ガス流町における噴射液の分散状態の合理的判定法に関する研究
平行ガス流に垂直低速噴射の場合
高 本 洋 祐*
(昭和47年9月30日受理)
A study on a method of the reasonable judgement for the dispersive state of the liquid sprayed into uniform gas flow.
(ln the case of perpendicular spray into the parallel gas flow at low speed.)
Yousuke KouMoTo
(Received September 30, 1972)
In a venturi scrubber, a cyclone scrubber and so on, the quality of dispersive state of the liquid jet sprayed into a gas flow has considerable effects upon the performance of these equipments. Bttt no method by which its quality may be reasonably judged has been established yet, though it is so important.
In this report, some liquid jet−which was sprayed at low speed into a parallel gas flow−was treated in two−
dimension. And for a means to that judgement, the equation (12) was introdueed theoretically under a iew assump−
tions. The quality of the dispersive state was judged by comparing the butline of the upper side of actual spray with a curve obtained from the eq. (12). The eq. (12) was gotten by the use of Allen s eq. of the drag coefficient equa−
tions for liquid perticles.
1 緒 言
ガス流中にノズルから加圧液を噴射する例は,ベンチュ リスクラバ,サイクロンスクラバなどの集塵装置やその他 の化学工業装置などにおいてよくあることである。その場 合,噴射液の分散状態の良否,またその到達距離が装置の 性能に大きく影響を及ぼす場合が多い。ベンチュリスクラ バののど部においてその双:方が捕集効率に大きく影響して いる(1)のはよい例である。それ故この問題は装置設計の段 階からよく考えなければならないことであり,従って実際 運転中の状態の観察が特に必要になってくる。
このようにガス流中における噴射液の分散状態の良否が それ程重要な意味を持つにもかかわらず,それの合理的な 判定基準がないため,もっぱら人間の視覚によって定性的 に判定されてきたので,最善の分散状態が得られるような
噴射条件に調整されているか否かの検知ができていなかっ
たようである。
本報告ではガス流を一様な平行流とし,それに垂直にノ ズルから液を低速で噴射する場合をとりあげた。そして噴 射液の二次元的分散状態の良否を判断するための基準を与 えると考えられる理論式を求め,これによる計算結果と小 径のノズルを使用しての若干の実験例とを比較し,考察を
行なった。
*機械工学科
2 理論的考察
(記号)
X:ノズルロを原点とし,ガス流と直角方向の座標軸 y:ノズルロを原点とし,ガス流と平行な方向の座標軸 Pa:ガスの密度
ρ,:液の密度
Pa:ガスの粘性係数μ3:液の粘性係数 Ua:ガスの絶対流速
Us:y方向の匹田の絶対速度
Ur:y方向のガス流と液晶との相対速度(=Ua・一Us)
Vs:x方向の液滴の絶対速度 Vso:液の噴射速度
D:平野の直径 CD:球の抵抗係数
Fx, Fy:液滴の受けるx, y方向の流体抵抗 t:特間
Re:レイノルズ数 σ:液の表面張力
平行ガス流に垂直にノズルから噴射した場合,噴射液の 分散は三次元的に現われるのであるが,ここではFig・1の 如く分散が最も激しく起り,しかも一番問題となる場合の 多い噴射面に垂直な方向から見た二次元の分散状態を考え
る。
y
Fig.1
とするものである。即ち,ガス流速,噴射条件によって定 まってくる微粒化粒子の平均粒径を用いて計算した粒子の 軌跡と,実際の場合の拡がりを持つ軌跡の上流側の輪郭と を比較することにより,分散状態の良否を定量的に判定す るのである。実際の場合の軌跡の上流側の輪郭は,一般的 にはガス流の方向における最も粒径の大きい粒子の軌跡に なっているはずであるから,これを平均粒子径で計算した 軌跡と比較すれば微粒化の状態が解り,従って分散状態が 判定できることになる。
Fig.1の場合,ガスとの相対速度はx, y両方向にある が,低速噴射の場合であるのでX方向の相対速度による微 粒化は無視する。
液滴の軌跡の方程式を求めるにあたり,問題を単純化す るために次の仮定を設ける。
(1〕ガスの圧縮性は考えない。
{2)噴射液は,ノズルを出た瞬間に等しい粒径に分散す るものとする。
(3)液汁の相互干渉は無視する。
さて,ガス流により微粒化される液滴の平均粒径(表面 積平均径)は,前述の抜山,棚沢によれば次式で表わされ
る。(5)
D一
ハ奏+597(謝 45・L Sただし,上式はとくに絶対単位で
1):表面積平均径。μ〕
Ua:ガス流速〔m/・)
σ:液の表面張力〔dy・・f・m]
ρs:液の密度〔9/em3〕
μS:液の粘性係数〔g/。m.・〕
L:液ガス比〔〃m3〕
また,適用範囲は 0.8〈σs〈L2 30<σ<73
0.01<μs<0。3である。
(1)
さて,分散は液とガス流との相対速度によって液が微粒 化されて生じのものである。その場合の微粒化粒子につい てはすでに抜山,棚沢によって詳細に研究されており,粒 子の分布状態とか,平均粒子径が,噴射液の状態,ガス流 速との相対速度によって決ってくることが確かめられてい る。(2)・(3)・(4>(5)・又,その相対速度が大きい時,微粒化は大 部分,噴射ロのガスと接する所で完了し,それ以降の距離 における諸点の平均粒径は,約150m/s以下の低い相対速度 の場合を除き殆ど一様であることも確かめられている。(2)
従ってここに,「ガス流中への噴射と同時に噴射液の全て が微粒化し,その時の条件によって定まってくる平均粒子 径に到達する場合が最良の分散状態である」と仮定し,こ れを基準にして他の場合の分散状態を定量的に検知しよう
Ue
F
。x 1
x
y
聾
t
Fig.2
t+dt
今仮定に従うて微粒化した液滴の1個について考え る。Fig.2において液滴の受ける流体抵抗Fは.
