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Microsoft Word - 黒田ゼミナール林卒論2012_1_30.docx

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皿回しで考える日本的リーダーシップ

∼気持ちよく働いて頂く

..

ための経営理念∼

明治大学経営学部経営学科 4年7組 26 番 1710080384 黒田ゼミナール 林 聖二 [email protected]

要旨

資本主義経済の発展による企業規模の拡大に伴い、現在、組織における適切なリーダーシップの 研究が盛んに行われている。リーダーの持つ人間的な特性にフォーカスした特性理論、リーダーの 行動の特徴を体系化した行動理論、リーダーの置かれている状況との相性にフォーカスしたコンテ ィンジェンシー理論というようにリーダーシップ理論は展開を続けてきた。(第1章)この沢山の 理論体系の中から、日本的リーダーシップとして今後習うべきは何なのかを問う。 今回、本田技研工業の藤沢武夫、ヤマト運運輸の小倉昌男という業態も経歴も全く違う2人のリ ーダー経営者を例に挙げ、その共通点を探していった。(第2章)その調査の中から、日本的リー ダーシップには三隅不二不の提唱したリーダーシップ状況適応行動理論―「PM 理論」(第3章)と リーダーの考え方をフォロワーに理解してもらった上での全員経営―「フォロワーシップの形成」 (第4章)の二つの要素が欠かせない事が分かった。 しかし、これらの理論には実践方法が提唱されていないという大きな問題もあった。そこで、私 は「皿回しリーダーシップ理論」という独自の理論を提唱する。現実社会において「皿回し」を意 識する事で、この二つの要素を実行に移す方法を見つける事ができる理論だ。段階に応じて時には 勢いよく時にはさりげなく、下から皿をサポートして皿に気持ちよく回って頂こうとする「棒」。 これはまさに「PM 理論」におけるリーダーシップそのもの。(第5章)そして、「皿回し」の方法 は他人にも簡単に教える事ができ、これによりリーダーの考え方を多く人に明確に伝える事ができ、 「フォロワーシップ」を形成する事が可能になるだろう。(第6章)全員が本物の「皿回し」の達 人になれば、ただの「皿回し」が全員経営へと昇華されていくはずだ。 面白くてためになる、明日からでも実践できるリーダーシップ理論。

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目次

はじめに ― 社会を自分たちの手で良くしたい 第1章 リーダーシップ研究史 (p.2) 第1節 リーダーシップ理論体系化以前 第2節 リーダーシップ特性理論 第3節 リーダーシップ行動理論 第4節 リーダーシップ状況理論 第2章 日本のリーダー経営者たち (p.8) 第1節 本田技研工業株式会社 第2節 藤沢武夫 第3節 ヤマト運輸株式会社 第4節 小倉昌男 第3章 日本的リーダーシップその1―状況適応行動理論 (p.12) 第1節 PM 理論 第2節 既に取り入れられていたコンティンジェンシー理論 第3節 PM 理論が持つ異本的リーダーシップの側面 第4節 PM 理論の問題点と更なる日本的リーダーシップ追求 第4章 日本的リーダーシップその2―フォロワーシップの形成 (p.16) 第1節 フォロワーシップ 第2節 フォロワーシップとリーダーシップ 第3節 長期雇用が形成するフォロワーシップ 第4節 フォロワーシップが形成できない現代日本 第5章 リーダーは皿回しの棒である (p.19) 第1節 皿回しのやり方 第2節 皿回しはホスピタリティーで成り立つ 第3節 皿回しとリーダーシップの関係 第4節 皿回しが教える気持ちのいい仕事 第6章 経営者は皿回しの達人を目指せ (p.23) 第1節 皿回しの二つの進む道 第2節 本物の経営者は皿回しの達人 第3節 フォロワーシップを形成する皿回しの達人 第4節 皿回しはキャッシュフロー・クワドラント おわりに ― 皿回しのすヽめ (p.28) 参考文献・資料一覧 (p.29) あとがき̶この論文の執筆にあたって (p.29)

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は じ め に ― 社 会 を 自 分 た ち の 手 で 良 く し た い 私たち人間は、誰しもが地域や学校、企業といった何らかの組織に所属して生活を営んでいる。 そしてどの組織にも名前の有る無しに関わらずリーダーというものが存在する。私は今回、この論 文の中でそんな組織の一つである「企業」の中でのリーダーシップについて述べていこうと思う。 皆さんはリーダーシップについてどのように印象を持たれているだろうか?力強く引っ張って くれる人、影から支えてくれる人、組織の雰囲気を盛り上げてくれる人、そのような印象が強いの ではないだろうか。実は研究によりこれらの全てがリーダーシップであるという事が分かっている。 (この研究については後述)つまり、リーダーシップというものには様々な形が存在するという事だ。 そして、どのリーダーシップが最も効果を発揮するのかは環境やそれを行使する人によって変わる。 本論文では、企業におけるリーダーシップについて注目するという事で、企業という組織の中で 人々が生き活きと「生活」できる「ハッピーな労働環境」を作るために、どのようなリーダーシッ プが適しているのかに迫っていく内容になっている。 論文のテーマとして「リーダーシップ理論」を選んだ個人的な理由を少し述べさせて頂きたい。 私は労働環境を良くする方法には ①法律や条例など、社会の構造を変える方法 ②私たちが今できる事で変える方法 の二通りの方法があると思っている。①はニュースでもたびたび聞く、法律の改正などで労働環境 が良くなるというもの。数年前の派遣労働問題で有名になった「労働者派遣事業の適正な運営の確 保及び派遣労働者の就業条件の整備などに関する法律」の改正の議論が記憶に新しいだろう。②は 同じ社会構造の中でも企業によって様々な労働環境整備が進んでおり、独自の良い労働環境を提供 していくというもの。これも近年の社会問題として「ブラック企業」と呼ばれる非人道的な労働を 強いる企業が注目されるようになった事で、企業独自の労働環境体質の違いが強く印象づけられる ようになった。 私はこの二通りの方法の中、①のように私たちができる事に限界のある問題について言及するの ではなく、②のように自分達の力で少しずつでも変えられる事について言及したいと思っている。 特にその中でも個々の意識を変える事で労働環境を整備していけるものがいいのではないか、これ が私の「ハッピーな労働環境」を作るためのリーダーシップについて論文を書こうと思った理由だ。 リーダーと名のつく立場にいる人間だけでなく、すべての企業という組織に属している全ての人、 その一人一人が意識を変えていくだけで、社会の構造が変わらなくてもより良い労働環境は整備で きるはずだから。 論文を読む方の中には、これから述べる内容に大賛成の人もいれば大反対の人もいるだろう。し かし、この論文を読んで少しでも意識に変化を受け、「ハッピーな労働環境」を支える立役者の一 人になって頂けたら幸いと思う。 本論の核となるアイデアを提案して頂いたのは、私の高校時代の恩師でもあり、NPO 法人「楽知 ん研究所」の代表でもある宮地祐司氏が提唱するものである。

