疑 問 表 現 にお ける 日 中 対 照 研 究 一 ノカ疑 問 文 を対 象 に一
首都大学東京大学院人文科学研究科 日本語教育学教室
林 香淑
目次
序 章
0.1
0.2
0.3
0.3.1
0.3.2
0.3.3
0.3.4
0.3.5
第1章 1.1
1.1.1
1.1.2
1.1.3
1.2
1.2.1
本研 究の背景
本研 究の目的お よび意義 本研究 の概要
調 査 に 用 い た デ ー タ 調 査 項 目の 選 定
分析 の立場お よび用語 の定義 研究方法
本論文 の構成 先行研究
日本語 の疑問文
日本語 の疑問文の定義
日本語 の疑問文 の種類 および形 反語文
中国語 の疑問文
中国語 の疑問文 の種類 および形式
1.2.1.1 1.2.1.2 1.2.1.3 1.2.1.4
諾 否 疑 問 文"是 非 同 句shifeiwenju"
疑 問 詞 疑 問 文"特 指 向 句tezhiwenju"
反 復 疑 問 文"正 反 向 句zhengfanwenju"
選 択 疑 問 文"逸 操 同 句xuanzewenju"
1 1 1 2 2 2 2 4 4 6 6 6 6 8 8 8 8
1.2.2中 国 語 の 反 語 文
1.2.2.1中 国 語 の 反 語 文 の 形 式 1.3ノ カ 疑 問 文 に 関 す る 日 本 語 の 研 究
1.3.1久 野 障(1983)の 研 究 1.3.2グ ル ー プ ・ジ ャ マ シ イ 1.3.3田 野 村 忠 温(1990)の 研 究 1.3.4野 田 春 美(1997)の 研 究 1.4中 国 語 の 疑 問 表 現 に 関 す る 研 究
1。4.1
1.4.2劉 月 華(1989、1992)の 研 究 1.5ノ カ 疑 問 文 に 関 す る 日 中 対 照 研 究
1。5.1
1.5.2
1.5.3
(1998)の 研 究
劉 月 華 ・溜 文 娯 ・故 韓(1991)の 研 究
王 宏(1987)の 研 究 杉 村 博 文(1982)の 研 究
井 上 優(2003)の 研 究
0 0 1 2 2 3 4 4 5 6 0 0 1 2 2 3 4 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2
1.5.4呉 紅 哲(2003)の 研 究
1.5.5劉 洋(2012)の 研 究
1.6学 習 者 の 習 得 に 関 す る 研 究 1.6.1
1.6.2
1.6.3庵 功 雄(2013)の 研 究
1.7 第2章
2.1
大 場 理 恵 子(1995)の 研 究 坪 根 由 香 里(2009)の 研 究
疑問文 に関す る対照研究の課題
ノ カ 疑 問 文 と そ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 疑 問 文 の 形 式 に つ い て
は じ め に
2.2先 行 研 究
2.2.1 2.2.2
2.2.3「 の だ 」
2.2.4 2.3
2.3.1 2.3.2
2.3.2.1 2.3.2.2 2.4
2.4.1 2.4.2
2.4.2.1 2.4.2.2 2.5
2.6ま と め
ノ カ 疑 問 文 に 関 す る 日本 語 の 研 究 中国語の疑問文 に関す る研 究
とそれ に対応す る中国語の表現 に関す る対照研 究 分析 の立場
ス コー プ の ノ カ 疑 問 文 と そ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 疑 問 文 副次補語 の場合
必須補語 の場合 目的語の場合 主語の場合
質 問の焦点が述語動詞 に置 かれ る場合 述語動詞のみ で構成 された文において 主題や副詞な どの要素 を含む文 において
主題を含む場合 主題を含む場合
ス コ ー プ の ノ カ 疑 問 文 と も ム ー ドの ノ カ 疑 問 文 と も 取 れ る 文 に お い て
第3章 ム ー ドの 「の(ん)で す か 」 疑 問 文 とそ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 疑 問 文
一 「 前 提 」 を め ぐ っ て
3.1は じ め に
3.2 3.2.1 3.2.2 3.2.3 3.3
3.3.1 3.3.2
先行研究 とその問題 点
目本語のノカ疑問文に関する代表的な先行研究 中国語の疑問文形式に関する代表的な研究
ノカ疑問文 とそれ に対応する中国語の疑問文に関す る対照研究 研 究 の 目的 と方 法
研究月的 調査項 目の選定
6 9 0 0 1 1 2 3 3 4 4 5 6 7 8 8 9 0 0 1 1 2 2 3 4 5 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 4 4 4 4 4 4 4 4 4 6 6 6 6 0 2 4 4 4 4 4 4 4 5 5 5 5 5
3.3.3分 析 の 立 場
3.4調 査 結 果 の 全 体 像
3.5 3.5.1 3.5.2 3.6
3.6.1 3.6.2 3。7
3.7.1 3.7.2
3.8 第4章
「の(ん)で す か 」 疑 問 文 が 「喝 」 疑 問 文 で 訳 され た 用 例 に つ い て の 考
「前 提 」 が 明 示 され て い る 「喝 」 疑 問 文 の 場 合
「前 提 」 が 不 明 な 「喝 」 疑 問 文 の 場 合
「の(ん)で す か 」 疑 問 文 が 語 調 疑 問 文 に 訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「前 提 」 が 明 示 され て い る語 調 疑 問 文 の 場 合
「前 提 」 が 不 明 な 語 調 疑 問 文 の 場 合
「の(ん)で す か 」 疑 問 文 が 反 復 疑 問 文 に訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「前 提 」 が 明 示 され て い る 反 復 疑 問 文 の 場 合
「前 提 」 が 不 明 な 反 復 疑 問 文 の 場 合 ま と め
ム ー ドの 「の(ん)で す か 」 疑 問 文 と そ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 疑 問 文
一 「 含 意 」 を め ぐ っ て
55 57
・・58
58 60
・・61
61 62
・・・…63
64 65 66
4.1は じ め に
4.2 4.2.1 4.2.2 4.3
4.3.1 4.3.2 4.3.3 4.4 4.5
4.5。1 4.5.2 4.6
4.6.1 4.6.2 4.7
4.7.1 4.7.2
4.8ま と め
第5章
先行研究 とその問題点
日本語の ノカ疑問文の感情的 な含み に関する先行研究 中国語の疑問文形式に関す る代表的な研究
研 究 の 目的 と方 法 研究 目的 調査項 目の選定 分析の立場 調査結果の全体像
「の(ん)で す か 」 疑 問 文 が 「喝 」 疑 問 文 に 訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「含 意 」 の あ る 「喝 」 疑 問 文 の 場 合
「含 意 」 の な い 「喝 」 疑 問 文 の場 合
「の(ん)で す か 」 疑 問 文 が語 調 疑 問 文 に 訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「含 意 」 の あ る語 調 疑 問 文 の 場 合
「含 意 」 の な い 語 調 疑 問 文 の 場 合
「の(ん)で す か 」 疑 問 文 が 反 復 疑 問 文 に 訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「含 意 」 の あ る反 復 疑 問 文 の 場 合
「含 意 」 の な い 反 復 疑 問 文 の 場 合
8 8 8 9 1 3 3 3 3 5 5 6 9 0 1 5 6 6 6 6 7 7 7 7 7 7 7 7 7 ⑧ '8 ⑱
・… ・86
ム ー ドの 「の か 」 疑 問 文 とそ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 表 現
「 前 提 」 を め ぐ っ て
(b 7 ・ 8 8 8 8
5.1は じ め に
0 0 9 0 U
5.2先 行 研 究 と そ の 問 題 点
5.3研 究 目 的 と 方 法
5.3.1研 究 目 的
5.3.2調 査 項 目 の 選 定
