教師と子どもの人間関係の自由記述法による分析(1)
一中学生の場合を中心に一
櫛田 眞澄*・中島 奈緒美**
(1994年10月12日受理)
Analysis of the Answers to the Relation of Teachers and Students by Openended Questions
−The Cases of Junior High School Students一
Masumi KusH【DA and Naomi NAKAsHIMA (Received October 12, 1994)
は じ め に
今日学校の荒廃が問題視され,学校の人間化への努力が切に求められている。千石保ほか(1992)
は,「国際的に見ても日本の中学生の教師への信頼感は希薄である」としたが,教師と子どもの人間 関係の問題は,現在では社会的にも大きな関心事となっている。
教師と子どもの人間関係の善し悪しは,教師側から見れば,教師の学習指導上の技能を十分発揮 できるかどうかの前提条件であり,生徒側から見れば,教師との人間関係は性格形成にも影響が及 ぶ重大事項である。特に,本年5月の「児童の権利条約」の発効に伴い,わが国においては学校現場 における教育方法上の変革が求められるようになった。以上のことからも学習成立の基礎的条件と しての教師と子どもの人間関係は,種々の意味において今日的課題であり,見過ごすことのできな い問題状況として,改善への手だてが求められている。
しかしながら教師と子どもの人間関係は岸田元実(1988)の指摘のように,イメージであり,感 情構造であって,測定は非常に困難であるため,研究対象となりにくい。従ってこれに関する研究 はそれほど多くはない。わが国における教師と子どもの人間関係の調査は,総理府青少年本部(1979)
による調査,内閣総理大臣官房広報室(1982)による調査,または日本青少年研究所(1985)によ る調査,加藤隆勝ほか(1984)による調査などがあるが,いずれも量的な処理のたtoに,選択肢法
(3件法あるいは5件法など),または評定尺度法でなされている。
一方において現実的には,子どもたちの教師に対する感情は複雑で変化に富み,選択肢によって 回答する方法や,「明るい一暗い」「やさしい一厳しい」というような設定項目に関する評定尺度で
*茨城大学教育学部家政教育講座(〒310 茨城県水戸市文京2−1−1).
**鳥取県米子市立東山中学校(〒683 鳥取県米子市車尾617).
は表現されることができない部分を多く含むものである。本調査では,選択肢法やスケール法では 汲み取ることのできない,調査対象者である中学生の細かな感情的ニュアンスを抽出することを第 1の意図とした。その方法として自由記述によって書かれた調査資料から分析を試み,その結果を考 察することにより,現場状況改善の資料とすることを目的とした。次報では,高等学校の場合につ いて報告する予定である。
方 法
1)調査対象
中学校1〜3年生264名(男子138,女子126)
2)調査方法 自由記述法
3)調査期間 1994年2月
4)資料収集の方法および分析の手続き
〈資料収集の方法〉
(a)このテーマに関する一連の継続研究において,櫛田・豊田(1994)は大学生を対象として自由 記述法による調査を実施した。その際記述された文章を,まずプラスのイメージとマイナスのイ メージとに2分し,更にそれらをKJ法を利用して分類した。その結果, rA;人間関係に関する因子」,
rB;勉強や学習に関する因子(教え方に関する因子)」, rC;性格に関する因子」, rD;感情に関す る因子」の四因子を抽出した。
今回の中学校の生徒を対象とする実情調査では,上記の四因子の中のrD;感情に関する因子」に 注目し,プラスイメージ「好き」およびマイナスイメージ「嫌い」を軸とする自由記述法により資 料を収集した。即ち,これらの資料は「好きな先生のイメージを自由に書いてください」,「嫌いな 先生のイメージを自由に書いてください」と指示し得られたものである。
(b)上記の質問に関する文章が自由記述法によって記載された後,「あなたの性格や行動の特性は次 のどれに当りますか」とし,{①積極的②消極的},{①楽天的②内省的},{①勉強好き②勉強嫌い},
