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コーラ-の資産概念

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(1)

コーラ‑の資産概念

渡 辺 和 夫

1 は じめに

会計上の基本概念 として, しば しば,資産 ・負債 ・資本 ・収益 ・費用の諸概 念があげ られる

これ らは貸借対照表お よび損益計算書の構成要素 として欠か す ことので きない概念である。 これ らの諸概念 をどうとらえるかは会計理論 に 重要な影響 を与 える

会計理論の骨格 はこれ らの諸概念 によって形成 されると いって もいいす ぎではない。

5 つの諸概念の うち資産概念 は とりわけ複雑 な内容 をもっている

資産概念 には常 に測定属性の問題が関係 して くる。取得原価主義論者の資産概念 と時価 主義論者の資産概念 は著 しく異 なる。同 じく取得原価主義論者であって も,資 産概念の内容 は異 なることが多い。 コーラ‑は資産概念 をどの ようにとらえて いたのであろうか。会計用語 に強い関心 をもっていただけに,その見解 は注 目 に値す る。本稿の 目的は

,

『 会計学辞典』における資産概念 を中心 に分析 し,コー ラ‑の見解 を検討す ることにある。

2 『 会 計 用語』 と 『 会計 学辞 典』

アメ リカ会計士協会 ( AI A) は 1 9 31 年 に会計用語委員会の編集になる 『 会計 用語』 と題す る出版物 を公刊 した。それは会計用語 に関する予備報告書の性格 をもっていた。 『 会計学辞典』 を作成す るにあた り, コー ラ‑は同書 を基礎 に

〔59〕

(2)

60 商 学 討 究 第 47 巻 第 2・3 号

した といわれている

『 会計学辞典』 の出版年は 1 9 5 2 年であ り, 2 つの書物の 間には 20 年の歳月の隔た りがある

したがって,内容的にも分量的にも大 きな 差異があって当然である

第 1 表 は as s et ( S ) ( 資産)に関する解説行数 を 『 会計用語』と 『 会計学辞典』

の各版について調べた ものである

それは内容の検討 に先だち,分量の 目安 と して示 した ものである。 もっとも,『 会計用語』 と 『 会計学辞典』では書物の 体裁がかな り異 なるため,比較す るにして も自ず と限度がある。た とえば,前 者は 1 段組であるのに対 し,後者は 2 段組 になっている。また,『 会計学辞典』

の各版に して も,微妙 な違いが存在する。その ような点を十分 に考慮する必要 がある

『 会計学辞典』の内容は 『 会計用語』と比較 して大幅に充実 した といえよう

また,『 会計学辞典』 の初版か ら第 5 版 まではほ とん ど不変 といって よい。第 6 版になって若干の減少が見 られる

第 6 版は第 5 版 まで と異 な り, コーラ‑

自身が改訂 した ものではない。初版か ら第 5 版 まであまり変わ らない とい うこ とは, コーラ‑の資産概念がほぼ確定 していたことを意味す るといえよう。

第 1 表 ass et( S) の解配行数

合 計

『 会 計 用 語』 1 7 行

学 辞

輿 初 版 1 31 行 第 2 版 1 3 4 行 第 3 .敬 1 34 行 第 4 版 125 行 第 5 版 11 8 行 第

6

版 ノ ミ J

『 会計用語』 における資産概念はつ ぎのように簡潔なものである

1)。

資産 :あ らゆる種類の個人,パー トナーシップ,会社,組合の全財産であ り, 1) Ame r i c a nI ns t i t ut eo fAc c o unt a nt s ,Ac c o unt i n g Te r mi no l o g y ,Ce nt ur yC 0 . ,

1 931 ,pp. 1 0‑l l .

