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寡 占とベ ンチ ャー企業

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寡 占とベ ンチ ャー企業

寡 占とベ ンチ ャー企業

*

山 下 隆 之

この論文は,近年のベ ンチヤー企業 ブームの意味を,寡占理論の視点か ら検討 した もの である。中小企業の存立条件 についての解明はい くつか試み られてきたが,本稿ではベ ン チャー企業の特性に焦点をあてて,その存立条件や競争過程を検討する。ベ ンチャー産業 はどのような市場構造であるのか。ベ ンチ ャー企業の登場が市場構造・ 産業構造 に与える 影響 はどのようなものか。 これ らの課題を考察する。

I.序

専門性が高 く革新力 に富んだ知識集約型の小企業の ことを「 ベ ンチ ャー・ ビジネス」(venture business:以VBと略す)も しくは「 ベ ンチ ャー企業」 とよぶD。 その主要な特性 として,企 家精神に富んだ経営者 による リスク 0テ イキ ングな活動,経営者や従業員の多 くが高学歴で専門的 知識を有 していること,大企業か らのス ピン・ オフ,ス ピン・ アウ トの形をとり,異業種や大学・

研究機関などとネ ットワークを形成 しているところが多いことなどがあげられる。

わが国では,長期にわたるバブル不況か らの脱出とこれか らの経済発展を担 うものとして,ベ

チ ャー・ ビジネスに対 す る期待 が高 ま って い る。 いわ ゆ る「 ベ ンチ ャー企業 ブーム」 は,

1970〜1973の 第一次 ブーム,1983〜1986の 第二次 ブームを経て,1994年頃か ら第二次 ブームを迎 えている。バ ブル崩壊後の高 コス ト低収益構造の定着で経営合理化を迫 られている大企業にとって

*本研究 は,平成 13年度静岡大学教育研究改革・ 改善プロジェク ト経費「 ベ ンチャー育成 と大学の地域貢献」

の支援を頂いて進めた。記 して感謝の意を表 したい。

1)ベ ンチャー・ ビジネスという用語 は,1970年代 に入 って登場 した概念で,中村秀一郎 と清成忠男 によ って 創 られた和製英語である。源流 は米国の研究開発集約的,ま たはデザイ ン開発集約的な小企業である。米国 では,ベンチャー・ キ ャピタル (venture capital)と いう語が しば しば用い られる。企業規模 は小 さいが,

アイデアや新 しい技術を相対的に豊富に持つ新規開業企業である。

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経済研究 7巻304号

かわ る経済成長 の原動力 と して,VB中小企業 の活躍 が期待 され,官民双方 で,VBの発展 が 日本 経済 の活性化 に必要 で あ るとの認識 が強 ま って い るので あ る。 ベ ンチ ャー・ ビジネスは中小企業 の ある特定分野の活動で はあるがこうした新 しいタイプの中小企業群 の群生 と発展をクローズ・ ア ッ プ した ことは日本経済・ 産業 の構造的変化 に関心 を払 うとい う点 で,基本 的 に有意義 であ るとい えよ う。

従来,技術革新 の成果 を経済成長 を繋 げ る上 で,一定 の役割 を果 た して きたのは,大企業であ る と考 え られて きた。「 大企業化」 とい う工業化・ 産業発展 の傾 向の中で,中小 企業 の存在 はいわば

「 非合理 的」 な存在 で あ り,景気変動 のバ ッフ ァーの競争 的周辺 で あ り,下請 け と しての川上 企業 で あ った。低生産性,劣悪労働条件,経営不安定性非近代性等 の問題 で特徴 づ け られて きたので あ る。 しか し,現実 の産業構造 の ダイナ ミックな発展 はつ ぎつ ぎと新 しい中小企業分野 を生 み出 し,

技術・ 経営・ 企業家精神 の新 陳代謝 を繰 り返 し,中小企業 の交替 を引 き起 こ して いる。産業 の交替 と企業 の交替が複雑 に交錯 しなが ら寡 占経済 は展開 している。 このよ うな動態的な変化 の視点か ら

「 ベ ンチ ャー・ ビジネス」 とい った企業群 の ライ フ・ サイ クルを寡 占経済 の中で位置付 け,再評価 す る ことが必要 である。

この論文 は次 の各節 によ って構成 されている。第 Ⅱ節で は,中小企業 の存在 と役割 に関す る議論 を追 い,今日のベ ンチ ャー企業 ブームの社会的意味付 けを探 る。第 Ⅲ節 は,ベンチ ャー企業 と寡 占 的市場構造 の関連性 につ いて,従来 の議論 を踏 まえなが ら考察す る。第Ⅳ節 で は,ベンチ ャー産業 の競争過程 をモデルを援用 して分析す る。

.経済 理論 にみ るベ ンチ ャー企業 の位 置付 け

まず,経済学における中小企業活動の意味付 けと企業家の役割の変遷を学説史的に追 うことで,

今 日のベ ンチャー企業の意義を理解す るための視点を得たい。

2‑1 伝統的見解

工業化を軸 に発展 してきた産業革命後の経済では,企業規模の拡大が求め られ続 けてきた。世界 で もっとも早 く産業革命を迎えたイギ リスでは,18世紀後半以降,それまでの手工業・ 家内工業 の多 くが,新たに出現 した工場制機械工業 によって淘汰・ 駆逐 されていった。 この動 きは,19世

