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理科を学ぶことの意義や有用性を実感する指導の工夫

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Academic year: 2021

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(1)

研究ノート

理科を学ぶことの意義や有用性を実感する指導の工夫

―スターリングエンジンの教材化―

創価大学教職大学院 教職研究科教職専攻

は じ め に

平成20年1月の中教審答申の中で,理科の改善の具体的事項として「理科を学ぶこ との意義や有用性を実感する機会をもたせる観点から,実社会・実生活との関連を重 視する内容を充実する。また,持続可能な社会の構築が求められている状況に鑑み,

環境教育の充実を図る方向で内容を見直す。これらを踏まえ,例えば,第1分野の「科 学技術と人間」,第2分野の「自然と人間」についての学習の充実を図る。1)とある。

現職中学校教師である筆者が,これらの単元をこれらのどのように扱ってきたかを 振り返ると,映像を見せたり,外部機関のパンフレットを読んだりするなど,義務教 育最後の教養を広げるというぐらいの扱いで,生徒が活動する学習をしたとしても調 べ学習を行うのが精いっぱいだったように思う。この背景には,平成24年度から年間 0時間になる理科の時数が,現行学習指導要領では,80時間と大変少なかったこと

もある。

本研究では,中学校理科の最後に置かれている「科学技術と人間」「自然と人間」

の単元を,学習内容でつなげたり,季節や学校行事に合わせたりして学習できるよ う,単元配列を工夫した。そして具体的な授業展開例として,「運動とエネルギー」

と「科学技術と人間」を続けて学習し,スターリングエンジンを用いた実験を通し て,理科を学ぶことに意義や有用性を実感できる授業を提案したい。

指 導 構 想

1 カリキュラムの工夫

(1) 年間計画の工夫

今回の学習指導要領の改訂で,第1分野,第2分野それぞれにある「自然環境の保 全と科学技術の利用」の章が,どちらか選択であったが,新学習指導要領では,第1 分野と第2分野の学習を生かし,両分野を関連付けて総合的に扱うこととなった。ま

−13−

(2)

た,学習の内容の指導順序に関する規定について,各学年の中で,指導する順序の弾 力化が図られたため,第1分野の「科学技術と人間」,第2分野の「自然と人間」を 通年に分けて配置し,表1のように第1分野,第2分野それぞれの学習のつながりを 考え「ウ 自然環境の保全と科学技術の利用」の章を「自然環境の保全と科学技術の 利用①〜③」として組み込んだ。さらに具体的な内容を表2に示す。

2 スターリングエンジン用いた指導の工夫

(1) スターリングエンジンとは

スターリングエンジンは,16年スコットランドの牧師,ロバート・スターリング が蒸気機関に対抗して発明した熱機関である。普通生徒が思い浮かべるエンジンとい えば,車のガソリンエンジンやディーゼルエンジンが多いと思うが,このエンジン は,次にあげる特徴をもつ。

・わずかな温度差でも動くので,様々な熱源が利用できる。そのため,温排水などの 現在捨てられている熱を利用する方法の一つにもなる。

・ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのように大きな馬力は出ないが,爆発を伴 う内燃機関ではないため,音が静かで安全性が高い。

・排気ガスなどの有害物質を出さない。

(2) 教材としてのスターリングエンジンの可能性

機能面での可能性

これからのエネルギー資源としてコージェネレーションシステムが教科書2)でも 取り上げられ,その中の排熱回収装置としてスターリングエンジンが使われている など生活に身近な存在になってきている。そのため,教材業者でも多く扱われるよ うになり学校でも簡単に手に入る。大きさも性能も様々で,教材会社のカタログ3)4)

によると,価格は,10円から40円と幅広い。教材活用の目的に応じて購入し たい。

扱いは比較的容易で,火を使わない,爆発の危険がない等安全性も高い。

学習活動面での可能性

スターリングエンジンは,次にあげるような多様な学習展開が期待できる。

・ガソリンエンジンなど他の熱機関との比較をしたり,仕組みが簡単なので動作原 理を調べたりすることができる。

・宇宙開発との関連や冷却機としての利用など発展的な利用を調べることができ る。

・科学技術の発展の歴史と関連させて環境教育でも活用することができる。

本研究で用いるスターリングエンジンについて

本研究では,写真1に示すコンセプトプラス社製の「フリーピストンスターリン

−14−

(3)

表1 年間指導計画表

*子どもの実態,学校の事情,地域の特性に即して,第1分野と第2分野の内容の系統性に 配慮し,学習の全体を見通して,順序を決め,指導計画を作成し指導を行う。

(中学校学習指導要領解説 理科編)

