第1章 日本の経済成長と産業構造
萩原 弘子
1. はじめに
日本経済は、1991 年にバブルが崩壊して以来、20 年以上にわたって 停滞してきた。この「失われた 20 年」と呼ばれる長期停滞がなぜ生じ たのかを明らかにすることは、今後の日本経済の針路を考えるうえで 重要な課題となっている。
本章では、この日本経済の停滞を長期的視野でとらえ、1970 年以降 のデータを用いて、成長会計の枠組みにより供給面から分析する。ま た、マクロ経済の成長会計分析だけでなく、経済を構成する産業レベ ルでの成長会計分析を行い、経済成長に対する構造的要因を考察する。
産業レベルでの成長あるいは停滞の要因を分析し、また産業構造の変 化を考慮することにより、日本経済全体の成長と停滞に関する理解を より深めることができる1。
以下では、次のように議論を進める。まず 2 節において、マクロ経 済の成長会計分析を行う。次に 3 節では、産業レベルの成長会計分析 を行う。そして 4 節では産業レベルの成長要因および産業構造とマク ロの経済成長の関係について検討する。4 節で結論を述べる。
2. 日本経済の成長会計分析
本節では、成長会計分析により供給サイドから日本経済全体(マク ロ)の成長の変動と長期停滞の要因を考察する。まず、本稿で用いる 分析の枠組みとデータについて述べ、次に、マクロ経済の成長会計分 析を行う。
1 部門別の成長会計分析によって経済全体(マクロ)の経済成長を理解しようとする 方法は、広く共有されている。代表的な研究として、深尾・宮川(2008)がある。
(1)分析の枠組およびデータ
規模に関して収穫不変の生産関数を仮定する。
Y T f ( K , L )
(1)ここで、Y は付加価値、K は資本ストック、L は労働投入量、T は技術 水準である。生産要素市場が完全競争的であると仮定して均衡条件を 用いると、Y の成長率は、以下のように、生産要素(資本 K と労働 L)
の変化の貢献と全要素生産性(TFP)の上昇率に分解することができる。
T T L
L pY wL K
K pY rK Y
Y
(2)
(2)式の右辺第 1 項および第 2 項の生産要素の成長率にかかっているの は、それぞれ資本分配率と労働分配率である。また、第 3 項は全要素 生産性(TFP)上昇率であり、Y の成長率から資本の成長の貢献度と、
労働の成長の貢献度を引いた残差として求められる。
以上の枠組みを用いて成長会計分析を行うにあたり、我々は、国民 経済計算 SNA のデータを用いる。(2)式の付加価値 Y として、SNA の産 業活動(政府サービス生産および対家計民間非営利サービス生産を除 く)の集計量を用いる。SNA 体系における第 3 次部門には、政府サービ ス生産者と対家計非営利サービス生産も含まれているが、我々の分析 においてはこれらの活動を除く。電気・ガス・水道は、民間部門がサ ービス提供している場合は第 3 次産業に算入し、政府が供給する場合 には産業部門から除外している2。
資本は、民間企業資本ストック(出所:内閣府経済社会総合研究所)、 労働は就業者数および雇用者数(出所:国民経済計算年報)を用いた。
また、すべての数値はデフレーターを算定して実質化している。
2 政府部門および対家計非営利団体の生産するサービスの多くは市場で取引されな いため、正確に数量を把握するのが難しいため。
(2)産業全体の成長会計分析
SNA に基づき、産業部門全体の成長会計分析を行った結果を、第 1.1 図に示した3。 まず産業部門全体の付加価値の成長率をみると、1971-80 年、1981-90 年の成長率の平均は、それぞれ 4.71%、4.21%と中程度の 値であったが、1991 年のバブル崩壊以降、1991-2000 年の平均成長率 は 0.97%、2001-2011 年の成長率の平均は 0.45%と大きく低下している。
これに寄与したのは(2)式右辺のどの項目であるかをみてみよう4。 労働の成長の貢献度は、第 1 次石油危機の影響を受けて 1974 年には マイナスであるが、1971-80 年、1981-90 年の成長率の平均はそれぞれ 0.43%、0.62%とプラスの貢献をしている。しかし、1998 年以降マイナ スの貢献度を示す年があり、1991 年から 2000 年までの貢献度の平均は 0.05%と低下し、2001 年から 2011 年平均は-0.15%とマイナスになって いる。このような変動はあるが、労働の成長の貢献度の絶対値は小さ い。
