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教師教育のストラテジーと具体的プログラム

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(1)

教師教育のストラテジーと具体的プログラム

昭  平

Teaching Strategy aud Program for  Pre‑sercice Teacher Ecucation

Shohei HATTA

1.はじめに

 長崎大学教育学部に設置されたマルチ・メディア・ティーチング。システム(以下MMTS という)を利用して,昭和53〜55年に行った私の授業実践については,既に「教育方法論 の授業における理論と実践の結合について」1)において報告した。本稿はそれに続くもの である。昭和54年度,国立大学教育工学センター協議会を中心に,教授スキル研究会が発 足し,本大学は九州地区の他の大学とともに2), 「授業の分析・評価システムを中心とす

る教育実習性のための指導技術訓練プログラムの開発(3年計画)」のプロジェクト名で,

昭和54〜56年度,大学教育方法等改善経費をうけている。現在センター協議会加盟大学は 30に及び,その多くが,教育実習の改善をテーマとして教授スキルの研究をしており,マ イクロ・ティーチングの手法や,授業モデルについての提案などを行なっている。教員養 成大学における教育方法の革新をめざして,いわぽ学際的な研究と実践を組織的に始めて いるのである。本学教育工学センターにおいても,56年5月28,29日,九州地区の教授ス キル研究会を開催し,その機会に私の「初等教育方法論」の授業を公開した。またその研 究会の討論において,教授スキルの概念やマイクロ・ティーチングを行なう目的などが問

題となった3)。

 本論文は,これらの背景をふまえ, 「理論と実践の結合」をめざして行なっている私自 身の授業における「理論と実践の関係」について自覚的にその立場を明確にしていくため のものである。1単位時間の授業の「具体的プログラム」と共に,その根底にある「教師 教育のストラテジー」をいくらかでも明らかにし,大方の御批判をうけると共に,私の実

践の前進を図ることができたらと考える。特に本年度は,MMTSにマイクロ・コンピ

ュータ(以下マイコンという)を接続し,グループ・コンセンサス・メソードという考え 方を導入した。これは私の立場の具体化の方法でもあるので,あわせて報告する。ただこ れらの方法,あるいは私の授業プログラムの効果,さらには学生たちの成長の評価など,

総合的なアセスメントについては,次回報告にゆずりたい。

2.MMTSとマイコン

最近におけるマイコンの発達と普及はめざましいものがある。このことについては,別

(2)

稿において両三度にわたって述べてきたことである4)。マイコンのキイボードとディスプ レイを中心とする会話型の機能は,パーソナルな利用に適し,スタソドァロソ型のCA:L

(Computer Assisted Learning)用プログラムの開発も試みたが,ただディスプレイの文 字が小さいため,個別学習用としての限界を持っていた。しかし,昭和55年に発売された

コモドール社のVIC1001は,安価なだけでなく,カラーテレビに接続して,22×23文字

のカラー文字や,音声出力の可能なことから,これをMMT Sと結合し,グループの討議 のためのデータや資料の提示とコミュニケーションのための道具として,教育用にいわば CAT(Computer Assisted Teaching)の用具として使用できることが明らかになった。

 MMTSの7つのセクター5)の壁側にはそれぞれ2台のモニター・テレビ(TV−S1,

TV−S2)が設置してある。そのうちの1台(TV−S1)は,①ライン(セントラル・ユ

ニットからセクター別に送信する映像の受信)②テレビ(放送番組)③ビデオ・レコー

ダー(セクター設置のVTRのモニター,全セクターのブース用テレビに送信できる)の モード切換えが可能である。他の1台のテレビ(TV−S2)のモード切換えは,①ライン

(各セクターの白黒テロヅプ・カメラのモニター),②テレビ(セントラル・ユニットか らの全セクター共通の送出信号をUHF−22チャンネルで視聴) として使用していたが,

③ビデオ・レコーダーは未使用であった。この8ピソのコネクターにVIC−1001を接続す

ることによって,マイコンの各セクターのディスプレイ表示を,MMTSのRF信号回路

に送りこめば●,各セクターのVTRの信号同様に,ブース。テレビ(TV−S3〜5)のチャン ネル切換えで,全ブースの学生がこれを,視聴できることが明らかになった。TV−S1は

