• 検索結果がありません。

気体の学習についての一考察

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "気体の学習についての一考察"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

気体の学習についての一考察

森  下  浩  史*

(昭和58年10月31日受理)

A Study for the Formation of Gaseous Concepts         in Chemical Education

Hirofumi MORISHITA

(Received October31,1983)

1 はじめに

 昭和52年に告示された現行の学習指導要領は,小学校,中学校ではすでに全面実施され ており,高等学校理科では理科1に引続いて,今年度より選択理科(物理,化学,生物,

地学)が実施されている。今回の理科学習指導要領では,観察や実験を重視しながら,ま た,ゆとりを持たせながら,学習の一貫性を教育目標として強調しているとのことである が,物質を主に取り扱う化学教育の分野でも,それらの目標に十分な配慮がなされている のであろうか。

 物質概念は化学教育における最も基本的な概念である。物質について多くの体験を得さ せた上で,それらについて微視的な粒子モデルで理解させようとする提案は多数報告され ているが,その具体的なものや技能との関連においての組織だった研究は少ない。これら の研究は,子供たちに物質概念を確実に定着させるためには,欠かせないものであると考 える。本研究では,物質概念の発達に応じて,気体についての学習が一貫性をもって,系 統的に実施されているかどうかを組織的に調べてみた。また,気体としての性質を統一的 に理解させることができるボイル・シャルルの法則等について,どの程度の認識を持って いるのか調査してみた。これらのことから気体についての具体的な学習事項を考察してみ

た。

II 気体についての学習内容

 物質概念を形成させるためには,巨視的な物の見方と,微視的な物の見方とを互いに関 連を持たせながら,子供たちに学習させなければならない。その関連1生を結びつける手段

として,物質がふるまういろいろな現象を,物のもつ重さという属性での追求を通して,

学習させていく方法が一般にはとられる。また,その方法を用いるにあたり,物質にっい ての認識を直接感性的(感覚,知覚)に把えさせ,その関連性に注目させることができる

*長崎大学教育学部理科教室

(2)

現象としては,「物質の状態変化」「物質の溶解」「物質の反応」等であろう。これらの現象 についての注意深い観察を通して,物質概念についての認識が深められるものと考えられ

る1)。

 気体の重さについての取扱は,小学5年で 物が燃えるときの空気の変化を調べたり,

酸素や二酸化炭素をつくって,その性質を調べたりして,物が燃えるときの空気のはたら きを理解させる という学習内容の中で 二酸化炭素は空気よりも重く,石灰水を白く濁 らせること 2)。中学1年で 気体を発生する化学変化 の中で 気体は,その種類によっ て,重さや化学的性質がそれぞれ異なること 3)として学習するようになっている。そし て,これらの気体の重さとは,あくまでも空気との相対的な重さの比較をさせる程度にと どめるとされている。しかし,ここでは気体の重さについて,厳密に定量的にその重さ(密 度)を求めさせることはできないにしても,空気との重さの比較だけにとどまらず,定性 的にでも,それぞれの気体の問での重さの比較や,固体や液体の物質との重さの比較につ いても,是非とも学習させる必要があると考える。次に,高等学校では理科1のN物質の 構造と変化 の中で 化学変化とその量的関係 について,化学量論的に固体,液体,気 体に共通するモルの概念を発展させる学習がなされる。その後に,高校化学の 物質の状 態 の中で 純物質(気体,液体,固体) ,高等物理のN物と運動 の中でN 気体分子の 運動(気体の法則,気体分子の運動) を気体についての総括として,それぞれ学習するよ うになっている。現在行なわれている高等学校での気体についての学習内容は,その学習 内容の程度に違いがあるとは言えども,旧学習指導要領に於ては,すべて中学校段階で取 り扱うようになっていた内容のものである。従って,旧課程と比較すると,現行では復数 の教科で取り扱われることから,カリキュラム上では煩雑さが増加することになった。こ の点については,物質概念を発展させるという方針を保ちながら,系統性のある学習が実 施されるように十分配慮しなければならない。