{①運動好き②運動嫌い},{①奉仕好き②奉仕嫌い}の5つのカテゴリーについて生徒自身の自己判 断により,①あるいは②の記号を選択し記入してもらった。なお,「どちらとも言えない」や「わか
らない」の場合は,それぞれにつき記号③を選択し,記入してもらった。この自己判断による記入 事項は,(a)の資料との関連において,分析のための資料とした。
〈資料分析の手続き〉
(a)自由記述による資料をKJ法によって分析,集計した結果,大学生対象の調査では出現しなかっ た因子として,「容姿・容貌」に関するものが出現した。これをrE;容姿に関する因子」とした。次 に,各カテゴリーにおいて,それぞれの項目を出現頻度の高い順に並べ,各カテゴリーごとにそれ を百分率で示した。更に,プラスイメージ出現頻度総数あるいはマイナスイメージ出現頻度総数に 対する,各因子間の割合を算出し,それらを表で示した。
表1中学生のイメージとしての好きな先生・嫌いな先生
好きな先生のイメージ 嫌いな先生のイ メ ー ジ
因子 項 目 頻度 % 項 目 頻度 %
1.話が合い友達の如く付き合える Q.生徒を理解してくれる R.公平に扱う
S.叱るべきときは叱る T.相談にのってくれる U.頼りがいがある V.あまり怒らずやさしい 浮サの他
71 U1 S2 R0 Q8 Q7 Q3 P04
18.4 P5.8 P0.9 V.7 V.3 V.0 U.0 Q6.9
1.差別する Q.すぐ怒る
R.意地悪や嫌味を言う
S.威張ったり,意見を押しつける T.いやらしい
U.口うるさく,話が長い V.暴力を振るう W.その他
122 P18 U8 U7 S9 S5 R4 P58
18.4 P7.8
Pα3
P0.1 V.5 U.8 T.3 Q38
386 100 662 100
L解りやすく上手に教える Q.楽しくおもしろい授業 R,雑談をしてくれる
S.字がきれいで板書が見やすい T.努力していて誠実さがある U.質問に答えてくれる Vその他
62 T7 P0
V7743
32.1 Q9.5 T.2 R.6 R.6 R.6 P1.4
1.機嫌によって授業が変わる Q.マニュアル通りでつまらない授業 R.集中的に指名する
S.解りにくく下手な授業 T.時間を守らず授業をのばす U.字,板書が汚く,間違える V.その他
35 R3 R0 Q0 P6 P6 S0
18.4 P7.4 P5.8 P0.5 U.4 W.4 Q1.1
193 100 190 100
1.やさしい
Q.面白くユーモァがある R.明るい
S.楽しい T.けじめがある
≠サの他
92 V4 T0 R0 P2 W1
27.2 Q1.8 P4.8 W.8 R.5 Q3.9
1.暗い Q.短気 R真面目すぎる S.しつっこい T.面白くない U.その他
23 P7 P3 P1 P1 S
29.1 Q1.6 P6.5 P3.9 P3.9 T.0
339 100 79 100
D
1.格好いい Q.顔がいい
$エ潔
S.若い
T.スポーツマン的
U.7.その他
17 P7 P4
W734
17.5 P7.5 P4.4 W.3 V.2
R5.1
1.不潔,汚い
Q.臭い(口臭,化粧,タバコ)
R,若くない S.いつも同じ服装 T.気持ちが悪い
U.髪など身なりを整えない V.その他
26 P8
X88840
22.2 P5.5 V.7 U.8 U.8 U.8 R4.2
97 100 117 100
好きなイメージの総数 1015 49.2 嫌いなイメージの総数 1048 50.8
(調査対象 中学校生徒264人 自由記述法1994年)
表2小学生のイメージとしての好きな先生・嫌いな先生
好きな先生のイメ 一 ジ 嫌いな先生のイ メ ー ジ
因子 項 目 頻度 % 項 目 頻度 % 1.怒ってもガミガミいわない 74 26.7 1.すぐ怒る 129 231
A 2一緒に遊んでくれる 48 17.3 2.差別(ひいき)をする 73 13.4 人 3.運動を一緒にしてくれる 30 10.8 3.いやみをグチグチしつこい 73 13.4
4.子供の気持ちを解ってくれる 29 1α5 4.いじわるや八つ当たりにする 31 5.7 間 5.相談にのってくれる 20 7.2 5.暴力を振るう 26 4.7
