戦後 日本 にお ける教育 政策の推移
1.被 占 領 期 熊 谷 忠 泰
Die Übergänge der japanischen Erziehungspolitik in der Nachkriegszeit. 1
. Die Regierungszeit der Besatzungsmacht.
von
Tadahiro KUMAGAI
は じ め に
これ まで,4編 の 論 稿 を通 して 教 育 政 策 の 理 論 に関 す る考 察 を 進 め て きた が,今 や,そ の 実践 面 に 関 して 考 察 を展 開 しな くて は な ら な い 段 階 に きた よ うで あ る。
教 育 政 策 の 実 践 的 展 開 と い え ば,そ の範 囲 は 可 成 りの拡 が りを もつ 。 こ こで そ の す べ て に亙 っ て 触 れ る こ とは とて も不 可 能 で あ る。 そ こで,考 察 領 域 を 「 現 代 」,そ れ も敗 戦 後 の 日本 に限 定 した い と思 う。 そ れ は,こ の 時 期 が,わ が 国 近 代 教 育 の 嗜 矢 と もい うべ き明 治 維 新 期 と同様,空 前 の 画 期 的 改 革 が 行 わ れ た 時 期 で あ るに も拘 わ らず,時 代 近 接 の た め か, 未 だ 比 較 的 に 考 察 の 乏 し い 時 期 で あ るか ら で あ る。 しか も,そ れ だ け で はな い。 爾 来 す で に30有 余 年 を経 て,わ れ ら は ま さ に 新 時 代 一80年 代 を迎 え よ う と して い る。 今,今 後 の 新 政 策 策 定 の 予 見 的 考 察 を行 っ て お く こ と もあ な が ち無 意 味 で は な い で あ ろ うか らで あ る。
考 察 は,大 別 し て三 期 に 区 分 され る。 第 一 期 は,昭 和20年 か ら24年 まで の 被 占領 期,つ ま り戦 後 処 理 な らび に 改 革 政 策 の 大 か た が 策 定 され た 時 期,第 二 期 は,昭 和25年 か ら34年 まで の 転 換 期,す な わ ち独 立 ・保 守 合 同 を 契機 と して,サ ン フ ラ ン シ ス コ条 約 体 制 の なか で 第 一 期 政 策 の 否 定 と し て の 国 情 適 合 政 策 が 策 定 さ れ る反 動 期,そ して 第 三 期 は,昭 和35 年 以 降 の 時 期 で,高 度 経 済 成 長 政 策 と人 つ く り政 策 に よ っ て ま さ に世 界 にお け る 日本 と し て 浮 上 して くる体 制 確 定 期 で あ る。
本 稿 は,こ の うち,第 一 期 を対 象 とす る もの で あ る。
1 敗戦 直後の教育政 策
ポ ツ ダ ム 宣 言 の 受諾 に よ っ て 日本 は戦 争 に 敗 れ,第 二 次 世 界 大 戦 は 終 わ っ た。
ポ ツ ダ ム 宣 言(昭 和20.7..26成 立)は 日本 降 伏 の 条 件,し た が っ て 占 領 政 策 の 根 幹 を示 す
文 書 で あ るか ら,教 育 政 策 の 場 合 も例 外 で は な い。 そ れ は全13項 か らな り,第5項 ま で は
前 文 に 当 る部 分 で あ っ て,抗 戦 継 続 は 日本 の 破 滅 以 外 に は な い とい う脅 迫 に み ち た 文 章 で,
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長崎大学教育学部教育科学研究報告 第27号
第6項 以 下 が 降 伏 の 条 件 を示 した もの で あ る。 す な わ ち,第6項 は 軍 国 主 義 権 力 と勢 力 の 排 除,第7項 は連 合 軍 に よ る 日本 本 土 の 占 領,第8項 は カ イ ロ宣 言(昭 和18.11.27)条 項 の 履 行(日 本の主権 を本州,北 海道,九 州,四 国の四島 とそれ に付属する小 島に限る),第9項 は 日本 軍 隊 の 武 装 解 除,第10項 は戦 争 犯 罪 人 の 処 罰 と民 主 化,基 本 的 人 権 の確 立,第11項 は 軍 事 産 業 の 除 去 と平 和 産 業 の 育 成,第12,13項 は 結 語 とな っ て い る(10)この う ち,直 接 に 教 育 に 関 係 の あ る部 分 は 第6項 と第10項 で あ って,そ れ は,そ の 占領 期 を通 して 後 々 まで 占 領 軍 及
び 日本 側 の 教 育 政 策 策 定 に 潜 在 的 に 強 力 な影 響 を及 ぼ した。
しか し,現 実 に お け る 日本 支 配 層 の 関 心 と努 力 は,「 国 体 護 持 」に 集 中 した 。 そ れ は,敗 戦 の 「 詔 書 」 や 「内閣 告 諭 」(昭 和20.8.14)に も見 られ る が,教 育 関 係 の もの と し て は, 鈴 木 内閣 の 太 田 文 相 が 敗 戦 に際 して 発 した 訓 令 に も典 型 的 に現 わ れ て い る。
「(敗戦 は)偏 二我 等二 匪躬 ノ誠 足 ラズ報 国 ノ力 乏 シ クシ テ皇 国 教学 ノ眞髄 ヲ発揚 スル ニ未 ダ シ キ モ ノ有 リシニ 由ル コ トヲ反省 シ,此 ノ痛 恨 ヲ心肝 二 刻 ミ臣子 タ ル責務 ノ完遂 ヲ今 後 二誓 ハザ ルベ カラ ズ… …。
各位 ハ 深 ク此 ノ大詔(敗 戦 の詔書)ノ 聖 旨ヲ体 シ奉 リ国体 護 特 ノー念 二徹 シ,教 育 二従 事 ス ル者 ヲ シテ克 ク学 徒 ヲ薫化 啓 導 シ其 ノ本分 シ謬 ナ ク格 守 セ シムル ト共二 師弟 一 心任 ノ重 キニ堪 へ …… 以 テ深遠 ナル聖 慮 二応 へ奉 ラ ン コ トヲ期 スヘ シ。」②
っ ぎ の 東 久 遍 宮 内閣(昭 和20.8.17成 立)も 「 国 体 護 特 」 に国 民 を結 集 させ る こ と に全 力 を挙 げ た 。 そ して,前 記 引 用 か ら も窺 え る よ う に,「 一 億 総 戯悔 」をス ロ ー ガ ン と して 支 配 階 級 の 戦 争 責 任 を曖 昧 に し,国 民 の 彼 らに 対 す る 責 任 追 及 の 声 を 封 じ る こ と に 熱 中 した0(3) こ う した 国 内 政 治 情 勢 の な か で,ア メ リカ軍 の 日本 占 領 は8月28日 の 先遣 隊 派 遣 を皮 切
りに 開始 され,10月 初 め まで に}まぼ 日本 全 土 を 占 領 し終 わ った 。 お そ ら く日本 政 府 は,ポ ッ ダ ム 宣 言 履 行 と 「国 体 護 持 」 の は ざ ま に あ っ て 懊 悩 し続 け た こ とで あ ろ う。 当 然 こ の 段 階 で は 文 部 省 の 「 意 識 」 も混 沌 と し て お り,整 合 的 な新 し い教 育 の 方 針 を打 ち 出 す よ うな こ とは で き な か っ た と考 え て よい 。 した が っ て,敗 戦 か ら約 一 月 の 間 に 文 部 省 の 執 っ た と
りあ え ず の 措 置 は,敗 戦 処 理 程 度 の もの に過 ぎな か っ た 。 8月16日 学徒 の 動員 解除 通達
8月24日 学 校教練 の廃止 通 達
8月28日 「 時 局 の変転 に伴 う学 校 教育 に関 す る件」 通 達。 そ の 内容 は次 の よ うな もので あ る。
(1)平 常 の教 科授 業 を遅 く とも9月 中旬 か ら再 開 す る こ と。
(2)特 別 の場 合 は,当 分 の 間授 業 を休 止 して もよい。
(3)戦 災 学校 にあ って も工夫 し,協 力 して授業 再 開 に努 力す る こ と。差 当っ て は,食 糧 増産 な どの 作 業 に当 らせ る こ と。
(4)教 科 書,教 材 等 の取扱 いに つい て は,詔 書 の 御趣 旨を奉戴 す るよ う十 分 な注 意 を払 い, 一部 授 業 の省略 等 適宜措 置 す る こ と。(4)
も ち ろ ん,こ れ ら は政 策 とい え る よ う な もの で は な い が,当 時 の 文 部 省 の 動 き を 推 測 す る 一 つ の 手 掛 り と は な る で あ ろ う。 し か し,他 方 で は そ の 文 部 省 内 部 に も漸 く新 政 策 模 索 の 気 運 は 動 き始 め て い た よ うで あ る。 そ の 結 果 が1こ の 時 期 に文 部 省 が 積 極 的 に 示 し た 唯 一 の 公 式 的 見 解 で あ る 「 新 日本 建 設 の 教 育 方 針 」(昭 和20.9、.15)で あ る。
