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ドイツにおける社員貸付けに対する規律付け

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ドイツにおける社員貸付けに対する規律付け

著者 増田 友樹

雑誌名 同志社法學

巻 68

号 2

ページ 623‑713

発行年 2016‑05‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000016870

(2)

   同志社法学 六八巻二号二九六二三

           

                  調     調             

(3)

   同志社法学 六八巻二号三〇六二四                                         

第一章  はじめに

  ドイツでは、一九三〇年頃から、主として有限会社の社員が会社に対して行った貸付けを出資として扱うという、いわゆる社員貸付規制が判例(その後立法)によって行われてきた 1

。この社員貸付規制は、わが国でも、法人格否認の法理や過少資本など様々な文脈で紹介されており、会社債権者を保護するための手段や債権者間の実質的衡平にかなうものとして説明される 2

。近年も、ドイツの二〇〇八年の社員貸付規制の改正を踏まえて、わが国の破産法に株主債権の劣後的取扱いについての規定を設けることを主張する研究がある 3

(4)

   同志社法学 六八巻二号三一六二五   もっとも、第二章でみるように、わが国において、ドイツの社員貸付規制がいかなる意味で会社債権者の保護に役立ってきたのかは、十分に検討されていないように見受けられる。また、そのことが検討されていたとしても、その内容は、論者によって大きく異なっている。ドイツの社員貸付規制を参考にした規制をわが国に導入すべきかを考える際にも、同規制が具体的にどのような問題に対処するために用いられてきたのかを明らかにしておく必要があるだろう。本稿は、こうした問題意識に基づいて、ドイツの社員貸付規制を機能的な観点から検討するものである。結論を先に述べれば、ドイツの社員貸付規制、とりわけ社員貸付けの劣後的取扱いは、﹁社員貸付けによって倒産状態にある会社の事業を継続したことへのサンクションであり、このことは、ドイツの倒産手続開始申立義務との関係で理解されるべきである﹂と考えられる 4

  わが国では、﹁⋮親会社または内部者の債権の劣後的取扱いは一般的には衡平を害しない﹂ 5

、﹁過少資本状況の下で本来資本として拠出されるべきものを親会社や支配株主が貸付けの形で拠出している場合に、この貸付債権を弁済順位の上で一般の債権と同列に扱うことは実質的に衡平でない﹂ 6

、﹁⋮内部者の再生債権を劣後させるなど、衡平を害しない場合には、⋮差を設けることが許される﹂ 7

と説明されるように、株主債権の劣後的取扱いの実質的な根拠が明らかでないにも関わらず、そうした取扱いが認められる傾向にある。また、第二章で紹介するドイツの社員貸付規制についてのわが国の研究も、単に債権者の保護になるという理由で、わが国における株主債権の劣後的取扱いの利用を好意的に捉えているように思われる。こうした状況において 8

、本稿のような機能的な観点からの検討は有益だといえよう 9

  以下では、第二章で、わが国において、ドイツの社員貸付規制がどのように説明されてきたのかを確認する。これは、先に述べた本稿の問題意識の前提となるものである。第三章では、二〇〇八年以前の社員貸付規制について、第四章では、二〇〇八年以降の社員貸付規制について検討する。これは、二〇〇八年を境に、ドイツの社員貸付規制の内容が、

(5)

   同志社法学 六八巻二号三二六二六

法改正によって変更されているからである。ここでは、ドイツの学説や判例が社員貸付規制をどのように説明してきたのかを主に検討する。第五章は、それまでの検討を踏まえて、ドイツの社員貸付規制について、機能的な観点からどのように説明できるのかを述べる。第六章は、簡単なまとめである。

第二章  わが国におけるドイツの社員貸付規制についての説明

  本章では、わが国におけるドイツの社員貸付規制についての研究を確認する。社員貸付規制の具体的な内容は第三章以降で検討するとして、ここでは、さしあたり﹁社員貸付規制とは、社員が会社に対して行った貸付けが出資のように取り扱われるもの﹂と捉えておく。

㈠   江 頭 憲 治 郎

  江頭憲治郎は、法人格否認の法理を検討するなかで、ドイツの社員貸付規制について触れる ₁₀

。そこでは、まず、ドイツでは、﹁過少資本を理由として会社債権者の社員に対する﹃直接請求﹄を認容した判決は皆無で、⋮実務あるいは立法論は、もっぱら過少資本と﹃社員貸付﹄のとりあつかいの問題に終始してきていること﹂が指摘される ₁₁

。そして、主に判例を踏まえた上で、社員貸付けが劣後的に取り扱われる理由について、会社が過少資本であることが挙げられる ₁₂

。ただし、江頭は、どういう基準で過少資本が判断されるのかという点について詳細に検討するものの、なぜ過少資本を理由に社員貸付けが劣後化されるのかを説明していない ₁₃