資本蓄積の貢献度は、1971-80 年、1981-90 年の成長率の平均はそれ ぞれ 2.92%、2.23%、1991-2000 年平均は 1,44%、2001-2011 年平均は 0.46%
となっている。高度成長後の日本経済において資本蓄積は一貫してプ ラスの貢献をしているが、バブル崩壊後は大幅に低下している。
全要素生産性(TFP)の上昇率は、GDP 成長率がマイナスになった 1974 年、1998 年、2009 年において大きなマイナスの貢献をしていることが 第 1.1 図からわかる。TFP の成長率は、1971-1990 年において平均 1.36%
であったが、1991-2000 年は平均-0.52%、2001-2011 年は平均 0.14%と 低下している。
以上のことからわかるように、高度経済成長期以降の日本の経済成 長は、「安定成長期」の 1971-1990 年は資本蓄積と TFP の上昇が GDP の
成長に大きくプラスの貢献をしていたが、バブルが崩壊した 1991 年以
3 図では、(2)式の各項の推移が示されているが、GDP 成長率の項目は、SNA の産業部 門(政府サービス生産者および対家計民間非営利サービス生産者を除く)の付加価値 合計の成長率である。
4 高度成長の終焉期である 1971 年からバブル崩壊前の 1990 年までを、「安定成長期」
と呼ぶ。ただし、この期間には、1986 年から 1990 年までのバブル期を含んでいる。
第 1.1 図 全産業の成長率の要因分解
注: 図中の GDP 成長率は、SNA の産業部門(政府サービス生産者および対家計民間非 営利サービス生産者を除く)の付加価値合計の成長率である。
出所:国民経済計算各年データより筆者算出。
降は様相が異なり、この 2 つの要因が低下したことが経済全体の成長 率を低下させている。
より詳細に見ると、1981-90 年の GDP 成長率の平均 4.21%から 1991-2000 年の 0.97%への 3.24 ポイントの低下は、TFP の上昇率の大幅 な低下が、また、1991-2000 の平均成長率 0.97%から 2001-2011 年の 0.45%への 0.52 ポイントの低下は、資本蓄積の貢献度の低下が、最大 の要因となっている5。
5 1990 年代の「失われた 10 年」における日本の経済停滞の要因を成長会計により分析 した代表的な先行研究として、Hayashi and Prescott(2002)がある。彼らは、90 年代 における生産人口一人当たり GDP の成長率低下の最大の要因が TFP 成長率の低下であ るという、われわれと同様の結果を得ている。
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
労働の貢献 資本の貢献 TFP GDP成長率
3. 産業別の成長会計分析
本節では、産業レベルでの成長会計分析を行う。産業を 1 次、2 次、
3 次に大分類して、各産業における付加価値の成長率を、(2)式に従い 生産要素の変化要因と全要素生産性(TFP)の上昇率に分解する。
なお、本稿では、SNA に従い、第 1 次産業は農林水産業、第 2 次産業 は鉱業、製造業、建設業、第 3 次産業は電気・ガス・水道、卸・小売 業、金融・保険業、不動産業、運輸・通信業、サービス業を含んでい る。ただし、前節で説明したように、政府サービス生産者および対家 計民間非営利サービス生産者の生産活動は除外している。
(1)第 1 次産業の成長会計分析
第 1.2 図は、第 1 次産業の付加価値の成長率を要因分解したものを 示している。第 1 次産業の付加価値の成長率は、非常に変動が大きい が、1971-80 年、1981-90 年、1991-2000 年、2001-11 年の各期間の成 長率の平均はそれぞれ、-0.06%、1.31%、-1.14%、-1.41%、となってお り、1991 年以降はマイナス成長を強めている。
労働の成長の貢献度は、1971-90 年、1991-2000 年、2001-11 年のい ずれの期間の平均もマイナスであり変動は非常に小さい。資本の貢献 度は、1971-80 年、1981-90 年、1991-2000 年の各期間の平均はそれぞ れ 5.20%、2.21%、1.01%と低下しており、2001-11 年の平均値はマイナ スに転じている。
