先進国経済発展の計測的模型(二)
その他のタイトル A Statistical Model of Economic Development in Advanced Countries (II)
著者 瀬尾 芙巳子
雑誌名 關西大學商學論集
巻 6
号 5‑6
ページ 294‑323
発行年 1962‑02‑28
URL http://hdl.handle.net/10112/00021681
294
I V
結語
C 1
1 1 )
﹃キチソの波﹄の反省
5﹃ジュグラーの波﹄の問題
(~11)
循環別波動型
( i
)
4
実測的景気循環模型
時期別波動型 3 2 ー 皿循
環
3
先進国経済発展の計洞的模型
理論的傾向曲線
実測的趨勢模型
成長率の逓減
﹃コソドラチェフの波﹄の仮説
実測的長期波動模型︵以上本誌第六巻第一一一号所収︶
﹃キチソの波﹄の仮説︵以下本号︶ 2 ー
I I
長期趨勢
I
開題先 進 国 経 済 発 展 の 計 測 的 模 型 口
ロ︵ 瀬尾
︶
瀬 尾 芙 巳
子 ︱
1
0
一般に計測経済学において︑長期波動の問題と区別せられるべきものは︑産業循環
( 1 1
景気循環︶の問題であろ
う︒産業循環を説明する一般的な模型には︑
においては︑後者をして︑景気循環の一般的︑基本的な型であるとする考え方が支配的なひとつの潮流であるよう
である︒それゆえにここではまづ︑理念型としての﹃キチンの波﹄の仮説について吟味を行なうことにしたい︒
﹃キチンの波﹄というのは約四 0 ヶ月平均の小循環モデルであるが︑
裏附けをなしているものは︑
W . L .
C r u m
の
P e r i o d o g r a m A n a l y s i s
で あ
る ︒
C r u m
は こ れ に よ っ て ︑
0 年以後のニューヨークの六 0 日 i 九 0 日の商業手形の割引率について︑それが極端な乖離を除けばほぼ四 0
ヶ 月
②
の長さをもち︑上昇期間の間隔が下降期間よりも長いように歪められたサインカーヴの形態をとるとしている︒
J .
K i t c h i n は こ の C r u m
の業績をそのまま踏襲して︑理念的な週期に実際の日附をあてはめ︑良好な適合性をもっ
③ことを示した︒そこで用いられているツリーズは︑
計である︒そこでまづこれらのシリーズが︑
ておきたい︒それらはいわゆる価格・金融系列であって︑景気動向には感応度が高いが︑それが生産力視点に分析
先進国経済発展の計測的模型
3
皿 循
ロ
︵
環
瀬尾
︶
﹃キチンの波﹄の仮説
いわゆる﹃ジュグラーの波﹄と﹃キチンの波﹄とがある︒近年の概念
いわゆる﹃キチンの波﹄を検出する技術的
アメリカとイギリスの手形交換高・商品価格•利子率の月間統
いわゆる景気循環の動向に極めて敏感な景気指標であることに注意し
一 八
六
296
視角を据える場合には︑どこまでその再生産構造全体の変動の深度を正確に反映しうるものであるかが問題である
といえる︒こうして基礎過程の深部における週期的変動の性格を究明するという立場からいえば︑まづそのシリー
ぃズの性格のかたよりを指摘しておく必要があるであろう︒
このような前提をまづ確認しておいた上で︑
C r
u m
の試みた分析方法それ自体の吟味に︑直ちに進むことにしよ
C r
u m
が行なった研究の目的は︑利子率におけるサイクルの性質の検証を通じて︑
P e
r i
o d
o g
r a
m
( 週
期 分
析 図
︶
方法の経済統計への適用を批判することである︒
P e
r i
o d
o g
r a
m A
n a
l y
s i
s と い う の は ︑
られた時系列にあてはめてみて︑同調するかどうかを観察するものであって︑時系列のなかの﹁かくれている週期
性﹂を検出しようとするところの︑調和解析
H a
r m
o n
i c
A n
a l
y s
i s
の最も広く用いられている方法であり︑
F o
u ,
固
r i e r
級数により誘導された週期系列の有意性を検定しようとするためのものである︒
P e
r i
o d
o g
r a
m の作成にはま
づ予備的作業として︑
F o
u r
i e
r 解析に通例の加算過程
S u
m m
a t
i o
n
P r
o c
e s
s
を第一表の如くにして行なったもの
により強度係数
8 2
を算出する︒ここで︑
試行週期 U が真の週期に接近する場合にはその値は大きくなるような形で現われるが︑それは振幅の自乗を表わす
を ︑
う ゜
S 2
1 1
A 2
+ B
2
2 " 2 n i u
B 1
1 │
M M
i s i n
N ; 1 1 1
2 u 2
辻 u
A
=
L
l M
i c
o s
N ; 1 1 1
先 進 国 経 済 発 展 の 計 測 的 模 型 口
U は試行週期であり︑
N = P u
で あ
る ︒
8 2
は
P e
r i
o d
o g
r a
m に お い て ほ ︑
︵瀬
尾︶
個々の波長の波動を与え
第 1
表先進国経済発展の計測的模型
オー回
坦 期 介 析 目
0 ) f~J
2 )
S
良数強係
' ー'
0
Y2 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ Y u
︒
口
( 試 f 1
週阻)4
Y 1
Yu+l Y u + 2 . . . . . . . . . . . . . . . y2u
︵ 瀬
尾 ︶ い
で あ ろ う
︒
Y2u+ 1 Y 2 u + 2 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ Y 3 u
. .
