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「便益遅延性」を考慮した顧客満足・

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「便益遅延性」を考慮した顧客満足・

顧客参加モデルと従来型モデルの比較

―― 医療サービスをケースとして有効性の検証 ――

藤 村 和 宏

は じ め に

医療サービスや教育サービスでも顧客満足調査が行われ,その結果に基づい て提供サービス自体やデリバリー・プロセスの改善が活発に行われている。し かしながら,そこで用いられている調査項目や顧客満足モデルはホテル・サー ビスやレストラン・サービスで用いられているものと同じであることが多い。

医療サービスや教育サービスはホテル・サービスやレストラン・サービスとは 特性が異なるだけでなく,消費したサービスに対する顧客の評価容易性も異 なっているにもかかわらず,同じような調査項目や顧客満足モデルが用いられ ている。ホテル・サービスやレストラン・サービスの評価において現時点では 適切であると考えられている顧客満足モデルやそのモデル分析に用いる調査項 目は,医療サービスや教育サービスの評価においても適切なものなのであろう か。もしそれらが不適切であるならば,その分析結果から導かれる改善の方向 性は不適なものとなり,顧客だけでなく,その提供組織や従業員,さらには社 会全体にも大きな損失を長期的にもたらすことになるおそれがある。

経済学的に製品(サービスやモノ)を属性(探索属性,経験属性,および信

頼属性)の束と捉えると,医療サービスや教育サービスは,その多くが信頼属

性によって構成されているだけでなく,本質的な便益である機能的便益の享受

において遅延性が存在している。さらに,顧客は利用した医療サービスの品質

やその提供組織の潜在的な便益生成能力を適切に評価することが困難であると

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考えられる。さらに,顧客が期待する便益を享受するために彼ら自身に求めら れる参加も抑制される傾向があることから,その抑制の結果として顧客が享受 できる便益が低下し,顧客満足も低下するというかたちで,歪んだ評価が形成 される危険性も存在している。このような問題が多く存在するにもかかわら ず,それらを考慮することなく,ホテル・サービスやレストラン・サービスで 用いられているような調査項目や顧客満足モデルが医療サービスや教育サービ スの調査にも採用されていることに疑問を感じざるを得ない。

「便益遅延性」は,顧客側およびサービス組織側が抱える問題を解決し,適 切に医療サービスや教育サービスの改善を図るための新たな視点として導入し た概念である(藤村, )。この視点のベースとなっているのは,顧客はサ ービスを構成する過程品質および結果品質を消費しているという捉え方ではな く,顧客は便益を享受する,すなわち抱えている問題を解決するためにサービ スを消費しているという捉え方である。「便益遅延性」が存在するサービスの 提供組織がサービス自体やそのデリバリー・プロセスを改善するには,以下の ような疑問を解決しなければならないであろう。

⑴顧客は抱えている問題を解決するための本質的な便益,すなわち機能的 便益の享受において遅延性が生じている期間において,どのような要因 を評価し,満足あるいは不満足を形成しているのか。

⑵機能的便益の生成や享受に対する知覚はどのような要因によって促され るのか。

⑶顧客に求められる参加はどのような要因によって維持・向上させられる のか。

そこで本稿では,患者を対象に実施したアンケート調査の結果を用いて「便

益遅延性」を考慮した顧客満足・顧客満足モデルと従来型の過程品質・結果品

質に基づく顧客満足・顧客参加モデルの分析を行い,両モデルの結果を比較す

ることにより,データの適合性やモデルの違いが導く改善の方向性の差異など

について検討を行いたい

(3)

Ⅰ.医療サービスにおける適切な顧客満足・

顧客参加モデル構築の必要性

.選択代替案の限定される便益の提供

顧客が製品(モノやサービス)を購入するのは,製品がもたらしてくれると 信じる問題解決の手段を求めるからである。顧客は製品それ自体を購入してい るのではなく,欲求を充足させてくれると期待する価値を購入している。つま り個々の製品は,その購入者に便益を伝送する手段にすぎない。Levitt( ) の名言である「昨年, / インチのドリルが 万個売れたが,これは人々が

/ インチのドリルそれ自体を欲したからではなく, / インチの穴を欲した からである」は,このことを端的に物語っているであろう。顧客が購入するの は便益であるとすると,顧客はある欲求を充足させるために,同じような便益 をもたらしてくれるであろうと知覚する,複数の異なる製品の中から選択を行 うことができる。たとえば,個人的な移動欲求を充足させるものとして,顧客 は,自転車,バイク,自動車,バス,タクシー,列車などの中から選択するこ とができる。そして,どれを選択するのかは各代替案が持つ便益とコストとの 評価に基づいて行われることになる。

このように顧客が本当に購入しているものは便益であると捉えると,多様な 代替案からの選択が可能であるが,選択代替案が限定されるサービスも存在す る。その典型は医療サービスであろう。医療サービスの基本的な便益は疾病に よって生じる身体的健康度の低下からの回復であり,疾病の程度が重くなるほ ど選択代替案は限られ,特定の医療サービスに依存せざるを得なくなる。さら に,他のサービスの消費であれば選択に失敗し,期待していた便益を得られな

( ) 本稿は,独立行政法人科学技術振興機構内の社会技術研究開発センターにおける「問 題解決型サービス科学研究開発プログラム」において,平成 年度に採択された「医 療サービスの『便益遅延性』を考慮した患者満足に関する研究」(研究代表:藤村和宏),

および平成 年度に採択された科学研究費補助金基盤研究(B)の「便益遅延型サービス の消費における便益享受と顧客満足・顧客参加に関する実証的研究」(研究代表:藤村 和宏)における研究成果の一部である。

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かったとしても,顧客が被る損失は比較的小さいだけでなく,他の選択代替案 を選択し直すことによって期待する便益を享受することも可能である。しか し,医療サービスの消費では,疾病の程度が重くなるほど期待する便益を享受 するために要する期間が長くなり,期待する便益を得られないとわかった時点 では再選択が困難であること,すなわち手遅れのことも多いであろう。このこ とから医療サービスによって提供される便益の質や,それを享受するのに必要 な時間は患者にとって重大な問題となっている。

.顧客にとって評価困難な便益の提供

⑴ 選択意思決定過程における評価の困難性

製品を経済学的に属性の束と考えるならば,モノは探索属性が比較的大きな 部分を占めているが,サービスを構成する属性の大分部は経験属性あるいは信 頼属性である。探索属性とは,色,スタイル,価格,手触り,香りのように,