 「物質の状態変化」や「物質の反応」の現象は,次に示されるような学習内容の箇所で 取り扱われるようになっている。小学4年で 水は,温度によって水蒸気や氷に変わるこ

と (状態変化)。小学5年でN 植物体が燃えるときには,酸素が使われ,二酸化炭素がで きること (反応)。黛二酸化炭素は,空気よりも重く,石灰水を白く濁らせること (反 応)。小学6年で 人は肺で酸素を取り入れ,二酸化炭素を出すこと (反応)。黛水溶液に

は気体が溶けているものがあること (溶解)。中学1年で 物質の様子 (溶解)。 加熱と 燃焼 (状態変化,反応)。 気体を発生する化学変化 (溶解,反応)。中学2年で 純物質

と混合物 (状態変化)。 大気中の水 (状態変化)。そして,高校化学でこれらの現象をま とめた教材として物質の状態 が取り扱われる。

 気体に関連したその他の学習内容を次に示す。小学1年で 風によって物が動くことに 気づかせる 。小学2年で 空気の存在に気づかせる 。小学3年で 閉じ込めた空気に力

を加えたときの様子を調べ,空気には弾i生があることを理解させる 。小学4年でN 空気及

び水は,温度が変わると体積が変わるが,その程度に違いがあること 。小学5年で 炎は

気体が燃えるときにできること 。小学6年でN物は,温度によって体積は変わるが,全体

の重さは変わらないこと 。中学1年で洞じ気体は,発生の方法が異なっても同じ性質を

示すこと 。そして,中学2年でN 大気圧と風の吹き方 などがあげられる。ここでは,物

の属性の一つである体積に関連する項目が多く掲げられているように,気体を物として認

(3)

識させるために,まずこの属性に注目させる学習を展開する必要があることから自明のこ とであろう。

 以上,学習指導要領の中から,気体についての学習項目を拾い上げてみたが,固体や液 体と比べてみると,気体の共通な性質についての総括的な学習が,高校化学,または高校 物理の段階まで,後方に押しやられていることに注目させられる。固体や液体については,

中学1年 物質の様子 の中で 物質の量には,体積があり,これらはいろいろな方法で 測れること , 物質の単位面積当たりの重さは,物質の種類によって決まっていること

として,物がもっ一般的な属性で明快な定義が与えられている。これに対しまだこの段階 において,気態の物体については,固体や液体と同じく物であるという認識にまで深めら れておらない。それは空気とそれぞれの気体との関係,それぞれの気体の性質や気体間の 関係,状態変化についての系統だった学習がなされてないからである。従って,中学校段 階での気体の取扱は,物質が示す巨視的な現象を観察させることが主体にならざるを得な い。物質の認識を深めるためには,巨視的な立場からと微視的な立場からの見方を育成し なければならないが,固体や液体と異なって気体については,そのような見方が不十分で あり,物質概念を形成させる上で一つの障害になっていると考えられる。その理由として は,物体としての非存在感,つまり,気体は透明で,接触感が無く,物として認識され難 いためであると考えられがちだが,それよりも,気体の重さを相対的にでも正しく認識さ せていないことの方が,大きいのではないだろうか。気体の重さを正しく子供たちに認識 させることができるならば,中学校段階でもバランスのとれた物質概念を形成させること ができるものと考えられる。

 理科1では主に化学量論を取り扱うようになっており,ここではいろいろな現象につい ての説明を与えることが中心になるが,その前に,物に即した物質についての認識を深め させるのが先決であろう(特に気体では)。物質概念の一貫性のある発達を考える場合,巨 視的な物質観と微視的な物質観がある程度でき上り,それらの相互の関連性が確立した上 で,化学量論的な学習内容について取り扱われるべきである。先にも述べたように,中学 校段階までの気体の取扱は,物質概念形成において不備な点を有している。この点を補う

ためには,気体の共通な性質について十分学習させなければならない。

皿 アンケートの調査方法

(1)調査問題と解答方法

 別掲の調査問題と解答用紙を配布し,各問とも5個の選択肢の中から一つを選ばせる選 択肢形式によった。解答の所要時間は約20分,解答用紙に解答をマークさせたものを回収

した。

(2)調査期間,調査対象  ○昭和57年4月

 ○長崎県内中学校6校(市部校,郡部校,離島校,各2校)2年生223名(男121名,女 102名),3年生898名(男481名,女417名)

IV調査問題

(4)

1−1)

