茨城大学教育学部紀要(教育科学)38号(1989)75−89 75
SD法による体育の楽しさの因子構造
野田洋平*・樫村いずみ**・吉沼 充**
(1988年9月12日受理)
AFactor Structure of Enjoyable Physical Education by Means of the SD Method
Yohei NoDA, Izumi KAsHIMuRA and Mitsuru YosHINuMA (Received September 12,1988)
は じ め に
昭和53年に改訂された「小学校指導書一体育編」1)では,その目標に「……運動に親しませると ともに,……楽しく明るい生活を営む態度を育てる」と示し,「運動に親しませる」とは,適切な 運動の経験を通して児童に運動の楽しさを十分に味わわせ……,「楽しく明るい生活を営む態度を育 てる」とは,運動領域,保健の領域及び学校の教育活動全体を通じて行なう体育に関する指導を通 して,運動の仕方を身につけるとともに運動の楽しさを体得し……と述べている。そして,学年の 目標構成の中に(1)として,運動の楽しさを体得すること……を位置づけ,運動領域構成を低学年で 基本の運動とゲーム(4年まで),3年から特定の運動種目を加えて(六つの領域)内容構成をし ている。その中で「……何よりも運動の楽しさ・喜びを理解させることが重要である」とし,子ど
もの立場からの体育を目指している。
松田2)は,「楽しさ」は個人で経験される感濤であり,同じ経験をしても人によって楽しいと感 ずる人もいるし,そうでない人もいるとしながらも,一般的に,楽しいと感じ,喜びを味わうのは,
① 欲求や願望が充足されたとき,② 自由があり,自分から行動するとき,③ 価値があると考 えたことが実現したとき, ④ 創造や未知の解明 ⑤ 自分の能力に合致した行動(活動)をす るときとし,体育の授業の中で学習を促進するために用いられる「楽しさ」の原理を ③ 種目の 多様性 ⑤ 場や運動の変化性 ⑥ 競争性 @ 集団性と規定した。
嘉戸3),沢田4),加賀5)らは,チクセントミハイのフローモデルを検討し,楽しさが自己の行為 能力(技能)と行為への機会(挑戦)の水準のバランスによるものであるとし,このフローの状態 の幅を広げていく指導過程を工夫することが大切であり,フローモデルが楽しさを求めて運動への 自発的,自主的なとりくみを可能にする理論として貴重な手掛りであると述べている。
チクセントミハイは6),全人的に行為に没入している時に人に感ずる包括的感覚をフローと呼び,
*教育学部保健体育科.
**教育学研究科保健体育専修保健体育科教育研究室.
76 茨城大学教育学部紀要(教育科学)38号(1989)
チェスのようなゲームは,現実社会の合い間に限定的な楽しい経験を用意するために発達したもの であるとした。
高田7)は,楽しさを阻む四条件として (1}運動する楽しさが欠落している場合 (2}進歩する 楽しさが欠落している場合 (3)友と交わる楽しさが欠落している場合 (4)発見する楽しさが欠 落している場合をあげ,楽しさを盛りあげる四つの内容を (1)授業における教師の行為,② 授 業の教材づくり (3)授業のための指導技術 (4)授業を支える生活の指導とした。
林8)は,「楽しさということですが,探求への積極的な参加,さらに,教師から与えられたとい うよりも自分で自分に課した容易でない課題を解く努力,その努力のなかにともだちや先生も一緒 に参加してそれをやった。そしてついに糸を解いたという経験。……これが子どもにとって楽しい ということの最も本質的な内容ではないかと思うのです」と著書の中で子どもの感想文をまとめて 述べている。
