranotes30,45andaccompanyingtexts.飢 I d.
at299.ただ勿論,連邦最高裁判所 は,被告の提出 した救済 プランが適切か否かを判断 しな ければならないと,特に明記 した
。〟.at301.
Q T
分 Swanncase.Subranote145at15〔ここで は,連邦最高裁判所 は,学校当局が, 裁判所 によ って受容 され うる救済原案を提出す る義務を怠 った場合 にのみ,連邦地方 裁判所が独 自に救済方法を形成する権限を認 めることがで きると した
。〕.㈹ SpecialProject:Remedi'alPr10CeSS.SuPrla note26at797.
SeealsoW.Fletcher,DiscretionaryConstitution.SuPranote116at682‑83.
鋼
SeeNote,ReapDortionmeni
,79H ARV.L
. REV.1226,1266‑69,1273‑74 (1966),SpecialProject:RemedialPrlDCeSS.S
uPranote26at797‑98.
「 公共的差止訴訟」における救済過程の構造とその展開
(3) 59司法的救済 の付与 が拒否 されて来 た
(275)。たとえば,ア リゾナ州 の連邦下院議員 選挙 におけ る議員定数 の不均衡 が問題 とされた
Klahr事件
(276)において,連邦 地方裁判所 は, この種 の事件 で は裁判所が直接 的 には介入せず に ( 裁判所 によ る議員定数再分配案 の提 出を控 え) ,立法府 に是正 の機会 を与 え るのが通常 の 裁判実務 であ り, これには疑 いの余地 はない, と判示 したのであ った。
このよ うな手続 によ り,議員定数 の再分配 は,立法府 自身がそれを自主的 に 行 な うよ うに促 され ることにな るのである。 しか し, それ は,不奏効 に終 わ っ た場合 に,直 ちに司法部 が介入す るとい う威嚇 を伴 うものであ る
(277) 。 したが っ て,被告 に具体的救済方法 の原案 の提 出を命 じる 「 権利侵害 につ いての判決」
自体 があたか も 「 間接強制的 な機能
」を営 む ことになるのであ る
。つ ま り, こ の点 に関 して, た とえば, テネ シー州 の下院議員選挙 における議員定数 の不均 衡 の是正 が問題 とされた
Baker事件
(278)において,連邦地方裁判所 は,おおむね 次 のよ うに判示 した。す なわ ち,被告であ る州議会 が是正 をなすための適切 な 機会 を与 え られたに もかかわ らず,連邦憲法上 の要件 を満 たす議員定数 の再分 配 を行 な うことがで きなか った場合 には,裁判所 は,連邦下院議員 が州全体か ら選 出 され るよ うに命 じるか, または,裁判所 自身が憲法上 の要件 を満 たすよ うに選挙区を再構成す る救済 プ ランを採用す るか とい う救済 内容 に関す る
2つ
の選択肢 を有 して いるが,本件 では後者 の手段 を取 る, と判示 したのである。
との種 の被告依拠型 のアプ ローチは,上述 のよ うに,当初 は人種 による別学 の解消訴訟 で も支配的なテクニ ックであ ったが, しか し近時で は,裁判所 は,
㈹
See e.g.Comment,
The Case for Distn'Ct Court Managementof the ReapPortionmentProcess,
114U.PA.L REV.
504(1966).QFG) Klahrv.Williams,313F.Supp.148,152
( D
.Ariz.1970)〔 さらに,連邦地方 裁判所は,アリゾナ州における選挙が間近に迫っているので,司法による選挙区の線 引きと議員定数の割当ては,たとえ可能であるとしても,それを達成するには,予備 選挙の基礎となった法律の規定内容の変更を不可避的に伴 うことになり,その一連の 過程で,州内に著 しい混乱の危険が生 じるであろうと判示 した
。〕.卯 SeeSpecialProject:RemedialPr10CeSS.SuPylanote26at797‑98n.67.
078)Bakerv.Ellington,273F.Supp.174,176
( M.