(6)

   同志社法学 六八巻二号三三六二七

㈡   片 木 晴 彦

  片木晴彦は、ドイツの社員貸付けに関するいくつかの判例を踏まえて、﹁このような判例傾向は、会社の支払能力に関する外観作出の責任である、との理論付けを伴い、学説上も支持される﹂と述べる ₁₄

。その上で、結論部分において、﹁社員が貸借対照表に表面上現れた以上の額の資本を会社に投下しながら、自己の営業リスク負担は貸借対照表上の資本額に留めようとすることは、他の会社債権者のリスクを不当に高めるもの﹂だと指摘する ₁₅

。この指摘が意味するところは必ずしも明らかでないが、おそらく、片木は、社員貸付けによって定款に記載された資本金額を超えて事業を行うことに何らかの問題意識を有していたのだと思われる。

㈢   篠 田 四 郎

  篠田四郎は、わが国において、株主債権の劣後的取扱いについての提言を行うことを目的として、ドイツの社員貸付規制を検討する ₁₆

。篠田は、﹁主要社員からの借入を会社に自由に認めると、暴利等による会社の搾取、会社の外部債権者に先んじる担保の奪取、会社危機直前の貸付金回収、会社破産の場合には破産債権者として破産財団に参加するなど、本来社員が負担すべき危険を外部債権者に恣意的に転嫁することを認めることになる﹂と指摘する。ドイツの社員貸付規制の必要性は、このような様々な危険に対処するために認められるとされる ₁₇

。もっとも、社員が本来負担すべき危険とはどういうものなのか、また、なぜそれらの危険を社員が負担すべきなのか、そして、社員貸付規制がそれらの危険にどのように対処できるのかは、具体的に検討されていない。篠田は、ドイツの判例や学説を詳細に検討した後のまとめの部分においても、﹁⋮会社の自己資本が不足する場合、その不足分は社員の追加出資におって填補されるべきところ、社員として負担すべき企業者危険を回避するために、その社員が自ら債権者となって会社に貸付を提供するときは(直

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   同志社法学 六八巻二号三四六二八

接貸付)、その企業者危険を一方的に会社債権者に転嫁する危険が大きい﹂としか述べておらず ₁₈

、先に挙げた疑問は説明されていない。

㈣   松 山 三 和 子

  松山三和子は、﹁小規模会社の支配株主が会社に金銭貸付や現物賃貸を行っているときに、自らが債権者の地位に立つのが妥当とはいえないのはどのような場合か﹂ということについて、ドイツの判例や学説を踏まえて検討する ₁₉

。支配株主の貸付けが劣後的に取り扱われる根拠については、﹁自己資本の確保の要請に加えて、会社に支払能力がないにもかかわらず支配株主自らの貸付によってそれがあるかのような外観を作出した場合、という外観責任﹂が挙げられている ₂₀

。松山は、この場合の﹁自己資本と同視すべき外観を作出した﹂という基準について、﹁究極的には個別に判断せざるを得ないように思われるが、通常の商人が貸付をしないような状況下で支配株主自らが貸付けをした場合には、その貸付は原則として自己資本と同一視すべきであるとする西ドイツ有限会社法の規定は妥当な方向を示している﹂とする ₂₁

。もっとも、通常の商人が貸付けを行わないような状況下で支配株主が貸付けを行うことが、どのような意味で会社に支払能力があるかのような外観を作出し、そのような外観をなぜ債権者が信用するのかは説明されていない。

㈤   畑 宏 樹

  畑宏樹は、アメリカ法のみを参考に株主債権の劣後的取扱いを評価することは﹁やや早計﹂であるとして、ドイツの社員貸付規制を検討する ₂₂

。もっとも、その検討内容は、規制の簡単な紹介およびその根拠となる法や原理を確認するにとどまっており、社員貸付規制が、会社債権者の保護にどのように役立っているのかは説明されていない。最終的に、

(8)

   同志社法学 六八巻二号三五六二九 社員貸付規制は、﹁過少資本会社の規制のための法理﹂ ₂₃

や﹁倒産債権者間の実施的平等を図るための有効な一手段﹂ ₂₄

と結論付けられている。

㈥   武 田 典 浩

  武田典浩は、二〇〇八年のドイツの社員貸付規制についての改正法案を題材に検討を行う。そこでは、社員貸付規制が﹁社員による不当経営についてのサンクション手段として役立ってきた﹂ことが強調される ₂₅

。この不当経営がどういうものを意味するのかは明確には述べられていないが、﹁会社が危機的状況に近づきつつある状況においては、企業価値が破壊される可能性がある投資プロジェクトが社員によって選択され⋮そもそも社員貸付法は、このような危険な選択肢を社員に選ばせないための法理であったはずである﹂ ₂₆