宇土9)は,楽しい体育の虚像を ① 面白い「楽しい体育」は,その場中心の表面的な楽しさで はないか ② 手段として用いられる「楽しい体育」は,ごく単純な誤解による「まちがった楽し い体育ではないか ③ 教師が演出する授業の楽しさに包みこまれた「楽しい体育」は,楽しい体 育と混同されていないか④運動技能が支える「楽しい体育」は,技能レベルが高ければ,楽し
さが高いというものではないと指摘し,名目だけの楽しい体育に苦言を呈している。
その他にも小林10)は,よろこびを育てることが授業の基底だとし,「よろこび」を「心がおどる ほどの楽しさ」と定義,体育の授業でのひたむきな学習活動を通じてしか生まれないものであると
している。
著者らは,内山11)のモデル(遊び・運動行動の成立要因・条件に関するモデル)から,主体とし ての条件,環境条件,健康条件などが阻害されたとき,行動が不成立になるばかりでなく,行動の 楽しさも阻害されるという立場をとり,研究の基本的理念とした。
SD法を用いた研究で体育の楽しさを解明した論文はほとんどみあたらず,徳永12)は質問紙法を 用いて体育の授業の「楽しさ」の因子を9因子解釈命名し,運動の好き嫌いにより差がみとめられ
ると結論している。
本研究では,SD法を用いて, A票…体育の授業に関するイメージ, B票…主体,環境,健康に 関するイメージをとらえ,因子分析の手法による体育嫌い群,好き群の因子構造を明らかにしなが
ら体育の楽しさ解明のステップにすることをねらいとする。
研究対象 方法及び内容
1 対象,調査期間,人数
対象:茨城大学教育学部学生 341名 期間:昭和62年11月24日〜12月9日
2 内容
A票 体育授業に関するイメージ 35項目の形容詞対
野田ほか:SD法による体育の楽しさの因子構造 77
B票 主体・環境・健康に関するイメージ
a)能力・意欲など主体的要因 27項目 b)環境の要因
c)健康の要因
14項目 8項目 計 50項目
3 方法
SD法(Semantic Differential Method)による質問紙調査
弁別される概念と,それによって弁別する一組の双極をなす形容詞の尺度を被験者に与え,7 段階で評定させ,それによって概念と尺度との結びつきの方向とその強度を明らかにする。
因子分析法の中でも本論では,諸変量に共通な因子を抽出するために主因子法を,変量間の異 質性のグルーピングをするためにバリマックス法の二方法を用いた。
結 果 及 び 考 察
1 回転前の第一因子負荷量と解釈
(1)体育授業に関するイメージ(A票):体育授業に対するイメージを鮮明にするために,35項 の形容詞対を用意した(表1).その結果を主因子法により,回転前の第1因子を抽出し解釈する。
「体育好き群一L群」 「体育嫌い群一D群」の二群間で比較検討する。
L群では,陽気な,明るい,動的な,活発な,外向的な,強い,良いなどに高い負荷量を示し,
それらは,体育の身体的な活動性(動的,活発,強さ)とその活動を支える精神の状態(明るい,
陽気,外向性,良さ)をあらわしていて,心と身体の躍動感を感じさせられる。しかし,貢献度が 高くないことから,これらの要因でL群の活動性を予測することは困難であると思われる。
D群では,明るい,豊かな,鋭い,良い,堂々とした,寛大な,陽気な,丁寧ななどに高い負荷 量を示し,これらは身体の活動性を支える要因にはなっているものの,身体の活動そのものに対す
る項目に負荷量は低く,心情,感情的側面で好き,嫌いを判別していることも予測される。
両群の結果を・チクセントミハイのフローモデル13)にあてはめてみると,L群は,体育授業の楽 しさを,挑戦水準のレベルと学習者の意欲,関心,能力のレベルのある程度のバランスの上に成立 させているのに反し,D群では,後者の意欲・関心のレベルの一側面だけで楽しさを求め,それを 嫌いの要因にしていることに留意しなければならない。ただし,D群の貢献度も高くなく,D群の 特性を説明する内容の充分な条件にはなりえない。