: : :
: : :
Y(P‑ Y(.p‑1) :
l)u+l u+2 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ Y p u
M1 M2
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・・・M.ものである。(第一図)Crum~、試行週期を二l四八ヶ月についてとり、その
うち︑季節変動の影響を除去するために十二と四との倍数を除いている︒通例の
P e r i o d o g r a m
によって著しい極大点は四 0 であることが見出される︒
c y c l e s 1 1 J u g l a r c y c l e s
に 対
t
し
て ︑
こうして
C r u m
の手法は︑そもそもから短期循環の有無の統計的検定を目標としたことで
あり︑試行週期を当初から︑四八ヶ月︵四年︶以下について設定されていること
代替的なものと提出されているのではない︒
まして
m a j o r c y c l e s
に対して
m i n o r c y c l e s
こそが基本的ないし原型である
等という理論に支援を与えようとするものでもないことはいうまでもな
さてさらに
C r u m
にとってユニークなものは︑通例の
e P r i o d o g r a m A n a l y s i s
から得た結果に対するかれのテストの技術である︒
C r u m
は
かれのデータのうち利用した部分である一八七四年一月から一九一三年
︱二月までの記録を半分にわけて双方に同じ週期が保有されているかを
みるためにそれぞれをテストしている︒全間隔について適合した試行週
期が︑双方の半間隔またはいづれかの半間隔にあてはまらないならば︑
そうした週期は﹁みせかけの﹂ものであるかも知れぬからである︒まづ に注意しておきたい︒それゆえにそれははじめから︑何らかの主要循環
m a
o i
r
来要囲曲燃架幽
Q
#蒜起部商こ(懸圏)第二図
種々なる試行週期についてのコラム平均
(18741913) II 回
9/° 45 42 41 40 39 36
出所
W.L. Crum, op. cit. Figure
1.299
(::)
異常に激しいものであり︑
︵源
尾︶
二五
第二図において︑縦軸には第一表のコラム平均
M i
が︑横軸には時間がとられている︒試行週期は三八ヶ月から四
三ヶ月についてとられている︒図から︑四 0 ヶ月と四一ヶ月について比較的規則的な波状曲線が得られる︒
C r
u m
が ︑
のようなものであった︒そこで︑われわれはつぎのような点を指摘しておかねばならない︒
C r
u m
一 八 九 四
i 一九一三年の半間隔について︑同様な作図を行ない両者を対比し
ている︒そして︑四 0 ヶ月と四一ヶ月については後者の方が︒ヒークが早く来︑三九ヶ月については逆に遅れている
ことから︑四 0 ヶ月と四一ヶ月とについては︑試行週期が長すぎ︑三九ヶ月については短かすぎるのであるから︑
三九ヶ月と四 0 ヶ月との間におそらく真の週期が存在するのであろうと推論している︒
C r
u m
によれば︑正しくは 6 三九・一ヶ月の試行週期が近似的であろう︒
いわゆる四 0 ヶ月の短期循環
m i
n o
r
c y c l
e を検出するにあたって用いた手法とは︑要約すればみぎ
七して一八六六 i 一八七三年の変動は不換通貨の発行と国立銀行制度
Z a
t i
o n
a l
B a
n k
i n
g S
y s
t e
m
の開始の時期
に 合
致 し
︑
また一九一四 l 一九二二年は第一次世界大戦と連邦準備制度
F e
d e
r a
l R
e ,
s e
r v
e S
y s
t e
m の時期ではるかに少ない変動を示したとして︑この二つの期間を分析から除外している︒このよう
な不規則性の除去には︑そこにみられる不規則的な乖離なるものが︑別のなんらかの規則性を現わすものではない
かどうか︑または︑たんなる市場的偶然的な衝撃によるものであるか制度的な誘因によるものであるか︑等といっ
た問題を考慮することなしに︑機械的にその所与の範囲の試行週期に対する不規則性のゆえにのみ処理されている
のである︒したがって除去されたところの﹁極端な垂離﹂のなかになんらかの別の法則性が発見されないかどうか
先進国経済発展の計測的模型
第 一
に ︑
かれの分析は︑全期間のシリーズのうちで︑ ﹁あきらかに不規則的な極端﹂を除去していることである︒ は︑さらに一八七四
