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イギリスでの在外研究を終えて

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Academic year: 2021

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 平成27年9月より一年間、長期在外研究員として イギリスのウォーリック大学にて研究を行う機会を 得ました。ウォーリック大学は研究型の総合大学で、

理・工学部だけでなく、人文系の学部や医学部もあ り、2万人以上の学生が学んでいます。また、ウォー リック大学は、学校名に反して、ウォーリックの町 中にはなく、ウォーリックから10キロ以上離れたコ ベントリー市郊外にあります。そのため、大学への 鉄道の最寄り駅もウォーリック駅ではなくコベント リー駅です。そこから、路線バスに乗って20―30分 程でキャンパスに着きます。大学の周りは、麦畑や トウモロコシ畑が広がっていて、羊や馬が放牧され ている様な、のどかな場所です。

 コベントリー市は、イギリス第2の都市であるバー ミンガム市より30キロ程南東にあり、イングランド のほぼ中央に位置しています。バーミンガム国際空 港へも近く、ロンドンとバーミンガムを結ぶ高速道 路や高速鉄道が通っており、交通の便は良い方です。

高速鉄道を使うとロンドンまで1時間程で行けます。

9世紀後半から20世紀にかけては、オートバイ・自 動車産業や工作機械産業が栄えていたそうですが、

現在は廃れて自動車メーカーのジャガーが残ってい るぐらいです。また、ゴダイバ夫人の伝説が有名で、

市の中心部には馬に乗ったゴダイバ夫人像がありま す。

 ウォーリック大学の理学部・化学科に在籍されて いる

Constantini

教授とは以前からの知り合いで、私 がドイツのシュツットガルトにあるマックス・プラ ンク固体研究所でポスドクをしていた時に一緒に研 究をしていました。そのご縁で、今回連絡を取った ところ、私の在外研究先を快く引き受けて下さいま した。それで、家族を日本に残して、単身で9月初 めにウォーリック大学へ行きました。

 住居は、

Constantini

教授を介して、日本から大学

内にある教職員宿舎を事前に入居契約しました。こ の宿舎の家賃は周囲の相場より高めでしたが、家具・

駐車場付きで食器なども初めから一通り揃っていま した。また、入居中に備え付けの洗濯機が故障した 時も大学が無料で修理してくれました。単身者また は夫婦二人用の一番小さな部屋に入居したのですが、

6畳程の広さのダイニング兼キッチンにリビングルー ムとベットルームと収納部屋まであり、単身者には 広すぎる物件でした。私は、キッチンとベットルー ムだけで充分生活できたので、リビングルームはほ とんど使わずに「開かずの間」状態で一年間過ごし ました。この住居から研究室までは、徒歩15分程で 行くことができ通勤には便利でした。

 ウォーリック大学のキャンパスは市内から離れて いることもあり、学内に数多くの学生寮がありまし た。しかし、希望者全員を収容するには足りない様 で、1、2年生は優先的に入居できて、3年生に なったら学生寮から追い出されるそうです。追い出 された学生は、少し離れた小さな町に住んで自家用 車や自転車やバスで通学していました。私の滞在中 にも教職員宿舎の隣の空き地に新しい学生寮を建設 していました。

 日用品や食品等は、大学内にある小規模のスーパー マーケットか大学近くにあるショッピングモールで 買っていました。このショッピングモールには大手 のスーパーマーケットや冷凍食品専門店やアジア食 品店があるので品揃えは良かったのですが、私の宿 舎からだと徒歩で30分程かかるので、週末に行って 一週間分の必需品をまとめ買いしていました。イン グランドではサイダーというリンゴから作った発泡 性のお酒が名産で良く飲まれていて、私も買って良 く飲んでいました。ウイスキーも売られていました が、ウイスキーはスコットランドが名産地でイング ランドではほとんど作られていないようでした。ま

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海外レポート

イギリスでの在外研究を終えて

工学部電子情報工学科教授 鈴 木 孝 将

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た、イギリス名物のフィッシュ&チップスやイング リッシュ・ブレークファーストなどの冷凍食品も時々 買って食べていました。

 休日なると、 シェークスピアで有名なストラト フォード・アポン・エイボンや、特別自然景観地域 のコッツウォルズや、スポーツのラグビーの発祥地 であるラグビー、ウスターソースの発祥地であるウ スター、私の在外中にサッカーチームが奇跡のリー グ優勝を果たしたレスターなど近郊の町に良く観光 に出かけていました。私の在外期間中の6月にはイ ギリスの