6.差別(ひいき)をしない 17 10.5 6.子供を理解できない 20 3.6
関 7.その他 59 21.3 7その他 197 36.2
係 277 100 546 100
B 1.宿題が少ない 69 31.4 1.宿題が多い 54 37.5
2.授業が楽しい 33 15.0 2.授業を伸ばす 35 24.3
勉 3.いろいろなことを話してくれる 33 15.0 3.字が汚い(読みにくい) 27 18.7
強 4.解りやすく授業を進める 25 11.4 4.退屈な授業をする 10 6.9
● 5.字がきれい 24 10.9 5.授業を勝手に一人で進める 9 6.3
学 6.その他 36 16.4 6。その他 9 6.3
習 55 100 144 100
C 1.やさしい 149 33.2 1.暗い 78 26.7
2おもしろい 84 18.7 2.不潔な性格 45 15.4
3.楽しい 48 10.7 3.真面目すぎる 42 14.4
4.冗談がうまい 39 8.9 4.怖い 41 14.0
性 5.明るい 36 8.7 5.しつっこい 39 13.4
6.清潔 28 6.2 6.元気がない 16 5.5
7.その他 65 14.5 7.その他 101 34.7
格 449 100 292 100
D
E 1,顔がいい 17 20.2 1.臭い(化粧口臭) 21 33.3
2.若い 16 18.8 2.格好悪い 10 15.9
容 3.格好いい ll 12.9 3.若くない 10 15.9
4.その他 41 48.1 4.その他 22 34.9
姿
85 100 63 100
好きなイメージの総数 866 45.7 嫌いなイメージの総数 1045 54.3
(調査対象 小学校5,6年生229人 自由記述法1993豊田)
(b)自由記述法によって書かれた文中に出現した教師を表現する一つの語(形容詞,動詞など)は,
どのような特性を持った生徒によって書かれたものかを調べた。例えば教師との人間関係をプラス イメージとして捉える者は,一般的傾向として,どのような特性を持った生徒たちの集合であるか を調査することにした。
そのためには,まずKJ法によってグルーピングされた〈人間関係に関する語の集合〉をプラスイ メージとマイナスイメージに2分し,生徒自身の自己診断による性格の特性に関するカテゴリー2つ,
行動の特性に関するカテゴリー3つ,合計5つのカテゴリーとの関連性を調べた。
同様な方法によって,〈学習・勉強に関する語の集合〉,〈性格に関する語の集合〉,〈容姿に関する 語の集合〉をそれぞれプラスイメージとマイナスイメージに2分し,上記の5つのカテゴリーとの関 連を調査した。なお,性格や行動を明確に自己判断できない生徒の回答③は除外して集計し,それ ぞれのカテゴリー内の割合を百分率で表した。
結果 と 考察
1.中学生のイメージとしての「好きな先生」と「嫌いな先生」
(1)実情調査の結果とその傾向
現実的,日常的に教師と向かい合っている中学生たちから生きた教師像を求めるために,中学生 を対象に自由記述方式で書いてもらった資料を,KJ法で分析した。その集計結果が表1である。な お,中学校の結果を小学校の児童と比較するため,櫛田・豊田(1994)の論文中に掲載した表を再 掲載することにする。
中学時代においては,生徒自身が成長の過渡期にあることから,教師側の要因ばかりではなく,生 徒個人の要因によっても教師に対するイメージは振幅が大きいものである。しかし分析によって,一 般的イメージの傾向を把握することができた。
①好きな先生のイメージ
「人間関係」では,教師対生徒という堅苦しい関係を越えて,リラックスした友達のような付き合 いを求めている。話が合い,友達のようにつき合える先生,公平で生徒を理解してくれる先生が好 きである。また叱るべきときには叱る先生が好かれているが,叱られる理由が明白で納得が行くも のなら,教師への信頼感が増すものと思われる。「学習」面(教え方)では解りやすく,上手に教え ること,楽しく面白い授業を好んでいる。教師の「性格」ではやさしく,おもしろくユーモアがあ り,明るい先生に人気があり,これらの項目の合計は,「性格に関する因子」全体の65%を越えて いる。「容姿」については格好が良く,顔のいい清潔な先生が好きである。
