アンジェ大学春期フランス語語学留学報告
夛田 美有紀 キーワード:フランス語、語学留学
1.はじめに
アンジェ大学とは学術交流協定が平成25年7月に締結された。アンジェ 大学とさらなる交流を図るため、フランス語語学留学について話し合い、春 期に実施することになった。フランス語語学留学はすでに9月に4週間ブル ゴーニュ大学に派遣しているが、期間が合わない学生や高額のため行けない 学生がおり、協定校であるアンジェ大学での実施により、より多くの学生が 参加できると考えたためである。実施のための話し合いは言語センターの大 橋絵理教授とアンジェ大学付属フランス語学センター教員が中心となって行 われた。本稿では留学前、留学中、留学後に行ったことについて報告し、今 後の春期フランス語語学留学のあり方について考える。
2.夏期留学との違い
すでに実施している夏期語学留学は、協定校ではないブルゴーニュ大学に 日仏文化協会を通して派遣している。この語学留学はブルゴーニュ大学が行 っている語学研修に参加するという形を取っており、研修には各国からの留 学生が参加する。長崎大学から参加する学生は航空機の手配、授業料の振り 込みといった手続きの多くを自分で行っている。滞在先はホームステイか量 が選べる。ホームステイではフランス人家族と、寮では他の寮生との交流が 図れるようである。日仏文化協会を通して参加しているため、現地でのトラ ブルには24時間対応してもらえる。そのため、今まで教員の引率なしでも 大きな問題もなく参加できてきた。なお、この夏期留学に合格した学生はフ ランス語Ⅳとの読み替えができる。
一方、今回実施することになったアンジェ大学とは協定校である。アンジ ェ大学では夏期研修、春期研修を実施しておらず、協定校のみに対して、そ の協定校の学生のみのクラスを設けている。そのため、参加者が8~12名で あれば開講されるが、8名以下であれば実施できなくなる。フランス語クラ
スは同じ大学の学生ばかりであるが、滞在先は寮であるため、共同キッチン などでの交流が図れると考える。学生が同じ日に移動するため、旅行社に団 体で航空機などを手配してもらい、現地での対応は日仏文化協会に依頼した。
授業料のみ、学生が個人で大学に支払うことになった。なお、この春期留学 に合格した学生はフランス語Ⅲとの読み替えができる。
3.春期留学実施に向けた整備
まず、授業内容と滞在先の整備を行った。授業内容については、大橋教授 から現在の授業内容や学生のレベルを伝え、それに基づいて先方が作成して くれたようである。評価はフランス方式の80 点満点で先方がつけたものを こちらの100点満点に換算して読み替えのための成績を出すことにした。滞 在先は寮の提供を受けることになった。シャワーとトイレ付きの個室で、キ ッチンは共同である。人数決定後、寮に入れないという連絡が来たが、筆者 が長崎大学に交換留学生を受け入れる場合で寮が提供できない場合は長崎大 学が滞在先を紹介するシステムになっている旨を伝えると、先方から滞在先 の紹介があった。しかし、年明けに無事に全員寮に入れることになった。
次に、旅行社を通じた航空機などの手配の整備を行った。旅行社はすでに 別の言語の航空機などの手配を依頼しているところに依頼することにした。
見積もりの結果、福岡から韓国経由でフランスへ行くことになった。韓国で 一泊する必要があるが、空港からホテルまでの送迎とホテルから空港までの 見送り、さらに、韓国での食事にはミールカードをつけてくれたため、韓国 滞在は問題ないと判断した。パリからアンジェへの移動はTGVであるが、
二か月前にならないと発売されないため、後日手配となった。フランスに着 いた日とフランス出発の前日はパリに泊まる必要があるが、宿泊先は、アン ジェへ行くTGVが出る駅の近くのホテルを探してもらい、大橋教授が距離 や移動の便利さなどを考慮して選び、手配してもらった。
最後に危機管理の整備を行った。ブルゴーニュ大学での夏期留学は日仏文 化協会を通して申し込んでいるため、自動的に日仏文化協会が提供している 24時間サポートがつく。しかし、春期留学は日仏文化協会を通さない。長崎 大学が入っている保険と学生個人で入る保険で、ある程度はトラブルに対処 できるものの、教員の引率がつかないため、何かあった時に現地の人が対応 してくれる日仏文化協会のサポートがあれば安心である。そのため、日仏文 化協会に危機管理だけを依頼できるか問い合わせたところ、危機管理のサポ
ートだけでもお願いできるとのことで、依頼することにした。ただし、人数 で頭割りをするため、参加者が少なくなるほど、学生への負担が増える。
4.渡仏前
アンジェ大学や旅行社とのやり取りの結果、留学できる環境が整ったため、学 生向けに留学募集ガイダンスを行い、申し込みを受け付けたところ、17名が申し 込みをした。アンジェ大学が提示した条件には学生が8~12名とあったため、17 名でもいいか問い合わせたところ、17名でも受け入れると連絡が来たため、17 名で実施できることになった。参加者が決まった時点で旅行社によるガイダンス を行い、今後の手続きや入金方法についての説明をしてもらった。先方にも参加 者が決まった旨を伝えると、後日、インターネットによる申し込みの依頼があっ た。これは、一人ひとりが顔写真、名前、連絡先などを入力し、カードにより授 業料を支払う、というものであったが、顔写真のアップロードがうまくいかず、