..
シC・8FD2σ…2r (・).
によって表わされる。次に VsDPa
zarDPa
, Rey ==
Rex=
μσ
μo
で定義されるレイノルズ数の値は条件によって変化し,そ れに応じて抵抗係tw Cpが変わってくる。ここでは噴射の 初期にRex, Reッがともに数百程度になり,その後はX方 向には減速され夕方向には加速されて減少する場合(後述 の実験例,実用のベンチュリスクラバが含まれる範囲であ る)を考えて具体的に進めていくことにする。この際受け る流体抵抗FはいわゆるAllenの範囲にあるものと考えら
れるので次式(6)
C…=・.・・+釜
(3)θ
を抵抗係数に用いる。そしてκ,ッ方向についてそれぞれ 運動方程式を立てると
(箸・・Ps){診峨一一(・.4・・f/)看・・鱗・(・)
(告・・Ps)讐一・・一(・.…藷)晋…幽・
となる。また
dツ dx
Us=Tt , Vs =一Tt , Ur一一Ua一 s
を(4),(5)式に代入し整理すると
膿…{・・(dxdt)2+・・物(5)
(6)
:?;JY2 =:Cl(一!Zi/1一)2 (2Clua+C2)一 i/ll−Ti Clua2+C2ua
を得る。但し
.Ci−O.307S.lf」, D, C2=一30ri#.S2S2
である。
(6),(7)式を初期条件
t一・で
o:二::歎
のもとに解くと次のようになる。
(7)
(Clua+C,)〆・u・t−C、・。・一(C・・0・uの ナ.C,ガC・y(8)
.C1砂30 1
彦「万伽IC、v、。+C、一C,・C・・i (9).
また,特異解として
y=C3+πat 但しC3=定数
が求まるが,これは加速が終った後に成立する関係である
からこの際は関係ないも.のである。
(9)式において
ICivso十C2−C2eCiXI St o
である。即ち・≒奇1・( C11十一eS−vso)
また
CIVso十C2−C2eClx>0の場合
x 〈J31一 in ( i +JSitl vso)
CIVso十C2−C2eCiX〈0の場合
x 〉一3 一 in ( i +一St−vso)
xの範囲は 0≦x〈X の形にならなければならないか
ら
・≦火漂〃( C11十C2 Vso)
と決ってくる。従って(9)式はこの場合
t==一il}m in−eiltJ]s−z.o+Ccl;V2g(lecTEEtolicix
と書ける。(8),(11)式よりtを消去すると
y =一 il}一 {uain(i+ tl?6一一£leCi )+A・・(・一下+「無・叫
・〈x<&瞭+号鞠・)
ここに
・一薯一…畿
を得る。
(10)
(11)
(12)
これが液滴の運動軌跡を表わす方程式である。そしてガ ス及び液の状態,ガス流速,噴射速度,ノズル径が決まれ ば(12)式より微粒化された平均粒子径の液滴の軌跡を描く ことができ,実際の場合と理想状態との比較が可能にな
るQ
3応用例と考察
例としてサイクロンスクラバに使用されているガス流速 およびノズル径,噴射速度を基準にして行なった実験結果 に応用してみる。この時の実験条件は,温度12.5。Cでガ スは空気,噴射液は水である。また
空気流速:Ua = 25〜45m/・
ノズル径:d=O.6〜2.Omm
噴射速度:VsO=15〜50m/s
ダク ト:ec 200mm,縦150mmの長方形断面で 長さ1.5mのダクト
である。この条件下ではRex, ReYはともに抵抗係数とし
てAllenの式が適用できる範囲内にあるので計算:には(12)
o 50
IOO X[Mnd−150
200式がそのまま使用できる。実験に際し,噴射位置にはダク ト内の速度分布が矩形になる。風洞に接続されたベルマウ スの出口近くを選び,ノズルをダクトの高さの半分の位置 にセットした。またノズルロは噴射液がノズル内の縮流の 影響を受けないよう配慮するとともに安定した噴射状態が 得られるようノズル構造,噴射方法を考慮している。
50
ん06m
4
5O
罵U O翼 dd
= 320
lIIII11111一﹁塑
官∈ヌー0 0
15
5
・・一・・
р
1
o
50
50
m ん
O
350
iV
m
隅O6 aO
冨=dd
O冨
b一.