②嫌いな先生のイメージ
「人間関係」では差別されたり,すぐ怒られたり,意地悪や嫌味をいわれたり,意見を押しつけた りされることをマイナスイメージとして表現している。また「「学習」関係では,その日によって授 業が変わったり,マニュアル通りのつまらない授業や,集中的指名が嫌がられている。「性格」とし
ては暗く,短気で,しっこい性格を嫌っているが,好きな教師像に比べてばらつきが大きい。「容姿」
についても不潔であったり,口臭,化粧品の匂いやタバコの匂いに対して,彼らの厳しい目が伺える。
●発達段階として最も難しい段階にある中学生であるが,表1に示すように全回答総数に対して,好 きなイメージは49.2%,嫌いなイメージは50.8%の出現率となり,嫌いなイメージがやや高いもの の,共に約半数を占めている。これは同時に教師への期待や願望が満たされない場合が半数あるこ とを示し,自分の期待する教師像と現実の教師像のギッヤプに,失望する場合があることを示して
いる。
一般的にこのようなイメージ調査では,「嫌いな先生のイメージ」を尋ねる事は現場への遠慮もあ り,また調査すること自体が困難な場合が多いために,「好きな先生のイメージ」のみを調査し,そ の反対のイメージを推測することに留まる場合が多い。しかし本調査では,敢えてその部分に迫る ために,自由記述によって,「嫌いなイメージ」をも調査したことに特徴がある。表1および表2の ように,出現した「嫌いなイメージ」の項目の内容からは現場状況の厳しさを推測することができ る。また同時にそれらの項目から,教師自身が気がつかずに行っている行為があまりにも多いこと に注目する必要がある。
次に,「人間関係の因子」と「性格に関する因子」は,教師に対する「好き」,「嫌い」が決定され る時の大きな要因と思われる。数字の上では嫌いなイメージの中の「性格に関する因子」の数は少 数であるが,全体として見るとき,「人間関係の因子」と「性格の因子」の合計は,好きな教師イメー ジの出現数725,嫌いな教師イメージの出現数741という頻度となり,それぞれは総数の71.6%お よび70.7%を占めていることからもこの因子の重要性が理解できる。
例えば「勉強・学習の因子」に関してみるとき,教師の人間性が背後にある。授業が面白いのは,
その教師が好きであり,好きな教師であるからその授業が楽しいと感じる結果となる。
(2)調査および分析担当者の感想
生徒たちは,同じ目の高さでの付き合いを求めている反面,教師なのだから生徒の言うことにい ちいち目くじらを立てずに,大目に見てほしいと思っている。また,教師に求めるリーダー性への 期待は大きく,一方で人間対人間の付き合いを求めているように思われる。しかし,生徒たちは教
師も生徒と同じ感情を持った人間であるということは,あまり理解していない。
教師の人間的な魅力は授業に大きく影響が及ぶと同時に,人間関係がうまくいっている教師の授 業には好意的である。また「努力していて誠実である先生」が好きだと答えていることは,経験の 少ない若い教師にとっては心強いことである。「楽しく面白い授業」については,授業が成立しなく ても,自分たちさえ楽しければ良いというような,わがままな考え方も見られる。本当に意味深く,
面白い授業というものを体験的に知らせなければならないが,教師側の力量が問われているところ
である。
またスタイルが良い教師は人気が高いが,付き合いが少ない場合は,やっかみ半分で,「自分が格 好いいと思っている」とか「おしゃれのしすぎ」というような批判をする場合がある。更に,人間 関係がうまくいかなくなると,今まであまり気にしていなかったことまでも,嫌いになる傾向が見 られた。また,一方において学級担任と教科担任とでは生徒たちの付き合い方が異なるように感じ
られた。
全体として,生徒たちは教師をかなり確かな目で見ていると実感した。この調査を実施して,分 析したことにより,自分を振り返ることができたことは,大変有益であった。しかし,嫌な面も突 きつけられるので,精神的に相当辛かった。中学校の生徒たちが確かな批判力を持っていることが
解ったので,それ等の批判は率直に受け止め,自分を成長させるように,この経験がよく働くよう に努力していきたいと思った。
