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高   橋   健   人

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Academic year: 2021

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全文

(1)

 本書は︑一言にして云えば︑現代の数理経済学に対するき

わめて親切な教科書である︒一読しての印象を列挙してみれ

ば︑ いたずらに内容の豊富さを望まず︑最近の数理経済学の動

向をうかがわしむるに足りるだけの材料がよく選択され︑か

つ整理されてあること︑

 易より難に︑特殊から一般にという注意が行きとどいてい

て︑数学に対する抵抗を出来るだけ少なくしようとしている

こと︑ 数学的に訓練されていない読者を予想して︑説明はきわめ

て丁寧であり︑また本書だけで完全に理解できるように考慮

してあること︵ただし微積分の初歩程度の予備知識は仮定さ

れている︶︑

 ほとんど各部ごとに︑数題ずつの練習問題が用意されてい 高 橋 健 人

て︑本文を適当に補う考慮も払われていること︑などであって︑かなり複雑な内容のものを︑これだけ読み易い形にまとめ得たのは驚くべきことであり︑著者の力量と苦

心の程とが察せられるのである︒本書の出現によって︑数理

経済学がはじめて近づき易いものになったということができ

るであろう︒

 本書が︑これから永い間︑標準的な教科書としての地位を

占め︑多くの経済学徒に対して︑貴重な指針となるであろう

ことが予想される︒

 本書は序論につづいて二十章からなる本文と︑附録︵演算

子の代数︑問題解答︶索引とから成っている︒

 本文二十章は︑最後の章を除き︑前半︵一︱九章︶は微分

および差分方程式の応用としての動態理論︑後半︵一〇!一

九章︶は線形計画論を中心とした問題を取扱っている︒最後

の章︵二〇章︶は集計の問題と厚生経済学について述べてい

る︒前半︑後半は夫々三つの部分に分けられ︑最初の部分で

まず経済的な問題をとりあげて数学的に定式化し︑次に純粋

に数学的な解説の部分がつづき︑最後の部分でその結果を利

用して︑はじめの問題を更に発展させて行くのである︒その

構成のしかたがよく計画され︑かつ巧妙であり︑本書を近づ

き易く︑また興味あるものにする効果をあげている︒

 次に各章の題目をあげておこう︒

 一︑くもの巣模型とその他の簡単な動学模型

(2)