VTRによる映像情報用, TV−S2は,マイコンによる概念情報用として,いわばテレビ

をステレオとして利用できるのである。ビデオによる映像は,授業そのものの,いわぽ事 実についての情報であるのに対し,マイコンからの表示は,例えば授業という事実につい て学生が行なった分析評価,いわぽ判断結果の言葉や数量などの情報のためのものとして 利用できる。もともとTV−S2は,先に記したようにテ¢ップ・カメラのモニターとして 設置し,これ迄は,カードに書いた文字や,ラインプリンターの出力結果を表示し送出す るために使ったのであるが,マイコンに組みこんだプログラムによれば,文字や数量の,

変換,編集,表示をより容易にすることができるのである6)。

3.教師教育の基本的ストラテジー

 (ユ) 教育方法論の目標

 私は,教育工学センター協議会や科学教育学会の研究会で,様々の専門分野の方々の研

究に接する中で,授業研究の方法にも,理学的な方法,工学的な方法,誌学的な方法の違

いがあることに気づいた7)。理学的研究の特徴は,存在の法則を明らかにすることによっ

て,存在を支配しようとするものである。先づ実証的,実験的な方法によって法則を明ら

かにすることから始まる。そして一たん確立された法則は,普遍的に妥当であり,誰によ

っても,何時でも,何処でも適用されるものとする。 これを授業研究にあてはめていえ

ば,授業についての法則(あるいはモデル)を明らかにすることであり,授業実践は,明

らかになった理論にもとづいて行なわれる。そして,実習授業は,授業の理論を身につけ

させるためのものとして設定される。 もちろん,高次の授業実践,応用的実践において

(3)

は,創造的な法則の解明・適用が課題となるが,実践一理論一実践という筋道に一応区別 されるのである。抽象的理論と具体的実践は分離し,その結合は行為する主体に任されて いるといえよう。

 これに対して工学的研究は,特定の目標を達成するための方法・手段の体系・システム を実践的に求めようとする。そのために様々の要素,要因とその組みあわせ方を重視す る。授業の研究は目標達成のための授業の設計にはじまり,実施の方法と,実施した結果 その目標が達成されたかどうか評価する方法を含めて,いわば一連の行為の体系を確立す るために行なわれるのである。理論は具体的実践に即して定立されるが,この具体的実践 を評価する基準は実践の外側に求められる。すなわち,所与の目的を達成させるための方 法・手段=行為の体系がそこで求められる理論であるいえよう。この理論はしたがって理 学的な法則のように抽象度の高いものではないが,むしろそのことによって,実践する主 体をより支配するものであるといえよう。

 私が,教育方法の方法論であると考えている「教育方法論」の授業において求め,かつ 学生たちに追究させている,授業の理論は,上に述べたように私の理解している,理学的 あるいは工学的研究のめざす理論とは若干異なるようである。私も,授業についての理論 を,一応「授業論入門」というテキストの形で持っている。しかしそれは,授業について の様々の概念(目標・過程……等)をとりあげ,それを私なりの立場から理論的に整理,

紹介していったものであって,ある理論,立場を証明されたもの,絶対的なものとし,こ れを知識として与えようとは考えていないのである。目標にはじまる個々の章も独立した

ものではない。扱う概念領域は異にするが,関連は密接であり,いかなる問題に対して も,ある立場からはこのように考えられるということであり,むしろ,授業についての理 論はある立場の上に成立し,それは総合的なものであるだけでなく,現実の実践に具体的 に対処すべきものとして,すぐれて創造的,主体的なものであるという前提にたつもので あった。だからこそ, 「教育方法論」の授業は, 「授業論入門」の講義に満足できず,そ れを,講読させ,また解説しながらも,「授業技術訓練テキスト」のプログラムを通して 行なう実習的活動を主とした授業をしているのである。すなわち,個人あるいはグループ で行なう作業を通し,そこで並行的に,対立し,比較しながら行なわれる学習活動を重視 する。自他の発想・理論的立場の相異を自覚させていく個性的・創造的活動の中で身につ いていく技術・技量を尊重する。理論を無視した経験というのではなく,各自の個性的一 共同的かつ対立的経験の中で,理論を,私の論も含めて批判的に検討し,確立していくこ