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第 1 章 リーダーシップ研究史 現在はリーダーシップという言葉がしきりに使われ、日常的に触れる機会の多い言葉となってい るがそれはいつ頃からなのだろうか。まずは、そのリーダーシップについての様々な研究の歴史に ついて述べ、リーダーシップとはどのようなものと捉えられてきたのかを説明する。 そもそものリーダーシップとは何なのかについて触れておこう。リーダーシップというのは日本 語に訳すならば「統率者の資格」であると言われている。ある集団社会を統率する際に、それを実 行するために必要とされる資格の事、それがリーダーシップだ。これには特に名前のついた所謂「検 定資格」ではなく、「資格」=「能力/性格/体格/家系/宗教観」など様々なものにあてはめるリー ダーシップ研究者が一般的だ。 では、過去の研究者はいったいどのようにしてこの「リーダーシップ(=統率者の資格)」が個人 の中に形成されると語ったのだろうか。今から時代を4区分して、研究が開始した時期に合わせて 時系列に説明していこう。 第1節 リーダーシップ理論体系化以前 リーダーシップは古くから主に軍事的/政治的な目的で研究されてきた。遡れば古代ギリシャま でたどり着く程、歴史の深い研究である。しかし、理論体系化される以前のリーダーシップの要素 (リーダーシップを持つ為の要因を便宜的にこう呼ぶ事とする)は研究者の主観的な視点、つまりは 研究をした人の個人的な意見に寄ってそれぞれ違った。 孔子によれば、 「子曰く、政を為すは徳を以てす。―老先生の教え。為政者は民衆の模範となる有徳者でなくては ならない。―」(為政)1) 政を為すとはすなわち一国のリーダーとして国を引っ張っていくという事。(当時、企業という 考え方は存在しなかった)そのためには「仁・義・礼・知・信」という儒教の5つの教え、徳を積 んだ人になる必要があるというのが孔子の考え方だ。この5つの教えは思いやりの心、正義を貫く 心、礼を尽くす心、知恵を磨く心、人を信じる心という意味であり、つまり心が磨かれている人で あればあるほど、良いリーダーであると説かれている。 また、マキャベリの『君主論』によるところでは、 「民衆というものは頭を撫でるか、消してしまうか、そのどちらかにしなければならない。という のは、人はささいな侮辱には仕返ししようとするが、大いなる侮辱にたいしては報復しえないので ある。」2) つまりは、あわよくば反逆者を殺してしまえる程の強い権力によって、他人を押え込めるという 資質をマキャベリは要素として挙げていたという事だ。 このようにそれぞれ求めるリーダーシップの要素は人それぞれの考え方に大きく依拠しており、

1) 加地伸行訳『論語』講談社学術文庫 2004 年 2) マキャベリ著『君主論』中央公論新社 2001 年

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理論体系化される事はなかった。誰の考え方を信じて、誰の説いたリーダーシップを目指していく のかについては、目指す人のそれぞれの考え方に任されていた。 カリスマ的な人物、改変的な思想を持った人物が(れがどのような人物か分からないが)組織のリ ーダーシップを一手に引き受けるというこの考え方は現在では「改変的リーダーシップ」と呼ばれ ている。 第2節 リーダーシップ特性理論 そんな所謂「人それぞれ」であったリーダーシップへの考え方が理論体系されていくきっかけと なったのは、フランスの心理学者のアルフレッド・ビネーの個人の思想/能力差の研究である。彼 は思想や知能の個人差を臨床診断に基づいて客観的に検証することを提唱し、1903 年の『Etude experimental de I'metelligence』という論文の中で思想の差異が生まれる原因の研究を、1905 年には弟子で医学生でもあったテオドール・シモンと協力し「ビネ=シモン式知能測定法」を提唱 した。これは児童の知能発達の差異を客観的に検証するものであり、現在の IQ テストの基礎とな っている。この研究は直接リーダーシップとは関係ないものの、人の能力の差異を臨床診断に基づ き体系化していくという手法が、その後リーダーシップの研究にも導入されたという面において大 きな意味を持っている。 当時、世界は一気に資本主義経済へと傾きつつあり、様々な企業がその組織の統率者としてのあ り方を研究していたところであった。19 世紀に誕生した企業の多くが 20 世紀においても組織とし て存続し続けるためには「改変的リーダーシップ」のような曖昧ではない基準を設けて、新たな組 織の統率者が誰なのかを判断する必要に迫られたからだ。 そこで本格的にリーダーシップの理論体系的な研究が臨床心理学者たちの手によって始められ た。それらの研究の中で最も有名なのはストッグディル(R.M.Stogdill)のものであろう。彼は 124 の研究対象とする組織の中で、15 以上の成功した組織のリーダーについての共通する特性をまと め、彼の手記の中にまとめあげた。その中で彼は「公正、誠実、思慮深さ、公平、機敏、独創性、 自信、攻撃性、適応性、ユーモアの感覚」などのそれぞれの要素を多く持ち合わせている人物がリ ーダーとしての資格を持っていると考えられ、それぞれの特性「能力、素養、責任性、参加態度、 地位」の5つに体系化した。 しかし、始まったリーダーシップ特性研究は短命に終わってしまった。リーダーシップの要素特 性を研究していく中で、要素として充分な特性を持ち合わせている人物であってもリーダーシップ を発揮しない場合が現実で発生してしまったからである。ストッグディルの研究においても、調査 した 124 の組織の中で矛盾する場合が発生していた事も分かった。彼は手記『Stogdill s Handbook of Leadership』の後半でもこの事に触れ、別の組織に移った場合も同様にしてリーダーシップが 発揮されるという事は必ずしも言い切れない、と特性理論の限界を示している。

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第3節 リーダーシップ行動理論 特性理論の限界を感じた臨床心理学者たちは、次に「彼らの特徴的な行動がリーダーシップに繋 がっているのではないか」という仮説に基づき研究を始めた。それらの研究のうちのいくつかを紹 介していく事にしよう。 ま ず 紹 介 し た い の は 「 ミ シ ガ ン 大 学 研 究 モ デ ル 」 と し て 有 名 な リ ッ カ ー ト (R.Likert) の 「Likert s Management System」である。1950 年代当時、リッカートを中心として結成されたミ シガン大学社会調査研究所が、プルデンシャル生命の監督者を対象として「課題志向」「人間関係 志向」のどちらを優先的に志向しているかが、業績にどのような影響を与えるかを研究した。その 結果を ① 独善的専制型 (課題徹底志向) ② 温情的専制型 (課題志向>人間関係志向) ③ 相談型 (課題志向=人間関係志向) ④ 参画型 (課題志向<人間関係志向) の4つのセクション(システム)に分けてまとめあげた。すると生産性の高い組織は④のセクション に圧倒的に多く、また多くの組織が②もしくは③のセクションに留まってしまっているという事が 明らかとなった。リッカートはこの結果を受けて④の参画型リーダーシップへの変革こそが組織の 生産性を高める事に繋がると述べた。これは彼の手記という形で発表されながらも、ミシガン大学 の社会調査会を務めるリッカートの著書という事で大いに注目された。 他にもいくつかリーダーシップ行動理論の例を紹介して行きたいと思う。時系列で考えればほぼ 同時期に行われていたオハイオ州立大学の心理学者シャートル(C.Shartle)のオハイオ研究を紹介 するのが適当だろう。これはシャートルがリーダーの行動を調査するために、詳細な記述式のアン ケートや周辺の環境調査などを行ったものだ。その結果として判明したリーダーとしての特徴的な 行動は 1700 以上にも及んだ。そんな膨大な数の行動を類型化しようとした所、彼はその行動のほ ぼ全てが「組織づくり」と「配慮」の2種類に分ける事ができると言及している。「組織づくり」 とは仕事の能率、つまり生産性を考えインフラを整備したりする事。「配慮」とは組織内の人間の 信頼を築き、より良い人間関係をつくっていくという事だ。つまりはミシガン大学研究モデルと同 ように、リーダーの行動は基本的に「課題志向=生産性志向」と「人間関係志向」の二つに分類さ れる、という同じ結果がほぼ同時期の研究で明らかになったという事になる。 これらの理論は突き詰めるところリーダーシップといのは「生産性への志向」と「人間関係への 志向」に基づいた行動によって形成されているという事。その二者のバランスがかつて様々な角度 で語られてきたリーダーシップの違いを説明する事にある事を示していた。しかし、彼らの研究の 欠点はそれらを「課題志向」と「生産性志向」の二元論、もしくはそれらを大事にしているかどう かという二元論を掛け合わせた4つのセクションで分類している事にある。リーダーの形は果たし て二元論や4つのセクションといった単純な分類で語る事ができるのだろうか。と、私を始め欧米 的な二元論志向に疑問を持つ人もいる。