1−2)

 A  C  E

2−1)

2−2)

 A  C  E

3−1)

3−2)

 E

4−1)

ACE︶    2    4

  さか立ちした時,指1本にかかる圧力は,どの場合が一番大きいか。○をつ  けよ。

  また,圧力が一番小さいのは,どの場合か。□をつけよ。

  10本の指でさか立ちした場合   B 8本の指でさか立ちした場合   6本の指でさか立ちした場合   D 4本の指でさか立ちした場合   2本の指でさか立ちした場合

  水にもぐった時,身体にかかる圧力は,どの場合が一番大きいか。○をつけ

 よ。

  また,圧力が一番小さいのは,どの場合か。□をつけよ。

  100mもぐった場合       B 10mもぐった場合   5mもぐった場合       D 2mもぐった場合   1mもぐった場合

  水で満たされた試験管の口を指でふさぎ,つぎに,その口を水そうの水の中  に入れ,指を離して図1のようにすると,試験管の中はどのようになるか。正  しいと思うものに○をつけよ。ただし,試験管の長さは18cm。

  上で用いた試験管の先端部に穴があった場合,        先端部  その試験管の中はどのようになるか。正しいと思

 うものに□をつけよ。

  空気がはいっている

  真空である(わずかに水蒸気を含む)

  水がはいっている

  水が下半分にはいっており,上半分は真空であ

 る(わずかに水蒸気を含む)      水(水銀)

  酸素と水素からなる気体がはいっている         図1

  3−1)と同様に,水銀そう中に,水銀で満たされた長さ18cmの試験管を入  れ,図1のようにした場合,この試験管の中はどのようになるか。正しいと思  うものに○をつけよ。

  空気がはいっている   B 真空である(わずかに水銀蒸気を含む)

  水銀がはいっている   D 酸素と水素からなる気体がはいっている   水銀が下半分にはいっており,上半分は真空である

  長さ90cmと100cmの試験管を用いたところ図2  のようになった。これらの試験管はこのまま固定  し,水銀のはいった水そうだけを10cm上方に持ち  上げると,水銀面からの水銀柱の高さはどのよう  になるか。正しいと思うものに○をつけよ。

  両方の水銀柱はともに66cmになる   両方の水銀柱はともに76cmになる   両方の水銀柱はともに86cmになる

  片方は66cm,他方は76cmになる      水銀   片方は76cm,他方は86cmになる      図2

A B C D

A B C D E

試験管

  m→翫  7

(5)

5)圧力の単位として適当なものはどれか。○をつけよ。

 A cm    B cm2   C cm3   D グラム重/cm2  E グラム重/cm3

6−1)海面下100mの所から空気のあわを1個放出した。そのあわの大きさはどこで   一番大きくなるか。正しいと思うものに○をつけよ。ただし,水温はどこでも   一定とする。

6−2) ゴムまりを海水中に沈めた場合,このゴムまりはどこで一番大きくなるか。

  正しいと思うものに□をつけよ。ただし,水温はどこでも一定とする。

 A 海面下1m    B 海面下2m    C 海面下5m  D 海面下10m    E 海面下100m

7−1)ボイルの法則PV=kを示すグラフはどれか。正しいと思うものに○をつけ   よ。ただし,Pは圧力,Vは体積,kは定数を表わす。横軸にP,縦軸にVを   とるものとする。

       こ      

7−2)ボイルの法則を正しく記述したものはどれか。正しいと思うものに○をっけ   よ。

 A 圧力が増せば体積は大きくなる  B 圧力が増せば体積は小さくなる  C 温度が一定のとき,圧力が増せば体積は大きくなる

 D 温度が一定のとき,圧力が増せば体積は小さくなる

 E 温度が一定のとき,圧力も体積もともに一定の値をとり,圧力の変化も体積   の変化もできない

8−1) シャルルの法則V/丁二k を示すグラフはどれか。正しいと思うものに○を   つけよ。ただし,Tは温度,Vは体積,k〆は定数を表わす。横軸にT,縦軸にVを   とるものとする。

      