 二︑ケインズと古典派︑乗数

 三︑加速原理

 四︑数学的解析・複素数

 五︑数学的解析・線形微分方程式

 六︑数学的解析・線形差分方程式

 七︑景気変動論・サミュエルソンーヒックス

 ハ︑景気変動論・グッドウィン︑カレッキイおよびフィリ

   ップス

 九︑経済調整︑制御回路系

 一〇︑一般経済均衡

 二︑産業間の速関

 一二︑数学的解析・ベクトルと行列

 一三︑数学的解析・行列代数

 一四︑ベクトルと行列代数の応用

 一五︑ゲームの理論の初歩

 一六︑線形計面

 一七︑活動度計面︑資源の配分

 一八︑企業の理論

 一九︑価値論

 二〇︑集計の問題

 これらの内容を逐一紹介することはむしろ蛇足であろうか

ら︑以下︑現代の数理経済学の性格を解説する意味で︑いく

つかの項目をえらんで説明しておくことにしよう︒  動学模型について

一︑有限な長さの時間の遅れ︵timelag︶を考える期間分析

︵periodanalysis︶と︑時間についての導函数を導入する連

続分析︵continuousanalysis︶の二つの取扱い方があって︑

夫々差分方程式および微分方程式に導かれるのであるが︑特

に巨視的な問題に対しては︑単純な遅れだけでは不十分で︑

いわゆる分布した遅れ︵distributedlag︶を考えなければな

らない︒実際には︑数学的な制限のために︑いくつかのきま

った分布の型しか取扱われていない︒遅れの導入の仕方は解

の性質に大きな影響をもつのであって︑将来もっと研究が速

められなければならない︵一︑八︑九章︶︒

二︑巨視的な取扱いにおいて︑貨幣の ︵∃o9gq︶面から

と︑物の︵real︶面からとの立場の相違がある︒前者の立場

から︑流動注進好表を基礎にして︑利子率と産出額とについ

て︑くもの巣型の動学理論をつくることが出来るが︑産出量

と投資との相互作用をあらわすには︑後者の立場が速当であ

り︑︵自発︶投資から産出量への作用は乗数︵multiplier︶に

よって︑逆に産出量から︵誘発︶投資への作用は︑加速子

 ︵accelerator︶によってあらわされる︒加速子は時間の変化

を含んでいるから︑それ自身動学的な性質のものであり︑乗

数は時間の遅れを導入することによって︑はじめて動学的に

なるのである︵二︑三章︶︒

三︑乗数は安定的に︑加速子は発散的にはたらくから︑これ

(3)

    あわせて︑振動する模型をつくることができる︒し

かし︑景気変勅諭における模型としては︑単に振動するだけ

でなく︑次のような性質をもつことが要求される︒

 田 減衰または発散するのではなく︑定常的な振動である

  こと︑

 洵 上昇期と下降期の長さが同じでない︑すなわち非対称

  であること︑

 閣 振幅は外から与えた条件によるのではなく︑内在的な

  性質から定まること︑

 これらの条件を満足させるために︑何等かの形で非線形要

素をとりいれることが必要になってきて︑数学的な取扱いを

困難にしている︵七章︶︒

四︑また時間の遅れに関して︑事前︵exante︶事後︵ex

post︶の関係をどのように考えるかということがある︒

 以上の諸点︑および資本の蓄積や︑投資の決定などの取扱

い方によって︑ハロッドの成長理論からはじまるいろいろな

景気変動の模型が得られるのである︵三︑七︑ハ章︶︒

制御回路︵サイバネティックスの応用︶

 自動制御の理論の基礎であるフィード・バック︵feed‑back︶

の現象が乗数理論にあらわれることは注意に値する︒

 いま︑最も簡単な場合として︑誘発投資を無視し収入︵Y︶

消費︵C︶︑自発支出︵A︶︑乗数︵c︶等の間に次の式が成

立つものとする︒ て︑複雑な方程式を極めて見やすい形に書きあらわすことができるから︑前項に触れた景気変動の模型の比較が容易になり︑また線形の場合は工学で発達した方法を利用して問題を解くことができるのである︒すなわち︑図の矢印で結ばれる量の間の関係を伝達函数によって結びつけ︑代数的な計算によって︑矢印の方向をたどって全部の関係を合成することによって解を求めるのであらて︑かなり複雑な差分微分方程式の場合にも有効である︒ 経済調整および安定政策の問題は︑右のような縮図で云えば︑新しい制御回路をつけ加える問題に他ならないのであっ このとき︑Yはcを媒介として自分自身に作用していると考えることができるのであって︑これは乗数がフィード・バックの効果をもっていることに他ならない︒ このことは︑右の関係を図のようにあらわせば︑尚はっきりするであろう︵四角枠内の1またはcは矢の方向に関して前の量にかかるので︑一般には掛算の他に︑微分︑積分または時間の遅れなどをあらわす演算子があらわれる︶︒ 上のようなフィード・バックによって閉じ

た制御回路︵closedloop︶を含む線図によっ

(4)