全要素生産性(TFP)の成長率は、1971-90 年の期間の平均が-1.72%
であったが、バブル崩壊後は、1991-2000 年の成長率の平均が-0.6%、
2001-11 年平均が-0.43%とわずかながら上昇している。
以上のことから、第 1 次産業の付加価値の成長率のバブル崩壊以降 の低下は、資本蓄積の貢献度の低下によって生じていることがわかる。
資本蓄積の寄与度は低下し、2001-2011 年においてはマイナスにまで落 ち込んでいる。それに加えて、1981-90 の期間においては、TFP 上昇率 の低下が、この時期の付加価値成長率の低下に貢献した。
第 1.2 図 第 1 次産業の成長率の要因分解
出所:国民経済計算各年データより筆者算出。
(2)第2次産業の成長会計分析
次に、第 2 次産業の成長会計分析を行う。第 1.3 図は、第 2 次産業の 付加価値の成長(図中の GDP 成長率)の要因を分解したものを示して いる。第 2 次産業の付加価値の成長率は、バブル崩壊までの 1971-1990 年の「安定成長期」の平均をとると 3.92%と中程度の値であった。しか し、バブル崩壊後の 1991-2000 年においては-0.61%まで落ち込み、
2001-11 年においてはプラス成長に持ち直したものの、0.34%という低 水準である。
こうした第 2 次産業の成長率の大きな変化は何によってもたらされ たのであろうか。1971-90 年の「安定成長期」における労働投入の成長 の貢献度の平均値はプラスではあるが 0.5%と大きいものではない。こ の時期の第 2 次産業に大きく貢献したのは、資本の増加と TFP 成長で ある。1971-90 年の期間における資本の成長の貢献度の平均値は 1.73%、
-20%
-15%
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
20%
労働の貢献 資本の貢献 TFP GDP成長率
TFP 成長率の平均値は 1.69%であり、この期間の第 2 次産業の GDP 成長 率(平均値 3,92%)の大部分を説明する。
しかし、バブル崩壊後の「失われた 10 年」とよばれる 1991-2000 年 の期間においては、資本蓄積の貢献度の年平均値が安定成長期より低 下しているものの 0.89%であるのに対して、労働の貢献度の平均が -0.90%、TFP の上昇率の平均が-0.59%へと大きく低下したことが、第 2 次産業の GDP 成長率がマイナスになったことに貢献している。
続く 2001-11 年の期間においては、労働の貢献度が-1.32%へと 0.42 ポイント低下し、資本蓄積の貢献度も 0.58 ポイント低下したにもかか わらず、TFP の成長率が 1.36%へと 1.95 ポイント上昇したことから、
第 2 次産業の GDP 成長率は 0.34%とプラスに転じている。
このように、第 2 次産業については、バブル崩壊後の GDP 成長率の 低下は、基調として労働成長および資本蓄積の低下の影響があるが、
バブル崩壊後の最初の 10 年(「失われた 10 年」)とその後の約 10 年の
第 1.3 図 第 2 次産業の成長率の要因分解
出所:国民経済計算各年データより筆者算出。
-20%
-15%
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
20%
労働の貢献 資本の貢献 TFP GDP成長率
経済の状況が異なることからもわかるように、TFP 成長率の動きがこの 部門の経済成長率を左右している。
(3)第3次産業の成長会計分析
最後に、第 3 次産業の成長会計分析を行う。第 1.4 図は、第 3 次産業 の付加価値の成長(図中の GDP 成長率)の要因を分解したものを示し ている。第 3 次産業の付加価値成長率の、1971-1990 年の「安定成長期」
の期間における平均値は、すでにみた第 1 次産業、第 2 次産業よりも はるかに高い 5.06%である。バブル崩壊後も全産業の中で最も高い成長 部門であることは変わらず、1991-2000 年、2001-11 年の各期間の成長 率の平均は、それぞれ 1.88%,0.60%とプラス成長を維持しているものの、