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この問題を解決し、二元論的な考え方を脱却した行動理論が 1960 年代初頭に心理学者ブレイク (R.R.Blake)と数学者であったムートン(J.S.Mouton)によって提唱された「マネジリアル・グリッ ド」である。これは「業績への関心度=課題志向」と「人間への関心度=人間関係志向」の軸を縦 横にとり、それぞれの軸を9段階に分けた 9 9=81 のセクションにそれぞれのリーダーシップを 分類する事でそれを類型化しようという提案だ。ムートンの数学者的な思考が入る事により二元論 的な思考から脱却した事が伺える。 (図1:マネジリアル・グリッドの81セクション http://gms.globis.co.jp/ より転載) しかし、この理論の登場を境にリーダーシップ行動理論は行き詰まりを見せる。というのも両方 が充足しているかのように見える...リーダーであっても組織の生産性を高める事ができないという 事が現実の中で表れてきたからである。行動理論は現実的な精細な調査によって間違いのないもの である事は明らかであったため、この理論の適合は「ある特定の条件化」でのみ発揮されるのでは ないかという仮説が浮かび上がってきた。 第4節 リーダーシップ状況理論 このような時代背景の中で大喝采を浴びる理論が登場する。それが 1967 年にフィドラー (F.Fiedler)の提唱した「コンティンジェンシー理論」(日本語にするならば「状況適応理論」と言 える)である。この状況適応理論はそれまでの「課題思考」と「人間関係思考」のどちらが優れて いるという訳ではなく、そのリーダーが置かれている「リーダーと組織構成員の信頼状況」「仕事 構造の程度」「リーダーの職位上のパワー程度」のそれぞれの状況によって、そのどちら志向する リーダーが優れた生産性をあげるのかは変化するとした。その分析方法は、それぞれの志向に状況 変数として掛け合わせる事によって数学的に求めることができるとした。

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この「コンティンジェンシー理論」は世界で大注目され、ありとあらゆる心理学者、経営学者が 拍手喝采をした。しかし、日本人で経営学を学ぶ者の中にはこの理論に疑問を持つ人も多かった。 明治大学の経営学部で人事労務(人的資源管理)を専門に研究している私の恩師、黒田兼一は学生 時代を振り返ってこう語った。 「当時の大学院の教授が『黒田君、これはすごいぞ』とコンティンジェンシー理論の本を渡してき た。読んではみたものの『大した事はないではないか』と思った。」(2011 年 11 月 18 日) では何故「日本人」はこのように感じたのだろうか。先出の黒田氏は続けてこう語った。 「状況に合わせてリーダーシップを変えるなんて、日本人は当たり前にやっている事だ。」 欧米には斬新と捉えられた「コンティンジェンシー理論」は日本の企業において往来ずっと実践さ れてきた事であり、こと日本においては新鮮な考え方ではなかったのだ。 では、日本で近代以降に培われてきた「日本的リーダーシップ理論」とも呼べるリーダーシップ とはどのようなものなのだろうか。次の章で具体的な日本人の経営者にフォーカスして、その全容 を明らかにしていきたいと思う。

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第 2 章 日 本 の リ ー ダ ー 経 営 者 た ち

80 年代から 90 年代の初頭にかけ様々な日本企業が世界を席巻し「世界一の日本=Japan as No.1」 と呼ばれていた。この歴史の経営的背景でよく注目されるのは日本的経営の三種の神器と言われて いる「長期雇用・年功賃金・企業別労働組合」だが、私はそれ以外にも「日本的リーダーシップ」 にその理由があると思っている。それは先の章で挙げた「コンティンジェンシー理論」、つまりは 条件適応的リーダーシップを近代以後変わらず実践してきたという事実があるからだ。 そこで実際に日本から世界へ羽ばたいた企業の経営者を何人か例に挙げ、そのリーダーシップの あり方がどのようなものだったのかを述べていく事にしよう。 第1節 本田技研工業株式会社 本田技研工業株式会社(今後 Honda)は海外を席巻した日本の自動二輪車・自動車企業の中でも、 日本を代表するメーカーである。そして Honda の経営を語るにあたって、現在でも尚語り継がる日 本の代表的な経営者であり創業者でもある本田宗一郎、彼を経営面で副社長という立場から支えた 藤沢武夫の経営理念は欠かす事ができないだろう。今回は経営的リーダーシップにフォーカスし、 藤沢の経営にスポットを当てていく。まずは藤沢と本田の紹介をした後、彼らの逸話から垣間見え る、藤沢のリーダーシップについて述べていこうと思う。 本田宗一郎はトヨタ自動車工業株式会社(現在のトヨタ自動車株式会社)の下請け企業の社長で あったが、それを売却した資金を元手に Honda を創業。全く二輪技術に関する知識のなかった本田 は、Honda の創業前に技術の勉強を重ね、世界の Honda の核となる技術力を培った。また、実験室 でのデータよりも実走のデータに重きを置くなど徹底した現場主義の生粋の技術者であった。 その技術の本田を創業以来支え続けてきたと言われているのが藤沢武夫である。本田が常に顧客 が満足する最高の技術力の開発に力を注ぐことができた背景には、藤沢が資金面・経営面における 援護があったからだ。藤沢は Honda の創業したよく年に、本田と出逢い直後に常務として入社。そ の後、副社長になり徹底した現場主義を持つ本田の技術力を活かせる経営作りを心掛け、退任まで 副社長として支え続けた。後に藤沢はこのように述懐している。 「私はあの人の話を聞いていると、未来について、はかりしれないものがつぎつぎに出てくる。そ れを実行に移していくレールを敷く役目を果たせば、本田の夢はそれに乗って突っ走って行くだろ う、そう思ったのです。」3) 本田は技術のリーダー、そして藤沢は経営のリーダーと言った所だろう。では藤沢の備えていた経 営的リーダーシップとはどのようなものなのだろうか。