L群における男女間の相違は,男子ではやさしさ,寛大なに女子にない負荷量を示し,女子では 鋭い,頼もしい,激しい,堂々としたに男子にない高い負荷量がある。したがって,男女間では男 子が,人間関係へ目をむけているのに対し,女子では表象される活動性を洞察していると思われる。
D群では,男子の第1因子の貢献度が30%をこえ,ある程度の精度で,嫌いの要因を説明できる
78 茨城大学教育学部紀要(教育科学)38号(1989)
表1 回転前第1因子の因子負荷量(A票)
好 き 群 嫌 い 群
男 女 Tota1 男 女 Tota1 1)さわやか じめじめした 0.71 0.51 0.59 0.60 0.50
2)情け深い 薄情な 0.73
3)立派な 粗末な 0.59 0.51
4)やさしい むずかしい 0.50 0.50 5)慎重な 軽率な
6)個性がある 個性がない 0.57
7)優雅な 無骨 0.54
0.50」8)おもい かるい
、9)活発な 不活発な 0.68 0.62 0.65 0.60 0.70 0.63
10)温情な 冷淡な α65: 0.55
11)しなやか ぎこちない 0.66 0.55
12)動的な 静的な 0.64 0.77 0.73 0.66
13)派手な 地味な 0.55 0.64 0.62 0.56
14)繊細な 粗雑な 0.75
15)深い 浅い 0.60 0.54
16)柔軟な 頑固な 0.52
17)豊かな 貧しい 0.58 0.55 0.58 0.81 0.73 0.77 18)明るい 暗い
0.810.74 0.79 0.65 0.86 0.80 19)鋭い 鈍い 0.51 0.52 0.76 0.68
20)丁寧な 雑な 0.86 0.61
21)頼もしい 頼りない
0,5010.63 0.56 0.57 22)冷静な 興奮しやすい
0.64
24)おだやか 卑屈な 0.67
25)良い 悪い 0.62 0.66 0.62 0.80 0.71 0.75 26)強い 弱い 0.57 0.66 0.63 0.55 27)外向的な 内向的な 0.59 0.72 0.67 0.51 0.69 0.57 28)落ち着いた 落ち着きのない 0.56
29)激しい 穏やかな 0.69 059
30)理性的な 感情的な 0.76
31)堂々とした 貧弱な 0.64 0.58 0.70 0.72 0.70 32)のんびりした せわしない
33)さっぱりした しつこい
34)陽気な 陰気な 0.78 0.69 0.74 α50 0.73 0.65
35)寛大な かたくな 0.54 0.64 0.67 0.68 固 有 値 7.10 7.63 7.15 11.57 9.45 9.39
貢 献 度 1 (矧 20.30 2L81 20.45 33.06 27.01 26.83
貢 献 度 2 (劒 43.65 47.37 48.19 52.58 45.48 49.37
野田ほか:SD法による体育の楽しさの因子構造 79
表2 回転前第1因子の因子負荷量(B票)
女 男
−3
│3
│9 女
−9 男
−6
│。
│6
│。
80 茨城大学教育学部紀要(教育科学)38号(1989)
と思われる。女子では27%で,男子に比べ説明鮮度が低いといえよう。中味は,男子はほとんどの 項目に0.5以上の負荷量があるが,女子では,男子にない,やさしさ,しなやか,動的な,派手な,
強いなどに高い負荷量を示し,特に前述した,D群の身体的活動性の欠除に男子が主にかかわってい ると推測される。
(2)主体・環境・健康に関するイメージ(B票):L群,D群ともに0.5以上の負荷量をもつ項目 はほとんどかわらない。女子の方が貢献度が高く,説明変量として高く評価できる.(表2)。
