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〜中学校数学教育における目標準拠による評価の課 題と解決事例〜

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(1)

算数・数学教育における問題解決学習の研究(8)

〜中学校数学教育における目標準拠による評価の課 題と解決事例〜

著者 重松 敬一, 八木 義宏

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 12

ページ 71‑80

発行年 2003‑03‑31

その他のタイトル Research on Problem‑Solving in Mathematics Education(8)〜Evaluation of

Junior‑High‑School Mathematics〜

URL http://hdl.handle.net/10105/79

(2)

1.はじめに

平成14年度1学期に比べ2学期では、目標に準拠し た評価については、教師間でも論議を深めながら研究 実践を進めている学校が多くなってきた。また、N県 N市では、市としての評価規準をインターネット上 に公開し、生徒・保護者が学校の評価規準を知りたい と思えば具体的に知ることもできるようになってき た。

本稿では、目標に準拠した評価の4観点の中で、特 に論議が多かった「関心・意欲・態度」に焦点をあて

て、目標に準拠した評価の課題とその解決について考 察してみたい。2府3県で調べた結果、平成14年度第 1学期の間に評価規準の研究が進みつつあることがわ かった。しかし、ペーパーによる試験問題(2府3県 標本数68)に大きな変化はあまり無いことも明らかに なった。そこで、ペーパーによる問題での「関心・意 欲・態度」の評価のあり方を考える。というのも、試 験問題を変えることが目標に準拠した評価を改善する 一つの方法であり、授業を変えることの近道と考える からである。

〜中学校数学教育における目標準拠による評価の課題と解決事例〜

重 松 敬 一

(奈良教育大学数学教育講座)

八 木 義 宏

(京都府長岡京市立長岡第二中学校)

Research on Problem-Solving in Mathematics Education(8)

〜Evaluation of Junior-High-School Mathematics〜

Keiichi SHIGEMATSU,

(Department of Mathematics Education,Nara University of Education)

Yoshihiro YAGI

(NagaokaⅡ Junior-High-School)

要旨:本稿では、目標に準拠した評価の4観点の中で、論議が多かった「関心・意欲・態度」に焦点をあてて、目 標に準拠した評価の課題とその解決について考察する。特に1学期の実践からは目標規準ができたとしてもペーパ ーによる試験問題には大きな変化はあまり無いことが明らかになった。したがって、ペーパーによる試験問題での

「関心・意欲・態度」の評価のあり方を考える。そのために、

1)「関心・意欲・態度」と「見方・考え方」・「表現・処理」・「知識・理解」との関係、つまり、情意面と認知面 との内的関係

2)ペーパーでの試験問題の改善案

3)その試験問題を出題するための、目標に準拠した評価を意識した授業のあり方についての提案 を示した。

しかし、日日の授業の中でAがつく生徒、つまり、自分の知識とうまく結びつけ「細かなステップ」で考えるこ とができる生徒の育て方については論じることができなかった。また、情意面と認知面との内的関係をもとにカッ ティングライン(A,B)を示したが、各単元でのAのつく生徒の学習活動の特徴を示す事例が少なく、「Aがつく 生徒は〜のような生徒だ」と具体事例での検証ができなかった。したがって、それらの点については今後の研究課 題とした。

キーワード:目標に準拠した評価 criterion-referenced evaluation、試験問題 test、観点 criterion

(3)

2.目標に準拠した評価の歴史

戦後の歴史を振り返ると、評価方法については一つ の評価法が取り入れられ、実施しその評価の課題が明 らかになると、その課題を補うために、別の評価の手 法が取り入れられ、そしてまた課題が明らかになると、

その課題を補うためつぎの手法が取り入れられた。つ まり計画・実行・評価(Plan・Do・See)そしてまた Plan・Do・Seeと順次発展してきている。

藤岡は、「今回の目標に準拠した評価は、いわゆる 絶対評価と呼ばれる面があるが、戦前の絶対評価は教 師の主観・恣意的判断が入り込みやすく科学的・客観 性の高い評価とはいえなかったが、今回の「目標に準 拠した評価」は、戦前の絶対評価とは異なり、国とし ての規準を明確にし、今後の指導に役立てようとする ものである。」と指摘している。

