1.はじめに
近年,医療の高度化に伴い診療や手術に用い る再使用医療器材(以下器材)は,耐熱性のも のから非耐熱性の素材を利用した繊細なものま で多種多様であり,低温滅菌を前提とする器材 も増えてきている. 当院では,高圧蒸気滅菌法に対応していない 器材に対しては,EOG 滅菌法もしくは過酸化 水素低温ガスプラズマ滅菌法による滅菌をおこ なってきたが,最近では過酸化水素ガスのみを 利用した滅菌法やホルムアルデヒドガスを利用 した滅菌法など,低温滅菌法の選択枝が増えて きている1).特に,過酸化水素低温ガス滅菌法 については,2010 年より医療現場における滅 菌保証のガイドラインに追加されたことや,学 会発表等においてプラズマの有無で滅菌性能に 差がないという報告がなされたことから,近年 注目されており導入する施設も増加している. 現在,当院には過酸化水素低温ガスプラズマ 滅菌装置 STERRAD(Johnson & Johnson)を 3台設置しているが,いずれも耐用年数を過ぎ ようとしている.今後これらの更新をおこなう にあたって,最適な低温滅菌装置を検討してい る.プラズマを付与しない過酸化水素低温ガス 滅菌装置の方が,装置導入コストおよびランニ ングコストのいずれも有利であるが,認可され て間もない装置であることから当院での使用経 験はない. そこで本研究では,過酸化水素低温ガス滅 菌装置 ES-1400(Canon)と従来使用してきた STERRAD を使って,(i)滅菌温度,(ii)過酸 化水素ガスの浸透性,(iii)過酸化水素ガスの 残留について比較検討したので報告する.2.評価機器と滅菌プログラム(表1,図1)
以下の3機種を各モードで運転した.滅菌 に使用する過酸化水素濃度は,非濃縮モードの 場合 58 ~ 59%であり,濃縮モードでは 80 ~ 90%である. 1)STERRAD 100S(以下 100S) ・ショートサイクル(非濃縮) ・ロングサイクル(非濃縮) 2)STERRAD 50NX(以下 NX) ・スタンダードサイクル(濃縮) ・アドバンスサイクル(濃縮) 3)ES-1400(以下 ES) ・ショートモード(非濃縮) ・ソフトモード(非濃縮) ・標準モード(濃縮)3.評価方法
(i)滅菌温度の評価方法 図2に滅菌庫内の温度計測の様子を示す. ⑴ ボタン型温度データロガー(サーモクロン G タイプ・KN ラボラトリーズ)を全ての滅菌 器の奥,中央,手前,上下段合わせて 18 箇 * 佐賀大学医学部附属病院 ME センター,同材料部 * 1 佐賀大学医学部附属病院 ME センター * 2 九州大学大学院総合理工学研究院 * 3 株式会社キヤノンライフケアソリューションズ * 4 株式会社エルクエスト特
集
過酸化水素ガスを用いた低温滅菌装置の滅菌性能について
野 田 稔
*酒 井 義 信
*坂 口 嘉 郎
*後 藤 昌 昭
*1林 信 哉
*2荒 木 真 二
*3花 田 康 史
*4所に設置して,滅菌庫内の温度分布測定をお こない,ホットスポットとコールドスポット を特定し比較した. ⑵ 各装置で特定したホットスポットにおける滅 菌中の温度を比較した. (ii)過酸化水素ガス浸透性の評価方法 図3に滅菌試験用具を用いた過酸化水素ガ ス浸透性評価の様子を示す. ⑴ 非濃縮サイクルでの評価2,3):タイプ4相当 の化学的インジケータ(以下 CI:ネスコス IC カード ap・サクラクレパス)を 12 折り にした不織布(サーレムクルム・ホギメディ カル)に隙間なく張り付け,同様に折り畳ん だ不織布を 10 段(120 枚重ね),20 段(240 枚重ね)と積み上げ,その中心に CI を貼り 付けた不織布を挟み込んだ試験用具(PCD1 とする)を作成した.