3) 本田宗一郎著『本田宗一郎 夢を力に』日本経済新聞社 2001 年

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第2節 藤沢武夫 本田はまさに生粋の技術者であり、日本古来の言葉で言えば Honda の技術者たちの「棟梁」のよ うなリーダーだったと言えるだろう。本田は徹底した現場主義の技術者であり、自らが工場の最前 線に立ち、他の技術者を厳しく叱責する事で Honda の技術力の向上を促してきた。そのために藤沢 はその本田や Honda の技術者たちをマネージメントするという立場にいた。 藤沢は上記の述懐から、彼自身の役目をあくまで「レールを敷く」という事のみだと考えていた 事が分かる。本田やその周りの技術者たちが新しい事に挑戦する時は、それが自由にできるような 資金面、人事面でのサポートを。また、企業が安定成長になった時でも、常に先を見た新たな技術 フィールドや市場の提案によるキッカケ作りをする事で、技術者たちの進むべき方向を提示してき た。具体的にはこんな逸話が残っている。 本田との逸話の中では、50cc の自動二輪車「カブ」を販売すると決めた時の話が有名だ。 「50cc で女性も乗れる家電感覚のオートバイを作ってくれ、と本田に頼んだ。大衆向け商品の大 量生産・大量販売を狙ったのである。本田は『そんな 。50cc で乗れる車なんか作れるものか』 と答えたが、藤沢は『これができなきゃ、本田技研は将来、そう発展しない』と吹き込む。藤沢の 挑発に、本田の持ち前の技術者魂が頭をもたげた。」4) また全社単位で見ればこんな逸話もある。Honda が株式公開をして程なくの頃、商品の不具合と 競合他社との競争激化、労働組合との不和などの問題が一気に押し寄せ、Honda は倒産の危機を迎 えていた。更に追い打ちをかけるように昭和恐慌が日本を襲った。その危機から Honda を救った時 の藤沢の対応だ。 「人間、誰でもミスや失策が出ると、そのことを隠蔽したくなるものだ。もし、外部に知られれば、 それこそ不安材料に使われ、ことによってはウワサがウワサを呼び、負の連鎖に陥るかもしれない。 (中略)従業員に包み隠さず会社の現状を伝え、その協力を要請し、ユーザーに対しても見通しを含 め、応援を依頼した。」5) このように労働者やディーラーとの信頼関係という対外的なサポートも彼の仕事だ。 彼のリーダーシップは挑戦の方向性の提示とそれが実行できる環境づくり、つまり「サポート」 する事こそが藤沢のリーダーシップと言えるだろう。そしてそのサポートの方法は、その時々の置 かれている状況によって大きく変化している。 第3節 ヤマト運輸株式会社 現在、宅配便の代名詞として日常用語で使われている「宅急便」これはヤマト運輸株式会社(以 後ヤマト)の商標登録である。今や当たり前となった宅配サービス、しかし、このサービスが始ま ったのは僅か 35 年前の出来事である。それまでは個人向けの小荷物配達サービスは郵政省の取り 扱う郵便サービスのみであったが、そこにヤマトが割り込む形で新規参入したのがその始まりだ。 ヤマトの前身は大和運輸、小倉康臣が始めた自動車専門の運送会社。全国にトラックが 204 台しか

4)http://www.just-link.net/tokushu/?p=1151&preview=true 2011 年 12 月 25 日アクセス 5)http://www.just-link.net/tokushu/?p=1151&preview=true 2011 年 12 月 25 日アクセス

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なかった 1919 年当時、4 台のトラックを保有していた小倉康臣がスタートした大和運輸は、戦後 の高度経済成長時には、時代の追い風もあり関東一円に運送ネットワークを広げるまでに成長した。 しかし、高速道路の相次ぐ建設と自動車の普及により長距離の配送の需要が急増、その需要に対応 しきれなかった事から、一転して倒産の危機へと追い込まれた。それを救う起死回生の一手とも言 えるのが、康臣の息子で2代目社長の小倉昌男(以後小倉の記述は彼の事を指す)の始めた「宅急便」 サービスだ。小倉はそれまでヤマトの経営姿勢を論理的に覆した。 「それまで業界の常識だった『小口荷物は、集荷・配達に手間がかかり採算が合わない。小さな荷 物を何度も運ぶより、大口の荷物を一度に運ぶ方が合理的で得』という理屈が誤りだと気付いたの です。小倉は『小口の荷物の方が、1kg 当たりの単価が高い。小口貨物をたくさん扱えば収入が多 くなる』と確信し、75 年の夏『宅急便開発要項』を社内発表しました。」6) これが瞬く間に評判となり、競合他社もこぞって参入し「宅配便」ブームが日本に吹き荒れた。ヤ マトはその先駆けとして、スキー急便(スキーを宅急便で配送する事で身軽にスキーに行けるサー ビス)や今までにないサイズの宅配便をいち早く扱う事で常に先行企業としての優位性を保ってき た。ヤマトが倒産の危機から大逆転を果たし、現在の地位を築くまでになったのは、小倉の理論的 な経営視点が発端だった。しかし、彼が経営者として、リーダーとして有名なのはそこだけではな い。そこで2人目は創業者でもなく、製造業でもない、ヤマトの小倉昌男という全く違う業種のリ ーダーにフォーカスして彼のリーダーシップを探る事にする。 第4節 小倉昌男 小倉昌男は上記のヤマト再建の逸話にもあるように、非常に論理的な思考と研究を信条とした経 営手法を取っており、一見リーダーシップとはかけ離れた経営者に見えがちだ。確かに小倉は 「私は、経営は論理だと思っている。だから、考える必要がある。考えて、考えて、考え抜く。で も、わからないことがある。その場合はやってみることである。やってみればわかる。やらなけれ ばわからない。これは私の信条である。」7) というような言葉を自著の本でも述べている。しかし、前述の一文前にはこのような言葉が同時に 述べられている事にも注目したい。 「お客さまだから親切に、身内だから不親切ではいけない。まして社内、特に上役だから親切に、 部外者だから不親切など、とんでもない話。サービス業に携わる者は、いつでも、誰にでも親切心 がなければ失格だと思う。(中略) 優しい人には二種類ある。性格が穏やかで言葉づかいも静かな 人。それも良い人だが、それだけでは物足りない。心に思いやりがあり、常に相手のことを気づか って行動する人、それこそ本当の優しい人だと思う。」8) この文章を見る限り、小倉が経営において重要視しているのは理論だけではなく、同時にホスピタ リティーをも重要視している事が伺える。また出典は定かではないものの、あるインタビューには

6)http://www.kuronekoyamato.co.jp/company/30th/index.html#2 2011 年 12 月 25 日アクセス 7) 小倉昌男著『やればわかるやればできる』講談社 2003 年 8) 小倉昌男(2003 年)

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「成功している経営者は『ねあか』の人が多い」と答えていたそうだ。「ねあか」というのは「根 . から明.るい人」の事であり、プラス思考な人物の事を指しており、経営者はプラス思考をする必要 があるというのが小倉の持論だ。小倉自身も本来内向的で、非社交的な性格であったが、「意識し て明るく振舞うように努めた結果、あまり無理をしないで明るく振舞えるようになった」とも答え たそうだ。 これらの逸話から見え隠れする彼の経営手法・リーダーシップの特徴は、経営を非常に理論的に、 合理的に考える一方で、その理論を用いる目的は「親切心=ホスピタリティー」であり、それは顧 客にも社員にも同様であるという事だろう。実際に小倉が子会社である静岡運輸に出向に行った際 の逸話にこのようなものがある。 「私は、会社のいろいろな壁に『安全第一、営業第二』のポスターを貼らせた。営業を第二とする ことで、本当の第一は安全であることを強調したのである。労災事故は、少しずつ減っていった。 にもかかわらず、営業のほうはむしろ活発になっていった。 (中略)どんな工場にいっても『安全第一』の標語が掲げられていないところはない。しかし安 全第一という言葉は、マンネリの代名詞のようなもので、どれだけ実効を上げているか疑問である。 というのも、第二がないからである。」9) 少し長かったが、いかがだろうか。考え方は非常に理論的、合理的であるものの、その目的は「よ り分かりやすく自分の意図を伝えるという事」の一点だ。これは聞き手に対する心配り、親切心か ら生まれたものである事が分かってもらえたのではないだろうか。その憶測を裏付けるような彼の 経営理念がある、現在日本企業でも多くの企業が取り入れようとしている「全員経営」だ。 「キーワードはコミュニケーションである。具体的には、まず企業の目的とするところを明確にす る。」 「人間は基本的に、細かく指示されると不愉快になり、任されて自主的にやらせてもらうと気持ち が良い。」 「全員経営とは、経営の目的や目標を理解した上で、仕事のやり方を細かく規定せずに社員に任せ、 自分の仕事を責任を持って遂行してもらうことである」10) 労働者には気持ちよく働いてもらいたい。そのためには細かい指示を出す事は出来ないので、目的 を明確にし、それを理解してもらう必要がある。そのためにはコミュニケーションは不可欠である。 というのが小倉のホスピタリティーからくる考え方である。この彼の著書を読んでなお「理論的、 合理的」な経営者の面しか見えない人はいないだろう。必ず小倉の人間的なリーダーとしての一面 を見る事ができるはずだ。 つまり彼のリーダーシップはコミュニケーションにより明確に自分の/組織の目的を伝える事に よって労働者を気持ちよく働かせる事なのだ。そのために理論が欠かせないだけのことなのである。