3.「目標に準拠した評価」の基本的な考え方

新しい学習指導要領においては、学習指導要領に示 された基礎的・基本的な内容の確実な習得を図ること を重視している。したがって、学習指導要領に示す目 標に照らしてその実現状況を見る評価(いわゆる絶対 評価)を一層重視し、観点別学習状況の評価を基本と して、児童生徒の学習の達成度を適切に評価していく ことが重要となる

観点別評価から総括的な評価としての評定をするま でには、「①評価すべき内容・目標領域の限定、②各 領域(観点)における目標の具体化と表示、③目標群 の重点項目の抽出、④テスト等の工夫・改善、⑤各領 域(観点)ごとの判定基準(カッティングライン)の 設定、⑥テストや観察などの実施と実現状況の判定」

のようなステップを踏む。その中で判定基準につい ては、「十分満足できる」「おおむね満足できる」「努 力を要す」とはどんな程度なのか。量的な面で測定す るのか。それとも、質的なもので測定するのか。さら には、どの程度ならば「十分満足できる」のか、測定 する方法・内容に応じて設定する必要がある。

今回の改定は、基礎的・基本的な内容の確実な習得 を図ることを重視している。ただ、「瞬間的」に評価 するだけでなく、その後の指導につながるものである こと、つまり、Bの規準に及ばない生徒に対しては、

Cをつけて終わりとするのではなく、このような生徒 をあらかじめ想定し、ヒントカードを用いたりして、

個別に指導するというように支援策をどのように図る かを考えることが大切となる。

そのために、「①評価規準策定から評定までの機械 的手続きに終始しないこと、②評価を通して、生徒の 学習・教師の指導が変わるかが眼目(与えられた問題 を個別に解けるだけではなく、数学力の育成が基本)、

③教師だけでなく、生徒や保護者にも評価規準の内面 化がいかに行われるかが大切」の三つの点に注意した い

4.「関心・意欲・態度」の基本的な考え方

田中は、「<参考資料>をどう受けとめ、どう生か すか 目標に準拠した評価を定着させるために」で、

下記のように述べている。

片山宗二が指摘するように、「関心や意欲は育 てあげなければ子供の内に根づかないもの、した がって、どのような『知識・理解』に支えられ、

どのような『思考・判断』を経るかによって、育 成が左右される」(「新指導要録の観点別評価を検 討する」『社会科教育』)1991年8月号)のである。

「関心・意欲・態度」を「知識・理解」や「思 考・判断」と関係づけてとえること、それが 態 度主義 を克服する重要なポイントである。

4.1.「関心・意欲・態度」の位置付け

「関心・意欲・態度」と「見方・考え方」・「表現・

処理」・「知識・理解」との関係、つまり、情意面と認 知面には内的な関係があるとし、情意面と認知面との 内的関係を下記のように表した。

図1 情意面と認知面との内的関係

4.2.学習指導要領との関係

中学校学習指導要領解説数学編第1章総説3改訂の 要点イ中学校数学科の内容の改善②指導事項の示し方 の改善(P9,L17〜19)で、下記のように示してい る

また、指導内容は、できる限り「〜を知ること」

(4)

「〜を理解すること」「〜ができること」と表現し、

何を学び、それによってどのような能力を身に付 けさせるかわかるようにした。

このことは、図1における右側の段階にうまくあて はまる。

5.1学期2学期にみられた評価の課題

5.1.ペーパーによる試験問題の事例

目標に準拠した評価の趣旨による授業も見えつつあ るが、試験問題については、1学期から2学期へと目 標に準拠した評価の趣旨に沿って授業が変わると同じ ように定期試験が変わってきたとはあまりいえない状 況がある。