紀 になって ドイツフランス,アメ リカなどに普及 し,19世紀後半 には日本 にも普及 してい く。

このような歴史的事実を背景 として,古典派経済学の経済理論では大規模経済の利益が説かれ,大

規模経済利益を持たない小企業 は大企業 との競争 に負 けて淘汰 され,やがて消滅 して行 くであろう という考え方が支配的となる。

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寡占とベンチャー企業

古典派経済学 の立場 は ミル (」S.Mill)に よ って明 らか に表現 されて い る。彼 は『 経済学原理 (第 7版)』 (1871年)において,次のよ うに書 いている。

さ きに大規模 な事業所一般 を小規模 なそれ と比べた ときに記 したよ うに,競争 が 自由な と きには,個人経営 と株式経営 とのいずれ もがあ る場合 に対 して もっとも適 当であるか とい うことは,競争 の結果 が これを明 らか にす るであろ う。 なぜか といえばもっとも効率が 高 くかつ もっとも経済的な方が結局 において他 よ り安 く販売 し,それ を打 ち破 ることがで きるか らであ るの。

言 い換 えれば,最適規模 での創業が市場 の力 によ りもた らされ,産業構造 は競争 によ り決定 され る のである。 またミル は,規模 に関す る収穫逓増 が,より少数 でかつ よ り大 きな企業へ と多 くの産 業 の集 中化 を導 くことは将来 の問題 にな ると認識 していた。

ミル に続 いてマル クス (K.Marx)は,『 資本論 』(1867年)の中で,独占資本主義段 階以前 か らの大資本 と小資本 の対立・ 矛盾 の問題 の存在 を指摘 し,大企業 による中小企業 の淘汰 を指摘 して いた。

資本主義 的 な協業 の形態 は,農民経営 と独立手工業経営 ― これが同職組合 的形態 を とると らぬ にかかわ りな く一に対立 して,展開 され る

マル クスの経済学 にあ って は大資本 の小資本支配 は不可避 であ り,増大 して い く集 中化 は資本主義 が社会主義 へ進化す る過程全体 の一部 と して予知 されていた。 しか し,彼が描 いていた労働者 の賃 金 の低下,そ して暴力的 な階級闘争 と革命 はロシア以外では実現 しなか った。

「 独 占資本 によ る中小企業 の支配・ 収奪形態 の分析」 とい うマル クス経済学 で強調 されて い る接 近法 はレーニ ン (V.Lenin)に よ って確立 され る。

われわれの 目の前 でお こなわれているのはもはや,小企業 と大企業 との,技術 的 にお く れた企業 と技術的 にすすんだ企業 との,競争戦 で はない。 われわれの 目の前 にあ るものは, 独 占に,その圧迫 に,その専横 に服従 しない ものの独 占者 による絞殺 であるの。

2)文 献 [12],邦 訳,第一分冊,268ページ。訳者 によるとこの節 は第6版 (1865)に おいて書 き加え られ た ものである。

3)文 献 [11],邦訳,第1巻,283ページ。

4)文 献 [16],邦訳,44ページ。

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経済研究7巻304号

ところで,大企業 との競争 に負 けて淘汰 されると考え られた小企業は,実際には産業革命後 も多 数残存 していた。大規模経済の法則があるにもかかわ らず,なぜ中小企業が存在するか という問題 に答える試みは,マーシャル (A.Marsha11)の『経済学原理 (第 2版)』 (1891年)の中に見出す ことができる。彼は,企業規模 には適正規模があ り,中小企業が大企業 によっては完全 には駆逐 さ れないことを指摘する。

これ らの経済の多 くが生産をお こなっている個々の事業体の規模に直接依存 しているとい う事実,さ らにはほとんどすべての業種 において大 きな事業体のたえまない勃興 と衰退 と があり,ある特定の時点をとると上昇局面 にある企業 もあり下降局面 にある企業 もあると いう事実…D

競争の不完全性 に関する関心 は,アダム・ ス ミスの競争や独占の概念にみるように,経済学の歴 史の中に早 くか ら見出されるものである。1930年 代 に入 って,産業 における集中化の増大が認識 されるようになると,市場の不完全性 に対す る理論的関心が増大 し,少数の大企業への経済力の集 中や市場支配力をめ ぐる実証的研究が数多 く登場 した。 この時代に入 ると,競争 と独 占の三分法に よる分析か ら,競争 と独 占との中間領域へ と研究の中心的課題が移 ってい く。寡 占問題の発生 は,

同時に産業構造 における中小企業への関心の発生であった。

ロビンソン (A.Robinson)は,1934年の論文の中で,中小企業残存理由の説明 として,生 学的説明,不完全競争的説明,適正規模 (optimum size)的説明,非経済合理的説明,の 4つ

説明をあげているの。業種の性格 によっては中小規模で最低の (平)生産費が実現 されるため,

適正規模論 は経済的合理性か ら中小企業の存立を説明することができる。 自由競争の基本的枠組み が維持 される産業においては,大企業 と独立中小企業の間の差を規模差の観点か ら把握することは 意味がある。

しか し,寡占あるいは独占の形成が進んでい くと,大企業 と中小企業を同質的に捉えることは難 しくなる。経済循環の在 り方が自由競争の場合 と異なって行 き,中小企業が しわよせを受 けるに し たが って,質的な中小企業問題が発生 して くる。

2次世界大戦後,技術革新 における大企業 の役割 に焦点があて られた。 シュンペーター (」.