この 「方針 」 は,前 文 で 「 戦 争 終結 二 関ス ル大詔 ノ御趣 旨ヲ奉体 シテ世 界平 和 ト人類 ノ福祉
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戦 後 日本 に お け る教育 政 策の 推 移(熊 谷)
二貢献 スベ キ新 日本 ノ建設 二 資 スル ガ為従 来 ノ…… 教育施 策 ヲー 掃 シテ 文化 国家,道 義 国家建 設 ノ根基 二培 フ文 教諸施 策 ノ実行 二努 メ テヰル 」 と文部 省 自 らの姿勢 を述 べ,以 下11項 目に わ た って具体 的方針 を示 してい る。
(1)新 教育 の 方針 「 新事 態 二即 応 スル教育 方 針 ノ確 立 ニ ツキ鋭 意努 力 中」 で あるが,「 今 後 ノ教育 ハ 益々 国体 ノ護 持 二努 ム ル ト共 ニ… …平 和 国家 ノ建設 ヲ 目途 トシテ」 科学 的思 考 力 を養 い,智 徳 の水 準 を高 め るこ と。
(2)教 育 の体 制 学徒 隊 の組 織 を廃止 し,戦 時的教 育訓 練,軍 事教 育 は全廃 し,戦 争 直結 の学 科等 も平 和的 な もの に改変 す る こ と。
(3>教 科書 「 新 教育 方 針二即 応 シテ根本 的改 訂 ヲ断行 」す るが,差 当 り 「 訂 正 削除 スベ キ 部分 ヲ指示 」 す る。
(4)教 職員 に対 す る措 置 再 教育 を計画 中で あ るが,復 員,転 入者 に も同様 措 置 を考 慮 中 で あ る。
(5)学 徒 に対す る措 置 動 員 に よる学力 不足 の補 充策,転 学 ・転科 等 の配慮,軍 諸学 校 の 学徒 の措 置 な ど考 究 中で あ る。
(6)科 学教育 科学 は単 な る功 利的 立場 か らで はな く,「 眞理探 求 二根 ザ ス純 正 ナ科学 思 考 力 ヤ科学 常識 ヲ基 盤 トスルモ ノ タ ラシメ ン」 としてい る。
(7)社 会教育 「国民道 義 ノ昂揚 ト国民 教 養 ノ 向上 ハ新 日本建 設 ノ根底 ヲナ スモ ノデア ル ノデ,」 社会 教育,国 民文 化 の興隆 につ き計画 中で あ る。
(8>青 少年 団体 学 徒 隊の 解散 に伴 い新 に郷 土 を 中心 とす る 自発 能動 的 な青少 年 団体 を育 成す る。
(9)宗 教 宗教 的情 操,信 仰 心 を啓 培 し,真 の宗 教心 を体 得 させ,道 義新 日本 の建 設,国 際 的親善 の促 進,世 界平 和 に寄与 す る よう努 力す る。
⑩ 体 育 衛 生養護 ・体 位 向上 を図 る とと もに勤 労 と教育 の 調整 に努 め,運 動競 技,純 正 な スポ ー ツの復活 を奨励 す る。
(1D 文 部省 機構 の 改革 以 上 の諸 方策 実現 のた め体育 局,科 学教育 局 を新設 したが,更 に 第二 次 改革 を考慮 中で あ る。 ⑤
この 「 方 針 」 に対 し て は,こ れ まで の文 部 省 自 らの 教 育 方 針 を謙 虚 に 反 省 した う えで 当 面 配慮 す べ き事 項 に つ い て の 改 革 案 を提 示 した もの と し て一 応 の 評 価 は与 え られ るが,そ
の 殆 どが 「目下 考 究 中」 で あ る とい うの に は 一 抹 の 物 足 りな さ を感 じ る。 しか も,そ の 特 徴 が,保 守 的 な もの と進 歩 的 な もの との 同 居 性 に あ る とい うの もや は り問 題 を感 じ る。 こ こで は,何 の疑 い もな く 「 国 体 護 持 」 と 「平 和 国家 建 設 」 とが 無 条 件 で 両 立 させ られ て い る の で あ る。
この 「 方 針 」が 出 され て か ら一 月後 の10月15,16の 両 日 に亙 っ て,文 部 省 は,「 新 日本 再 建 ノ大 使 命 ヲ担 ヘ ル 新 教育 ノ 方 針 ヲ鮮 明 ニ シ之 ガ 指 導 精 神 ノ確 立 ヲ期 」(6)す るた め,全 国教 員 養 成 諸 学 校 長 と地 方 視 学 官 と を東 京 に 集 め て 中央 講 習 会 を 開 催 した 。 席 上,前 田文 相 は っ ぎの よ うな挨 拶 を行 っ た 。
敗 戦 の原因 は多々 あ るが,「その 最大 な る もの は精 神 方面 にあ り,……吾 等教 育 に関係 あ る者」
は深 く反 省 しな けれ ばな らない。「 此 の 際教育 界 よ り一掃 せね ば な らぬ もの は軍 国主義 と極端 狭 隆 な る国 家主 義で あ りま して,… …本 来の 大和 の精 神,互 尊 互敬 の精 神 が傷 われ たの で あ り ま すが,」 「 藪 に改 めて教 育勅 語 を謹読 し,そ の御 垂示 あ らせ られ し所 に心 の整 理 を行 はね ばな ら ぬ と存 じます 。 」
今 後の 教育 と して は,個 性 の尊 重 とその 完成 を目指 し,そ の た めに教育 の新 方針 として は,
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長崎大学教育学部教育科学研究報告 第27号
「自 由に伴 う責 任 の強 調」であ り,「所謂 民 主主 義政 治 とは決 して君 主統 治 主義 の反 対語 とな る の でな く,貴 族 政 治や 立憲政 治 に対 す る もので あ って,… …奉 仕 に重 き を置 くこれ 日本 的 な る 民主 主 義政 治 の特 長で あ ります。」
次 に 「 極 度 の画一 主 義の 打破 で あ ります。」 それ は,「 人 の思 考力,推 理 力 を奪 い,そ の 結果 軍国 主義 発 生の 温床 とな り易 い もの で あ ります。」 「 更 に これ と併 行 して 重 んずべ きは人 格 の陶 冶道 義 の昂揚 であ り,真 理 の追 及 と理想 の標 置 及 び これ に向 っての努 力 で あ る。」
以 上 の よ うに述 べ来 った 後,教 育 の新 方 針 として 社会 教育,女 子 教育 の 水準 向上,科 学 教育 の刷 新,体 力 の増進,芸 術 文化 の振 作 及 び勤 労 教育 の 要諦 等 につ いて述 べ て い る。く7) こ こで 前 田文 相 に よ っ て い わ れ て い る事 柄 は,9月15日 の 「 新 日本 建 設 の 教 育 方 針 」 で 述 べ られ た こ と とほ ぼ 同 じで あ っ て,依 然 と して 進 歩 性 の な か に保 守 的 な もの が 潜 ん で い る よ う に 思 わ れ て な ら な い。 つ ま り,日 本 の 天 皇 制護 持 思 想 や 教 育 勅 語 の 意 味 づ け,古 き もの へ の 郷 愁 が 潜 在 し て い る よ う で あ る。 しか し,他 面 で はす で に 「 四 大 指令 」 の 先 取 り と思 わ れ る よ う な ふ し もあ り,そ れ は,多 分,9月22日 の 「 降 伏 後 にお け るア メ リ カ初 期 の 対 日 方 針 」 や10月4日 のGHQ覚 書 「 政 治,信 教 並 に民 権 の 自 由 に 対 す る制 限 の撤 廃 」 な ど に よ っ て 促 進 され た もの で あ ろ う こ とが 推 測 され る。 半 面,敗 戦 責 任 が 教 育 に あ る と す る考 え は,敗 戦 に 際 して の 文 部 省 訓 示 と同 軌 で あ って,「 国体 護 持 」とい う言 葉 こそ 使 用
さ れ て は い な い が,精 神 構 造 は全 く同 一 で あ る と思 わ れ る。
しか し,何 とい って も こ こで 注 目 され な くて は な ら な い 点 は,軍 国 主 義 と極 端 な る国 家 主 義 の 一 掃 は,現 実 に そ れ を希 求 した 天 皇 制 へ の批 判 な い し は反 省 か ら で は な く,逆 に天 皇 制 本 来 の 姿 を 回 復 す る た め の もの で あ り,ま た 個 性 の 完 成 とい う教 育 目標 は,教 育 勅 語 へ の 批 判 か らで は な く,実 は そ の 完 全 な 実 行 の た め の もの で あ り,更 に教 育 の 画 一 主 義 の 打 破 は,皇 室 を い た だ く 日本 的 民 主 主 義 待 望 の 当 然 の 要 請 か ら 出 た もの で あ った な ど の論 理 構 造 で あ る。 こ こで わ れ わ れ は,「 天 皇 は軍 部 に利 用 され た だ け で あ っ て,そ れ 自体 侵 略 的 勢 力 で は な い」 とす る ア メ リカ 国 務 省 内 親 日派(グ ルー元駐 日大使 を代表 とす る)の 見 解 や, ア メ リカ 政 府 の 天 皇 制 存 置 の 意 図,あ る い は 「 初 期 の 対 日方 針 」 「 四 大 指令 」な どの 中 に も 遂 に 天 皇 制 自体 の 批 判 は 見 出せ な い こ とな ど を想 起 せ ざ る を得 な い の で あ る。(8)