1)表現・処理に偏った出題事例

図2 第3学年1学期期末テスト(H14)

2)昨年度までの出題傾向と、それほど変わらない 事例

図3 第3学年2学期中間テスト(H14)

5.2.「関心・意欲・態度」の評価と現状の課題

「関心・意欲・態度」やその他の観点については、

昭和52年の改訂から、指導と評価が知識・理解に偏り がちである状況についての反省に立ち、学習意欲の向 上や自ら考え実践しようとする態度の育成を重視し、

「関心・意欲」の観点が設けられた。平成12年教育課 程審議会答申10では「関心・意欲・態度」を「本来、

それぞれの教科の学習内容や学習対象に対して関心を 持ち、進んでそれらを調べようとしたり、学んだこと を生活に生かそうとしたりする資質や能力を評価する ための観点である。しかし、その評価については、情

意面にかかわる観点であることなどから、目標に準拠 した評価であることが十分理解されていなかったり、

授業中の挙手や発言の回数といった表面的な状況のみ で評価されるなど、必ずしも適切とは言えない面も見 られる。」と指摘されてる。

実際、今年度、多くの学校が関心・意欲・態度をど のように評価したらいいのか検討したが、評価に対す る「客観性」の言葉の前に、関心・意欲・態度を測定 する客観的な資料に対して、多くの課題を残している 学校も少なくない。

授業の受けかたの資料「挙手・発言の回数」「ノー ト・課題の提出状況」等のデータを集めてはいるが、

それに加えて「数学科において育てたい関心・意欲・

態度とは何か」の論議を重ね、自校における「関心・

意欲・態度」を表す指標(例えば、「授業中に、自分 で工夫したら、新しく○○がわかった。」等の特徴的 な生徒の具体的事例)を明らかにし、さらにはその指 標の測定方法を含めて「関心・意欲・態度」の向上を 測定する研究を積極的に進める必要がある。

図4 数学に対する関心・意欲・態度のあり方

5.3.「関心・意欲・態度」以外の観点の評価の現 状と課題

「関心・意欲・態度」を「知識・理解」や「数学的 な見方・考え方」と関係づけてとらえることが態度主 義を克服する重要なポイントであることを先に述べ た。しかし、「関心・意欲・態度」以外の観点、例え ば「数学的な見方・考え方」については、「知識・理 解」・「表現処理」と同様にそれほど論議は行われなか った。それは、定期試験からも読み取ることができる。

例えば、下は平成14年に実施された試験問題11であ る。

① 次の中から、2次方程式を選びなさい。(知 識・理解)

3χ+4=0、χ+3χ−4=0

(5)

② 2χ+3χを計算しなさい。(表現・処理)

③ 連続した3つの自然数がある。その中でもっ とも小さい数ともっとも大きい数の積がまん 中の数の4倍より31大きい。連続した3つの 自然数を求めなさい。(数学的な見方・考え 方)

今までの試験の採点方法から考えると、例えば③の 試験問題では、生徒の解答を教師が用意した正解、

連続した3つの自然数の真ん中の数をχとすると 3つの自然数は、χ−1、χ、χ+1と表される。

(χ−1) (χ+1) =4χ+31 これを解くと

χ

2

−4χ−32=0

(χ+4) (χ−8) =0 χ=−4、χ=8

χは自然数だから、この2つの解のうち、χ=−4は 問題にあわない。

χ=8のとき、連続した3つの自然数は7、8、9で、

7×9=4×8+31となり問題にあう。

答  連続した3つの自然数は 7、8、9

図5 ③の正解

と比較して採点した。計算問題に比べ配点を高くし、

途中までしか解けていなくても、書いてある内容によ っては部分点をあたえて「見方・考え方」を数量化し てきた。

しかしながら、この採点の方法では、授業中に学習 内容を生徒がどのように感じて問題を解いているのか を、テストに記載された内容から情意面を含めて推し 量るには難しい面があると考える。