(3)出現頻度全体に対する因子別割合
プラスイメージ出現総数に対する,各因子別の割合を計算し,マイナスイメージについても同様 に各因子の割合を算出した。その結果,プラスのイメージでは,1位「A人間関係に関する因子」は 38.1%,2位「C性格に関する因子」は33.5%であった。
マイナスのイメージでは,1位rA人間関係に関する因子」63.2%,2位「勉強・学習に関する因 子」18.1%である。中学生の教師との「人間関係の因子」において,マイナスイメージが63.2%と なっていることには,注目する必要がある。
また,小学生では最低順位であった「勉強・学習に関する因子」がマイナスイメージにおいて2位 に上昇していることに注意するべきである。櫛田(1994)は大学生を対象として,自分の過去にお ける教師との関係の調査を考察したが,ここでは学校段階が上昇するに従い,「勉強・学習に関する 因子(教え方の因子)」は生徒たちの関心事となり,問題視される傾向が明確に示されていた。
(4)小学校児童と中学校生徒の因子別割合の比較
表3は,小学校の児童の因子別割合と,中学校生徒の場合を重ね合わせて作成したものである。各 因子のプラスのイメージとマイナスのイメージに関して,小学生と中学生との間に差があるかどう かについて,x2検定を実施してみたが,有意な差は認められなかった。このことは,小学生と中学 生は同じ傾向を示していると把握できる。ただし小学校の調査対象児童は高学年についてであるこ
とを明記しておく。
表3小学生と中学生の教師イメージ因子別比較
イメージ因子 対象 プラスイメージ(好き) マイナスイメージ(嫌い) κ2検定
小学生 32.0 52.3
A.人 間 関 係 NS
中学生 38.1 63.2
小学生 6.4 13.8
B.勉強 ・学習 NS
中学生 19.0 18.1
小学生 51.8 27.9
C.性 格
中学生 33.5 7.5 NS
D.感 情
小学生 9.8 6.0
E.容姿 ・容貌
中学生 9.4 11.2 NS
小学生 100%
iN=866)
100%
iN=1045)
合 計
中学生 100%
iN=1015)
100%
iN=1048)
2.中学生の性格・行動の特性と「教師との人間関係」
(1)中学生の特性と「人間関係因子」との関連
中学生の特性と「教師との人間関係因子」に注目し,分析を行った。中学生の性格・行動の特性 は自己判断による特性を基準とした。即ち,あなたは「積極的な性格ですか,それとも消極的な性 格ですか」,「勉強が好きですか,それとも勉強が嫌いですか」など分析カテゴリーに従って,5つの 質問をしたが,自己を明確に把握しているもののみについて分析した。既に記したように,「どちら
とも言えない」とか,「わからない」という解答は集計からは除外した。なお除外された解答は1年 生に多くあったことを記しておきたい。
分析のカテゴリーとしては,①積極的性格と消極的性格②楽天的性格と内省的性格,③勉強好 きと勉強嫌い,④体育好きと体育嫌い,⑤奉仕好きと奉仕嫌い,の5カテゴリーとした。その分析結 果を表したものが図1である。
次に教師との「人間関係の因子」について,プラスイメージとマイナスイメージでは,各カテゴ リー間で差があるかどうかをみるため,x2検定を実施した。その結果を図の中に記したが,この図 1で注目するべきことは,「勉強が好きか,勉強が嫌いか」は,教師との「人間関係」をプラスと見 るか,マイナスと見るかに関係が深いという点である。要するに,勉強が好きな場合は教師との人 間関係がうまくいき,勉強が嫌いな場合は人間関係がうまくいかないということである。また,生 徒の「性格が積極的か消極的か」は,教師との「人間関係」に関連がないことを示している。
プラスのイメージ 〈人問関係の因子〉 マイナスのイメージ
(好 き) (嫌 い)
N=386 N=662
100 0
(性格・行動)
0 100
}鱒
開管 :
塁 晶 一 1
拝 圭 ①積 極 的 … .1 i]聡
圭
1 二 F n=254 F 1
三 消 極 的 ;: :: :: :
懸 鐡 1 ②楽 天 的 窒 彗
囲
i]・
内 省 的 1 ,
n=319:1 1
n=480 F
; 1 塁 ③勉強好き
1 1 1 :
き 勉強嫌い 寓 1]欄