l一 八 九 三 年 と
︑
汁三回
三
k
I‑‑‑
こ‑―入―‑‑
乙~—•
I週期曲線 Y=asin(a
+舟叫(但し
aは振巾いま波長=週期
a=arc tan‑ A
=位相角)B
ま づ
︑
P e
r i
o d
o g
r a
m
は正確に対称的な︑
先進国経済発展の計測的模型
という問題が依然として残されることになる︒たとえば︑主要循環
m a
j o
r
c y c l
e s 1 1
J u g l
a r c
y c l e s
の問題は︑こ
こに残されたものの―つであろう。それゆえに
J•Kitchin
は、七i-0年間隔の主要循環majorc y c l
7 を﹁い e s
わゆる産業循環
T r
a d
e
C y
c l
e s
﹂としてなお挙げているのであが︒
第 二 に ︑
P e
r i
o d
o g
r a
m A
n a l y s
i s
そのものの問題が考慮されなければならない︒
ろの時系列に対して効果を示すものであるが︑このような週期的変動が実在するかどうかは疑しいばかりでなく︑
⑧
むしろ﹁事実に一致しない﹂ものであろう︒すなわち︑
P e
r i
o d
o g
r a
m
の依っている
F o
u r
i e
r
級 数
は ︑
な三角函数の形で表現される単振動運動を記述するものであるが︵第三図︶︑このような規則的な単振動運動が経
. ︐
済系列に内在しているという想定は︑すこぶる非現実的なものであろ引︒勿論このことは特定か訃瓜
5
下もの近似
口 ︵ 瀬 尾
︶ すなわち上昇と下降のタイムが等しいタイプの週期的変動を示すとこ
的な週期曲線導出の可能性とその意義を全く否定するものではない またかりにこのような週期的変動が近似的に存在するとしても︑
それが変化しつつある諸条件のもとで長期間に亘って持続するもの であるかどうかという問題である︒一方では︑週期の長さは経済シリ ーズにおいては可変的であるとみられる︒
C r
u m
自身は︑週期の可変
性を稼極的には検出できないが︑それを否定する決定的な証拠も存
餅
" " ‑
在しないから︑﹁経済的週期が一定であると仮定さるべきではない︒﹂
の で あ る が ︒
︵ 注
⑩ の 後 段 を み よ ︶
二六
物理学的
に
)
︵瀬
尾︶
としている︒他方では︑また﹁サイクルの形態も時と共に変化するかも知れない︒﹂︵クラム︶
︱つの屈折点を示すものであり︑
二七
C
r u
m
の算出によ
っても第一の半間隔と第二の半間隔とについての曲線の間には︑位相角のかなりの差異が存在する︒それゆえに
﹁われわれがもしもわれわれの週期の算定にあまりにも大きい正確さでもって固執するならば︑誤りに導くかも知
れない︒﹂︵クラム︶この問題は︑とくに
C r
u m
が︑二つの半間隔を一八九三年という時点で区切ってをり︑この恐
慌の年の前と後でサイクルが異った位相をもっているという事実を指摘している点でさらに興味あるものとなって
n u
いる︒この時点は︑既に価格や利子率の時系列や︑工業産出高の成長率についてみたように︑ 一聯の計測的分析に
いわゆる﹁大合併運動﹂
G r
e a
t M
e r
g e
r M
o v
e m
e n
t 1
1 独
さらに︑経済過程に特徴的な不規則的な変動は
P e
r i
o d
o g
r a
m をあいまいにするが︑その場合に︑不規則性は低
﹁にわかの不規則的な変動の発生は上向斜面によりも利子率のサイクルの下
向斜面によりしばしば来る︒この観念は︑われわれが極端な出来事︑とくに︒ハニックの︑サイクルの形態や長さに
e
"
U
対する影響を探究することを暗示する︒﹂︵クラム︶こうして独立の恐慌史研究の有意性が示唆されざるをえない︒
C r u m
: ' ; ;
! ︑この問題を処理するに当って︑まづ既述の通り︑分析から︒ハニックの月を除外することによって︑
いまいさを除去﹂している︒しかしなおかつ︒ハニックの影響を調らべるために︑季節的変動を除去したのちのサイ
ベU
クル図表を作成する必要について言及しているのである︒
第三に︑短期循環模型の導出における加算過程ないし平均法が含む問題を考慮せねばならないであろう︒
P e r i
o ,
d o
g r
a m
n A
a l
y s
i s
における強度係数の算出には︑試行週期の各序数︵年次︶についてそれぞれ各サイクルについ
先進国経済発展の計測的模型
下の局面においてより強く現われる︒ 占成立の劃期に符合するものとなっているからである︒ お