単元配列の番号順に並べた 年間指導計画

単元配列を工夫した 年間指導計画

単元名(時間) 単元名(時間)

4月

5月

6月

7月 8月

(夏休み)

9月

0月

1月

2月

1月 2月 3月

運動とエネルギー(24)

運動の規則性 力学的エネルギー

生命の連続性(16)

生物の成長と殖え方 遺伝の規則性と遺伝子 化学変化とイオン(20)

水溶液とイオン 酸・アルカリとイオン 地球と宇宙(18)

天体の動きと地球の自転・

公転

太陽系と恒星

自然と人間(12)

生物と環境 自然の恵みと災害

自然環境の保全と科学技術 の利用

科学技術と人間(20)

エネルギー 科学技術の発展

自然環境の保全と科学技術 の利用

生命の連続性(16)

生物の成長と殖え方 遺伝の規則性と遺伝子

運動とエネルギー(24)

運動の規則性 力学的エネルギー

科学技術と人間①(ア,イ で12)

エネルギー 科学技術の発展 自然環境の保全と科学

技術の利用①(8)

自然と人間(12)

生物と環境 自然の恵みと災害

自然環境の保全と科学技術の利 用②(8)

化学変化とイオン(20)

水溶液とイオン 酸・アルカリとイオン

地球と宇宙(18時間)

天体の動きと地球の自転・公転 太陽系と恒星

自然環境の保全と科学技術の利 用③(8)

合計時間1 標準時間1

合計時間1 標準時間1

授業実践例

−15−

(4)

表2 自然環境の保全と科学技術の利用①〜③の具体的な内容 自然環境の保全と科学技術の利用① (7月〜9月実施)

目標

・単元「運動とエネルギー」「科学技術と人間」を続けてこの学習を行い,エネル ギーと環境の視点で,自然科学の総合的な見方を育てる。

・夏休みを使って,自由研究やものづくりに取り組んだり,科学館などに出かけた りして,学びを深める。

内容

・スターリングエンジンを用いた実験を行い,自然環境の保全と科学時術の利用の 在り方について考える。

・これまでに学んだ,「運動とエネルギー」「科学技術と人間」をテーマに,個人や グループで課題研究行う。ここでは,夏休みも学習のよい機会ととらえ自由研究 をする。授業で学んだことを基に自作スターリングエンジンなどのものづくりに 取り組んだり,博物館や科学館に出かけて調べたり体験したりすることもでき る。学習の成果は,夏休み後の授業で発表する。こうすることで,学びを共有し,

言語能力の育成もはかる。また,この時期各団体が行う科学作文コンクールや科 学作品展等に出展し,外部へ学びを発信することもできる。

自然環境の保全と科学技術の利用② (10月)

目標 「自然と人間」に続けてこの学習を行い,自然環境の保全の視点で,自然科学の 総合的な見方を育てる。

内容

・生き物の活動が活発に行われている秋までの時期に行いたいとここに組み込ん だ。個人やグループで「地域の自然」を調べる活動を行い,地域の自然から,科 学技術の発展と人間生活とのかかわり方,自然と人間のかかわり方について考え る。学習の成果は,学校で行われる文化祭に展示する。

自然環境の保全と科学技術の利用③ (2月〜3月)

目標 これまでの自然科学の学びと自分をつなぎ,総合的な見方を育てる。

内容

・中学校最後の学習として,学校のパソコンルームで情報通信ネットワークを活用 して,課題研究を行う。ここでは,これまで「理科の学習で得た知識」と「調べ る活動を通して得た知識」とを組み合わせ,科学技術の発展と人間生活のかかわ り方について,多面的,総合的にとらえさせ,持続可能な社会を作っていくこと を認識できるようにする。そして,「環境にいいというのはどういうことか。

「これから,どのような社会を構築していかなくてはならないのか」などを考 え,発信していく活動を通して,「ものごとを総合的にみたり考えたりする態 度」や「科学的に考察し判断する態度」を養う。学習の成果は,ポスターセッショ ンで発表する。

写真1 フリーピストン 空き缶スターリングエンジン

写真2 スターリングエンジンの部品

−16−

(5)

グエンジン」を使用する。このエンジンの特徴は,構造が簡単で組み立てやすい。

写真2の部品を写真3の①〜⑤の順に組み立て,最後にセロハンテープで留めるだ けで,だいたい10分ほどで完成する。エンジンを動かすためには熱いお湯の入った コップの上に乗せ,しばらくすると動き出す。上部に氷を乗せると温度差がさらに 大きくなる。