D群での男女間の相違はほとんどみられない。
I」群の男子では,集団的な,責任のある,自由な,勇敢な,開放的な,美しい,社交的な,丈夫 な,浅黒い,信頼するに女子と異なる負荷量を示し,女子の器用な,友好的な,豊満な,安心な がんじょうなと異なる傾向である。すなわち,男子が女子より,集団性や人間関係,責任感をつ よくイメージしているのに,女子では心やからだの豊かさ,つよさ,スキル感をもっていると思わ れる。貢献度はほとんどかわりがなく,イメージを予測する変量として適当であると考える。
なお,L群, D群の差異を明確にすることを試み,両群の上位25%を抽出し,同様の分析を試み た。より体育好きL群ではD群にない親しみやすい,おもしろいに0.5以上の負荷量を示し,女子 では,素早い,まとまった,清潔な,美しい,意欲的な,健康的な,静かな,元気ななどに高い負 荷量をもち男子とことなるイメージをもっている(表は略)。
2 バリマックス回転後の抽出因子の因子負荷量と解釈
(1)体育授業に関するイメージ(A票):表3はL群,表4はD群の因子負荷量を示している。
L群では,第1因子に強さ,堂々とした,外向的な,陽気な,明るい,動的なに高い負荷量があ り,強さだけでなく,体育のもつ明るさ,陽気なそれでいて動的,活発,激しい活動性,社会性を つちかうに充分な外向性,そして,活動後の爽快感,良さをイメージしており,この因子を体育の 価値認識因子(強さ,明るさ,活動因子)と命名できる。第ll因子は,落ち着き,冷静ななどに高 い負荷量がみられ,体育の授業が約束やルールに従属しなければならないことから,自己コントロー ル因子(落ち着き因子)と解釈できる。第皿因子以下は解釈不可能である。
D群では,第1因子に強い,外交的な,堂々とした,活発な,鋭い,頼もしいなどに高い負荷量 を示すことから活動の強さや活発さと同時に,体育に対する憧憬や社会性,一種の緊張状態として の鋭さをイメージしていることから,これらを狭義の体育の価値認識の因子(強さ,活動因子)と 命名できよう。第ll因子には, L群と同じく自己コントロール因子(落ち着き因子),第皿因子で は,しつこい,陰気な,かたくな,卑劣な,暗いに傾斜していることから,授業展開や授業内容,
技能獲得,学習,自己技能に関して,活動や遂行をマイナス方向にむける力になるイメージと思わ
れる。それをマイナスの学習者の意欲因子(暗さの因子)とする。第IV因子は,冷淡な,むずかし
い,薄情な,じめじめしたに0.5以上の負荷量を示し,嫌いな者が体育学習のむずかしさや指導
者,友達の非協力(薄情な,冷淡な),親身や陽気になれない(じめじめした)をつよくイメージ
しており,マイナスの人間関係因子(日陰の困子)。第V因子は個性がない,浅い,貧しい,無骨
野田ほか:SD法による体育の楽しさの因子構造
表3 体育の授業に関するイメージ(A票)回転による因子負荷量・貢献度因子名
81
体 育 好 き 群 1 2 3 4 5
1)さわやか じめじめした Q)情け深い 薄情な R)立派な 粗末な S)やさしい むずかしい T)慎重な 軽率な U)個性がある 個性がない V)優雅な 無骨な W)おもい かるい X)活発な 不活発な P0)温情な 冷淡な P1)しなやか ぎこちない P2)動的な 静的な P3)派手な 地味な P4)繊細な 粗雑な P5)深い 浅い P6)柔軟な 頑固な P7)豊かな 貧しい P8)明るい 暗い P9)鋭い 鈍い Q0)丁寧な 雑な Q1)頼もしい 頼りない Q2)冷静な 興奮しやすい Q3)謙虚な 傲慢な Q4)おだやか 卑屈な Q5)良い 悪い Q6)強い 弱い Q7)外向的な 内向的な Q8)落ち着いた 落ち着きのない Q9)激しい 穏やかな R0)理性的な 感情的な R1)堂々とした 貧弱な R2)のんびりした せわしない R3)さっぱりした しつこい R4)陽気な 陰気な R5)寛大な かたくな