A.Schumpeter)は ,『資本主義・ 社会主義・ 民主主義』(1942年)の中で次のように主張 した。

か くして,近代的産業条件のもとでは,完全競争 は不可能であるか ら―ない しはつねに不 5)文 [10],邦 訳,第4編,313ペー ジ。

6)文 献 [13]。

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寡占とベンチャー企業

可能であったか ら一大規模組織 または大規模支配単位 は,技術進歩―その進歩たるや,生

産装置に内在す る諸力によって,いやで も応で も休むわけにはいかないものである― と不 可分の必要悪 として認め られねばな らぬと議論するだけでは十分ではない。われわれは 進んで次のことを認めねばならぬ。すなわちこの戦略は,個々の場合や個々の時点をとっ てみれば,きわめて [生]制限的にみえるのであるが,それにもかかわ らず,否,相 程度 まではこれによって大規模組織が技術進歩とりわけ総生産量の長期的増大の もっと

も強力なエンジンとなってきたということこれである7)。

シュンペーターにとって,伝統的な競争理論 における企業間の価格競争 はそれほど重要ではなか っ た。重要なのは,生産物,生産過程,それに組織形態を一掃 してそれ らを新 しいものと置 き換える ような「創造的破壊」であった。独 占的な競争の下での高い利潤は,産業発展 における技術革新 に とって重要なものである。完全競争下 と同 じように大企業を行動 させようとする政府の試みは反生 産的である。

この説得力のある考えは,1950年代か ら 1960年 代 を通 して新 しい正統派的学説 になった。先進 諸国経済の多 くの産業で,中小規模企業がより大 きな単位 に吸収 されるのは明 らかであった。大規 模であることは不可避であるばか りではな く最善で もあるとい う考え方の下では,1970年代 に至 るまでの目覚 しい経済成長 は中小企業の役割が急速に無 くなったことを指摘 しているように見えた。

他方でシュンペーター学派の考えに打撃を与えるような事実 も発見 されている。大企業の圧倒 的な有利 さにもかかわ らず,中小企業 は発明や技術革新 に重要な役割を果た し続 けた。 とりわけ,

電子・ 通信機器産業や精密機器産業などハイテク型産業部門では,多くの企業が中小企業段階でイ ノベーションを達成 した多数の事例があり,中小企業がイノベーションの担い手であるという主張 も活発に展開されている。新産業 に,規模の経済性の終焉を見出す議論 も少な くない。 これに対 し ,大企業 は大 きな財源や他の資源があるので,資本集約的な技術革新 に集中す るという棲み分 け を指摘する議論 もある。いずれにせよ,ベンチャー企業に期待 される役割は,学問的にみるとシュ

ンペーターが提起 した技術革新 と企業規模の関係 に深 く関連 しているといえよう。

2…ベンチャー・ ビジネスと企業家精神

経済学 における中小企業の位置付 けを概観 してきたが,ベンチ ャー企業 は一般の中小企業 と比べ てどのよ うな特徴をもつのであろうか。

清成忠男 は,企業家 (entrepreneur)に よって リー ドされ る高度 に知識集約的で創造的な中小 [15],邦 訳 193ペ ージ。

[18],166ペ ージ。

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経済研究 7巻 304号

企業 をベ ンチ ャー・ ビジネスであると定義 している

中小企業庁は,ベンチャー企業の共通性 として,①経営者が企業家精神に富み,成長意欲が高い こと,②独 自性を もった優れた技術,③高い成長力または成長可能性を有すること,④未上場の中 ,中堅企業であり,他の企業に実質的に支配 されていないことの4つの条件をあげているの。

一般に,ベンチ ャー企業の定義に共通するものは,中小規模企業,独自技術の保有,企業家精神 の発揮である。

ところで,ベンチ ャー企業 は,「企業家精神」 に満 ちあふれた企業家によって経営 されているこ とが一般の中小企業 との違いのひとつである。企業家は,新たな冒険的事業を立案する。企業家は,

新 しいより良い方法で,不確実性の もとで意思決定を行 う。ベ ンチャー・ ビジネスの経営者 は,先

端的な ビジネスを創始するがためこの「企業家」にならぎるをえない。企業家の諸機能の中でも, 冒険性が重視 される。 このような企業家精神 は,中小企業を取 り扱 う経済理論の中で,いつ頃確立 されたのであろうか。

古典派学派にあっては,企業者 は資本家 と同一視 されていた。 アダム・ ス ミスは,革新や経営的 な意思決定の役割 に部分的には言及 しなが らも,資本の所有 と企業者の機能 とを明確 に区別するこ とには失敗 した。利潤 は使用された資本によって規定 されるのであるか ら,資本をある冒険的事業 に賭けることか ら得 られる利潤は,資本主義社会において合法的なものではな くなる。 この見解 は, マルクスに受 け継がれて,経済の中の「勤勉な人々」か ら利潤を吸い取 る「搾取者」 という考えを 後代 に伝えることになる。新古典派学派 にあって も,総じて,企業者の機能への関心 は低 く,完 競争下で利益 も損失 も出さないような非人格的・ 機械的な企業者像が論 じられるばか りである。

企業者 に関す る高度 に洗練 された役割 はシュンペーターによって授 けられた。企業者 は,革 と創始をその役割 とする創造的な組織者であり経営者である。経済体系全体 に活気を与える。企業 者 は経済成長の機会を創出 し,また成長過程が進行 し続 けることを保障する。企業者像 は,不確実 性や予見不能の条件のもとで革新を遂行するものへ と拡張 された。