い て
︑
か つ そ れ が ︑
﹁ あ
302
先進国経済発展の計測的模型
ての加算過程
S u m m a t i o n P r o c e s
s が存在することは既に述べた︒また︑
M i t c h e l l 1 1 B u r n s
のいわゆる NBER
サイクルの全過程を九つの段階
s t a g e
に分けるがその各々について︑ ハ
u全サイクルの平均値をとって︑それを基礎にサイクルの型の検出を行なっている︒このような加算ないし乎均の過
程には︑当然いわゆる﹁不規則﹂変動すなわち他の型のサイクルの存在が消去されてしまうであろう︒例えば主要
循環もピークと谷が︑このような加算や平均のなかに埋没してしまうことになる︒したがって︑
K i t c h i n が ︑
リスとアメリカにおいて支配的な短期循環
m i n o r c y c l e s が ︑
︐
n u
変化も示さないと述べ︑また
B u r n s らも︑景気循環の型=
m i n o r c y c l e s
には︑何らの﹁事実的な﹂かつ﹁重要
^ w
な﹂長期的・構造的変化を蒙らなかったという結論を引き出す場合に︑その背後にあるこうした結論を導くに至る
までの手法が︑注意深く検討されねばならないのである︒そしてこのようなモデルの背後には︑
C r u m
による前述
のようなサイクルの形態変化についての注意や︑
⑰ての証明さえ内包していることに︑正当な関心が払われねばならないであろう︒
第 四
に ︑
みぎにみたような加算過程や平均法のもつ中和的な意義は︑
K i t c h i n 1 1 C r u m
や
M i t c h e l l 1 1 B u r n s
が
ともにマンスリーデークーに依拠していることによっていっそう重要なものとなるであろう︒いま前者についてい
え ば
︑ K i t c h i n
~、「
minor
m a x i m a
はほとんどの要素の月間数字に現われているが︑ それはしばしば年間平均 6
H u
で十分に示される程には支配的でない︒⁝⁝それゆえそれらは月間数字でのみ研究されねばならない︒﹂
ている。Crum~、
か れ の
P e r i o d o g r a m
方法そのものが検証されるシリーズに多数の項目を必要とするが︑
間数字を用いれば一世紀以上に亘る範囲を要するのでそのような長期間に亘って初期の条件が一定に持続すること 方式による景気循環模型の導出においても︑
仁
)
︵瀬
尾︶
年 と明言し
B u r n s
ら自身によるサイクルの持続期間と振幅の増大化につい ニ八
イギ
一世紀以上に亘ってその平均的な長さに何の重大な
︵ 註︶
(1)
餅
ー はむつかしい︒それゆえに週期性の研究には月間資料を用いるのである︑としていな︒しかしながら︑
ても︑産業循環の経済的意味を考える場合には︑年間資料に反映しないようなサイクルは︑むしろネグリジプルで
あるといえる︒たとえば数ヶ月のみの不況といったことは︑その回復が速かならばあまり重要な経済的効果をもち
えない︒しかるにこうした群小の弱い痙攣が各々独立に多数デークーに混入していることは︑その加算や平均の
結 果 に お い て
︑
サイクルの持続期間や振幅を過少に評価させる方向へのバイアスをもつであろう︒それは主要な谷
( 1 1
恐慌︶の現実的比重をおおいかくすことになる︒それゆえにサイクルの研究においては︑その長期的な様相を問
題とする限り︑むしろ年間数字に主たる重みをおいて考察を行うことが意味があるのではないかといえるであろう︒
第五に︑短期循環の原因論ともいうべき問題である 0
m i
n o
r c y c l e s
が︑すくなくとも近似的にある期間につい
て現われているとすれば︑それはいかに説明されるべきであろうか︒
⑳るリズミカルな運動の結果である︒﹂としているが︑
が問われねばならない︒このことはいわゆる﹃キチンの波﹄を含む長期的な波動図表を︑その実物的系列について
描きつつ︑その出現する時点の構造的省察を周到に試みることによって︑その手がかりを得ることができるであろ
以 上 に お い て
︑
う 。
先進国経済発展の計測的模型
に
)
︵瀬
尾︶
二九
このようなリズミカルな心理を惹き起す客観的・物質的基礎 いづれにし
K i
t c
h i
n
は︑﹁あきらかに心理的な原因によ
いわゆる﹃キチンの波﹄のふくむ問題が批判的に吟味されたと考えるので︑
作成したサイクル図表を提出し︑そこに現われる問題を検討することに進もう︒
W .