D.Tenn.1967).60
商 学 討 究 第
40巻 第
4号
なお も被告 の提出 した救済案 に好意 を示 しつつ も,救済方法の形成過程では, 後 に述 べ るよ うな よ り積極 的 なアプ ローチを採用 す るに至 って い るので あ
る
(279)。被告 の提 出 した救済案 に大 き く依拠 して具体的救済方法 を形成 す る場合 に は,裁判所 は, まず通常,「 権利侵害 についての判決」 の中で,被告 に対 して, 具体的救済方法 の原案の提出を命 じる。そのさい, その判決 の中には, しば し
ば,被告がその形成のさいに従わなければな らない指針や準則が提示 されてい 草のである。 たとえば, コネチカ ッ ト州 ブ リッジポー ト市 の警察機構 における 採用 お よび昇進 の さいの人種差別 の解消が求 め られた
Bn'dgeportGuardians事件
(280)では,連邦地方裁判所 は,被告 に対 して,採用および昇進 の条件 に関す
る独 自の基準 を明 らかに して提 出す るよ うに命 じた。 しか し, そのさい, この 判決で特記 された採用および昇進 の要件を満 たさねばな らないと判示 したので
ある
(281)。e r
g) SpecialProject:RemedialPr10CeSS.S
uDranote26at797‑98.なお,通常, 刑務所や精神病院の改善が求め られた訴訟事件では, この種のアプローチは余 り普及 していないとされる。それは, これ らの事件類型が
,1970年代初頭 に出現 し始 めた も のであ り, その頃 には,すでに連邦裁判所 は,司法積極主義的役割 を引 き受 けていた か らである。
Id. at 798.See alsoK
.Moss,InstitutionalRefom thr10ugh Litigation,58 Soc.SERV.REV.421,423125 (1984)[hereinaftercited asK.Moss,InstitutionalReform.〕.
さらに,田中英夫 「 定数配分不平等 に対す る司法的救 済
」『ジ ュ リス ト』830号
41貢
(1985)参照.
SeealsoC.Diver,PoliticalPowerbroker,Supranote26at82‑84
〔ここでは, このような被告依拠型 のアプローチが,被告 に訴訟遷延の機会を与え るに過 ぎない こ とを指摘 され, また, このアプローチが被告 の専門的知識 を活用できるという利点 に 対 して も,権利侵害を惹起 させた被告 にそれを求 めるのは不適当であ ることや被告 自 身のルナテ ィン ・ワークを壊す ような救済原案を,被告 自 らとて も作 ることがで きな
いであろうとい う点が指摘 されている
。〕.㈱ Bridgeport Guardians
,
Inc.,
Ⅴ. Members of Bridgeport Civil Service Commission,354F.Supp.778,797(D.Conn.1973).廓 O
Seealsoe.a.Costellov.Wainwright,397F.Supp.20,34135(M.D.Fla.1975).
本件 は, フロリダ州立刑務所 の改善が問題 とな った事件である。 連邦裁判所 は,被告 による在監者 の権利侵害を認定 し,被告が段階的に在監者 の人数 を削減す る ように命 じ, そのための救済案 を被告が形成す るさいの詳細 な指針を提示 した。
Seealsoe.a.Wyattcase.subrlanote63334F.Supp.at1343 〔Seesuprla
「 公共的差止訴訟」における救済過程の構造とその展開
(3) 61このよ うな指針 の設定 は , 「 救済方法 の多様性 とい う特殊性」の存在す るこの 種 の訴訟事件 において は,非常 に有益 である
。′ なぜ な らば,救済案 の形成 を誠 実 に行 なお うとす る被告 で さえ も,多様 な具体案が考 え られ るので,二定 の方 向付 けを必要不可欠 とす るのであ り,また,あま り協力的でない被告 で さえ も, 一定 の指示がなされなければ,全 く不適切 な救済 プ ランを提 出 しかねないか ら
である
(282)。このよ うに して提 出 された被告 の救済案が妥 当な ものであ るか否かを審理 す るさいには,裁判所 は,原告
(283)や判決 によ り影響 を受 ける者,さ らには裁判所 に有益 な専門知識 を提供 し得 る者 の協力 を得 ることもある
(284)。 しか し,被告 の 救済 プ ランが不十分 な場合 には,裁判所 は,今度 は救済 プ ランに盛 り込 むべ き 内容 を一層特定 した形 で提示 して
(285),その改訂 を行 なわせ るために被告 に突 き 返 す ことや,また,被告以外 の者,つ ま り原告 やスペ シャル ・マス ターなどに, 具体的な救済方法 の原案 の作成 を命 じることもあ る。後者 の場合 には,後 に詳
しく見て行 くよ うに,被告 にその作成 を命 じるアプ ローチよ りも,裁判所 の役 割 は,一層積極 的な もの とな るのであ る
(286)。note71andaccompanyingtex
t . 〕.