とを願ったのである。 このことを,資料(1)「初等教育方法論学習指導案」の目標におい て,今少し具体的に次のように述べておいた。

 「授業についての考え方(理論的立場)を実際の授業のビデオによる観察や,模擬i的な 授業の構案・実施・分析評価などの実習的活動を通して確立しながら,初等教育の方法に ついての実践的能力の基礎を養い,あわせて教育実践を対象とする問題解決のための基本 的態度を会得する。」

 すなわち,理論が既にあるのではなく,理論的立場を実習的活動を通して確立するこ

と,実践的能力そのものではなく,その基礎を,また,問題解決の直接技術・技能ではな

く,その基本的態度を自分なりに会得することをねらっているのである。授業のように様

々の側面を持つものにおける行動の仕方,実践的能力は,特定の理論・方法によって教え

(4)

資料(1)

       「初等教育方法論」学習指導案

       ユ98ユ.9.30(水)3。4校時        長崎大学教育学部教育工学実験教室

       八 田 昭 平

1.目  標

  授業についての考え方(理論的立場)を、実際の授業のビデオによる観察や、模擬的な授業の構案・実旛。分析   評価などの実習的活動を通して確立しながら、初等教育の方法についての実践的能力の基礎を養い、あわせて教育   実践を対象とする問題解決のための基本的態度を会得する。

2.学習計画

   「授業論入門」を毎回1章つつ講読させ、その内容と関連させながら「教育実地研究授業技術訓練テキスト」の   プログラムを下記のように実習させる。特に本年度はMMロ臼S(題uユt↓一MeO上a Teachi亘g Sys七θm)にマイコン   を組みこみ、そのデータ処理・提示ならびにコミュニケーション機能を活用して、事実=映像と認識詰概念の関係   を素材にして、グループ討議を行なわせ、学習活動の充実を図りたい。

経  過 週

1.

2.

3.

4.

5.

6.

7.

8.

月・日 4.8/9

4.ユ5/16 4.22/23 5.6/ワ

5.1ろ/14 5.2ワ/28

6.3/4 6.10/l1

9.   6.17/18

1O.   6.24/25 u.  7.1/2

12.   9.!6/ユー7

13.   9,30/10.1

14.  10.7/8

     内     容

教育方法論の授業の進め方,廻MTSの説明

 (入 門)     (テキスト)     (学習活動レポート)

(一)目  標  第ユプログラム  養護学校の授業についての感想

(二)過  程  第2プログラム  観察する先輩実習生ビデオを探す

(三)主  体     〃     ビデオ視聴,指導案とのずれに       ついてレポート

(四)環  境  第3プログラム  マイクロ・ティーチングの教材選定

(五)教  材     〃     先斐のマイクロ。ティーチングの       ビデオ視聴

(六〉閤  題     〃     マイクロ・ティーチングの溝案役割決定

(七)形i 態     〃     マイクロ・ティーチング実施        ブースごとユ名,録画記録

(八)集  団  第4プログラム  上記のプロトコール作成

       コミュニケーション構造の分析

(九)コミニコニケーシヨン   〃     修正案作成,役割決定,ビデオの操作              マイクロ・ティーチング実施

       セクダーごと1名,ビデオ記録

(δ)評 価 鋤プログラム 上言己のマーク.カード鳳る評価

(=)技  術     〃     上記評価結果のブイード・バック,

       グループごとの討議

(=)教  師     〃     自分の志向する教師像についてレポート。

(5)

3.本時の学習

(1) 目  標

     マイクロ・ティーチングの評定尺度による授業展開のしかたの評価結果をもとに、そのような評価がなされ     た理由を考察し、改善の方策を「授業論入門」を参考に討議しまとめる。

㈲ 教材・資料

       、1      「授業論入門」 「教育実施研究授業技術訓練テキスト」

   マイクロ・ティーチングのビデオテープ(A〜Gセクター)

   マークカードαX2>

   マイコン(VエG2001)プログラム・テープ(HエS田02各セクター評価データ詔録済)

   前時における評価結果(Pσ一8000によるプリントデータ)

㈲ 展開計画

時    聞 学   習  (活 動) 内   容

使用教材.機器

10二50〜11:10

1.