9) 小倉昌男著『経営学』日経 BP 社 1999 年 10) 小倉昌男(1999 年)

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第 3 章 日 本 的 リ ー ダ ー シ ッ プ そ の 1 ̶状 況 適 応 行 動 理 論 実は第2章で紹介した日本人のリーダーの特徴にフォーカスして行われた研究が存在する。一つ はリーダーシップ行動理論の中に位置づけられている、三隅二不二によって 1966 年に提唱された 「PM 理論」だ。私はこの「PM 理論」こそが日本人に適した(これを以下で「日本的」と記す事と する)リーダーシップ研究を行った唯一の研究であり、同時に我々にとって最も習うべきリーダー シップ理論であると考えている。そこで、これから「PM 理論」の内容に関する説明と、なぜそれ が日本的であり今後見習うべきだと私が考えているのかを説明したい。 第1節 PM 理論 三隅によれば集団の機能というものは P(Performance function)機能と呼ばれる目標達成能力と、 M (Maintenance function)機能と呼ばれる集団維持能力により成り立っている。そして、それぞれ の能力の強弱によって4つのタイプのリーダーに分類できるというのが彼の提唱した「PM 理論」 である。彼はこの理論を研究するにあたり、模範的な結果を出しているリーダーについて 63 の項 目に分けてその特徴を分析、その結果この二つの機能が大事であるという事が判明した。研究の概 要は図2を見てもらいたい。 (図2:PM 理論の4セクション http://leadershipinsight.jp/dictionary/words/pm_theory_of_leadership.html より転載) それぞれの強弱をもとに4つのセクションに分けた結果は以下の通り。 ① PM 型 (目標達成を強調しながら人間関係にも気を配るリーダー) ② Pm 型 (目標達成に重点を置き、人間関係にはあまり配慮しないリーダー) ③ pM 型 (目標達成よりも、集団内の人間関係に気を配るリーダー) ④ pm 型 (目標達成にも人間関係の調整にも消極的なリーダー)

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第2節 既に取り入れられていたコンティンジェンシー理論 ここまでの研究であれば、他のリーダーシップ行動論と何ら変わりはないだろう。「ミシガン研 究」や「オハイオ研究」でも同様な研究はなされ、結局は「課題志向」と「人間関係志向」のどち らに偏っているのかによってリーダーのタイプも変わるという事は論証されてきた。 しかし、「PM 理論」はそれらとは違う更なる研究が行われていた。それは第2章において黒田氏 が「日本では当たり前」と言及していた「コンティンジェンシー」の考え方を既に取り込んだ研究 だ。一体どのような状況において① ④のリーダーシップがより効果を発揮するのかを研究したの である。その結果は次の表1の通りだ。 (表1:「PM 理論」の目標別効果測定結果 参考:三隅二不二著『リーダーシップ行動の科学』講談社 1986 年) このようにして長期的な目標においては M 機能(集団維持能力)が重要視されるのに対して、短期的 な目標においては P 機能(目標達成能力)が重要視されている事が分かる。どちらのリーダーシップ を重要視するのかが、状況によって大きく違うのがこの理論の特徴だ。この点において敢えて「PM 理論」には「コンティンジェンシー」という言葉を使わずとも、その要素が含まれている。 第3節 PM 理論が持つ日本的リーダーシップの側面 なぜ私が「PM 理論」を日本的なリーダーシップだと考えるのか、その理由は二つある。一つは 「PM 理論」が「リーダーシップ行動理論」であるからである。日本は近代以降「長期雇用」をそ の経営の特徴としており、それは時に「終身雇用」と呼ばれる程濃いものであった。そして代表取 締役を始めとした「経営者」や同様に経営側の立場に数えられる「管理職」になる人間の、その多 くが一般の労働者の昇進した先にあるものである。つまり経営者の多くは、同じ企業の「労働者か ら経営者へ」と昇進により突然に変化するのである。そして突然にリーダーシップが求められる。 そこでリーダーシップを発揮し「経営者としての役目=リーダー」を(その結果はどうであれ) 務められるという事は、労働者の間に大なり小なりのリーダーシップを誰もが学んでいるという事 になる。この現実の状況は「リーダーシップ特性理論」では説明出来ない。さらにその「リーダー シップ特性理論」で分類したリーダーの特性をもとに、置かれた状況によって最適な人物を配置す PM 型>pM 型>Pm 型>pm 型 目的とする状況を部下の意欲・満足度、職場のコミュニケーショ ン、事故の低発生率とした場合におけるリーダーシップの効果。 PM 型>Pm 型>pM 型>pm 型 目的を生産性とした場合。ただし、この結果となるのは達成の期 日を短期的に設定した場合に限る。 PM 型>pM 型>Pm 型>pm 型 目的を生産性とした場合。ただし、この結果となるのは達成の期 日を長期的に設定した場合に限る。

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るという「リーダーシップ状況理論」の実践も日本的「長期雇用」では不可能だろう。つまりは「リ ーダーシップ行動理論」が日本的リーダーシップを説明するのに最も適しているという事になる。 企業に所属している誰もがリーダーになれるような環境を目指すのが日本的経営のあり方だから だ。 日本的リーダーシップが行動理論ならば「ミシガン研究」のような二元的な行動理論や「マネジ リアル・グリッド」が日本的だと説明する事もできるかもしれない。しかし、それらでは説明出来 ない特徴が日本的リーダーシップには含まれている。その特徴というのが行動理論の中で「PM 理 論」だけが唯一内包している「コンティンジェンシー理論」のエッセンスだ。 なぜ日本的リーダーシップは「コンティンジェンシー理論」の要素を含んでいるのか。それを 第3章の第2節で取り上げた藤沢の逸話を「PM 理論」に当てはめて説明したいと思う。 彼のリーダーシップの形は「サポート」という形でありながらも、この「Pm 型」と「pM 型」を 上手く使い分けている。例えば一つ目の具体的な逸話として紹介した 50cc の自動二輪車「カブ」 の販売を決めた時の逸話について検証してみよう。当時、国内における大型の馬力のある自動二輪 車の売上はすでに頭打ちの状態にあり、これ以上の売上を二輪車であげるためには、早急に次の手 を打たなければいけなかった。藤沢は「50cc のオートバイという世界初の技術」という目標を本 田に与える事で、その技術開発を促した。これは「目標達成能力=P 機能」が強い「Pm 型」のリー ダーシップを発揮したという事だ。これは短期的な市場シフトという目的に応じたリーダーシップ であった。 同様に、その次の藤沢の逸話を「PM 理論」の4つのセクションに当てはめてみよう。その際の 行動は逆に「目標達成能力=P 機能」よりも「集団維持能力=M 機能」のリーダーシップを発揮し ている事に気がつくだろう。経営状態の悪化は短期的な問題でもあるが、それ以上に長期的な課題 として取り組むべき必要がある。その苦しい時期を無理な技術力の強化や企業規模の変化によって 乗り切ったとしても、いつかまた発生してくる問題であるからだ。藤沢はこの恐慌への対応に Honda 得意の技術力で勝負するのではなく、労働者やディーラーとの信頼関係の再構築によって、 「集団維持能力=M 機能」によって乗り切った。この問題解決には実に7年の歳月を費やしたと言 われている。これは藤沢のリーダーシップの特性が「pM 型リーダーから Pm 型リーダーへ」変化し ていったという訳ではない。日本企業では近代以降、このように問題の質によって適切なリーダー シップを選び実践するという行為を当たり前のように行ってきたのだ。そして、それは「PM 理論」 の提唱以前からである。 小倉に関しても同様の事が言える。短期的に手直しの必要なサービスの細かい指示に関しては 「安全第一、営業第二」のように何の目的があるのかを明確に示し、目標設定をする事で「目標達 成能力=P 機能」を発揮しているものの、「全員経営」など長期的な経営理念の浸透には「コミュニ ケーション」という終わりのない「集団維持能力=M 機能」を発揮している。これ以降の論述は藤 沢の例を読んでもらえば一目瞭然なので、割愛させて頂く。 これらの理由により、私は「PM 理論」が日本的リーダーシップの成功を論証する理論であると 考える。情報時代の到来やグローバル化の更なる広がりなど、世界の経済はめまぐるしく変化して いる。しかし、「人」を相手とした経営の本質というのはそのような経済の変化に影響される事な く、その企業が属している「人の文化」の変化でしか変わらないというのが私の、そして多くの経