と指摘されていることからすれば、武田は、いわゆる資産代替 ₂₇

への対処を念頭において、ドイツの社員貸付規制を理解しているものと思われる。

㈦   ま と め

  以上のように、わが国において、ドイツで社員貸付規制が用いられる理由が十分に説明されてきたとは言い難い。また、その説明も論者によって大きく異なっており、過少資本や危険の転嫁、支払能力の外観の作出や資産代替への対処など、様々な根拠が挙げられていた ₂₈

。もっとも、第三章以降でみるように、ドイツの学説も、社員貸付規制について様々な説明を行っており ₂₉

、わが国の研究と同様の状況にある。

(9)

   同志社法学 六八巻二号三六六三〇

  第三章  二〇〇八年改正前の社員貸付規制

  ドイツでは、有限会社法の現代化および濫用防止のための法律(

D as G es et z zu r M od er nis ie ru ng d es G m bH -R ec ht s un d z ur B ek äm pf un g v on M iss br äu ch en

、以下﹁

M oM iG

﹂という)が二〇〇八年に制定されるまで、社員貸付けは主に、判例および有限会社法によって規律されていた。とりわけ、判例が、社員貸付規制の性質を特徴づける上で大きな役割を果たしている。

  以下では、一九八〇年以前の判例が社員貸付規制をどのように説明してきたのかを確認した後に(第一節)、一九八〇年の社員貸付規制についての立法と連邦通常裁判所の反応を紹介する(第二節)。その上で、判例において次第に主流となった社員貸付規制の根拠を確認し(第三節)、その一方で、学説における社員貸付規制についての説明も紹介する(第四節)。ここまでが、二〇〇八年以前の社員貸付規制の主な内容とそれに関連する判例や学説の検討である。それ以降では、金銭による社員貸付け以外にも社員貸付規制が適用される場合や(第五節)、社員貸付規制が例外的に適用されない場合があることを紹介する(第六節)。第七節は、小括である。

第一節  判例による社員貸付規制

㈠   信 義 誠 実 の 原 則 違 反 と 有 限 会 社 法 三 一 条 の 適 用

  ドイツでは、一九三〇年頃から、裁判所によって、社員貸付けが規制されていた ₃₀

。その当時の判例は、故意の良俗違反を定める民法典八二六条を根拠として、社員貸付けを破産債権として認めなかった ₃₁

。社員貸付けは、社員の有限責任や資本維持原則との関係で規制されていたわけではない。その後、一九五九年に、連邦通常裁判所は、一定の状況で行

(10)

   同志社法学 六八巻二号三七六三一 われた社員貸付けは信義誠実の原則に反するとして、弁済された社員貸付けを有限会社法三一条一項に基づいて会社に返還することを社員に要求した ₃₂

。以下では、この判決についてみていこう。

・BGH一九五九年一二月一四日判決 ₃₃

実 < 事

  Xは、有限会社A社の倒産管財人 ₃₄

である。A社は、一九五三年七月に遊覧飛行など航空事業を営むことを目的に、BおよびCによって設立された。

  Yは、一九五三年七月と八月の二回に分けて、合計二〇〇〇〇マルクの資本金(

St am m ka pit al

)をA社に払い込んだ。ところが、この資本金は、一九五三年九月の時点で使い果たされた。そこで、Yは、一九五三年九月から一九五四年一二月までの間に、合計約五六〇〇〇マルクの貸付けをA社に行った。この貸付けは、A社が他に資金調達することができた時点で、すぐに返済される予定であった。実際に、一九五四年一二月までの間に、合計約二五四九八マルクがYに弁済されている。なお、BおよびCは、一九五四年一二月および一九五五年二月に、Yにその持分を譲渡している。

  一九五五年六月に、A社の倒産手続が開始された。Xは、次のように主張した。

  YのA社に対する貸付けは出資にあたり、A社からYに行われた貸付けの弁済は許容されない責任資本の払戻しである。したがって、Yは、有限会社法三一条一項によって、その返還が義務づけられる ₃₅

旨 < 判

  本判決は、YのA社に対する貸付けがなぜ出資と同様に取り扱われて、さらに、その弁済が許されないのかというこ

(11)