選択意思決定過程において評価可能な属性である。経験属性は,味や耐久性の ように,選択後あるいは消費中にのみ認識・評価できる属性である(Nelson, , )。また,信頼属性とは,評価に専門的あるいは技術的知識を必要 とすることから,選択後あるいは消費後においてさえ評価に困難を感じる属性 である(Darby and Karni, )。

経験属性や信頼属性が高い割合を占めているということは,顧客はその選択 意思決定過程においてサービス品質を直接的に示す本質的属性 を評価できない ということであり,周辺的手掛かり(たとえば,設備,機器,従業員の容姿や 服装,客層などの有形な証拠,価格,評判)によってサービス品質を間接的に 推測・評価せざるを得ないことになる。このことは氷山 の一角から残りの部分 を想像しなければならないことと似ており(Normann, ),サービスの選択 意思決定過程において顧客が品質の評価や自己ニーズへの適合性の評価を行う

( ) 本質的属性(intrinsic attributes)とは,実際の物理的製品の中に存在し,製品自体を変 更しなければ変えることのできない属性であり,その品質を直接的に示す指標となるも のである(Parasuraman et al, )。

(5)

ことを困難にしている。

医療サービスはその構成する属性に占める信頼属性の割合が高いことから,

医療サービス組織の選択意思決定過程において,患者は評価に困難を感じるこ とになる。このことは,患者は選択意思決定過程において医療サービス品質を 直接的に示す本質的属性を利用することができず,周辺的手掛かりからサービ ス品質を間接的に推測・評価せざるをえないことを意味している。 のサー ビスの選択意思決定過程において,周辺的手掛かりの一つとして,顧客はどの ような有形な証拠(要素)を重視するのかを調査したが,その結果では,病院 の選択意思決定過程では「施設規模の大きさ」や「込み具合(客の入り具合)」 に対する重視度が比較的高くなっていた(藤村, )。「施設規模の大きさ」

は安定性や信頼性の手掛かりとして,「込み具合(客の入り具合)」は病院や医 療従事者の診察・治療能力の高さを暗示する手掛かりとして重視されているこ とが推察された。なお,医療サービスにおける品質評価の困難性は,無形性に よって医療サービス組織も患者にサービス内容を伝達するのが困難であること や,医療サービスに対する広告規制によって患者が選択意思決定に利用できる 情報の量と質が低いことからも生じているであろう。

( ) サービスはしばしば氷山にたとえられるが,このことはサービスの場合には見える部 分よりも見えない部分の方が多いということを意味している。ただし,見える・見えな いの主体としては,顧客とサービス組織という異なる主体を想定することができる。顧 客が主体の場合には,サービスの本質的な部分は隠れており(水面下にあり),わずか に見える部分(水面上の部分)から隠れている部分(水面下の部分)を推測しなければ ないために,評価が困難であるということを意味している。一方,サービス組織が主体 である場合には,見える部分を安定したかたちで作り出すためには,見えない部分が大 きくて強固なものでなければならないことを意味している。見えない部分が全くない,

あるいは小さい場合には流氷と同じであり,安定的かつ長期的に高いサービス品質や顧 客満足,満足できる利益を生み出すことを可能にするような組織的基盤や組織能力が形 成されていないということである。つまり,見えない部分がサービス品質や顧客満足の 形成において重要な役割を果すために,それらを大きくて強固なものにしなければなら ないということである。このことはまた,競合するサービス組織の模倣を防ぎ,競争的 優位性を長期的に維持することにおいても重要である(藤村, )。

( )「込み具合(客の入り具合)」には,サービスの意味や価値に関するメッセージを伝達 し,享受できる便益やサービス品質の理解を促すというポジティブな効果がある一方 で,待ち時間の長さというネガティブなメッセージも発信する効果がある(藤村, )。

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⑵ 消費過程における評価の困難性

医療サービスは,信頼属性が高い割合を占めている,すなわち評価には専門 的な知識を必要とするために,それを保有しない患者は利用した病院から提供 された医療サービスを適切に評価することが困難になっている。

この評価の困難性は,医療サービスの本質的な便益である機能的便益(疾病 によって生じる身体的健康度の低下からの回復)の享受において遅延性が存在 していることによっても高められている,と考えられる。サービスには生産と 消費の同時性という特質があるが,必ずしもすべてのサービス消費において,

顧客は消費時点において即時的に便益を享受できるわけではない。教育サービ スや医療サービスのように人間の能力や精神の向上,あるいは身体の回復や維 持を目的とするサービスの場合,便益を生み出すための諸活動が行われる時点 とその結果として顧客が実際に便益を享受できる時点との間に時間的ズレが存 在している。このような時間的ズレ,すなわち「便益遅延性」が存在している ために(藤村, ),顧客はサービス・デリバリー・プロセスにおいてその 時点で享受しているサービス品質や便益を適切に評価することが困難になって いる。

さらに,医療サービスや教育サービスのような「便益遅延性」が生じやすい サービスには,サービス・デリバリー・プロセスへの顧客参加を抑制しやすい という特性が備わっていることも,顧客の適切な評価を困難にしている,と考 えられる。サービス品質(便益)や顧客満足,生産性などの向上を効果的かつ 効率的に図るには,サービス提供組織側の生産資源の質および量の向上やそれ らを活用する組織能力を向上させるだけでなく,顧客側のサービス・デリバリ ー・プロセスへの参加(役割遂行),すなわち彼らの保有する消費資源 の投入 の適切化と積極化を図ることも必要不可欠である。医療サービスにも当然この ことは当てはまるであろう。

( ) 消費資源とは,顧客がモノやサービスの消費によって望む便益を享受するために,顧 客自身が保有し投入しなければならない資源であり,金銭,時間,肉体的および心理的 エネルギー,知識,技能,補完物,空間などが含まれる(藤村, )。

(7)

提供者

顧客 他の

顧客

実態としての サービスの品質 物理的

環境

知覚品質 顧客満足

理論的には図 のように,顧客の適切かつ積極的な参加は実態としてのサー ビスの品質(便益)を向上させ,その結果として知覚品質や顧客満足も向上す ると考えられる(Youngdahl and Kellogg, ; 藤村, )。また,顧客満足 の向上は顧客のサービスやその提供組織に対するコミットメントを高め,その ことは顧客の適切かつ積極的な参加をさらに促すことから,実態としてのサー ビス品質(便益),顧客満足,および顧客参加の間において好循環が形成され る,と考えられる。しかしながら,医療サービスや教育サービスなどの「便益 遅延性」が存在するサービスの場合,サービス・デリバリー・プロセスにおい て即時に便益を享受できないために,顧客満足の形成が抑制され,その結果と して顧客参加も抑制されるおそれがある。そして,この好循環が阻害される,