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営学者の考えでもある。日本人の文化的な特徴、日本企業の経営の特徴に大きな変化がない以上、 「PM 理論」は現在も日本のリーダー達が習うべき理論であると考えられる。 第4節 PM 理論の問題点と更なる日本的リーダーシップ追求 しかし「PM 理論」にも(すべてのリーダーシップ理論に通じる事ではあるが)ある大きな問題が ある。それは理論を実践する方法が明示されていない事にある。「目標管理能力=P 機能」を目標の 設定と課題志向̶つまりは成果主義と捉えるならば、業績を短いスパンで管理し、その増加に徹底 した実践を行う事は簡単だろう。しかし「集団維持能力=M 機能」に関してはそう簡単なものでは ない。集団の維持には様々なアプローチの方法があり、簡単に実践する事はできない。そこで私は この後の5章において「集団維持能力=M 機能」の実践的アプローチの指針となる独自のリーダー シップ理論を提案したい。そして同時に、先程「実践は簡単だ」と述べた「目標管理能力=P 機能」 についても、同時に独自のアプローチを提案する。できるだけ簡潔に説明し、これを読んだ皆様が すぐにでも実践への準備を始められる具体的なイメージを持てるように述べるつもりだ。 また、日本的リーダーシップの特徴はこの「PM 理論」だけでは説明することができない。章の タイトルに「その1」と書いたように、実は2章であげた日本のリーダーの特徴を説明するために はもう一つ挙げなければいけない考え方が存在する。それが「フォロワーシップ」だ。リーダーは リーダーシップを備えているだけでリーダー足り得る訳ではない。リーダーと対になるフォロワー と呼ばれる人たちが「フォロワーシップ」を備えている事、これがリーダー足り得る条件となって くる。なぜならば、リーダーシップを発揮する前提として、そのリーダーシップに影響を受ける人 たちの存在が欠かせないからだ。そこで、第4章で「フォロワーシップ」というもう一つの.....リーダ ーシップに焦点を当てて述べていく。

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第 4 章 日 本 的 リ ー ダ ー シ ッ プ そ の 2 ̶フ ォ ロ ワ ー シ ッ プ の 形 成 第3章の最後でキーワードとして取り上げた「フォロワーシップ」。実は日本的リーダーシップ のもう一つの大きな特徴はこのフォロワーシップを育てる=形成するリーダーシップであるという 事だ。この章では「フォロワーシップ」という言葉の持つ意味をリーダーシップと照らし合わせな がら説明し、そして何故日本的リーダーシップの中ではフォロワーシップが形成されるのかを説明 していく。 第1節 フォロワーシップ ここで登場した「フォロワーシップ」とは「リーダーシップ」と対になる言葉である。この論文 においては「リーダーシップ」のあるべき姿を探しているため、仮に「リーダーシップ=リードす る(統率する)者の資格」と考える事とする。すると「フォロワーシップ」とは「フォローする(後 を追う)者の資格」と考える事ができる。フォロワーに「資格」という言葉を付けるのも多少おか しいと感じる人も多いと思うので、フォローする人の「心構え」だと考えて頂いてもいい。(以下 フォロワーシップの説明にはこの言葉を用いる)最近では様々な経営学書や文芸書でも取り上げら れ、言葉自体は知っている人も多いだろうが、その本当の意味を理解している人は少ないと思う。 一体フォロワーシップの「正体」とは何なのか。そして「フォロワーシップ」が何故、日本的リー ダーシップと関係があるのか、それについて説明していく。 第2節 フォロワーシップとリーダーシップ まずは「フォロワーシップ」の正体に迫ろうと思う。ここでは「フォロワーシップ」は先述した ように「リーダーシップに準ずるもの」として捉え、リーダーシップからのアプローチで解明して いく。第2章において2人のリーダーの例を挙げたが、その中の藤沢の言葉をもう一度見て欲しい。 「私はあの人の話を聞いていると、未来について、はかりしれないものがつぎつぎに出てくる。そ れを実行に移していくレールを敷く役目を果たせば、本田の夢はそれに乗って突っ走って行くだろ う、そう思ったのです。」3) この言葉は決して本田宗一郎だけに当てはまる言葉ではなく、Honda の技術者全員に当てはまる言 葉だと考えられる。つまり藤沢のリーダーとしての役目は、フォロワーとなる技術者たちに同じ方 向を向いてもらうように促し、その実行に向けたレールを敷く事にある。この時にフォロワーはど うしているだろうか。フォロワーとなる技術者たちは全員が藤沢の敷いたレールの上に乗り同じ方 向を向いて進んでいるだろう。それぞれが違う方向を向いていたとすれば、レールから脱線し全く 見当違いの方向へ進み、目的の実行はなされない。つまりフォロワーの心構えはリーダーの考えて いる事・そこから提示される進むべき方向を理解し、それに乗っかる事だと言えるだろう。簡潔に 言えばリーダーの考え方=リーダーシップへの「理解」であると言える。

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つまり「フォロワーシップ」とは「リーダーシップへの理解」なのだ。「リーダーシップ」と全 く正反対にあると思われている「フォロワーシップ」だが、実はこの二つはコインの表裏のように 一体の存在と言えるのである。 これだけだと本当か?と疑問符が付くと思うので小倉の例も出してみたい。 「キーワードはコミュニケーションである。具体的には、まず企業の目的とするところを明確にす る。」10) これが小倉の考える経営理念であり、論理的な経営志向はその明確さを裏付けるためのものだとい う事はすでに述べた通りだ。しかし、なぜそこまで明確にする事に拘る必要があるのか、それはフ ォロワーである労働者にその目的を理解してもらいたいからである。しかし、いくら伝える側のリ ーダーが分かりやすく明確に伝えようとしても、それを受け取る労働者たちが理解する気持ちがな ければコミュニケーションは成立しない。そこでフォロワーである労働者達の「企業の目的=リー ダーの考える事を理解しようとする心構え」が必要になってくる。小倉のリーダーシップを示す逸 話からも「フォロワーシップ」が「リーダーシップへの理解」である事が分かるだろう。そしてそ れが如何に重要な意味を持っているのかも分かる。 第3節 長期雇用が形成するフォロワーシップ では、なぜ日本では「フォロワーシップ」が形成されやすいと私が考えているのか、この節では その理由について述べていく。この特徴には第4章の第3節でも取り上げた「長期雇用」という日 本の雇用慣行が大きく影響している。日本国外の多く(その殆どが欧米諸国の企業なのだが)では 「労働者」と「経営者」の境界線がしっかりと引かれており、労働者に経営者の考え方=リーダー シップを理解しようとする心構えはないに等しい。例え理解していたとしても、絶対に経営者にな れはしないし、それよりも実務労働における成果や、検定資格や職能などの能力と違って評価され る事はないからだ。 しかし、日本企業においては既に述べた通り、労働者が昇進で経営者になるという状況が頻繁に 発生する、すると、経営者側が労働者にある程度最低限の「フォロワーシップ」を求める上、それ が人事考課の基準の一つにもなり得る。そして、現実にはこれらのような深い考察をせずとも、当 たり前のように考え実行している人が多い。近代以降、脈々とこの慣行を受け継いできた事で、そ れに異を唱える人がいないからである。 そして、日本的経営において「フォロワーシップ」がこんなにも重要視されているという事は、 日本的リーダーシップの要素として、「フォロワーシップの形成」という要素も大きな幅を持って 取り入れられているはずだ。何故なら、フォロワーシップによって「フォロワーからリーダーへの 歩み寄り」があったとしても、リーダーからフォロワーへの歩みよりがなければ相互理解は不可能 だからである。日本のリーダーシップは第2章で紹介したリーダーシップ要素以外に、「フォロワ ーシップの形成」が求められるという点でも独特であるといえる。

