奈良教育大学学術リポジトリNEAR
発達における機能連関に関する研究 ― 言語発達と 手指の機能の発達 ―
著者 田辺 正友
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 17
ページ 117‑126
発行年 1981‑03‑23
その他のタイトル A Study of Functional Relations with
Development : Relations between Developments of Language and Finger Activity
URL http://hdl.handle.net/10105/6505
発達における機能連関に関する研究書
一言語発達と手指の機能の発達
田 辺 正 友
(障害児学教室)
序
保育や教育の問題にかかわって、近年、子どもたちの発達を把握する必要性がいわれてきてい る。それは、従来の発達観・教育観を克服して、子どもの限りない可能性への信頼と期待が実践 的にも理論的にも確信となってひろがりつつあることの1つの反映と考えられる。障害児教育の 分野でも、これまでの発達観・障害児観の批判的検討を行なうなかで、新た1こ、「発達とは何で あるか」を問い直しつつ、障害児を発達的にとらえ直す試みが行なわれ、障害のもつ発達的意味 を考えるための手がかりが得られ始めてきた。
子どもの教育や保育をすすめていく上で、科学的な発達の見方ができることは大切なことであ る。なぜならば、発達とは何であるかをしっかりと把握することによって、教育の目棲を確立し、
子どもの中1こ育ちつつある力を確かなものにすることができるからである。さらに、発達的視点 にたって、子どもの見方を変えることが、新しい保育・教育の手だてを作り出していくことにな るからである。
ところで、人問発達の過程は、発達の大きな変り目(発達の質的転換期)を乗り越えて高次化 していくといわれている。障害児の発達的理解にとって、この発達の質的転換期との関連で把握 することが重要である。質的転換期をいくつも克服して、すべての子どもは共通の道を歩み、発 達していくのであるが、概して、障害児は、この時期でつまづき、障害の存在が顕著になる。し かも、その時期をのりこえるのに時間がかかる。時間がかかるのは、とくに質的転換期であるが、
最もひっかかるのは、1歳半ころむかえるr話しごとば獲得期」の時期のようである。発達心理 学ではこの時期を、乳児期から幼児期へ移行する精神発達上の重要な時期の1つだと考えている。
それまでは「手」により外界を操作していたのに変わり、主として、「ことば」により外界を操 作するようになるが、この1歳半という時期が、子どもの発達にとって非常に重要な時期である
ことは、実践的にも提起されてきている。
さらに、1歳半という時期は、障害と深くかかわっていることが明らかにされてきている。こ の時期を、高谷清(1976)は、いわゆる自閉症の好発期であるとし、田中形恵(1976)は、発 達遅滞につながる点頭てんかんの好発期であるとしている。1歳半という時期は、一般にどの子
A Study of Functional Relations with Development:Relations between Developments of Language and Finger Activity
Masatomo Tanabe(Department of Defectology,Nara University of Education,Nara)
一117一
どもでも神経質的徴候が現われやすいなど比較的その獲得が困難な発達段階であるが、この獲得 に障害がある障害児の場合、発達のつまづきをより起こし易く、また、子どものもっている弱さ が行動全般の問題になって現われたり、障害が顕在化したりする時期である。
このように、障害のある子どもは、発達の質的転換期といわれるところでつまづきやすく、そ こで発達が長い間のびなやむということがある。しかし、それはその子どもの限界なのではなく、
そのつまづきを乗り越えるための豊かな援助の手だてをそれだけ要求しているのである。そこに、
保育や教育の果たすべき重要な役割がある。近年、障害児教育の場において、教育対象となる子 どもたちの障害が重度化、多様化していく状況にある。このような状況にあって、障害児の発達 を基盤から掘り起こし、高めていく具体的、実践的な手だてが求められている。いまどういう力 を獲得し、どういう発達の課題にたち向っているのかという深い洞察と的確な判断に基づき、困 難を乗り越えやすいように必要な保育・教育の内容と方法を創造することが要請されているので