(3)

コーラ‑の資産概念 61 債務の返済 に利用可能か またはそれに従属す る不動産。

しば しば法律上 は, とくに破産,管財お よび不動産管理 に限定 された意 味 をもち,債務の返済 に充当で きる資金 をさしている。

慣行上,繰延費用,株式発行割引料,前払費用お よびその他 の未決定項 目な ど,最終的に処分 される借方残高項 目は,た とえ表示価額が債務 の返 済に利用可能かまたはそれに従属す る実現可能価額 をまれにしか示 さない

として も,締切期 間の資産 として分類 される

貸借 を平均 させ るために 「 欠損金」 を資産合計 に含めることはそれほど 珍 しいことではない。 この実務慣行 は誤解 をまね くだけでな く,不正確で ある。欠損金 を示す前 に中間的な合計額 を示すべ きである。

「 資産」 とい う言葉 は, フランス語で 「 十分 な」 を意味す る " ass ez"

か ら派生 した ものであ り,本来,故人の債務 を返済す るのに十分 な財産 を 意味 した。

この定義では資産 と財産の区別が明確 に意識 されていない。その うえ,資産 は債務の返済 に利用 される点が強調 されている。 また,実務上 は株式発行割引 料や欠損金が資産に計上 されていたことがわか る。これ らは財産価値 をもたず, 将来的な有用性 のない ものである

したがって,それ らを資産 に計上す ること は適切でない。欠損金 については疑問のある実務であることが明確 に指摘 され ている

いずれに して も,『 会計用語』の資産概念 はあま り明瞭 とはいえない。

3 資産概念の内容

コーラ‑の資産概念 を考察す るさい, 『 会計学辞典』 の どの版 を中心 にす る かは重要 な点である

すでに述べた ように,初版か ら第 5 版 まではコーラ‑自 身が改訂 している

それに対 して,第 6 版 は彼の死後 に他人が改訂 を加 えた も のである

したがって,彼の最終的な考 えは第 5 版 に示 されてお り,それを中 心 にすえるのが適切である。

資産概念 は 5 つの内容か ら構成 されている。す なわち ,( 1) 資産の定義 ,( 2) 「 資

(4)

6 2 4 7 2・3

産」 と 「 財産」の区別 ,( 3) 資産の属性 ,( 4) 資産の評価 ,お よび ( 5) 資産の分類で ある

以下,それぞれについて順 に検討することにする

( 1) 資産の定義

資産 はつ ぎのように定義 されている。

「 所有 されている物理的な物体 ( 有形)または権利 ( 無形)で,所有主に とっ て 経済価値 のある もの ;会計 目的上,原価,減価償却後原価 ,あるいは,あ ま りないことであるが,その他何 らかの価値 によって,表示 された富の品 目ま たは源泉 ;したがって,将来の期 間に役立ちをもつ原価

2)

」( 下線 ‑ 引用者)

下線で示 した 「 所有主に とって」 とい うのは,第 4 版 までにはな く,第 5 版 で追加 された部分である。それは所有主の立場か ら価値判断が行われることを 意味す る

当然のこととはいえ,そのことを明示 した ものである。

同 じく下線で示 した 「 経済価値」 とい う表現 も,第 4 版 までは 「 貨幣価値」

となっていた。双方の違いが どこにあるかははっきりしないが,経済価値 の方 が抽象的で包括的な表現 といえよう

コーラ‑の定義では原価が強調 されている

取得原価主義会計 を前提 に して いることは明白である

前節で取 り上げた 『 会計用語』 における定義 と比較す るとき,債務の返済 に充当 される とい う点が除かれている

原価 による測定は 必ず しも債務 の返済 と結びつかないことを明 らかに した もの といえよう

AI A の用語委員会 は,その後,1 9 41 年 5 月 に発行 された会計研 究公報第 9 号 で資産の定義 を試みた

3)

。そ こでは 「 貸借対照表」,「 資産」お よび 「 負債」

の 3 つ をセ ッ トに して定義 を行 った。それ らは相互 に密接 な関係 をもつひ とつ のグループとみなされたわけである。それ らの定義 は若干修正 されたうえ,1 95 3 年 8 月公表の会計用語公報第 1 号 に引 き継がれた。同公報 における資産の定義

2) E.L Ko hl e r ,A Di c t i o na r yfo rAc c o unt a nt s

,

f if t he di t i o n,Pr e nt i c e ‑ Ha ll ,1 9 7 5 , p. 3 9 . 染谷恭次郎訳 『 コーラ‑会計学辞典』丸善,昭和4 8 年 ,41 ページ参照。

3) A I A,Ac c o unt i ngRe s e a r c hBul l e t i ns ,No . 8( S. A .Ze f fa ndM.Mo o ni t z ,ed. , So ur c e b o o ko nAc c o unt i n gPr i nc i pl e sa ndAudi t i n gPr oc e dur e s1917‑ 1953,Vo l .