あるいは影響力が弱められることが考えられる。

また,医療サービスや教育サービスは「顧客のサービス・デリバリー・プロ セスへの参加に伴う不快性」および「便益享受の不確実性」という特質を内在 しており,これらの特質も顧客のサービス・デリバリー・プロセスへの参加を

顧客の参加によるサービスの生成・評価モデル

出所:藤村和宏(

a),『戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)・問題解決型サー

ビス科学研究開発プログラム・研究開発プロジェクト「医療サービスの『便益遅延性』

を考慮した患者満足に関する研究」研究開発実施終了報告書』,国立研究開発法人科 学技術振興機構 社会技術研究開発センター, 頁。

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抑制し,結果として顧客が期待する便益を享受できる可能性を低下させるとい う問題を発生させている(藤村, )。

顧客のサービス・デリバリー・プロセスへの参加に伴う不快性とは,サービ スはサービス提供者(組織あるいは従業員)と顧客との協働によって生成され ることから,顧客はサービス・デリバリー・プロセスへ参加しなければならな いが,その参加がネガティブな情動を喚起しやすいということである。顧客参 加とは,サービス・デリバリー・プロセスにおいて顧客がサービス提供者側か ら期待されている役割を主体的かつ適切に果たす,すなわち顧客自身が保有す る消費資源を主体的かつ適切に投入することであるが,このような遂行が不快 感を伴うということである。たとえばディズニーランドのようなテーマパーク の消費においては,顧客はサービス・デリバリー・プロセスへの参加において 時間や体力を積極的に使うことによって,快感や喜びなどのポジティブな情動 を喚起しやすくなることから,顧客参加は促されるであろう。一方,医療サー ビスの消費においては,患者の診療プロセスへの参加には肉体的苦痛や心理的 苦痛を伴い,不快感や恐怖などのネガティブな情動を喚起しやすいことから,

顧客参加は抑制されやすい,と考えられる。

一方,便益享受の不確実性とは,サービス消費によって顧客が期待する便益

を享受できるかどうか,に関して比較的大きな不確実性が存在しているという

ことである。つまり,サービス組織やその従業員は顧客が期待する便益を享受

できるように経営資源を適切かつ積極的に投入し,顧客も消費資源を積極的か

つ適切に投入したとしても,期待する便益を享受できるかどうかに関して不確

実性が高いということである。医療サービスや教育サービスの消費において

は,期待する便益を享受できるかどうかに関して不確実性が高く,顧客間でも

享受できる便益に差異が生じやすいであろう。期待する便益の享受に関して確

実性が高く,顧客が自らの消費資源の投入に見合った便益を確実に得られる場

合には,顧客参加は促されるであろうが,消費資源の投入に見合った便益を享

受できるかどうかに関して不確実性が高い場合には,消費資源を適切かつ積極

的に投入しようとするモチベーションは低下しやすい,と考えられる。

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このように医療サービスの消費では,顧客のサービス・デリバリー・プロセ スへの参加には不快感を伴い,そのような不快感を我慢しながら消費資源の投 入を適切かつ積極的に行ったとしても,期待する便益の享受に関して高い不確 実性を伴うことから,顧客参加は他のサービスに比べて抑制されやすい,と考 えられる。そして,そのように顧客参加が抑制された結果として,顧客は期待 する便益を享受できなかったり,高いと評価できる品質を享受できないことに より,顧客は利用した医療サービス組織の潜在的な便益生成能力を不適切に評 価するということが起こりやすくなるであろう。

⑶ 「便益遅延性」による評価の歪み

「便益遅延性」が存在するかどうかにかかわらず,サービス・デリバリー・

プロセスの進行段階によって,顧客が評価できる要因は異なるであろう(藤村,

)。医療サービスの場合,診療プロセスの開始時点では,治療成果は出現 していないために,患者は医療サービス組織のブランドや医師の評判,設備・

機器などの物理的環境などの品質を中心に評価を行うであろう。診療プロセス が開始され,医師や看護師などの医療従事者との間で人的相互作用が展開され ると,彼らとの相互作用の品質も評価できるようになることで,それらも評価 対象となるであろう。さらに診療プロセスが進行すると,人的相互作用が頻繁 に行われることで患者と医療従事者との間に良好な関係性が形成されたり,治 療成果を知覚・評価できるようになったりすることで,それらの品質を中心と して評価が行われるようになるであろう。このようにサービス・デリバリー・

プロセスの進展に伴って,それぞれの時点で顧客が注視する要因あるいは評価 に用いることのできる要因は異なってくることから,どの時点で顧客にサービ スに対する評価を聴取するのかによって,品質評価や顧客満足は異なったもの になる。

このようなことからサービス・デリバリー・プロセスの進展とともにサービ

ス品質に対する評価は変動することになるが,この品質には結果品質と過程品

質が含まれている。結果品質とは,サービス消費において提供されたもの,す

(10)

なわちサービスの消費動機となった基本的ニーズを満たす便益に関わる品質で ある。一方,過程品質とは,結果品質の提供のされ方に関する品質であり,サ ービス・デリバリー・プロセスでの顧客と従業員間の相互作用,顧客と物理的 環境間の相互作用,および顧客間の相互作用などから構成される品質である。

モノの使用経験に対する評価は,なんらかのトラブルが発生して顧客と製造企 業とが直接的に接触しない限り,結果品質のみによって決定されることが多 い。しかし,サービスの消費経験に対する評価は両品質によって決定される(藤 村, )。

「便益遅延性」が存在しないサービスの場合,サービス・デリバリー・プロ セスの終了時点で生成される便益は最大化していることから,顧客はサービス 消費の終了時点において,結果品質と過程品質の両方を評価することが可能に なる。そのために顧客によるサービスの品質評価や顧客満足は,サービスの 実態やサービス組織や従業員の潜在的な便益生成能力を比較的適切に反映し たものとなるであろう。一方,「便益遅延性」が存在するサービスの場合,

サービス・デリバリー・プロセスの終了時点では便益としての変化がまだ十分 に現れていないことから,消費終了時点では顧客は結果品質を過小評価し,

過程品質を中心に評価を行うことになるであろう。その結果として,顧客の 品質評価や顧客満足はサービス・デリバリーにかかわった従業員の態度や 行動,デリバリー環境を構成する物理的環境などによって大きく影響され,

サービス組織やその従業員の潜在的な便益生成能力を適切に反映したものとは ならないという事態が起こりやすくなるであろう。なお,適切に反映したも のとはならないとは,潜在的な便益生成能力が過小評価されるだけでなく,