縫 1 塁
尋 1鍍難
l n=259 P :
n=528
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F :
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垂 護 よ ④体育好き 委
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1_轟 体育嫌い : :
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1 i・毒1 奉仕嫌い 議晋 蕪 : :1 :
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一 1 :
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図1中学生の個人的特性と「人間関係因子」の関連
プラスのイメージ 〈勉強・学習の因子〉 マイナスのイメージ
(好 き)
N=193 (嫌 い)
N=190
100 0
(性格・ 行動)
0 100
: 1 、 ◎ 乳
①積 極 的 1 ・ 1 :
l l l 1 { ・ : l l
i]橋
: l l ; 1
消 極 的 1 : l l
: l l 戟@ ; : F l l
:ln=118
P 圏
:n=1281 : :1 ; : :
l l l i 難 ②楽 天 的 1羅蕪蕪翻 1
: 1 : 1 i]・圏
: l l : 1 戟@ l l 戟@ l l 戟@ l l 戟@ l l
i 乳
戟@r150
Fii
内 省
B勉強好き
的
騨ii
1::::]・l l i l 勉強嫌い 彗 l l l
:l l l 戟@ l :
n=132:1 :
n犀1441 1 1
@1 : l l l l ④体育好き l l l l 1一 l l l
l l 戟@ l 戟@n=165 P 1
体育嫌い : 1 ; 1: l l :
ト65iii
肇 1 ⑤奉仕好き 繍 i : 1 1一
: 1 暫 { l l : ・」・
1 麗 奉仕嫌い l l :
罵 瓦 占_ 穿
iii ln電1931 幽 興・9iii
図2中学生の個人的特性と「勉強・学習因子」の関連
プラスのイメージ 〈性格の因子〉 マイナスのイメージ
(好 き)
Na339 (嫌 い)N=79
IOO
h
「
(性格・行動)
0
①積 極 的 消 極 的
②楽 天 的 内 省 的
③勉強好き 勉強嫌い
④体育好き 体育嫌い
⑤奉仕好き 奉仕嫌い
0
錨58
=
華
0
=6 n
}
−…、・纒
『
a ・ 1 羅ト…臨
l l し z ÷ , r さ
門輔「
図3中学生の個人的特性と「教師の性格因子」の関連
oo
NS
△
NS
卜…1
]・
なお,△印は危険率を大きくとれば「有意差あり」となることを示す。
(2)生徒の特性と「勉強・学習の因子(教え方の因子)」の関連
上記と同様な方法によって,「勉強・学習の因子(教え方の因子)」と5つのカテゴリーの関連を調 べ,図2にまとめた。検定の結果,「楽天的な性格か,内省的な性格か」によって,教師の教え方を プラスと見るかマイナスと見るかに関係が深いことが理解される。すなわち,「内省的な性格」の生 徒の方が,教師の教え方に対して,好意的に見ていると言えるであろう。このことは,表面的に面 白い授業と,内容の深い真に面白い授業とについて,受け取る側の性格や成熟度に関係が深いこと を示唆しているように思われる。換言すれば1年生と3年生とでは,教育方法上の工夫が必要である のかもしれないと推測できる。
なお,生徒の性格が「積極的か,消極的か」,あるいは「体育が好きか,嫌いか」は,「勉強・学 習の因子(教師の教え方の因子)」と関連がないことが示された。
(3)生徒の特性と「教師の性格に関する因子」の関連
同様な方法によって,「教師の性格に関する因子」を5つのカテゴリーで分析したが,その結果は 図3に示す通りである。X2検定の結果「体育が好きか,嫌いか」のカテゴリーに於いて,有意な差
プラスのイメージ 〈容姿の因子〉 マイナスのイメージ
(好き)N.97 卜藷い)
100 0
,
,
{
(性格・行動)
極極 的的