ある。
さきに述べた1歳半の発達の質的転換期でつまづいている障害児は、「ことばがおくれている」
「ことばがでない」という子どもたちが多い。相談でもことばのおくれを主訴とするものが非常 に多い。言語の問題を考える場合、従来は、ことばだけをとり出して問題にする傾向が強かった が、それでは言語のことはわからない。言語を他のいろいろなことがらとの連関において多面的 にとらえなおしてみる必要がある。子どもの行動の変化を発達的視点でみていくためには、発達 の1つの現象にのみ目をとめるのではなく、1つの現象とその他の現象とのかかわりにおいてみ ていく必要がある。筆者がかかわっている3歳児健診での相談では、 「ことばだけが問題です」
との指摘が多い。一般に幼児期の段階で重視される行動は、言語発達であり、乳児期には、ねが えりとか歩行といった運動性の発達が注目される。運動発達、言語発達は、それぞれの時期にと って重要な意味をもつ行動であるが、運動のみあるいは言語のみが重視されるところに一面性が
ある。
子どもの発達は、言語、運動、情緒、社会性といったそれぞれの領域ごとに発達の1順序性をも っている。しかも同時に、他の諸領域とも相互に関連し合っているのである。発達を理解するた めには、発達しつつある子どもを全面的にとらえなければならない。現在の発達研究のなかで求 められている方向は、子どもの要素的な行動の個別機能的発達だけを問題にすることから、それ らの間の機能連関を重視することである。そして、こうした発達連関を基軸とした研究成果から、
多くの知見が得られ始めている。
障害児においては、とくにこのような発達連関が問題になる場合が多い。研究成果から学、ξミ中 で、わたしたちは、「身体の動き」「手・指の働き」「言語・認識」の3つのレベルから、子ど
もの発達をとらえていこうとしているが、障害のない場合、発達の質的転換期でこの3つのレベ ルは、だいたい平行して獲得されていく。しかし、障害児の場合、それぞれのレベルの働きに発 達の「ずれ」が生じやすく、ひとりの子どもの中で、発達の領域によって発達の「ずれ」が大き
く、獲得したレベルと獲得していないレベルとを同時にもった時期が長く続くという現象を起し やすい。精神遅滞児の場合、3つのレベルのうちでとくに、言語・認識のレベルでの獲得が困難
であることが多い。そのことがまた、次の質的転換期の獲得を困難にしているのである。
このように、子どもの言語の問題を考える場合、ことばだけを対象として研究するのではなく、
できるだけ多面的に諸機能の連関し合う関係のなかで、言語の役割をとらえていかなければなら ない。本研究は、以上のような観点に立ち、言語発達と他の諸機能の発達との連関の問題を明ら かにしようとして計画したいくつかの実験的研究のうちの1つの紹介であることをまずはじめに 付記しておく。
問 園
子どもは、言語を獲得することによって論理的思考や概念の抽象化が可能になり、仲間とのか かわりを豊かにしていくことができるようになる。しかしながら、発達の初期の段階では、言語 のみによって認識や思考を深め、発展させていくことは困難である。具体的に事物にふれたり、
実際的な牛やからだによる活動を伴なうことによって、外界へ主体的、能動的に働きかけていく なかで、認識や思考を深めていくことが可能になってくるのである。
視知覚の発達に関して、筆者(田辺;1980)は、次のように指摘した。「視知覚機能は、新生 児期にすでにその萌芽をみせ、他の諸機能と同様、発達過程のなかで成熟し、その機能を複雑に 構造化させながら発達の重要な構成部分の1つを成していく。初期の発達段階においては、子ど
もは対象の諸特徴を認識するのに実際に手で物を操作することをとおして行ない、視知覚過程は 手の操作による行為から分離しておらず、「手」が対象を認識する様式として中核的な機能を果 たしてい乱3〜4歳ころになってくるとこれが分離しはじめ、知覚的行為の体系が出現しはじ め、5〜6歳ころになって成立するといわれている。より進んだ発達段階においては、 「眼」が 相対的優位性を発揮しはじめ、視知覚の果す役割が重要になってくる。子どもの生活の中では、