EU

離脱の是非を問う国民投票が行われた ので、その時には離脱賛成派のグループも反対派の グループも街頭に立ってビラを配ったりして、支持 を呼びかけていました。

 

Costantini

研究室には、液体ヘリウムを使って4

K

まで試料を冷やせる極低温の超高真空・走査トン ネル顕微鏡 (

STM

)装置と、液体窒素を使う低温の 超高真空

STM

装置があり、それぞれに3、4人の 学生やポスドクが付いて実験を行っていました。さ らに、

X

線光電子分光(

XPS

)装置や核磁気共鳴

NMR

)装置が大学の共同利用施設で利用できまし た。極低温

STM

装置では、清浄な金属表面上に有

機分子を吸着させて、有機金属構造体の2次元超分 子構造を作製する研究を行っており、もう一方の低

STM

装置では、清浄固体表面に高分子を吸着さ せるためのエレクトロスプレーを開発する研究を行っ ていました。私は前者のグループに入って、有機金 属構造体を作る研究を行いました。

Costantini

研究室 では、金・銅といった貴金属表面上にテトラシアノ キノジメタン(

TCNQ

)等の有機分子を吸着させて いましたが、私は福岡大学で主にシリコン基板を 使った研究をしていたので、

Costantini

教授と相談し てシリコン基板上にインジウムを吸着させた後に

TCNQ

分子を吸着させて有機金属構造体を作る研究 を行うことになりました。

 最初の1ヶ月は、学生が実験しているのを見学し て装置の使用方法を学びながら、シリコン用の通電 加熱サンプルホルダーを組み立てて、インジウムの

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教職員宿舎と学生寮

大学の周りの麦畑

極低温超高真空STM装置 Costantini研究室のグループメンバー

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蒸着装置を自作しました。しかし、その後、いざ自 分の実験を始めようとした矢先に

STM

装置のピエ ゾスキャナーが故障して、修理に2ヶ月ほどかかり その間実験が出来ませんでした。その後、修理が終 わった年末に一週間ほど実験する機会がありました が、年が明けると修士の学生が修士論文の締め切り のために、2ヶ月半ほど独占的に

STM

装置を使用 していたので、またしばらく実験できませんでした。

3月下旬からは、2週間毎にマシンタイムがもらえ て普通に実験ができるようになり、8月には

XPS

置も使わせてもらって、興味深い実験データを得る ことができました。

 最後に、この一年間に数多くの有意義な経験をさ せて頂きました。特に、一年間も研究に集中できる 時間を持つのはポスドク以来で、非常にありがたい 経験でした。また、私の在外研究に関していろいろ とご助力頂いた多くの方々に感謝いたします。

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1 シドニーのマックォーリー大学

 私は、福岡大学の長期海外研修員として26年4 月1日から9月13日まで、オーストラリアはニュー サウスウェールズ州のシドニー市にあるマックォー リー大学にて研究する機会を与えられた。まずは、

マックォーリー大学について紹介しよう。この大学 は、正確にはシドニー市ではなく、その北に接する 郊外のライド市に位置する。14年に州立大学とし て設立された比較的歴史の新しい大学である。創立 当初は、福岡大学がそうであったように、市域から はずれた農地や原野のようなところで、今でこそ学 生宿舎が多くあるものの当時は周りには何もなく、

学生たちはキャンピングをしながら勉学に励んだと 言い伝えられている。

 現在、学生数約4万人が在籍する大きな総合大学 である。大学に隣接してマックォーリー・パークと 呼ばれる一種の企業団地エリアがあり、企業の集積 が進んでいるようである。日本のネット上では「オー ストラリアのシリコンバレー」と書かれていた。確 かに、富士通、東芝、キヤノンなど日本からも企業 が多く進出していた。パナソニックやシーメンスが 大学構内のビルに入っているのには驚いた。

 私が所属したのは、ファカルティでいうとビジネ ス・アンド・エコノミクス、デパートメントでいう

とアカウンティング・アンド・コーポレイト・ガバ ナンスという。この関係がなかなかわかりづらくて いまだに理解できていないが、日本の大学の学部と 学科の関係のようなものだと勝手に理解している。

所属学科は専門職教育に特化しているわけではない が、主として会計専門職を目指す学生をターゲット にしている。在学生の半分以上はとくにアジア諸国 からの留学生である。これらの留学生の母国には日 本のように会計士や税理士といった専門職制度が確 立していないので、ここで勉強して