C .
M i t c
h e l l
a n d
A .
F .
B u r n
s , M e a s u r i n g
u s B
i n e s
s C y
c l e s
.
つぎに︑われわれの
304
(9) (8) (7) (6) (5) (4) (3) (2)
先進国経済発展の計測的模型
W.
L .
C
ru
m,
Cy
cl
es
f o
Ra
te
s o
n C
om
me
rc
ia
l Pa
pe
r,
h T
e R
ev
ie
w o
f E
co
no
mi
c S
t a t i
s t i c
s ,
J an .
1 9
2 3 .
Cr
um
の研究の目的は本来
H
利 子 率 に お け る サ イ ク ル の 性 質 を 検 証 す る こ と
︑ 口
Pe
ri
od
og
ra
m
Me
th
od
の
経済統計への適用を批判
c ri t
i ci z
e
すること︑という控え目なものであった︒
( p . 1
7 )
Jo
se
ph
i t K
c hi n
, Cyc
le
s a
nd
Tr
en
ds
in
Ec
on
om
ic
Fac
to
rs
̀o
p.
ci t
.
この問題は︑
Mi
tc
he
ll
11
Bu
rn
s
の研究においても景気循環の形態変化の考察において使用しているシリーズは︑デ フレートされた手形交換高︑鉄道株式価格︑株式取引高︑当座貸付利率︑鉄迫債利廻︑銑鉄生産高︑貨車便発注高の 七つであり︑それらが景気指標として︑金融価格系列にウエイトをおいている偏りに注目される︒このことは既に︑
Gi
ll
ma
n
によって批判せられた︒
MJ .
. Gi
ll
ma
n,
Th
e Falling
Ra
te
of
P r o f
i t ,
1 9 5 7
. pp
.1
20
‑
︑
1 2 1 .
Pe
ri
od
og
ra
m
の経済分析への適用については︑
He
nr
L .
yMo
or
e;
E
co
no
mi
c C
y cl e
s ,
t he i
r L
:i
w
an
d
Ca
us
e,
1914•Do.,
Cr
op
Cy
cl
es
in
th
e U
ni
te
d K
in
gd
om
a
nd
in
th
e U
ni
te
d S
t at e
s ,
Jo
ur
na
l o
f t
he
Ro
ya
l S
t a t i
s t i ,
c al
S oc i
e ty ,
1 9
1 9 ,
Wi
ll
ia
m H
. B
ev
er
id
ge
̀W
he
at
r P
ic
es
an
d R
a in f
a ll
i n
We
st
er
n Eu
ro
pe
, i
b i d ,
1 9
2 2 .
Cr
um
によるこの迎出方法は︑まづ︑二つの半問隔の週期曲線についての位相角
ph
as
e
の変化を測定する︒︵第三
2 1! ' 2 1
! ' 2 1
! '
図参照︶週期曲線
Y,
11
as
in
(a
+̲
│t
)1
1A
co s
ー│t+B
si
n
t
( 但
し
A1
1a
s in a
B1
1a
co s
) a
において
aは
A i位相角である︒
R=
ta
n‑
1│
│I
[・
1
は各半問隔を示す°]によって算定せられるが︑
B i
位 相 角
a
は第一の半間隔(‑八七四
l
一八九三年︶についてはマイナス
84
︒︑第二の半問隔(‑八九四 l 一 九 一 四 年 ︶ については︑マイナス
32
︒である︒両者の位相の差
52
゜を先行値
ad
va
nc
e
としてとり︑系列中の週期数
( P )
である
8.
7
6
で除して
8.
7
︒を得る︒翌ヰ迄湮
40
ー
xー
‑=0
.9
7
( ' T J l ) が︑月数で表した試行週期の訂正値︵進みすぎている値︶
36
0
である︒他方試行週期の
39
ヶ月については︑一週期当り
1.
2
︒の遅延
re
ta
rd
at
io
n
をみ︑これは同様に算出して
0.
1
ヶ月となる︒ゆえに一︱︱九・一ヶ月の最終的評価︵基本週期の︶が得られる︒
W
▼
.
L .
Cr
um
, o
p .
c i t .
J•Kitchin,
o p .
c i t .
W.
L .