「授業論入門(十)技術について」予習結果

ω 感想,意見,暁闇,問題等を自由記述 マークカードα)

(2)

テキストについてマーク。チエツク

(ガ 読んできた一こない ω やさしい 一一一むずかしい

(ウ) 興味がある一ない

㊥ 役にたった一たたない

ユユ:IO〜11:20

2.

「入門(十)評価について」前回の報告 マークカード(⊥)

ω マーク・チェック結果 ?TO→・田V−S3〜5

(ロ) 自由記述について回答 十時の学習内容と課題の説明

前回視聴したマイクロ・ティーチングの評価結果を もとに、授業展開の特徴,授業者のあり方について 討議し、その改善の方策を、入門を参考にグループ でレポートする。

1ユ=2Q〜11:40 5.

「入門(士)技術について」

(1)

これまでの各論を総括するものとしての技術,教師 「授業論入門」

(2》

技術の意味

(3)

立体的な学習計画立案の方策

11:40〜12:00

4.

前回マークカードによる評価結果のセクターごとに集計 「授業技術訓練テキスト」

した結果のプリント及び、マイコンによる表示結果をもと V工C一ユ00ユ

に、 そのように評価された(評価した)理由を、セクター

TV−S2ウ緊V−S3〜5

ごとに考察する。 Hea(1Sθt

12:00〜12:20

5.

マイクロ・ティーチングのビテオを再規聴し、ブースご

V工R−S,TV−S1

とに:改善策について討議し提案する。

TV−S3〜5

12:20〜12:30

6.

「テキスト 第7プログラム」A.評価項目によってマイ 「捜業技術訓練テキスト」

クロ・ティーチングを再評価する。B,C,D評価項目によ

マークカード(2)

る初等教育方法論の授業の評価

(6)

うるとは,倒底考えられないからである。

 上に「実践的能力の基礎を養い」「あわせて教育実践を対象とする問題解決のための基

      の     の

本的態度を会得する」と書いたが,両者は二元的並行的に達せられるものではない。むし ろ,現実の教育実践を対象とする問題解決,例えば,授業の観察・分析を含む研究の中に おいてはじめて,授業の実践的能力が養いうるものと考える。このことが,私の授業の基 本的ストラテジーであるが,以下具体的に,授業においてとりあげる実習的活動について 述べることにする。

 (2) 実習的活動とグループ・コンセンサス・メソード

 上に述べてきたように,私は実習的活動を通して,実践的能力の基礎だけでなく,それ を支える理論的立場の確立を企図してきたのであるが,実際には,実習的活動のためのプ ログラムを作成し,それにもとづいて学生たちに実習的活動をさせるのに精一杯であっ た。すなわち前報告で述べたことであるが,「教育実地研究授業技術訓練テキスト」は,

実際の授業のビデオによる観察(第1,2プログラム),マイクロ・ティーチングの計画,

実施と記録の作成,分析,評価(第3,4,5,7プログラム),ビデオ教材番組の作成

(第6プログラム),教育実習授業の分析,評価(第8,9プログラム)を段階的に構成 し,作業とレポートを必ず要求することによって,実践の反省,総括をさせてきたのであ るが,その反省,総括の吟味,検討をすることによって,理論と実践の深化を,意識的,