具体的には、下記1)から4)までの生徒の思いの 様子をつかむことは非常に難しい。

1)「方程式の問題だから、真ん中の数をχとおい て方程式を立てて解いたから、その考えを使って 解いてみよう。」と解法の処理に関心を持ち、手 続き的に問題を処理し解く場合

(手続き的に、真ん中の数をχとおいて…)

2)「このときの授業は面白かったな。具体的に数 字を入れ、問題を解いていたな」と興味を持った 体験を振り返りながら解く場合

(50分というテスト時間に追われるので、このよう に感じ取れる生徒は少ないと思われる)

3)解き方を忘れてしまったが、授業でこの問題を 解いた時の様子を思い出して、記入しようとして いる場合

(思い出せない時は、無回答になる可能性もある)

4)「分らないけど、とにかく解いてみよう」と意 欲を持って試行錯誤する場合

今回の改定のねらいは、テスト等の単元末の総括的

な評価だけではなく、途中の過程の評価を重視してい る。そのことは、テストにおいても、正解かどうかを 問う問題から、日々の授業の中で何を学び、それによ ってどのような能力を身に付けてきたのかを問うこと ができる問題へと変わることにつながると考えられ る。

したがって、これからの試験の設問については、生 徒が解答するときに自分が努力してきた様子の度合い を推し量ることができる問題設定とすることを提案す る。

6.試験問題の改善点

では、試験問題をどのように変えるのかを考えてみ たい。

6.1.質的な深さの目安

国立教育政策研究所の研究所評価規準,評価方法等 の研究開発(報告)を参考にA・Bを定めた。

図6 情意面と認知面との内的関係と質的な深さの目安

6.2.2種類の問題の提案 1)問題設定について

生徒の答えから、質的な深まりを判断できる 問題設定とする。

2)期待される解答の要件

問題に対しての解答の他に、自分の学習の様 子に対しての記述を必要とする。以下にいくつ かの例を挙げる。

①学校での学習の様子

・自分が関心を持って解いた点

・納得した点

・工夫し解答を導き出した点

・自分で新しく発見した点

②家で取り組んだ内容

(6)

・自分で勉強しようと思った点

・自分で工夫して考えた(新しく発見した)

点、

式変形をすると、別の公式となる 別の図形でも成り立つ

3)採点方法

3段階で判定する。

具体的な事例を、2例紹介する。1つは、あ らかじめに観点を設定して生徒の深まりを判定 する問題、もう一つは、教師が評価のための4 観点をしっかりと持ち、生徒の記入例からどの 観点で深まりがあったのかを判定する問題であ る。

6.3.問題A

あらかじめ観点を設定した設問を提示し、生徒の解 答(感想)・授業等で工夫し部分をみる問題

下の図の四角形ABCDで辺AB,BC,CD,DAの中 点をそれぞれP,Q,R,Sとする12

図7 試験問題

評価規準の具体例13

表1 評価基準

1)【知識・理解をみる】

四角形PQRSはどんな形になりましたか。

解答類型 1 四角形

理由 四角形だから 評価C

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 C

2 平行四辺形

授業で平行四辺形になることを知りました。

評価 B

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 B

3 平行四辺形

授業で平行四辺形になることを知りまし た。また、そのときに自分で工夫して色々調 べてみました。

対角線の長さをいろいろ変えると、例えば AC=BDならばひし形になるし,対角線が直 角に交わると長方形になることも知りました。

評価 A

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 A

2)【見方・考え方をみる】

この問題から、導かれることを理由も含めて答えな さい。

解答類型

1 平行四辺形 理由なし

評価 C

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 C

2 平行四辺形

中点連結定理を用いると、向かい合う辺が 平行で長さが等しくなるので平行四辺形にな ります。

評価 B

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 B

3 解答2に証明を含めて記入 評価 B

(授業で納得をした点を記入しながらの解答 も可)

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 B

4 平行四辺形になります。でも、自分でさらに 図形を変形して考えてみました。

図8 生徒解答例

(7)