   同志社法学 六八巻二号三八六三二

とについて、次のように述べた。

。﹂扱なばれけなれわになよの本資任責、はらういの会たれさ用利めたに済弁のへYが産財社 資された超本金をえ記載額に款定、てせさ復回を金提てけ供考さまるめ認をとこるす慮でをの性た金銭れ貸付の特 、付てっよに還返の﹄けす貸、﹃ちわな。たっかなて部外ま債会権資、が況状済経の社本。のた無防備はまであっ 会。、てっよに領受のそなたっかならはてれさ課を担社財産えはし決はとこる大増てす超任、をや責今資本の金額 て手を金現で法方のこ、にれ入に手を銭金のそにです元、収か負てっよに務債るじ生らめ領で受時点たその金銭の い達悪の合に前るれさ成れが的目たきさ及追のそだまと、都にいそ、は社会。たかなけっは弁のて銭の金済を要求し 、開続手産倒がY、しも申しかし。るあで切適く全はY始立銭ばれあでのたし供提を、金避の務の回義のめに追た加 務資義いがな加ことか出し追。た反に条二四二典法、)らYけは、にめたいいてれらな付の資務本金調達以上に義 盾そ。るすれ矛に果結る結の(果、Yは、信義誠実の原則民けら付お業件産回避目的よび企の経済的構造により条 求の返還請付権およびけ﹄れ付貸。﹃たっかならなばけ貸領の、倒のていつに供提銭金のはに弁Yの受済よって、 会らえ考てしと債負の社る、は銭金のそ、ばれあでのれYで責はなれわ扱てしと本資任けに最らか社会や、くな初 ーされならければな負担てが用費建再しそ用費ータいなに。れのるれさ成達そ的目るがさけ及﹃貸付の﹄よって追 らかとこいなぎ過にるいして有保を産財なかずわは貸、作付れチ、用費員業従、にずャさ、だよってに価値はけり 払じ生が務債てっよにい合支のそ、はに場う負を務かるお、務会。るれさ大拡が過超社債にたそすでよ存在してい 一も、りあで能不払支に月ですで点時の九年三五九かし⋮すそ義の済返の時の銭金の即。過た債務超とでもあっる 始めたの避回の務義立申﹃開続手産倒、は﹄け付貸用に付いがそ、は社会、ばれけな﹄らけ貸﹃なうよのそ。たれの   ﹁。た会、はY、もで合場しか動行くな図意害損がY社らい返ならなばれけなし済に弁社会を額のそたれさ済⋮

(12)

   同志社法学 六八巻二号三九六三三   以上のことを踏まえて、本判決は、社員貸付けの弁済について、次のように述べた。

。﹂法が項一条一三社用会限有、いつ適てさけれいらなばれななる受甘をとこし けいはてし盾方矛に法たしい反な貸ことから、Yは、付けの弁済に実に誠をき義務義回避で、申これに関して信立   ﹁扱り取にうよ任の本資供責がけ付貸たれされ提のわそてじ始開続手産倒の社会て応いに況状そ、はY、ばれの

  本件は、社員が、倒産状態にあった会社に対して貸付けを行い、その後、貸付けの一部について会社から弁済を受領したことから、その弁済に有限会社法三一条一項が適用されるのかが問題となった ₃₆

  本判決は、社員が会社に対して出資ではなく、貸付けを行うことそれ自体は、社員に追加出資義務が課されていないことから問題ないとした。しかし、倒産手続開始申立義務を回避する目的で社員貸付けが行われたのであれば、会社の経済状況が改善する前に、社員が弁済を受領することは、信義誠実の原則に反するとされた。したがって、本判決は、本件のような状況で行われた社員貸付けの弁済に、有限会社法三一条一項が適用されるとした ₃₇

  有限会社法三一条一項一文は、次のとおりである。﹁三〇条の規定に反して行われた支払いは、会社に返還されなければならない。﹂

  有限会社法三〇条一項は、次のとおりである。﹁資本金の維持のために必要な会社の財産は、社員に対して支払われてはならない。﹂

(13)

   同志社法学 六八巻二号四〇六三四

  この資本金の維持のためという基準は、一般的には、純資産が定款に記載されている資本金を下回るかどうかで判断される ₃₈

  本判決は、この有限会社法三一条一項に基づいて、社員は、弁済された社員貸付けを会社に返還しなければならないとした。従来の判例とは異なり、社員貸付け(およびその弁済)が有限会社法の資本維持規制との関係で規律されている。

  さらに、本件で特徴的なのは、本判決が、たとえ社員に会社債権者を害する意図がなかった場合でも、倒産手続開始申立義務との関係で社員貸付けが問題になることを指摘した点であろう。

  この倒産手続開始申立義務について、旧有限会社法六四条一項が次のように規定していた ₃₉

。﹂る ら、はとこのそ。いなばな社れけなて立し申を始会の続にれさ用適に様同、も合債場るいてじ生が過超務開手産倒   ﹁社務ら遅に当、不は者行執、業がせ場るあで能不払支合会るな、に内以間週三てっにと能不払支もとく、遅くなこ