5.3.3分 析 の 立 場
5.4調 査 結 果 の 全 体 像 5.5
5.5.1 5.5.2 5.6
5.6.1 5.6.2 5.7
5.7.1 5.8
5.8.1
「の か 」 疑 問 文 が 「喝 」 疑 問 文 で訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「前 提 」 が 明 示 され て い る 「喝 」 疑 問 文 の場 合
「前 提 」 が 不 明 な 「喝 」 疑 問 文 の 場 合
「の か 」 疑 問 文 が 語 調 疑 問 文 に訳 され た 用 例 に つ い て の考 察
「前 提 」 が 明 示 され て い る語 調 疑 問 文 の 場 合
「前 提 」 が 不 明 な 語 調 疑 問 文 の 場 合
「の か 」疑 問 文 が反 復 疑 問 文 に訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「前 提 」が 明 示 され て い る反 復 疑 問 文 の 場 合
「の か 」疑 問 文 が 平 叙 文 に 訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「の か 」疑 問 文 が 平 叙 文 に 訳 され た 用 例 と 「前 提 」 との 関 わ り
0 1 1 1 1 3 4 5 6 7 8 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9
5.9 第6章
ま とめ
ム ー ドの 「の か 」 疑 問 文 とそ れ に対 応 す る 中 国 語 の 表 現
一 「 含 意 」 を め ぐ っ て
100 101 102 102 103
6.1は じ め に
6.2 6.3
6.3.1
6.3.2
6.3.3
6.4 6.5
6.5.1
6.5.2
6.6
6.6.1
6.6.2
先行研 究 とその問題点 研 究 の 目的 と方 法
研究 目的 調査項 目の選定 分析の立場 調査結果の全体像
「の か 」 疑 問 文 が 「喝 」 疑 問 文 に 訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「含 意 」 の あ る 「喝 」 疑 問 文 の場 合
「含 意 」 の な い 「哩1」疑 問 文 の場 合
「の か 」 疑 問 文 が 語 調 疑 問 文 に 訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「含 意 」 の あ る語 調 疑 問 文 の 場 合
「含 意 」 の な い 語 調 疑 問 文 の 場 合
6.7「 の か 」 疑 問 文 が 反 復 疑 問 文 に 訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
6.7.1
6.8 6.8.1
「含 意 」 の な い 反 復 疑 問 文 の 場 合
「の か 」 疑 問 文 が 平 叙 文 に 訳 され た 用 例 に つ い て の 考 察
「含 意 」 の あ る 平 叙 文 の 場 合
6 6 6 7 7 7 7 9 9 0 4 5 6 9 0 1 2 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
6.8.2
6.9ま と め
第7章 7.1 7.2 7.3 7.4 7.5
7.6ま と め
第8章
8.1は じ め に
8.2先 行 研 究
「含 意 」 の な い 平 叙 文 の 場 合
対照研究のま とめ デ ー タ の 全 体 像
ノ カ 疑 問 文 に 対 応 す る 中 国 語 の 表 現 に 関 す る形 式
ム ー ドの ノ カ 疑 問 文 に 対 応 す る 中 国 語 の 表 現 一 「前 提 」 を め ぐっ て ム ー ドの ノ カ 疑 問 文 に 対 応 す る 中 国 語 の 表 現 一 「含 意 」 を め ぐ っ て
「の(ん)で す か 」 疑 問 文 と 「の か 」 疑 問 文 の 相 違
ノ カ 疑 問 文 の 教 え 方 に 関 す る 一 試 案
8.3調 査 8.3.1被 験 者 8.3.2調 査1
8.3.3調 査1の 結 果 8.3.4調 査2
8.3.5調 査2の 結 果
8.3.6日 本 語 の 教 材 で の 扱 い 8.3.7調 査3の 結 果
8.3.8考 察
8.4対 照 分 析 の 結 果 の ま と め 8.5
結 章 本 研 究 の ま と め
ノカ 疑 問 文 の 教 え 方 に 関す る 一 試 案
参考文献 資料 グロス 附記 謝辞
4 5 6 6 6 6 7 8 9 0 0 0 1 1 1 2 2 2 3 3 4 5 6 8 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
139
143
163
196
197
序章
O.1本 研 究 の 背 景
日本 語 の 「の だ 」 文 に 関 す る研 究 は数 多 く存 在 す る。 しか し、 日本 語 学 的 な研 究 は 学 習 者 が 手 っ 取 り早 く取 り入 れ られ る状 態 に ま で 整 理 され て い な い の が 現 状 で あ る 。 日本 語 教 育 に お い て は 、 日本 語 の 「の だ 」 の 性 質 を 細 か く分 け 、 そ れ らの 用 法 に つ い て 段 階 を 踏 ん で 学 習 者 に 導 入 す る こ とを 目指 して い る が 、 「の だ 」 の 用 法 は 煩 雑 で 習 得 困 難 な項 目 と され て い る。 ま た 、 学 習 者 を対 象 と した これ ま で の 研 究 に お い て は 、 学 習 者 に どの よ うな 誤 用 が 生 じや す い の か 、 ど の よ うな 段 階 で ど うい うふ うに 導 入 す れ ば い い の か な どが 問題 と さ れ て き た 。 日本 語 の 「の だ 」 文 と そ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 表 現 に 関 す る対 照 研 究 に お い て は 、 日本 語 の 「の だ 」 文 と 中 国 語 の 「是 … … 的 」 構 文 の 間 に 一 定 の 共 通 点 が あ る こ とが 分 か っ て き た。 しか し、 こ の よ うな 研 究 結 果 が 日本 語 教 育 の 現 場 に 生 か され て い な い の が 現 状 で あ る。 こ の よ うに 「の だ 」 文 の 習 得 に は新 た な 突 破 口が 必 要 で あ る と考 え られ る。
庵 他(2013)で は ス コー プ の 「の だ 」 を 上 級 学 習 者 に 定 着 させ る こ とを 目指 して い る が 、 中 国 語 を 母 語 とす る学 習 者 で あれ ば 、 も っ と早 い段 階 で の 導 入 が 可 能 で あ る と筆 者 は 考 え て い る。 な ぜ な ら、 庵 他(2013)で 取 り上 げ られ て い る ス コ ー プ の ノ カ 疑 問 文 の 用 例 は ほ と ん ど中 国 語 の 「是 … … 的 」 構 文 に 対 応 す る も の で あ り、 中 国 語 を母 語 とす る 学 習 者 に お い て は理 解 しや す い か らで あ る。 しか し、 王(1987)で は 日本 語 の 「の だ 」 文 と そ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 表 現 の わ ず か7.4%の み が 「是 … … 的 」文 と対 応 して い る こ とを 示 して い る。
つ ま り、 残 り90%以 上 は 中 国 語 の 「是 … … 的 」 文 とは 対 応 関係 を成 して い な い こ と を示 し て い る。 「是 … … 的 」 文 に 対 応 しな い 多 くの 「の だ 」 文 は 中 国 語 と形 式 的 な 面 で 対 応 す る マ ー カ ー が な い とい う こ とで 、 これ ま で研 究対象 と して重視 され て こなか った。 呉(2003) は 「是 … … 的 」 文 で 表 され な い ム ー ドの ノ カ 疑 問 文 に 着 目 し、 日本 語 と 中 国 語 の 疑 問 文 の 対 応 関 係 を探 る こ とを 試 み て い る。 しか し、 呉(2003)は ム ー ドの ノ カ 疑 問 文 に 対 応 す る 中 国 語 の 語 調 疑 問 文 の み に焦 点 を 当 て た た め 、 ム ー ドの ノ カ 疑 問 文 の 全 容 は ま だ 明 らか に な っ て い な い 。