自覚的にさせることに不十分であった。ブース内,セクター内のグループ討議を十分組織 しなかったし,教師と学生との討議・対話も不満足であった。

 このことについて,ハードウェア的な発想からであったが,2で述べたようにMMT S

にマイコンを組みこむことが,きわめて有効な手段を提供することに気づいたのである。

 すなわち,これ迄,授業やマイクロ・ティーチングのビデオによる映像情報を,ブース

あるいはセクター構成メンバーの共通の視聴対象としてきたのであるが,その認識によっ

てえられる概念情報をも,一定の方式によってマイコンのキイボードから入力し,TVデ

ィスプレイに提示して,共通の討議素材としうること,事実を反映する映像と認識を反映

する概念との関係を追究することは,実践と理論との対応関係について,考究させること

になるのである。もちろん,授業のように複雑な人的構成によって成立しているだけでな

く,行為自体が一定の価値観にもとづいて行なわれ,その結果も,行為者自身の予想しえ

ない展開をみせる事象にあっては,その対応は単純にはなしえないし,コンセンサスは容

易にえられるものではない。しかし,一方で事実を反映する映像を持っているのであるか

ら,個人の認識,判断結果をそこに持ち帰って,理論についての検討を一定の範囲で深

め,裏づけることもできるのである。むしろ事実をもとに,さまざまの判断が成立するこ

と,その異同とその根拠をさぐり,その判断の背景にある理論的立場を明確にし,かつ確

立していくことを,ねらったのである。これらのことを含め,これをグループ・コンセン

サス・メソードと名づけた。資料(エ)の「学習指導案」1981年9月30日の授業は,その具体

化の試みである。以下その詳細を,具体的なプログラムに即して述べることにする。

(7)

4.授業のプロゲラムと展開

 (1) 授業の経過

 資料(1)「初等教育方法論学習指導案」の「2.学習計画」の中の経過にしたがって説明 する。そこにみられるように,第2〜4週,例年通り養護学校の授業や,先輩実習生のビ デオを視聴させ,感想や,指導案とのずれについてのレポートを書かせたあと,第5〜7 週において,マイクロ・ティーチングの教材を,自分たちをとりまいている環境の中から 先づ個人ごとに選定させ,次にブースごとに相談してそのうちの1つを選択させた。また 前年度迄のマイクロ・ティーチングのビデオを視聴させ,それを参考に,構案させ,相互 吟味をさせた上,第8週,第1回のマイクロ・ティーチングを実施した。これは,ブース

ごとに1名を代表者として教師役をさせ,15分のカセット・テープに録音した。そして,

次の時間にかけて,そのプロトコールを作成し,コミュニケーション構造の分析を各自に 行なわせた。第10,11週は,上の結果にもとづいて修正案を作成し,3つのブースから構 成されているセクターで1つを選んで第2回のマイクロ・ティーチングを実施し,これを

ビデオ記録にとった。なお,この2回の経験にもとづき,夏休みの宿題として,各自,マ イクロ・ティーチングの構案ノートを作成させた。

 9月にはいって,第12週,7月に実施したマイクロ・ティーチングを,2ヵ月間の時間

的経過,夏休みにおける自分なりの構案をふまえ,テキストの第7プログラムの「A・授 業展開の評価項目」によって評価させた。先づ始めに,自分のセクターのマイクロ・ティ

ーチングをマーク・カード5段階の評定尺度によって評価したあと,2回目は,他のセク ターのものを,任意に選んで同じように評価させた。これをマイコン(PC−8001)によ って処理し,出力した結果が,資料(2)である。また,マイクロ・ティーチングについて自 由な意見を書かせた。その一一部を資料(3)によって示す。資料(3)は授業の特徴をむしろ質的 によくつかんでいるが,評価項目による評価と無関係ではない。これらの内容についての 分析,それを用いての私の授業についてのアセスメントは前に述べたように,次回の報告 にゆずる。

 (2) 本時の展開

 上のマイクロ・ティーチングの評価活動をうけての第13週の授業の様子を,資料(1)「学 習指導案」の「3.本時の学習 (3)展開計画」にしたがって述べていく。

 本絵の主な学習内容と課題は,そこに書いておいたように,「前回視聴したマイクロ・

ティーチングの評価結果をもとに,授業展開の特徴,授業者のあり方について討議し,そ の改善の方策を,入門を参考にグループでレポートする」ことにあるが,毎回の授業のは じめに,「授業論入門」の各課の予習結果についての報告をさせているので,ここでそれ についてもふれておく。授業の開始時の約20分間,予め「授業論入門」を読んでこさせ,

そこに生じた「(1)感想,意見,疑問,問題等」を,マークカードρ余白に書かせている。

これは,教室にはいってから読んでいる者もいるが,その事も含め,事前にテキストを理

解しようとすることも願い,またその過程を自覚させるために,「(2)テキストについて(力

読んできたかどうか(1=読んできた,2=読んでこない)(イ)やさしい一むずかしい㈲興

味がある一ない㈲役にたった一たたない(いずれも5段階)」をマークカードにチェック

(8)