シュンペーター流の企業者機能へ考え方 は,その派生や反論 も含めて,危険負担 と不確実性への 関わ り方を巡 って展開されている。不確実性の下で意思決定を行 う企業者 という,今,経営関係 の学問研究に多 く普及 している観念が形成 されてい く。冒険的企業家・ 革新的企業家の再来を待望 するベ ンチ ャー企業 ブームは,企業家精神の意味を再び社会に問いかけていると言えるのではない だろうか。

2‐中小企業論の動向

9)中 小企業庁『 中小企業白書』59年度版,260ページ。

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寡占とベンチャー企業

上 述 の よ うに,中小 企業 へ の関心 は,欧米 で はす で に19世紀 後半 か ら見 られ た し日本 で も 1920年代以 降か らみ られ たが,中小企業 へ の関心 が世界的 に急速 に高 ま って きたのは1970年代 か らで あ る。 中小企業への関心が高 ま った動機 やその内容 は国 によ って異 な るが,①持続 的 な経済成 長・ 経済発展 のための企業 の創 出,②企業組織・ 企業規模 の見直 しなどを指摘す ることがで きよ う。

早 くか ら経済力の集中化がみ られた米国では,独占の対抗勢力 として,自由競争の維持・ 拡大に おける中小企業振興への関心が高い。経済発展が沈滞化 した英国では,1960年代後半,長期的に 見た経済の活性化の観点か ら,新産業の苗床 としての中小企業の役割・貢献への関心が高 まり,政

策に反映されるようになった。

日本の中小企業問題の研究は,戦前の「 日本資本主義論争」の影響を受 けなが ら,主として「 中 小企業の近代化」,「経済成長 と中小企業」 という課題 をめ ぐって展開されて きた。 このため,1950 年代以降は「二重構造論」が支配的であって,大企業 と比べたときの低生産性,劣悪労働条件,金

融難,経営不安定性などを持つ中小企業の残存・ 存続が 日本経済の成長・ 発展を阻害す る要因 とし て指摘 されていた。『 経済白書』 (1957年 版)でも強調 されたこの認識 は,1963年に制定 された「 中 小企業基本法」に反映されてお りこの法律では大企業 との「格差問題」の是正が主要な政策 目標 となっている。 しか し,独占段階の諸国で も小規模企業が大部分を占めている実態を重視 し,独 の圧力 と中小企業の問題の矛盾に注 目して,中小企業問題を「独 占資本主義の産物」 とみる見解が 登場 して くるようになった。 そ して,1970年代後半か らは,分業の深化 を背景 に,中小企業が経 0社会 において果たす役割・ 貢献 に着 目する議論が盛んになってきた。

1980年 代後半 にな って,市場経済化 を促進す る社会主義国 において も,従来 の国有化大企業 に 代わる経済活動活性化の原動力 として民間の中小企業への関心が高まっている。

総 じて,中小企業をめ ぐる議論の時代的変遷 としては,中小企業が抱える諸問題を重視す るもの か ら,中小企業だか らこそ果た しうる役割・ 貢献を重視するものへ と変わ ってきたといえよう。。

.寡占市 場 とベ ンチ ャー企業

市場集中に関する研究 によると,多くの産業で少数の大企業 と共 に多 くの中小企業が含 まれてい ことが確認されている。欧米に比べて中4ヽ企業の比重の高い日本ではとくにそうである。 したがっ ,ベンチャー企業の解明にあたって も,寡占理論の視座か らの検討 は必要である。そのひとつの 接近を試みる。

10)中小企業を「非近代的,非効率」な存在 とみる見方か ら「創業や成長の苗床」 という見方へ変化 したことは, 中小企業政策の転換 を もた らす。 日本では,「中小企業の近代化」 とい う長 く続 いて きた視角の転換,「二重 構造」が存在す るとい う従来の中小企業観か らの脱却が近年み られるよ うになって きた。

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経済研究 7巻3・ 4号

3…ベ ンチャー企業プームの背景

はじめに,日本でベ ンチ ャー ビジネスに対す る期待が大 きく高まっている要因か らみていこう。

第 1の 要因は,設備投資の減退 による経済成長の鈍化である。 日本経済 は 1990年 代 に入 って,

設備投資の減少や生産性の伸びの鈍化 による生産能力の減速が顕著 となってきた。そのため,期 成長率の低下が企業の積極的投資行動を控えさせ,現実の成長可能性をさらに下 げるように働いて いる可台ヒ性がある。

経済成長の源泉に技術進歩がある。多数の実証研究の結果によれば,高い経済成長を している国 や産業の成長の主たる源泉は技術進歩である。技術進歩の主要な部分 は,新製品の開発,新生産技 術の開発など企業の行なう技術革新 (innOvatiOn)で あるD。 したが って,企業が効率的に新技術 を開発 し,また他で開発された技術を効率的に利用することが産業のパ フォーマ ンスに決定的に重 要 な役割を果たすのである。

長期的な経済成長の可能性を高めるためには,技術進歩を中心 とした経済の供給サイ ドを強化 し なければな らない。新規企業や新規事業 に多様な資金供給チ ャネルを通 じて資金が流れるような施 策 によって,ベンチャー企業や中小企業などの民間部門の積極的行動を促す ことが必要 とされてい る。奇 しくも1970年 代初めの第一次,80年代初めの第二次,そして今回の第二次 と,ベンチ ャー Tム,いずれ も不況 と金融緩和の時期におこっている。

第 2の 要因は,産業構造変化の不確実性の克服である。今後は,情,ソフ トウェア,ネ ットワー クなどの分野が経済成長の源泉 となると期待 されているが,新しい分野であるため,先行 きへの不 透明感 は払拭できない面がある。構造改革などによって ビジネス機会を広げ,成長性のある分野の 発展を可能な らしめることによって,雇用 とビジネス創出の場を確保することが必要であるが,そ の主役 として機動力あるベ ンチャー・ ビジネスヘの期待が高まったのである。

