微分積分学および演習Ⅰ 参考資料 3
2018年度前期
工学部・未来科学部
1年 担当
:原 隆
(未来科学部数学系列・助教
)■発展
:数列の差分と和分
babababababababababababababababababab
数列
{an} =a1, a2, a3, . . . , an, . . .は、その名の表す通り「数を並べたもの」であ るというイメージが強いが、「
n番目の項が
anである」という関係を 「自然数
nを入力
(input)すると実数
anが出力
(output)される」と捉え直すと、定義域を自然数全体の集 合
Nに限った 関数 である と解釈することが出来る。したがって、関数の性質を調べる 際に非常に役立つツールである 微分法・積分法 と同様の操作を数列に対しても考えること が出来る。しかも、数列の
“定義域
” Nは数直線の中で「飛び飛びに現われる数」
(離散的
discrete)
であるので、 「微分法」 「積分法」の定義は一層簡単になる
(「極限」を考える必要
がない
!!)1 2 3 4 5 6 x 0
定義
(差分と和分
)数列
{an}に対して
∆an =an+1−anで定まる数列
{∆an} (つまり 階差数列のこと
!!)を
{an}の 差分
differenceと呼ぶ。また、数列
{an}の部分和
∑n k=m
ak (
つまり 数列の和のこと
!!)を
{an}の
(mから
nまでの
)定和分
definite sumと呼ぶ。
babababababababababababababababababab
関数の微分
df
dx = lim
∆x→0
f(x+ ∆x)−f(x)
∆x
および定積分
∫ x=b x=a
f(x)dx= lim
∆x→0 x=b∑
x=a
f(x) ∆x
と良く見比べてみること。関数の場合は定義域
(実数の集合
R)が 連続 であるために「最 初に近似計算をしておいて 最後に極限
lim∆x→0
をとる」という作業が必要となるが、数列の
場合には定義域
(自然数の集合
N)が元々 離散的 なので、極限を取るという
(面倒な
)作
業をせずに済んでしまうのである。
■発展
:差分和分学の基本定理
(Fundamental theorem of discrete calculus)定理
(差分和分学の基本定理Ⅰ
)自然数
n≥mに関する数列
{ n∑
k=m
ak
}
を考えると
∆ ( n∑
k=m
ak
)
=an+1
が成り立つ。
(
微分積分学の基本定理Ⅰ
: d dx{∫ t=x t=a
f(t)dt }
=f(x)
の離散版
)【証明】
*1差分および定和分の定義から
∆ ( n
∑
k=m
ak
)
定義=
n+1∑
k=1
ak−
∑n k=m
ak
= (((((((((((
am+am+1+. . .+an+an+1)−(((((((((((
(am+am+1+. . .+an) =an+1
が成り立つ。
□“
部分和の数列
”の階差数列は元の数列
!!
定義
(原始数列と不定和分
)数列
{an}に対して
∆An=an (差分を取ると元の数列
!!)を満たす数列
{An}を
{an}の 原始数列
primitive sequenceと呼ぶ。また、数列
{an}の原始数列を求めることを 不定和分
indefinite sumするという。
(f(x)の原始関数
F(x)および不定積分
∫
f(x)dx
の離散版
)
差分和分学の基本定理Ⅰ より
An=n∑−1 k=1
ak
により定まる数列
*2 {An}は
{an}の原始数列である。
定理
(差分和分学の基本定理Ⅱ
)数列
{an}の原始数列
{An}および自然数
n≥mに対して
∑n k=m
ak=An+1−Am
が成 立する。
(微分積分学の基本定理Ⅱ
:∫ x=b x=a
f(x)dx= [
F(x) ]x=b
x=a
=F(b)−F(a)
の離散版
)【証明】 原始数列の定義
ak = ∆Ak =Ak+1−Akを
k=m, m+ 1, . . . , nとして足し合わせると
am =Am+1− Amam+2 =XXXAm+2−Am+1
...
+) an = An+1− ZZAn
∑n k=m
ak= An+1− Am
関数版←→
f(a)∆x1 ≈ (((((F(a+ ∆x1) − F(a)
f(a+ ∆x1)∆x2≈hhhhhhhhF(a+ ∆x1+ ∆x2)−(((((F(a+ ∆x1)
.. .
+) f(b)∆xn ≈ F(b+ ∆xn) − HHF(b)
x=b∑
x=a
f(x)∆x ≈ F(b+ ∆xn) − F(a)
が従う
(所謂「望遠鏡和の方法」
telescoping sum methodと呼ばれる方法
)。
□*1
講義で扱った微分積分学の基本定理Ⅰ の証明と見比べてみよう。
*2