させている。その結果については,コンピューターによる集計結果のプリントを,テロッ プ・カメラで写し,ブースのテレビでフィード・ミックした(後にはマイコンによってデー タを入力表示した)。また自由記述の意見や疑問などについては次時迄に読んできて,主 なものについての回答をしているが,その内容,特に回をおっての変化の状況についての 分析も次回にゆずりたい。

 ここでは,この時間に試みたグループ・コンセンサス・メソードの方法について述べ る。マイクロ・ティーチングのマーク・カードを用いた20項目にわたる評価結果の一覧表 および平均点のグラフは,既に資料(2)の様式で出力されているが,今回特にねらったの は,1つ1つの評価項目において,同一セクター内の者が,自分のセクターのマイクロ・

ティーチングをどう評価しているか,5段階評価のどれを選んだかの異同を,ヒストグラ ムにあらわし,何故そのように評価されたか,逆にいえば,そのように評価したかを討議 することを通して,授業展開の特徴,授業者のあり方を,再確認していくことにあり,そ の場合,評価者が,評価の仕方そのものを,あわせて問題にしていくことを求めたQその

1.1

LO

0.9

0.8

0.7

0.6

0.5

0.4

0.3

0.2一

0.1

ムU

     乙    9      碧

∴2ゼ}曄芸

皆    1917

    A班  評価者人数       第1回 第2回 O第2セクター  14  15 X第3セクター  18  15 向歯4セクター  10  15

△第5セクター  13  14

0.0    0.1   0.2   0.3   0.4    0.5   0.6    0。7   0.8    0.9   1.0    1.1   1.2

図 1

(9)

ため,5段階評価の人数分布のヒストグラムを,項目ごとに自由に出力できるプログラム を組んでおき,2で述べたマイコンの接続によって,セクター内ブーステレビに表示し討 議の資料としたのである。

 評価者によって,同一のマイクロ・ティーチングを,同一の評価項目によって5段階評 価しても,一一致しないのは当然である。対象のどこをとらえるかということ,どのような 角度から評価するかということ,また,評価項目の抽象性,曖昧さなどによる判断の困難

さも見逃せない。しかし,そこに全くの一致がないわけではない。一致のしかた(分布の しかた)そのものの検討を通して,これ迄気がつかなかった,授業の事実を把え,解釈す る目を養うことをねらったのである。

 そのため,その討議のあと,再度,マイクロ・ティーチングを視聴させ,ブースごとに 改善策についてレポートさせた。そして,この討議と再視聴のあと,前回同様「A。授業 展開の評価項目」によって,同一のマイクロ・ティーチングの評価をさせてみた。これ は,学生たちのためというより,このようなグループ・コンセンサス・メソードによっ て,学生たちの評価結果が,どのように変化するかということの考察のためであった。図

1に,5段階評価の標準偏差が,どのように変ったか示しておく。ヨコ軸に第1回の評

価,タテ軸に第2回の評価の値を示す。わずかであるが,その値が減少していることがみ

られる。

 これは小学校課程の学生を2分したa班のものであるが,この分布のしかたは,b班に

ついてもほぼ同様であった。評価対象とするマイクロ・ティーチングそのものがセクター

で異なり,評価項目も異なるものも1枚の図にあらわしている。

1)八田昭平「教育方法論の授業における理論と実践の結合について」 長崎大学教育学部教育科 学研究報告 第28号 昭和56年

2)佐賀大学,福岡教育大学,熊本大学(昭和55年から),大分大学(昭和56年から)との共同研

3)九州地区教授スキル研究会報告書 1981年5月28・29日 長崎大学教育学部附属教育工学セン ター 所収 児島邦宏「教授スキル研究の現状と課題」

4)八田昭平「教育のためのマイコン利用モジュール・システム(1),(2)」 長崎大学教育学部教科 教育学研究報告 第3,4号 昭和55,56年

 八田昭平,西岡幸一「教育情報の多様性と処理方式の具体的検討」 同上 第5号 昭和57年 5)MMTSの詳細については「長崎大学教育学部附属教育工学センター年報 No.4」 参照 6)八田昭平「教育方法の現代的展開」 熊谷忠泰編著『転換期の教育』 協同出版 昭和56年