0.50
O.59
O.66 O.60
O.65
O.53
O.57 O.71 O.66
O.59
O.67
O.65
0.63 O.54 O.53
O.62
O.55
0.57 O.60
0.54
O.65
固 有 値 6.10 3.07 2.10 2.22 1.34 貢 献 度 1 (% 17.43 8.79 6.01 637 3.84 貢 献 度 2 (% 41.07 20.71 14.51 15.01 9.05
因 子 名
価値・認識 セるさ。活 子(強さ ョ性)
自己コントロール因子
i落ちつき 子)
解釈 s可能 解 釈 s可能 解釈
s可能
82、 茨城大学教育学部紀要(教育科学)38号(1989)
表4 体育の授業に関するイメージ(A票)回転による因子負荷量・貢献度因子名
体 育 嫌 い 群 1 2 3 4 5
1)さわやか じめじめした Q)情け深い 薄情な R)立派な 粗末な S)やさしい むずかしい T)慎重な 軽率な U)個性がある 個性がない V)優雅な 無骨 W)おもい かるい X)活発な 不活発な P0)温情な 冷淡な P1)しなやか ぎこちない P2)動的な 静的な P3)派手な 地味な P4)繊細な 粗雑な P5)深い 浅い P6)柔軟な 頑固な P7)豊かな 貧しい P8)明るい 暗い P9)鋭い 鈍い Q0)丁寧な 雑な Q1)頼もしい 頼りない Q2)冷静な 興奮しやすい Q3)謙虚な 傲慢な Q4)おだやか 卑屈な Q5)良い 悪い Q6)強い 弱い Q7)外向的な 内向的な Q8)落ち着いた 落ち着きのない Q9)激しい 穏やかな R0)理性的な 感情的な R1)堂々とした 貧弱な R2)のんびりした せわしない R3)さっぱりした しつこい R4)陽気な 陰気な R5)寛大な かたくな
0.65
O.58 O.57 O.55
ソ50
O.64
O.63
O.81 O.71
O.67
0.52
O.51
O.68 O.50
O.71
O.70
一α52
│0.57
黹ソ66
│0.61
│0.62
一〇.51
│0.52
│0.66.
@ ●
@ ■
│0.50
一〇.52
│0.54
│0.50
│0.57
│0.51
固 有 値 6.07 3.99 3.55 2.38 3.01 貢 献 度 1 (矧 17.36 11.42 10.16 6.80 8.61 貢 献 度 2 囲 31.93 2LO1 18.69 12.51
因 子 名
狭義の価値 F識の因子 i強さ・活 ョ性)
自己コント 香[ル因子
i落ちつき 子)
マイナス学 K意欲因子 i暗さの因 q)
マイナスの l間関係因 q(日陰の
子)
15.85
ц迥w習のレ
fィネスの因 q(貧因。粗
@・無個性)
野田ほか:SD法による体育の楽しさの因子構造 83
な,粗雑なに0.50以上の負荷量を示し,嫌いな者が体育に対してもつイメージを,マイナスの体育 学習のレディネスの因子(貧困,粗野な無個性の因子)とした。
これまでについてみるとL群が活動の質量をとらえ,明るい雰囲気で,爽快感を感覚しているの に対して,D群では,人間関係,活発・強い活動性,体育自体に何か頼もしさをみとめていながら もある種の緊張を感じさせる鋭さをイメージしており,L群とことなるイメージ構造をもっている ものと思われる。両群ともに第皿因子に自己コントロールを意図している項目が抽出されているが,
D群では,体育授業に暗さや構え,レディネスの不足を指摘し,体育の時間が暗く,陰気で粗雑 なイメージが多く認められる(貢献度が全分散に対して10%程度みとめられる)。したがって,体 育の価値認識にかなりの欠落部分があり,さらに体育学習で経験した暗い,陰気な粗雑な心情が大 きい部分を占めていると考えられる。それらは,無個性な自己のスキルや教師・友達との人間関係 の冷淡さ,薄情さを強く感じ,松田14)のいう「へたなものをのけ者にしたり,避けたりすることは 運動を楽しむことにはならない」と軌を一にするものと考えられる。