0.2本 研 究 の 目 的 お よび 意 義
本 研 究 は 上 記 の こ と を踏 ま え 、 コ ー パ ス の 用 例 を対 象 に 、 ス コ ー プ の ノ カ 疑 問 文 と ム ー ドの ノ カ 疑 問 文 に 分 け 、 ス コー プ の ノ カ 疑 問 文 に お い て は 焦 点 が 置 か れ る 文 の 成 分 に注 目 し分 類 を 行 い 、 ム ー ドの ノ カ 疑 問 文 に お い て は 「の だ 」 の 「前 提 」 と 「含 意 」 の 二 つ の 性 質 か ら 日中 両 言 語 の 対 応 関 係 を整 理 す る こ と を試 み た 。 本 研 究 は 初 め て ノカ 疑 問 文 とそ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 表 現 を 多 角 的 に 捉 えた 研 究 で あ り、 ノ カ 疑 問 文 の 日 中対 照 研 究 の分 野 の 空 白部 分 の 穴 埋 め に な る も の と位 置 づ け た い 。 ま た 、 本 研 究 は 中 国 語 を母 語 とす る 日本 語 学 習 者 の ノ カ 疑 問 文 の 習 得 を 手 助 け す る も の と考 え られ 、 日本 語 教 育 の 現 場 で の 応 用 が
十 分 に 期 待 で き る 。
0.3本 研 究 の 概 要
O.3.1調 査 に 用 い た デ ー タ
本 調 査 は 北 京 日本 学 研 究 中 心 で 開 発 さ れ た 『中 日対 訳 コ ー パ ス(第 一 版)』 を 用 い た 調 査 で あ る 。 『中 日 対 訳 コ ー パ ス(第 一 版)』 に は 、 日 本 語 と 中 国 語 の 小 説 、 エ ッ セ イ 、 伝 記 、 政 治 評 論 ・白 書 、 詩 な ど と そ れ ぞ れ の 対 訳 を 合 わ せ て 、 約1700万 字 余 り の デ ー タ が 収 録 さ れ て い る 。 本 研 究 で は そ の 中 の 日 本 語 の 小 説22作 品(『 あ し た 来 る 人 』、 『坊 ち ゃ ん 』、 『越
前 竹 人 形 』、 『蒲 団 』、 『雁 の 寺 』、 『 破 戒 』、 『鼻 』、 『金 閣 寺 』、 『こ こ ろ 』、 『高 野 聖 』、 『黒 い 雨 』、
『野 火 』、 『ノ ル ウ ェ イ の 森 』、 『羅 生 門 』、 『青 春 の 蹉 踪 』、 『飼 育 』、 『死 者 の 奢 り』、 『砂 の 女 』、
『斜 陽 』、 『痴 人 の 愛 』、 『友 情 』、 『雪 国 』)の 中 国 語 訳 の25作 品(『 こ こ ろ 』3作 品 、 『坊 ち ゃ ん 』2作 品 が 含 ま れ る た め)を 用 い て 調 査 を 行 っ た 。
O.3.2調 査 項 目 の 選 定
本 研 究 で は ノカ 疑 問 文 の 形 態 が 「の(ん)で す か 」 と 「の(ん)か 」 に な っ て い る動 詞 述 語 文 の み を研 究 対 象 と した 。 否 定 形 や 推 量 を表 す 「だ ろ う」 「で し ょ う」 な どは 文 末 形 式 に 影 響 を及 ぼ して い る と考 え 、 ノ カ 疑 問 文 と 中 国 語 の 表 現 と の 対 応 関係 に か か わ る 変 数 を 最 低 限 に減 らす た め に 除 外 した。 そ の結 果 、 ス コー プ の ノ カ 疑 問 文 が27例 抽 出 され 、 ム ー
ドの ノ カ 疑 問 文 が181例 抽 出 され た 。
0.3.3分 析 の 立 場 お よ び 用 語 の 定 義
本 研 究 で は 「の だ 」 に 疑 問 形 式 が つ く 「の で す か 」 ・「 ん で す か 」 ・ 「 の か 」 な ど の 疑 問 文 の 全 般 を ノ カ 疑 問 文 と表 記 す る 。 「の で す か 」 や 「ん で す か 」 な ど 丁 寧 形 の 形 態 を 持 つ 疑 問 文 の み を 指 す 場 合 に は 「の(ん)で す か 」 疑 問 文 と表 記 す る 。 ま た 、 「 の か 」 や 「ん か 」 な ど の 形 態 を し て い る 疑 問 文 の み を 指 す 場 合 に は 「の か 」 疑 問 文 と表 記 す る 。
本 研 究 に お け る 「 の だ 」 の 扱 い は 、 主 に 田 野 村(1990)の 論 を 基 盤 と して 論 じ た も の で あ り、 野 田(1997)の よ う に ス コ ー プ を 広 げ る も の で は な い と 考 え る 。 し か し 、 中 国 語 に お け る 「 是 ・ … ・ ・ 的 」 構 … 文 が 野 田(1997)の ス コ ー プ の 「 の だ 」 文 に 非 常 に 類 似 し て い る た め 、 分 類 の 用 語 と し て 取 り入 れ る 。 ま た 、 庵(2013)に 準 じ 、 疑 問 文 に お け る 「 の だ 」 を そ の 文 に 「 前 提 」 が あ る こ と を 示 す マ ー カ ー と し て と ら え る 。 庵(2013)で は 疑 問 文 に お け る 「 の だ 」 を す べ て ス コ ー プ の 「 の だ 」 と し 、 平 叙 文 に お け る 「の だ 」 を ム ー ドの 「 の だ 」 と し て 扱 っ て い る が 、 本 研 究 で は 野 田(1997)で の 用 語 と の 混 乱 を 避 け る た め 、 野 田 (1997)の 用 語 で 統 一 す る こ と に す る 。 つ ま り 、 疑 問 の 焦 点 が 述 語 に 置 か れ る も の を ム ー ドの ノ カ 疑 問 文 と し 、 疑 問 の 焦 点 が 述 語 以 外 の 部 分 に 置 か れ る も の を ス コ ー プ の ノ カ 疑 問 文 と 定 義 す る 。
田 野 村(1990)で は 「 『β の か 』 は 、 あ る こ と が ら α を 受 け て 、 そ れ は β と い う こ と か 、
α の 背 後 の 事 情 に あ る の は β と い う こ と か 、 と 尋 ね る の に 用 い られ る 」 と述 べ て い る 。 「あ
る こ と が ら α」 は(1)の よ う に 具 体 的 に 示 さ れ て い る も の も あ れ ば 、(2)の よ うに 「 具
体 的 な こ とが ら α を 受 け て い る と は 言 い が た い 」 も の も あ る と述 べ て い る。
(1)(く し ゃ み を す る 人 に 対 し て)一 お た く も 花 粉 症 な ん で す か?
(田 野 村(1990):54) (2)(ト コ ロ デ)お 酒 は よ く 召 し 上 が る ん で す か?
(田 野 村(1990):55)
ま た 、(2)の よ うな 「具 体 的 な こ とが ら α を 受 け て い る と は言 い が た い 」 場 合 に お い て は 「背 後 の 事 情 を 表 す 用 法 に お け る αが そ の 内 容 の 具 体 性 を 失 っ た と こ ろ に成 立 し定 着 し て い る 」 と述 べ て い て 、 「す べ て の 者 に は 必 ず し も容 易 に は知 り得 な い にせ よ 、 す で に 定 ま っ て い る と想 定 され る 事 情 αが 話 し手 の 念 頭 に 問題 意 識 と し て あ り、 そ れ が βで あ る(か
ど うか)と い う こ とが 問 題 と され て い る」 と して い る 。 本 研 究 で は(1)の よ うな も の に 関 して は 「前 提 」 が 明 示 され て い る も の と し、(2)の よ うな も の に 関 して は 「前 提 」 が 不 明 な も の と 定 義 した 。 ま た 、 呉(2003)と の 比 較 を 図 る た め 、 呉(2003)と 同 様 「話 し手 の 念 頭 に あ る 問題 意 識 」 に 関 して は 「前 提 」 が 不 明 な もの と した 。