3‐大企業 と中小企業の関係

大企業 と中小企業の関係は単純ではない。社会的分業関係の視点 に立てば,大企業 は,①中小企

中小企業

大企業 供 給 需 要

供 給

需 要

大企業 と中小企業の関係

11)技術革新 という概念 はシュンペーターによれば新 しい生産方法の導入だけでな く,新市場の開拓,新資源 やその新供給源の開拓,新しい管理・ 経営・ 企業組織の導入を含む広い概念であったが,最近では,「技術 自 体の革新」 という狭 い意味で用いられることが多 くなった。文献 [15]を 参照のこと。

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寡 占とベ ンチ ャー企業

業製品の買い手であり,②中小企業への原材料等の売 り手であり,③中小企業の競争者である (表

1)。 あるいは,④中小企業 とは無関係な存在である。

①の取引で,価格競争 は大企業側の需要独 占の程度 と中小企業側の競争の程度 に依存す る。大企 業の需要独 占・ 需要寡 占が著 しい場合には,価格 は大企業に有利 に決定 される。逆 に,供給が独 占 的に行われるならば,価格 は中小企業に有利 に決定 されるであろう。

大企業の力が強い場合,系列取引あるいは下請取引とよばれる継続的取引が行われるか もしれな い。かつて,大企業が下請企業を利用す る理由として,(1)下請企業の低賃金の迂回的利用,(幼資本 の節約,(3)景気変動のバ ッファーといった3点が指摘 され,中小企業問題 として多 くの議論がなさ れてきた。下請制度などは,大企業による中小企業の支配・ 利用・ 収奪関係の証拠 と考え られてき た。 しか し,下請企業の生産費用が安いのは,賃金率の格差によるのではな く,規模的に効率的な 運営が可能であるということが源泉であるか もしれない。

また,大企業はその圧倒的な交渉力を利用 して,下請企業 に費用 と需要の変動の リスクの負担を 強いることによって,下請企業を搾取す るとされる伝統的イメージに反 してリスク負担が費用削 減誘因 と トレー ドオフの傾向があるため,大企業 は リスク性のある製品は下請 に出さない。その場 ,下請制度 は,費用削減のための技術革新を行 ったり,高品質の生産を達成す る誘因を与えるよ うに働いている。買い手 と売 り手の間での,情報の共有,確実な交換 と信頼関係の形成,効率的な 投資などを可能 にするか もしれない。

②では,必ず しも供給独 占が支配的であるというわけではない。大企業製品の価格低下が,中 企業にとって外部経済効果をもた らす場合 もある。流通の系列化 にしば しばみ られるように,情 の共有や投資の効率性を通 じて,需要の不確実性を減 じる効果を もっているか もしれない。

③の大企業 と中小企業の競争 はさまざまな形をとる。議論を供給面の競争に限定 しよう。一般に,

競合的な製品を生産 している大企業 と中小企業 とでは競争力のうえで重大な差があると考え られる。

その基本的要因は規模の経済性である。大量生産 になるほど,生産の平均費用 は安 くなる。費用面 の優位を背景 に価格先導を行 う大企業 は,参入阻止価格を巧みに利用 して,必要 な限 りにおいて中 小企業 を残 し,あるいは駆逐・ ツト除す る。中小企業 はその高生産費のため低い利潤率で存続す る。

中小企業の存立 は,一時的なものと考え られ きた。

他方で,自分 自身の利益 と中小企業の利益が不可分であることを認識 している大企業がある。例 えば,米国の鉄鋼業のように,プライス0リ ーダーシップの慣行がみられる産業がある。プライス・

リーダーの価格 にその産業内各企業が暗々裏 に従 うものであ って,その価格政策 には共存共栄 (live and let live)政策が とられ,業界全体 と して最適の価格が選 ばれ る。 それはコス ト高の中 小企業の存続を可能 にす るものであるが,同時に寡占的大企業 にいっそうの利益を保証す る。

(10)

経済研究 7巻304号

また,消費財関連 で は,製品差別化 に依存 して消費者 の嗜好 に訴 え ることで,独立性 を持つ中小 企業が多数存在す る。

④ で は,大企業 と中小企業 はそれぞれ独 自の市場 に存立す る。生産技術的 に多種少量生産 の領域 が存在す る。消費者 の多様 な好 みが多種少量販売 を必要 とす る場合 もある。 これ らの市場 には,大

量生産,大量販売 を前提 とす る従来 の大企業 は対応 で きない。

本稿 の主 た る関心 は,③の関係 において,なぜ大企業 と中小企業が並存 じうるか とい う問題 であ る。 いずれに して も,中小企業 が独 占資本 の収奪 の対象 で あ るとされて いるマル クス経済学 の見解 が妥 当であ るとは考 えに くい。

3‐寡 占と中小企業 の関係

従来 の中小企業 の存在 をめ ぐる1つの重要 な論点 は,「不完全競争性」 ない し「不完全競争市場」

の存在 をめ ぐる議論 で ある。「 独 占資本 による中小企業 の支配・ 収奪」 とい うマル クス経済学的視 点 で あれ,「 プ ライス・ リーダーに従 った平和共存」 とい う価格理論的視点であれ,市場 の独 占化・