作表はしていないが,L群の男女の差をみると,男子は,体育の動的,活発な活動性と個性,明 るさとさわやかさを含むものもイメージしているのに,女子では,個性を含めず,その個性を派手 な,頼もしい,強い,激しいなどと同じにグルーピングしている。男女ともに温和をイメージし,
女子が落ち着きの因子をもっているのに男子ではほとんどみとめられない。そして女子が体育を無 骨,粗雑,雑,浅いをイメージし,運動のもつ一面性をとらえており,それに比して男子では,体 育を,悪い,弱いとイメージしている点に違いがみられる。
D群では,明るい・温和さを一つのグループとしているのに女子では,寛大さやのんびりした,
を含めおだやかな,温情ななかにも心のゆとりをイメージしている。マイナス面では,男子が第IV 因子に不活発,静的,暗さをイメージし,女子はそれに重さ感をもっている。そして,嫌いな男子 は,無個性,無骨な,冷淡な,粗雑な,興奮しやすい,卑屈な,感情的なに高い負荷量を示し,感 情をコントロールできない,得意な技能もない,無味乾燥な人間関係などがイメージされていると 思われる。
②主体・環境・健康に関するイメージ(B票):L群では第1因子に,信頼する,協力的な,まっ すぐな,気分の良い,綿密な,晴ればれしいなどに高い負荷量があり,加えて責任感のある,意欲 的なにも0.5以上の負荷量を示し,これらは,主体の意欲,心的充実,爽快感をあらわすことにな り,社交性・心的充実の因子といえる。第H因子では,上手な,素早い,機敏な,自信がある,得 意な,有能ななどにまとまりがみられ,これは体育の技能の上手や有能性,格好良さ,器用性を あらわし,素早い,機敏を伴なっていると推察できる。したがって主体の能力をあらわす,運動技 能の因子といえる。第皿因子は解釈不可能,第IV因子は元気な,頑丈な,丈夫な,健康的ななどが まとまりをみせ,主体を支える健康要因,即ち,健康の因子といえる。第V因子は面白い,愉快な,
賑やかな,社交的な,気さくながまとまっていて,環境的要因をあらわす仲間因子といえる。
D群では,第1因子に上手な,器用な,自信のある,得意な,機敏な,生き生きした,格好良い,
支配的ながグルーピングされ,それらは主体の能力をあらわす言葉であり,被支配性につながりを
もつ技能の因子といえる。第II因子は,愉快な,面白い,自由な,綿密な,親密な,解放的ななど
にまとまり,主体の心的自由性・解放感・親密感・くつろぎ感と社交性をイメージし,仲間とのく
茨城大学教育学部紀要(教育科学)38号(1989>
表5 主体・環境・健康に関するイメージ(B票)回転による因子負荷量・貢献度因子名
体 好 き 1 2 3 4 5
1)とっつきやすい とっつきにくい 2)集団的な 個人的な 3)上手な 下手な
4)素早い のろい 0.79 5)生き生きした 生気のない 0.71 6)まとまった ばらばらな
7)打ちとけた よそよそしい 8)支配的な 従属的な 9)清潔な 不潔な
10)器用な 不器用な 0.59 11)快い 不快な
12)にぎやか さびしい
亀0.57
13)責任感のある 無責任な 0.56 14)自由な 不自由な
15)勇敢な 臆病な 16)友好的な 闘争的な
17)自信がある 自信がない 0.72 18)複雑な 単純な
19)解放的な 束縛的な 20)美しい 醜い
21)得意な 不得意な 0.72
22)社交的な 閉鎖的な 0.53
23)自主的な 強制的な 24)親しみやすい 親しみにくい
25)有能な 無能な 0.68 26)協力的な 排他的な 0.68