ま た 、 田野 村(1990)で 示 され て い る よ うに 、 ノ カ 疑 問 文 は 疑 念 、 驚 嘆 、 不 服 、 感 激 な どの 感 情 的 な 含 み を 伴 う こ とが あ る が 、 中 国 語 の 疑 問 文 に お い て も感 情 的 な 含 み を 伴 うこ とが あ る。 劉(1988)に よ る と 中 国 語 の 疑 問 文 は 形 式 に よ っ て 単 純 質 問 を 表 した り、 感 情 的 な 含 み を表 した り、 形 式 に よ っ て 感 情 的 な 含 み の 強 弱 を 表 わ す こ とが で き る。 こ の よ う な こ とか ら本 研 究 で は感 情 的 な含 み(「 含 意 」)が 中 国 語 の 疑 問 文 形 式 と深 く関 わ っ て い て 、 日本 語 の ノ カ 疑 問 文 とそ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 疑 問 文 の 対 応 関 係 を 明 らか に す る た め の 重 要 な 手 掛 か りで あ る と考 え 、 抽 出 され た 用 例 に 対 して 「含 意 」 の 有 無 に よ っ て 分 類 を 行 っ た 。 野 田(1997)で は ム ー ドの ノ カ 疑 問 文 は 「自分 は認 識 して い な い が 聞 き 手 は認 識 して い る既 定 の 事 態 を 認 識 した い 、 認 識 し よ う と い う話 し手 の 心 的 態 度 を表 す 」 と して い る が 、 本 研 究 で は こ の よ うな ノ カ 疑 問 文 の 特 徴 は 話 し手 の 意 図 と して 扱 い 、 感 情 的 な含 み を 表 す 「含 意 」 と して は 扱 わ な い こ とに す る。
中 国 語 の 疑 問 文 に お い て は 「是 … … 的 」 構 文 以 外 に 日本 語 の よ うな 「の だ 」 に 相 当 す る マ ー カ ー が な い 。 そ の た め 「の だ 」 を 含 む 疑 問 文 も 「の だ 」 を含 ま な い 疑 問 文 も 中 国 語 で は 「喝 」 疑 問 文 、 語 調 疑 問 文 、 反 復 疑 問 文 な どで 訳 され て い る。 本 研 究 で は 日本 語 の ノ カ 疑 問 文 とそ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 疑 問 文 が ま っ た く同 じニ ュ ア ン ス を持 っ て い る と は 考 え な い 。 中 国 語 の 疑 問 文 は 形 式 に よ っ て 諾 否 疑 問 文 、 反 復 疑 問 文 、 選 択 疑 問 文 、 疑 問 語 疑 問 文 の4つ に 分 け られ る が 、 疑 問 語 疑 問 文 は 本 研 究 の 対 象 で な い た め 除 外 した 。 ま た 、 選 択 疑 問 文 に お い て は 一 般 的 に 日本 語 の2つ 以 上 の 文 が 中 国 語 の1つ の 選 択 疑 問 文 を成 す 。 本 研 究 で は 一 つ の 文 を対 象 と し た た め 、 選 択 疑 問 文 の 用 例 は 対 象 外 と した 。 ノ カ 疑 問 文 に対 応 す る 中 国 語 の 疑 問 文 を 見 る と ほ と ん どが 諾 否 疑 問 文 で あ る が 、 そ の 用 例 を 観 察 す る と語 気 助 詞 「喝 」 が つ く も の と語 気 助 詞 「喝 」 が っ か な い も の が あ る こ と が わ か る 。 本 研 究 で
は 「喝 」 が っ く諾 否 疑 問 文 を 「喝 」 疑 問 文 と称 し、 「喝 」 が つ か ず に 文 末 に 音 調 を 乗 せ 発 す る も の を 語 調 疑 問 文 と称 す る。 こ の よ うな 「喝 」 疑 問 文 と語 調 疑 問 文 は ニ ュ ア ン ス の 違 い を表 した りす る も の で 区 別 し論 じた 方 が 良 い と考 え 、 諾 否 疑 問 文 と して 一 括 す る の で は な く、 個 別 に 論 じ る こ とに した 。
本 研 究 で は 用 例 を 引 用 す る 際 、Qで ノカ 疑 問 文 を 示 して い るが 、 この 場 合 のQは 疑 問 の 英 語 表 記 の頭 文 字 を取 っ た も の で 、命 題 を指 す もの で は な い 。
0.3.4研 究 方 法
本 研 究 で は 疑 問 の 焦 点 の 位 置 に よ っ て 検 出 され た 用 例 に 対 して ス コー プ の ノ カ 疑 問 文 と ム ー ドの ノカ 疑 問 文 に 分 類 した 。 ス コ ー プ の ノ カ 疑 問 文 に お い て は 焦 点 が 置 か れ る 文 の 成 分 に注 目 し分 類 を行 い 、 ム ー ドの ノカ 疑 問 文 に お い て は 「の だ 」 の 「前 提 」 と 「含 意 」 の 二 つ の性 質 か ら 日中 両 言 語 の 対 応 関 係 を 整 理 す る こ と を試 み た 。 本 研 究 にお け る 「前 提 」 お よ び 「含 意 」 の分 類 に つ い て は 日本 語 教 育 を 専 攻 とす る 中 国 語 母 語 話 者 一 人 と筆 者 に よ っ て 行 っ た もの で あ る。
0.3.5本 論 文 の 構 成
序 章 で は 、 本 研 究 の 背 景 、 研 究 の 目的 お よ び研 究 意 義 、 本 研 究 の 概 要 を 紹 介 す る 。 第1章 で は 、 先 行 研 究 に っ い て ま と め る。 ま ず 、 日本 語 の 疑 問 文 文 末 表 現 と 中 国 語 の 疑 問 表 現 形 式 の 種 類 お よ び 定 義 な ど を紹 介 す る。 次 に 、 ノカ 疑 問 文 に 関 す る研 究 と中 国 語 の 疑 問 表 現 に 関 す る研 究 を ま とめ る。次 に 、ノ カ 疑 問 文 に 関 す る 日中 対 照研 究 を 取 り上 げ る。
そ れ か ら、 学 習 者 の 習 得 に 関 す る研 究 を 取 り上 げ る。 最 後 に 、 ノカ 疑 問 表 現 に 関 す る対 照 研 究 の課 題 を述 べ る。
第2章 で は 、 ノ カ 疑 問 文 の 疑 問 の 焦 点 が 置 か れ る位 置 に 注 目 し、 ノ カ 疑 問 文 に つ い て 分 類 を行 う。 ま た 、 そ れ ぞ れ の 疑 問 文 が 中 国 語 の 疑 問 文 と 「是 … … 的 」 構 文 を め ぐっ て形 式 的 に どの よ うな 差 異 が あ る の か を検 討 す る。
第3章 で は 、 ム ー ドの 「の(ん)で す か 」 疑 問 文 とそ れ に対 応 す る 中 国 語 の 疑 問 文 に対 して 「前 提 」 の性 質 に よ っ て 分 類 を 行 い 、 「の(ん)で す か 」 疑 問 文 に 対 応 す る 中 国 語 の 疑 問 文 の 用 例 数 と特 徴 を示 す 。
第4章 で は 、 ム ー ドの 「の(ん)で す か 」 疑 問 文 とそ れ に 対 応 す る 中 国語 の 疑 問 文 に 対 して 「含 意 」 の 有 無 に よ っ て 分 類 を行 い 、 中 国語 の 疑 問 文 との 対 応 関 係 を示 す 。
第5章 で は 、 ム ー ドの 「の か 」 疑 問 文 とそ れ に対 応 す る 中 国 語 の 表 現 に 対 して 「前 提 」 の 性 質 に よ っ て 分 類 を 行 い 、 「の か 」 疑 問 文 に対 応 す る 中 国 語 の 疑 問 文 の 用 例 数 と特 徴 を 示 す 。
第6章 で は 、 ム ー ドの 「の か 」 疑 問 文 とそ れ に 対 応 す る 中 国 語 の 表 現 に 対 して 「含 意 」 の 有 無 に よ っ て 分 類 を行 い 、 中 国 語 の 疑 問 文 と の対 応 関 係 を 示 す 。
第7章 で は 、 第2章 か ら第6章 ま で の 対 照 研 究 の成 果 を 概 観 し、 ノ カ 疑 問 文 の 特 徴 を ま
とめ る。 ま た 、 ノ カ の 出 現 位 置 と使 用 者 の 性 差 の観 点 か ら 「の(ん)で す か 」疑 問 文 と 「の か 」 疑 問 文 の 特 徴 を ま と め る。