平行四辺形PQRSは中点連結定理により示され、辺 の長さは、(対角線)AC、BDの長さで規定される。

さらに、∠PQRは直線ACとBDのなす角の大きさで 規定される。したがって、線分ACと線分BDをどのよ うな位置においても、以下の条件を満足する場合の平 行四辺形PQRSはいつも合同であることがいえる。

① 線分ACと線分BDの長さをかえない

② 直線ACと直線BDのなす角の大きさを変えな い

評価 A

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 A

6.4.問題 B

観点は、生徒が試験に書いた内容で判断する問題

△ABCで∠Aの二等分線と辺BCとの交点をDとす る。どんなことがわかるでしょうか。また、自分はど の観点で解答を示すのかも書き入れなさい。

なお、関心・意欲・態度に印をつける人は、残りの 3観点にも印をつけ、自分は3つの観点のうち、どの 観点でどのように積極的に取り組んでいるのか、その 様子がよく分るように、具体的な事実を解答欄に書き なさい。

図9 試験問題

評価規準の具体例14

表2 評価基準

解答例

1)【知識・理解】

解答類型

1 AB:AC=BD:DC …①

授業で学習してこのような辺の比があるこ とを知りました。評価 B

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 B

2 ADの長さはABとACとBDとDCで表すこと ができることを家で勉強して知りました。

AD2=AB×AC-BD×DC …② 評価 A

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 A

2)【表現・処理】

解答類型

1 ①の性質を自分で作図をして実測して確認。

評価 B

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 B

2 ②の性質を知っていて、自分でいくつかの場 合の三角形を書き、実測値で公式が成り立つこ とを確認している。 評価 A

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 A

3)【見方・考え方】

解答類型

1 ①の式を書き、証明も含めて説明している。

評価 B

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 B

2 ②の証明を記載し、「どのような努力したの か」という点も含めて説明している。

「どのような努力をしたのか」の例

三 角 形 で 、 一 つ の 角 の 二 等 分 線 を 引 く と AB:AC=BD:DCの関係があることを授業で 知りました。しかし、授業でADの長さについ ては、説明がありませんでした。なぜかわかり ませんが気になったので、自分で調べてみまし た。そしたら、参考書にADの長さについての 説明と証明が載っていました。最初は、難しか ったけど、何回か読んでいるうちに、参考書を 見ずに自分で証明できるようになりました。

評価 A

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 A

3 別の問題に改変

△ABCが直角三角形の場合、4つ並べると正 方形ができる。

点Dから辺ABに垂線DF、EBをひく。する とAC//FD//BEから△DAC∽△DEBとなる。

辺の比が等しいから、FDの長さを求めるこ とができる。

また、直角じゃない(平行の)場合は授業15 でやりました。

四角形を書いて、問題を見ていたら授業でや った平行線の性質で勉強したことが浮かんでき て、何かできるかなと思い試行錯誤しているう ちに解けました。

評価 A

(8)

6.1.から 関心・意欲・態度  評価 A

図10 解答例

4)【関心・意欲・態度】

前記1)〜3)の3つの観点とあわせて、評価をす る

・関心・意欲・態度と知識・理解に○印

関心が高まり、知識・理解を深めようとして いると考え、前記1)の内容を適用する。

・関心・意欲・態度と表現・処理に○印

関心が高まり、表現・処理の技能を深めよう としていると考え、前記2)の内容を適用する。

・関心・意欲・態度と見方・考え方に○印 関心が高まり、見方・考え方を深めようとし ていると考え、前記3)の内容を適用する。

7.試験問題から授業へのフィードバック

次に、試験を出題するためには、この解答を書くこ とができる生徒を育てる授業となる。授業と試験との 関係、そして、授業がどのように変わるかについて考 えてみたい。

7.1.試験と授業との関係

1)授業は、評価規準の提示と生徒のよい見本 授業の中では、教師が願う「本時間の目指す 生徒像(目標)」を具体的に生徒に提示(評価 規準)し、生徒がそれを理解する場面である。