サービス組織や従業員の便益生成に直接的にかかわる能力や活動の質よりも,

顧客との相互作用における態度や行動のほうが重視されて評価されるという

ことである。さらに,顧客が期待する便益を享受できる可能性を高めるため

に,顧客が適切かつ積極的に消費資源を投入することを強いるサービス・デリ

バリー・システムや従業員の行動よりも,顧客が期待する便益を享受できる可

能性を下げても,サービス・デリバリー・プロセスに顧客が参加することに

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よって喚起する不快感を低減することを優先するようなサービス・デリバリ ー・システムや従業員の行動のほうが高く評価されるということである(藤村,

)。

なお,サービス組織やその従業員の潜在的な便益生成能力がこのように不適 切に評価される場合,従業員の職務満足やワーク・モチベーションが低下する ことから,結果として顧客が期待する便益を享受できる可能性も低下するであ ろう。また,製造企業においてよりもサービス組織においてのほうが,品質や 顧客満足の向上,および長期的な競争優位の形成や維持において従業員が果た す役割が大きいことから,サービス組織における従業員の職務満足やワーク・

モチベーションの低下は製造企業におけるよりも深刻な問題である,と考えら れる。

.適切な顧客満足・顧客参加モデル構築の必要性

医療サービスは,その多くが信頼属性によって構成されているだけでなく,

本質的な便益である機能的便益の享受において遅延性が存在していることか ら,顧客は利用した医療サービスの品質やその提供組織の潜在的な便益生成能 力を適切に評価することが困難である,と考えられる。さらに,顧客が期待す る便益を享受するために彼ら自身に求められる参加も抑制される傾向があるだ けでなく,長期的な視点では好ましくなくても,そのような抑制をサポートす るような,あるいはその結果として肉体的負担が喚起するネガティブな情動を 抑制してくれるシステムのほうを選好することによって,評価に歪みが生じや すいことが考えられる。

一方で,医療サービス組織においては,サービス・デリバリーのためのシス

テムやプロセスを顧客志向的に改善することや,競争が激化する中で顧客満足

を向上させるための改善を行うことが求められており,その改善のための問題

や方向性を明らかにすることが必要となっている。しかし,そのような改善を

目的として患者を対象とする質的あるいは量的調査を実施したとしても,前述

のように顧客自身も提供されたサービスを適切に評価できない,あるいは歪ん

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だ評価を形成してしまうために,医療サービスを顧客志向的かつ満足なものに 改善するための方向性や問題点を的確に把握することは困難である,と考えら れる。このような状況にもかかわらず,医療サービス組織は現時点で提供して いる医療サービスやそのデリバリー・システムを的確に評価し,改善を図らな ければ,その医療サービス組織だけでなく,患者個人や社会全体も大きな損失 を被る危険性が存在している(藤村, )。そのため適切な評価を可能にす るような調査方法や調査実施の前提として,医療サービスの顧客満足や顧客参 加にかかわる問題を適切に反映したモデルの構築が行われなければ,このよう な危険性は低減されないであろう。しかしながら,医療サービスや教育サービ スのような「便益遅延性」が存在するサービスに対しても,ホテル・サービス やレストラン・サービスのような「便益遅延性」が存在しないサービスのため に構築された調査方法や顧客満足・顧客参加モデルがそのまま適用されること が多くなっている。

「便益遅延性」は,顧客側およびサービス組織側が抱える問題を解決し,適 切に医療サービスや教育サービスの改善を図るための新たな視点として導入し た概念である。この視点のベースとなっているのは,顧客はサービスを構成す る過程品質および結果品質を消費しているという捉え方ではなく,顧客は便益 を享受する,すなわち抱えている問題を解決するためにサービスを消費してい るという捉え方である。現在,顧客の抱えている問題を解決するための本質的 な便益,すなわち機能的便益の享受において遅延性が生じている期間に,顧客 はどのような要因を評価し,満足あるいは不満足を形成しているのか。また,

機能的便益の生成や享受に対する知覚はどのような要因によって促され,さら に,顧客に求められる参加はどのような要因によって維持・向上させられるの か,などを明らかにするために,患者を対象とした質的および量的調査を試行 錯誤的に繰り返すことによって,「便益遅延性」概念の精緻化を図るとともに,

「便益遅延性」を考慮した顧客満足・顧客参加モデルの構築を試みている。

そこで以下では,患者を対象に実施したアンケート調査の結果を用いること

によって,現在構築を試みている「便益遅延性」を考慮した顧客満足・顧客満

(13)

足モデルと従来型の過程品質・結果品質に基づく顧客満足・顧客参加モデルの 分析を行い,両モデルのデータの適合性やモデルの違いが導く改善の方向性の 違いなどについて検討を行いたい。

Ⅱ.「便益遅延性」を考慮した顧客満足・

顧客参加モデル

.分析に用いるデータ

ここでは,まず「便益遅延性」を考慮した顧客満足・顧客満足モデルについ て考察し,次章で過程品質・結果品質に基づく顧客満足・顧客参加モデルにつ いて考察を行う。これらの分析で用いるデータは,独立行政法人科学技術振興 機構内の社会技術研究開発センターにおける「問題解決型サービス科学研究開 発プログラム」において,平成 年度に採択された「医療サービスの『便益 遅延性』を考慮した患者満足に関する研究」(研究代表:藤村和宏)で実施し た患者調査によって得られたものである。本研究開発プログラムでの研究で は,患者やその家族を対象とした WEB 調査をはじめとして,患者を対象とし たヒアリング調査とアンケート調査(単発調査・継続調査) ,医療従事者を対 象としたヒアリング調査とアンケート調査などを実施したが(藤村, a),

ここでの分析には,平成 年に 病院の患者を対象に実施した単発のアンケ ート調査の結果を用いることにする。アンケート調査を実施した 病院の特 徴,調査実施期間,および有効回収数は表 のとおりである。

表 の 調査は調査期間中に対象病院において外来で診療を受けた患者を対 象としたことから,急性疾患と慢性疾患が含まれている。しかしながら,両者 では機能的便益の内容が大きく異なり,「便益遅延性」が生じることによるネ ガティブな影響は急性疾患よりも慢性疾患のほうが大きいこと,さらに,現代

( ) 単発調査は,調査対象病院の患者に 回のみ回答を依頼する形態のアンケート調査で ある。一方,継続調査は,診療プロセスの進展とともに患者の便益の享受に対する知覚 や満足がどのように変化するのかを明らかするために,同じ患者に継続的に調査に協力 してもらう形態のアンケート調査である。

(14)

の医療サービスを継続的に受給する患者の多くは慢性疾患であることなどを考 慮して,ここでの分析には有効回収票の中の慢性疾患からの回収票を用いるこ とにした。また, 歳未満については,本人ではなく保護者が回答している ことも考えられることから, 歳以上の患者からの回収票( , 票)を分析 対象にすることにした。分析対象とした患者の特性は表 のとおりである。

病 院

n

A病院 .