C
ru
m,
op .
c i t .
p .
2 4 .
W.
C .
M i
t ch e
l l,
Bu
si
ne
ss
Cy c
l es ,
t
he
P
ro
bl
em
an
d i
t s
S et t
i ng ,
1 9
2 7 .
p . 2 6
0 .
C . M
. C .
R
or
ty
はいう﹁調和分析の根本的な欠陥は︑真に週期性が存在するかどうかを無視して︑いかなる通常の
に
)
︵ 瀬
尾 ︶
甚本週期入を四
0 ヶ月としたとき︑
゜先進国経済発展の計測的模型
( 1 7 J 0 6 ) 0 5 ) 0 4 l
(13) U2) U1) 00)口
︵瀕
尾︶
事業時系列をも︑明白な規則的週期性に還元することである︒そうした還元がなんらかの真の意義をもっという蓋然
性は分析に従うサイクルの数が僅かである場合には︑極小であろう︒﹂
( W .
C.
Mitchell,
ib i
d . ,
p .
26
1
より
引用
︶
﹁経済シリーズにおける週期の長さは一般に可変的であるかも知れない︒現在のケースにおいてはわれわれのデーク
ーは︑そうであることを結論的には示していない︒他方において︑われわれの結果からそうでないと結論することは 不可能である︒理論的な週期曲線のわれわれのデークーヘの実際的なあてはめは良好でない︒そしてわれわれは適合 性の欠如がたんに偶然的な不規則的乖離によるものか︑あるいは︑週期自体の真の修正によるものかを確かめること
はできない︒反対に決定的な証拠の存在しないことから︑われわれは︑経済的週期が一定と仮定されるぺきではない
と信じる︒それゆえに︑もしも一定の経済的週期という考えを捨てて︑われわれが﹁週期
Pe
ri
od
という術語によっ
てサイクルの平均的長さを理解するならば︑
Pe
ri
od
og
ra
m
は︑ま.つもしそれがかなり典型的であるならば︑すなわ
ち︑もしも︑現実のサイクルがそれから大きく乖離しないならば︑また第二にもしもサイクルの形態
fo
rm
が大きい
変化をこうむらないならば、平均的長さを発見する上で助けとなりうる。」 (W 」•L.
Cr
um
,0
p.
i t c
. p .
2 4)
(ゴ
ジッ
ク
は原文通り︶
W .
L . C
ru
m,
ib i
d . ,
p.
25
i b i d
. ,
﹁あいまいさ
bl
ur
ri
ng
は︑部分的には︑恐慌
pa
ni
c の月を除外することによって除去される︒正に結果は︑一般
的分析において見出された外見的週期が︑これらの︒^ニックを別にした部分のかなり斉一的な平均サイクルの持続性
のあるイメージであるかも知れないが︑しかし︒^ニックの撹乱の不規則的運動によって︑あいまいにされ︑ぽやかさ
れたイメージであるかも知れないという可能性を暗示するものである︒この見解を
pe
ri
od
og
ra
m
方法の手段によ
ってテストすることは全く不可能である︒サイクルの図
pi
ct
ur
e
をうることが必要になる︒﹂
( ib i
d .
p .2 5
)
A .
F .
Bu
rn
s
&
W .
C.
Mit
ch
el
l,
0p
. c
i t .
J•Kitchin,
o p.
c i t .
p .
1 0 .
Bu
rn
s
&
Mi
tc
he
ll
,
o p.
c i t .
pp.
1 4
23
. p
. 39 0
.
0 p.
c i t .
p .
3 89 .
C,
ha
rt
55 .
T
ab
le
14 4
. T
ab
le
15 4
. T
ab
le
15 6
.
306
いわゆる第二次趨勢
S e c o n d a r y
( 2 0
) (19) (18)4 (
i )
先進国経済発展の計測的模型
J•Kitchin,
o p.
c i t .
p .
1 4.
W . L .
C r u m ,
o p.
c i t .
1 pp.
71
8.
J•Kitchin,
o p.
c i t .
pp.
13
1 4
.