第8章 で は 、 中 国 語 を 母 語 とす る 日本 語 学 習 者 に お け る ノカ 疑 問 文 の 習 得 上 の 問 題 点 に つ い て 、 ア ン ケ ー ト調 査 、 日本 語 教 材 の 調 査 お よび 本 研 究 の 結 果 を も と に 総 合 的 な 考 察 を 行 う。 そ こか ら 日本 語 教 育 に お け る ノ カ 疑 問 文 の 扱 い に つ い て 提 案 を 行 う。
最 後 に結 章 で は 、 以 上 を ま と め今 後 の 研 究 課 題 に つ い て 述 べ る 。
第1章 先行研究
1.1日 本 語 の 疑 問 文
1.1.1日 本 語 の 疑 問 文 の 定 義
『国語 学 大 辞 典 』 で は 疑 問 表 現 に 関 して 以 下 の よ うに述 べ られ て い る 。
広 義 に は 、 疑 い と問 い と の 表 現 の 総 称 。 狭 義 に は 、 相 手 に応 答 を 求 め る要 求 表 現 、 す な わ ち質 問 の 表 現 。(中 略)ほ か に 、 み ず か ら答 え を 用 意 す る反 語 表 現 は じ め(原 マ マ)、 見 か け の 疑 い や 問 い の 表 現 も多 く、 娩 曲 の表 現(「 … と考 え られ よ うか 」 「… と言
うべ きか 」 発 見 の表 現(「 な ん だ 、 君 だ っ た の か 」)、詰 問 の 表 現(「 何 を す る か!」)命 令 の表 現(「 早 く 、 来 な い か!応 答 の表 現(「 そ うで す か 」)、納 得 の 表 現(「 あ あ 、 そ う か 」)な どが あ る。
(『国 語 学 大 辞 典 』:217、文 責:宮 地 裕)
本 研 究 で は 『国 語 学 大 辞 典 』 で の 疑 問 表 現 に 関 す る 定 義 に従 い 、 質 問 表 現 だ け で な く発 見 や 詰 問 、 命 令 、 納 得 な ど 、 文 末 形 式 が 「の(ん)か 」・「の(ん)で す か 」 で 終 わ るす べ て の 文 を ノ カ 疑 問 文 と称 す る。
1.1.2日 本 語 の 疑 問 文 の 種 類 お よび 形 式
『国 語 学 大 辞 典 』 で は 疑 問 表 現 形 式 に 関 して 以 下 の よ うに述 べ られ て い る。
疑 問 表 現 形 式 は 一 般 に 次 の 三 っ の 要 素 の 一 つ 以 上 を 持 つ 。(1)文 末 に 特 定 の 助 詞
「 か 」 を 添 え る(「 火 事 か?」 「も う帰 る の か?」)。(2)文 中 に 疑 問 詞 を 用 い る(「 い つ 帰 る?」 「 帰 る の は い つ?」)。(3)文 末 の 音 調 を 上 げ る(「 火 事?」 「も う 帰 る?」)。
表 記 に 際 し て 疑 問 符(ク エ ス チ ョ ン マ ー ク)を 文 末 に つ け る こ と も あ る 。
(『国 語 学 大 辞 典 』:217、 文 責:宮 地 裕)
『新 版 日本 語 教 育 辞 典 』 で は 疑 問 文 の種 類 に っ い て 以 下 の よ うに 述 べ て い る。
疑 問 文 は 、 そ の 命 題 に対 して 話 し手 の判 断 が 成 り立 た な い こ と を前 提 と して 、 聞 き 手 に 問 い か け て 解 答 を 引 き 出 そ う とす る機 能 を も っ 文 の タ イ プ で あ る 。 疑 問 文 は さ ま ざ ま な観 点 か ら分 類 す る こ とが で き る。
最 も基 本 的 な の は 、 判 断 が 成 り立 た な い 理 由 か ら の 分 類 で あ る。 真 偽 疑 問 文 と補 充 疑 問 文(疑 問 詞 疑 問 文)の2つ が 主 要 な タイ プ で あ る。
真 偽 疑 問 文 は そ の命 題 の真 偽 が 不 明 な た め に 判 断 が 成 立 しな い も の で あ る。 「明 日、
学 校 に 行 き ます か?」 「あ な た は 学 生?」 の よ うな もの で あ る。 真 偽 疑 問 文 に は 「は い 」
や 「い い え 」 で 答 え る こ とが で き る 。
補 充 疑 問 文 は命 題 中 に 話 し手 に とっ て 不 明 の 要 素 が 含 ま れ て い る た め に判 断 が 成 立 しな い も の で あ る。 こ の 不 明 の 要 素 を 疑 問 詞 で 置 き換 え て 、 解 答 を 補 充 す る こ とを 聞 き 手 に 求 め る の で あ る。 「今 日は 何 を食 べ る?」 や 「い っ あ の 人 に 会 っ た の?」 が こ の 例 で あ る。 「何 か を食 べ る」 こ とや 「あ の 人 に 会 っ た 」 こ と は 前 提 と され 、 疑 問 詞 が 質 問 の 焦 点 を 表 して い る。 補 充 疑 問 文 に 対 して は 、 そ の 不 明 な 要 素 が 何 で あ る か を答 え る こ とで 応 答 で き る。
2つ の 主 要 な タ イ プ の ほ か に 、 両 者 の 中 間 的 な 性 質 を も っ た もの と して 選 択 疑 問 文 が 立 て られ る こ とが あ る。r中 華 に す る?そ れ と も和 食 に す る?」 「事 務 室 は1階 で す か 、2階 で す か?」 の よ うな も の で あ る。 疑 問 詞 が 用 い られ て い な い 点 で は真 偽 疑 問 文 に近 く、 「は い 」 や 「い い え 」 で 答 え られ る 点 で は 補 充 疑 問 文 に近 い 。 た だ し、 こ の
タイ プ は1つ の 文 と認 め られ る の か 、 複 数 の 文 を連 接 させ た も の な の か 問 題 が 残 る。
第 二 は 、 真 偽 疑 問 文 に お け る 文 末 の 述 語 の 肯 否 に よ る分 類 で あ る。 これ に よ っ て 肯 定 疑 問 文 と否 定 疑 問 文 に 分 け られ る。
真 偽 疑 問 文 は あ る命 題 の 真 偽 を 聞 き手 に 尋 ね る も の な の で 、 肯 定 疑 問 文 と否 定 疑 問 文 に は論 理 的 な違 い は な い 。 しか し、 否 定 疑 問 文 に は 独 自 の 特 徴 が あ る。
「誰 か い な い か な あ 」 の よ うな 文 で は そ の 実 現 に対 す る希 求 が 前 面 に 出 て く る。 ま た 、 「こん な こ と言 っ て怒 られ な い か な あ 」 は 不 安 を 強 く感 じ る。 希 求 や 不 安 とい っ た 情 意 性 が 強 く 出 て く る の が 否 定 疑 問 文 の1つ の 特 徴 で あ る。
否 定 疑 問 文 に よ る 質 問 に は 、 質 問 者 が 予 測 を も っ て い る とい う特 徴 が あ る。 「雨 、 降 っ て る?」 とい う肯 定 疑 問 文 は 、 雨 が 降 っ て い る か ど うか が 話 し手 に は ま っ た くわ か らな い 状 況 で 使 わ れ る。 一 方 、 「雨 、 降 っ て な い?」 とい う否 定 疑 問 文 は 、 実 際 に 雨 が 降 っ て い るか ど うか は 不 明 な が ら、 話 し手 は 雨 が 降 っ て い る こ とを 予 測 して い る。 否
定 疑 問 文 は 文 の 形 式 と は逆 方 向 の 判 断 の 成 立 を 予 測 す る も の で あ る。 類 似 した 機 能 を もつ 形 式 に 「の で は な い か 」 が あ る。
第 三 に 文 末 の 「の(だ)」 の 有 無 に よ っ て 通 常 の 疑 問 文 と ノカ 疑 問 文 が 区別 され る。
ノカ 疑 問 文 は 単 に 命 題 の真 偽 や 要 素 の 補 充 を 求 め る の で は な く、 「君 、 煙 草 吸 うの?」
「お や 、 ど こへ 行 っ て き た の?」 の よ うに 発 話 状 況 と関 連 付 け て 事 情 説 明 を 求 め る も の で あ る 。 「私 が 行 き ま す 」 とい う発 言 に 対 して 「あ、君 も 行 くの?」 と言 え る よ うに 、 相 手 の 直 前 の 発 話 を そ の ま ま繰 り返 して確 認 す る 用 法 も あ る。 補 充 疑 問 文 は ノ カ 疑 問
文 に な る こ とが 多 い が 、 と く に 「な ぜ 昨 日休 ん だ の?」 の よ うに理 由 を 尋 ね る と き は 、 ほ ぼ 必 須 的 に ノ カ 疑 問 文 に な る。 「疲 れ た か ら休 ん だ の?」 の よ うに 、 質 問 の 焦 点 が 述 語 以 外 の 部 分 に あ る 場 合 も ノ カ 疑 問 文 が使 わ れ る。