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第4節 フォロワーシップが形成できない現代日本 そんな「PM 理論」に続く二つ目の日本的リーダーシップ要素「フォロワーシップの形成」だが、 これが現代日本の企業経営において発揮されなくなってきている傾向にある。これは 90 年代まで 脈々と受け継がれて生きた日本的雇用慣行の崩壊の始まりに伴い、徐々に失われていった。 日本的雇用慣行の是非については、研究者から賛否両論が飛び交う事が多い。今回はリーダーシ ップについて論じているので特に言及はしないが、「フォロワーシップの形成」に関してのみ言及 するならば私は「是」だと思う。例え評価がなかったとしても/労働者が経営者になる事がなかっ たとしても、労働者がリーダーの考え方に理解を示し、労働者/経営者が一緒に同じ方向に進むと いう事は企業経営にとって正の要素にしかなり得ないからである。(ヤマトの小倉の推進した「全 員経営」によるメリットを考えてもらえば分かるはずだ) 企業経営の目線で見て正の要素になるであれば、例え労働者がそれをした事で恩恵を受ける事が なかったとしても、経営者はリーダーシップに盛り込むべきである。そして、実際にはフォロワー シップを備えた労働者が増えれば、それは企業にとって成長要素になり、給与などの形で労働者に も還元される事にもなるだろう。先ほど「労働者が恩恵を受ける事がなかったとしても」と述べた が、結果的に企業が成長したならその成果は必然的に労働者に還元されるので、労働者にとっても 十分に身に付ける価値はある。 ただ時代は移り変わっており、日本的雇用慣行が「フォロワーシップの形成」をサポートしてく れる時代は終わった。労働者はそう簡単に「フォロワーシップを身に付けよう」と意識しない時代 になったのである。そこで、それを備えたいと思わせる価値を「フォロワーシップ」に付与する事 が必要となってくる。と同時に、その価値を理解させる為の明確で理論的な、分かり易い伝え方も 考え出さなければならない。そこで第5・6章の中で「PM 理論」の実践だけではなく、この「フ ォロワーシップの形成」を実践する方法も同時に示していく。

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第 5 章 リ ー ダ ー は 皿 回 し の 棒 で あ る 突然話は変わるが、これを読んでいる皆様は「皿回し」は見た事があるだろうか?そう、棒の上 でクルクルと皿を回す大道芸の「皿回し」だ。それが一体リーダーシップとなんの関係があるのか と思う人もいるだろうが、実はこの「皿回し」が日本的リーダーシップの実践方法を理解する最適 ツールなのだ。これを私は「皿回しリーダーシップ理論」と名付けて提案する。 最初に、「皿回し」のやり方を説明しよう。 第1節 皿回しのやり方 (表2:皿回しのやり方 参考:宮地祐司/石川雄一著『皿回しで考える』楽知ん研究所 2005 年) ① 棒だけを持って皿を回す実感をシュミレーションする。 皿の下側の縁をなぞっていくようなイメージで、持った棒の先端を くるくると回していく。 その際に、必ず棒を持っている手(手首)の位置は動かす事はせず、 そこを頂点とした円錐を空気中に切り抜くように動かす。 ② いよいよ皿を回す段階になったら、まずは回す前に棒に引っかか っている皿を起き上がらせる必要がある。 まずは皿の縁を棒で引っ掛けるようにして構える。 棒を持っている手とは別の手で皿の淵を持ち、ひねりながら上に軽 く投げるように持ち上げて、皿を起き上がらせ勢いをつける。 ③ 皿が棒と垂直の位置になり勢いが付いた所で、シュミレーション した通りに皿の下の縁を徐々になぞっていく。 動かすスピードは皿のスピードに合わせる事が大事。 皿を回すのではなく、皿に気持ちよく回って頂く .......... という気持ちだ。 遅すぎると皿が垂れ下がってしまうし、早すぎると皿が飛び出して いってしまう。 ④ 段々と棒で皿を回しているのか、皿に棒が回されているのか分か らない状態になってくる。 自転車を早く漕いでいる状態を想像してもらえばいい。 この状態になれば手を止めても、皿はそのまま回り続ける。 あとは、時間が経って勢いが弱くなってきたら③の行程でもう一度 勢いをつけ直す。

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この中で特に重要なのは、②と③の行程である。皿を持ち上げて回せる状態(棒と垂直の位置) に持っていく②の行程は、『皿回しで考える』(2005 年)の中において「皿にキッカケを与える」と いう言葉で説明されている。この時の力加減によって、皿が上手く軌道に乗れるのかどうかが変わ ってくる。また、③の行程は同書において「皿を引っ張る」という表現がなされている。適切なス ピードで棒を動かさなければ皿は回らない。遅すぎれば皿は勢いを失って垂れ下がっていき、棒か ら落ちてしまう。私は何度か「皿まわし」に関するプレゼンテーションを行い、その中で体験した 事がない人にも「皿回し」をやって頂いた事があるが、この「皿が垂れ下がる状態」になった事は 全くと言っていい程見た事がない。しかし、まるでフリスビーを放ったように皿が棒から飛んでい くという失敗は非常によく見かける。これは最初から棒のスピードが早すぎて、皿がその動きにつ いていけない事がその原因だ。あくまで皿の回転速度に合わせて棒を動かす事が重要になる。 そしてもう一つ忘れがちなのが、最後の④の行程において棒を中心で止めるという事だ。「皿回 し」という言葉のイメージから、ついつい回し続けてしまう人が多い。しかし、棒を止めても皿が 回り続ける状態が「皿回し」だと考えて欲しい。そのまま回し続けていると、手首がどんどんと疲 れて棒の動きが雑になり、皿が垂れたり飛び出したりしてしまう。実際には棒を止めても、皿は勝 手に回り続けるので、棒を動かす必要は一切ない。 第2節 皿回しはホスピタリティーで成り立つ 第1節で紹介したやり方は、実はある一つの意識を持つ事で全てマスターする事ができる。それ は皿に対する「ホスピタリティー」である。決して「皿を無理矢理回す」という意識を持ってはい けない。もしも皿が回らなければ、棒はただの棒であり観客から拍手を浴びる事は絶対にない。つ まり「皿」が回らなければ棒には価値は発生しないのである。「皿に回って頂いて...」初めて棒にも 拍手を浴びる機会が回ってくると考え、「皿に気持ちよく回って頂く..」事を意識しなければない。 第3節 皿回しとリーダーシップの関係 ここでリーダーシップの話題に戻る。第5章の冒頭において私が「皿回し」が「日本的リーダー シップの実践方法を理解する最適ツール」だと述べた、その理由と実践方法を説明する。 (表3:皿回しとリーダーシップ対応一覧) 先程の「皿回し」のやり方を思い返しながら、それぞれの立場を表2の様に対応させて、読み替え ると表4になり、すんなりとリーダーシップ理論へと置き換わる。 回 っ て い る 皿 労 働 者 ≒ フ ォ ロ ワ ー 回 し て い る 人 経 営 者 = リ ー ダ ー 使 っ て い る 棒 労 働 者 と 経 営 者 の 媒 介 = リ ー ダ ー シ ッ プ