実測的景気循環模型
時期別波動型
ここでは
s.s•Kuznets
の第四図は︑本誌前号の第一表の時期区分に従って︑各時期ごとの時系列の対数に直線をあてほめた最小自乗趨勢
値を甚準線として作成したサイクル図表である︒全期間に亘る時系列から直接に単一のサイクル図表を導出するこ
となしに︑これを各時期別について作成したのは︑既にみた通りの
L o g i s t i c C u r v
e ないし修正指数曲線型の趨勢
模型によって示されるような︑各時期を通じての成長率の変化
1 1
減衰が︑それぞれのサイクル模型の検出にバイア
スを与えるであろうということを考慮したためである︒このサイクル図表を検討することによって︑
観察を得ることができる︒
時期が︑すなわち産業革命期︵一七七四
l 一八二六年︶については︑波動はあきらかに不規則的であり︑特徴
はむしろこの波型が︱つの波状曲線を形成しているところにみられる︒それゆえに︑
T r e n d
の存在が約四 0 年の間隔(‑七八
O
一 八
二 0 年︶について検出される
l l
g のであるが︑それは︑産業革命そのものの経過していく波動に合致するものにほかならない︒
時期 A ︑すなわち最初の資本主義的恐慌から︑最初の世界恐慌に至るまでの間の期間についていえば︑これは︑
口︵ 瀬
尾 ︶
つぎのような
いわゆる綿工業の資本主義的発展を基軸とした産業資本の確立の時代であり︑
︵一八四九年︶の廃止を経て︑自由貿易運動の完成に至る(‑八五三年一八六 0 年のグラッドストンの関税改正
1 1
保護関税撤廃︶時期にほかならないのであるが︑ここでは︑
れるようである︒すなわち︑ 一八四七年恐慌までは︑
c y c l
e s
を超える何らかの週期の存在は確認しがたいのであるが︑それ以後は︑短期循環的なものを残しつつも
m a
j o
r c
y c
l e
s 1
1 J
u g
l a
r c
y c l e
s
的な波翻守か︑銑鉄生産高の波状を中心に現われてくる︒
て
J u
g l
a r
c y c l
e s
が明示的に現われてくるといえよう︒
ほ︑自由主義を体制的に確立したイギリス資本主義が︑海外投資を以て積極的に世界市場に進出をしていく時期に
ほかならず︑他方では︑ドイツやアメリカが国内の資本主義体制を強化
1 1 整備しつつある時期なのであるが︑ここ
一八六六年恐慌以後に︑とくに典型的な七 i ︱二年の主要循環
m a
j o
r c y
c l e s
1 1 J u
g l a r
c y c
l e s
の優位を検
この段階では︑あきらかに︑﹃キチンの波﹄は産業循環の原型ないし基本型ではない︒
の終りの一九三八年恐慌までについては︑これは︑
ふたたぴ短期循環の支配が︑主なサイクルの型を形成している︒そのうちでも第一次世界大戦を境として︑その様
先進国経済発展の計測的模型
時期 C ︑
仁
︵ 瀬
尾 ︶
すなわち﹁大合併運動﹂に先行する一八九 0 年恐慌の底から︑ の主要循環が︑古典的に出現していることなのである︒ で み ら れ る の は ︑
一 八 六 六
l
七年から一八七八年︑ 一八七八年から一八八六年︑ 一八八六年から一八九三年の三つ 出することができる︒
こ こ
で は
︑ 時期 ︑すなわち最初の世界恐慌から︑ ﹁大合併運動﹂直前の一八九 0 年恐慌までの期間についていえば︑ B
︱ ︱ ‑ 0
年代の大不況
G r
e a
t
D e
p r
e s
s i
o n
d
n
しいわゆる帝国主義の時代にほかならないのであるが︑ここでは
こ れ
いわばこの時点にはじめ 短期循環
I I
﹃キチン波﹄的な波動が支配的であり︑
m m
o r
一八四七年恐慌を境に産業循環の様相の変化が看取さ 穀物条例︵一八四六年︶航海条例
308
る ︒ 応的である︒われわれは既に前者を﹁拡散的不安定性向﹂︑ 後者を﹁停滞的不安定性向﹂と綜括してきた︒前段の
先進国経済発展の計測的模型一 九
O 二
ニ ︱
年 ︑
一 九 二 五 ー ニ 六 年
︑
四 まさにいわゆる﹁全般的危機﹂という概念に合致するものである︒
時期 D ︑すなわち第二次世界大戦以後の時期についてみると︑ここでもほぼ短期循環的な性格がみられる︒しか
しその変動の型はむしろ顛動的であり︑第一次大戦後にみられたような大きなうねりは存在しない︒
こうして︑以上において概観したサイクルの形態上の推移を要約すれば︑
いわゆる主要循環
m a
j o
r c y
c l e s
1 1 J u
g l a r
c y c
l e s
であって︑それ
は自由主義段階の資本主義の体制的確立の時点において典型的に出現した︒それ以前のサイクルの型はむしろ不規