この 昭 和20年 の 秋 か ら冬 に か け て は,さ す が の 文 部 省 も,単 に 教 科 書 の 内 容 の 省 略 や 削 除(「終戦 二伴 フ教科用図書取扱方二関スル件」昭和20.9.20付 文部次官通牒(9))などの 否 定 的 措 置 だ け に 止 まっ て い る こ とは で き な か っ た 。 そ し て,具 体 的 改 革 構 想 は,学 校 教 育 の 内 容 で は 科 学 教 育 と公 民 教 育 の充 実,学 校 制 度 との 関 係 で は女 子 教 育 の 刷 新 か ら始 め られ た 。 科 学 教 育 科 学 教 育 は,当 初 敗 戦 との 関係 で と りあ げ られ る こ とが 多 か っ た 。 そ れ
は,科 学 の 立 ち 後 れ に敗 因 を求 め る声 が 強 く,教 育 の 充 実 に よ る科 学 振 興 の 必 要 は世 人 の
認 め る と こ ろ で あ っ た。 しか し,多 くは敗 戦 責 任 の 追 及 で あ っ て,国 民 の 科 学 的 認 識 や 真
理 探 求 の精 神 を育 て られ な か っ た とい う意 味 で の 科 学 教 育 を 問 う声 は弱 か っ た 。 そ こで,
文 部 省 は,昭 和20年11月7日,「 国 民 学 校,青 年 学 校 及 中 等 学 校 ニ オ ケ ル 科 学 教 育 ノ 実 態 ヲ
把 握 シ適 切 ナ ル 現 地 連 絡 ヲ行 フ ノ 目 的 ヲ以 テ各 地 方 二 係 官 ヲ 派遣 」 し,科 学 教 育 に つ い て
は,軍 事 へ の 従 属 や 功 利 主 義 的傾 向 を排 す る だ けで な く,近 代 科 学 が 本 質 に お い て民 主 主
義 と密 接 な 関係 の 下 に 成 立 した とい う歴 史 を も重 視 す る と い う立 場 に 立 っ て,真 理 探 求 の
た め の 科 学 的 思 考 力,科 学 常 識 を基 盤 とす る 必 要 が あ る と指 導 した 。〔10)そ の う え,11月21
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戦 後 日本 に お け る教育 政策 の 推 移(熊 谷)
日の 学 術 研 究 会 議,日 本 科 学 振 興 会 との 合 同 会 議 で は,以 上 の 方 針 か ら徒 に教 科 学 習 の 負 担 を 重 くす る の で は な く,授 業 時 間 を短 縮 し,教 科 の 授 業 は 午 前 に 限 り,午 後 は 自 由研 究 に す る とい う提 案 も した 。 こ れ は,画 一 的 な教 育 を打 破 して い くた め に も必 要 な 方 法 で あ
る とさ れ た の で あ る。(11)
女 子 教 育 初 等 教 育 を 除 い て 差 別 的 で あ っ た 女 子 教育 の 拡 充 は,婦 人 参 政 権 な ど女 性 の 権 利 の 実 現 と併 せ て 強 く要 望 され,政 府 も11月4日,「 閣 議諒 解 」と して 「 女 子 教 育 刷 新 要 綱 」 を決 定 して い る。
(1)方 針 「 教育 ノ機 会 的等 及教育 内容 ノ平準 化 蛇 二男 女 相互 尊 重 ノ風 ヲ促進 スル コ トヲ 目途 トシテ女 子教育 ノ刷新 ヲ図 ラ ン トス ル。」
(2)要 領 「 女 子二対 スル高 等教 育機 関 ノ解放‑‑1ー 二 女子 中等 学校 教 科 ノ男 子 中等 学校 二 対 スル平準 化 ヲ図 リ且 ツ大学 教育 二於 ケル共 学制 ノ採 用 ヲ目途 トシテ左 ノ措 置 ヲ」 な す。
(3)措 置 (略)(12)
この 「 要 綱 」 は,敗 戦 直 後 の 日本 政 府 が 決 定 し た 教育 改 革 構 想 の 中 で は最 も画 期 的,具 体 的 な もの で あ っ た とい わ れ る。こ こで 想 起 され る の は,こ の 二 月前 の10月11日,マ ッ カ ー サ ー が 組 閣(昭 和20.10.8)終 了 後 挨 拶 に行 っ た 幣 原 首 相 に対 して 指 示 した い わ ゆ る 「日本 民 主 化 に 関 す る マ 元 帥 の五 大 改 革 指 令 」 で あ っ て,そ の 第1項 に婦 人 の 政 治 的 解 放 が あ げ
られ て い る。
この 「 指令」 は口頭 で与 え られ た ものだ とされ てい るが,次 の諸項 目 を含 ん でい る。(1)参政 権の賦 与 に よ る 日本婦 人の 解旗(2)労 働 組 合結 成 の促進,(3)学 校 教育 の 自由化,(4)秘 密捜 査 と 虐待 に よっ て絶 えず 国民 に恐怖 感 を与 えて い た諸制 度 の廃止,(5)経 済組 織 の民 主化,で あ る。
この うち,(1)の 説 明 は こ うな って い る。
「日本 婦人 は政 治体 の一 員た るこ とに よって,家 庭 の福 祉 に直 接役 立 つ新 しい政治概 念 を 日本 に招 来す るであ ろ う。」(13}
閣 議 「 諒 解 」 の 背 後 に は,お そ ら くマ ッ カー サ ー の この 強 い 意 思 が 働 い て い た こ とは 十 分 に 想 像 され る こ とで あ り,し か も決 定 の 形 式 が 「了 承 」(担 当閣僚 の提案又は報告への同意)で は な く,「 諒 解 」とい う異例 の 形 式 で 発 表 され て い る こ と も こ う した 背 景 を 物 語 る もの で あ ろ う。 そ の う え,こ の 「 要 綱 」 は,こ の よ う な 先 進 性 だ けで な く,実 効1生を も もっ て い た の で あ る。 女 子 へ の 大 学 の 門 戸 解 放 は,新 学 制 の 実 施 よ り先 に,翌 昭 和21年4月 か ら実 施 さ れ た 。(14}
公 民 教 育 公 民 教 育 に つ い て は,文 部 省 は 昭 和20年10月 末 に 「公 民 教 育 刷 新 委 員 会 」 を設 置 し,戦 時 下 の 臣 民 ・皇 国 民 を 養 成 す る 公 民 教 育 で は な く,「 代 議 政 治,国 際 平 和,個 性 の 完 成,正 し い世 界 情 勢 の認 識 等 」 の 課 題 に 取 組 む新 時 代 に即 応 す る政 治 教 育 を 行 い,
「 新 時 代 の 根幹 」 とな る よ うな 公 民 教 育 の 確 立 を試 み て い る。 この 委 員 会 は,12月22日 に
「 答 申第 一 号 」 を,12月29日 に 「 答 申 第 二 号 」 を文 相 あ て に提 出 し て い る。
答 申第 一 号
1 公民 教育 の 目標 「 総 テノ人 ガ家 族生 活 ・社会 生活 ・国 家生 活 ・国際 生活 二於 テ行 ッテ イル共 同 生活 ノ ヨキ構 成員 タ ルニ 必要 ナル 知識 技能 ノ啓 培 トソ レニ 必要 ナ ル性格 ノ育 成 ヲ目 標 トスベ キ デアル。」
従 来わ が国 で は官尊 民卑,封 建 的 な傾 向が強 く,公 民 と して の 自発 的積 極的 活動 は永 く阻
止 されて きた。「 特 二満 州事 変以 後 ハ公民 教育 ノ内容 モ軍 国 主義 的 思潮 ヤ極端 ナ ル国 家主 義 的
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長崎大学教育学部教育科学研究報 告 第27号
傾 向 二歪 曲」され て きた。 「 平 和 的文 化国 家建 設 ヲ 目ザ ス今 日二在 ツ テハ,国 民 ノ教養 ヲ高 メ 社 会 意識 ヲ深 メ,以 テ健 全 ナル共 同 生活 ヲ建 設 スル ニ役 立 ツ資質 ヲ啓 培 スル 為二 何 ヨ ワモ先 ズ公 民教 育 ヲ刷 新 シテ」 本来 の姿 を実現 すべ きであ る。
2 学 校教 育 に於 け る公民 教育
(1)公 民 的教 育 道徳 は元来 社 会 に於 ける個 人 の道徳 で あ るか ら,「修 身 」は 「 公 民」 と 一 本 た るべ きで あ り,両 者 を統 合 して 「 公 民科 」 が確 立 され るべ きで あ る。
従来 の 公民 科教授 要 目は細 目網羅 の あ ま り抽 象 的羅 列 に止 まっ た。今 後 改革 され るべ き 点 は次 の通 りで あ る。