て︑伝達函数の方法が使われる限り︑容易に解くことができ

るのである︒

 非線形の場合は︑右のようなうまい方法はない︒いろいろ

な取扱いが行われているけれど︑もっとこの方面の研究が要

求されている︒

 この頃に関逆してアレンは︑これからも工学方面と協力し

て行かねばならぬこと︑およびいままで一般的な理論を目標

としてきた数理経済学が︑もっと具体的な問題を直接対象と

する方向にうつって行かねばならぬことを力説している︵ハ︑

九章︶︒

題であるとすれば︑なめらかな曲線で結ぶと︑可能な適程を

あらわさなくなり︑現実的な意義をもたなくなるのである︒

更に︑生産要素や生産量の変化が大きいときか︑生産要素の

使用に制限があるときなど︑限界解析の方法が適当でない場

合も︑線形計画で容易に取扱うことができるのである︒  このように云えであるかのように感じられるが︑実際はひしろ逆であること企業としては︑いくつかの与えられた過程をどのように組合せるかというのが問 産量1に対する可能な︵feasible︶適程の組合せは︑この多角形の周および内部の点であらわされ︑特に折線PlP2Pl!P4は実際にえらばれ得る適切な︵efficient︶適程を意味している︒︵可能な適程のうち︑比が一定のとき人屋X‑2。 X‑Aを最小にするような適程がえらばれる︒︶この折線が︑生産量1のときの生産函数に対応している︒限界解析における生産函数は︑これをなめらかな曲線でおきかえたものといってもよい︒

(5)

 むろん︑限界解析は︑長期的な問題や︑一般的な性質を論

じるときに有力であって︑二つの方法は相補うべきものであ

る︒ 例として︑リカード効果があげられている︒これは両方の

立場から論じられるが︑線形計画の方がより自然であること

が示される︒

 なお︑上例において︑生産函数に対応するものとして︑行

は︑夫々与えられた過程およびその組合せに対応していて︑

それらに対する活動度︵activity︶と呼ばれる︒技術行列と

活動度は線形計画の基礎になるものである︵一〇︑一七︑一

八章︶︒

線形計画について

 二つの性質をあげるにとどめておきたい︒一つは︑線形計 およびそれらの一次結合 を作って︑これを企業の技術行列︵technology︶と呼ぶ︒この各列であらわされるベクトル 画と︑零和二人ゲームの理論とが数学的に同等であるということである︒ゲームの理論において︑戦略︵strategy︶によってきまる支払行列︵pay‑offmatrix︶が︑前項の技術行列

とその転置行列を含んだ形であらわされるのである︒

 他にあぐべきは双対︷ga︸︶の性質であって︑仮にはじめ

の線形計画が極小の問題であったとしても︑同時に︵異なる

変数に対する︶極大の問題として解釈することができるので

ある︒この一つの例として︑企業と消費者とに関する問題を

あげる︒このときは︑消費の活動度を定義することによっ

て︑技術行列を拡張して︑技術と好みの行列︵technology‑

tastesmatrix︶をつくると︑企業に対しては︑経費極小の問

題︑消費者に対しては効用極大の問題が同時に成立するので

ある︵一六︑一九章︶

 線型計画が実際の問題に対して︑著しい成功を収めている

ことが︑数理経済学の動向に大きな影響を与えるであろうと

思われる︒

 以上のほかに理論的に興味ある問題として︑効用の可測性︑

集計の問題などをあげておきたい︒前者については︑ノイマ

ン等に基く確率論的な方法︵十九章︶︑後者については︑タ

イル︵男、gl︶の研究︵二〇章︶を出発点としての発展が

期待される︒

 最後に︑本書の欠点をあげるとすれば︑まず︑膨大にすぎ

(6)

R.

G. D .

A‑enMathemati

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aEc

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o

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ることであろ‑。しかし'これは長所でもあるので'むやみ

な真数の削減は却って理解を困難にすることになる恐れが多

い。また'説明が不適当と恩われるところや'重複に過ぎる

ところなども、わずかながら眼についたが'これもとりたて

て云う程のことではない。ただ'この方面の専門家でない紹

介者が感じたことは'経済学的な説明や掘り下げがもう少し

加えられてあったならば'経済学徒以外の人々にも大へん興

味のあるものになったであろ‑ということである。しかし'

これは量の問題などを考えても'望苛の嘆に過ぎないかもし

れない。

それはともか‑'経済学を学ぶものにとって'本書の程度

の数理経済学が必須の教養となる日の近いことを期待したい

ものである。

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