Ⅰ , Ga r l a ndPubl i s hi ng,1 9 8 4 , p. 5 0 8 . ) .

(5)

コーラ‑の資産概念 6 3 はつ ぎの とお りである

「 会計の通則 または原則 に したがい会計帳簿 を締切 るときに生 じる借方残高, あるいは繰越が妥当 とされる借方残高によって示 される諸項 目であ り( ただ し, その借方残高が事実上負債 となるマイナス残高でない場合 に限る),財産権 ま たは取得価値,あるいは財産権 を生み出すか, もしくは将来適切 に利用 される 支出額 を表す諸項 目

したがって,有形固定資産,受取勘定,棚卸資産お よび 繰延勘定は,すべて貸借対照表分類上の資産になる

4)。」

コー ラ‑の定義 と AI A 用語委員会 の定義 とでは表現が まった く異 なる

し か し,内容的には類似 している。た とえば,原則 として支出額すなわち取得原 価 で評価 される点は同一であ り,繰延勘定の ように財産価値 をもたないけれ ど

も将来の収益 に貢献 しうる項 目を含めている点 も共通 している。要するに,コー ラ‑の定義 は当時の代表的な見解 ともいえる AI A の定義 と実質的に類似 して いると解 されるのである

( 2) 「 資産」 と 「 財産」の区別

コーラ‑は資産 と財産 をはっきり区別 しようと試みている

「 資産は ,( a) 何 らかの貸借対照表項 目を意味 し ,( b) 通常貸借対照表 目的のた めに認識 された原価 またはその一部 と関連 しているとい う点で,財産 と区別 さ れる。財産は, もっ と限定 された使い方 をされ,人々の問で移転で きる品 目, それを使用す る権利,お よび法の体系 によって保護 され,支配 される便益 を意 味す るのに使 われる

5)。」

資産 は貸借対照表上の概念であ り,主 として原価 で認識 される

それは会計 上の概念である

他方,財産は人 と人 との問で移転可能な物,その使用権お よ び法律上の便益 と理解 されている

それは資産 よ りも限定 された用法 をもつ用 語である。財産の適用範囲が資産 よりも狭い とい うことは,おそ らく,財産価

4) AI A , Commi t t eeonTer mi nol ogy , Acc ount i n gTe r mi no l o gyBul l e t i ns ,No. 1 , Re v i e u )andRe ' s ume ' ,A I A 1 9 5 3 ,p . 1 3 .

5) Z b i d . , p. 3 9 . 前掲訳書,41 ページ参照。

(6)

6 4 商 学 討 究 第47 巻 第 2・3 号

値のないものが資産に含 まれるという意味であろう

会計上の資産については,つ ぎのように具体的に説明されている

「 会計は,慣習的に,ある種の富 を資産 として認識 し,その他の ものを認識 しない。前者の典型的な例 として,現金,投資,他人に対する請求権 ( 受取債権), 原材料,貯蔵品,仕掛品または商製品,土地,建物,機械,工具お よびその他 工場資産,前払費用,買入のれん,特許権,お よび商標権がある。富の品 目は, た とえ現金化で きない もので も,勘定で認識 される資産 とな りうる。た とえば, 期待 される将来の活動に関する前払費用が これで,このような支出は,将来の 用役 または便益 とい う形態で回収で きるもの とみなされている。資産を記録す る金額は,通常は時価ではな く,む しろ原価 または次期以後 に公正 に配賦 され る原価部分である

