語学教育研 究論叢第27号
スペ イ ン語 の否定の移動 に関す る諸条件 の考察
田林 洋一
So meCo ndi t i o nso fNe ga t i v
e聴a ns po r t a t i o n i nSpa ni s h
YOUICHITABAYASHI
Estetrabajotieneporobjetoanalizarlosfen6menosdeltransportedela negaci6n (TN)enespa畠01,especialmentedesdelaperspectivasintactica, semanticaypragm畠tica.
Eninvestigacinesanteriores,elTN soloestabaconsideradodesde elpuntodelavistasintactica.Sinembargo,estasbaseste6ricasse considerabanenlaestructuraprofunda,queenactualsetrataenla categoriainterpretativa.Estetrabajoexplicaelcomportamientosintえctico,
SemanticoypragmciiticodelTN distinguiendoloscas°senquelaoraci6n subordinadacontengapalabrasnegativasono.
Asimismo,seproponentrescondicionessobreelcaracterdepredicados alosquesepuedenaplicarelTN:Primero,lospredicadosquecontienen unapresuposici6n.Segundo,losquetienenlatendenciaaintroducirun inBnitivo.Tercero,losquenocontienenlacreenciadelquehabla.
1.序
本 稿 で は、 スペ イ ン語 の否 定 の移 動 (transportedelanegaci6n、 以 下 TN)と呼 ばれ る現象の統語 的 ¢意味 的 。語用論 的側面 につ いて若干 の考察
を加 えることを目的 とす る1。 まず、以下の文 を参照2。
(1)a.私 は、彼が良い人で ない と思 う。 b.私 は、彼が良い人だ とは思 わない。
(2)a.IthinkthatTom isnotaniceperson.
‑ 285‑
b.Idon'tthinkthatTom isaniceperson.
(3)a.Creequenovienen.
b.Nocreequevengan.
(4)Nocreequevienen.
TNとは、(3)の よ うに命題 の真理値 が変 わ らない3 (発話 内容 が 同 じ) 範 囲で従属節 にあ る否定語が主節 に移動す る現象 であ り、 (1)辛 (2)の よ
うにスペ イ ン語以外 の言語 に も生 じる。 また、(3b)の ように否定の移動 を 適用す ることで従属節の法が変わる場合 もあるが、(4)の ように従属節 の法 が変 わ らない用法 も容認 される4。
TNを適用す る と命題の真理値が変わる場合 はTN文 とは呼ばない。本稿 で は、TN文 を 「TNの操作 を適用 した後 も、適用前の文 と真理値が変わ らない ペ アの文」 と暫定的に定義す る。
(5)a Repitoquenolohacesmuybien.
b.Norepitoquelohagasmuybien.
(6)a.Lamentoquenovengas. b.Nolamentoquevengas.
SanchezL6pez (1999:2611) (5)と (6)のそれぞれのペ アは、否定語が主節 に移動す るこ とに よって 真理値が変わるので、TN文ではない。 しか し、 (1)〜 (3)の各ペ アが意味 的に等価 とい うわけではない。 この点 については語用論 的側面 を扱 う第4節 で詳 しく論 じる。
2.TNの統語的側面
本節 で はTNの統語 的側面 について、Rivero (1977)を中心 に概観 し、次 に従属節 に否定語が出現 している場合 を独 自に考察す る。
2. 1 概観
初期 の研究では、TNは統語 的変形 とみなされていた。
(7)a.Losjuecescreenqueelequiporus°noganarえ. b.LosjuecesnocreenqueelequiporusoPane.
Rivero(1977:21) (8)TransportedelaNegaci6n (TN)
Ⅹ‑
.lSN‑V‑
sN [NEG‑ 0]sN] 。
‑ YIE: 1 2 3 4 5 6
CE: 1 4+2 3 Q) 5 6
Rivero(1977:23) Riveroは、(7a)は否定語 が従属節 に留 まってい る状 態 で、(7a)に (8) のTNの変形 とい う統語 的操作 が文 の基底構 造 にかか る と否定語 が従属節 か ら主節 に移動 して (7b)に変換 され る と主張す る。 その根拠 として、① 点 的な動詞 と共起す る副詞hastaの振 る舞 い、(歪enabsolutoの振 る舞 い、③ palabradeやgotadeの よ う な 最 小 量 を 表 す 否 定 極 性 項 目 (terminode polaridadnegativa、 以 下TPN)、 ④ 文 の 代 名 詞 化 (pronominalizaci6nde oraci6n)を挙 げている。 まず、点的な動詞 と共起す る副詞hastaの振 る舞 い
か ら見 る。
(9)a.*Eltrenlleg6hastalassietedelatarde. b.Eltrennolleg6hastalassietedelatarde.