① 要 目の規 定 は大綱 に止 め る,② 教 科書 に は精選 事項 の み記 戴 し,相 互連 絡 を計 る,③ 教 科書 は学 識 経験 者の 執筆 ・参 画 に よ って 作成 す る,④ 教授 に際 し他学 科担 当者 と連絡 を 緊 密化 す る,⑤ 新 聞の 重要 事項 の 解説 を行 う,⑥ 生徒 の 自発 的学習,研 究 を促 す ように工 夫 す る。
② 公民 科学 習 公 民教育 の 目的達 成の た め,学 校組 織 運営 の全 体 が実践 の 好機 とな ら ね ば な らな い。
① 生 徒代 表,級 長,班 長 の選 挙 を生 徒 自身 に行 わせ る,② 寄 宿舎,図 書 室等 の 自治 的管 理 運営 を させ る,③ 遠 足,見 学,旅 行 等の企 画,研 究,調 査 に参加 させ る,④ 校友 会 に お ける行 事 を 自治 的に運 営 させ る。
3 社 会教 育 にお け る公民 教育(略)(is) 答 申第 二 号
「学 校 教 育 にお け る公 民 教育 の 具 体 的 方 策 」
今 やわ が 国 は文化 国家,平 和愛 好 国家 と して …… 世界 の平 和 と人類 の 文化 に貢 献 しな くて はな らない。 … … まず普偏 人 間性 の 自覚 に基 く国際 協 調の精 神 に徹底 す る と共 に世 界 の進 運 に心 を啓 き,封 建 的遺 制 を克服 し,基 本 的人 権 の尊 重 に立 って社 会体 制 を民 主 化 し,国 民 生 活 を合 理 化 して その安 定 と向上 とを図 らな くて はな らない。 公民 教育 の 刷新 は この 要請 に基 くもので あ る。
「 公 民教 育 は広 く共 同 生活 の構 造 と作 用 とを理 解 せ しめ,こ れ に必 要 な る資質 を啓 培 す る を 目的 とす る。」 それ故 に,「公 民教 育 は 国民教 育 の根幹 」 た るの位 置 を占め る。 わが 国 民教育 が 「 教 育 に 関す る勅 語」 の趣 旨に基 く限 り,公 民 教育 もその立場 に立 って行 わ るべ きで あ る。
今 後 の公 民教 育 の根 本 方向 を確 立す る こ とが 必 要 であ る。
① 普 偏 的一 般 的原 理 に基 く理 解の徹 底,② 共 同生 活 にお け る個人 の能 動 性の 自覚,③ 社 会 生活 に対 す る客観 的具 体 的認識 とそ れ に基 く行為 の 要請,④ 合理 的精 神 の漣 養,⑤ 科学 の 振興 と国民 生 活 の科学 化,⑥ 純 正 な る歴史 的認 識 の重 視,⑦ 公民 教育 の 方法 につ いて の若 干 の指 摘。(16)
こ れ らの 答 申 は,わ が 国 の 置 か れ た厳 し い 事 態 の 自覚 に立 っ て,過 去 の 修 身 教 育,誤 っ
た 公 民 教 育 へ の 反 省 の 下 に,「 新 教 育 」下 の 新 しい 公 民 教 育 の 在 り方 を模 索 し,一 応 戦 後 教
育 全 般 の 方 向 を 暗 示 した もの と して 評 価 し て よい で あ ろ う。 た と え ぼ,特 に 第 二 号 答 申の
思 考 は,や が て 刊 行 され る 「新 教 育 指 針 」 の 根底 を 支 え る 思 想 に継 承 され て い る か の ふ し
も見 られ,そ の 意 味 で 公 民 教 育 は 「新 教 育 の 根 幹 」 とす ら い わ れ て い る し,ま た 第 一 号 答
申で は,あ た か も修 身 授 業 停 止 措 置 の 指 令(昭 和20.12.31)を 予 見 す るか の ご と く,従 来 の
修 身 新育 の 批 判 の 上 に立 っ て 公 民 教 育 とそ れ との 一 体 化 を 奨 め て い る。 し か し,な お 「 教
育 勅 語 の 趣 旨 」 を新 し い公 民 教 育 の 根底 に 置 こ う とす る第 二 号 答 申 の 思 考 法 は,せ っ か く
戦 後 日本 に お け る教育 政 策 の 推 移(熊 谷)
7の 刷 新 の 方 向 と矛 盾 す る もの で は な い か と惜 し まれ て な ら な い 。
総 じて この 時 期(敗 戦 か ら こ の 年 の 暮)に お け る 日本 政 府,文 部 省 の 執 っ た措 置 は戦 後 の 応 急措 置 とで もい うべ き類 の もの で あ っ て,基 本 的 な 教 育 改 革 に 関 わ る政 策 の樹 立 とい う よ うな もの は 殆 ど み られ な い 。 若 干 そ れ に 近 い とい い 得 る もの は,僅 か に女 子 教育,公 民 教 育 に関 す る もの く らい で あ ろ う。 それ は,歴 史 的 に わ が 国 に 敗 戦 経 験 が 絶 無 で あ っ た
こ と,し た が っ て 過 去 に 信 奉 し て きた 価 値 観 の 急 転 落 に 基 づ く心 理 的 動 揺 とそ れ に よ る放 心 状 態 の 生 起 一 そ れ は 同 時 に 過 去 へ の 批 判 や 反 省 を 欠 落 させ る一 な どに よ っ た もの と い え る か も知 れ な い。 しか し,も っ と正確 に は,ア メ リカ 国 務 省 内 親 日派 の 主 張 を通 して の 占 領 政 策 へ の 「 甘 え」,そ れ は醗 せ ば宮 廷 的 狡 知 で もあ るが,そ れ が,根 底 に あ る 思想 的 ・ 政 治 的 機 構 の 温 存 を計 り,改 革 を遅 延 させ た とい え る の で は な い で あ ろ うか 。 そ れ は,ポ ッ ダ ム 宣 言 受 諾 の 際 の 日本 政 府 の 「 逡 巡 」 か ら 「 国 体 護 持 」,「教育 勅 語 奉 戴 」 思想 に まで み られ た 姿 勢 で あ る。 こ う した 姿 勢 を徹 底 的 に 打 破 し,最 終 的諦 観 に ま で 至 ら しめ る に は, や は り占 領 軍 の峻 厳 且 つ 強 力 な 「 権 力 」 の介 入 と,さ ら に は 思 想 転 換 の た め の 「人 間 天 皇 宣 言」 を また ね ば な らな か った とい え よ う。
2 占領 軍 の政 策 志 向
GHQの 上 部 機 関 は,軍 事 的 に は ア メ リカ 統 合 参 謀 本 部 で あ り,占 領 政 策 に つ い て は 実 質 的 に はア メ リカ 国 務 省 の 指 揮 下 に 置 か れ て い た 。(17)し た が っ て,占 領 軍 の 教 育 管 理 政 策 は,実 質 的 に は ア メ リカ対 日 占領 政 策 の 文 豚 に 連 っ て い た とい え る。 しか し,占 領 軍 とい え ど も第 二 次 世 界 大 戦 が 帝 国 主 義 戦 争,反 フ ァ シ ズ ム 戦 争,民 族 解 放 戦 争 とい う性 格 を もっ て い た とい う認 識 か ら㈹,初 期 の 占 領 政 策 遂 行 に あ た って は ポ ツ ダ ム 宣 言 の 精 神 に拘 束 さ れ て い た レ,ま た そ れ の 要 求 す る政 策一 単 に 日本 の 武 装 解 除 に 止 ま らず,日 本 の政 治,経 済 な らび に社 会 体 制 全 般 の 「 非 軍 事 化 」と,さ ら に は再 軍 事 化 を永 久 に 阻 止 す る た め の 「 民 主 化 」 一 を執 らざ る を得 な か った 。 こ こ に お い て 「 非 軍 事 化 」 と 「 民 主 化 」 とは密 接 な表 裏 不 可 分 の 関係 に あ る もの と し て把 え られ,い わ ぼ後 者 は前 者 の 保 障 作 用 を果 す もの で も
あ っ た わ けで あ る。
以 上 の よ う な政 策 を具 体 的 に表 わ す 三 つ の 基 本 文 書 が あ る。 そ れ らは す べ て ア メ リカ政 府 か ら発 せ られ た もの で あ るが,こ こで は,と りあ え ず 占領 政 策 全 般 を規 制 した もの 二 つ を対 象 と し,他 の もの は後 で 触 れ る こ とに した い 。 そ の 一 つ は 「 降 伏 後 に お け る米 国 の 初 期 の対 日方 針 」(国 務 ・ 陸 ・海三省調整委員会文書rSWNCC‑150/4/A」 昭和20.9.22発 表)で あ り,他 は 「日本 占領 及 び管 理 の た め の 連 合 軍 最 高 司 令 官 に対 す る降 伏 後 に お け る初 期 の 基 本 的 指令 」(昭和20.11.1)で あ る。
「 降伏 後 に お け る米 国 の 初 期 の対 日方 針 」(以 後 本 文 で は 「 初 期 の 対 日方 針 」 とい う) 本 文書 の 目的(略)