この PCD1 を無包装で 機種 プログラム 滅菌条件 100S ショート サイクル 100S ロング サイクル NX スタンダード サイクル NX アドバンス サイクル ES ショートモード ソフトモードES 標準モードES 滅菌設定温度 45℃ 45℃ 46~55℃ 46~55℃ 55℃ 55℃ 55℃ 滅菌時間 54分 72分 28分 38分 28分 50分 50分 過酸化水素濃度 58% (非濃縮) 58% (非濃縮) 90% (濃縮) 90% (濃縮) 59% (非濃縮) 59% (非濃縮) (濃縮)80% 過酸化水素注入回数 2回 2回 2回 2回 4回 4回 4回 プラズマの有無 有 有 有 有 無 無 無 換気回数 1回 1回 1回 1回 5~10回 5~10回 5~10回 換気方式 連続吸引 方式 連続吸引 方式 連続吸引 方式 連続吸引 方式 オルタネ ート方式 オルタネ ート方式 オルタネ ート方式 表 1 滅菌プログラムと滅菌条件 図 1 代表的な滅菌サイクル
滅菌し,滅菌完了後の CI の変色を比較した. ⑵ 濃縮サイクルでの評価4):ディスポーザブル 注射器(10 ml)の先端に,当院で使用して い る 内 径 φ 1mm と φ 2mm の シ リ コ ン チューブ( 長さ 0.5 m,1 m,5 m,10 m) を取り付け,注射器の中に CI(STERRAD Four Sure・Johnson&Johnson)と生物学的 インジケータ(以下 BI:STERRAD Cycle Sure 24・Johnson&Johnson) を 設 置 し て, 先端と押子を接着剤で固定してデッドエン ドの試験用具(PCD2 とする)を作成した. この PCD2 を滅菌バッグ(STERRAD 滅菌 ロールレギュラー・Johnson&Johnson)で 包装して滅菌し,CI の変色と BI の死滅を確 認し比較した. ⑶ 実際の滅菌物を用いた評価2):現在,エチレ ンオキシドガス滅菌(以下 EOG)で対応し ている細管構造の器材3種類(内視鏡用カ 図 2 滅菌温度の測定 図 3 過酸化水素ガス浸透試験
ニューレ:内径φ1mm,長さ 1.7 m,プ レッシャーライン:内径φ 2.5 mm,長さ 2.1 m,送気チューブ:内径φ6mm,長さ 3.0 m)を選出し,これら細管の最深部にあたる 中央部を切断し 106 個の芽胞(懸濁液)を塗 布・乾燥したシリコンチューブを配管後パテ で密封して試験用具(PCD3 とする)を作成 した.この PCD3 を用いて,ES ソフトモー ドおよび標準モードによりオーバーキルア プローチ(ハーフサイクル法による SAL 達 成の確認)をおこなった.STERRAD につ いては,NX および 100S ともにハーフサイ クルでの評価が困難であったためフルサイ クルにて評価した.評価した滅菌プログラム は,過酸化水素ブースター無しで細管構造の 器材適合が最も広い NX アドバンスサイクル を選択した.培養試験は,直接投入法にてお こなった.培養液は CM-100・SPS medical, 芽胞菌は好熱菌(SUS-08・NAMSA)を用 いて 59℃で7日間培養した. (iii)過酸化水素ガス残留濃度の評価 図4に滅菌物に残留する過酸化水素ガス濃 度の測定の様子を示す. ⑴ 過酸化水素ガス検知器を用いて,滅菌庫内 および滅菌物に残留する過酸化水素ガス濃 度の評価をおこなった.滅菌プログラムは, 100S ショートサイクル,NX スタンダード サイクル,ES ソフトモードで滅菌をおこなっ た.滅菌庫内の濃度測定には,過酸化水素ガ ス検知器 (イグザム 5100, ドレーゲル)を使 用した.各装置を空の状態で滅菌運転をおこ ない,滅菌終了直後に滅菌装置の扉を開けて 庫内の中央に検知器を設置し,扉を閉めた状 態で1分間放置した.