その値は「安定成長期」と比べ大きく低下している。
この第 3 次産業の付加価値成長への各要因の貢献度をみると、全期 間を通じて資本成長の貢献度が最も高い。次に貢献度が高いのは労働 成長の貢献度である。特に、1971-90 年の「安定成長期」におけるこの 部門の高い成長率(平均 5.06%)は、この二つの生産要素成長のプラス の貢献によってもたらされたものである。他方で、1971-90 年における TFP 成長率は平均値でプラスであるが、0.39%と小さい。この時期の第 3 次産業の成長率を 100%としたときその 92.3%が要素投入の増加の貢献 により説明できる。
バブル崩壊後、各要因の貢献度の変化に着目すると、1981-90 年から
「失われた 10 年」である 1991-2000 年にかけて、資本蓄積の貢献度は 3.21%から 2.02%へと 1.19 ポイント、TFP 成長率の平均は、0.13%から -0.99%へと 1.12 ポイントそれぞれ低下しているのに対し、労働成長の 貢献度は、0.33 ポイント低下しただけである。「失われた 10 年」にお ける第 3 次産業の成長率の低下は、資本蓄積と TFP 成長率低下の影響 が大きいことがわかる。
また、1991-2000 年から 2001-11 年にかけては、TFP 成長率は上昇し たのに対して、資本蓄積の貢献度が 1.37 ポイント低下、労働の成長の 貢献度は 0.45 ポイント低下している。この期間における第 3 次産業の
第 1.4 図 第 3 次産業の成長率の要因分解
出所:国民経済計算各年データより筆者算出。
成長率の低下は、資本蓄積の貢献度の低下を主たる要因としているこ とがわかる。
4. 産業構造と経済成長
ここまで、産業全体の成長会計分析と産業別成長会計分析を行って きた。本節では、この両者の関係を明らかにし、個別産業レベルにお ける成長要因が産業全体の付加価値の成長率に及ぼす影響を考察する。
(1)個別産業とマクロ経済成長の関係(分析の枠組み)
第 2 節でみたように、マクロ(全産業)の経済成長を供給面から要 因分解すると、(2)式のように資本の成長(資本蓄積)の寄与度、労働 の成長の寄与度および全要素生産性(TFP)の成長率に分解できる。同 様に、第 3 節でみたように、個別の産業レベルにおける成長会計分析
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010
労働の貢献 資本の貢献 TFP GDP成長率
ができる。ここでは、両者を結びつけ、産業別の成長会計分析を用い てマクロの経済成長率の変化を分析する枠組みを示す。
産業を第1次、第 2 次、第 3 次に分類すると、産業全体の付加価値 の成長率は、各産業の付加価値の成長率を産業シェアでウエイト付け した加重平均に等しい。これを、(3)式のように表すことができる。
3 3 3 2
2 2 1
1 1
Y Y Y Y Y
Y Y Y Y
Y Y Y Y
Y
(3)ただし、ここでは、産業部門(政府サービス生産および対家計民間非 営利サービス生産を除いたもの)の付加価値の成長率を分析対象とし ているため、産業のシェアとして各産業の付加価値の全産業の付加価 値に占めるシェアを用いている6。
産業別の成長会計を考慮すると、(3)式は、次のように書ける。
ii i
i i i
i i i
i i i
i i i
i
T T L
L Y p
L w K
K Y p
K r Y Y Y
Y 3
1
(4)
ここで、i は産業部門(第 1 次、第 2 次、第 3 次産業)を表す。(4)式 の右辺を、成長要因ごとにまとめると、(5)式のように変形できる。
i i i
i i
i i i
i i i
i i
i i i
i i i
i
T T Y Y L
L Y p
L w Y Y K
K Y p
K r Y Y Y
Y
3
1 3
1 3
1
(5)
6 ここで用いるシェアに関連するものとしてドマー・ウェイトがある。これは Domar(1961)が提唱し、Hulten(1978)がDivisia指数を用いて定式化したものである が、ドマー・ウェイトは、産業全体の基準価格表示の付加価値合計に対する各部門の 基準価格表示の付加価値と中間投入額の合計である生産額であり、その合計は1より も大きい。われわれは、各産業と全産業の基準価格表示の付加価値合計の比率をウエ イトとして用いており、その合計は1に等しくなる。