諸機能が密接に相互に連関し合いながら働き、子どもが新しい段階へと発達するにつれ諸機能の 連関の仕方の構造が変わり、諸機能の中で中核的役割をになうものが変わっていく。子どもが言 語を獲得していく過程を詳細に検討してみると、それは、きわめて複雑であり、ダイナミックな 過程であることがわかる。子どもの言語の獲得についても、単に言語機能の発達にのみ着目する のではなく、子どもの全行動発達のなかで位置づけられなければならない。
教育実践分野において、言語の獲得につまづきをもつ障害児は、多くの場合、手指の力が弱く、
繊細な手指の運動が不得意で、手指機能の発達に遅れをもっていることが指摘されている。二反 田美智子(1974)は、話しごとば獲得期前にあると考えられるひとりの障害児に焦点をあて、参 加観察法に基づく事例研究を行なっている。そのなかで、r手指の運動発達の面ではスプーンを 使う、箸を使う、バトミントンで遊ぶなど手首の回転がきき、手首のレベルでは1歳半〜2歳児 以上の力を持っていたが、rつまむ」運動では、まだ生後34〜37週ころに見られるr低次のつ まみ」が主であり、指先の力は、話しごとば獲得の遅れと相関するかのように弱かった。」と報 告している。
ここでは、言語獲得につまづきをもつ子どもの示す発達のさまざまな遅れやもつれのなかで、
一u9一
手指の機能の発達との関連について検討を試みたい。生後1歳ころの子どもたちをみていると、
みじかい発声を伴なった指さし行動を盛んに行なう。指さし行動については、これまで臨床的に も言語獲得ときわめて密接な関係があることが明らかにされている。指さしが、どのような過程 において形成され、どのように発展するのか1こついての理論化はまだ十分ではないが、指さしの 出現の有無が言語獲得に関する診断的価値をもつことが明らかにされつつある。子どもが外界へ の積極的な働きかけをとおして、外界とのかかわりをつくり上げていく時、手を媒介としてのか かわりから、言語を媒介としてのかかわりへと転換していく過程において、指さし行動が大きな 役割を果たしているようである。長島瑞穂(1969)は、言語が獲得される過程では、行動とくに手か
ら指の活動が基盤になって、その行動が発声をひきだし、その発声が特定の状況に対する特定の 発声1こ条件づけられて言語を獲得させると指摘している。歩行を獲得した子どもたちは、手の自 由さを得ることによって、活動の世界をさらに拡げ、握る、つまむ、ちぎる等の手の操作によっ て、外界へ能動的に働きかけ、とりいれ、変化させていく。同時に、それらの行動が対象的行為
と結びついて言語の習得が盛んになってくるのである。
言語と手指の機能との発達的関連に着目した研究には次のようなものがある。コリッォーヴァ ら(1973)は、1歳前後から1歳半の子どもの構音発達に及ぼす、手指の運動の影響を調べる実 験を行ない、その結果、全体的運動、手、手の指の運動が子どもの発達に多大な影響を与えるこ
と、構音能力の形成との関連では、とくに指を使ってのデリケートな活動が重要性を持っている と指摘している。そして、その理論的根拠として、大脳皮質において手とくに指の運動投射野が きわめて広い面積を占めていることをあげている。さらに、西村学ら(1978)は、このような根 拠の他に、手の運動をつかさどる運動投射野と構音をつかさどる運動言語領野とが極めて隣接し た位置にあることによると考えている。河添邦俊(1976.1979.1980)は、「重度・重複障害児」
に対する長年にわたる教育実践のなかで、コミュニケーション未獲得の子どもたちは中指を中心 とした把握やつまみをする子どもが多く、そして、このような子どもたちに対して、母指を中心 とした把握ならびに他の3指を握りこんで母指と示指の2本のみで指先によるつまみを実現する ことをめやすとした指導を行なうなかで、手指機能の発育とコミュニケーションにおける話しこ とばの面での発達をもたらすことができたとしている。手指機能と表語言語との間に密接な関連 があることを見出している。さらに、表語言語とかかわる手指の機能の発達を考察する上で、母 指と示指を中心とした手指の操作の獲得を、1つの目安としてr棒状物の把握」r小さく平たい 物のつまみ」「にぎりこぶし」においてみることを仮説的に提起し、手指の操作機能と表語言語 機能との1順序性と発達的関連性についての試案を示している。西村ら(1975)は、2歳から4歳 の保育園児を対象に、手指の操作能力と構音との相関的関係を見出そうとして、彼らの作成した