B病院 .

C病院 .

D病院 .

性 別

n

男 性 .

女 性 .

不 明 .

年 齢

n

代 .

代 .

代 .

代 .

代 .

代 .

代以上 .

不 明 .

診療プロセスの段階

n

第 段階:初診段階 .

第 段階:治療準備段階 .

第 段階:本格的治療段階 .

第 段階:回復期・リハビリ段階 .

第 段階:定期的通院段階 .

第 段階:完治間近段階 .

不 明 .

疾病の命への影響度

n %

全く影響しない .

あまり影響しない .

早期発見ならば大丈夫 .

まあ影響する .

非常に影響する .

不 明 .

病 院 所在地 特 徴 調 査 期 間 有効回収数

A病院 香川県 床(調査当時), 診療科の市民病院 平成 年 月 日〜 月 日( 日間)

B病院 大阪府 床, 診療科の独立行政法人の病院 平成 年 月 日〜 月 日( 日間) , C病院 大阪府 床, 診療科の株式会社の病院 平成 年 月 日〜 月 日( 日間)

D病院 千葉県 床, 診療科の医療法人の病院 平成 年 月 日〜 月 日( 日間) , 調査実施病院および調査の実施概要

分析対象とした患者の特性

(15)

つの便益と顧客満足の関係

サービスは機能的便益,感情的便益,および価値観的便益から構成されてい ると捉えることができるが,「便益遅延性」概念が想定する遅延性は機能的便 益の享受において発生するものである。しかし,感情的便益と価値観的便益は 過程品質にかかわるものであることから,デリバリー・プロセスのデザイン,

サービス従業員の能力や熱意,倫理観,参加のあり方,顧客の期待する最終目 標水準や参加のあり方などによって,それらにも遅延性が生じることが考えら れる(藤村, )。図 の上図は,診療プロセスの進展によって つの便益 享受に対する知覚がどのように変化するのか,を分析した結果である。折れ線 は各質問に対してポジティブな評価( 段階評価において「 」あるいは「 」 と回答)をした患者の割合,すなわち各便益の享受を知覚した患者割合の変化 を表している。なお,各便益の測定には以下の質問項目を用いている。

機能的便益:以前に比べて,身体に痛みを感じなくなった。

感情的便益:以前に比べて,病気に関しての不安感がなくなった。

価値観的便益:病気との付き合い方をよい方向に考えることができるように なった。

医療サービスを構成する つの便益のいずれについても,診療プロセスの段 階が進むほど,享受を知覚する患者の割合は多くなっている。また, つの便 益では,機能的便益(自覚症状の改善)において最も遅延性の程度が大きく,

次いで感情的便益(病気の不安の低減)が大きく,価値観的便益(病気とのつ きあい方の変化)は比較的小さくなっている。価値観的便益が先行して知覚さ れ,次いで感情的便益が知覚され,さらに遅れて機能的便益が知覚されるよう である。最も遅延性の程度が大きい機能的便益については,第 段階( .%)

と第 段階( .%)の差は . ポイントであり,診療プロセスの進展とと

もに享受が促されることが窺われる。なお,同様に価値観的便益と感情的便益

についても差を見ると,それぞれ . ポイント, . ポイントであり,両便

益は比較的早い段階で知覚され,診療プロセスの進展による影響は機能的便益

に比べて小さいようである。

(16)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 第 4 段階 第 5 段階 第 6 段階 第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 第 4 段階 第 5 段階 第 6 段階

総合満足 期待との比較での満足 構成比(%)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

知覚している患者の割合(%)

機能的便益 感情的便益 価値観的便益

注)縦軸の(%)は 5 段階評価で「 4 」あるいは「 5 」と回答した人の合計の割合である。

第 1 段階 第 4 段階

初診段階

回復期・リハビリ段階

第 2 段階 第 5 段階

治療準備段階 定期的通院段階

第 3 段階 第 6 段階

本格的治療段階 完治間近段階

また,機能的便益の享受を知覚した患者の割合は第 段階( .%)から第 段階( .%)の間で . ポイント,第 段階( .%)から第 段階( .%)

の間で . ポイント増加しており,機能的便益の享受に対する知覚は回復期・

リハビリ期以降に起こりやすくなることが窺われる。この機能的便益の享受に 対する知覚に関して興味深いのは,第 段階の退院後の定期的通院段階に位置

診療プロセスの進展による つの便益享受と顧客満足の変化

(17)

する患者において,知覚した人の割合が大きく低下していることである。この ような低下は,病院の物理的環境は患者の体調や動きを考慮して構築されてい ることから,身体の調子が悪くても使い勝手に問題を感じないが,自宅に帰る とそのような配慮はされていないために日常生活に苦痛や不便を感じ,まだ症 状が回復していないと知覚することによって生じている,と考えられる(藤 村, )。

図 の下図は,同様な分析を顧客満足(総合満足,期待との比較での満足)

について行ったものであり,折れ線は各質問に対してポジティブな評価( 段 階評価において「 」あるいは「 」と回答)をした患者割合の変化を表して いる。 満足 と回答した患者の割合も治療プロセスの段階が進むほど多くなっ ており, つの便益,特に機能的便益の享受が進むほど顧客満足も向上する ことが推測される。また,第 段階においても,総合満足度で .%が,期 待との比較での満足度でも .%が 満足 と回答しており,機能的便益の 享受において遅延性が生じている期間,すなわち顧客が期待する最終目標水準 が達成されるまでの期間においても 満足 と感じている患者が相当の割合で 存在している。医療サービスの本来の便益である機能的便益をまだ享受できて いないにもかかわらず 満足 が形成されているのは,先行して享受される 価値観的便益や感情的便益が患者にポジティブな影響を及ぼしていることに よる,と考えられる。すなわち,価値観的便益や感情的便益は機能的便益の 遅延性を補完するかたちで顧客満足の向上・維持に貢献していることが推測さ れる。なお,診療プロセスの初期段階においても高い顧客満足が形成される ことについては,患者に対する継続調査の結果に基づくならば,当該病院を 選択する際の期待水準の高さによって影響されているとも考えられる(藤村,

b)。

図 は,機能的便益の享受を知覚しているかどうかで患者を区分し,診療プ

ロセスの進展により顧客満足(総合満足,期待との比較での満足)がどのよう

に変化するのかを分析した結果である。折れ線は各質問に対してポジティブな

評価( 段階評価において「 」あるいは「 」と回答)をした患者割合の変

(18)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

機能的便益を享受している患者層 機能的便益を享受していない患者層

機能的便益を享受している患者層 機能的便益を享受していない患者層

構成比(%)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

構成比(%)