言E三一7
0 0
1oo x.tnta)一一.
P50.
1
黛 IXk 2
OO﹁㎞
辺
150
Fig.3 Calculated results for various d and vso Fig.4 Calculated results for various d and a
(Points of d=1. 5 and 1. 0 are locatecl among the points of d=2.0 and O. 6)Fig.5 Photographs of experimental results for Fig.3 (d=1. 5mm)
Fig.6 Photographs of experimental results for Fig.4
(d=1.5mm)
以上の条件における実験結果の一部およびその計算結果 をFig.3.4,5,6に示す。実験結果の写真にはこの場合 適切でないと思われる噴射速度,風速の組合せ(VsO≧Ua)
のものも含まれているが,いつれの場合も風速が低いため
微粒化が遅れ良好な分散状態は得られていない。その様.LF一
は計算結果と比較することにより,より明らかとなる。即ち,Fig.5, Fig・6の写真の中の黒い線が計算結果を示して
いるが上流側の輪郭とはかなりのずれがある。従って分散 状態は不良と判定できる。同様にして個々の場合の相対的 な比較も合理的にできる。Fig.5のVso=50,45,40およ びFig.6のUa=25,30の各場合は他の場合に比較して多 少分散状態は良いようであるが,これはむしろ噴射方向の相対速度による微粒化の影響が加わったものと考えられ
る。
また計算結果と実際の上流側の輪郭曲線との傾向は似て おり,低速噴射,高速気流になればそれらは殆ど一致する ものと推定される。これらのことを利用してこれまで漠然 としていたd,Vso, Ua, しなどの変化による輪郭曲線の 変化を近似的に予知することができ,従って液滴の到達距 離も近似的に求めることができる。Fig.7はこの一例で,
Ua, Vsoを一定にしdを変化させたものであるが上流側の 輪郭の形には殆ど変化が見られない。このことはFig.4の
%8=45m/s, ε0=30m/sの計算結果から推定されるように,
この場合は液ガス比しのDにおよぼす影響が小さいためd
Fig.7 Photographs of experimental results for various d(Ua=45mノ。 写0=25鵬〆5)
による軌跡の変化は殆どないという計算結果に一致する。
ベンチュリスクラバののど部などにおける分散状態の良 否は,噴射地点の下流域がすべて微粒化した粒子でおおわ れているか否かによって判定されるが,これは主として粒 子の大きさとガス流速に依存するものである。従ってこれ まで述べてきた方法に一つの定性的な条件が加わるだけで あり,判定法は本質的には変わらない。
4 結
言ガス流中における液滴の分散状態を合理的に判定する方 法が確立されていない現在,それの一方法として噴射と同 時に噴射液のすべてがその時の条件によって定まる平均粒 子径の液滴に微粒化するのを理想状態とし,これを基準に して実際の場合の分散状態を判定する方法を述べた。平行 ガス流への低速噴射の場合を取り上げたが,この場合は結 局(12)式による計算値と実際の場合の上流側の輪郭とを 比較することにより良否が判定できる。この方法によれば 分散状態のみならず従来隆然としていたd,Vso, a, しな どの変化による上流側の輪郭の変化や噴射方向の液滴の到 達距離を近似的に,定量的に予知することができる。なお
(12)式を導くにあたっては,抵抗係数COはその時の条件 によって適当に選定すべきものである。今後,種々の因子 による液滴の微粒化の定量的なメカニズムが解明されるな ら,それを用いてより合理的で厳密な判定が行えることに なる。
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文 献
上岡;ベンチュリスクラバ,続新化学工業講座 13(1960)68〜74 日刊工業
抜山,棚沢 ;日本機械学会論文集 4−14(昭和13−2)86〜93
tt tl
4−15(昭和13−5)138〜143
tl tt
5−18(昭和14−2)63〜67
tt tt
5−18(昭和14−2)68〜75
Dallavalle ; Micromeritics (2nd ed.) 23
終りに,(6)(7)式の解法には本校の池上,杉山両先生に 御助力頂き,また実験には本校卒業生伊賀 光,竹山照 男,,児子 博の諸君の,そして数値計算には福島二郎君 の御協力を頂いた。ここに厚くお礼申しあげます。