第一部 究 極の 目的
α)「 日本 国 ガ再 ビ米 国 ノ脅 威 トナ リ又 ハ 世 界 ノ平 和及 安 全 ノ脅 威 トナ ラザ ル コ トヲ確 実 ニ スル コ ト」
(ロ)「平 和的且 責任 アル政 府 ヲ究極 二於 テ樹 立 スル コ ト」 但 し,米 国 は 日本 に対 して,そ うす
るた めの強 制的 手段 は とらない。
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長崎大学教育 学部教育科学研究報告 第27号 目的達 成 の主 要 な手段
(イ)日 本 国の 主権 の範 囲(略)
(ロ)「日本 国ハ 完 全二 武装 解除 セ ラ レ且非 軍事 化 セ ラルベ シ,軍国 主義 者 ノ権 力 ト… …影 響 力 ハ… …一 掃 セ ラルベ シ」
の 「日本 国 国民 ハ個 人 ノ 自由二対 スル 欲 求並 二 基本 的人 権 …… ノ 自由 ノ尊 重 ヲ増 大 ス ル様 奨励 セ ラル ベ ク且民 主 主義 的及 代議 的組 織 ノ形 成 ヲ奨励 セ ラルベ シ」
(̲)平 和産 業 ・経 済 の 自力発 展の機 会賦 与(略) 第 二部 連合 軍 の権 限
1 軍事 占領 上記 目的達成 の 為 に本土 は軍 事 占領 せ られ,米 国任 命 の最 高司 令 官の 指揮 下 に入 る。しか し,「 連 合国 二意 見 ノ不一 致 ヲ生 ジタル場 合 …… ハ米 国 ノ政 策二 従 フモ ノ トス」
2 日本 国政 府 との 関係 天 皇 ・ 政府 の権 限 は,「 一 切 ノ権 力 ヲ有 スル最 高司 令 官 二従 属 ス ル モ ノ トス」 るが,間 接統 治 とす る。但 し 「 右 方 針ハ … …現 存 ノ政 治 形態 ヲ利 用 セ ン トス ル モ ノニ シテ之 ヲ支持 セ ン トス ルモ ノニ 非 ズ」
3 政 策 の周 知(略) 第 三部 政 治
1 武 装 解除 及 非軍 事化 これ は軍 事 占領 の主 要任 務 であ る。陸 ・海 ・空軍,秘 密 警 察組 織,民 間航 空 の保 有 を禁ず る。 超 国家 主義 的及 軍 由主 義 的組織 の 指導 者,推 進 者 は拘 禁,留 置せ られ る。
2 戦 争 犯罪 人(略)
3 個 人 の 自 由及 び民主 主義 過程 へ の翼 求の 奨励 宗教 的 信仰,集 会及 び 討論 の 自由保障, 差別 を規定 せ る法律 ・命令 ・規 則 の廃止,政 治的 理 由 に よる不法監 禁 者 の釈放 。
第 四部 経済
1 経 済 上の 非 軍事 化 日本 軍事 力 の現 存 す る経済 的基 礎,施 設 の 維持,生 産 の一 切 は破 壊 され,ま た 軍事 に連 な る産業,研 究,教 育 のす べ て は除 去 され る。 平和 的 産業 だ け を認 可 す る。
2 民 主 主義 勢 力の助 長 民 主 的 に組 織 された 労働,産 業,農 業組 織 の発 展 は奨励 す る。
右 の 目的達 成 の為 の政 策
←f)将 来 の経 済活 動 を平和 目的 に向 って指 導 しない者 は,重 要 な る地 位 に留 め又 は選 任 しな い こ と。
(ロ)産 業上 及 び金 融上 の大 コ ンビネー シ ョンの解 体。
3 平 和 的経 済 活動 の再 開(略)
4 賠 償 及 び返還 在外 資産 の 引渡 し,占 領 軍 補給 の た め不必 要物 資,設 備 ・施 設 の 引渡 し。 掠 奪財 産 の完 全 な る返 還。
5〜9は,「 財政,貨 幣及 び銀 行政 策」,「国際 通商 及 び金 融 関係」,「在外 日本 国 資産 」,「日本 国 内 にお ける外 国企 業 に対 す る機 会 均 等」,「皇 室財 産」 なので 省略 す る。㈹
「日本 占領 及 び 管 理 の た め の 連 合 軍 最 高 司 令 官 に対 す る降 伏 後 に お け る初 期 の 基 本 的 指 令 」(以 下 「 基 本 的 指 令 」 とい う)
1 この 指令 の 目的及 び範囲(略) 第 一部 一 般 及 び政 治
2 軍事 的権 限 の基 礎及 び範 囲 権 限 の基 礎 は降伏 文書 及 び ポ ツダム 宣言 に あ り,こ れ に
従 っ て貴 官 は,「適 当 と考 え るい かな る措 置 を も執 る権 力 を有 す る。 」 しか し 「 直 接 軍政 を樹
立 す る こ とな く… …天 皇又 は 日本 政府 を通 じて貴 官 の権 力 を行使 す る。 」そ の場合,次 の原則
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戦 後 日本 に お け る教育 政 策 の 推 移(熊 谷)
が その指 針 とな る。
3 日本の 軍事 占領 の基 本 的 目的 「 連合 国 の終 局の 目的は,日 本 が再 び世 界 の平和 及 び安 全 に対す る脅 威 とな らない ための で き るだ け大 きい保証 を与 え,又 日本 が終 局 的 には国 際社 会 に… …参加 す るこ とを 日本 に許 す よ うな諸 条件 を育 成す るにあ る。 」その ため に,次 の原則 を考慮 され た い。
「 ㈲ ・カイ ロ宣言 を履 行 す る こと。
・あ らゆ る形 態の 軍 国主 義及 び超 国家 主義 の排 除。
・日本 を非武 装化 し,非 軍事 化 し,日 本の 戦争遂 行 能 力 を引 き続 き抑 制 す る こ と。
・政 治上,経 済上,社 会 上の 諸制 度 にお け る民 主 主義 的傾 向及 び過 程 を強化 す る こ と。
・日本 にお け る 自由主義 的政 治傾 向 を奨励 し且 つ 支持 す る こ と」
ただ し,日 本 国民 の意 思 に よって支 持 され ない政 治 形態 を強 制 して はな らない。
4 日本 に対 す る軍 事的 権 限の確 立 貴 官の 管理 を容 易 な ら しめ るた め,必 要 な府 県首都 を占領 し,「必 要 に応 じて いか な る地域 にお い て も臨 時 に軍 隊 を使用 す る こ とがで きる。」 し か し,そ れ 以外 は 日本 の天皇 及 び政 府 を通 じて権 力 を行使 す る。「 貴 官 は,統 合参謀 本部 との 事前 の協 議,… … 通達 な しに天皇 を排 除 した り又 は天皇 を排 除 しよ う とい ういか な る措 置 を も執 らない。 」
「 貴 官 は,適 当 な方 法 に よって 日本 国民 の全階 層 に対 して,彼 らの敗 戦 の事 実… …彼 らの 苦 痛 と敗北 は 日本 の不法 且 つ無 責任 な侵 略 に よって もた らされた もの で あ る こと,… … 彼 らが 他 国民 の権利 と 日本 の国 際義 務 とを尊 重 す る非 軍 国主 義的,民 主的 日本 を発達 させ る よ うに 期待 されて い る ことを知 らせ な けれ ばな らな い。 」
「 貴 官 は,天 皇 に対 し,ポ ツダム宣 言 の 目的達 成 を阻害 す るか,(貴 官の)指 令 に抵 触 す る す べて の法律,命 令,規 則 を廃止 す る よ う要求 す る。 特 に政治 的及 び市 民 的 自由の 制限 と, 人 種,国 籍,信 仰 又 は政 見 に よる差別 とを設 け… … たすべ て の法律,命 令,規 則 の廃 止 を確 実 にす る。 」
5 政治 的及 び行 政 的改組 「 好戦 的 国家主 義及 び侵 略 の積 極 的な推 進 者,超 国家 主義 的結 社,暴 力 的結社 又 は愛 国的秘 密 結社,そ の他 出先 機 関又 は有 力な 会員 で あっ た者,… … 軍事 占領 目的 に敵 意 を示 した 者 は」 公職,公 企 業,私 企 業 の責 任 あ る地位 を保 持 す る ことはで き ない。 「 上 記 に よ り受 け容れ が たい裁 判 官」 は排 除 され る。 「 貴 官 の使 命 の 目的 と一 致 しな い 判 決 を拒否 す る。 」
「 貴 官 は,大 日本 政治 会,大 政 翼賛 会,こ れ らの参 加 団体及 び 出先機 関 又 は(前記 の 好 ま し くな い)団 体 の解散 を確 実 にす る。 」
6 非軍 事化 憲 兵 隊,民 間義勇 隊及 び 準軍事 組織 の武 装 解除 。軍 事 参議 院,元 帥 府,大 本営,参 謀 本部,軍 令部,陸 ・海 の軍事 組織 及 び準 軍事組 織 な らび に在郷 軍 人会 その 他の 団 体 の恒 久 的解体 。 陸 ・海 ・空の 軍事 的訓 練 の禁止 。 すべ ての 軍 用器機 の押 収 と破壊 。
7 日本人 公職 者の逮 捕 及 び抑 留(略)
8 捕虜,連 合 国人,中 立国 人,そ の他 の者(略)