8−2) シャルルの法則を正しく記述したものはどれか。正しいと思うものに○をっ   けよ。

 A 温度が高くなれば体積は増す   B 温度が高くなれば体積は減る  C 圧力が一定のとき,温度が高くなれば体積は増す

 D 圧力が一定のとき,温度が高くなれば体積は減る

 E 圧力が一定のとき,温度も体積もともに一定の値をとり,温度の変化も体積

  の変化もできない。

(6)

9)

  内側にへこんだピンポン球に熱湯を注ぐと,そのピンポン球は元の形の球に  もどる。その理由として最適なものはどれか。○をつけよ。

A ピンポン球の材質が膨ちょうするため B ピンポン球の中に熱湯がはいるため

C ピンポン球の中の,気体の分子の総数が増すため

D ピンポン球の中の,それぞれの気体分子の大きさが大きくなるため E ピンポン球の中の,気体の分子の運動が激しくなるため

注 ボイル,シャルルの名称は,ともに人の名前です。

V アンケート調査の結果と考察

 アンケート調査の結果を,市部校,郡部校,離島校に分けて,それぞれの選択肢におけ る解答率を,表1〜表9に示している。なお,正解には表中の選択肢記号の前に○印を付

けている。

 調査内容としては,圧力に関連した問題〔1−1)〜5)〕,ボイル・シャルルの法則に関 連した問題〔6−1)〜9)〕である。

 問題1)については,圧力についての体験または仮想体験を問うたものである。正答率 はいずれの場合も90%前後と非常に高いことから,子供達にとって,圧力については定性 的にも定量的にも理解し易い概念であると思われる。

 問題2)については,水圧についての体験または仮想体験を問うたものである。正答率 はいずれの場合も90%前後と非常に高いことから,水の圧力はその深さに比例するとの理 解は得られているものと思われる。

 問題5)については,圧力の単位を正しく理解しているかどうかを問うたものであるが,

グラム重/cm2,グラム量/cm3との解答がそれぞれ約5割弱ほどで,圧力の単位として,単 位面積当りの力の大きさであるという定義を正しく把握していない子供が多くいることを 示している。この圧力の定義については,中学1年で学習するようになっており,気体を 定量的,理論的に学習させる上で必要であることから,正しく理解させることは重要なこ

とがらである。

 問題3),4)については,大気圧に関連したことがらについて問うたものである。問題 3−1)の操作は水上置換などで一般に用いられる一操作であり,大気圧については,中学 2年で学習する内容であるのに,中学3年生の正答率でさえ,ほぽ50%と低い値が得られ ている。水についての操作は,小学校段階で十分に行なうようになっているので,この結 果からは,実験観察の積極的な取り組かたの欠如が指摘できよう。問題4−1)の正答率は 3−1)のそれよりも,約1割ほど低くなっている。これは,子供たちは水銀が水と比べて 重たいということを知っているものの,水銀の取扱の経験が乏しいことを示しているもの

と思われる。大気圧に関しては,アネロイド気圧計の他,水柱や水銀柱で大気圧の変化を 追うことができる。そのときの水柱や水銀柱が,どのような状態であるかを観察すること は,大気圧の変化を追うことよりも大切であって,その所に圧力と大気圧とを結び付ける ものがあり,大気圧についての認識も深められると考える。問題3),4)の結果からは,

2年と3年とでの解答の傾向に大差は無く,正答率も6割にみたないことから,現在の学

(7)

表1

問題番号 1−1) 1−2)

選択肢記号 A B C D OE OA B C D E 市部校3年 6 0 0 1 93 93 0 0 0 7 郡部校2年

〃  3年

7 2 2 3 86 87 1 2 1 9

6 1 1 1 91 93 1 0 1 5

離島校2年

〃  3年

12 1 0 2 85 90 1 0 2 7

8 1 1

・1

89 91 0 0 1 8

表2

問題番号 2−1) 2−2)

選択肢記号 OA B C D E A B C D OE 市部校3年 93 2 1 1 3 4 1 1 2 92 郡部校2年

〃  3年

89 2 2 1 6 4 3 1 2 90

93 2 1 1 3 3 1 1 2 93

離島校2年

〃  3年

92 2 1 1 4 6 5 1 0 88

86 3 0 1 10 10 2 0 6 82

表3

問題番号 3−1) 3−2)