例えば、授業の初めに「今日の授業の目標は

…で、…のような問題ができれば表現・処理は B、…のような考え方ができたら見方・考え方 はB」、と具体的な本時の目標としての事例を 示し、生徒自身もどのような様子を教師は願っ ているかを具体的に理解する場面をつくる。

何名かの生徒に注目し、評価場面で教師が期 待している具体的な様相で、「君の態度または 考えまたは知識」等について「十分満足できる」

「おおむね満足できる」と評価をする。適時、

生徒に具体的な場面で評価を示すことによっ て、教師の意図を生徒は体験を伴って具体的に

理解することができる。

2)試験は、同一条件・同一観点で調べることが可 能

授業と同じ観点で試験問題を作成する。各観 点の評価規準は、授業中での評価基準と同じに する。つまり、授業で期待している生徒像を、

試験で同一に判定する。

これが、「試験が変われば授業が変わる」こ とである。

表3 試験と授業との関係

7.2.評価の観点からの指導

次に、授業について、知識の獲得過程を考察し、ど のような手順で生徒に身につけさせていくのかについ て考えてみる。

7.2.1.知識の獲得過程

Aがつく生徒は、なぜ既知の学習内容と簡単に結び つくのか。波多野16は「知識は、個々人により構成さ れるものである。知識の獲得が「自主的に」行われる 場合についてみると、そのほとんどは問題解決や理解 活動の産物であり、しかも自主的獲得の場合にはそれ が認知活動の目標として意識されていないという意味 で「副産物」であることが多い。」と指摘している。

つまり、Aがつく生徒は意識せずに問題解決や理解 活動を行っている場面があると考えられる。したがっ て、意識せずに行っている考え方の方略を、意識的に 明らかにすることにより、生徒自身の理解が一層深ま ると考える。

7.2.2.絶えず、既存の知識と結びつける 吉川17は「公式とは広い範囲で使える一般的な考え 方を表した式である。教科書に載っている公式もある し、自分の必要に応じて、自分で作る公式もある。算 数では、公式をつくりだす考え方を育てることが大切 である。」と指摘している。

つまり、公式・定理そのものを覚えることも大事だ

(9)

が、その考えにいたるまでの道筋を記録(意識化)す ることを重ねることによって、自分で考え公式等を求 めることができる力を育てることにつながる。

この過程を、学習指導要領からは削除された、方べ きの定理で考えたい。

図11 方べきの定理

問題を見た時、円と弦に注目して、「なにか見たこ とがあるかな」「AC、DBに補助線をひくと円周角に ならないかな」と考え、さらに、次の考えに結びつい ていく。その考える順番は以下のようになる。そして、

最終的には方べきの定理へと結びついていく。その考 え方としては、

なにか見たことないかな

⇒知っている形はないかな

⇒知っている形は三角形・四角形…

⇒補助線AC・DBを引くと三角形ができる

⇒円と三角形

⇒三角形の角は円周角と考えられる

⇒円周角は等しい

⇒相似

⇒辺の比が等しい

⇒PA:PD=PC:PB

⇒PA×PB=PC×PD (方べきの定理)

このような見方・考え方の道筋は、表現・処理と同 様に練習がいる。例えば、生徒が説明する時には、

「なぜ、どうして」と一つ一つ細かな視点で理由を求 める場面を意図的に設定して、「細かなステップ」で 考えさせることである。

7.2.3.具体的な授業の中でできること

指導場面での、一般的な考え方の道筋について述べ、

図形問題で補助線を引く場合についての手順について 考えてみる。

問題解決方略の多くの記述の中でよく知られている Polyaから引用する18。問題解決の手順(Polya)とし て

図式を使う。

パターンを探す。

すべての可能性のリストを作る。

特別な値またはケースを試す。

後ろ向きに作業する(後ろから作業を進める)。

当て推量しチェックする。

同値な問題を作り出す。

一層簡単な問題を作り出す。

一目瞭然の問には、次のものがある。

と述べている。

次に、その手順を、図形問題の証明問題等で、7.