(10)a.Tupadrequierequeeltrennolleguehastalassietedelatarde. b.Tupadrenoquierequeeltrenlleguehastalassietedelatarde. C.*Tupadrequlerequeeltrenlleguehastalassietedelatarde.
Rivero (1977:25) (9)は、副詞hastaが 同一節 内で否定環境 を要求す ることを示 している (即
ち、 点 的 な動 詞 と共起 す る副 詞hastaはTPNで あ る)。 (lob)は (10a)の ように同一節 内 に否定語が 出現 してい ない に もかかわ らず、従属節 内で副 詞hastaの出現 を容認す るため、基底構 造 では否定語 は従属節 内にあ る (同 一節 内に否定語が 出現 していない (10C)は副詞hastaの出現 を容認 しない)。
従 って、 (lob)は もともと (10a)を基盤 と してい る。 TNを拒絶す る動詞
‑ 287‑
句tralardeの場合、 (ll)のペ アが示す ように同一節 内に否定語が ない と副 詞hastaは出現で きない。
(ll)a.Tupadretratadequeeltrennolleguehastaユassietedelatarde. b.*TupadrenotratadeqLteeltrenlleguehastala§sietedela
tarde.
Rivero (1977:26) 次 に② について検討 す る。enabsolutoは、通常否定環境 のみ に生起 す る とい う点で副詞hastaと似 る5。
(12)a.Mihermanocreequenocomoenabsoluto. b.Mihermanonocreequecomaenabsoluto. C.*Mihermanocreequecomoenabsoluto.
(13)a.Medicuentadequeelniaonocantabaenabsoluto. b.串Nomedicuentadequeelniaocantaraenabsoluto.
Rivero(1977:27) TNを許容す る動詞creerでは、 (12b)の ように否定語が 同一節 内にな くと も (12a)の ように従 属節 内でenabsolutoが 出現 しうる。 一方、TNを拒絶 す る動詞句darsecuentadeは、 (13b)が示す ように同一節 内 に否定語が 出 現 してい ない状態 で はenabsolutoは出現 で きない 。 同様 に、③ の最 小量 を 表すTPNについて論 じる。
(14)a.Noprob6gotadeagua b.*prob6iotadeagua.
し15)a.Nodijopalabradeloocurrido. b.*Dijopalabradeloocurrido.
Rivero (1977:27) (14)、(15)で は、gotade及 びpalabradeは ともに否定環境 を要求す るこ とが示 される。 以上 を踏 まえた上で、以下の文 を参照。
(16)a.Creoquenoentiendepalabradeingles. b.Nocreoqueentiendapalabradeing16S.
(17)a.Creoquenoprob6gotadeagua. b.Nocreoqueprobaragotadeagua.
Rivero(1977:27) (18)a.QuieroquenomuevasundedoporeL
b.Noquieroquemuevasundedoporel.
(19)a,Meparecequenotieneelmenorin[eresenello̲ b.Nomeparecequetengaelmenorinter6senello.
Bosque(1980:52) 動詞Cユ・eerが主節 にある (16b)及 び (17b)は、(16a)及び (17a)の基底 構造 にTNの変形がかか り、 同一節 内に否定語が な くとも最小量 を表すTPN
(palabrade及 びgotade)の 出現 を許容 す る。(18)のmoverundedo及 び (19)のeュmenorinteresも同様である。 しか し、TNを拒絶す る動詞explicarは、
同一節 内に否定語 と最小量 を表すTPNの両者が共起 しなければ非文 となる。
(′20)a.Lesexpliqu白quenohablabapalabradeing1es. b.*Nolesexpliquequehablabapalabradeing1es.
Rivero (1977:27) (○〜③ は従属節 内 に否定語が 出現 していない に もかかわ らずTPNが 出現 しているため、基底構造では従属節 内に否定要素がある とい う説明原理であ る6。 しか し、全 てのTPNが否定要素のない従属節 に出現す る とは限 らない。
(21)a.MeparecequeMargaritanohallegadotodavia. b.*NomeparecequeMargaritahayallegadotodavia. (22)a.Creequenomellevasnuncaalcine.
b.*Nocreequemellevesnuncaalcine.