所収

7)八田昭平「授業論入門」,私家版(社会科の初志をつらぬく会r考える子ども』 No.78〜87  昭和46年3月〜48年1月に連載)

8) 「教育実地研究授業技術訓練テキスト 昭和56年版」 国立大学教育工学センター協議会教授  スキル研究会九州地区グループ 1980.3

       (昭和56年10月31目受理)

(10)

資 料

(2)

マイクロ。テイーテ ングの「一葉展開の評価項目」による評価結果

Dセク タ 自分のセクターの評価

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:Dセク ター 他のセクターからの評価

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(11)

マイクロ・ティーチングの・「授業展開の評価項目」による評価結果

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自分のセクターの評価

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(12)

資料(3)

マイクロ・ティーチングについての意見

D:花は誰のために A:かさごじぞう

①D学習する目標がはつぎりしていて明るい授業だった.教師役の教えたいことがはっきりわ    かったし,問題の残し方も良かった.何よりもテンポがあったのでよけいな問合がないとこ    ろが活気のある授業にするための条件として良かったと思う.

  A 最初の朗読が少し長すぎたように思う.できればひとりに読ませるというのでなく,2,

   3人に分割させたら良かったのではないか.間合のとり方を少し工夫したらよいと思う.少    したどたどしかった.(D−1,保体,女子)        *D−1はセクター,ブース名

②D授業が楽しく展開できて良かった.内容も発表の中に出てこなかった部分をうまく説明の    中におりこんでいたようである.生徒の発言を簡単に要約するだけでこんなにスムーズにい    くことは驚きだった.言葉使いや本のろう読のしかたも良かったと思う.

  A 「かさごじぞう」という教材を使ってまとめるまででせいいっぱいで発展学習に欠けてい    るように思える.生徒役の発言をてき格にまとめて,授業をもっとバリのあるものにする必    要があったと思う.生徒が思いつくままに述べるところを,いかに学習目標に近づいていく    かが今後の課題のように思える. (D−1,保体,女子)

③D先生役の西さんはD.J.をやっているだけあって話しの切り出し方,間のとり方は抜群    に上手であった.難点を言えばアドリブが多かったということである.アドリブは生徒をリ    ラックスさせるためには,大変効果があるので良いと思うが,多くなるとまとまりがっかな    いと思う.しかし先生役はよく生徒の発言を理解して,すぐそれを授業に生かしていたので    よくやったと思う. (D−2,今体,男子)

④ D 自分が参加した授業は少しテンポが早かったと思う.授業がやや散漫のきらいもあるが,

   それでも飽きのこない面白い授業だった.途中で流れが途絶えることがなく,最後まで一つ    のリズムを持って授業がなされていたと思う.面白さに気をとられて授業内容の充実感に少    し乏しい気がした.

  A 授業そのものが重い感じで,生き生きとした感じが乏しかった.ていねいさはわかるが,

   生徒があきてしまう感じがした.指導計画にこだわらない対応がほしかった. (D−3,音    楽,女子)

⑤D導入の仕方が実にうまかったと思う.教師の生き生きとした態度が生徒にも大きな影響を    与えたようで,実に活発にのびのびと意見が出せたようである.ただテンポが少し早すぎて    先走ってしまうところがあったように思う.(D−3,音楽,女子)

⑥D何度もやったせいか今ひとつ意見がでなかった.それで教師の話が少し多かったような気    がした.導入は割と良かった,適切であったと思う.一つの意見に対して,もう少し深くつ    つこんでも良かった.身近な話題でもあり,生徒の関心は深かった.テンポはもう少し落し

   た方が良い.

  A ポイントポイントははっきりしていたが,教師の働きかけが少なかった.意見があまりな    かったが,一つ一つはいろいろな変った意見だった. (D−3,音楽,女子)

⑦D教師役をやったのだが,授業をやっている時はそう感じなかったが,ビデオを見ると,と    てもせわしい感じがする.ひとつひとつのポイントをおさえることができず,先へ先へと流    れているようだ。また児童の発言ももう少したくさんあった方が良かったのではないか?教    師のしゃべりすぎという感もある。

  A もう少し明るいムードでやれたら良かったのではないか. (D−3,音楽,女子)

参照

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