【総合満足】

【期待との比較での満足】

第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 第 4 段階 第 5 段階 第 6 段階

第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 第 4 段階 第 5 段階 第 6 段階

注)縦軸の(%)は 5 段階評価で「 4 」あるいは「 5 」と回答した人の合計の割合である。

第 1 段階 第 4 段階

初診段階

回復期・リハビリ段階

第 2 段階 第 5 段階

治療準備段階 定期的通院段階

第 3 段階 第 6 段階

本格的治療段階 完治間近段階

化を表している。なお,機能的便益を享受している患者層に分類したのは「以 前に比べて,身体に痛みを感じなくなった」という質問に対して「 」あるい は「 」と回答した患者であり,その他の患者は機能的便益を享受していない 患者層に分類している。顧客満足は,総合満足で測定した場合も期待との比較 での満足で測定した場合も,機能的便益を享受している患者層のほうが高く

診療プロセスの進展による顧客満足の変化(機能的便益享受の有無別)

(19)

なっている。また,機能的便益を享受している患者層と享受していない患者層 の間において,顧客満足の差異が特に大きくなっているのは第 段階であり,

総合満足では . ポイント差,期待との比較での満足では . ポイント差と なっている。この結果から,診療プロセスの途中段階では,機能的便益の享受 において遅延性が存在しているとしても価値観的便益や感情的便益が補完的に 機能することによって,顧客満足の向上・維持することが可能であるが,最終 段階ではそのような補完機能が働きにくいということが推察される。

では,機能的便益の享受において遅延性が生じている期間において,価値観 的便益と感情的便益のどちらのほうが補完的な機能をより強く果たすのであろ うか。表 は, つの便益の享受パターンによって患者を分類し,顧客満足

(総合満足,期待との比較での満足)を比較した結果である。表 の上表は つの便益の享受パターンと総合満足との関係を分析したものであり, 満足 と 回答( 段階評価において「 」あるいは「 」と回答)した割合が最も高い のはパターン ( つの便益とも享受: .%)であり,次いでパターン (機 能的便益と価値観的便益の享受: .%),パターン (感情的便益と価値観 的便益の享受: .%),パターン (価値観的便益のみ享受: .%)が高 くなっている。逆に 満足 という回答が最も少ないのは,パターン ( つ の便益とも享受なし: .%)であり,次いでパターン (機能的便益のみ享 受: .%),パターン (機能的便益と感情的便益の享受: .%)が少な くなっている。

また,表 の下表は つの便益の享受パターンと期待との比較での満足との 関係を分析したものであり, 期待以上 と回答( 段階評価において「 」あ るいは「 」と回答)した割合が最も高いのはパターン ( つの便益とも享 受: .%)であり,次いでパターン (機能的便益と価値観的便益の享受:

.%),パターン (感情的便益と価値観的便益の享受: .%)が高くなっ ている。逆に 期待以上 という回答が最も少ないのはパターン ( つの便 益とも享受なし: .%)であり,次いでパターン (感情的便益のみ享受:

.%),パターン (価値観的便益のみ享受: .%),パターン (機能的

(20)

便益享受パターン 総 合 満 足 パターン 機能的 小 計

便益

感情的 便益

価値観 的便益

全く満足 していない

どちらとも 言えない

非常に満足 している

○ ○ ○ ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

○ ○ × ( − ) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

○ × ○ ( − ) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

○ × × ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

× ○ ○ ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

× ○ × ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

× × ○ ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

× × × ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

小 計 ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

便益享受パターン 期待との比較での満足

パターン 機能的 小 計 便益

感情的 便益

価値観 的便益

かなり期待 以下である

期待通り である

かなり期待 以上である

○ ○ ○ ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

○ ○ × ( − )( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

○ × ○ ( − ) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

○ × × ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

× ○ ○ ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

× ○ × ( − )( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

× × ○ ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

× × × ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

小 計 ( .) ( .) ( .) ( .) ( .) ( .)

便益享受パターンによる顧客満足の差異

Pearson

のカイ二乗値: .

*** ***: .%水準で統計的に有意である。

注)○は当該便益を享受していることを,×はまだ享受していないことを意味している。

Pearson

のカイ二乗値: .

*** ***: .%水準で統計的に有意である。

注)○は当該便益を享受していることを,×はまだ享受していないことを意味している。

(21)

便益のみ享受: .%)が少なくなっている。これらの結果から,当然では あるが, つの便益とも享受する場合に顧客満足は最も高くなり,逆に つの 便益とも享受しない場合に顧客満足は最も低くなることは明らかであろう。ま た,他の便益とともに価値観的便益が享受されている場合に,総合満足でも期 待との比較満足でも,顧客満足は比較的高くなっていることから,価値観的便 益のほうが感情的便益よりも顧客満足の向上・維持により大きな影響を及ぼ し,機能的便益の享受において遅延性が生じている期間において補完的役割を より強く果たすことが推察される。

.便益・顧客満足・顧客参加の基本的次元の抽出

次に, つの便益の顧客満足および顧客参加に対する影響を考察するための 準備として,サービスを構成する便益の基本的次元を抽出を行うために便益に かかわる の質問項目を用いて因子分析を行った。表 はバリマックス回転 後の因子負荷行列である。 因子が抽出され,因子負荷量の大きい質問項目の 内容から,第 因子は「価値観的便益」にかかわる次元,第 因子は「感情的 便益」にかかわる次元,第 因子は「機能的便益」にかかわる次元と解釈でき る。

この抽出された つの便益の享受に対する知覚が診療プロセスの進展ととも にどのように変化するのかを考察するために,患者を診療プロセスの段階別に 分類し,因子得点の比較を行った(表 )。 つの便益とも診療プロセスの進 展ともに享受に対する知覚は高まる傾向があるが,統計的に有意な差異が見ら れたのは機能的便益と感情的便益だけである。この結果は,機能的便益と感情 的便益は診療プロセスの進展とともに生成され,享受に対する知覚も徐々に高 まることから生じている,と考えられる。一方,価値観的便益が統計的に有意 にならなかったのは,図 の上図が示すように,診療プロセスの初期段階から 高い割合で享受が知覚されており,診療プロセスの進展の影響を受けにくいこ とによる,と推察される。

次に,顧客満足の基本的次元を抽出するために,顧客満足にかかわる つの

(22)

診療プロセスの段階 機能的便益 感情的便益 価値観的便益 第 段階:初診段階

(n= ) − .