結局大橋教授の研究室で、大橋教授の助けを得て一人ひとり申し込みを行った。
また、学生カードで授業料を支払おうとした学生は授業料が一か月の利用金額を 上回っていたためエラーとなり、カード会社に一か月だけ上限を上げてもらった り、親のカードで支払いを行ったりする必要があった。
年明けから二週間に一度、合計四回、大橋教授と筆者による留学前ガイダンス を実施した。このガイダンスでは、フランス語の日常会話やフランスでのマナー、
海外旅行の注意や危機管理などについて説明を行った。ガイダンスの一回目に班 を作り、それぞれの班のリーダーを決めて大橋教授との連絡係となってもらった。
また、滞在先である寮には調理道具がないため、各班で持って行くものや現地で 買うものを考えてもらった。一回目のガイダンスの後に食事会を行い、班員間、
あるいは参加者間の交流を図った。
春休み前に再度旅行社の方に来てもらい、出発までの流れや韓国やフランスで の出迎えなどについて説明してもらった。
留学申込みや学生の所属学部とのやり取りなどについては、国際教育機構リエ ゾン機構のフランス語留学担当者が窓口となった。また、学生一人ひとりとやり 取りするのは時間がかかるので、LACSのコミュニティを作ってもらった。
申し込みは17名が行ったが、その後、諸事情により、学生2名からキャンセ ルの連絡があり、15名が春期研修に参加することになった。15名が参加すると 決まった時点で日仏文化協会にサポートを頼むかどうかをアンケートで聞いた。
サポートを依頼すると、留学費用が3万程度高くなるが、サポートをつけると答 えた学生が多かったため、サポートをお願いすることにした。
5.出発から帰国まで
出発当日、集合場所である福岡空港へは旅行社の方が待っていてくれ、そ こでチケットを一人一人に渡すことになっていた。飛行機が出発する三時間 前を集合時間としており、帰省先から直接来ることになっていた学生が遅れ たが、出発二時間前には空港に到着した。また、預ける荷物が重量オーバー になった学生がいたが、旅行社の方が掛け合ってくれ、団体で合わせた重量 で通してもらった。ただ、この方式は韓国ではできないため、旅行社の方の アドバイスにより、韓国からは荷物に余裕がある学生のスーツケースに入れ させてもらうことにした。また、遅れてきた学生を待っている間に使ってい たスマホを置き忘れた学生がいたが、旅行社の方が気付いてくれ、空港職員 に頼んで、無事に本人に渡してもらった。見送りの後、一連の問題について は旅行社の方より大橋教授、国際教育リエゾン機構事務室、筆者に連絡があ った。また、その後韓国到着、出発、フランス・パリ到着、アンジェ到着の 後には同様に連絡が来た。
アンジェ到着の翌日から研修が始まった。初日はプログラム受講手続とオ リエンテーションが行われ、翌日から授業が行われた。授業は午前と午後に 行われたが、日によってはどちらかに課外活動が入ることがあった。課外活 動では、アンジェ城、市役所、ラファイエット市場、スレート博物館、コ ワントロー博物館、フォンテルヴロー大修道院、アルボルタン植物園、
ワイン博物館を訪問した。フォンテルヴロー大修道院だけは終日課外活 動が行われた。最終日の午後の授業は終了パーティーが行われた。
留学開始後二週目に大橋教授と筆者が訪問する機会があり、課外活動 と授業見学をさせてもらった。課外活動はラファイエット市場とスレー ト博物館の訪問であった。予定では別々の日に行う予定であったが、筆 者らの訪問に合わせ、同じ日に二か所を訪問する予定に変更してくれて いた。
市場では事前に市場ですること(値段を聞くなど)が課題として与え られており、課題をこなした後は、各自買い物をしていた。市場は店主 と話さなければ買い物ができないため、学生たちはほしいものを見つけ、
店主と話して買い物をしていた。
スレート博物館では、アンジェの産業であったスレート造りの最後の 職人によるスレート造りの過程を見学し、当時の模型などを見た。スレ ートを造りながらフランス語で説明されるのであるが、語彙も難しく、
フランス人に話すのと同じ速さであった。そのため、大橋教授が通訳に 入ってくれた。通訳なしで学生が職人の方の話を理解するのは難しかっ たと思うが、作業を見ながらなので、何をしているかはすべての言葉が 理解できなくても、何の作業かはある程度理解できたのではないかと思 う。
授業見学では、フランス人教員の指示がある程度理解できている様子 であったが、同じ大学から来ている日本人ばかりのクラスであるためか、
反応が全くないのが気になった。そのため、休憩時間にフランス人教員 がいなくなった時に、大橋教授からフランスでは何も発言しない人は馬 鹿だと思われることを伝え、さらに、せっかくフランスに来たのだから 何でも発言して、どんどん練習するようにと言ったところ、休憩後のク ラスは休憩前よりも発言が増えたようであった。