(『新 版 日本 語 教 育 辞 典 』:135‑136、 文 責:安 達 太 郎)
1.1.3反 語 文
『国 語 学 大 辞 典 』 で は 、 反 語 に つ い て 以 下 の よ うに 述 べ ら れ て い る 。
反 語 の 表 現 は 質 問 の 一 種 で あ っ て 、 相 手 の こ と ば に つ い て 、 「 … と言 う の か?」 と 問 い た だ す も の で あ る が 、 「 言 う の か 」 を 省 略 し た り(「 火 事 だ と?」 「も う 帰 る っ て?」
「 存 じ ま せ ん だ と?」)、 さ ら に 「と 」 「っ て 」 も 省 略 し た り(「 火 事 だ?」 「も う帰 る?」
「 存 じ ま せ ん?」)す る 。
(『国 語 学 大 辞 典 』:217、 文 責:宮 地 裕)
1.2中 国 語 の 疑 問 文
1.2.1中 国 語 の 疑 問 文 の 種 類 お よ び 形 式
劉 他(1991)で は 中 国 語 の 疑 問 文 に つ い て 以 下 の よ う に 述 べ ら れ て い る 。 疑 問 文"疑 向 句yiwenju"は 、 問 い を 発 す る の に 用 い る 文 で 、 問 い 方 の 違 い に よ り疑 問 文 は 諾 否 疑 問 文
"是 非 向 句shifeiwenju"
、 疑 問 詞 疑 問 文"特 指 同 句tezhiwenju"、 反 復 疑 問 文"正 反 同 句zhengfanwenju"、 選 択 疑 問 文"逸 拝 同 句xuanzewenju"の 数 種 類 に 分 け る こ と が で き る 。
1.2」.1諾 否 疑 問 文"是 非 向 句shifeiwenju"
諾 否 疑 問 文 は ま た 、語 気 助 詞"喝ma"を 用 い る も の 、"好 喝haoma""行 喝xingma""対 喝duima""可 以 喝keyima"な ど を 用 い る も の 、 疑 問 の 語 気 を 用 い て 疑 問 を 表 す も の 、 語 気 助 詞"咀ba"を 用 い る も の 、 語 気 助 詞"ロ 阿a"を 用 い る も の が あ る と し て い る 。
語 気 助 詞"喝ma"を 用 い る諾 否 疑 問 文:
平 叙 文 の 文 末 に"喝"を つ けれ ば こ の 疑 問 文 を つ く る こ と が で き る。 述 語 は 肯 定 形 で も 、 否 定 形 で も よ い が 、 肯 定 形 の 方 が 多 い 。
① 他 是 奈 北 人 喝?(彼 は東 北 人 で す か 。)
② 遠 ノト月 三 十 一 天 喝?(今 月 は 三 十 一 日で す か 。) (中略)
⑥ 小 李 不 去 北 海 剣 船 喝?(李 君 は 北 海 公 園 ヘ ボ ー トを こ ぎ に 行 か な い の で す か 。) (中 略)
平 叙 文 の末 尾 に 助 詞"的""呪""了"が あ る場 合 で も 、"喝"を つ け加 え れ ば や は り諾 否 疑 問 文 に な る 。
⑧ 他 是 昨 天 来 的 喝?(彼 は き の う来 た の で す か。)
⑨ 他 伯 正 在 升 会 「尼喝?(彼 ら は今 会 議 中 で す か。) (中略)
一 般 的 に 言 っ て、 こ の 疑 問 文 を使 う場 合 、 質 問 者 は 尋 ね て い る事 柄 が 事 実 で あ りそ うだ とか 、 実 現 しそ うだ と考 え て い る。 しか し時 に は 、 あ る事 柄 が そ うで あ る か 否 か
見 当 が つ か な い 場 合 も あ る 。 (後 略)
(劉 他(1991):669‑671)
"好 喝haoma""行 喝xingma""対 喝duima""可 以 喝keyima"な ど を 用 い る 諾 否 疑 問 文=
話 し 手 が ま ず 自 分 の 意 見 、 推 測 、 要 求 を 言 い 、 そ れ に 対 す る 相 手 の 意 見 を 求 め る 時 に こ の 種 の 疑 問 文 を 用 い る 。
① 我 伯 明 天 一 起 去 長 城,好 喝?(僕 達 あ す 一 緒 に 万 里 の 長 城 に 行 こ う よ 、 い い か い?)
② 弥 是 日 本 人,対 喝?(あ な た は 日本 人 で し ょ?)
③ 借 我 洞 典 用 用,行(成)喝?(辞 書 を ち ょ っ と 私 に 貸 し て 、 い い?)
④ 我 イ1]杁奈 口 遊 去,可 以 喝?(僕 達 東 門 か ら 入 ろ う 、 い い か い?) (後 略)
(劉 他(1991):671)
疑 問 の 語 気 を用 い て疑 問 を表 す 諾 否 疑 問 文:
平 叙 文 で も 疑 問 の 語 気 を 帯 さ え す れ ば 、そ れ で 疑 問 文 とす る こ とが で き る。こ の 時 、 文 末 の イ ン トネ ー シ ョ ン は 上 昇 調 に な けれ ば な らな い 。
① 迭 広 大 的 夙 雪,去 下 羊 群 回 家 去?不 能!(こ ん な に激 し い 吹 雪 の 中 に 羊 の 群 を 置 き 去 りに して 家 に 帰 る っ て?そ れ は で き な い!)
(中略)
③ 今 天 晩 上 伽 不 去 圏 需 棺 了?(今 晩 、 君 は 図 書 館 に 行 か な い こ とに した の?)
④ 小 弓長没 来?(張 さん は 来 て い な い?)
返 答 の こ とば と省 略 の 仕 方 は 、"喝"を 用 い る 疑 問 文 と同 様 で あ る。
(劉他(1991):671‑672) 語 気 助 詞"咀ba"を 用 い る諾 否 疑 問 文=
質 問 者 が あ る事 柄 や 状 況 に つ い て 、あ る 程 度 の 見 当 は つ い て い る が 、完 全 な 断 定 は で き な い とい う時 、 平 叙 文 の 文 末 に 語 気 助 詞 の"咀"を つ け る こ とに よ っ て 、 そ れ を尋 ね る 疑 問 文 に す る こ と が で き る。 こ の 疑 問 文 に は 、 探 りを 入 れ る とか 推 測 す る とい う 意 味 あ い が あ る。 肯 定 形 、 否 定 形 と も に よ くみ られ る 。
① 這 是 イホ女 几 ロ巴?(こ ち ら は あ な た の 娘 さん で し ょ?)
② 現 在 快 十 二 点 了 咀?(も う じき12時 で し ょ?) (後略)
(劉他(1991):672)
語 気 助 詞"咽a"を 用 い る諾 否 疑 問 文:
こ の 種 の 疑 問 文 の働 き は"喝"を 用 い る も の と同 様 だ が 、 た だ 文 全 体 に相 談 を も ち か け た り忠 告 を 与 え た りす る 意 味 あい が 加 わ る。 文 末 の イ ン トネ ー シ ョン は 高 く平 ら で 、 且 つ 長 く伸 ば して も よい 。
① 哨 イ「]歌一 会 几 咽?(僕 た ち少 し休 む か い?)
② 悠 喝 点 几 汽 水 咽?(サ イ ダ ー を少 し飲 ま れ ま す か 。)
(劉他(1991):672)
1.2.1.2疑 問 詞 疑 問 文"特 指 向 句tezhiwenju"
疑 問 詞 疑 問 文 に つ い て は 一 般 的 な 疑 問 詞 疑 問 文 と 語 気 助 詞"呪"を 用 い る 疑 問 詞 疑 問 文 に 分 け て い る 。
一 般 的 な疑 問 詞 疑 問 文:
これ は 疑 問 代 詞 を 用 い て 尋 ね る疑 問 文 で あ る。 こ の 疑 問 文 の 語 順 は 、 平 叙 文 の そ れ と 同 じで 、 文 中 の尋 ね た い 成 分 を 適 当 な 疑 問 代 詞 に 変 え 、 同 じ場 所 に 置 け ば よい 。
① 准 是 伽1]的 体 育 老 師?(誰 が あ な た た ち の 体 育 の 先 生 で す か 。) (後 略)
(劉他(1991):672)
"呪ne"を 用 いる疑 問 詞 疑 問 文=
単 語 、 フ レー ズ 或 い は 文 の 後 に語 気 助 詞"呪"を 置 け ば疑 問 文 に な る。
文 脈 に 関係 な く 、"呪"が 名 詞 、 代 詞 、 名 詞 フ レー ズ の 後 に 使 わ れ た も の は場 所 を 尋 ね る も の で 、(… … は ど こ に い る か[あ る か]?)に 相 当 す る。
① 阿 里 呪?(ア リは ど こ?)