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(表4:皿回しリーダーシップ実践) というように置き換える事ができる。これは「PM 理論」の実践的な理解に大きく役立つ。 表3の②の行程においては「明確で具体的な目標を与える」事によって「モチベーションを高い 位置に引き上げる」とある。これが三隅の提唱した「目標達成能力=P 機能」にあたり、③の行程 における「サポート」が「集団維持能力=M 機能」にあたる。サポートというのは決して実務的な ものだけではなく、職場環境やモチベーションの維持、情報の提供など多方面に渡るからである。 そして実際に「皿回し」を行ってもらえば(もしくは見てもらえば)分かると思うのだが、②の行程 は一瞬であるのに対して③の行程は非常に時間を要する。これは大きいな皿になればなる程(より ① どのように労働者に働いて頂く(=皿を回す)かイメージする。 労働者の能力に合わせて見合ったサポートの方法を模索し、そのリ ーダーシップの形と実行期間を考える。(=皿のサイズ) その際に、必ず自分の軸となる経営理念(=手首)は動かさないように する。また理念の要素を幾つか分け具体的に表現できるように準備 する。(=円錐型の軌道をはっきりさせる) ② 実際に労働者に働いて頂く段階になっても、いきなり自分の思う ように働いてはくれない。(=垂れ下がった状態) まずはその人が取り組みたいと考えている仕事を見つけて(=皿の縁 に棒を掛け)、明確で具体的な目標を与える(=勢いをつける)事によ って労働者のモチベーションを高い位置(=皿の位置)に引き上げ る。 ③ モチベーションが高くなって来たら、最初のサポートを始める。 最初からはグイグイ行うのではなく、労働者の実際の働きに合わせ て、「少しずつ」いい仕事ができるようサポートしていく。(=皿に 合わせる) おせっかいのようにサポートしすぎると、強制労働のようになって しまいあらぬ方向にいったり、離職したりしてしまう。(=飛び出す) あくまで自主的に働いて頂く事を心掛ける。(=気持ちよく回る) ④ 徐々に労働者側からの自主的な動きや意見が増えてくるように なる。(=皿を回しているのか皿に回されているのか分からなくな る) それでもまだ、回し続けるとリーダーが疲れてしまい、逆に労働者 の自主的な動きを妨げてしまう可能性があるので、ここでサポート を止めて任せる。(=棒を止める)あくまで経営理念の上での働き方 (=棒が下から支え続けている)をするので、全く的外れな事を始め る事はあまりない。

P

M

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大きく長期的な大変な仕事になればなる程)、③の行程にかける時間は長くなってくる。②の行程 は皿の大きさがどれだけ大きくなっても時間的には殆ど変わらない。この点でも「PM 理論」の 「短期的に見れば『目標達成能力=P 機能』が効果を発揮し、長期的に見れば『集団維持能力=M 機能』が効果を発揮する」 という理論と非常によく似ている。そこで、「皿回し」が暗示している「PM 理論」のそれぞれの機 能の具体的な実践方法をまとめてみる。 (表5:皿回しと「PM 機能」の対応一覧) 第3章の最後に「目標管理能力=P 機能」の実践において、これを成果主義と捉えるならば「実 践するのは簡単」と述べた。しかし、上記の表を見てもらえば分かるように、私が考える「目標管 理能力=P 機能」は成果主義という観点だけではない。確かに目標を与えて、それを達成しようと させる事でモチベーションを高めるのも一つの方法だと思う。ただ表の中には、他にも「求めてい る仕事を与える」などといった高モチベーション要因がある。また、モチベーションを保てる立ち 位置(環境)を作ってあげる必要もあるだろう。実行の結果への期待から、最初は高いモチベーショ ンを保っていたとしても、実行の途中でモチベーションが下がる事があるからだ。後から改善する のではなく、予め環境を整備しておく必要がある。これも「目標達成能力=P 機能」の一つだ。 実践の方法が全く明確でなかった「集団維持能力=M 機能」においては何を行えばいいかの指針 を示した。細かい行動内容は状況や労働者一人一人によって変わると思うが、この指針さえ分かっ ていれば「経営理念を分かりやすくする事」― 決して明文化して短い言葉にまとめるという事で はなく、理論的にプレゼンできるものにするという事 ―と「労働者からの意見が通りやすい」環 境さえ構築出来ていれば、この指針に付随する細かい行動は自ずと見えてくる。つまりこの指針を 理解した上での「コミュニケーションの構築」をリーダー側が行えば、自然と「集団維持能力=M 機能」となる行動は何かが分かるようになっている。 つまり「皿回しリーダーシップ理論」において重要なのは、リーダーが ・ 今の自分は「皿回し」のどの行程を行えばいいのかを理解し、行動の指針を決める事 ・ 指針から具体的な行動を導き出すインターフェイスとなるコミュニケーションを構築する事 ・ この理論の全ての基盤となっている「ホスピタリティー=親切心」を持ち続ける事 の3点である。これができていれば「PM 理論」も実践に移す事ができる。 「 目 標 達 成 能 力 = P 機 能 」 仕事をして頂く労働者の高モチベーション要因を見極める (決して給与などの待遇だけでなく、欲している仕事の質でもいい) 結果に対する明確で具体的な目標を与える 労働者が高いモチベーションを保てる立ち位置を築く 「 集 団 維 持 能 力 = M 機 能 」 労働者がやりたいと思っている事を明確に理解する それをやりやすくするためのサポートを「少しずつ」行う (実行後のヴィジョンの提示/環境の整備/自主的提案の推進) 経営理念という軸の枠内からはみ出さないよう管理する

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第 6 章 経 営 者 は 皿 回 し の 達 人 を 目 指 せ 「皿回しリーダーシップ理論」はここで終わりではない。「皿回し」のような楽しい事ができる ようになると、できるようになった人は次にどうするだろうか。ここで人は2つの方向に分かれる、 片方は更に「大きな皿」を回そうと難しい事へと挑戦していく人。そしてもう片方は、「皿回し」 のような楽しい事を他人に教えて回ろうとする人だ。実はこの二つの分かれ道が「皿回しリーダー シップ理論」の行き先を決める事になる。そして、これがフォロワーシップを形成できるリーダー シップになるかどうかの分かれ道だ。 第1節 皿回しの二つの進む道 さてまずはその二つの分かれ道のそれぞれが、「皿回しリーダーシップ理論」ではどのように経 営に結びつくのかを説明していこう。先程も述べたが、以下の図のように皿回しは2つの方向にさ らに進む事になる。 (図3:皿回しの次の方向性 筆者作成) 更に大きな難しい皿を回そうとする人(図3の下矢印)は、リーダーシップ理論の場合、一人でど んどんリーダーシップを発揮しているリーダーシップのプロ..という事になる。一人の労働者という 皿が回せたら、次はチームという大きな皿を回してみる。それが出来たら、部署という更に大きな 皿、そして一企業という更に大きな皿をいうように。一企業という大きな皿を回す=リーダーシッ

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