①積消
的的 楽内 天省
②
③勉強好き 勉強嫌い
④体育好き 体育嫌い
⑤奉仕好き 奉仕嫌い
0
に姥
1
100
1*P,。.。25 」
△
」
NS
]
]*P…01
△
]
図4中学生の個人的特性と「教師の容姿因子」の関連
が認められた。即ち「体育が嫌い」な生徒が,教師の性格をプラスに評価する傾向があることが分 かった。なお,生徒の性格が「積極的か,消極的か」,および行動面の特性として「勉強が好きか,
嫌いか」のカテゴリーは,「教師の性格因子」と無関係であることが示された。
(4)生徒の特性と「容姿の因子」の関連
上記と同様に「教師の容姿に関する因子」を5つのカテゴリーで分析した。その結果を図4に示し た。x2の検定を実施したが生徒の性格が「積極的か,消極的か」および「体育が好きか,嫌いか」の カテゴリーにおいては,有意な差が認められた。すなわち,「積極的な性格」の生徒および「体育が 好き」な生徒は,共に教師の容姿をプラスにイメージする傾向があることが理解できた。「勉強が好
きか,嫌いか」は,「教師の容姿因子」と関係がなかった。
●イメージ調査によって表された教師に対するプラスイメージとマイナスイメージは,生徒たちの 過去から現在までの自己経験の投影である。この調査で明らかになったことは,教師と子どもの人 間関係構造の一部にすぎないが,教師に対するイメージと中学生の特性の関係をまとめてみると,次 のようになった。但し,これらは生徒の性格や行動の特性を軸として分析してみた結果である。
① 勉強の好きな生徒の方が教師との人間関係をプラスのイメージで捉える。(勉強の嫌いな生徒は マイナスのイメージとして捉える)
②内省的な性格の生徒の方が教師の教え方をプラスのイメージで捉える。(楽天的な生徒は教師の 教え方をマイナスのイメージとして捉える)
③ 体育の嫌いな生徒の方が教師の性格をプラスのイメージとして捉える。(体育が好きな生徒は教 師の性格をマイナスのイメージとして捉える)
④ 積極的な性格の生徒の方が,教師の容姿をプラスのイメージとして捉える。(消極的な性格の生 徒は,教師の容姿をマイナスのイメージとして捉える)
⑤体育が好きな生徒の方が,教師の容姿をプラスのイメージとして捉える。(体育が嫌いな生徒は 教師の容姿をマイナスのイメージとして捉える)
ま と め
本年(1994)5月に発行となった児童の権利条約は,子どもをどのように理解するか,子どもの 立場をどのように受け止めるかについて,子ども観の変革を余儀なくするものであり,教育の方法 上にも改革を求めている。この意味において,教師と子どもの人間関係の構造を明らかにする事は,
これからの教育全体に関わる基礎的な資料になるものと考える。
現在一般的になされている教師と子どもの人間関係に関する調査は,教育基礎情報調査会(1986)
の諸調査にみられるように,「好きな先生のイメージ」として表される願望や期待から,その正反対 のマイナスイメージとしての教師像を探ろうとするものであるが,本調査では,自由記述法によっ て,「嫌いなイメージ」をも併せて調査し,マイナスの構造を明確にしたことが特徴である。また,
教師と子どもの関係構造をプラス構造とマイナス構造の両面から捉えることができたのは,「各因子 間の関係」の検討が可能であったばかりでなく,「生徒の個人的特性と人間関係に関わる各因子」と の関連まで考察を可能したという点で有効であった。
本調査で明らかとなったことは,教師と子供間の複雑な人間関係構造のほんの一部分である。し かし,この調査による全体的結論の第一は,すべての生徒たちが教師とのよい人間関係を強く求め ていること,第二として教師が無意識のうちに為している多くの教師行動の中に,生徒たちが悩ん だり,苦労している部分がある事実,第三に生徒側の特性により教師との関係性が異なる点である。
子どもの期待や願望には身勝手なことも多く,不当な要求もあることは事実である。しかし教師 側は子どもの期待や願望を無視するわけにはゆかない。それは学習面や生活面をはじめとし,子ど