「手指違動検査」と50語よりなる構音検査を実施した結果、2歳台においてのみ、両機能間に正 の相関関係を認めうる結果を得ている。そこから、手指の運動能力が構音能力の発達段階の指標
となりうる時期については、一定の限界があることを示唆しているかもしれないとしている。長 島(1969)も、手の働きと発声活動の質的変化のかかわりについて検討するなかで、その関係に ついて、示牲数3可逆操作期から1次元可逆操作期にかけては、手の活動に伴なって、それぞれ、
噛語的発声、みじかい発声、発語がみられ、2次元形成期では、手は働らかなくとも、むだのな い独立した発語がみられることをみいだしている。
本研究では、言語発達と手指の機能の発達的関連を、1次元形成期から2次元形成期の精神遅 滞児について検討し、そこから、言語獲得期の障害児の教育指導の問題について言及しようとす るものである。その際、言語発達を表現言語のみに注目するのではなく、言語行動の諸側面から とらえ、それらと手指の機能の発達との関連について分析を試みるものであ乱
方 法
実験課題 1 手指の機能発達一発達の規準が明確にされていること、および、本研究の被験 児の発達段階を考慮して、手指の操作機能の発達は、河添(1976)の母指と示指を中心とした手 指の操作を、棒状物の把握と小さく平たい物のつまみ課題において観察しれ r把握」課題にお いては、被験児の手に少しあまる丸い棒を握らせ、その握り方から発達年齢を評価した。rつま み」課題では、直径1㎝大のおはじぎを被験児につまませ、そのつまみ方から発達年齢を評価し
た。
2.言語発達一言語発達は、本研究の目的、および、被験児の発達段階を考慮して、上野一彦
(1976)のr言語行動発達検査」をもちいた。
披酸児 被験児は、奈良市内小・中学校の障害児学級に在籍する児童・生徒23名で、その内 訳は、表2に示す通りである。発達年令(D A)は、津守式乳幼児精神発達診断法によって算出
した。
なお、本研究は奈良市丁小・中学校およびN小学校障害児学級における発達診断活動の一環と してなされたものであって、実施期間は、1979年9月〜1980年10月の問であった。
結果の処理 「把握」課題と「つまみ」課題の結果については、表1に示す、河添・丸山(1979)
の「手指の機能の発達と獲得すべき力の目安」に基づいて、その発達年齢が評価された。言語発 達年齢については、r全体尺度」および「全体的運動」r言語器官の運動」「外界(人)への興 味」「外界(物)への興味」r言語理解」r言語表現」の各領域別に、その発達年齢が算出され
た。
表 手指の機能の発達と獲得すべき梵義子.河添邦俊(1。。。)
目安となる
N 齢 棒状物の把握 小さく平たい物のつまみ
9ヵ月未満 A.尺骨側把握
@ 母指は対向指なしで棒の反対
@側にまわる。
a.準備期
@示指揮えから榛骨側3指でかき寄せる。
B.母指と中指対向
@ 尺骨側4指が並列し、母指は シ線的に中指と対向する。
9ヵ月以上 P3ヵ月未満
b.焼骨側4指でのつまみ〜梼骨側3指でのっ
@まみ(前期)
@尺骨側の指を1〜2指軽く伸ばしている。
@3指つまみ前期では、丸く平なものをまず1
⊥レをつまむ時3指でつまむが、その1枚をてのひらと尺骨側の3指で握らすと、次の1
№ェつまめず、次をつまむ時は先のを離して、
トび3指でつまむ。
枚がつまめず、次をつまむ時は先のを離して、
一121一
13ヵ月以上 P8ヵ月未満
C 母指は中指と示指の中間に対?尺骨側4指が並列し、母指は中指と示指の中間に直接的に対 向する。 c.挽骨側3指でのつまみ(後期)
@小指・薬指を軽く伸ばし、母指・示指・中指の3指で最初の1枚をつまむ。次にそれを
レ骨側3指とてのひらで握らせ、2枚目をっ ワませると、母指と示指をピンセット状にし ト2指でつまむ。
18ヵ月以上
R歳未満
D.母指と示指対向
@ 尺骨側4指が並列し、母指は
@示指と直接的に対向する。
d.母指と示指のつまみ(前期)
@尺骨側3指を軽く伸ばし、母指と示指も伸ばした状態で、母指と示指でつまむ。
3歳以上
E.把握の確立
@ 尺骨側4指が並列し、母指の w関節は外側へ突き出すように ネり、母指と示指の指先は合い
ネがら、母指は中指の指先の方へ向く。
e、母指と示指つまみの確立
@尺骨側3指を軽く握りこみ、母指と示指を
ツ状に指先を対向させてつまみ、微細な操作ができる。
結 果 と 考 察
全被験児のDA、言語行動発達年齢、手指の機能発達の年齢段階を示したものが、表2である。