9 政 治活 動 「 軍 国主 義的 及 び超 国 家主 義 的 イ デオ ロギー と宣 伝 との いか な る形 式 にお け る弘布 も禁止 され且 つ完 全 に抑圧 され る。 」 「目的達成 の た め必要 な最 低 限度 の統制 及 び検 閲 を…… 設 け る。 」思想 の 自由は育 成 され る。民 主主 義 的政党 の 結成 及 び活動 は奨励 され,代 議 的地方 政府 の 自由 な選挙 は早 い時期 に行 う。
労働,産 業,農 業 にお け る民 主 主義 団体 の育 成。 信 教の 自由の保 障。 意 見,言 論,出 版 及 び集 会の 自由 を確 実 にす る。
10 教育,美 術 及 び文書(教 育 にの み触 れ て,他 は略)
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長崎大学教育学部教育 科学研究報告 第27号
・教育 機 関 の速 か な再 開 を希 望 す る。
・国 家主 義 及 び侵 略 推進 教師 の罷 免。
・軍 事 的教育,教 練 の禁 止。
・す べ ての 教科 は上 記3一 ㈲ の観 念 を含 む こ と。
第二 部,独 三部 は,「経 済 及び 民生 物資 」,「財 政金 融」 で あ るので 省略 す る。(20)
可 成 り長 文 の もの を,し か も重 複 を も顧 み ず 長 々 と紹 介 した の は,後 述 す る 「 四 大 指 令 」 を 理 解 す るた め に も占 領 初 期 に お け る ア メ リカ の 対 日基 本 方 針 を 明 確 に 把 握 して い た だ き た か っ た か らで あ る。 この 二 つ の 文 書 の 関 係 は,前 者 が 基 本 的 な もの で あ り,後 者 は そ れ を一 層 具 体 化 した もの だ とい う こ とが で き る。 換 言 す れ ば,1945(昭 和20)年6月 時 点(ア メ リカ政 府 が前 者 の策 定 に本格 的 に入 った の は45年,1月 で あ るが,そ の一 応 の 完成 をみ た の は45 年6月11日 で あ る。 しか し,そ の後 ポツ ダム会 議 で若干 の修 正 を行い,最 終 的 には45年8月31日 に 完成 した。 大統 領承 認 が9月6日 で,正 式発 表 は9月22日 で あ った(21))に お い て ソ連 参 戦 を 予 見 して い た ア メ リ カが,そ の 独 自の 政 策 を 世 界 に 閾 明 す る こ とに よ っ て 日本 占領 の 主 導権 を 有 利 に確 保 し よ う と して 完 成 を 急 い だ もの が 前 者 で あ り,そ の 主 導 権 の 確 定 後,改 め て そ の 趣 旨 を具 体 化 し て 最 高 司 令 官 に指 令 した の が 後 者 で あ る。 した が っ て,そ の 基 本 姿 勢 は 両 者 と も に一 致 し,そ の 間 に齪 酷 は み られ な い 。 そ れ は,た だ 天 皇 制 存 続 とい う一 点 だ け を除 い て,ま さ に徹 底 した 「 武 装 解 除→ 非 軍 事 化→ 軍 国 主 義 ・国 家 主 義 イ デ オ ロ ギ ー の 排 除 → 民 主 化 」 と い う行 動 パ タ ー ンの 強 圧 で あ る。 し か し,前 節 で み た よ う に,優 柔 不 断 と い う よ りは む し ろ サ ボ ター ジ ュ を極 め 込 ん で い た とみ られ る この 時 期 に お け る 日本 政 府 に 対 して は,こ の 姿 勢 は必 要 で あ り,ま た 効 果 的 で あ っ た か も しれ な い 。
と こ ろで,さ き の 行 動 パ タ ー ン は,ま た 「権 力 」 と 「 教 育 」 の パ タ ー ン に 換 置 す る こ と が で き る。 権 力 と直 接 的 な 力 に よ る 「 非 軍 事 化 」 と民 政 と教 育 に よ る 「 民 主 化 」 で あ る。
つ ま り,占 領 の 主 目的 は既 存 の 封 建 的 遺 制 を破 壊 し,過 去 の 罪 過 を贈 わ し め る点 に あ っ た だ け で は な く,永 久 に民 主 的 な 国民 を創 造 す る こ とに あ り,そ の こ と に よ っ て は じ め て世 界 平 和 は あ り得 る とみ た ア メ リカ に と っ て,そ の よ う な 国 民 創 造 の 要 の 位 置 を 占 め る もの と して,教 育 を考 えて い た と し て もお か し くは な い で あ ろ う。 こ う して,占 領 軍 は,政 治 的 ・ 経 済 的 ・ 社 会 的 諸 制 度 の 改 革 を 日本 国 民 の 自発 的 意 思 の も とに 達 成 す る 不 可 欠 の 基 盤 と して 教 育 を と らえ て い た と い え る 。 こ の よ う な 広 い 視 野 に 立 つ 「民 主 化 」 政 策 で あ っ た か ら こ そ,こ の 二 つ の 基 本 文 書 の 中 に も,す で に教 育 に 関 わ る見 解 が 散 見 さ れ る。 これ らの 諸 見 解 を整 理 す る と,す で に この 時 点 で,後 の 「四 大 指 令 」 の 内 容 が 予 見 で き る よ う に 思
わ れ る。 以 下 に,そ れ を示 し て み よ う。
1 教 育 全 般 に つ い て
「教 育 機 関 は で き る 限 り速 や か に 再 開 さ れ る」(「基本的指令」10‑¢轍 育) 2 第一 指 令(日 本 教 育 制 度 管 理 政 策)に 関 す る もの
「理 論 上 及 実 践 上 ノ軍 国 主 義 及 超 国 家 主 義(準 軍 事 訓 練 ヲ含 ム)ハ 教育 制 度 ヨ リ除 去 セ ラ ル ベ シ 」(「 初期の対 日方針」第三部一1)
「 個 人 ノ 自 由 二 対 ス ル 欲 求 並 二 基 本 的人 権 特 二 信 教,集 会,言 論 及 出 版 ノ 自 由 ノ尊 重 ヲ
増 大 ス ル 様 奨 励 セ ラ ルベ ク且 民 主 主 義 的 及 代 議 的 組 織 ノ形 成 ヲ 奨 励 セ ラ ル ベ シ 」(「初
期 の対 日方針」第一部 主要手段レ9)
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戦 後 日本 にお け る教 育 政 策 の推 移(熊 谷)
「 貴 官 は,貴 官 が 受 け入 れ られ る教 科 が す べ て の 学 校 で 採 用 され,そ の う ち に は,上 記 3一 ㈲ に示 され て い る観 念 を 含 む こ と を確 保 す る 」(「 基本的指令」10一㈲教育)
(註,「 上記3一 ㈲」 とは,「 ・カイ ロ宣言 を履 行す るこ と」 以下 五項 目に亙 って 「日本の 軍事 占領 の基本 的 目的」 と して 示 した ものの 中 に記載 され て い る。)
「日本 国 国 民 ハ 米 国 及 他 ノ民 主 主 義 国 家 ノ歴 史,制 度,文 化 及 其 ノ 成 果 ヲ知 ル 機 会 ヲ与 ヘ ラ レ且 此 等 ヲ知 ル コ トヲ奨 励 セ ラ ル ベ シ」(「初期の対 日方針」第三部 一3)
「す べ て の学 校 に お け る 日本 の 軍 事 的 及 び 準 軍 事 的 教 育 及 び 教 練 は禁 止 され る 」(「 基本 的指令」10一㈲教育)
「戦 争 遂 行 力 ノ増 進 二 指 向 セ ラ レ タル 専 門 的 研 究 及 教育 ノ禁 止 」(r初期の対 日方針」 第四部 一1)
3 第 二 指 令(教 職 員 の 調 査 ・除 外)に 関 す る もの
「好 戦 的 国 家 主 義 及 び 侵 略 の 積 極 的 推 進 者 で あ っ た す べ て の 教 師 及 び軍 事 的 占 領 目 的 に積 極 的 に反 対 し続 け て い るす べ て の 教 師 は,受 け容 れ う る有 資 格 後 継 者 と と り換 え る」(「基本的指令」10‑@轍 育) 「職 業 的 旧 陸 海 軍 将 校 及 下 士 官 並 二 他 ノ ー 切 ノ軍 国 主 義 及 超 国 家 主 義 ノ推 進 者 ハ 監 督 的 及 教 育 的 地位 ヨ リ排 除 セ ラ ル ベ シ」(「 初期の対 日方針」
第三部一1)
4 第 三 指 令(神 社 ・神 道 の 国 家 よ りの分 離)に 関 す る もの
「 超 国 家 主 義 的 及 軍 国 主 義 的 組 織 及 運 動 ハ 宗 教 ノ 外 被 ノ 蔭 二 隠 ル ル ヲ 得 ザ ル 旨 明 示 セ ラ ル ベ シ」(「初期 の対 日方針」第三部一3)