③ 窃 戸 己経 擦 干 浄 了,地 板 呪?(窓 は も うき れ い に 拭 い た け ど、 床 は?)〈 床 は き れ い に 拭 い た か 〉
⑤ 他 不 同 意 呪?(彼 が 同意 しな か っ た ら?)〈 も し彼 が 同意 しな か っ た ら、 ど うす る か 〉
(劉他(1991):674)
1.2.1.3反 復 疑 問 文"正 反 同 句zhengfanwenju"
反 復 疑 問 文 に つ い て は 、 一 般 的 な 反 復 疑 問 文 と"是 不 是shibushi"を 用 い る 反 復 疑 問 文 に 分 け て い る 。
一 般 的 な 反 復 疑 問 文=
こ の種 の 疑 問 文 は 主 に述 語 の 肯 定 形 と否 定 形 を並 べ て つ く る もの で 、 答 え る 人 は そ
の うち の 一 方 を 返 答 と して 選 ぶ 。 質 問 者 は答 え に 対 して 前 もっ て何 らの 予 想 も して い な い 。
①"逮 神 最 音 机 好 不 好?"(こ の 手 の テ ー プ レコ ー ダ ー は い い で す か 。)
②"称 母 来 工 作 不 工 作?"(君 の お 母 さん は 仕 事 を して い ま す か。) (中 略)
動 詞 述 語 文 にお い て 、 も し動 詞 の後 に 目的 語 が あ る な ら ば 、 反 復 疑 問 の形 は 三 種 類 可 能 で あ る。 一 つ は 、 述 語 動 詞 の 肯 定 形 と否 定 形 だ け を並 べ て 、 そ の 後 に 目的 語 を つ け る も の 。 二 つ 目 は 、 肯 定 形 に 目的 語 を つ け 、 否 定 形 に は つ け な い 形 。 三 つ め は 、 肯 定 形 と否 定 形 の 両 方 と も 目的 語 をつ け る形 で あ る。
⑤"称 看 不 看 京 刷?"(君 は 京 劇 を 見 ます か。)
⑥"伽 看 京 刷 不 看?"(同 上)
⑦"称 看 京 刷 不 看 京 刷?"(同 上) (後略)
(劉他(1991):674‑675)
"是 不 是shibushi"を 用 い る反 復 疑 問 文:
質 問者 が あ る 事 実 や 状 況 に 対 して す で に か な り確 か な 見 通 しや 見 当 が つ い て い て 、 一 歩 つ っ こん で さ ら に確 証 を得 た い 時 、 この疑 問 文で尋 ね るこ とが で き る。"是 不 是"
は 、 平 叙 文 の 述 語 の 前 に使 っ て も い い し、 文 頭 或 い は 文 末 に お い て も い い 。
① 伽1]是 不 是 明 天 劫 身?(君 達 明 日出 発 す る ん で し ょ?) (中略)
④ 弥 家 住 在 北 京 的 郊 区,是 不 是?(お 宅 は 北 京 の郊 外 何 で し ょ?)
"是 不 是"を 使 っ て も確 証 を 得 よ う と して い る の で は な くて 、む しろ相 手 の同意 を 求 め て い る場 合 が あ り、 こ の 時 は 相 談 を も ち か け る 口調 を 帯 び 、"… … 好 喝"(… … ど うだ ろ う?)の 意 味 を もつ 。 こ の語 気 を表 す"是 不 是"は 通 常 述 語 の 前 に 用 い 、 時 に 主 語 の 前 に 用 い られ る こ と も あ る が 、 文 末 に は 使 え な い 。
⑤ 我 伯 是 不 是 桟 地 淡 一 淡?(我 々 彼 女 と会 っ て話 を しな い か?)
⑥ 是 不 是 我 去 帯 助 他 一 下?(僕 ち ょ っ と彼 を助 け に い こ うか?)
(劉他(1991):675‑676)
1.2.1.4選 択 疑 問 文"逸 蜂 向 句xuanzewenju"
選 択 疑 問 文 は"逸 操 同 句xuanzewenju"は 、 選 択 し よ う とす る 二 つ 或 い は 数 個 の 可 能 性 を"… …(是)… … 逐 是 … …"或 い は"… …(是)… … 込 是 ・ … ・ 迩 是 … …"を 使 っ
て つ な げ 、 回 答 者 に そ の う ち の 一 つ を 答 え と し て 選 ぶ よ う求 め る も の で あ る 。
① 弥 是 去,込 是 不 去?(君 は 行 く の 、 行 か な い の?)
② 是 弥 去,込 是 他 去?(君 が 行 くの 、 そ れ と も彼 が行 くの?) (後略)
(劉 他(1991)'676)
1.2.2中 国 語 の 反 語 文
反 語 文 に つ い て 劉 他(1991)で は 以 下 の よ う に 述 べ ら れ て い る 。
反 語 は 協 調 を表 す 一 つ の 方 法 で あ る。 平 叙 文 も 各 種 の 疑 問 文 も、 そ こ に 反 語 の語 気 を加 え る こ と に よ っ て 反 語 文"反 同 句fanwenju"を つ く る こ とが で き る。 反 語 文 の 働 き は 、 あ る 明 らか な道 理 や 事 実 に 対 して 反 語 の 語 気 を使 っ て そ れ を 肯 定 ま た は否 定 す る こ と に よ っ て語 調 を強 め る こ とに あ る。 反 語 文 の特 徴 は 、 否 定 の 形 を とっ た 文 は 肯 定 的 意 味 を 強 め 、 肯 定 の 形 を とっ た 文 は 否 定 の意 味 を 強 め る こ とで あ る。
(中略)
(劉他(1991):677‑678)
1.2.2.1中 国 語 の 反 語 文 の 形 式
劉 他(1991)で は反 語 文 の 形 式 を 諾 否 疑 問 文 の 形 式 と疑 問 詞 疑 問 文 の 形 式 に 分 け て い る。
疑 問 詞 疑 問 文 は 本 研 究 の 研 究 範 囲 で な い た め 、 こ こ で は 諾 否 疑 問 文 の形 式 お よび 反 復 疑 問 文 の 形 式 の み 取 り上 げ る こ と にす る。 ま た 、 否 定 形 を用 い た 形 式 も本 研 究 の範 囲 で な い た め 、 取 り上 げ な い こ とに す る。
一 般 的 な諾 否 疑 問 文 が 反 語 の 語 気 を帯 び たもの=
① 遠 是 鄭 几 和 螂 几 的 事 研?挨 得 着 喝?伽 真 能 胡 思 乱 想!(そ れ は 一 体 何 の こ とだ?
関係 あ る の か?お 前 で た ら め 考 え る の もい い か げ ん に しろ!)〈"挨 不 着"(関 係 を持 ち え な い)の 意 〉
② 迩 想 遊 去 看 屯影?伽 有 票 喝?(中 に入 っ て 映 画 を 見 た い だ と?切 符 は あ る の か?)
〈"伽 没 有 票"(君 は切 符 を も っ て い な い)の 意 〉
(劉他(1991):678)
"唯 道"
、"… … 不 成"或 い は"ヌ 住道 … … 不 成"を 使 うも の=
こ の パ タ ー ン は 、 文 末 に 更 に"喝"を つ け る こ と も で き る 。 文 全 体 は 、"不 会"(…
・ の は ず が な い) 、"不 座 核"(… … で あ る べ き で は な い)、"不 可 能"(… … の は ず が な い)、"不 一 定"(… … と は 限 ら な い)な ど の 意 味 を も つ 。
① 我 已 餐 在 他 稟 上 留 了 条 子,ヌ 住道 他 没 看 兄?(僕 は ち ゃ ん と彼 の 机 の 上 に メ モ を 残
し て お い た の に 、 ま さ か 彼 が 見 な か っ た な ん て こ と が?)〈"他 不 鹿 核 没 看 兄"(彼 が
見 て な い は ず は な い)の 意 〉
② 我 込 能 随 到 天 上 去 不 成?(僕 が 空 に飛 ん で い け る と で も い うの か?)〈"我 不 能 、 到 天 上 去"(僕 は 空 に 飛 ん で い け な い)の 意 〉
(後略)
(劉 他(1991):679)
副 詞"込"を 使 うもの:
"不 泣 咳"( … … で あ るべ き で は な い)の 意 味 を もつ 。
① 迭 広 好 的 条 件,称 迩 不 満 意!(こ ん な に い い 条 件 な の に 、 君 は ま だ 不 満 な の か!)