動作はピストンが上下するだけの単純なものなので,原理をイメージしやすい。

値段も安価(10円)である。そのため数が揃えられ,生徒実験がしやすい。

④ 「フリーピストンスターリングエンジン」を使っての横浜での授業実践事例 平成21年度,筆者の所属する横浜市中学校教育研究会理科部会

A

研究部会では,

スターリングエンジンを「運動とエネルギー」の単元で活用し,「生徒一人ひとり が探究し,表現する力を育む教育課程の研究」を行った。この時の研究授業では,

i)

「学習活動にホワイトボードを活用した『国語力および学習の基盤能力の育成』

『コミュニケーション能力の育成』等の言語活動の充実」,ii)「原理や法則の理解 を深めるためのものづくり」を授業の重点ポイントとした。

(3) スターリングエンジンを用いた授業実践例

指導計画

エネルギー アとイで12時間 様々なエネルギーとその変換

エネルギーに関する観察,実験を通して,日常生活や社会では様々なエネルギーの 変換を利用していることを理解すること。

エネルギー資源

人間は,水力,火力,原子力などからエネルギーを得ていることを知るとともに,

エネルギーの有効な利用が大切であることを認識すること。

科学技術の発展 科学技術の発展

科学技術の発展の過程を知るとともに,科学技術が人間の生活を豊かで便利にして きたことを認識すること。

いろいろなエネルギー

エネルギーの移り変わり(実験)

前時のまとめエネルギーが移り変わる時,目的とするエネルギーにすべてが変わるわ けではないことを見出し,そのことからエネルギーの一部が有効に利用できず,最終 的に熱エネルギーに変わっていくことにも気付かせる

エネルギー保存の法則

写真3 部品の組み立て方

−17−

(6)

本時の活動

本時は,2時間続きの授業を計画している。授業を同一の日に行っても,翌日以 降に行ってもよい。

〈テーマ〉

スターリングエンジンを使って,これからの「地球と環境」について考えよう。

〈本時のねらい〉

スターリングエンジンを組み立てて動かし,ガソリンエンジンと比較する活動を 通じて,「環境に良いというのはどういうことか。「これから,どのような社会を 構築していかなくてはならないのか」などを考え,発信していく活動を通して,「も のごとを総合的にみたり考えたりする態度」や「科学的に考察し判断する態度」を 養う。

〈本時の活動〉

課題「スターリングエンジンを組み立て,動かしてみよう。そして,みんなの知っ ているエンジンとの共通点や相違点をたくさんあげてみよう。

【1時間め】

時間 生徒の学習活動 教師の支援 留意点など

0分 ○エンジンから何を想像す るか班で話し合い発表す る。

○そのエンジンは,どんな も の か を い く つ か あ げ る。

○観察の着眼点になるよう なポイントを簡単にふれ る。

・班ごとにホワイトボード に記入して発表する。ホ ワイトボードは,班に1 つ用意する。

5分 ○課題を説明し,本時の活 動について話を聞く。

○高温の湯で動くことを説 明に入れる。

・湯の扱いに気をつけるよ うに伝える。

0分 ○スターリングエンジンを 組み立てる。

○組立てながら,内部の構 造を観察する。

組立てがうまくできない 生徒に対してアドバイス を行う。

・2人に1つの教材を用意 する。

熱の伝わり方

スターリングエンジン(本時)

いろいろな熱機関 エネルギー資源①

人類の歴史や人間の生活を関連付けて考えさせる 0 エネルギー資源②

エネルギー資源の有効利用 1 振り返り

2 課題研究準備

−18−

(7)

パフォーマンス課題

地球や環境を考えたとき,10年後の「未来型エンジン」はどのようなものが考え られますか。スターリングエンジンの実験に関連づけて,図や言葉を使って考えた ことを書いてください。また,その理由も説明してください。」 (回答時間20分)

0分 ○動かしながら,エンジン よく観察して,共通点と 相違点をできるだけ多く 探す。

○次回の授業で発表できる ように,班で1枚の模造 紙にまとめる。

○なかなか見つけられない 生徒には,着眼点をアド バイスする。

○短い言葉で適切に表わす 工夫をさせる。

・時間の発表時間は,1分 とする。

5分 ○片付けと自己評価 ・発表までに模造紙を完成

させておく。

【2時間め】

時間 学習活動 教師の支援 留意点など

0分 ○班の代表が,順に発表す る。

・休み時間のうちに掲示を させておく。

0分 ○スターリングエンジンの 歴史の話をきく。

○なぜ,スターリングエン ジンがガソリンエンジン にとってかわられたのか を講話する。

・発 表 か ら 見 出 さ れ た ス ターリングエンジンの長 所と短所と結び付けては なす。

・コージェネレーションシ ステムにもふれる。

0分 ○パフォーマンス評価の説 明を聞く。

○正しい答えが出ていなく ても考え方がきちんと書 けていれば点数がもらえ ることを説明する。

・問題が書いてあるB4の 用紙を用意する。

0分 ○自分の考えを記入用紙に 記入する。

○読んだ人に伝わるように 書くように伝える。

−19−

(8)