選択肢記号 A B OC D E OA B C D E 市部校3年 9 15 54 17 4 53 8 14 18 4 郡部校2年

〃  3年

23 12 40 22 1 29 11 25 26 8

13 13 48 19 5 50 10 13 18 7

離島校2年

〃  3年

17 13 50 9 11 40 13 18 23 6

16 15 50 18 1 45 9 14 25 7

表4

問題番号 4−1) 4−2)

選択肢記号 A B OC D E A OB C D E 市部校3年 7 14 46 6 24 10 57 11 12 7 郡部校2年

〃  3年

12 18 36 7 25 15 34 17 19 14

6 15 43 7 28 12 52 11 13 10

離島校2年

〃  3年

8 21 35 15 19 8 47 16 13 14 7 14 45 10 24 8 36 18 25 12

表5

問題番号

5)

選択肢記号 A B C OD E 市部校3年 0 2 6 46 46 郡部校2年

〃  3年

1 5 6 47 40 2 2 7 35 53

離島校2年

〃  3年

5 2 5 46 42

6 3 3 61 26

(8)

表6

問題番号 6−1) 6−2)

選択肢記号 OA B C D E OA B C D E

市部校3年 77 2 5 3 12 66 2 4 8 20 郡部校2年

〃  3年

65 6 7 7 11 52 9 9 8 18

70 4 3 3 12 63 3 8 5 20

70 5 5 2 18 64 4 1 7 24

離島校2年

〃  3年 61 10 5 8 16 51 5 13 7 24

表7

問題番号 7−1) 7−2)

選択肢記号 A B OC D E A B C OD E 市部校3年 26 24 34 8 6 9 18 19 42 11 郡部校2年

〃  3年

35 20 25 9 6 17 16 20 27 14

34 18 30 8 8 12 18 24 32 8

離島校2年

〃  3年

36 22 25 7 7 19 24 12 26 14

38 22 29 4 7 14 14 20 36 16

表8

問題番号 8−1) 8−2)

選択肢記号 OA B C D E A B OC D E

市部校3年 34 16 26 11 12 12 12 42 27 6 郡部校2年

〃  3年

31 14 25 13 10 16 15 32 22 7

26 16 27 11 14 12 11 37 25 9

18 18 31 13 10 14 13 32 15 15

離島校2年

〃  3年 20 11 37 29 3 10 16 34 25 14

表9

問題番号

9)

選択肢記号 A B C D OE 市部校3年 10 2 9 15 64 郡部校2年

〃  3年

6 11 17 53 23 9 4 12 22 52

離島校2年

〃  3年

12 8 20 45 14

18 15 20 26 26

表1〜表9中の数値は,市部校 9クラス,郡部校2年4クラス,

郡部校3年11クラス,離島校3ク ラスにおける選択肢ごとの解答率 を,%で示したもの。

習指導の下での,圧力及び大気圧についての認識は,かなりあいまいな状態にあると考え

られる。

 問題6)については,ボイルの法則が適用される現象についての体験または仮想体験を 問うたものである。6−1)の正答率がそれぞれの場合でほぼ70%,6−2)では60%前後 を示している。ボイルの法則に関連した事項として,小学校で 空気の弾性 を学習する。

空気を圧し縮めるとかさが小さくなるという関係を,定性的に取り扱ったもので,気体の

性質の学習へと発展させるために注目される学習内容である。また,問題2)で水圧と水

の深さの関係を調べたところ,殆んどの子供たちが理解を示していることから,先に述べ

(9)

た6〜7割の正答率が得られたことは当然の結果だと思われる。

 問題7),8)については,ボイルの法則とシャルルの法則について問うたものである。

気体に共通する性質の一つとして,ボイル・シャルルの法則がある。シャルルの法則に関 連した事項としては,小学校で黛空気の温度による体積変化 を学習する。水と比較させ ながら,空気を暖めると体積が増加するという関係を,定性的に取り扱う学習内容である。

従って小学校段階において,ボイルとかシャルルとかの名称は知らないにしても,圧力と 体積,温度と体積の定性的な関係については理解できているものと考える。問題7−1〉,

8−1)では,ボイルの法則とシャルルの法則の式を示して,その式が表わすグラフを選択 させたものである。これらのそれぞれの結果は表7と表8に示されている通り,約20〜30%