  このように、ドイツでは、会社が支払不能あるいは債務超過である場合に、業務執行者に倒産手続開始申立義務が課されていた ₄₀

。この義務が課される主体は、社員でなく業務執行者であるが、小規模な有限会社の場合、それらが重なり合うことも多いだろう。本件も、そのような事案であった。本判決は、この倒産手続開始申立義務を前提に、倒産手続開始の申立てを行わないのであれば、社員貸付けは自己資本のように扱われなければならないとした。

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   同志社法学 六八巻二号四一六三五

㈡   一 定 の 状 況 に お い て 行 わ れ た 社 員 貸 付 け を 問 題 と す る 考 え 方

  その後、連邦通常裁判所は、倒産手続開始申立義務の回避という主観的意図に関わらず、倒産状態にある会社に対して行われた、あるいは回収せずに放っておかれた社員貸付けを有限会社の資本維持規制と結び付けて規制していく ₄₁

。次に、このことについて詳しく述べた判決をみていこう。

・BGH一九七六年九月二七日判決 ₄₂

実 < 事

  Xは、一九七二年三月に倒産した有限合資会社A社の倒産管財人である ₄₃

。Yは、A社の有限責任社員であることに加えて、A社の無限責任社員でもある有限会社B社の社員でもあった。

  Yは、一九六九年九月以降、A社の支払困難な状況を一時的にしのぐために、総額三〇五〇〇〇マルクをA社に貸付けた。また、一九七〇年五月にも、A社の銀行借入れを弁済するための資金二二七四〇〇〇マルクをA社に貸付けた。これらの貸付けの一部は、A社によって弁済されている。その後も、Yは、A社の経営者であったCの銀行から借入れの保証人となり、その保証債務を履行した後に、A社にその保証債務の支払いを請求した。

  結局、A社は倒産したことから、Xが、有限会社法三一条一項に基づいて、Yが有限会社法三〇条一項に反して会社財産から受領した弁済の返還を要求した。

旨 < 判

  本判決は、有限合資会社の有限責任社員が行った社員貸付けに対しても、有限会社法三〇条・三一条が適用されるこ

(15)

   同志社法学 六八巻二号四二六三六

とを述べた。

。﹂社何らか産財の会が資限有に員社か合与切えるあで有に効適らに合場たれ、 う点ではれ適用さとない社るす少減が産財の会に的れけらば会な、で過超務にですが社債のの方ない。そことは、両 よそにとこのつ、もてい付にてっで資本金の名目的価値のもと間接る給す社か限合資会対の財産ら有限責任社員に れしなけをばならな返済受に社会付給たし領。らかいよそ限有るす属所が員社任責無の、ばれ財に例判、は定規産   ﹁なれ会限有、は員社、ばよ法に項一条一三法社会限社三要本必にめたの持維の金資〇てし反に止禁の項一条有

。﹂⋮いないて 付した貸をの返還提請供代にりわしの資出るな更な要求けうとれさるにさまは付給ので許も本の場、資合金の負担

In so lv en tz re ife

の)の開始後にそ状況で必熟(成ま、さ産で資産を保有する前に有の限会社の社員が、会社の倒高   ﹁付、貸が社会にえゆれそてけれけさ成達が的目の付貸に、金本資たれさ載記に定し依有を力能払支にずせ存款

  そして、本判決は、社員貸付けを自己資本として扱う理由について、次のように述べた。なお、以下では、有限合資会社であることで有限会社とは異なる考慮が必要かどうかについて述べた部分を省略して紹介する。

。﹂法維本資の上律び規よ動行の己自持お定うに⋮るあとこでい矛るいてし盾と 新たな自の己資本要供なの必に的済経を社会熟成産に給支よて、は員社るすとうよるえっくのではよな、貸付けに も倒、ずらわ関ににこ場いなえ与上以れい、社会を金資な要必合会しやなた持を力能存生は社もといながれそはて   ﹁限のしと金本資ので味意条会一三、条〇三法社社て有員根と礎本資が員社、は拠な貸要主のとこう扱をけ付基

  ﹁見いう控訴審裁判所の解、に対する更なるYの上といAで社が初めから過少資本あなったかどうかは問題で告

(16)

   同志社法学 六八巻二号四三六三七 は成果がない。A社が貸付けがなければ倒産状態にあった場合には、社員貸付けは、責任資本のように取り扱われなければならない。その結果、貸付けは、会社の救援のためにさらに必要な資本金の部分に充てられる。そのような状況は、設立時に最初に十分な資本が与えられた会社の場合にも生じる。﹂