寡 占化 とい う動態的な変化 の中 に中小企業 の存立条件や問題性 を見つ けて きた。

こん にちの寡 占経済 の構造 をおおづかみに寡 占セ クター と非寡 占セクターとの「二重構造経済」

(dual ecOnOmy)と して と らえ る見方 が あ る。 アベ リッ ト(R.T.Averitt)は ,アメ リカ産業構 造 の ダイナ ミクスを「 二重構造経済」 と して捉 え る視点か ら,中核企業群 (center firms)と周辺 企業群 (periphery firms)と い う異質 の企業類型か ら構成 され る二重構造 を想定す る。

中核企業 は,大規模性,低コス トなどの特徴 を持 ち,右下 が りの需要曲線 に直面 して いて,価 設定 な どの市場支配力 を持 っている。周辺企業 はこれに対 して,小規模性,高コス ト,資金調達 の制約 などを特徴 と し,競争 的企業 と して行動 す る。周辺企業 は次 の3つの タイプにわ け られ る。

①衛星企業 (satelites),②忠誠なる反対党 (loyal opposition),③自由独立業者 (free agents)。

一般的な用語では,①は従属型の中小企業,②は独立中小企業ないし競争的周辺 (competitive fringe),③ はその他になろう。アベ リットの所論は,総じて「企業論」的視点にたつため,競 行動の分析に関 して曖昧さを残 しているが,市場支配力を持つ相対的に大きな企業群と競争的な中 小規模企業群が各産業に存在 しているという点に,寡占経済構造の特徴を見出しているのが注目さ れる。

ベイ ン (Jo S.Bain)や ジャックマ ン (A.」acquemin)の産業組織論 で も,同様 の構造 が多 くの 寡 占産 業 に見 られ る こ とが 認 識 され て い る。 寡 占的 大 企 業 は相 互 依 存 性 を も って,寡占核 (oligopolistic core)を 形成 す る。 それ以外 の中小企業 は相互依存性 を もたず,寡占核 を と りま く 競争的周辺 となる。両者が共存 している場合 は,部分寡 占 (partial oligopoly)で あ る 12)部分寡 占の理論的基礎 については拙稿 [27]を 参照 して欲 しい。

(11)

寡占とベンチャー企業

寡 占産業 において,中小企業 は,(1)個 人需要 の充足,9)新産業 の苗床,G)寡占・ 独 占に対す る防 波堤 な どの役割 を果 た していると考 え られ る。 しか し,通,寡占問題 の研究 は資本主義経済発展 の過程 で展開 して きた寡 占的大企業 の もつ問題性 の解明 に基本的な視点がおかれているため,中 企業 に関 して は副次的 に言及 されて きた ものであ り,近年 にあ って も十分 な検討がなされて いると

はいえない。

他方 で,中小企業論 の立場 か ら大企業 と中小企業 の関連 を研究 した佐藤芳雄 は,独占資本 を「 寡 占」 の レベルで捉 え,寡占の競争・ 協調・ 支配 の行動 が中小企業 のあ り方 を どのよ うに規定 して い くか とい う視点 か ら,「 独 占資本 によ る中小企業 の支配・ 収奪」 の現実的な姿 を分析 して い くこと を提案 している0。

3‐ベ ンチ ャー企業 の位置付 け

ベ ンチ ャー企業 も,寡占あ るいは大企業が主導す る経済 の場 に存在す る。新技術 や新製 品の開発 を基盤 とす る経営戦 略 は,競争上 の差別化 を はか り,維持 させ る ことであ る。 これ らは不完全競争 の条件 の現代的な表現 で もあ る。

大企業 であれ,中小企業であれ,新技術 や新製 品への取 り組 みは新 たな競争 の局面 を意味 してい る。絶 えざる研究開発 を続 け,競争相手 の大企業・ 中小企業 と互角 に対抗で きるな らば,企業 の独 自性・ 独立性 は高 ま るであ ろ う。他方で,研究 開発 を維持で きなければ,競争 か ら落伍 せ ざ るをえ ない。研究開発の競争性 は,企業 間 の格差 を拡大 し,大量 の淘汰現象 を生 む可能性があ る。

経済成長 にお ける技術革新 の役割 を論 じる場合 の出発点 をシュ ンペーターの研究 に求 め ること がで きるだろ う。 シュ ンペー ターは,完全競争 の もとで は革新 はあ りえない と した。研究開発活動 において は規模 の大 きい企業 ほど優位 に立 ちしたが って大企業 は技術進歩 のプ ロモーターである と主張 した。 その根拠 は,次のよ うに要約 され る。

(1)研究開発活動 を進 め るためには巨額 な資金が必要 であ るが,大企業 ほどその調達 を有利 に進 め ることがで きる。

(幼 研究 開発活動 には大 きな リス クを伴 うが,それ を負担 で きるの は大企業であ る。

G)研究 開発活動 には規模 の経済性が存在 し,そのために大企業 ほど効率的 にその活動 を行 うこ とがで きる。

集 中化 した市場構造 ほど技術革新 に有利 であるとい うこの仮説 は,完全競争 的な市場機構 が望 ま しい と考 え る通常 の ミクロ経済理論 に反す る。 それゆえ に,各産業 内 にお ける個 々の企業 の研究開 発状況 とその企業規模 との関連性シュ ンペーター仮説 の妥 当性 を研究す ることが大 きな研究課題

とな った。

13)文 [22]。

(12)