もの学校生活全体に対する適応,不適応に関わる重要な要素と考えられるからである。そして,日 常的に教育実践に励む教師にとって,子どもとの人間関係の如何はすべての教育活動における要の はずである。しかしながら,この事実に気づかない教師が多いのが現状である。換言すれば,学習 の時間は学校生活の大部分を占めているにもかかわらず,前述の教育基礎情報調査から推測できる ように,小学校におけるよりも中学生および高等学校では,人間関係づくりやその保持は教科外活 動の場,つまり学級活動や学校行事,クラブ活動などの場でなされるべきという受け止められ方が 一般的である。そのために「教える人」と「学ぶ人」との間の人間関係の重要さは,あまり意識さ れていないように思われる。
特に,調査結果の一つとして,生徒自身が「勉強が好き」か「勉強が嫌い」かによって,教師と の人間関係をプラスのイメージとして受け止めるか,マイナスのイメージとして受け止めるかに影 響が及んでいることは,生徒たちの学校生活では非常に重大事項と考える。この件について,J,E.ブ
ロフィ(1985)は,次のように指摘している。
「教師の生徒に対する態度や学級での行動を変化(改善)されるための方略については,これまで あまり研究が行われておらず,多くのことが解っていない。しかしながら,教師が自分の教室での 行動パターンに気づいていないことは重要である。教師行動が,学力の高い生徒と学力の低い生徒 に対する処遇が異なってくるのは何故か。それは教師が,学力の低い生徒に関心を持たないという よりも,むしろ学力の高い生徒との接触を楽しむことから生じる。学力の高い生徒との接触は,報 酬的であり,微妙に教師行動を条件づけ,強化するものと考えられる。それに対して,学力の低い 生徒たちには,低い結果しか期待できず,彼らの失敗にどのように対処して良いのか解らないため に,彼らを避けたり,放棄してしまう場合がある。このように,学力の低い生徒と好意的に相互作 用をするのを妨げる種々の障害(動機のレベル,能力のレベル,受け身的な態度,自信の無い態度 反応の遅さなど)があり,大部分の不適切な教師行動は,教師が自分の行動パターンや,それに変 わるべき行動の仕方に気づいていないことから生じている。なぜ気づかないかの理由として①教室 の生活が極めて早いスピードで進行していること②自分の学級行動を理解するための概念的なカテ ゴリーを持っていないこと」を挙げている。
J.E.ブロフィらの指摘は,日本における現場状況の改善ならびに教員養成トレーニングなどに対し て示唆が大きい。「勉強が嫌い」であるとか,「学力が低い」などの理由によって,教師との人間関 係が妨げられることのないよう,教師行動のパターンを認識するための教師トレーニングの場の設 定が必要となる。また教科担任制の中学校においては,教科の授業をするだけではなく,教科の授 業のなかで人間関係づくりに努める必要がある。それには教科の内容や教材を通して,対話の時と 場を如何に多く設定するが課題となってくる。
以上の2つのことが,現在の学校の人間化にとって,最も重要事項と考えられる。
引 用 文 献
(1)J.E.ブロフィ, T.L.グッド著,浜名,蘭,天根共訳1990. r教師と生徒の人間関係』北大路書房pp.419 −433.
(2)加藤隆勝編1984.r思春期の人間関係』大日本図書pp.67 −104,(児童青年心理研究会「現代青少年の 人間関係」1981伊藤忠記念財団調査研究所報告を基にして書かれたもの)
(3)岸田元実1988.r教師と子どもの人間関係』教育開発研究所pp.175−224.
(4)櫛田真澄・豊田康代1994.「教育学部大学生のイメージに見る教師像」r茨城大学教育学部紀要(教育 科学)』43号,pp.95−106.
(5)櫛田真澄1994.r教育学から見る家庭科』家政教育社pp.151−173.
(6)教育基礎情報調査会1986.『教育アンケート収録年鑑第3巻』主婦の科学社pp.54−59.
(7)内閣総理大臣官房広報室1982.世論調査『子どもの意識に関する報告書』大蔵省印刷局pp.20−22,27 −29.
(8)日本青少年研究所1985.r中学生の日米比較調査』(ニュースレター9号), pp.1−14
(9)千石保ほか1992.『日本の中学生』日本放送出版協会pp.125−135.
(10)総理府青少年対策本部1979.r国際比較日本の子どもと母親一国際児童年記念調査中間報告一』大蔵 省印刷局pp.57,60−61,