なお、r把握」rつまみ」の段階表示は、表1中に表示した基準に対応するものである。
表2 言語発達年齢と手指の機能の発達段階
一一Rロ 語 行 動 発 達 手指の発達 氏名 性別
CA
DA 全体 全体的 1コ 回口一一鼈 拓 外界 外界 一一鼈 …五 一」鼈 …五器官 ㈹への 吻八の ○ ロロ [コ ロロ
尺度 運動 の運動 興味 興味 理解 表現 把握 つまみ
H.K, 男 6:9 1:5 1:0 1:4 3:6 O:8 0:10 1:O 0:9 B C
KlM. 女 6111 1:4 1:3 1:6 2:O 1:0 1:2 1:3 112 C b
T.S. 女 7:O 1:1 0:ll 1:4 1:5 0:8 0:ll 0:10 0:9 B b
M.I. 男 7:1 1:6 1:5 1:8 1:5 1:3 1:5 1:3 1:3 C C
H.O. 男 7:2 1:8 1:6 1:4 2:0 1:2 1:5 1:7 1:4 C C
MK. 男 7:ll 1:ll 210 1:10 3:6 1:8 2:2 2:10 1:7 D d
SM. 女 8:0 1:5 1:3 1:6 1:5 1:0 1:1 1:3 1:1 C C
N.I. 男 8:2 1:8 1:7 1:6 2:0 1:3 1:7 1:7 1:6 D d
M.O. 女 8:4 1:8 1:9 3:6 3:6 1:2 1:5 1:9 1:6 D d
M.Y. 女 818 1:7 111 1:4 2:0 1:0 113 1:O 1:2 B C
S1I. 男 818 3:1 3:2 3:6 3:6 2:8 3:6 3:6 2:5 D e
H.H. 男 819 1:5 114 1:6 1:5 O:ll 1:3 1:6 1:5 C C
H.K. 男 8:9 1:7 1:4 1:4 3:6 1:2 1:0 1:4 1:5 C C
T.I. 男 9:3 1:9 2:1 2:0 2:O 1:9 1:6 2:lO 211 D d
K.O. 女 9:5 1:9 114 1:I0 210 1:2 1:6 1:3 1:6 C C
N.Y. 女 919 1:9 1:4 1:6 3:6 1:2 I:2 0:l1 1:3 C C
F.H. 男 9:lO 1:8 1:7 1:4 115 110 1:4 1:8 1:8 C d
N.N. 女 10:O 1:10 2:O 215 3:6 1:6 1:lO 1:lo 1:8 C d
R.I. 男 10:4 2:8 2:2 1:10 3:6 1:9 210 2:6 2:1 D e
MN. 女 ll:1 212 1:9 1:8 3:6 1:8 1:6 1:8 1:8 D d
M.A. 男 ll:2 1:8 1:8 1:6 3:6 1:4 1:3 1:ll 1:7 C C
S.A. 男 12:3 1:1o 116 1:6 3:6 111 1:5 1:6 1:6 C C
H二M. 男 14:0 3:4 2:5 3:6 3:6 1:8 210 1:1 2:6 D d
これに基づき、手指の機能の発達と言語発達との関連をみるため、「把握」および「つまみ」
と言語発連年齢との相関係数を求めたものが、表3である。参考までに、C A,DAとの相関も 示した。この表から明らかなように、CA、「言語器官の連動」を除く他の尺度とr把握」rつ まみ」との間に高い相関が得られており、いずれも、有意な相関が認められた。r把握」 rつま み」それぞれと言語発達年齢との関連は、大体、同じような傾向を示しているが、「つまみ」課 表3 手指の機能r把握」rつまみ」と言語発達との相関
言語行動発達 CA DA
全体レ度
全体的
^動
…… 童El==1 ロロ
孖ッの^動
撃ヨの外界
サ味
ィへの外界
サ味
一書 …五[コ ロ回
揄
…… ≡≡五【=1 口回
¥現
「把握」とのγ .318 .667榊 .765榊 .640州 .379 .747州 .646舳 .667} .788舳
「つまみ」との7 .337 .734州 .849州 .616舳 .403 .787舳 .764榊 .747州 .795州 舳P<.01
題との関連の方がやや高いようである。言語行動発達の各領域別に比較してみると、r全体尺度」
「外界(人)への興味」 「言語表現」との間には、かなり高い相関が認められた。このような結 果から、本研究に関していえば、手指の機能一r把握」rつまみ」の発達水準と言語発達の水準 との闇に、一定の対応関係があることが明らかであ乱ただし、両機能間の関連については、さ きに紹介した先行研究から推察し得るように、一定の年齢的限界があることを考慮しておかなけ ればならないであろう。