27)意欲的な 無気力な 0.53 28)気分の良い 気分の悪い 0.64
29)積極的な 消極的な 0.52 30)機敏な 鈍重な 0.75 31)充実した 空虚な
32)格好よい 不格好な α71
33)丈夫な 虚弱な 0.71
34)健康的な 不健康的な 0.71
35)豊満な 貧相な 0.50
36)安心な 不安な
37)がんじょうな きゃしゃな 0.71
38)元気な 病弱な 0.60
39)浅黒い 色白な 40)くつろいだ 堅苦しい
41)満足な 不満な 0.55 42)晴れ晴れしい うっとうしい 0.61 43)信頼する 裏切る 0.73 44)親密な 疎遠な α62 45)まっすぐな 歪んだ 0.69
46)気さくな 気どった 0.50
47)愉快な 不愉快な 0.65
48)おもしろい つまらない 0.66
49)効率の良い 効率の悪い
50)静かな 騒々しい 0.51
固 有 値 6.76 7.24 2.07 3.63 5.39 貢 献 度 1 (%} 13.50 14.48 4.15 7.27 10.80 貢 献 度 2 囲 26.93 28.84 8.26 14.48 2L50 因 子 名 社交性・心・ [実の因
運動技能の因子
解釈
s可能
健 康の因子
仲 間
子
野田ほか:SD法による体育の楽しさの因子構造 85
表6 主体・環境・健康に関するイメージ(B票)回転による因子負荷量・貢献度因子名
い 1 2 3 4 5
1)とっつきやすい とっつきにくい 2)集団的な 個人的な
3)上手な 下手な 0.79 4)素早い のろい 0.67
5)生き生きした 生気のない 一〇.63
6)まとまった ばらばらな 一〇.68
7)打ちとけた よそよそしい 一〇.70
8)支配的な 従属的な 0.60
9)清潔な 不潔な 0.62
10)器用な 不器用な 0.75
11)快い 不快な 一〇.52
12)にぎやか さびしい 一〇.50
13)責任感のある 無責任な
14)自由な 不自由な 0.72 15)勇敢な 臆病な 0.57
16)友好的な 闘争的な
17)自信がある 自信がない 0.79 18)複雑な 単純な
19)解放的な 束縛的な 0.63 20)美しい 醜い
21)得意な 不得意な 0.71
22)社交的な 閉鎖的な 0.62 23)自主的な 強制的な 0.57 24)親しみやすい 親しみにくい 0.54 25)有能な 無能な 0.60
26)協力的な 排他的な
27)意欲的な 無気力な 一〇.58
28)気分の良い 気分の悪い
29)積極的な 消極的な 一〇.51
30)機敏な 鈍重な 0.67
31)充実した 空虚な 一〇,65
32)格好良い 不格好な 0.65
33)丈夫な 虚弱な 0.66
34)健康的な 不健康的な 0.66
35)豊満な 貧相な 0.51
36)安心な 不安な 0.54
37)がんじょうな きゃしゃな 0.63
38)元気な 病弱な 0.74
39)浅黒い 色白な
40)くつろいだ 堅苦しい 0.68 41)満足な 不満な
42)晴れ晴れしい うっとうしい 0.54 43)信頼する 裏切る 0.54 44)親密な 疎遠な 0.69 45)まっすぐな 歪んだ 0.57 46)気さくな 気どった 0.50 47)愉快な 不愉快な 0.76 48)おもしろい つまらない α69 49)効率の良い 効率の悪い
50)静かな 騒々しい 0.50
固 有 値 8.27 8.72 4.19 2.29 6.43 貢 献 度 1 (% 16.55 17.45 8.39 4.59 12.87 貢 献 度 2 (瑚 27.65 29.16 14.02 7.67 21.50 因 子 名 技能の 子
仲閤とのくつろぎ因子
健康の 子
解 釈 s可能
無気力因 子