5 第 四 指 令(修 身,日 本 歴 史 及 び 地 理 停 止)に 関 す る もの
これ に関 して は直 接 に 言 及 した 個 所 は 見 当 ら な い が,上 記 の 「 初 期 の 対 日方 針」 第 ;部 一1の 理 論 上 実 践 上 の 軍 国 主 義 ・国 家 主 義 の 除 去 指 示(第 一指令),「 基 本 的指 令 」 10一 ㈲ の 教 科 に 関 す る 指 令(第 一指令),同 じ く軍 事 的 ・準 軍 事 的 教 育 の 禁 止 指 令(第 一 指令),さ ら に 「 初 期 の 対 日方 針 」 第 三 部 一3の 宗 教 に 関 す る 明 示 指 令(第 三指令)な ど を綜 合 的 に勘 案 す る と,上 記 三 教 科 が 超 国 家 主 義 的 及 び 軍 国 主 義 的 イ デ オ ロ ギ ー 弘 布 に 有 力 に関 わ った 好 ま し くな い 教 科 と して 浮 び 上 っ て くる の は 自然 で あ ろ う。
こ の よ う に観 て くる と,こ の 二 つ の 基 本 文 書 に は す で に 「 四 大 指 令 」 の趣 意 が 含 まれ て い た と考 え る こ と もあ なが ち 無 理 で は な い。 こ う した 教 育 に 関 す る基 本 的 観 念 の 上 に 立 っ て,つ ぎ に四 大 指令 を基 調 と した 「 教 育 の 自 由主 義 化 」(解 放)と,そ れ に続 く 「 教 育 の 民 主 主 義 化 」(建 設)の 過 程,つ ま りア メ リカ教 育 使 節 団 受 入 れ とい う過 程 が 占 領 軍 の政 策 日 程 に の ぼ っ て くる の で あ る。
さ て,敗 戦 の 年9月 か らそ の 暮 に か け て,文 部 省 で は 未 だ 決 定 的 な 施 策 を打 出せ な い ま ま で い る とき,GHQか らは 一 般 に 「教 育 に 関 す る四 大 指令 」 と呼 ばれ て い る もの が つ ぎ っ ぎ に 出 され て く る。 これ らの 指 令 は,直 接 的 に は 前 節 で述 べ た 「日本 民 主 化 に 関 す るマ 元 帥 の五 大 改 革 指 令 」 が 強 い 推 進 力 とな っ て 出 さ れ た もの と思 わ れ るが,も う一 つ,前 記 二 つ の基 本 文 書 以 上 に四 大 指 令 の 内容 に決 定 的 な 影 響 を与 え た で あ ろ う と思 わ れ る 第 三 の 文 書 が あ る 。 それ は,俗 に 「PWC‑289」 又 は 「CAC‑238」 と呼 ば れ る文 書 で あ る。
この 文 書 は,1944(昭 和19)年1月 に 国 務 省 の機 構 改 革 に よ っ て 設 置 さ れ た 戦 後 計 画 委 員
会(Post‑War Programs Committee)が,日 本 占 領 後 軍 政 を布 い た 際 の 日本 教 育 改 革 推
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長崎大学教育学部教育科学研究報告 第27号
進 計 画 書 と して 同 年7月15日 に 完 成 させ た 文 書 で あ るが,日 本 降 伏 が 予 想 外 に 早 か っ た た め,一 度 棚 上 げ に さ れ て い た もの で あ る。(22)し か し,そ の 後45(昭 和20)年9月 以 降 再 びC
IEに よ っ て 取 り上 げ られ,「 四 大 指 令 」 公 布 の 際 の 根 本 資 料 と な っ た もの で あ ろ う とい わ れ て い る。(23)し た が っ て,そ の 内容 は それ な りに極 め て 重 要 な も の を 含 ん で い る。
本 文 書 は,日 本 占 領 後 の教 育 改 革 の 基 本 理念 を 「国 際 主 義,平 和 主 義,民 主 主 義 」 の三 点 に お き,こ の 理 念 に 基 い て 日本 が 将 来 国 際 協 調 政 策 を採 り得 る よ う に な る 心 理 的 基 盤 を
「 教 育 」 に よ っ て構 築 し よ う と し,そ の 教 育 改 革 の 具 体 的 方 向 を 「民 主 主 義 教 育 の確 立 」 にお い て い る 。 そ して,改 革 の 具 体 的 内 容 と して は,、
1 教 育 内 容 の 民 主 化(軍 事 教練 の 禁止,修 身 ・日本歴 史 の廃 止,全 教科 か らの 軍 国主 義 ・ 超 国家 主義 的 内容 の除 去,社 会 科学 の 重視)
2 文 部 省 の 改 革(文 部 省機 構 のサ ー ビス機 関 としての 改組,教 学局 の廃 止,全 局 員 の追 放) 3 国 家 主 義 的 軍 国 主 義 的 教 職 員 の 追 放
4 師 範 学 校 教 育 制 度 の 改 革(教 育 制 度 ・ 教 育 内容 にお い て軍 国主義 的 に画一 化 して いた従 来 の師 範学 校 を大 改 革 し,大 学卒 業者 を教員 として採 用 す る)
5 学 校 行 事 の 改 革(国 粋 主義 的学校 行 事 の廃止,御 真影 ・ 教育勅 語 の除 去,祝 祭 日登 校禁 止) な どが 盛 られ て い る 。(24)
わ れ わ れ は こ こ で,こ の 文 書 が 戦 争 終 結 の一 年 前 に 既 に 完 成 し て い た こ と,し か も前 述 の よ うな 的確 な 内容 を決 定 して い た とい う事 実 に 注 目 し な くて は な らな い。 恐 ら くは これ を承 け た で あ ろ う と思 わ れ る 「 四 大 指 令 」 は,決 して 偶 然 に 出て きた も の で は な い の で あ る。 つ ま り,先 の 「初 期 の 対 日方 針 」(SWNCC文 書)や この 文 書 な ど を基 礎 と して,当 然 出 さ るべ く して 出 され た もの とい わ な くて は な ら な い の で あ る 。、こ う し て,「 四 大 指 令 」 は,総 じ て 日本 の 教 育 を封 建 的 な 天 皇 制 下 の超 国 家 主 義 ・軍 国 主 義 の 呪 縛 か ら解 放 し,し か も永 久 に 両 者 の 連 結 を 断 ち 切 る 意 味 を も って い た の で,俗 に禁 止 的 措 置 と呼 ば れ て い る が,実 は 「自 由化 措 置 」 とい っ た 方 が よ り適 切 か も しれ な い 。 そ れ らの 正 式 名 称,発 表 時 期 は つ ぎ の 通 りで あ る。
第一 「日本 教 育 制 度 二 対 ス ル 管 理 改 策 二 関 ス ル 件 」(昭和20.10.22) 第 二 「 教 員 及 教 育 関 係 官 ノ 調 査,除 外,認 可 二 関 ス ル 件 」(昭 和20.10.30)
第 三 「国 家 神 道,神 社 神 道 二 対 ス ル 政 府 ノ 保 証,支 援,保 全,監 督 並 二 弘 布 ノ廃 止 二 関 ス ル件 」(昭 和20.12.15)
第 四 「 修 身,日 本 歴 史 及 ビ地 理 停 止 二 関 ス ル 件 」(昭 和20.12.31)
第 一 指 令 は,「 管 理 政 策 」とい わ れ る よ う に,四 指 令 の 中 で は 内 容 的 に 最 も広 範 囲 の もの で あ っ て,そ れ に は五 つ の 内容 が 含 まれ て い る。(25)第1は,教 育 内 容 に 関 す る もの で,つ ぎ の 基 準 に よ っ て 教 育 内 容 は 「 検 討,改 訂,管 理 」 さ れ る とい う もの で あ る。
「(1)軍 国主 義 的及 ビ極端 ナル 国家 主義 的 イデオ ロギー ノ普 及 ヲ禁止 ス ル コ ト。 軍事 教育 ノ学 科 及 ビ教練 ハ 凡 テ廃止 スル コ ト。
(2)議 会政 治,国 際平 和,個 人 ノ権 威 ノ 思想及 集会 言論,信 教 ノ自 由ノ如 キ基 本 的人 権 ノ思 想 二合 致 ス ル諸概 念 ノ教 授 及 ビ実践 ノ確 立 ヲ奨励 ス ル コ ト。 」
第2は,教 育 関 係 者 をつ ぎ の 方 針 に よ り 「 審 査 し,結 果 に従 い 留 任,退 職,復 職,任 命,
再 教 育 」 す る とい う もの で あ る。
戦後 日本 にお ける教 育 政 策 の 推移(熊 谷)
13「(1)職 業軍 人乃 至軍 国 主義,極 端 ナル 国家 主義 ノ積極 的 ナル鼓 吹 者及 ビ占領政 策 二対 シテ積 極 的 二反対 スル人 々ハ 罷免 セ ラルベ キ コ ト。