その後,扉を開いた時 点での測定値を確認し比較した. ⑵ 滅菌物に残留する過酸化水素ガス濃度の測定 には,過酸化水素ガス検知器(ポリトロン 7000, ドレーゲル)を用いた.評価用の滅菌 物は過酸化水素が吸着し易いシリコンマッ ト付きのトレイに組み込んだ器材を用い,包 装材には滅菌バッグと二重の不織布を用い た.各装置の滅菌庫内には評価用の滅菌物の みを設置して滅菌処理をおこなった.滅菌終 了直後の滅菌物(開封前後のもの)と過酸化 水素ガス検知器を密閉容器内に封入して過 酸化水素濃度を5分間測定し,各条件で最も 高い測定値を比較した.また,滅菌物は再使 用する器材を用いたので,残留ガス濃度の測 定に使用する毎に洗浄して再使用した. 図 4 過酸化水素ガス残留濃度測定
4.結 果
1)滅菌温度の評価について 図2の右側のグラフより,表2に示すように 各滅菌装置のホットスポットおよびコールドス ポットを特定し,そこでの滅菌温度を測定した. ⑴ 全ての滅菌装置でホットスポットは上段の中 央であった.コールドスポットについては, 全ての装置で下段手前であった. ⑵ ホットスポットでの滅菌温度(最高温度)の 比較について,最も高い数値を示したのは, NX アドバンスサイクルで 63.5 ℃,最も低 かったのは 100S ショートサイクルで 52.5℃ であった.ES の3サイクルは,いずれも 56 ~ 58℃程度であった. 2)過酸化水素ガス浸透性の評価について 表3に,PCD1,PCD2,PCD3 を用いた各滅 菌装置における過酸化水素ガス浸透性の測定結 果を示す. ⑴ 非濃縮サイクルでの CI の変色について,不 織 布 10 段(120 枚 ) 重 ね の PCD1 で は, 100S ショートサイクルは,中央付近に色ム ラが確認されたが,すべて指示色相当の変色 であった.ES ソフトモードは,全て完全に 変色した.20 段(240 枚)重ねの PCD1 では, 100S ショートサイクルは,全ての CI が変色 不良となり,ES ソフトモードは,中央付近 に色ムラが確認されたが,すべて指示色相当 の変色であった. ⑵ 濃縮サイクルでの CI の変色について,NX アドバンスサイクルは,内径φ1mm,長 さ 0.5 m の PCD2 で変色不良となり,内径 φ2mm,長さ 0.5 m の PCD2 であっても 変色不良が目立つ結果になった.それに対 して,ES 標準モードは,内径φ1mm,φ 2mm ともに長さ 10 m の PCD2 まで完全に 変色した.また,BI の培養結果については, NX では内径φ1mm,φ2mm ともに長 さ 1m の PCD2 で 陽 性 と な り,ES は, 内 径 φ 1mm,φ 2mm と も に 長 さ 10 m の PCD2 まで陰性の結果であった. ⑶ 実際の滅菌物を用いた評価について,ES ソ フトモード(ハーフサイクル)における培養 結果は,送気チューブとプレッシャーライ ンの PCD3 は陰性であったが,内視鏡用カ ニューレの PCD3 は陽性であった.標準モー ド(ハーフサイクル)では,全ての PCD3 で陰性の結果であった.NX アドバンスサイ クルではフルサイクルで滅菌をおこなった 表 2 ホット&コールドスポットの特定と滅菌温度測定結果 機種 プログラム 設定温度 測定結果 100S ショート サイクル 45℃ 100S ロング サイクル 45℃ NX スタンダード サイクル 46~55℃ NX アドバンス サイクル 46~55℃ ES ショートモード 55℃ ES ソフトモード 55℃ ES 標準モード 55℃ ホットスポット 上段 中央 右側 上段 中央 右側 上段 中央 右側 上段 中央 右側 上段 中央 右側 上段 中央 中央 上段 中央 右側 ホットスポット(温度) 52.5℃ 54.0℃ 59.0℃ 63.5℃ 56.5℃ 58.0℃ 57.5℃ コールドスポット 下段 手前 左側 下段 手前 左側 下段 手前 左側 下段 手前 右側 下段 手前 中央 下段 手前 右側 下段 手前 左側 コールドスポット(温度) 49.5℃ 48.0℃ 54.0℃ 59.0℃ 51.5℃ 52.0℃ 51.0℃にも関わらず,培養結果は送気チューブの PCD3 のみ陰性の結果であった. 