則的なものであり︑小規模の波動のたんなる合成であった︒さらに自由主義以後の資本主義ーーすなわち独占資本
主義の体制的確立
1 1 帝国主義段階においては︑短期循環
m i
n o
r c y c l e s 1 1 K i t c h i n
c y c l
e s
ろのサイクルの拡散化
1 1 激発性がみられる︒これは︑われわれのいわゆる﹁サイクルの拡散化性向﹂
1 1 産業循環の
第一の変型をなすものであり︑既にアメリカについて検出してきたものと正に対応的なものである︒なお進んで︑
第二次世界大戦後については︑ サイクルの顛動性が主要な特徴をなしている︒これはわれわれのいわゆる﹁サイク
ル の 顛 動 化 性 向 ﹂
1 1 産業循環の第二の変型をなすものであり︑ う︒すなわち︑古典的な産業循環の基本型は︑ 相の激動性がきわめて著しい︒
仁
︵瀬
尾︶
一 九 二 九
i 三二年の三つの崩壊の大きさは
の出現と結合したとこ
より典型的にはアメリカについてみられたものに対
イギリスの資料に基づく分析ほ︑このことを世界史的な法則的傾向として確認するうえでの裏づけをなすものであ つぎのようにいうことができるであろ
四
第 四 図 イギリス各時期別波動図表
0 ,
A
177 4"'1826 + 2 0
+ 1 0
゜
ー 1 0
‑ 2 0
‑ 3 0
^
f 、 , 、
ヽ
f
べ¥ v 、 ]
' , '
ヽ
' '
'
' '
1 7 7 4 1 7 8 0 1 7 8 5 1 ' 7 9 0
(理論的傾向線)
1 ' 1 9 5 1 8 0 0 1 8 0 5 1 8 1 0 1 8 1 5
銑
鉄 ・ ・ ・ l o g y =l o g l . 0 2 9 8 • t + l o g 1 0 7 . 7 0
製造工業・・・ l o g y =l o g l . 0 1 9 5 • t+ l o g 1 0 1 . 3 6
A
+ 2 0 + 1 0
゜
‑ 1 0
‑ 2 0
‑ 3 0
1 8 2 6 ‑ v 1858
^
11, ヽ ヽ
111,v
+ J O
゜
‑ 1 0
‑ 2 0
9 9 9
1 1 1 '
7 8 2 6 1 8 3 0 1 8 3 5
(理論的傾向線)
1 8 仙 7 8 4 5 1 8 5 0 1 8 5 S 1 8 5 8
銑 鉄・・・ logJ=logl.0485•t+log79.64
製造工業・・・ l o g y =l o g 1 . 0 2 2 8 • t + l o g 9 5 . 2 2
1 8 2 0 1 8
'2 6
B
t 2 0 1 8 5 8 ' V 1 8 9 3
ご
1 8 5 8 1 8 6 0 1 8 6 5 1 8 7 0 1 8 7 5
. , '
1 8 8 0 1 8 8 5 1 8 9 0 1 8 9 3
(理論的傾向線) 銑 鉄 … l o g y =l o g l . 0248• t+ l o g l 0 3 . 8 3
製造工業… l o g y =l o g l . 0 0 9 8 • t + l o g l O O . 4 8
第 四 図 ( 二 )
c
+50
+ 4 0
‑ t 3 0
‑ t 2 0 + 1 0
゜
ー 1 0
1 8 9 3 " " 1 9 3 8
. .り り / ー / ー バ /
9 ー ー
9
ー九
ー'
II,
J 9
'
‑ 2 0
— 30
‑ ‑ 4 0
‑50
‑ 6 0
1
'
,
ー
IIIIIIU I I I I I 1 , I I I I
, .
、 / I
I/ I
、 I I
f,
、 、 } . I r ‑
、I 、 t 1 、
1I I't I 1
、
,
I ^ I
ヽI
’、、、、~ : A ̀ ^ v, I
戸/¥し/•い
、
、 9 , J 、 : '
'
, 'J
, '9 ,
`
I I L I I 1 1
1 8 9 3 1 9 0 0 1 9 0 5 1 9 1 0 . 7 9 1 5 1 9 2 0 1 9 2 5 1 9 3 0 1 9 3 5 ' 1 9 g s
D
1 9 4 6 " ¥ , , 1 9 6 0 0
0 0 0 1 1 2 t
̲
‑
> ' '
ヽ
I ' ︑
4 ︑ ¥ ︑
^ ヽ
(理論的傾向線)銑 鉄…logy=-logl.0045•t+log124.43
製造工業・・・ logy=logl.0036•t+logl03.65
(理論的傾向線)
凡例
出所
‑‑1人当り製造工業生産高
..…• 1
人当り銑鉄生産高本誌前号所収論文第二図に同じ
銑 鉄・・ logy=logl.430•t
+ l o g l 0 2 . 6 3
製造工業・・