(21) のparecer、(22)のcreerともTNを許容す る動詞 であ るが、従属節 にTPNであるtodaviaとnuncaが出現 した場合 は非文 となる。
次に④ の文の代名詞化 について検討す る。
(23)a.JuancreequeMariaesguapa,per°noestえsegurodeello.
b.JuancreequeMariaesguapa,per°noestasegurodequeMaria
‑ 289‑
Seaguapa.
(24)a.JuancreequeMarianoesguapa,per°noestasegurodeello. b.JuancreequeMarianoesguapa,per°noestasegurodeque
Marianoseaguapa.
(25)a.JuannocreequeMariaesguapa,per°noestasegurodee]lo. b・Juannocre9queMariaesguapa,per°noestasegurodeque
Marianoseaguapa.
(26)JuannocreequeMariaesguapa,per°noestasegurodequeMaria Seaguapa.
Rivero(1977:28) (23b)のqueMariaseaguapaは、(23a)で は文 の代名詞化 に よ りelloと して具現化 される。 (24a)のelloは (24b)が示す ように、queMarianosea guapaを意味 し、結果 と して (24)の真理値 は同一で あ る。 一方、TNを適 用 した (25a)のelloは、その従属 節 であ るqueMariaesguapaを意味す る の で はな く、(25b)が示 す よ うにTNが 適 用 され る前 のqueMarianosea guapaを意味す る。 従 って、(25a)は (25b)と等価 であ り、(26)とは反対 の意味 を持つ。
Ross(1969)は、更 に省略文か らTNの妥当性 を説明 している7。
(27)a.CreoqueMarianosevadevacacionesytepuedodecirporqua. b.NocreoqueMariasevayadevacacionesytepuedodecirpor
que.
(27a)はTNが適用 され る前 の文であ り、porque以下 は命題Marianose vadevacacionesが省略 されている。 TNが適用 された (27b)では、porqua 以下 に省略 された命題 は否定極性 を持つMarianosevadevacacionesであ
り、(27a)の省略箇所 と等価 である8。
この代名詞化 に よるTNの説 明は、既 にLindholm (1969:154)がTNが統 合的変形であることの根拠 として取 り上 げている。
(28)Idon'tthinkBillpaidhistaxesandMaryisquitesureofit.
(it‑Billdidn'tpayhistaxes)
上記 の例文 に出現す る代名詞itは否定要素が入 った補文の内容 を正確 に写 し取 らねばな らない。 しか し、代 名詞化 が統語 的規則 の基底構 造 で行 われ てい る とい う前提 にはBach‑Petersparadoxと呼 ばれ る問題が ある (Bach (1979)、大塚 (1982:957)、安藤 (1993:20)他 を参照)。
(29)Themanwhodeservesitwillgettheprizehewants.
安藤 (1993:20) 上 の文で出現す る代名詞it及 びheの先行詞 は、それぞれtheprizehewants とthemanwhodeservesitである。 しか し、後者 を前者 に代入す ると、the prizethemanwhodeservesitwantsとい う分が 出現 し、無限に代名詞が現
れることになる。
従 って、代名詞化 に よるTNの説明は、代名詞化が基底構 造 にお ける変形 規則 に則 った ものである以上、説明的妥 当性 を失 う9。前述の① 〜③ のTPN の出現条件 を根拠 に したTNの変形規則 も、否定 の作用域 とTPNの決定が解 釈部 門でなされていることを考 える と、や は り妥 当性 を失 う。
更 にTNの統語 的変形 だけでな く、意味 的側面 を重視 しなければな らない 現象 にTNの循環的適用が挙 げ られる。
(30)a.creoqueLuisquierequeFabiannohableenabsoluto. b.CreoqueLuisnoquierequeFabianhableenabsoluto. C.NocreoqueLuisquieraqueFabi畠nhableenabsoluto.
Rivero(1977:31) (30)の真理値 は等価 であ る。 原則 としてTNは循環 的に適用 されるので、
節 間にTNを拒絶す る動詞が置かれてはな らない。
(31)a.YocreoqueLuisseenterbdequeJuannohablapalabrade frances.
b.*YocreoqueLuisnoseenter6dequeJuanhablapalabrade francbs.