の正答率であった。この結果は,一次式とグラフとの関係について,子供たちの理解はま だ不十分であるということを示しているが,ボイルやシャルルの法則等の語句に惑わされ たとも,PやVやTなどの文字式に不慣れであったとも考えられる。一次関数とそのグラ フは中学2年の数学で学習するようになっているので,この問題について3年生の理解は あるものと思うが,3年生の正答率も低い。このことについてはさらにその理由を明らか にしなければならないと考えている。問題7−2),8−2)では,圧力と温度と体積の関係 についてどの様な認識をもっているのか,式やグラフを用いず,それらの関係を正しく記 述したものを選択させてみた。これらの正答率はいずれの場合もほぼ30〜40%を示してお り,圧力と温度と体積の関係について,十分な認識が得られているとは言えない状態であ る。旧学習指導要領に於てはN物質の三態 の中で 物質の粒子モデル 気体の圧力と粒 子の運動 という学習内容があり,定性的な取扱でありながらも,上の関係については学 習するようになっていたが,新学習指導要領では全面的に削除されてしまった。原子モデ ルや分子モデルなどの微視的に現象を考察させる教材については,学習内容が高度になり 過ぎるために精選するとして,物質概念の形成には欠くことのできない物質の三態変化や,

気体に共通する性質に関連する教材まで削除されることになった。従って,気体のこれら の関係について中学校段階では取り扱わないので,正答率が低いのは当然の結果であろう が,3年生全体では4割程の正答率が得られていることに注目される。

 問題9)については,シャルルの法則が適用される現象についての説明を問うたもので ある。それぞれの場合に於る結果は表9に示される通り,郡部と離島校の2年で10%強の 正答率,3年では市部,郡部,離島校の順に64%,52%26%と正答率は減っている。2年 では,この現象の説明についての正答率は非常に低く,圧力と分子の運動の関係について は全く認識できていないと言えよう。しかし,約5割の者がそれぞれの分子の大きさが大 きくなる(選択肢D)また,約2割の者が気体分子の総数が増す(選択肢C)と誤答して おり,この現象について微視的な立場の説明を,多数の者が選択していることには注目さ せられる。3年全体では5割強の正答率があり,2年のそれと比較してみると1その値は 大幅に上昇していることがわかる。2年の学習事項として源子と分子 があり,この学 習を通して,気体の圧力と分子の運動との関係についての認識が深められたのであろう。

そして,この結果から,感覚的に解り易い現象については,微視的な立場からの見方があ

る程度できるようになる学令ではないかと思われる。

(10)

VI気体の学習

 物質概念を形成させるためには,固態や液態の物体のみならず気態の物質についても,

認識を深めさせねばならない。それぞれの状態にある物質の個々の性質を観察させながら,

物質のそれぞれの状態での共通する性質を認識させる必要がある。我々の身の回りにある 気体は感覚的にも認識し難いものが多い。例えば,酸素,窒素,二酸化炭素などは,透明 で,無色無臭である。従って,固態や液態の物質以上に,気体については子供たちにとっ て解り易く指導しなければならない。

 気体の学習に於て,まず最初に学習させなければならないのが,空気の教材である。空 気は気体として一番身近な気体であるが,透明,無色,無臭であるので,その存在はあま り認識されていないかも知れない。空気の存在は,風として,水の中のあわとして,また は,閉じられた容器の中に封入させることによって確かめることができる。空気の存在を 確かめさせる学習が,気体の学習の出発点であることから,十分に時間をかけて丁寧に指 導すべきであろう。ここでは,空気の存在のみを学習させるだけでなく,物質概念形成の 観点から,水の性質との比較のもとで,その類似的性質,例えば,風に対して水流とか,

水中のあわに対して空気中の水滴などに気づかせながら,学習させるべきであろう。そし て次に,空気と水の異なった性質,例えば,弾性の違い,温度による体積変化の割合の違 い(定性的な)などに気づかせて,空気の存在を子供たちにはっきりと,認識させる必要 がある。その時,物の属性である体積に注目させ,空気にも体積があることを把えさせて おくことは重要なことである。