( . )

− .

( . )

− .

( . ) 第 段階:治療準備段階

(n= ) − .

( . )

( . )

− .

( . ) 第 段階:本格的治療段階

(n= )

− .

( . )

− .

( . )

− .

( . ) 第 段階:回復期・リハビリ段階

(n= ) .

( . )

− .

( . )

( . ) 第 段階:定期的通院段階

(n= )

( . )

( . )

( . ) 第 段階:完治間近段階

(n= ) .

( . )

( . )

( . )

F

検定量 .

**

*

因 子 質 問 項 目

第 因子 第 因子 第 因子 価値観 共通性

的便益 感情的

便益 機能的

便益 この病院の医療サービスを受けることで,私の人生観も良い方向に変

化した。

毎日を一所懸命に生きていこうと思うようになった。

病気との付き合い方をよい方向に考えることができるようになった。

この病院の医療サービスを受けることで,病気とのつきあい方が良い 方向に変わった。

以前に比べて,病気に打ち勝とうとする気力がわいてきた。

以前に比べて,「治療後に通常の日常生活をおくれるのか」についての 不安感がなくなった。

以前に比べて,「元の仕事に復帰できるのか」についての不安感がなく なった。

以前に比べて,恐怖心がなくなった。

この病院の医療サービスを受けることで,私の病気に伴う不安は解消 された。

以前に比べて,病気に関しての不安感がなくなった。

期待以上に,自覚する症状が軽くなった。

以前に比べて,身体に痛みを感じなくなった。

現在までの治療の成果は期待通りである。

このまま治療を続けば,回復するという実感がある。

私は現在, 私にとって最善の医療サービスを受けることができている。

寄 与 率 .% .% .% .%

Cronback の α . . .

サービスを構成する便益の基本的次元の抽出

注 )回答は「そう思わない」を「 」,「そう思う」を「 」とする 点尺度で聴取している。

注 )主因子法,バリマックス回転。

注 )因子は固有値が 以上のものを抽出。

注 )尺度の信頼性(Cronback の α)は枠で囲んだ項目で行っている。

診療プロセスの進展による 便益の享受状況の変化

注 )上段は各セルに属する患者の因子得点の平均値,下段は標準偏差である。

注 )nはサンプル数である。

注 )**は %水準で,*は %水準で統計的に有意である。

(23)

質問項目を用いて因子分析を行った。表 は因子負荷行列であり, 因子が抽 出された。

この因子分析から得られた因子得点を用いて,診療プロセスの段階によって 顧客満足がどのように異なるのかを分析した。表 は,患者を診療プロセスの 段階によって分類し,因子得点の平均値を比較した結果である。第 段階(定 期的通院段階)を除いて,診療プロセスの段階が進むほど顧客満足も高まる傾

因 子 質問項目

第 因子 共通性 顧客満足

この病院で良かった 再利用意向 現時点での満足

寄 与 率 .% .%

Cronback

α

診療プロセスの段階 顧客満足 第 段階:初診段階

(n= )

− .

( . ) 第 段階:治療準備段階

(n= )

− .

( . ) 第 段階:本格的治療段階

(n= )

− .

( . ) 第 段階:回復期・リハビリ段階

(n= )

( . ) 第 段階:定期的通院段階

(n= )

( . ) 第 段階:完治間近段階

(n= ) .

( . )

F

検定量 .

***

顧客満足の基本的次元の抽出

注 )回答は「そう思わない」を「 」,「そう思う」を

「 」とする 点尺度で聴取している。

注 )主因子法。因子は固有値が 以上のものを抽出。

注 )尺度の信頼性(Cronbackの

α)は枠で囲んだ項目

で行っている。

診療プロセスの進展による顧客満足の向上

注 )上段は各セルに属する患者の因子得点の平均値,

下段は標準偏差である。

注 )nはサンプル数である。

注 )***は .%水準で統計的に有意である。

(24)

向が見られ,便益の享受とともに顧客満足も高まる傾向が見られる。

前述のように医療サービスのデリバリーにおいても顧客の適切かつ積極的な 参加は必要不可欠であることから,機能的便益の享受において遅延性が生じて いる期間において,顧客参加はどのように促され,顧客満足にどのような影響 を及ぼすのか,さらに,顧客満足の向上は顧客参加を促す要因となるのか,な どを考察するために,顧客参加にかかわる基本的次元を抽出するために因子分 析を行った。表 は,バリマックス回転後の因子負荷行列であり, 因子が抽 出された。因子負荷量の大きい質問項目の内容から,第 因子は「患者自身の 回復のための参加」にかかわる次元,第 因子は「医療サービスの改善のため の参加」にかかわる次元と解釈できる。本研究で想定していた顧客参加は患者 自身の回復のための参加であるが,治療を受けている病院の医療サービスを改 善するための参加も存在することが明らかになったことは興味深いであろう。

表 は,診療プロセスの段階によって顧客参加がどのように異なるのかを分 析した結果であり,数値は各段階に位置する患者の つの参加にかかわる因子 得点の平均値である。顧客自身の回復のための参加については,統計的には有 意ではないが,診療プロセスの進展とともに高まる傾向が見られ,第 段階

因 子

質 問 項 目

第 因子 第 因子 患者自身の 共通性

回復のため の参加

医療サービ スの改善の ための参加 治療に対して,前向きに考えて行動した(ている)。

安静度に応じて,積極的に身体を動かした(ている)。

医師や看護師との良好な関係作りに努めた(ている)。

検査や治療,入院生活などが快適になるように,改善点について積極的に 提案を行った(ている)。

病院の医療サービスが全体的に良くなるように,積極的に提案を行った(て いる)。

寄 与 率 .% .% .%

Cronback の α . .