(2)自 由主 義 的或ハ 反 軍的 言論 乃至 行動 ノ為 解職 又ハ 休職 トナ リ或ハ辞 職 ヲ強要 セ ラレ タル 教師 及 ビ教育 関係 官 公吏 ハ其 ノ資格 ヲ直 二復 活 …優 先 的二之 ヲ復 職 セ シム ル コ ト。
(3)人 格,国 籍,信 教,政 見又 ハ社 会 的地位 ヲ理 由 トスル学 生,教 師,教 育 関係公 吏 二対 ス ル差 別待遇 ヲ禁止 ス ル。 …… 不公 平ハ 直 チニ是 正 セ ラルベ キ コ ト。
(4)学 生,教 師,教 育 関係 公吏 ハ教授 内容 ヲ批判 的理 智 的二評 価 ス ル コ トヲ奨励 セ ラルベ ク, マ タ政 治的,公 民 的,宗 教 的 自由 ヲ含 ム 各般 ノ事項 ノ 自由討議 ヲ許 容 セ ラルベ キ コ ト。
(5)… 連合 軍 占領 ノ 目的及 ビ政 策,議 会 政 治 ノ理 論及 実践 二就 テ知 ラ シメ ラルベ キ コ ト。 マ タ軍 国 主義 的指 導者,ソ ノ積 極 的協力 者‑‑1ー 二(戦 争 追従)者 ノ演 ジ タル役 割 ヲ知 ラ シメ ラ ルベ キ コ ト。 」
第3は,教 育 過 程 に於 け る技 術 的 内 容 が つ ぎ の 政 策 に よっ て 「 検 討,改 訂,管 理 」 され る こ とで あ る。
「(1)一 時 的二其 ノ使 用 ヲ許 サ レテ イル現 行 ノ教課 目,教 科 書,教 師 用参考 書 及教材 ハ 出来 ル 限 リ速 カニ検 討 セ ラルベ キ デア リ,軍 国 主義 的乃至 極端 ナ ル 国家 主義 的 イデ オ ロギー ヲ助 長 スル 目的 ヲ以 テ作 成 セ ラレ タル個所 ハ 削除 セ ラルベ キ コ ト。
② 教育 アル平 和 的且 ツ責任 ヲ重 ンズ ル公民 ノ養 成 ヲ目指 ス新 シキ教 課 目,教 科 書,教 師用 参考 書及 教材 ハ 出来 得 ル限 リ速 カニ準 備 セ ラル現 行 ノモ ノ ト代 ヘ ラルベ キ コ ト。
(3)教 育施 設ハ 出 来得 ル 限 リ迅 速 二再建 セ ラルベ キ デ アル ガ…初 等教 育 及教 員養 成 ヲ優先 セ シメル コ ト。」
第4は,文 部 省 とGHQ該 当部 局 との 間 の 連 絡 機 関 を設 置 し,本 指 令 各 条項 につ い て の 実施 事 項 の説 明 報 告 を命 じた もの で あ る。 こ の機 関 は,当 初 は二 者 の 連 絡 機 関 とい う名 の 占 領 政 策 指 令 の 窓 口 で あ っ た が,後 に はGHQ(CIE)・ 文 部 省 ・後 述 す る 日本 側 教育 家 委 員 会(後 に教育刷新委員会 となる)の 「 三 者 連 絡 委 員 会 」 に まで 発 展 し,GHQの 教 育 政 策 指 導 の 重 要 経 路 とな る の で あ る。(26)第5は,こ の 指 令 に対 して は政 府 職 員 だ けで な く公 私 立 学 校 教 職 員 す べ て に 「 其 ノ精 神 ヲ遵 奉 ス ル 個 人 的 責 任 」 が あ る こ と を 要 求 した もの で あ る。
第 二 指 令 は,第 一 指 令 の 「 一 のB」 を承 け て そ れ を更 に具 体 化 し,「 日本 ノ教 育 機 構 中 ヨ リ… … 軍 国 主 義 的,極 端 ナ ル 国 家 主 義 的 諸 影 響 ヲ梯 拭 ス ル 為,而 シ テ マ タ(軍 隊 関係 者) ヲ雇 傭 スル コ トニ 依 テ 右 思 想 ノ影 響 継 続 ノ可 能 性 ヲ防 止 ス ル 為 二 」 右 思 想 の 所 有 者 及 び 占 領 政 策 に反 対 す る者 を 「 解 職 シ」,「職 ニ モ就 カ シ メ ザ ル コ ト」,そ して,そ の た め の審 査 機 関 の 設 置 な らび に そ の詳 細 な事 務 処 理 手 続 を命 じた もの で あ る。(27)
第 三 指 令 は,神 道 及 び 神 社 を国 家 か ら分 離 し,政 府 が これ を保 護,支 援 す る こ とを 禁 じ た もの で あ る。(28)そ れ は,こ れ まで の 神 道 が 軍 国 主 義 ・国 家 主 義 の 宣 伝 に 利 用 さ れ,国 民 を侵 略 戦 争 に誘 導 す る う え で大 き な役 割 を果 した と考 え られ た た め で あ る。 長 文 の この 指 令 は,教 育 を 直 接 に対 象 と した もの で は な い が,教 育 に 関 連 す る事 項 を あ げ れ ぼ,つ ぎの 通 りで あ る。
「18 ア ラユル公 ノ教 育 機 関ニ シテ ソ ノ主要 ナル機 能 ガ神 道 ノ調査 研 究及 ビ弘 布 ニア ルカ或 ハ 神官 ノ養 成ニ ア ルモ ノハ之 ヲ廃 止 シ ソノ物 的所 有 物ハ他 二 転 用ス ル コ ト。
(ト)神 道 ノ調査 研究 並 二弘 布 ヲ 目的 トスル或 ハ神 官 養成 ヲ目的 トス ル私 立 ノ教育 機 関ハ之 ヲ
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長崎大学教育学部教育科学研 究報告 第27号
認 メル(但 し,政 府 との 関係,支 援 を認 めず,ま た 上記 イ デオ ロギ ーの 宣伝,弘 布 は禁止 す る)
㈱ 全 面 的二或 ハ部 分 的二 公 ノ財源 二依 テ維 持 セ ラル ル如 何 ナル教育 機 関 二於 テ モ神道 ノ教 義 ノ弘布 ハ ソノ方法様 式 ヲ問ハ ズ禁止 セ ラルベ キ コ ト。
(リ)『国体 の本 義』 『 臣 民の 道 』乃至 同 種類 ノ官 発 行 ノ書籍,論 評,… 神 道 二 関 スル訓令 等 ノ 領布 ハ之 ヲ禁 止 ス ル。
㈲ 全 面 的乃至 部 分 的二公 ノ財源 二依 テ維 持 セ ラル ル役所,学 校,… 建造 物 中二神 棚 ソノ他 国家 神 道 ノ物 的象徴 トナル凡 テ ノモ ノ ヲ設 置 スル コ トヲ禁止 スル。
2(ロ)本 指令 ノ各条項 ハ 同 ジ効 力 ヲ以 テ神道 二 関連 ス ルア ラ スル祭 式,慣 例,儀 式,礼 式,信 仰,教 へ,神 話,伝 説,哲 学,神 社,物 的 象徴 二適 用 サ ルルモ ノデア ル。 」
以 上 の 指 令 は,学 校 そ の 他 公 的 機 関 か ら神 道 に 関係 あ る もの を徹 底 的 に排 除 す る と と もに, 神 道 に 関 す る教 育 を厳 禁 した もの で あ る。 な お,こ の 指 令 で 注 目 す べ き点 は,「 軍 国 主 義 的 乃 至 過 激 ナ ル 国 家 主 義 的 イ デ オ ロ ギ ー 」 の概 念 規 定 が な さ れ て い る点 で あ る。
「(それ は)日 本 ノ支配 ヲ以 下二 掲 グル理 由 ノモ トニ他 国民 乃至 他民 族 二及 ボサ ン トスル 日本 ノ 使命 ヲ擁 護 シ或ハ 正 当化 スル教 へ,信 仰,理 論 ヲ包 含 ス ルモ ノ デアル。
(1)日 本 ノ天皇 ハ ソ ノ家 系,血 統或 ハ特 殊 ナル起 源 ノ故 二他 国 ノ元 首二優 ル トスル 主義 (2)日 本 ノ国民 ハ ソ ノ家 系,血 統或 ハ特 殊 ナル起 源 ノ故 二他 国民 二優 ル トスル 主義
(3)日 本 ノ諸 島ハ神 二起 源 ヲ発 ス ルガ故 二 或ハ 特殊 ナ ル起源 ヲ有 スル ガ故 二 他 国二 優 ル トス ル 主義
(4)ソ ノ他 日本 国民 ヲ欺 キ侵 略 戦争 へ馳 リ出サ シメ或 ハ他 国民 トノ論争 ノ解 決 ノ手 段 トシテ 武 力 ノ行 使 ヲ謳 歌セ シ メルニ 至 テ シメル ガ如 キ 主義 」
第 四 指 令 は,第 一 指令 及 び 第 三 指 令 に 基 づ い て,好 ま し くな い 教 科 の 性 格 と内 容 を 具 体 的 に 「 修 身,日 本 歴 史 及 ビ地 理 」 に 指 定 し,そ れ らの 教 科 の存 在 そ の もの を否 定 し た もの で あ る。(29)それ は,恐 ら く この 三 科 が 軍 国 主 義 ・超 国 家 主 義 教育 の 中 核 で あ り,そ の た め これ ら教 科 の 教 科 書,教 材 等 は削 除 程 度 で は 占 領 目 的 に合 致 しな い と判 断 した た め で あ ろ う。「… 観 念 ヲ或 ル 種 ノ 教 科 書 二 執 拗 二 織 込 ンデ 生 徒 二 課 シ カ カ ル 観 念 ヲ生 徒 ノ 頭 脳 二 植 込 マ ン ガ 為 メ ニ 教 育 ヲ利 用 セ ル ニ 鑑 ミ」 とい う件 は,そ の 趣 旨 を端 的 に 表 わ して い る。 同 時 に,こ の 指 令 に は三 つ の 「附則 」 が 付 帯 さ れ,指 令 本 文 中 で,そ れ ぞ れ の 附 則 の 趣 旨 に従
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