3)過酸化水素ガス残留濃度の評価について 各滅菌器における滅菌庫内および滅菌物に 残留した過酸化水素濃度の計測結果を,表4に 示す. 滅菌終了直後の滅菌庫内の過酸化水素ガス の残留濃度については,NX スタンダードサイ クルが 20 ppm 以上と最も高い値を示し,次に 100S ショートサイクルの 8.2 ppm で,ES ソフ トモードについては5回換気で 0.3 ppm,10 回 換気では0ppm という結果であった.滅菌物へ の残留濃度については,いずれの滅菌装置にお 表 3 過酸化水素ガス浸透試験結果 表 4 過酸化水素ガス残留濃度測定結果 評価対象 結果(100S) 結果(ES) ド ー モ ト フ ソ ル ク イ サ ト ー ョ シ ム ラ グ ロ プ 菌 滅 試験用具種類 PCD1 PCD1 CIの変色(10段重ね) ○ ◎ CIの変色(20段重ね) × ○ 評価対象 結果(NX) 結果(ES) ド ー モ 準 標 ル ク イ サ ス ン バ ド ア ム ラ グ ロ プ 菌 滅 試験用具種類 PCD2 PCD2 CIの変色(φ1mm) 0.5m × 1m × 5m × 10m × 0.5m ○ 1m ○ 5m ○ 10m ○ CIの変色(φ2mm) 0.5m △ 1m × 5m × 10m × 0.5m ○ 1m ○ 5m ○ 10m ○ BIの死滅(φ1mm) 0.5m ○ 1m × 5m × 10m × 0.5m ○ 1m ○ 5m ○ 10m ○ BIの死滅(φ2mm) 0.5m ○ 1m × 5m × 10m × 0.5m ○ 1m ○ 5m ○ 10m ○ 評価対象 結果(NX) 結果(ES) 結果(ES) ) フ ー ハ ( ド ー モ 準 標 ) フ ー ハ ( ド ー モ ト フ ソ ) ル フ ( ル ク イ サ ス ン バ ド ア ム ラ グ ロ プ 菌 滅 試験用具種類 PCD3 PCD3 PCD3 内視鏡用カニューレ(φ1mm-1.7m) × × ○ プレッシャーライン(φ2.5mm-2.1m) × ○ ○ 送気チューブ(φ6mm-3.0m) ○ ○ ○ 非濃縮サイクルでの評価 濃縮サイクルでの評価 実際の滅菌物を用いた評価 ◎○合格 △一部合格 ×不合格 機種 プログラム 評価対象
100S
ショート サイクルNX
スタンダード サイクルES
ソフトモード 5回換気ES
ソフトモード 10回換気 滅菌後のチャンバー内(空) 8.2ppm 20ppm 以上 0.3ppm 0ppm 器材(滅菌バッグ:開封前) 22.2ppm 27ppm 19.6ppm 12.8ppm 器材(滅菌バッグ:開封後) 89ppm 79ppm 76ppm 40ppm 器材(不織布二重:開封前) 48.5ppm 36.5ppm 49.5ppm 36ppm 器材(不織布二重:開封後) 78ppm 88ppm 73ppm 59ppmいても,包装材開封前の残留濃度は滅菌バッグ 包装より不織布二重包装の方が高い結果であっ た.また,包装材開封後の滅菌物への残留濃度 については,100S ショートサイクル,NX スタ ンダードサイクル,ES ソフトモード(5回換 気)はすべて 70 ppm を超える結果で,ES ソ フトモード(10 回換気)は滅菌バッグ包装で 40 ppm,不織布二重包装で 59 ppm であった.