経済研究 7巻3・ 4号

シュ ンペー ター仮説 に対 して は,企業 にお ける研究開発 の実施能力 とその誘因 とは必 ず しも一致 しない とい う反論が ある。実証的 には,企業規模 や集 中度 と研究 開発 の関係 につ いて はさまざまな 側面 が あ りシュ ンペー ター仮説が妥 当性 を もつ とは言 い難 い。

1の枠組 みに戻 ろ う。 ベ ンチ ャー企業 と大企業 の関係 は,次の点 で一般 の中小企業 とは異 なる。

まず,①と② の領域 で,ベンチ ャー企業 は独立性 を維持 して いる。独 自性,専門性したが って 独 自の市場 の確保 は,中小規模企業 の新 たな存立条件 とな る。

③の領域で,ベンチ ャー企業 は有利な競争を展開できるであろう。それが工程革新であれ,あ いは製品革新であれ,イノベーターは,競争上の優位を確保することがで きるb新生産方式,新 ,新販売方法,独自の生産組織などにより独 占を享受す る可能性 もある。 しか し,ベンチャー企

業が長期的な参入障壁を築 けなければ,それは一時的な独 占状態に過 ぎない。絶えぎる先端的開発 と独 自性の発揮が行われない限 り,その独 占的状況は消滅 し,一般的な「 中小企業」 に戻 らざるを 得ない。大企業 との競争にあっては自らが競争相手の大企業の進める技術革新開発 と互角 に対抗 できるかどうかが基本的に明暗を分けるところとなろう。

④の領域では,技術革新の展開が重要な役割を果た している。技術の波及 と細分化が技術の「す き間」 (niche)を 作 り,大企業が これに対応 しないかあるいはできない場合には,中小企業が この すき間市場を見つけて,そこで製品差別化をもた らすような独 自の技術 による専門化を促進 して,

存立・ 成長を図ることになる。現代の急激な技術革新の展開は多 くのすき間を創 ってきた。 このよ うなす き間を発見 し,新しい製品開発を進めるのがベ ンチャー企業である。

市場 ニーズに敏速に対応 して,すき間市場を独占 してお くことが重要であるが,ベンチャー企業 によって開拓 された市場が安定的に成長を始めると,他のベ ンチャーが進出 して くるばか りか,大

企業 も参入 して くるだろう。後発の大企業が先発の小企業よりも急速に成長 して,いずれ寡 占的状 況が もた らされるであろうと考え られる。

Ⅳ。 ベ ンチ ャー企業 の静 学 モデ ル

以上の考察を踏まえて,ベンチャー企業の特徴を分析的に捉えてみよう。

4…研究開発の不確実性 と市場構造

研究開発および技術革新における問題のひとつは,不確実性の克服である。新 しいアイデアをもっ て新 しい産業を開拓するのがベ ンチャー企業である。新 しい研究開発成果に基づ く新規開業 は リス クを伴 うか ら,ベンチャー産業の特徴は不確実性が大 きいことである。既存産業における競争でも, 新 しい製品やサー ビスを求めて,研究開発が企業戦略の主体 となれば,不確実性 は増大す る。企業

(13)

寡占とベンチャー企業 の研究開発活動 はそれ自体が不確実性を伴 う上に,開発 された生産物への需要がどのようなもので あるか という点 に不確定要素を持 っているか らである。 こうした不確実性の存在 は,企業間競争や 企業組織に様々な影響を与える。

前節では,中小企業 と大企業 とが並存す る市場の一般的な構造 として,寡占核 と競争的周辺か ら 成 る二重経済仮説の妥当性を議論 した。技術革新の機会が大 きいベ ンチャー産業では,技術条件や 需要条件における不確実性が高いと考え られるが,その市場構造 にはどのような特徴があるだろう か。

いま,産業の需要が次の市場需要関数で示 されるとしよう。

D(夕)=α―クタ+C,  α,b,c>0. (1)

ここで,Dと夕はそれぞれ総需要量 と価格を表 している。cは,確率分布 し,需要 の不確実性を表 す ものとす る。企業1と企業2の 2つ の企業が この需要 に直面 しているとしよう。各企業の供給を 関数sl(p),s2(p)で表す と,

D(万)=sl(万)+s2(万) (別

とな る価格が存在す る。寡 占市場 の特色 は,企業 間 の相互依存性 にある。寡 占には様 々な競争 が起 こり得 るが,供給 関数s̀(p),づ =1,2を検討す ることか ら,寡占の形態 を考 え ることがで きる。

各企業

̀は,競争相手 の供給量 彎(p),ノ ≠ グを所与 と した残余需要Dグ

(夕)=D(p)一(夕)に 面 す る。費用 関数 に

町の =ギ ,Q刈 …

を仮定する。(2)式,G)式より,各企業の利潤関数 は次のようになる。

=   

=L2

=″j′(p)―

,づ =1,2.       0

簡単化のため線形の供給関数s̀(p)=α´ を考えよう。利潤最大化を実現 させ るための価格設定行 動に注 目すれば,寡占的行動 として次の3つのケースが想定 される。

(i)価格先導一価格先導

各企業が残余需要に対 して価格設定者 として行動する場合,利潤最大化のための一階の条件か ら, 供給関数寡 占 (supply function oligopoly)と して知 られるナ ッシュ均衡が得 られるの。

14)供給関数 による寡 占の説明は,Grossman(1981)等によ り提案 された。

(14)

経済研究 7巻304号

cで表 され る不確実性 の大 きさに関 わ らず,均衡 は一意 的 に得 られ る。

(H)価格先導一価格追随

企業 ノが競争 的周辺 と して行動 す る場合,すなわ ち企業 づの価格 を所与 と して企業 ノが利潤最大 化 を図 るな らば,企業 づを先導者 とす る価格先導制 が均衡 とな る。

c(b■c)

