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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

都市部の下水道管渠においては、法定耐用年数50年を超えた管が多く存在する。これら の老朽管対策として非開削工法による更生工法が実用化されている。特に中大口径管につ いては、既設管の残存耐力を期待し、その内面の更生部材が既設管に付着するようにした

「複合管」工法が採用される。しかし、複合管の更生材料の特性が老朽既設管のそれとは 異なることや、機械的ずれ止め等を使用しないことから構造挙動が複雑となり、簡便な構 造計算手法による設計には課題が残されている。本論文では、「複合管」を破壊まで完全一 体化する構造物とはみなさず、「準複合構造物」として、分散ひび割れモデルを用いた耐荷 力評価手法を提案した。また、本解析技術を実設計で用いるための設計法の構築と設計支 援システムの開発を行い、合わせて、本設計法に基づき更生された管路による下水道ネッ トワークの強靭さについて構造レジリエンスの概念に基づき評価した。

本研究で得られた主要な成果は、以下のとおりである。

(1)下水道管渠の複合管更生工法のうち代表的なSPR工法(Sewage Pipe Renewal工法)を取 り上げ、更生設計上の課題を整理し、破壊力学の概念を取り入れた分散ひび割れモデル に基づく非線形解析手法を開発した。本手法では、実設計において安定した収束解が得 られるよう、引張軟化特性の数値解析上の扱いに見掛け弾性係数の概念を導入し、一軸 引張試験により見掛け弾性係数とひび割れ開口幅の関係を求めて実装した。また、ひび 割れ発生に伴う解放エネルギーとひずみエネルギーのロスの均衡を保持しながらひび割 れの発生・進展の構造挙動をシミュレートする手法を開発した。これらの適用により、

ひび割れ発生・進展に伴う破壊挙動を考慮し、限界状態設計法における照査法として活 用しやすい新たな非線形解析手法を提案した。

(2)開発したコンクリートのひび割れ解析モデルを複合管の終局耐荷力評価に用いるため の検証を行った。老朽管を模擬した複数の実管渠寸法の供試体とそれをSPR工法により更 生した管の外圧試験に対する解析を行い、試験結果と比較することで設計に用いる解析 手法としての妥当性を示した。また機械的ずれ止めを有しない複合管が実管路として発 揮できる構造性能を考慮し、既設コンクリートと更生モルタルの界面では引張に対して 抵抗しないNo-Tension Interfaceモデルの採用を提案し、二層構造や完全一体化構造と の比較によりその特徴を示した。

(3)開発したコンクリートの非線形解析技術を用いたNo-Tension Interfaceモデルによる 複合管の設計体系について提案した。複合管は既設管の残存耐荷力を考慮する更生管で あるが、既設管は既に変状が認められており許容応力度で評価することは適当ではない と判断し、限界状態設計法の考え方を具体化した。設計においては、2次元モデルによる 非線形FEM解析を用いることとし、管路の埋設条件下における主たる設計荷重(常時及び 地震時)を破壊に至るまで増分して挙動解析を行い、得られた終局限界状態から部分安 全係数を考慮して設計断面耐力を算出・評価する方法とした。さらに、非線形解析技術

(2)

に不慣れな技術者も本設計が可能となるように設計支援システムを構築した。本システ ムでは、非線形解析による複合管の設計を実施可能とし、RC構造の2次元FEMモデル自動 作成機能やひび割れ発生状況図の表示などの機能を有しつつ、解析・設計作業の時間短 縮を図った。

(4)構築した設計手法により更生された下水道管渠が下水道ネットワークに寄与する効果 について、レジリエンスを指標とした評価事例を示した。非線形解析による構造挙動の シミュレーションにより、管路が吸収可能な破壊エネルギーが定量的に算出可能である ことを応用し、東京都の一つの水再生センターを例として、下水道ネットワーク全体の 構造レジリエンスを評価した。近年、想定外の災害に見舞われるわが国でレジリエンス に注目が集まる中、その定量的な指標の一案として、意思決定に活用できることを示し た。

以上要するに、本論文は、既設下水道管渠の非開削による更生工法において機械的ずれ 止め等を使用しないことに着目し、破壊まで完全一体化する構造物とみなさない「準複合 構造物」の概念を提示するとともに、分散ひび割れモデルを用いた耐荷力評価手法を提示 しており、土木構造分野における貢献は極めて大きい。

よって、本論文は、博士(工学)の学位を授与するに十分な価値を有するものと認め られる。

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