言語発達年齢(全体尺度)と手指の機能の発達段階との対応関係について、大体の傾向を分析 してみる。被験児が少なくここから一般的な結論を引き出すことはできないが、言語発達年齢が
1歳ころの段階では、手指の機能はrB・b」、つまり、r把握」においては、母指と中指が対 向し、「つまみ」では、挽骨側4指あるいは3指のつまみで、手指の操作が母指と中指中心の段 階にあり、言語発達年齢1歳3か月から1歳7か月ごろの段階では、手指の機能は「C・c」、
つまり、手指の操作が母指と中指に示指が加わってきている段階にある。言語発達年齢1歳8か 月から2歳6か月ごろでは、手指の横能は「D・d」、つまり、手指の操作が母指と示指によっ てなされてくる段階にあるといえるようである。なお、23名中16名のものがr把握」とrつま み」の両課題の発達段階において一致していたが、のこり7名のものは、両課題間にずれを示し、
そのうち5名までは、「つまみ」課題の方が「把握」課題に比して1段階高い水準にあった。
河添ら(1979)は、表語言語と手指の機能との発達的関係において、手指の機能が「B・b」
の段階では、表語言語はr意味ある哺語の時期」、以下「C・c」の段階では、r1語文数語の 時期」、「D・d」の段階では、「2語文から多語文の時期」という対応関係を明らかにしてい
るが、本研究におけるその関係をみると、ほぼ、河添らの結果との一致がみられる。
なお、本研究での主目的ではないが、手指の機能と発達年齢(D A)との間にも相関がみられ たことについては、坂上ルミエ(1975)、西村ら(1978)の手指の発達を指標とするr重度精神 遅滞児」の発達診断検査の作成をめざす研究において、手指機能の発達と精神発達との相関が高
く、精神発達の指標としてその有効性が高いとの結果からも考えられることである。
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今回は、言語行動発達検査で測定された言語発達と手指の機能の発達との関連について、得ら れた結果に基づき、おおまかな傾向についての分析を試みたものである。現在、奈良教育大学障 害児学研究室と付属小・中学校障害児学級教官グルーブによる特定研究r障害と発達に視点をあ てた障害児教育の検討」のなかで、言語行動を学習場面等の具体的場面での観察を通じてとらえ、
さらに、発達の質的転換期との関連で分析を試みるための作業を進めているので、詳細な考察は 続稿に譲ることにして、ここで、今回得られた結果をふまえ、言語獲得期の障害児の教育指導の 問題について言及してみたい。
前述のように、言語の問題を考える際、言語を他のいろいろなことがらとの関連において多面 的にとらえなおしてみる必要がある。そして、このことは、ことばの指導、教育の問題を考えて いく上でも重要になってくるのである。発声活動から言語獲得の過程は、障害のない子どもたち にあっては、ぼんやりしていたらいつ変ったのかわからない程一瞬の間のことである。しかし、
障害児の発達過程を詳しく観察すると、この段階でつまづいている子どもが実に多く、発達への とりくみにかなりの困難があることは事実である。発達のすじ道の共通性を大切にしながら、障 害に目をむけて、障害があるゆえになされなければならない密度の高いとりくみを展開していか なければならない。
言語獲得は重要な課題であり、発達的変化として目につきやすい。そのために、言語獲得のみ に注目して、表現手段としてのことばを教えることだけをやっていると、実践は狭い偏ったもの になってしまう。基本的には、子どもの生活全体から見直し、遊びを豊かな楽しいものにするこ とが大切である。そして、言語の獲得につまづいている子どもには、外界.に対する働きかけの主 要な器官としての手指の機能を、全体的発達のなかで位置づけ、身ぶり、手ぶりのある遊び、砂・
水・粘土などの変化する素材を使っての遊び等、手指を駆使する遊び、また、トランポリン、リ ズム遊び等の体全体を使っての遊びとかをとりいれた指導などが配慮されねばならない。手指の 運動を含む運動諸機能が、より生き生きと発動するような諸条件を作り出していくとりくみを通
じ、ことばの獲得とそれを豊かにふくらませていくことが、めさIされなければならない。子ども の発達段階や発達のつまづきにあわせた教育のなかみを細かく検討することによって、ことばの 獲得にとりくんでいく必要がある。