α夕=九

(m)価格追随一価格追随

両企業が共 にプライス・ テイカーとして行動す る場合,ベル トラン複 占を得 る。

=     =L2   0

この とき各企業 に超過利潤 はない。

ところで,ベンチ ャー企業 を抱 え る市場構造 で は,どの よ うな競争形態が現 れ る可能性 が高 いで あろ うか。 ベ ンチ ャー産業 の特徴 は,不確実性 で あ った。cの変動 と利潤 の関連 に注 目 した とき,

シ ミュ レー ションか ら図1のよ うな関係がわか る)

この結果か ら次 の命題 を導 出で きる。

命題1(価格戦略 の選択):

企業 りの利潤 は価格戦略 に応 じて次 のよ うに変化す る。

F,イ)>乃f,げ)>乃,イ)

profit

πF

πS πL

0。 0.4    0.6 利潤 の比較

15)代数計算の結果は複雑であるため,各変数に数値例を代入 して計算を行 った。図1で は =2,わ =1,c=0。4,

0≦ 〔≦0。9である。7F,πS,几はそれれ ,亀F,イ ),a(α ゞ,げ),乃,イ)に 対応 している。

1

0.9

0。8

0.7 0.6 0.5

(15)

寡占とベンチャー企業

ここで,zz.(αF,イ),■F,げ ),およびz・F,イ )はそれぞれ企業 りが価格先導制 の追随者 の戦 略を とった時の利潤,供給 関数複 占の戦略を とった時の利潤,および価格先導制 の先導者 の戦略を

とった時の利潤 を表す。 この大小関係 は,不確実性が大 きい程,はっきりと している。

す なわ ち,不確実性 の程度 が強 いほど,競争相手 の価格 に追 随 し,競争 的周辺 に位置す るのが戦 略的 に有利 で あ る。従来,中小企業 の価格形成 は大企業 の価格形成 に比べて不利 であるため,価 追 随行動 を と らざるをえない もの と考 え られて きた。 ベ ンチ ャー型 の技術開発能力 は中小規模 の企 業 に大規模企業 と互角 に競争 す る手段 を与 え るものであるが,ベンチ ャー産業固有 の不確実性 の存 在 は,ベンチ ャー企業 に価格追随行動 を選択 させ,大企業 によるプ ライス・ リーダー シップを伴 う 部分寡 占を導 く可能性 があるといえよ う。

4‑2 非対称 的寡 占での技術革新

ベ ンチ ャー企業が一般の中小企業 と同様 に価格追随者 としての行動 を とり続 けるであろ う蓋然性 を検討 したのであるが,先導者 か追 随者 か どち らの企業が技術革新 を導入 で きたか とい う事情 に応 じて,技術革新 に続 く市場過程 は異 な った様相 を示すであろ う。企業 1と 企業2からな る産業 を考 え よ う。企業1の費用 曲線 は,

qQD=手,c>o

であり,企業 2の 費用曲線 は

C2(92)=

げ 万

ε>0

であるものとする。gp σ2はそれぞれ企業1と企業2の供給量 を示す。企業2がイノベーターであ ると仮定す る。γは技術革新の程度を表 し >1であれば技術改善がみ られることとなる。

市場の競争形態 としては,先導者 (支配的企業)が価格を設定 し,追随者 (競争的周辺)がそれ に追随す る支配的価格先導 (dominant price leadership)を 仮定す る。(i)イ ノベーターが支配的 企業であるケース,lii)イ ノベーターが競争的周辺であるケース,(Ш)技術開発の無いケースの3つ 場合を比較考察 してみる。

(i)イ ノベーターが価格先導者であるケース

価格受容者である企業 1の 供給が91=pcであるか ら,企2の残余需要 は92=α

なる。利潤

/72=pσう多

lllll

(16)

経済研究7巻304号

の最大化か ら,均衡価格

L7=(b+σ

)(b tt σ+2εγ)        2

を得 る。

(H)イ ノベーターが価格追随者であるケース

価格受容者である企業2の供給が92=ρεγであるか ら,企業 1の 残余需要 は91=α一め ―cっ となる。利潤

の最大化か ら,均衡価格

=pの

一 千

α(b+θ+cr)

l131

F7= l141

(b+εγ)(b+2ε十″)

を得 る。

(i‖)技術革新 の無 いケー ス

この場合,企業 1と 企業2のいずれが先導者 であ って も,市場価格 は

,Ⅳ7=

とな る。

α2,任0,CD式よ り,以下 の命題 を得 る。

命題2(技術革新 の価格効果):

技術革新 は,市場価格 の低下 を もた らす。 ただ し,企業 間 の競争条件 の影響 を受 けている。価格 追随者 による技術革新 の方が価格先導者 による技術革新 よ りも価格低下 の効果が大 きい。すなわち,

pF7<pL7<夕7

で ある。

生産費用 を実際 に低め るものであれば,技術 開発 は価格 と生産量 の改善 に役立 っている。 それ は,

長期 的 な経済成長 において も実質的な貢献 をなす ものであ る。

研究 開発 と市場構造 の関連 につ いて は多 くの議論が あるが,非対称寡 占に関す る本稿 の分析 は,

次 の点 を明 らか にす る。

命題3(技術革新 と市場構造):

技術革新 は,市場 の独 占度 に影響 を与 え る。価格追随者 による技術革新 は価格先導者 の独 占度 を

l151

参照

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