。﹂び第ていおに算計よ者託委の社会が員三おに合提るあで様もに同場のけ付貸たし供 。補充す果その結、資を、出な欠可不に他のそはけのそる弁う済。るうれさ化当正くや社よし直ち持が社会、はて た的のすめに消費のる目ら別、くなすでめたの避ど回かなう方付貸、ていおに案事かの両的に、本。質な違いはい よの産倒るにすらるてし在存にでれか債け付貸員社たっ取け負いをいそや減削の債返、は負るかあする済どうか、 。お持維本資、しかしようろだたっだのもに能可債び降権倒受にと以始開の熟成産が者社会、はらか点観の護保を   ﹁こ自やはもはで力能の己、もは金資、よせにれずい何するのす続継を業事に社会熟る成産倒いなきでがとこ⋮

  本件は、有限合資会社における有限責任社員による社員貸付けが問題になった事案である。

  本判決は、有限合資会社の場合にも、有限会社法三〇条や三一条が類推適用されることを指摘する。その上で、会社が支払能力を回復し、純資産が資本金の額に達するまでは、会社による社員貸付けの弁済は認められないとした。この場合の社員から返済されなければならない金額とは、定款に記載された資本金をカバーする額とされる ₄₄

  たとえば、ある有限会社の資本金が二五〇〇〇マルクだとしよう(ここでは、有限会社を例に説明する)。その有限会社は、一〇〇〇〇マルクの債務超過であったにも関わらず、五〇〇〇〇マルクの社員貸付けを弁済したとする。この場合、社員に対する会社の返還請求権は、三五〇〇〇マルクである。なぜなら、三五〇〇〇マルクで、資本金二五〇〇〇マルクおよび債務超過一〇〇〇〇マルクがカバーされるからである(図1参照)。

(17)

   同志社法学 六八巻二号四四六三八

  本判決は、一九五九年判決と異なり、倒産手続開始申立義務の回避という目的は要求しない ₄₅

。資本の維持および債権者保護の観点からは、そのような目的があるかどうかに違いはないからだとされる。しかし、社員貸付けにより倒産状態にある会社の事業を継続したことを問題にするという点において、先に確認した一九五九年判決と本判決は同じであった。このような考え方は、その後の連邦通常裁判所の前提になっていく。

  こうした状況のもとで、一九八〇年に、社員貸付けについての立法が行われる。そこで、次にその立法とそれに対する連邦通常裁判所の反応をみていこう。

第二節  一九八〇年の立法と連邦通常裁判所の反応

  ドイツでは、一九八〇年に、社員貸付規制についての立法として、旧有限会社法三二a条、三二b条などが制定された ₄₆

。この立法は、社員貸付けを規制するための包括的なルールであり、立法に基づく固有の根拠を与えるために制定されたようである ₄₇

  旧有限会社法三二a条、三二b条は、次のとおりである ₄₈

  三二a条一項

。﹂いなぎすに の貸ていおに続手産倒にていつけ産財社会、はに付請の債るきで張主てしと者権産返倒な的後劣を権求場還合たし提供   ﹁社てを本資己自が員社のしのと提商の常通、は員社人会供、をけ付貸にりわ代のそでし)機危の社会(点時たいて

図1

資産 負債

35,000

10

,

000 資本金 25,000

(18)

   同志社法学 六八巻二号四五六三九   三二a条二項

。﹂合得られなかった金について、割額的きにいなぎするにで求要を済弁 倒、の産財社会たは者三第、合場手産用続はで行利の証保たにま保担、ていおっをのつ保はいるあ、定設を保担証てい   ﹁供提を本資社己自が員通のてしと人商の常てが者三し第い、に還返のけ付貸が員社した供提をけ付に社会で点時貸

  三二a条三項

。﹂もるす用適   ﹁は的社員や第三者の他の法行る為について定規のられ、す、に同条一項あるいは二項よ致る貸付けに経済的こ一に

  三二b条

。﹂るす用 規二はいるあ項一条、は定らのにれこ。るれさ除免らか項同よ他るもていつに為行的法の適る経す付けに貸済に一致的 し担保と用て利され者るに。権債が員社るあででま額象対合物供務義をそは員社、場るすの提のに会のそ社弁済のため 員たから提供されてい一担保の価値に致する金る社けがうお社員保証人として任を負責、け点時あ済弁の付貸にはいる はた社員対、会社にってい行を証保はいるあ定設をてしば弁担、は務義のそ。いならなれ済けなわ払支を額金たれさ保   ﹁、の申始開続手産倒に合場項前三、項二条a二三が社立一はにきとたし済弁をけ付貸降年以れそはいるあ、内以会

  これらの規定のなかでも本稿において特に重要なのは、三二a条一項である。同条は、会社の危機時において提供さ

(19)