6)。」

たとえ現金化できな くて も,会計上,資産 として認識することは可能である。

将来,用役 または便益 として回収で きるならば,それ もまた資産 として認識 さ れる

要するに,支出された原価 または次期以降に配分 される原価部分が重要 視 されるのである

会計上,資産 として認識 されない項 目として,つ ぎのような例があげ られて いる

「 慣習的に勘定で認識 されない資産は,一般 に無形の ものであるか,あるい は容易 にそれに配賦で きない原価か ら求め られている

たとえば,広告活動, 経営者の先見性,取引先 との関係,または技術陣の能力 などは,企業利益の最 も大切 な源泉 を構成 または創造 している

このような項 目は, しば しば広い意 味で資産 と呼ばれることもあるが,それ らの原価 は,たとえ確定で きる場合で

ち,慣習的には,会計帳簿お よび財務諸表では費用 として扱 われる 7 ) 。 」

ここであげ られている 4 つの具体例,すなわち広告活動,経営者の先見性, 取引先 との関係,お よび技術陣の能力 は,通常,のれん ( 営業権) を構成する ものである

それ らは将来の収益獲得 に貢献 しうる要素であるけれ どち,無形 6) ( b i d. ,pp. 3 9‑ 40. 同訳書 ,41 ページ参照。

7) Z b i d. ,p. 40. 同訳書 ,41 ページ参照。

(7)

コーラ‑の資産概念 6 5 であるうえ,将来の用役 または便益 との結びつ きが漠然 としている

そこで, 資産に計上で きるのは貫入のれんに限定 されているのである。

( 3) 資産の属性

会計上の資産 と経済学上の資産 とは異なる。 また,会計上の資産 と法律上の 所有権 とも異なる。それ らの点について,コーラ‑はつ ぎの ように述べている。

「 経済学では,資産は,しば しば資本 と同義語である。しか し,この場合 には, 自然人が所有する有用 な物質的なものだけが含め られ,他人 または他の組織体 に対する財産権や請求権は除かれている。資産に適用 される所有権の会計上の 意味は,通常は法律的な所有権であるが,次の ような例外 もある :すなわち占 有かつ使用 している財産における持分は,その持分の所有者にとって,資産 と 考 えられる。た とえば, 自動車を割賦基準で購入 した ときは,法律上の所有権

はある一定回数の支払いがなされるまでは移転 されないが,所有権 に伴 うすべ ての義務 と便益が存在するため,その 自動車 は購入者の資産 と考えられる

8)。」

経済学ではしば しば資産 と資本が混同される

流動資本や固定資本 といった 表現が経済学で使われるのに対 し, 会計学ではそのような表現は用い られない。

経済学では資本 を物 にそ くして把撞するのに対 し,会計学では資本は抽象的な 計算数値 を意味するにす ぎない。会計上の資産 と資本は明確 に区別 されている のである

資産の属性 として所有権があげ られることがある。この点について,コーラ‑

は所有権が必ず しも資産計上の条件でないことを指摘 している

すなわち,そ の資産に関するすべての義務 と便益が実質的に所有者に帰属す る場合,た とえ 所有権がな くて も資産に計上 されることになる。具体的には割賦購入 による自 動車の例があげ られている。なお,後述す るように,上記の引用部分 は 『 会計 学辞典』の第 6 版において全面的に削除されている。 コーラ一にとってはとも か く,改訂者にとってはこの部分が不必要 とみなされたようである。

8) I b i d.

,p

. 4 0 . 同訳書 ,41‑42 ページ参照。

(8)

6 6 第47巻 第 2・3 号

それでは所有権 に代 わる資産の属性 として, コーラ‑は何 を考 えていたので あろうか。

「 会計上認識 され る最 も重要な資産の特質は,おそ らく,所有者 に対す る資 産の有用性である

ある物体 または権利 は, もし,それが,誰 に対 してで もと いうのではな く,現在 の所有者 に対 して経済的に有利 な将来の用役 の源泉 であ るか,あるいはそ うした将来の用役 を取得するために使 われるのであれば,有 用であると考 えられる