5.考 察
滅菌温度の評価: STERRAD の滅菌庫内 の最高温度は,100S,NX ともにすべての滅菌 プログラムで滅菌設定温度(カタログ記載)と は大きく異なることが分かった.また,両者の 温度差を比較すると,NX が 10℃以上高いこと も分かった.医療現場で用いるすべての滅菌法 において,滅菌効果を高めるためまたは滅菌時 間を短縮するためには,滅菌温度は高いほど良 いが,同時に材質に与える影響が大きくなる. NX が滅菌物に与える影響は 100S よりも大き く NX の素材適応範囲の狭い理由は,NX の濃 縮した過酸化水素ガスが与える影響であると考 えられてきたが,本実験結果より両者の滅菌温 度の差が関係している可能性が見出された.こ れに対して,ES はすべての滅菌プログラムに おいて滅菌温度の差は小さく,NX と 100S の ほぼ中間の温度であった.また,ES の滅菌設 定温度は 100S と比較して 10℃ほど高いことか ら,滅菌物に与える影響は ES の方が大きいと 考えられてきた.しかしながら,ES と 100S の滅菌温度は大差がないことが本実験より明ら かとなり,滅菌物に与えうる影響は 100S とほ ぼ同等であると推察される. 過酸化水素ガス浸透性の評価: 非濃縮サ イクルおよび濃縮サイクルともに,ES の過酸 化水素浸透力は STERRAD よりも高いことが 分かった.特に,濃縮サイクルでの結果は,滅 菌が非常に困難なデッドエンドの試験用具を 用い,さらに BI はストリップ型ではなくバ イアル型を用いているにも関わらず,ES は STERRAD よりも高い浸透性能を示した.ま た,実際の滅菌物を用いた評価においても,フ ルサイクルで滅菌した NX よりもハーフサイ クルで滅菌した ES の方が高い浸透性能を示し た.当院においては,これまで根拠のない先入 観から,プラズマが付与されていない過酸化水 素ガス滅菌法の浸透能力は,他の滅菌法と比較 して低いと評価されてきた.しかしながら,本 実験結果により,プラズマが付与されていない ES の過酸化水素浸透能力は,STERRAD と比 較して極めて高いことが明らかとなった. 過酸化水素ガス残留濃度の評価: 過酸化水 素ガスは,滅菌工程終了後に滅菌装置内の触媒 やプラズマの作用により水と酸素に分解される ことから,人や環境に対して安全とされている. またわが国では,過酸化水素の滅菌物や環境へ の残留に関しては, EOG のような濃度の許容値 が決められているわけではない.しかしながら, 当院において過酸化水素ガスプラズマ滅菌装置 を使用した際に,過酸化水素ガスが滅菌物に残 留したことが原因で,他の滅菌物に対して悪影 響(AC 用インジケータテープの脱色)を及ぼし, 実際にリコールをおこなった経験がある.過酸 化水素を用いた滅菌法が人や環境に対して安全 と謳いつつも,このように他の滅菌物へ悪影響 及ぼす場合があるため,各滅菌装置における過 酸化水素残留濃度を把握することは重要である. 実測した残留濃度は,ES ソフトモード(10 回 換気)がすべての評価で最も低い結果となった. 残留する過酸化水素の濃度は当然のことなが ら可能な限り低いほうが好ましい.ES は,包 装形態に応じたエアレーションの換気回数が設 定可能であるため,運転の最適化により今後更 なる残留値の低減が期待できるものと考える.6.おわりに
以上本研究により,過酸化水素ガス滅菌装置 である ES の総合的な滅菌性能は過酸化水素ガ スプラズマ滅菌装置 STERRAD と比較して同 等または上回るものと判断される.滅菌対象物, 種類などの適応範囲の拡大も期待できることが 明らかとなった.今後は,現在当院で滅菌して いる器材,特に EOG 滅菌で対応している器材 のうち,ES で対応可能な器材がどの程度ある かを確認する必要がある.また,ランニングコ ストやメンテナンスコストなどの経済的な面や保守点検の確実さなどを勘案し,当院にとって 最適な滅菌法および滅菌装置の選定をおこな い,安全で効率の良い滅菌業務の遂行に勤めた いと考えている. 当院では滅菌装置の更新をおこなうにあたり 性能評価をおこなった経験はこれまで無く,メー カのプレゼンやカタログによる比較ならびに学 会発表や他施設での評判のみを考慮して更新機 器を選定してきた.本研究により滅菌装置の詳 細な性能評価を初めておこなった結果,書面か らは得られない有用かつ詳細な情報を知ること が可能なことが分かった.これらの情報は,当 院の滅菌器機種選定に対して非常に意義深いも のである. 申告すべき COI はない. 文 献 1) 日本医療機器学会監修.小林寬伊編集.改定 第4版 医療現場の滅菌.へるす出版,2014. 2) 佐々木次雄編集,池田一郎,上寺祐之ほか監修. ISO/JIS規格準拠ヘルスケア製品の滅菌及び滅 菌保証,2011. 3) 日本医療機器学会.医療現場における滅菌保 証のガイドライン2015.
4) Keiji Kanemitsu. “Comparative study of current low temperature sterilization methods”. WFHSS, 2012, p.10, p.28.