訪問の一週間前に怪我をした学生がいたので、様子を聞いたが、問題 なさそうであった。また、課外活動で日仏文化協会のスタッフの方と話 し、病院に連れて行ってくれた時の様子などを聞いた。ブルゴーニュ大 での夏期研修の時は日仏文化協会のスタッフの方には生活面のサポート をしてもらったことしかなかったが、今回、図らずも万が一病院に行く ことになっても手厚くサポートしてもらえることがわかった。また、訪 問前日にスマホを置き忘れた学生がいたのだが、それを誰にも伝えてい なかったため、大橋教授から教員に伝えてもらった。学生の出入りが激 しい場所なので、見つからないだろうと言われたが、やはり見つからな かった。
帰国は、アンジェからパリまでは学生たちで行き、パリから空港まで の送迎と空港での見送り、韓国での出迎えと見送りは旅行社のスタッフ が行ってくれ、終了時に連絡をもらった。
6.帰国後
帰国し、授業が始まってから、学生を集めて留学の様子を聞き、5 月に行 う一年生を対象にした留学報告会の準備をしてもらった。旅行社から聞いて いたトラブルや訪問時に聞いたトラブル以外にも問題に遭遇したようであっ たが、大きなトラブルには巻き込まれなかったようである。
5 月には次回アンジェに行こうと思っている、あるいはフランス留学に興 味がある学生を対象に留学報告会を開いた。留学報告会では留学期間中楽し んだことやフランス語能力が上がったことについて、写真を見せながら話し
てもらった。
7.おわりに
春期留学の実施が決まるのにもかなりの時間と労力を要したが、実施が決 まってからも、寮の手配ができないと連絡が来るなど、実施が危ぶまれる事 態が何度かあった。しかし、そのたびにアンジェ大学、大橋教授、国際教育 リエゾン機構事務室、旅行社、筆者といった関係者が連絡を取り合って、な んとか実施が実現した。参加者も留学実施に必要な最低人数を大きくクリア する 15 名となった。次回以降は、旅程は今回のものを踏襲することで、今 回のような労力は軽減されると思われる部分が多い。また、今回は日仏文化 協会のサポートをつけるかどうかをアンケートで聞いたが、次回からは、安 全性を考えて、アンケートをせずに日仏文化協会のサポートがついた形で留 学費用を提示することにした。
次回の課題としては二点あげられる。
一点目は大半が団体行動であるため、日本にいるときと同じだと錯覚して しまうことへの注意喚起である。荷物の重量オーバーや貴重品の置き忘れ等 はブルゴーニュ大学への派遣の時にはなかった問題である。渡航前に注意を 呼びかけてはいたが、さらに意識させられるような方法を考えたい。トラブ ルに巻き込まれそうになった情報については今までの学生から聞いたものを 伝えていたが、今回の学生からの情報も入れて、今後の危機管理の説明の時 に提示し、トラブルへの心構えをさせたい。
二点目は授業態度である。授業見学の際、日本での授業と同じ態度であま り発話しておらず、全体として静かな授業であったため、留学の機会が生か されていないと思われた。筆者らが訪問した後、少しは活発な授業になった かもしれないが、次回の渡航前オリエンテーションでは、授業への参加のし かたについても触れ、日本での授業とは違うこと、留学の機会を生かして積 極的に発話するように言う必要がある。
また、変えなければならないことが何点かあることがわかった。一つ目は 国際学生証である。今まで国際学生証を発行しておくと便利だと伝えていた が、短期滞在の学生はあまり利用できないと今回の学生から聞いたので、こ の項目は削除することにした。二つ目はクレジットカードである。クレジッ トカードを持っていない学生が毎回いるので、カードを発行する際にフラン スでも使えるカード会社のカードを指定し、すでに持っている学生でもその カード会社のを持っていなければその会社のものを発行するように伝えてい
た。しかし、今回授業料の支払いに使った際に、一か月の使用限度枠を超え たことによる混乱が生じたため、授業料支払いのためのカードと、現地で使 うカードの説明を加えることにした。さらに、参加人数が多かったため、情 報の漏れがないよう、班に分けたのだが、分ける際、同じ班で料理をするこ とを想定して、男子学生を一班に一人程度入れていた。しかし、現地での様 子を見ると、班で行動しているのは女子学生だけで、男子学生は男子学生だ けで行動をしていたため、今後の班分けは男女別にした方がいいように思わ れた。
アンジェ大学への留学希望者も増えてほしいのであるが、ブルゴーニュ大 学での夏期留学への参加者が減らないか、気がかりである。このアンジェ春 期留学が始まるまではブルゴーニュ夏期研修への参加者が10名程度いたが、
今回は2名であった。理想は両留学ともに参加者が増えることであるが、留 学費用がかかるため、学生がどちらかに参加するかを考えた場合は、協定校 で、比較的安く行けるアンジェ大学を選ぶことが予想される。そのため、ブ ルゴーニュ大学での夏期留学についての広報の内容を再吟味する必要があろ う。一人でも多くの学生にどちらかの留学に参加してもらいたいと考えてい る。
(国際教育リエゾン機構 准教授)