た とえば,機械 は,将来それが遂行す る用役が所有者 にとって経済的に重要であれば,資産である

もし,その用役が所有者 に とっ て経済的に重要でなければ,その所有者の機械 は,下取価額 または処分価額以 上の価値 を持 たない

9)。」

所有権 ではな く有用性が資産の属性 を実質的に支配することになる

それ も 所有者 にとって有用か どうかが問題 とされる。所有者が異 なれば,同一の資産 で も有用性 は異 なる。経済的用役 を将来捷供 しうるとい うことが資産の属性 と

して決定的に重要 なのである

( 4) 資産の評価

資産の評価 に関 しては,固定資産,棚卸資産,市場性 ある有価証券,繰延費 相お よび前払費用が取 り上げ られている

まず,評価額の一般的な決定方法な

らびに固定資産の評価 について,つ ぎの ように述べている

「 資産 に付せ られる貨幣価額 は,多 くのコンベ ンシ ョンの適用 によって決定 され, しば しば 帳 簿 価 額, 未 償 却 原 価 ( una mo r t i z e dc o s t ) , 未 償 却 原 価 ( unde pr e c i a t e dc o s t ) と呼ばれる

減価償却 されない資産 ( た とえば,土地 や長期投資) は,慣習的に所有者 に対す る原価 で記録 され,報告 される。減価 償却 される資産 も,同 じように記録 されるが,資産の経済的有用性 の見積額が 減少す るのに応 じて,定期的に原価 の一部 を費用 に振替 える

10)。」

una mo r t i z e dc o s t は無形 固定資産 に対す る未償却原価 であ り, unde pr e c i ‑

9) ( b i d. , p. 4 0 . 同訳書,4 2 ページ参照。

1 0) Z b i d "p. 4 0 . 同訳書,4 2 ページ参照。

(9)

コー ラ‑の資産概念 67

a t e dc o s t は有形固定資産 に対す る未償却原価 を意味す る。非償却資産は取得 原価 で評価 され,償却資産は減価償却費 を控除 したのちの原価 で評価 される

減価償却費は経済的有用性の見積額の減少部分 として把握 されている

棚卸資産 と市場性ある有価証券はつ ぎの ように評価 される。

「 原材料,仕掛品,製品お よび商品の棚卸高は,慣習的に原価で記録 されるが, 取替原価が原価 よ りも低い場合 には,原価 よ り低 い価額が記録 されることもあ

る。市場性ある有価証券お よびその他の資産は,同 じような一般的取扱いを受 ける ;資産 によっては,その処分価額で評価 されることもある

11)。」

棚卸資産に低価法が適用 されることは明 らかである

しか し,市場性ある有 価証券 については,低価法が適用可能 なのか どうかはっ き りしない。「同 じよ

うな一般的取扱 いを受 ける」 とい う文言か らすれば,低価法が適用可能なよう である

だが,「 低価法 ( c o s to rma r ke t , whi c he ve ri sl o we r )

の説明のなか では棚卸資産 しか取 り上げ られてお らず,市場性 ある有価証券 には言及 してい ない

12)

。そ うなる と,市場性 あ る有価証券 に低価法 は適用 されない と解 され ることになろ う

繰延費用 と前払費用 についてはつ ぎの ように述べている。

「 将来の期 間に受ける用役 または便益 に関する原価 は 「 繰延費用」または 「 前 払費用」 とい う項 目で貸借対照表 に示すのがふつ うである

13)。」

上記の文言か らは繰延費用 と前払費用が同義語のような誤解 を与 えるか もし れない。しか し,実はそ うではない。繰延費用 は前払費用 よ りも広い概念である

とい うの も,「 繰延費用 ( de f e r r e dc ha r ge )

に属 す る内容 として,① 一般 的 な将来の便益,( 彰長期 の便益,( 参前払費用,お よび( 彰損失が区別 されてお り, 前払費用 は繰延費用の一項 日としてあげ られているか らである

.

( 丑については 創立費,( 参については研究開発費 と社債発行割引料,③ については前払保険料,

そ して④ につ いては火災損失等の例がそれぞれあげ られている

14)

。① と② が l l )I b i d .

,p.40.