㈱
SeeSpecialProject:RemedialProcess.Supranote26at798.
㈱ この種の訴訟事件は,多 くの場合,クラス ・アクションにより提起されている
。See e.g.SpecialProject:RemedialProcess.supy7a nOte 26 at870,A
.Chayes,BurgerCourt.suprlanote145at26‑28.
それゆえ,実際には原告クラスの代表者 である
。御
Developments‑Section1983.Supranote133at1249〔しかし,裁判所は,被 告である制度 ・組織の政策判断には,なお信頼を置 くべきであるとされる。 〕
,C.Diver,PoliticalPowerbroker.suprlanote26at83‑84
〔 このようにして提出され た救済原案に対 して,原告やアミカス ・キュリイは,被告と同程度には制度 ・組織の 情報にアクセスできないので,不利な条件のもとで活動することを余儀なくされると 指摘されている。 〕 .
㈱
M.Starr,Accommodation and Accouniability :A Siylategy forJudicial EnfocementofInstitutionalRefom Decrees,32A LA.L
/ REV.399,412(1981)thereinaftercitedasM.Starr,AccommodationandAccountability.).
㈱ SpecialProject:RemedialProcess.supr7anote26at798,C.Diver,Political PowerbylDker.Supranote26at83‑84.
62
商 学 討 究 第
40巻 第
4号
このアプ ロ‑チの限界 に関す る典型例 と して, Sw
ann事件
(287
)を挙 げ ること がで きる
。この ノース ・キ ャロライナ州 の公立学校 における人種別学解消訴訟 事件 で,連邦地方裁判所 は,被告 である教育委員会 が救済案 を作成 して提 出す ることに好意 を示 し, しば しばそのための機会 を与 えた。 つ ま り,裁判所 では な く,被告 であ る地方 の教育委員会 が,憲法 に遵 い生徒 を学校 に割 り当てかつ 学校 を運営す る義務 がある( 2 8 8 ) と判示 され,別学解消の職務 を いかなる方法で遂 行す るか に関す る選択権 は,教育委員会 に帰属す る
(289)と判示 されたのである。
しか しなが ら,約
6年 間にわ たる訴訟 の過程 で,裁判所 は被告か ら満足 のゆ く 救済案 を受 け取 ることがで きなか った。被告 であ る教育委員会 は,繰 り返 し非 妥 協 的 な態 度 を取 り続 け た。 た とえ ば, 教 育 委 員 会 は, そ の学 校 管 督 者
(superintendent)に救済 プ ラ ンの準備 を命 じたが,判決 に示 され た指針 に 従 って学校管督者 によ り作成 されたプラ ンは,教育委員会 によ り効果的 な規定 のすべてが除去 されて,裁判所 に提出 されたのであ った
(299) 。そ こでつ いに,逮 邦地方裁判所 は,かつて,被告 の不履行 に備 えて即座 に救済 プ ランを提 出 させ るべ く任 命 して お いた
(29 1 ) 専 門家
(consultant .こ こで は, 原 告 側 の鑑 定 人
(expertwitness)の
1人)に対 して,具体的 な救済方法のプ ランの提 出を命 じ
㈲ 以下では,判例集のはか, 0.