CPA

Certified Public Accountant

)の資格をとり、母国のビジネス界 で有為な人材になるのだという。グローバルな大学 市場において英語で教育できることの強みを感じさ せられたしだいである。

2 マックォーリー大学の教育

 自身の研究活動の合間に垣間見て印象に残ったマッ クォーリー大学の教育風景について記そう。私が滞 在した期間は3つのタームにまたがっていた。4月 最初の10日間、4月下旬から7月初め、そして8月 初めから9月上旬である。そして、6月の後半は年 度末の定期試験期間であった。教室での試験風景は 日本と似た見慣れた光景であったが、後で試験監督 者は教員ではなく大学外部の人がやっていると聞い てびっくりした。教員は試験監督をやってはいけな いのだそうで、周りの先生は「教員は信用されてい ないのさ」と笑っていたが、担当科目は必ずその教 員が監督しなければならない日本の大学教員の身と しては、一面でうらやましいような複雑な思いにと らわれた。

3 マックォーリー大学での研究生活

 今回の研修は、オーストラリアの弁護士法人制度 を研究するために、長年の知己であるマックォーリー

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海外レポート

シドニーでの長期海外研修

法学部教授 武士俣   敦

写真1 「試験室に貼られていた不正行為禁止の告知」

(5)

大学のリチャード・チャン博士のつてを頼って実現 した。研修初日に、学科長への挨拶を済ませ、キャ ンパスカード、ネットワーク・アカウントや主なア プリをインストール済みのラップトップ、そして研 究室を手配いただき、快適な環境の中で研究生活を 始めた。当初は、日本から持参した自分のノート・

パソコンで仕事をしていたが、5月初めに突然動か なくなった。後でわかったことだが、ハード・ドラ イブの破損という重大事故だった。修理は日本でし かできず、一時暗澹たる気持になったが、貸与ラッ プトップに日本語入力の設定ができて、なんとか無 事に仕事を続けることができた。

 ある日、私の研究室の近くに居るステファン・ハ スウェルという先生が話しかけてきた。「福岡から 来たんだって?」「僕は能古島に行ったことがある んだ。「友人が住んでいるからさ。「クロスさんて 言うんだ。「彼は珍しい男でね、ティー・セレモニー をやるんだ。「福岡大学で教えていると思うよ。」

意外なことに出会うものだと思った。その時、福大 のホームページから確かにそれらしき名前の存在を 確認できた。帰国後、改めて確認したところ、博多 山笠を研究し、自らも参加していることで知られて いる本学人文学部のティム・クロス先生のことであっ た。

4 オーストラリアの日本法研究

 オーストラリアには日本法研究の学会がある。そ の名称を

ANJeL

Australian Network for Japanese Law

という。私のスーパーバイザーのチャン博士のほか、

シドニー大学のルーク・ノテッジ、オーストラリア 国立大学のベロニカ・テイラー、クイーンズランド

工科大学(

QUT

)のレオン・ウルフなど、現在のオー ストラリアを代表する日本法研究者たちによって設 立された。7月の初日に研究集会が開催されるとい う情報を得て、オブザーバー参加の形でブリスベン にある

QUT

に出かけた。テーマは“

Abe and the Law

安倍政権下で日本の法と社会に何が起こったかを主 な法領域から多角的に論じようという興味深いもの だった。7本のプレゼンテーションがあり、規模は 大きくないが活気にあふれた状況を肌で感じること ができた。

5 雑感

 休日には電車に乗ってシティに出かけることがあっ た。オペラハウスでのコンサートも楽しんだ。そう いう生活の中で印象に残ったことといえば、カフェ である。ショッピング・センターやキャンパス内は もとより、一つひとつのオフィスビルにも必ずカフェ があった。メニューにはオーストラリアのコーヒー・

カテゴリー。私はいつも「ロング・ブラック」だっ た。ここには、「スターバックス」の“繁殖”を阻 む独自のコーヒー文化が根づいている。朝10時頃に はビジネスパーソンたちがオフィスからぞくぞくと カフェに集まってくる。モーニング・ティーの時間 だ。午後3時頃にはまたビジネスパーソンたちがぞ くぞくとカフェに集まってくる。こんどはアフター ヌーン・ティーの時間だ。彼の国には“過労死”の 問題などきっと無いのだと思った。

 末筆ながら、このような貴重な機会を与えていた だいた福岡大学、及び歓待していただいたマックォー リー大学の関係各位に深く感謝します。

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写真2 「マックォーリー大学の研究室にて」 写真3 「QUT での ANJeL 研究集会の風景」

参照

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