同訳書

,42

ペー ジ参照。

1 2 )( b i d . , p. 1 4 4. 同訳書 ,1 4 7 ページ参照。

1 3 )( b i d .

,p

. 4 0 . 同訳書

,42

ペー ジ参照。

1 4 )I b i d . , pp . 1 5 7 ‑ 1 5 9 . 同訳書 ,1 6 0‑1 61 ページ参照。

(10)

6 8 商 学 討 究 第47 巻 第 2・3 号

わが国でいう繰延資産に該当するもの といえよう

なお,( 彰については会計士 の強い反対があるといわれている

いずれにしても,そ うした将来の用役 また は便益 は原価で評価 されることになる

( 5) 資産の分類

資産の分類 についてはつ ぎのように述べている。

「 貸借対照表では,資産は,流動,固定, または無形 に広 く分け られ,それ らの分類の中で,受取債権,棚卸資産,投資,有形固定資産,営業権,お よび 特許権 といった, もっと説明的な名称 によって分類 される

15)。」

ここでは流動 ・固定分類が採用 され,流動性配列法 を基本 にしているようで ある。なお,報告式の貸借対照表では,流動資産か ら流動負債 を控除 して運転 資本 を示す形式が一般的であるといわれている

16)

0

4 『 第 6 版』 における展開

再三述べているように, 『 会計学辞典』 の第 6 版はコーラ‑ 自身が改訂 した ものではな く,他の人によって改訂 された ものである

第 5 版 と第 6 版を比較 するとき,い くつかの差異がはっきりと見 られる

第 6 版では新 しい観点が取 り入れ られているといってよいであろう。もちろん, そのような観点はコーラ‑

の ものではない。 しか し, どのように修正 されたかを知ることは, コーラ‑自 身の考 えを理解するうえで参考になると思われる。

資産概念 に関 しては, 2 カ所が削除され, 2 カ所追加 されている。

第 1 の削除部分は 「 資産」 と 「 財産」の区別の ところである。 コーラ‑は双 方の明確 な区別 を強調 した。第 6 版ではその点はすでに常識化 した もの と判断

したようである

1 5 ) I b i d. ,pp. 4 0 ‑ 4 1 . 同訳書,4 2 ページ参照0

1 6 ) Z b i d. , pp. 5 3 ‑ 5 4. 同訳書,5 215 3 ページ参照。

(11)

コーラ‑の資産概念 69

第 2 の削 除部分 は資産 の属性 に関連す る ところであ る。経 済学上 の資産概念 に関す る説 明 と法 的所 有権 に関す る説 明が ともに省 略 されてい る。 いず れ も資 産 の属性 が所有者 に とっての有用性 にあ るこ とを説 明す る うえで,必要 ない と 判 断 されたためであ ろ う。

追加 されたのは どの ような内容 であ ろ うか。 いず れ も資産 の定義 と関連 す る 部分 であ り, ひ とつ はつ ぎの ような文言 であ る

「 歴 史 的原価 以外 の価額 が用 い られ る さい,付属 明細 表 または付 随的説 明が 慣行 的 に付加 され る

17)。」

コー ラ‑ は付 属 明細 表 また は付 随的説 明 につ いて まった く言及 しなか った。

その不足 を補 ったわけであ る

もうひ とつ は財務 会計基準 審議 会 ( FASB) に よる資産 の定義 を付加 した部 分 であ り, こち らは重要 な意味 を もってい る。 追加 された文言 はつ ぎの とお り であ る。

「 財務 会計基準審議会 は,資産 を,企業 に影響 を与 える過去 の取 引 また は事 象 の結果 として,あ る特 定 の実体 が取得 また は支配 しうる,発生 の可能性 の高 い将来 の経済 的便益 と定義 す る

18)。」

これ は最新 の定義 を参考 の ため に示 した もの とい え よう

FASB は, 「 財務 会計諸概 念 に関す るス テー トメ ン ト」 の第 3 号 ( 1 9 80 年 1 2 月) な らびにそ の改 訂版 であ る第 6 号 ( 19 85 年 1 2 月)におい て,財務 諸表 の構 成要素 を 1 0 個