   同志社法学 六八巻二号四六六四〇

れた社員貸付けを倒産手続において劣後的に取り扱うことを明記した ₄₉

。この﹁会社の危機時﹂とは、会社が支払不能または債務超過、あるいは、社員以外の第三者がそのような貸付けを行わなかったであろう場合とされる ₅₀

  また、旧倒産法一三五条において、次のことが規定された ₅₁

  ﹁の様の債権についての次法は的行為は取り消される同い資対本補充的社員貸付けにするる社員の返還請求権あ。

  ①倒産手続開始申立前一〇年以内あるいは申立後に行われた担保の提供

  ②倒産手続開始申立前一年以内あるいは申立後に行われた弁済の提供﹂

  同条によって、会社の危機時に行われた社員貸付けが倒産手続開始申立前一年以内に弁済された場合、どのような状況や理由であっても、その行為は取消されることとなった ₅₂

。会社が倒産手続開始申立前一〇年以内に担保を提供した場合、その行為も取り消される。これは、社員が会社から担保を提供されることで、社員貸付けの劣後的取扱いを容易に避けることができるからである。また、担保によって保全された社員貸付けにより、社員が会社に過剰なリスクテイキングを行なわせやすくなるためといった説明もされる ₅₃

  これら旧有限会社法三二a条や旧倒産法一三五条を適用した場合、これまでの判例によって形成されてきた社員貸付規制とは、三つの違いが生じる。

  第一の違いは、資本補充的社員貸付けとして捕捉される金額である。先ほどの例で考えてみよう(図2参照)。

  従来の判例によれば、五〇〇〇〇マルクの社員貸付けについて、規制の対象になるのは、資本金二五〇〇〇マルクと債務超過一〇〇〇〇マルクを合計した三五〇〇〇マルクであった。一方で、旧有限会社法三二a条や旧倒産法一三五条

(20)

   同志社法学 六八巻二号四七六四一 が適用された場合、五〇〇〇〇マルク全額が規制の対象となる ₅₄

  第二の違いは、社員貸付けの弁済が取り消される期間である。旧倒産法一三五条によれば、社員貸付けの弁済は、倒産手続開始申立前一年以内が対象期間である。それに対して、判例によれば、会社の社員に対する返還請求権の時効は、五年(社員が故意の場合は三〇年)とされる ₅₅

  第三の違いは、社員貸付規制が適用される場面である。有限会社法や倒産法の規定は、倒産手続を前提とする。それに対して、判例は、倒産手続にあるかどうかは問われない ₅₆

  ところが、連邦通常裁判所は、このような社員貸付規制が制定された後にも、有限会社法三〇条および三一条を類推適用することで、旧有限会社法三二a条とは別に、社員貸付けを規制した ₅₇

。連邦通常裁判所は、制定法に加えて、従来

図2

資産 負債

50

,

000 10,000 資本金 25,000

立法 判例

の判例が引き続き有効であることを認めたのである。その結果、実務上、制定法は重要性を有しなかったとも指摘される ₅₈

。それでは、なぜ、連邦通常裁判所は、従前の判例を引き続き有効だとしたのだろうか。そのことについて触れた判例を確認しよう。

・BGH一九八四年三月二六日判決 ₅₉

実 < 事

  Xは、一九八〇年一二月に、有限会社A社の増資に伴い、その持分をA社の業務執行者であるYから二二五〇〇マルクで取得した。

  Yは、登記裁判所に対して、この増資に係る資本金について、全額現金で会社に払い込まれたと説明していた。ところが、実際には、この資本金の元手は、A社の銀行からの借入れ

(21)

   同志社法学 六八巻二号四八六四二

によるものであった。

  一九八一年九月、Xとその妻は、A社に六〇〇〇〇マルクの貸付けを行った。さらに、一九八二年二月、Xらは、一九八一年一二月にさかのぼって次のような社員決議を行った。すなわち、XのA社に対する貸付けの返還請求権は、二二五〇〇マルクを上限として、未履行の出資債務と相殺されなければならないというものである。

  Xは、一九八二年五月に、業務執行者としてA社の財産についての倒産手続開始を申し立てた。しかし、倒産裁判所は、その申立てについて、財産不足を理由に拒否した。その後、Xは、Yがその出資義務を履行していないことを踏まえて、Yに対して出資金の支払いを要求した。

  原審および原々審は、Yに、二二五〇〇マルクをXに支払うことを命じた。そこで、Yは上告した。

旨 < 判

  本判決は、一九八〇年の社員貸付規制に関する立法と判例による社員貸付規制の違いについて、次のように述べる。

、手し消取の者権債ので続の制そびよお案事のき続手に外限すさ場るいてれさ済返にで合がしる。それて、貸付け な付貸員社、ばれよに解面うよのそ、の反のそ。いなけ決資が本和はいるあ続手産倒、議段を手充機能補主張する たもすた満を要の需本資資え超を金本のそがけ付貸員でっあ取て限制はに決解の法消がび後よ、改正もの倒産法お 制あるいは返還請求権をで限する一方、たとえ社禁止払一金支三条に基づく判が資本例の面額の規定に応じ額て、 りらは、となわけ重要。それいなわ合りな重もていお的法お構な、条造三法社会限有。る〇異結てび法的よ果におい れ避らかこそけ、は域領)法の例判とるあで様同もら基ない以に法方るれらめ埋てづいに力効の制規法な的占独下   ﹁。て法正改法社会限有のい筆つにけ付貸な的充補本(者す規指を法立るす関に制付注貸員社の年〇八九一:資