Fliss,The Charlotte‑Mecklenbu曙 Case ‑ Its Signi
fi'CanceforNorthem SchoolDesegrlegation,38U.CIII.L REV.697(1971)ち 参照 した。
㈱ Swann v.Charlotte‑MecklenburgBoardofEducation,300F.Supp.1358
,
1361(W.D
.N.C.1969).㈱
swannv.charlotte‑MecklenburgBoardofEducation,306F.Stipp.1299,
1306,1313(W.D.N.C.1969).㈱
SeeSwann v.Charlotte‑Mecklenburg Board ofEducation,300 F.Supp.1381,1382‑83(W.D.N.
C
.1969).
価DSeeSwann v.Charlotte‑Mecklenburg Board ofEducation,306 F.Supp.
1299,1313(W.D.N.C.1969).
「 公共的差止訴訟」 における救済過程 の構造 とその展開 (3) ‑63
たのであ る( 2 9 2 ) 。その後∴その専門家 によ り救済案 が提 出されたが,それで もな お,裁判所 は,その詳細 に関 して は被告側 に作成 を委 ねたのであ った
(293'。 しか しなが ら,結果的 には, その ことが被告 を刺激 し,救済案 の提 出に導 いたので あ った
(294)。この例 か らも明 らかなよ うに, このアプ ローチには,問題 がな くはない。つ ま り, このアプ ローチは,被告が能力的 に見て制度 の改善 に関す る救済原案 を 作成す ることがで きるか, または,進んでそれを作成 しよ うと していることを 前提 と しているが,実際問題 と して,権利侵害 を生 み出 して いる者 が, そのよ うな態度 を取 るか否か疑 わ しいよ うに思 われ る
。また, た とえ, このテクニ ッ クが採用 されて も,被告 が救済 プ ラ ンの提 出につ いて非協力的 な態度 に出た場 合 には, このアプ ローチのみで は, ほとん ど実効性 がないのである
。また
∴こ
の方法が,被告 である制度 ・組織 への干渉性 を極小化 しうるとい う点 について ち,それ は,被告 が救済案 を作成 した とい うプ ロセスの問題 で はな く,む しろ, 判決 内容 および執行手段 自体 によ る もので はないか
(295)との疑問 も呈 されて い
るのであ る
。㈱
Swann v.Charlotte‑Mecklenburg Board ofEducation,311F.Supp.265,266(W.
D
.N.C
.1974).㈱ Swannv.Charlotte‑MecklenburgBoardofEducation,362F.Supp.1223
,
1229‑30(W.D.N.C
.1974).伽
) Swannv.Charlotte‑MecklenburgBoardofEducation,379F.Supp.1102,
1103(W.D.N.C./1974),SpecialProject:RemedialPr10CeSS.SuPrlanote26at 800.㈱
Seee・g・SpecialProject:RemedialITr10CeSS.SuPylanote26at799.Cf.e.g.A.Chayes,RoleoftheJudge.suprlanote24at1300
&
n.85,C.Diver,Political Powerbroker.sup17a nOte 26 at82‑85,90,Note,ImPlementation Problems. suPrlanote50at439,M.Starr,AccommodationandAccountabil
it
y.suprlanote 285at408,T.Stein,IssuesintheDevelopment,Implementation&
Monitoringof ConsentDecrees&
CourtOyders,6ST.LoUISU.PtlB.L
.REV.141,147(1987)〔hereinafter cited as T.Stein,Implementation
&
Monitoring.〕 ,
D.Jones,
FederalCourtRemedies:TheCreativeUseofPotentialRemediesCanProduce InstitutionalChange,27 How.LJ
.879,896 (1984)[hereinaftercited asD.Jones,FederalCourtRemedies.].