19)

掲 げ,

1 7 ) W. W.Coo pera ndY. I j i r i , ed. , Ko hl e r' sDi c i i o nar yfo rAcc o unt ant s , s i xt hedi ‑ t i o n, Pr e nt i c e ‑ Ha l l ,1 9 8 3 ,p. 4 0

1 8) Z b i d . ,p. 40. 平松一夫 ・広瀬義州訳 『 FASB 財務会計の諸概念 ( 改訂新版) 』 中央 経済社,平成 6 年 ,2 9 7 ページ参照。

1 9 )1 0 個 の構成要素 とは,資産 ( As s et s ) ,負債 ( Li abi l i t i es ) ,持分 または純資産 ( Equi t yo rne ta s s e t s ) ,出資者による投資 ( Ⅰ nve s t me nt sbyo wne r s ) ,出資者 への分配 ( Di s t r i but i o nst oo wne r s ) ,包括的利益 ( Co mpr e hens i vei nc o me ) , 収益 ( Re venues ) ,費用 ( Expens es ) ,利得 ( Ga i ns ) お よび損失 ( Los s e s ) を

さしている。

Fi nanc i a lAc c ount i ngSt andar dsBoar d , St at e me nt so fFi nanci alAc count i n g

Co nc e pt s ,J o hnWi l e y & So ns ,1 9 9 5 , pp. 1 6 9 ‑ 1 7 0 . 平松一夫 ・広瀬義州,前掲訳書,

2 7 9‑2 8 1 ページ。

(12)

/

‑ 0 第47 第 2・3

それ らの定義 を示 した。上記の文言はそれ らのうち資産の定義を取 り入れた も のである

問題 はコーラ‑の定義 と FAS B の定義が内容的に調和するか どうかである

FAS B は資産 ・負債 アプローチ を採用 している といわれている

す なわち, 資産 と負債の概念 を最重要概念 として位置づ けているわけである

資産 ・負債 以外の 8 つの構成要素はすべて資産 と負債の定義か ら導びかれている。 さらに いえば,負債の定義は資産の定義に依拠 してお り,資産の逆定義 になっている ところか ら,このアプローチは 「 資産中心主義アプローチ」 ともいえるといわ れている

20)

。財務諸表の構成要素の出発点は資産におかれているのである

ところが, コーラ‑は必ず しもその ようなアプローチを採っているわけでは ない。む しろ,それ とは対立的な収益 ・費用 アプローチを採用 している

収益 と費用の対応 にもとづ く損益計算が第一義的に重視 されている。 しか ち,取得 原価主義会計が基盤 になっている

FAS B による資産の定義 は測定属性 と切 り離 されているといわれる

したがって,特定の測定属性 と結びついているわ けではない。 しか し,資産 ・負債 アプローチは時価主義 との結びつ きを強 く意 識 しているともいわれている

O

コーラ‑の定義 とは相容れない部分 をもってい るわけである

FAS B の定義 はた しかに簡潔で含 みのあるす ぐれた定義である といえるか もしれない。 しか し,取引 を極端 に重視するコーラ‑の考 えとはやは り調和 し ない面 をもっている。 『 第 6 版』 におけるこの部分の追加 は,辞典の利用者 に は便利であっても, コーラ‑の個性 を薄めて しまったように思われる。

5 むすび

最近, リース取引,年金取引,デリバティブ取引等のオンバ ランス化が問題

になっている

オ ンバ ランス化は資産概念に影響 を与 えることが必至だ といわ

20)広瀬義州著 『 会計基準論』 中央経済社,平成 7 年,1 50 ページ。

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コーラ‑の資産概念 7 1

れている。そ うなれば,資産概念の再検討 は避け られない状況 といえよう。そ

の さい, コーラ‑の資産概念は もはや時代遅れになっているのであろ うか。彼

の概念体系か ら学 びうるものは何 もないのであろうか。そのような点 について

は,財務諸表 を構成す る他の諸要素 との関係 をふ まえて改めて検討 したい と考

える。

参照

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