評価

〈単元の評価規準〉

〈本時の評価〉

本時は,パフォーマンス課題に対するパフォーマンス評価を行う。パフォーマン ス評価とは,「ある特定の文脈のもとで,様々な知識や技能などを用いて行われる 人のふるまいや作品を,直接的に評価する方法」5)である。「パフォーマンス課題」

与えて解決・遂行させそれを複数の評価者が「ルーブリック」と呼ばれる評価基準 表を用いながら評価する。

第一の目的は,パフォーマンスの質を数値化することにより,学習指導や学習活 動にいかせるように,子どもたちの学力を把握することである。

〈ルーブリック〉

ルーブリックは,採点にはいる前にあらかじめ大まかな素案を作っておくが,具 体的な中身は採点と同時並行で書き込まれていく。つまり,パフォーマンス評価 には,〈ルーブリック作成=評価基準作り〉というプロセスが含まれている。6)

自然事象への

関心・意欲・態度 科学的思考・判断 観察・実験の技能 自然事象についての 知識・理解 エネルギー,科学技

術の発展,自然環境 の保全と科学技術の 利用に関する事物・

現 象 に 進 ん で 関 わ り,それらを科学的 に探究するとともに 自然環境の保全と科 学技術の利用の在り 方について科学的に 考察し判断しようと する。

エネルギー,科学技 術の発展,自然環境 の保全と科学技術の 利用に関する事象・

現象の中に問題を見 出 し,目 的 意 識 を もって観察,実験な どを行い,事象や結 果 を 分 析 し て 解 釈 し,自らの考えを表 現している。

エネルギー,科学技 術の発展,環境の保 全と科学技術の利用 に 関 す る 観 察,実 験,調 査 な ど を 行 い,観察実験などの 計画的な実施,結果 の記録や整理など,

事象を科学的に探究 する基礎を身につけ ている。

観察,実験,調査な ど を 行 い,エ ネ ル ギー,科学技術の発 展,自然環境の保全 と科学技術の利用に 関する事物・現象に ついての基本的な概 念や原理・法則を理 解し,エネルギー資 源の利用や科学技術 の発展と人間生活の かかわりについて意 識している。

概念的知識 手続き的知識 推論とストラテジー コミュニケーション

観点の説明

問題が理解できてい る。

解法の手続きを正し く実行出来ている。

科学的に筋道だった 考え方をしている。

自分の考えを図や言 葉を使ってきちんと 説明できている。

そのエンジンの性能 が理解できている。

そのエンジンの長所 や短所をに気付きな がら,説明すること ができている。

スターリングエンジ ンの実験の結果と考 察を論拠に説明でき ている。

未来型のエンジンは どのようなものがよ いか,図や言葉を用 いてきちんと説明で きている。

−10−

(9)

お わ り に

本研究では,スターリングエンジンを活用し,実社会・実生活と関連づけながら,

単元「科学技術と人間」の充実を構想した。この構想に当たってはパフォーマンス課 題を取り入れて,評価の工夫も試みた。創立者は,「子供にとっての最大の教育環境 は教師自身である」という。これまでは,教師が授業のために用意した教材で子ども が学んだ。この方法で,子ども自身が自身で学びを広げ,発信する活動を教師がサ ポートすれば,教師自身も生徒たちからたくさんの学びを吸収し,教師自身も何倍も 成長して生徒の前に立つことができると思う。平成24年より新学習指導要領の完全実 施を前に参考にしていただけると幸いである。

1)中教審答申 文部科学省 2

2)教科書未来へひろがるサイエンス1分野下 啓林館 裏表紙

3)29,20年度ケニス理科学機器(

No

0)ケニス株式会社,29,P.2,1 4)29,20年度ナリカ理科機器(

No

0)株式会社ナリカ,29,P. 5)松本佳代:パフォーマンス評価 日本標準 第3刷,2 P.

6)松本佳代:パフォーマンス評価 日本標準 第3刷,2 P.

−11−

参照

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