2.2.の問題をもとに、補助線を引くときの考え方の 例(解法の方略として)を述べる。

補助線の目的の一つとして、物事を説明するために 自分の知っている形に変形することが上げられる。

その引き方の可能性は何点か挙げられる。その考え るパターンの中で、頂点を結ぶことが今回の結論に結 びついたと考えることができる。

・線を延長する

図形ができれば、合同⇒相似⇒三平方の定理⇒

円と順に考えていく(考えるパターン)

・頂点を結ぶ

図形ができれば、合同⇒相似⇒三平方の定理⇒

円と順に考えていく(考えるパターン)

7.2.2.では相似な図形ができ、方べきの定理 へと発展した場合である。

・角の二等分線を引く

・その他

7.2.4.教師は生徒のよい見本

まず教師は、生徒のよい見本となり、生徒のレベル で自ら「細かなステップで考える」場面を何度となく 提示することにより、生徒は考え方をどのように練習 したらいいのかが意識的に理解でき、身に付けること ができるようになる。

7.2.5.さらに育てたい力の一つとして

〜コミュニケーション〜

考え方を身に付けていくためには、コミュニケーシ ョンが大切な要件となる。生徒自身が自分の考えのよ さを相手(自分のクラスの生徒)に分ってもらうため に説明することは、すなわち、自分の考え方の「細か なステップ」を説明することであり、そのことによっ て、自分の知識が一層明確になる。他の生徒もまた、

その「細かなステップ」を聞くことによって、自分の 考え方も一層明確になるときがある。そのことにより、

お互いに高まることができる。

「考えが詰まっても相手に意見を聞けてより理解が できた。」

「私が説明したことを理解してもらった時すごしう れしかった。」19

以下に、生徒に発表させるときのポイントを例示す る。

1)自分の考えのよさを分ってもらうため そのよさとは

(10)

・発想

・論理の明快性

・論理の十分性(いつでも成り立つのか)

・発展性として

発表する時に、コミュニケーションの技法と して

・具体物の利用

・具体例の提示

・図・表の活用

・提示の工夫

2)論理的に伝え、聞いている人も他者を理解(評 価)する力をつけるため 

・自分の考えを首尾一貫して、論理的に他の 人に伝える

・他の人の考えを理解し、疑問点を質問し、

他者を評価する力(他者評価力および自己 評価力)を養う。

7.3.生徒の活動と評価、そしてもう一度試験問題

目標に準拠した評価を取り入れることの最終的な目 標は、生徒自身が自ら関心を持って学習に臨むように なることである。試験問題を変えることは一つの方法 であり、授業を変えることの近道ともなる。大事なこ とは、授業を変えた結果をもう一度振り返ることであ る。生徒自身が自ら学習に臨むようになったかどうか を考察することが重要であり、その成果をペーパーテ ストにフィードバックし、その効果について検証し、

授業を改善することとなる。そのフィードバックは以 下の3つの段階を継続的に繰り返していくものであ る。

1)生徒に具体的に示す段階

教師が考えている各単元の評価規準の「十分満 足できるとは…」「おおむね満足できるとは…」

と、生徒の認識活動の質的な転換点を表す事例と の関係を明確にし、生徒に指導する中で、具体的 な判断基準として生徒に示す段階である。

2)生徒および教師との共同作業の段階 その判断基準をもとに、

生徒が

ア)自分は何ができるようになったのか イ)課題として何が残ったのか

ウ)今後何をなすべきなのか

等、自ら判断することができるようになった か。

つまり、生徒自身の自己評価力が向上した段階 へと移る。さらに教師自身も、生徒の具体的な活

動を通して、生徒との判断基準をすり合わせ、お 互い共通理解する。

つまり、評価規準を生徒と教師とで共同で作り あげていく段階である。

3)検証そしてフィードバックの段階

その評価が生徒にとって「もう少し勉強して みたいな」と教科に関する意欲を喚起したもの になったのかを総括し、次への授業実践に生か されるシステムを作りあげ、授業(評価)結果 を授業改善としてフィードバックし、改善され た新たな教育課程(Plan)を実行しさらにそれ を科学的に検証(See)することによって、目 前にいる生徒の数学そのものに対する関心・意 欲が一層喚起する継続的な指導となる段階であ る。