C.*YonocreoqueLuisseenteraradequeJuanhablapalabrade
‑ 291‑
franc6S.
Rivero(1977:34) (31b)は動 詞enterarseがTNを拒 絶 す るため、(3lc)はそのenterarseが 主節 と従属節の間に介入 しているため、それぞれ非文 となる10。 しか し、以 下の文の動詞は全てTNを許容するが、循環適用す ることで非文 となる。
(31)*NoquieroqueJuancreaquePedrosevayahastaelsabado.
Hom (1971) 以上、従属節 に出現す るTPN、代名詞化、循環適用 の三つの観点の問題 点 を指摘 した。 これ ら全 ての問題点は、畢蒐TNが単 に統語的変形の規則 の 一種である とみな していることに起 因 してお り、TNを分析す るには統語以 外 に も動詞の意味や文脈 を考慮 に入れる必要があることが分かる11。
∴ . 、・‑.L潤い.: 一・..し. ‑こ二号l'.:;::...;‑:
本節では、TNにおいて従属節 に否定語が出現す る場合 を検討す る。
ス ペ イ ン語 の 否 定 語 は 閉 じた類 で あ り、noの他 にnadie,nada,nunca,
jam畠S,ninguno/a,tampoco,niの合計8つがある。
(32)a.Creoquenovienenadie. 1コ.Nocreoquevenganadie. (33)Nadiecreequenovenga.
(34)a.Creequenuncavienenadie. b.Nuncacreequevenganadie. (35)Nadiecreequenuncavenga.
(32b)は、(32a)にTNが通庸 されて、noとnadieの うちnoだけが主節 に移 動 した ものである。 この時、(32a)のnadieを主節 に移動 させ て (33)の よ
うにす ると、(32)とは真理値が異 なるために適格 なTN文 とはな らない。否 定語が動詞 の前 に置かれてい る文で は、動詞の後 に出現す るno以外 の否定 請 ((32a)の場合 はnadie)は否定語の特徴 を持つのではな く、TPNの特徴 を持つ。従 って、nadieは「TPNとして働 く否定語」とい うことがで きる。(34a)
はTNを適用す ると、動詞の後 に置かれた (即ちTPNとして働 く)nadieでは な く、動詞の前 に置かれるnuncaが主節 に移動 し、(34b)の ようになること が予想 される。 この場合、真理値 は変わ らず、(34a)は 「彼は決 して誰 も乗 ない と思 う」、(34b)は
「
彼 は誰かが来 るとは決 して思わない」 と解釈 され る12。 一方、(35)はnadieが主節 に移動 した場合であるが、その意味は (34) と異 な り 「決 して来 ない とは誰 も思 わない」とい う二重否定 になる。(32) と (34)の各文には否定要素 は一つ しか存在 していないため、否定文である。主節 と従属節が両方 とも否定要素 を持 っている場合、その主節の否定要素 はTNの影響 を受けた ものではない (即 ちTN文ではない)0
(36)a.Nocreoquenovenganadie. b.Nuncacreoquenovenganadie.
(36a)には主節 と従属節 の両方 に否定語がある。 もしこれがTNの適用 を 受 けた ものであれば、基底構造 は (37a)の ようでなければな らないが、同 一節 内に否定語が二つ 出現 してい るため非文 となる。 なお、同様 に (36b)
もTN文であるな らば、基底構造 に (37b)の ような文が作 られ なければな らないが、やは り非文 となる。
(37)a.*creoquenonovienenadie. b.*creoquenuncanovienenadie.
Rivero(1977:23)は以下の例 を示 して、TNに関 してのみ新たに 「否定 語 は二つ続いてはな らない」 と 「主節 に否定語がある時は従属節 にある否定 語が主節 に移動す ることは不可能」 とい う二つの制約 を立てている。
(38)a.Losjuecesnocreenqueelequiporus°nogame. b.*Losjuecesnonocreeれqueelequiporus°nogame.
Rivero(1977:23) (38b)が非文 の理 由は、複 数の否定語が動詞 の前 に置かれてい るためで あ る。 従 って、上記 のRiveroの制約 は冗長的であ り、TNのみな らず、動詞 の前 に置かれる否定語 は原則 として複数あってはな らない、 とい う制約だけ を立てればよい。更 に以下の文 を参照。
ー 293‑
(39)a.Nocreoquenadievenga. b,Nuncacreoquenadievenga. (40a)a.*creoquenonadieviene.
b.*creoquenadienoviene.