(5)式の右辺の各項は、各産業の成長に対する各要因(資本蓄積、労 働投入の増加、TFP)の貢献度を産業シェアでウエイト付けした加重平 均値である。各要因に関する加重平均値は、全産業(マクロ)の成長 会計分析により得られる成長に対する各要因の貢献度とは一致しない。
しかし、(5)式から明らかなように、加重平均値の合計は、産業全体(マ クロ)の成長率と一致する。
以下では、(5)式の右辺の各項にあたる各産業における各要因の貢献 度の加重平均値に対して、各産業がどのように寄与しているかを分析 する。
(2)各要素の貢献度の加重平均値と各産業
各産業の成長に寄与する各要因(労働増加、資本蓄積、TFP)の産業 シェアでウエイト付けした貢献度とそれらの合計値(各産業の貢献度 の加重平均値)を算出して第 1.1 表で示した。バブル崩壊前の「安定 成長期」(1971-90 年)の平均値とバブル崩壊後の「失われた 20 年」
(1971-2011 年)の平均値を取り上げて、「失われた 20 年」における成 長率の低下の原因を考えよう。
各要因の貢献の加重平均値は、3 つの要因すべてについて「失われた 20 年」において低下している。3 つの要因の加重平均の合計はマクロ の実質付加価値の成長率に等しいので、これは「失われた 20 年」にお けるマクロの成長率が低下していることを示している。要因の貢献度 の加重平均値の中で最も低下が大きいのは、資本の貢献度の加重平均 値であり、1971-90 年から 1991-2011 年にかけて、その平均値が 1.71 ポイント低下している。
次に、低下した 3 つの要因の各加重平均値に、各産業がどれだけ寄 与しているかをみよう。労働の増加の貢献については、第 2 次産業に おけるウエイト付けした寄与度の低下が最も大きい(0.52 ポイント低 下)。資本蓄積の貢献については、第 3 次産業のウエイト付けした寄与 度の低下が最も大きい(1.12 ポイント低下)。TFP 上昇率の加重平均値 の低下については、第 3 次産業におけるウエイト付けした寄与度の低
第 1.1 表 ウエイト付けした貢献度と産業
(1)労働のウエイト付けした貢献度
期間 一次産業 二次産業 三次産業 合計 (a)
1971-80 -0.06% 0.15% 0.83% 0.92%
1981-90 -0.03% 0.22% 0.72% 0.91%
1991-00 -0.03% -0.28% 0.54% 0.23%
2001-11 -0.01% -0.39% 0.28% -0.13%
1971-90 -0.05% 0.18% 0.78% 0.91%
1991-11 -0.02% -0.34% 0.40% 0.04%
(2) 資本蓄積のウエイト付けした貢献度
期間 一次産業 二次産業 三次産業 合計 (b)
1971-80 0.22% 0.81% 1.97% 3.00%
1981-90 0.06% 0.51% 1.98% 2.55%
1991-00 0.02% 0.30% 1.31% 1.63%
2001-11 0.00% 0.09% 0.45% 0.54%
1971-90 0.14% 0.66% 1.98% 2.77%
1991-11 0.01% 0.19% 0.86% 1.06%
(3) ウエイト付けした TFP 成長率
期間 一次産業 二次産業 三次産業 合計 (c) (a)+(b)+(c) 1971-80 -0.15% 0.58% 0.37% 0.80% 4.71%
1981-90 0.01% 0.66% 0.09% 0.75% 4.21%
1991-00 -0.02% -0.22% -0.64% -0.89% 0.97%
2001-11 -0.01% 0.35% -0.30% 0.04% 0.45%
1971-90 -0.07% 0.62% 0.23% 0.78% 4.46%
1991-11 -0.02% 0.08% -0.47% -0.40% 0.70%
出所:第 1.1 図と同じ。
下が最も大きい(0.7 ポイント低下)。