さら1こ、長島(1970)が指摘するように、話しことばが獲得されないままに生活年齢が高くな ると、無目的性行動の増加や激しい常同行動、自閉的傾向、自傷行為などがみられやすく、生活 年齢が発達にとってマイナスになりやすいということがある。言語の獲得は、障害児教育の実践 において重要な課題の1つとなっているのである。言語がなかなか獲得できないままに、さまざ まなもつれの症状が発現してくる場合がある。「ウロウロ動きまわる」 「かみつく」等の症状と して現われたり、r自分の髪をひっぱる」r頭を叩く」等の自傷行為として現われてくる。また、
外界に積極的にかかわるべき発達のエネルギーが内面にこもって空転しr首を左右に振る」r両 手をたたき合わせる、くみ合わせる」といった常同行動が派生したりして、発達のもつれが複雑 化してきやすい。本来、手というものは、外界に働きかけたり、物をつくり出すことに使われる
ものであるが、常同行動は外へ向かわず、自分の内側1こエネルギーをとじこめている状態とみる
一124一
ことができる。子どもによっては、手を使う活動を組織化していく必要がある。つまり、にぎる 力、っまむ力を何か物を使うカベ、形を生みだす力へ向けていく指導が必要になってくる。
このような顕在化された症状にのみ目を奪われ、とかくマイナスに評価されがちであったり、
原因を、単に子どもの性格や障害にのみ求め、安易な対症療法的指導が試みられることが多かっ た。それでは、教育が教育とならず、訓練的なものに歪小化されてしまい、その結果、子どもの 発達の幅をせばめたり、のびる力を押えたりすることにもなりかねないのである。そうした症状 がrなぜ」「どんな場面」で出現してきたかという、現われてくる条件、場面を明らかにするな かで、その事実を、客観的・科学的に把握して接していかなければならない。まわりのものが、
顕在化された症状にばかり目を向けて、発達と切り離して狭視的にとらえてしまうのではなく、
いま持っている力として評価し、それを土台として内容の豊かな遊びなどのなかで、より多様な カベと導いていくことが大切である。いわゆる2次的症状を数多く持ったものにするのか、めざ ましい飛躍の時期にするのかによって障害の意味は全く変わってくるのである。
子どもたちは、言語を獲得することにより、要求するカや行動をコントロールする力を育て、
ことばを媒介として、仲間とのコミュニケーション活動が盛んになり、彼のもつ可能性を飛躍的 に増大していく。わたしたちは、障害の重い子どもたちに対しても、ことばの獲得をめざしてね ばり強いとりくみを行ないながら、この困難の多い課題を切り開いていかなければならない。
引 用 文 就
河添邦俊 1976 足と手指の発達と言語獲得との関係について(その1) 東北福祉大学紀 要1,41−59.
河添邦俊・丸山美和子 1979 手指の機能の発達と表現言語の獲得 日本特殊教育学会第17 回大会発表論文集 136−137、および当日配布資料
河添邦俊 1980 足と手指の発達と言語獲得との関係について(その4) 東北福祉大学紀 要4,lll−126.
茂木俊彦 1974 手指の運動発達と言語一M.M.コリツォーヴァらの研究 精神薄弱児研究 184, 70−75.
長島瑞穂 1969 発達の質的転換過程の研矧3〕京都府立大学学術報告 人文23,135一 一45、
長島瑞穂 1970 重症心身障害児の発達保障 京都府立大学学術報告 21C,97−108.
西村学・神常雄 1975 運動機能と言語機能(その3) 日本教育心理学会第17回総会発表 論文集 140−141.
西村学・松野豊 1978 手指運動の発達ならびにそれと言語発達との関連をめぐって 東北 大学教育学部研究報告 26,225−2441
二反田美智子 1975 r話しごとば」獲得期前の障害児に対する教育指導の分析 障害者問 題研究 4,12−36.
山125一
坂上ルミエ 1975
高谷 清 1976 田辺正友 1980
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子どもの発達と障害 医療図書出版社
精神遅滞児の視知覚発達 こ関する研究 奈良教育大学教育研究所紀要16,
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一126一