(39a)は従 属節 でno以外 の否 定語 が動 詞 の前 に置 か れ てい る例、(39b) は主節 と従属節 の両方でno以外 の否定語が動詞 の前 に置かれてい る例 であ る。 (39)は二重否定であ り、(39a)は 「誰 も来 ない とは思 わない」 (即 ち論 理式では 「誰か来 る と思 う」と等価 )、(39b)は 「誰 も乗を11とは決 して思 わない」 (同様 に論理式では 「誰か来 る と常 々思 う」 と等価) と解釈 される。
これ らも (40)が示す ように従属節 に主節 の否定要素 を出現 させ ることが出 来 ないので、TNが適用で きない。
更 に以下の文 を参照。
(41)a.??Nocreonuncaquenadievenga. b.??Nocreonuncaquenovenganadie. (42)??Nocreonuncaquevenganadie.
(43)a.Nocreoquenuncavenganadie. b.Nuncacreoquenovenganadie.
(41)と (42)はイ ンフォーマ ン トが一様 に戸惑 い を見せ た。 これは否定 語が一つの文 に通常 以上 に多 くあ るこ とか ら、極性 の判 断が容易 に下せ な か ったため と思 われる。 しか し原理 的に考 えれば、(41)は主節 も従属節 も 共 に否定極性 を持つので、TNの適用 を受 けない (即 ち非TN文)である。(42) は主節が否定環境 、従属節が肯定環境であるが、(41)とは意味が異 なるので、
非TN文である。 (42)は 「誰かが来 る とは決 して思 わない」 (全体 としては 否定文)、(43a)は 「決 して誰 も来 ない とは思 わない」 13 (全体 と しては二 重否定文)、(43b)は 「誰 も来 ない とは決 して思 わない」 (全体 と して は二 重否定文)である。
以上の文例 に共通す る点 は、一見否定語が従属節 に出現 しているように見 えて も、それ らが動詞の後 にある場 合は 「TPNとして働 く否定語」であ り、
最小量 を表す表現 と同 じくTPNの特徴 を持つ14。
3.TNの意味的側面
本節 で は、TNの意味側面、特 に動 詞 の性 質 につ い て論 じる。 動詞 の性 質か らTNを許容す る動詞 と拒絶す る動詞があ るこ とは既 に 1節 で述べ たが、
具体 的に どの動詞が (ない しは どの性 質 を備 えた動詞が)TNを引 き起 こす のか を一般 的 に提示 す るこ とは難 しい15。 まず、TNを拒絶 す る とは どうい
うことか、再考す る。
(44)a.私 は、君が来 ないの を残念 に思 う。
b.私 は、君が来るのを残念 に思わない。
(45)a.Iclaimedthatnoonehadcome. b.Ididn'tclaim thatanyonehadcome.
太田 (1980:518) (46)a.MariaentiendequeLuisnoesundonjuan.
b.MarianoentiendequeLuisseaundonJuan.
(44)〜 (46)のペ アは、従属節 にあ る否定要素 を主節 に移動 させ る と真 理値が異 なる。 この ように、TNの操作 を適用す る と文全体 の意味が変わ り
うる動詞 を 「TNを拒絶す る動詞」 とす る。
Bosque (1980)及 びSanchezL6pez (1999)はHorn (1971:120)か らの 引用 と して、TNが適用 され る動詞 を信念、意 図又 は意志、認識的近似性 に 三分類 してい るが、そ こに分類 され うる動詞odiarやdetestarはTNを拒絶す
る。 更 に、G.LakofE(1970:30)はTNを許容す る動詞 を 「橋 (bridge)」と 呼 び、「思 う、思 われ る、〜 らしい」 とい った認識 的 (epistemic)な意味 を 表す動詞 と「〜 したい、〜す るつ もりだ、〜のが よい」とい う義務的 (deontic) な動詞 に大別 してい る16。 だが、認識 的 ・義務 的意味 を持つ動詞の中に もTN
を拒絶す る ものがある。
本稿 で は、① 非叙 実述語 に代 表 され る従属節 が前提 を持 たない述語、② 主節 の動詞が 目的語の位置 に補文標識queを伴 う名詞文が導かれに くい述語、
‑ 295‑