顧客参加にかかわる基本的次元の抽出

注 )回答は「そう思わない」を「 」,「そう思う」を「 」とする 点尺度で聴取している。

注 )主因子法,バリマックス回転。

注 )因子は固有値が 以上のものを抽出。

注 )尺度の信頼性(Cronback の α)は枠で囲んだ項目で行っている。

(25)

(回復期・リハビリ段階)からプラスになっている。この結果から,医療従事 者が先導して実施する必要のある診察と治療が中心の期間においては患者は受 動的であるが,患者が主体的に回復のために活動を実施できる期間においては 患者参加が促進されることが推察される。一方,医療サービスの改善のための 参加については,統計的に有意であり,特に第 段階(完治間近段階)におい て参加傾向が高くなっている。この結果からは,患者自身の身体的および心理 的な健康度が回復することにより,自分以外のサービス・デリバリー・プロセ スにかかわる要因にも注意を払うことができるようになり,受けた医療サービ スの改善のための参加が促されることが窺われる。

. つの便益の相互独立を前提とした顧客満足・顧客参加モデル

⑴ 顧客満足に対する つの便益と顧客参加の影響

ここでは,先に抽出した つの便益および顧客参加(顧客自身の回復のため の参加)が顧客満足に及ぼす影響について考察を行いたい。前述の分析のよう

診療プロセスの段階 顧客自身の 回復のための参加

医療サービスの 改善のための参加 第 段階:初診段階

(n= )

− .

( . )

( . ) 第 段階:治療準備段階

(n= )

− .

( . )

− .

( . ) 第 段階:本格的治療段階

(n= )

− .

( . )

( . ) 第 段階:回復期・リハビリ段階

(n= )

( . )

( . ) 第 段階:定期的通院段階

(n= )

( . )

− .

( . ) 第 段階:完治間近段階

(n= ) .

( . )

( . )

F

検定量 . .

*

診療プロセスの進展による顧客参加の変化

注 )上段は各セルに属する患者の因子得点の平均値,下段は標準偏差である。

注 )nはサンプル数である。

注 )*は %水準で統計的に有意である。

(26)

に,機能的便益の享受において遅延性が生じている期間においては,価値観的 便益や感情的便益が機能的便益を補完するかたちで顧客満足の向上・維持に貢 献していると考えられることから, つの便益の間には影響関係が存在するこ とが考えられる。しかし,ここでは, つの便益および顧客参加は相互に独立 して顧客満足に影響を及ぼすというモデルを仮定して分析を行いたい。

表 は, つの便益および顧客参加(顧客自身の回復のための参加)が顧 客満足に及ぼす影響を明らかにするために,先に抽出した顧客満足を被説明変 数として重回帰分析を行った結果である。カッコなし数値は標準化回帰係数,

その下のカッコ付き数値は t 検定量,R は自由度調整済み決定係数,F 値は F 検定量,n はサンプル数を表している。

患者全体で分析した場合, つの便益および顧客参加とも顧客満足に対して

統計的に有意な影響を及ぼしている。顧客満足に対して最も影響度が大きいの

は価値観的便益であり,次いで機能的便益,感情的便益,顧客参加の影響が大

きくなっている。しかし,患者を位置する診療プロセスの段階で分類し,段階

ごとに同様な分析を行うと,すべての段階において顧客満足に統計的に有意な

影響を及ぼしているのは価値観的便益と機能的便益であり,逆に顧客参加はい

ずれの段階においても統計的に有意な影響を及ぼしていない。機能的便益は医

療サービスの提供する本質的な便益であることから,顧客満足に対して最も大

きな影響を及ぼすと考えられるが,第 段階(初診段階)および第 段階(完

治間近段階)以外は,価値観的便益のほうが影響力は大きくなっている。第

段階から第 段階において価値観的便益のほうが機能的便益よりも顧客満足に

対する影響度が大きくなっているのは,前述のように機能的便益は享受におけ

る遅延性の程度が最も大きく,知覚遅延性や目標達成遅延性が生じやすいこと

から(藤村, ),顧客満足に反映されにくいことによって生じている,と

推察される。しかし,第 段階では機能的便益の享受が進み,消費している医

療サービスの評価において中心的な役割を果たすようになることから,顧客満

足に対して最も大きな影響を及ぼすようになる,と考えられる。一方,第 段

階においても機能的便益が顧客満足に対して最も大きな影響は及ぼしている

(27)

が,この段階ではまだ機能的便益は享受されていないことから,説明が困難で ある。ただ,紹介等で同病院での診療を開始した患者の場合,当該病院に対す る期待水準の高さ,あるいは信頼感から不安感が低減し,身体的な痛みや自覚 症状が軽減したと知覚した,ということも考えられるであろう。あるいは初診 での医師とのコミュニケーションによって価値観的便益が先行して享受され,

それに影響されて身体的な痛みや自覚症状が軽減したと知覚し,機能的便益を 享受したと知覚したとも考えられるであろう。

また,感情的便益の顧客満足に対する影響が統計的に有意になっているの は,第 段階(治療準備段階),第 段階(本格的治療段階)および第 段階

(定期的通院段階)であり,これらの段階は不安や恐怖などを喚起しやすい時 期であるが故に,そのようなネガティブな情動を低減し,心理的健康度を回復 してくれるような医療従事者の行動や情報の影響を受けやすい,と考えられる。

なお,第 段階の退院後の定期的通院段階において感情的便益の影響度が統計

従属変数 説明変数(標準化係数) 自由度調整

済み決定係数 顧客満足 機能的便益 感情的便益 価値観的便益 顧客参加

全 体

(n= )

( . ) *** .

( . ) *** .

( . ) *** .

( . ) * R = .

F 値 . ***

診 療 プ ロ セ ス の 段 階 別

第 段階:初診段階

(n= ) .

( . ) ** .

( . )

( . ) * .

( . ) R = . F 値 . ***

第 段階:治療準備段階

(n= ) .

( . ) ** .

( . ) * .

( . ) *** .

( . ) R = . F 値 . ***

第 段階:本格的治療段階

(n= )

( . ) *** .

( . ) *** .

( . ) *** .

( . ) R = .

F 値 . ***

第 段階:回復期・リハビリ段階

(n= ) .

( . ) ** .

( . )

( . ) *** .

( . ) R = . F 値 . ***

第 段階:定期的通院段階

(n= )

( . ) *** .

( . ) *** .

( . ) *** .

( . ) R = .

F 値 . ***

第 段階:完治間近段階

(n= ) .

( . ) ** .

( . )

( . ) ** .

( . ) R = . F 値 . ***

顧客満足に対する つの便益と顧客参加の影響度

注 )カッコなし数値は標準化回帰係数,その下のカッコ付き数値は t 検定量,R は自由度調整済み決定係数,

F は F 検定量,n はサンプル数である。

注 )*** は .%水準で,** は %水準で,* は %水準で統計的に有意である。なお,統計的に有意でない

項目は網掛けにしている。

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