 気体については多くの気体を観察させることが大切である。小学校段階で普通観察させ ている,酸素,二酸化炭素,水素などの気体以外でも,有色な気体や匂いのある気体も,

標本としてでも観察させる必要があろう。空気の教材で,気態についての認識ができてい れば,気態の物質の存在については,感覚的に容易に受け入れてくれるものと思われる。

空気の存在に気づかせる学習を行なったように,気体についても,その存在に気づかせる 学習を実施すべきである。空気以外の気態物質の存在を認識させた上で,それぞれの気体 の個々の性質について,さらに実験や観察を続けさせることが必要である。これらの事が らを通して,気体の個々の性質のみならず,気体に共通する性質の認識も育成されるもの と考える。ここでは,物の属性である重さと体積に注目させた系統的な学習4)を,気体の学 習では取り入れるべきで,単に,ある気体の特定の性質を覚え込ませるだけでは不十分で

あるということに,注意しなければならない。

 「気体はすべて透明であり,きわめて密度が小さく,顕著な圧縮性がある」5)として,固 体や液体と区別される。同時に,気体と空気との区別もさ

脚れば脇・・窒素と嚥その他の気体の混合物!國\

いて,単に,空気の分析的方法や,窒素と酸素の混合気体  図3 物質概念の形成図

(11)

と空気との関係を検証させる方法だけよりも,子供たちにとっては解り易いものになるの ではないかと考える。

 物質概念の形成には,我々の身近にある水と空気,そして固体物質を核として関連づけ る学習を展開することが望まれる(図3)。気体としての概念は,固体や液体の概念と対比 させながら,また,共通した類似点を探しながら発展するものであって,常温で気態の,

単体物質のみならず,すべからく万物のもつ状態の一つとして認識されねばならぬもので ある。従って,物のすべての状態における認識をバランス良く深めることこそ,物質概念 を正しく理解させることにつながると考える。

V皿おわりに

 空気の認識については,風として,弾i生として,温度によって体積変化するという性質 として,理解を得させようとしているのに対して,気体については,それらの性質に注目 させようとする視点が欠けている。空気と気体の関係や,一般的な気体の共通的性質の取 扱は高度すぎるとして,学習指導要領から削除されたことに疑問を感じる。化学教育の最 も基本的な概念である物質概念を,子供たちに正しく定着させるためには,気体の概念に ついても正しい認識を育てなければならないと考える。

 気体の圧力と温度と体積についてのアンケート結果では,圧力の定義の問題と,一次関 数のグラフの問題が予想したものよりも悪かった。既習の基礎的な事項の正確な理解が望 まれるところである。問題5)の離島校3年と,問題9)の各地域における3年の正答率 に顕著な差が現われた。これらの問題以外の他の問類では,地域,学年での正答率の差は あまり無い。これらの理由については,さらに対象者数を増して研究を続けていきたい。

また,問題9)の結果から明らかであるように,中学生の段階でも十分微視的な見方をす ることができると考えられることから,さらに,その微視的な物質観を育成させる教材に ついても検討を加えていきたいと考える。

 なお,本研究の一部は第10回日本理科教育学会九州支部大会において口頭発表したもの である。

参考文献及び引用

10乙34︻じ 森下浩史,長崎大学教育学部教科教育学研究報告,No。6,P.33,1983

文部省,小学校学習指導要領理科編 文部省,中学校学習指導要領理科編

斎野秀一他,理科教室,Vol.24,No.14,p.18,1981

玉田泰太郎,理科教室,VoL24,No.14,p.12,1981

参照

関連したドキュメント

1. ブランドとは (1)

SDGs 達成に向けて,世界に率先して行動し,日 本経済の持続的な成長につなげていくことを目的 としており,日本の SDGs モデルを特色付けるも

「真の地理学的素養を得たいと思う者は,地理学的に物を見,考え,学ばねばならない。し

しろこの方が重要であるといわねばならぬo第一次レベルにおける教師の任務は学習主体

ような統語論的な違いがある。ドコロカに前接する要素として 形容動詞を取る構造を考えてみよう。

( 1 ) 反復横 とびは敏捷性を測定す る頃 日である。敏捷性 とは,身体をできるだけ速 く,身体 の位置や方 向を変える能 力であ り,動作の反復速度 と反応の速 さに

内面的な変化を遂げながらその人物の物語を主体的に生きることができ

のはないのではないだろうか。