〈"称不 泣 核 不 満 意"(君 は 不 満 を も つ べ き で は な い)の 意 〉 (中略)
③ 狼 悦 、"遠 祥 的 人 逐 不 核 吃 喝?"(狼 は 言 っ た 。 「こ ん な 人 間 で も食 べ ち ゃ い け な い ん で す か?」)〈"迭 祥 的 人 核 吃"(こ ん な 人 間 食 べ て 当然 だ)の 意 〉
(劉他(1991):680)
一 般 的 な 平 叙 文 が 反 語 の 語 気 を帯 び た もの:
① 遠 是 伽 的?伽 能 叫 得 官 答 庇 伽 公?(こ れ が お 前 の だ っ て?じ ゃ お 前 が 呼 べ ば こ い つ が 返 事 す る とい うの か 。)〈"遠 不 是 イホ的"(こ れ は 君 の じゃ な い)の 意 〉
(後略)
(劉他(1991):680)
反 復 疑 問 文 の 形 式=
肯 定 を 表 し 、 「 確 か に そ うだ 」 と か 「き っ と そ う だ 」 と い う こ と を 強 調 す る 。 文 頭 に よ く"看"或 い は"祢 看"、"弥 悦"、"弥 想"な ど が 添 え られ 、 相 手 を 説 得 す る と か 、 相 手 に も 同 意 し て も ら い た い 等 の 意 味 が こ も る 。
① 称 看 看,遠 ノ ト人 房 害 不 房 害?(ほ ら 、 こ の 人 キ ツ イ だ ろ う?(原 マ マ))〈"這 ノ ト 人 碗 実 房 害"(こ の 人 は 確 か に キ ツ イ)の 意 〉
(後 略)
1.3ノ カ疑 問 文 に 関 す る 日本 語 の 研 究
これ ま で の 日本 語 に お け る 「の だ 」 の 研 究 は 、 説 明 、 関係 付 け説 や 既 成 命 題 説 、 ス コ ー プ 説 な どが あ り様 々 な 面 か ら議 論 され て き た 。 ノ ダ に 関 す る研 究 は 多 く存 在 す る も の の 、 ノカ 疑 問 文 に つ い て 詳 し く扱 っ て い る 研 究 は 限 られ て い る 。 井 島(2010)で は ノ ダ の 統 一 的 な概 念 を設 け る べ く これ ま で の 先 行 研 究 を ま とめ た 上 で 、 ノ ダ 文 は 「話 し手 の 信 念 を 表 す 」 の に 対 し、 ノカ 疑 問 文 の 本 質 的 な 意 味 機 能 は 「聞 き 手 の信 念 を表 わ す 」 と して い る 。 しか し、 こ の よ うな 基 準 を用 い て 対 照 分 析 を 行 うに は 限 界 が あ る と考 え 、 本 研 究 で は グ ル ー プ ・ジ ャ マ シ イ(1998) 、 田野 村(1990)、 野 田(1997)の よ うに具 体 的 な分 類 が な され
て い る研 究 を取 り上 げ 分 析 に用 い る こ と にす る。 ま た 、 ス コー プ の観 点 を初 め て 導 入 され た 久 野(1983)を 取 り上 げ る こ とに す る。
1.3.1久 野 障(1983)の 研 究
久 野(1983)で は 、 疑 問 助 詞 「 カ 」 の ス コ ー プ は 、 「 極 め て 狭 く 、 通 常 、 そ の 直 前 の 動 詞 、 形 容 詞 、 『Xダ/デ ス 』 に 限 ら れ る 」 と し 、 そ れ 以 外 の 部 分 を ス コ ー プ に 入 れ る に は 基 本 的 に 「ノ 」 が 必 要 で あ る と 指 摘 し て い る 。(59)が 不 自 然 な の は 、(59)が 意 図 す る 疑 問 の 焦 点 は 下 線 部 で あ る が 、 疑 問 助 詞 「 カ 」 の ス コ ー プ は 直 前 の 動 詞 で あ る 「 生 ま れ た 」 「 買 っ た 」
「 撮 っ た 」 に 限 ら れ る た め 齪 歯吾が 生 じ 、 下 線 部 を 焦 点 と し て 成 立 させ る た め に は 「ノ 」 を 付 加 す る 必 要 が あ る と し て い る 。
(59)a.*君 ハ1930年 二 生 マ レ タ カ 。 b.*君 ハ 東 京 デ 生 マ レ タ カ 。
c.*君 ハ コ ノ 時 計 ヲ パ リデ 買 ッ タ カ 。 d.*君 ハ コ ノ 写 真 ヲ パ リデ 撮 ッ タ カ 。
(久 野(1983):117‑146)
1.3.2グ ル ー プ ・ジ ャマ シ イ(1998)の 研 究
グ ル ー プ ・ジ ャ マ シ イ(1998)で は 文 末 の 「の か 」 の 用 法 に つ い て 判 明 と 質 問 の 用 法 が あ る と し 以 下 の よ う に 述 べ て い る 。
1...の か 〈 判 明 〉
(1)な ん だ 、 猫 だ っ た の か 。 誰 か 人 が い る の か と 思 っ た 。 (2)彼 は 知 っ て い る と 思 っ て い た の に 。 全 然 知 ら な か っ た の か 。
(3)な ん だ 。 ま だ だ れ も 来 て い な い の か 。 ぼ く が 一 番 遅 い と 思 っ て た の に 。
下 降 調 の イ ン トネ ー シ ョ ン を 伴 っ て 用 い ら れ る 。 思 っ て い た こ と と 違 う事 実 が 判 明 し た こ と を 軽 い 驚 き を 込 め て 述 べ る の に 用 い る 。
2...の か く 質 問 〉
(1)朝 の5時?そ ん な に 早 く 起 き る の か?
(2)君 は 娘 に 恋 人 が い た こ と も 知 ら な か っ た の か?
(3)A:も う帰 る の か?
B:う ん 。 今 日 は 疲 れ た か ら。
上 昇 調 の イ ン トネ ー シ ョ ン を 伴 っ て 、 相 手 に 対 す る 質 問 や 確 認 を 表 す 。
(グ ル ー プ ・ジ ャ マ シ イ(1998):465‑466)
1.3.3田 野 村 忠 温(1990)の 研 究
田 野 村(1990)で は 、 従 来 の 「の だ 」 の 分 類 に は 説 明 、 判 断 の 根 拠 、 命 令 、 想 起 、 強 調 な ど 、 意 味 的 に 説 明 す る も の や 発 言 機 能 に 基 づ い た 分 類 な ど が 混 在 し て い る と し 、 ま た 、 想 起 な ど は 「 の だ 」 の 特 有 の 機 能 で は な い と批 判 し 、 「 の だ 」 の 同 一 の 基 準 で の 分 類 を 試 み て い る 。 そ の な か で 田 野 村 氏 は 「 の か 」 に つ い て 、 「 『の ダ 』 に 『か 』 の 働 き が 加 わ っ た も の で あ る 」 と し 、 「 『β の か 』 は 、 あ る こ と が ら α を 受 け て 、 そ れ は β と い う こ と か 、 α の 背 後 の 事 情 に あ る の は β と い う こ と か 、 と尋 ね る の に 用 い ら れ る 」 と 述 べ て い る 。
田 野 村 氏 は 「あ る こ と が ら α 」 は(1‑1)や(1‑2)の よ う に 具 体 的 に 示 さ れ て い る も の も あ れ ば 、(1‑3)(1‑4)の よ う に 「 具 体 的 な こ と が ら α を 受 け て い る と は 言 い が た い 」 も の も あ る と 述 べ て い る 。
(1‑1)(く し ゃ み を す る 人 に 対 し て)一 お た く も 花 粉 症 な ん で す か?
(1‑2)わ た し 、 お 先 に 失 礼 し ま す 。 一 何 か 用 事 で も あ る ん で す か?
(田 野 村(1990:54))
(1‑3)(ト コ ロ デ)お 酒 は よ く 召 し 上 が る ん で す か?
(1‑4)お た く の お 主 人 は ど ち ら に お 勤 め な ん で す か?
(田 野 村(1990:55))
(1‑3)(1‑4)の よ うな 「具 体 的 な こ とが ら αを 受 け て い る と は言 い が た い 」 場 合 に お い て は 「背 後 の 事 情 を 表 す 用 法 に お け る αが そ の 内 容 の 具 体 性 を 失 っ た と こ ろ に成 立 し 定 着 して い る 」 と述 べ て い て 、 「す べ て の者 に は 必 ず し も容 易 に は 知 り得 な い に せ よ 、 す で に 定 ま っ て い る と想 定 され る 事 情 αが 話 し手 の 念 頭 に 問題 意 識 と し て あ り、 そ れ が βで あ る(か ど うか)と い うこ と が 問 題 と され て い る 」 と して い る。
ま た 、 「答 え は 事 実 と して は す で に 定 ま っ て い る は ず で あ るが 」、 「の か 」 を 用 い られ な い も の と して(1‑5)(1‑6)(1‑7)の よ うな 例 が 挙 げ られ て い る 。