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学 位 論 文 の 要 旨

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Academic year: 2021

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(様式6号)「課程博士用」

学 位 論 文 の 要 旨

専 攻 名 材料科学 専 攻 氏 名

西尾

に し お

ゆう

学位論文題目

新規

pH

応答ガラス電極の開発に関する研究

(英訳又は和訳

Study on the development of pH-responsive glass electrode)

pH

は、環境水、上水、工場プロセス、排水、研究などで必要不可欠な水質指標となっている。こ れらの測定は、

pH

ガラス電極を用いられることがほとんどであり、近年では、より広範で過酷な条 件でも使用できる電極が求められている。本学位論文では、pH の応答原理から見直し、これらに適 用できる

pH

応答ガラスの研究開発を行った。

pH

応答ガラスが発見されてから、

100

年以上経過した現在でも、未だにガラス電極の電位発生機 構の議論がなされている。その

pH

応答機構の解明の手がかりを得るために、

SIMS

(Secondary Ion

Mass Spectrometry)やESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)などの表面元素分

析法を用いて、深さ方向における

pH

応答ガラスの元素分析を行った。その結果、水に浸漬させた 後の表面層とバルク層において、元素の構成比率が異なることが分かった。最表面から水素イオン とリチウムイオンが概ね一定となったところまでを、本研究では水和遷移層(水和層)と見なし、

この水和層における

H

Li

pH

応答に対して大きな役割を果たしていると思われる。この

pH

応 答機構では、pH 応答ガラス表面で相界電位が生じていると考えられる。さらに、水和層の厚さが

pH

応答速度に影響し、厚さが薄いほど応答速度が速くなることが分かった。

pH

応答ガラスの研究は、元素を添加して性能を確認するという経験によるところが大きい。これ まで様々な元素の効果が試されてきたが、イオン選択性に寄与する三価の元素うち、La を除く希土 類元素に関する報告は、ほとんどなされていない。La は、

SIMS

ESCA

の分析から、水和層の厚 みに大きく寄与することが分かっている。そこで

pH

応答ガラスの表面分析で得られた知見をもと に、pH 応答ガラス組成中の

La2O3

を、Sc

2O3

Y2O3

に置換することによって、ガラスの構造骨格を 強化することを試みた。しかし、この置換だけでは、アルカリ溶液においてアルカリ誤差が生じ、

満足する性能が得られなかった。アルカリ誤差を抑制するために、Sc

2O3

Y2O3

だけでなく、ガラ

ス内部へアルカリ金属イオンの侵入を抑制する

La2O3

の存在も重要であると考えた結果、それらを共

存させることによって、求める性能を達成することができた。これらのガラス試料の

2

次イオン質

量分析(SIMS)を行った結果、Sc

2O3

を添加することによって水和層の厚さが

100 nm

から

40 nm

薄くなり、応答性が向上したと思われる。また、今回開発した

pH

応答ガラスは、JIS の規格を十分

続紙 有■ 無□

(2)

(様式6号-続紙) 「課程博士用」

氏 名

西尾 友志 ○

に満足しており、実用に耐える仕様であった。作製したガラスの耐久性評価のために、pH 標準溶液 の繰り返し測定と蒸気滅菌(SIP 殺菌)の耐久性を調べた。標準溶液の繰り返し耐久性では、pH7、

pH4、pH9

の測定を

3000

回繰り返したにも関わらす、不斉電位の変動は±3 mV を維持した。また、

蒸気滅菌の耐久性評価では、滅菌回数が

100

回後でも感度

75%以上を保った。開発された pH

応答 ガラスは、優れた応答性と耐久性を有していると思われる。

続いて、ランタノイド属について研究を行った。ランタンは耐アルカリ性や耐水性に寄与するこ とが報告されており、ランタン以外でも同様の効果が期待できる。高アルカリ溶液などの過酷な使 用条件でも、長寿命で安定して測定できる

pH

応答ガラス電極の開発を試みた。

これまでの知見をもとにランタノイド希土類元素を添加した pH 応答ガラスを作製した。そして、

pH 応答ガラスと鉛フリーガラス支持管との接合性、pH 応答性、およびアルカリ溶液における耐久性 の評価を行った。その結果、pH 応答ガラスに添加するランタノイド希土類元素のイオン半径が小さ くなるにつれて、膨張係数が小さくなる傾向が得られ、鉛フリーガラスとの接合が容易になった。

また、これらを用いた電極の感度や不斉電位などは、JIS 規格を満足することが確認できた。ガラス 試験片によるアルカリ耐久性を評価した結果、各元素の溶出量が従来の 1/2 以下という結果が得ら れた。さらに、電極形状にて 21 日間のアルカリ浸漬試験を行った結果、感度 97%以上、アルカリ誤 差 35mV 以内を維持した。以上の結果より、今回開発したガラスは、アルカリ用 pH 電極用として実 用的であることが明らかになった。

また、ガラスにカチオンを添加することで

pH

応答ガラスの性能向上が試みられてきた。より耐 久性を向上させるには、ガラス中の二価である酸素をの一部を三価である窒素に置換することでガ ラス骨格を強化できると考えられた。そこでこれまで用いられてこなかったアニオン元素の添加効 果の可能性についても言及した。ガラス骨格の酸素の一部を窒素に置き換えたオキシナイトライド ガラスは強酸、強アルカリでも耐久性に優れることが報告されている。本研究では、はじめに Li

2

O-SiO

2

-Si3N

4

ガラスを作製し、pH 応答ガラスとしての応用の可能性を調べた。その結果、pH 標準 液における応答時間が 10 秒以内、pH4~pH9 における感度が、97%以上の結果が得られた。また、こ の試験片をアルカリ溶液に浸漬させ、化学的耐久性を調べた結果、通常の pH 応答ガラスに比べて、

珪素やリチウムの溶出量が約 1/2 であった。オキシナイトライドガラスは pH 応答ガラスとして有用 な結果が得られた。

本研究で得られた水和層の応答機構や、希土類元素やアニオンである窒素の添加による新しい知

見は、今後の

pH

応答ガラスの研究に大きく寄与するものと思われる。

参照

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