さらに、目標に準拠した評価を行うことによ って数学の力が伸び、数学に対する興味関心が 高まることを客観的に説明できるよう資料を作 成するための研究も進める必要がある。

8.今後の研究課題

本稿では、目標に準拠した評価の4つの観点の中で

「関心・意欲・態度」に焦点をあてて、目標に準拠し た評価の課題とその解決を考えた。具体的には、「関 心・意欲・態度」を情意面と認知面との内的関係から 考察し、ペーパー試験による授業の改善点を示した。

具体的には、「関心・意欲・態度」を「見方・考え 方」・「表現・処理」・「知識・理解」と関係づけてとら えた試験問題の改善案を示した。

しかしながら、

1)授業の中でAがつく生徒、つまり、自分の知識 とうまく結びつけ「細かなステップ」で考えるこ とができる生徒を評価の観点から考え日日の授業 の中でどのように育てていくのか。

2)各単元で、Aのつく生徒はどのような学習活動 をしているか。

については論じることができなかった。その原因と しては、現段階として授業のあり方についての枠組み がまだまだ不十分であり、また、Aのつく生徒の特徴 を示す具体事例としての資料が十分でないことが挙げ られる。したがって、これらの点が今後の研究課題で あると考える。

引用・参考文献

URL http://www.nagasaki-city.ed.jp/ajisai/hyou- ka-j.htm

藤岡 秀 樹   「 目 標 準 拠 評 価 ( 絶 対 評 価 ) と は 」

(11)

『指導と評価』 vol 48 2002/2(社)日本図書文 化協会日本教育評価研究会 2002/2 P4〜5

教育課程審議会 「児童生徒の学習と教育課程の 実施状況の評価の在り方について(教育課程審 議会 答申)」2000/12

重松敬一 「数学科における新しい評価の在り方 と評価方法の改善」『中等教育資料』平成14年5 月号 文部科学省教育課程課編集 2002 P24 L13〜L19

重松敬一 「数学科における新しい評価の在り方 と評価方法の改善」『中等教育資料』平成14年5 月号 文部科学省教育課程課編集 2002 P24 L13〜L19

田中耕治 「<参考資料>をどう受けとめ、どう 生かすか 目標に準拠した評価を定着させる た め に 」『 指 導 と 評 価 』 図 書 文 化 社   2 0 0 2 vol48 11 P6

重松敬一 「今求められる学習指導と評価の基本 的な考え方」『平成14年度授業改善・評価研究講 座−中学校数学科』京都府総合教育センター 2002/11

平成14年度W都道府県公立中学校 1学期期末試 験

平成14年度 K都道府県公立中学校 2学期中間試 験

10 教育 課 程 審 議 会   「 教 育 課 程 審 議 会 答 申 」 2000/12/14

11 平成14年度K都道府県公立中学校

12 教科書『中学数学 3』大阪書籍 2002 P105 例1

13 大阪書籍 平成14年度版『中学数学3』

観点別評価の規準例規準http://www.osaka- shoseki.co.jp/kyoka/index02̲03.html

14 同上

15 教科書『中学数学 3』大阪書籍 2002 P108 例4

16 波多野誼余夫 「問題解決と理解」『教授・学習過 程論』放送大学教育振興会 2002 P99

17 吉川成夫 『本当の学力がつく「新しい算数」』小 学館 2002 P27

18 筑波大学数学教育学研究室『新世紀を開く学校数 学』筑波大学数学教育学研究室 2002 P53〜

54

19 N県N中学校 生徒感想 2003/1

参照

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