第 3 節で、「失われた 20 年」における各産業の成長率の低下の要因 分解を行った際は、各産業における付加価値成長率低下の主たる要因 を抽出したが、ここでは、マクロの成長に対する寄与度を見るために 産業の付加価値シェアでウエイト付けした寄与度をみている。したが って、産業のシェアの変化により寄与度は影響を受ける。
第 1 次産業は産業のシェアが、1971-80 年平均の 3.89%から 2001-11 年平均の 1,47%まで一貫して低下しており1%台の低水準にある為、マ クロの成長率への寄与度は低い。また、第 2 次産業は 1971-80 年平均 の 38.94%から 2001-11 年平均の 29.25%に低下しており、同期間に、
57.16%から 69.28%にシェアが上昇した第 3 次産業に比べて、寄与度が 小さくなる。そのため、TFP 成長率の低下は、産業の付加価値シェアを 乗じなかった場合と寄与度が入れ替わっている。産業シェアを考慮し ない場合には、第 2 次産業における TFP 成長率の低下が最も当該産業 の成長率の低下に寄与している。しかし、産業のシェアでウエイトを 付けると第 3 次産業の寄与度の低下が最も大きくなる。
5. おわりに
本稿では、バブル崩壊以降の日本経済の長期停滞がなぜ生じたのか を明らかにすることを目的として、日本の高度成長終焉期以降 1970 年 から 2011 年までのデータを用いて、供給サイドから経済成長の規定要 因を分析した。データは国民経済計算 SNA の産業部門の付加価値を用 い、基準年価格で実質化した。
分析は、3 段階で進めた。最初に、産業全体(マクロ)の成長会計分 析を行い、次に、各産業(第 1 次、第 2 次、第 3 次産業)の成長会計 分析を行い、最後に、個別産業の成長会計とマクロの経済成長の関係 を分析した。
主な結論を以下に述べる。
1.産業全体(マクロ)の成長率はバブル崩壊後、大幅に低下してい
たが、その主要な要因は、資本蓄積の貢献度の低下および全要素 生産性 TFP 上昇率の低下である。
2.産業レベルでは、第 1 次産業はバブル崩壊以前もマイナス成長で あったが、バブル崩壊後それがマイナス方向に加速しており、そ の主たる要因は、資本蓄積の貢献度の大幅な低下である。
第 2 次産業は「安定成長期」の成長率の平均 3.9%から、「失われ た 10 年」の成長率の平均-0.61%にまで低下したが、その後の 10 年の平均成長率はプラスに転じている。「失われた 10 年」のマイ ナス成長は、3 つの要因のいずれもが低下することにより生じてい るが、特にそれに貢献したのは TFP 成長率の低下である。また、
2001-11 年における第 2 次産業の成長率の上昇に貢献したのは、唯 一 TFP 成長率の上昇である。第 2 次産業の成長において決定的な 影響を及ぼしているのが TFP である。
第 3 次産業は、他の産業と比較すると高い成長率であるが、や はりバブル崩壊以降大幅に低下している。それにもっとも貢献し たのは、資本蓄積の貢献度の低下である。
3.産業全体(マクロ)の成長率は、各産業の成長会計分析における 各要因の貢献度を産業シェアでウエイト付けした加重平均値の合 計に等しい。各要因の貢献の加重平均値は、3 つの要因すべてにつ いて「失われた 20 年」において低下している。その中で最も低下 が大きいのは、資本蓄積の貢献度の加重平均値である。次に TFP 成長率の低下が続く。
4.産業シェアの影響を受けて、資本蓄積のウエイト付けした寄与度 は第 3 次産業において最も低下が大きい。TFP 成長率のウエイト 付けした寄与度も、同じく第 3 次産業において最も大きく低下し ている。他方、第 2 次産業は、労働投入のウエイト付けした貢献 度の低下が、3 つの産業の中で最も大きい。第 2 次産業が最も雇用 吸収力を失っていることがわかる。
以上、われわれは「失われた 20 年」におけるマクロ経済成長(産業
の付加価値の成長率)の停滞の原因を、産業レベルの成長会計および 産業構造の分析によって明らかにした。本稿は長期的視点に立ち供給 面からの分析であったが、経済成長の規定要因として需要面はより重 要であり、供給面にも影響を及ぼす。需要面からの分析は稿を改めて 論じる。
参考文献
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