(22)

   同志社法学 六八巻二号四九六四三 そのような手段も、一年以内に倒産手続が開始されているか、あるいは債権者がその返還を取消すかどうかに依存する。貸付けが資本補充として必要とされている間、貸付けを手元に残しておくか、あるいは貸付けが返還された場合に受取人からの返済を要求するという有限会社の業務執行者の権利は、このことによって根拠づけられない。﹂

。﹂b狭もてとの条三限法取、はれそい消度すにいなぎにるす捉おを案事るけ捕 足のため手の倒産産続不任財や案事の算清意な要重拒の止否十あいなし供提を護保な分。に中さいはるについて、ま す充早のけ付貸員社な的定補本資、は規いし新。るるぎ害弁侵済特上務実、てし対ににの任に産る責よある会社財 しげ逃ういとる道せさを的消取の為行法るよに項、二は務法とれわ思にうよいな的んどほしにももわ疑く、実的に に条b三法消取合後済イタ者権債員社に返ン。うろだるれさ場ミにグ条のそ、しらたよを件もく前の条二法消取提 法結果、取によってそのり、てじ応ずわ構に要需本さ消とれと要強る日期満のけ付貸がにこいすこ起き引を行う履 は、自ら返もはや者還はば行執務業、れすとしよ要を社求者制資の会に求要還返の権す債員社いなきでがとこるで   ﹁規年用適に係関無はと間一れ)、例判:注者筆(はれさるのい法正改、に合場いなて。し過経だまが間期のそそ

  その上で、本判決は、判例が引き続き有効である理由について、次のように述べる。

とあ単、は定規の法正改るで会らかるれらけつりすなに。社い債ういとるす護保をのもこなる者であ権が、社員で 結ですてっよに例判、果だのそ。うろ達いなれい相とにい成うにさ不に者法立が図意当と態れいた状てより遅れる い後もはや適用しないとそうことは、をの立法目的今則社づ会法三〇条、三条に基一く立た判らてれち打らか例原 改追を的目ういとるす善を護保の者権債社会、てす求者る保限有、にずせ供提を護よ。権債の等同が定規いし新っ   ﹁に正会限有けわりと、法改法法社会限有、は者法立社三条三b三法消取、条a二法二産倒、条b二三、条a⋮

(23)

   同志社法学 六八巻二号五〇六四四

に差し出され得ない。有限会社法三〇条、三一条およびそれに基づく資本補充的な社員貸付けについての判例も債権者保護に役立つからである。﹂

。﹂付に与えられ社員貸たけ部分も補足するの は判例と新反対に、け、債わりと。るせさに者権はを定規、、基わ代の本資己自な要必りて超を額面額の本資本え が貸付け時その返還ば、例しばし、は判のてつに条で点いもては反ういとたっかない証し充有資本補や的機能をな いいなきで定否ういとた有てしを能機そおなもで像点想のを有根一三、条〇三社会限法、。拠てけるづそれに対し 、期の項二条b三法消取b項二条a二三法産倒、条は限補、社時還返のそ自け付貸員がい充な己資を本したに違い 有す場合に、二限会社法三取消をあは何らか財のそい弁る、かるれさ還も産済き返が者権をいな債でとこるけ受の 持場面で保社する。あ員る一に先りよ例判けわりとを付貸社け財始開が産倒のていのに産つ済、に内以年らか会返 達よって定成しうとしによ規のそが者法立どうょちいてのたそこ性重な全完そ、上の要、すはを達成とる。新規定 い置ば及が定規新くな債を護保者権に的目の定成、規構い要捉例、てっよにとこるす捕件てづ基に段手的法の別をが   ﹁判ら、はとこるす用適にされを例判、てえ加に定規そゆ、もに対反、くなはでのるえす盾矛に価評の法、に新

。﹂め控は件本、にた審るす能可を定認訴裁要けいならなばれな判れさ戻し差に所な   ﹁次有、況状済経の社会限、りは定決のそ、てっがたとわ第必であるしこのために況け状済経ので点時け付貸。

  本件は、裁判所が倒産手続開始申立についてA社の財産不足を理由に拒絶したことから、旧有限会社法三二a条や旧倒産法一三五条(当時の破産法三二a条)を適用することができない事案であった ₆₀

  本判決は、初めに制定法と判例による社員貸付規制の違いについて述べた。この違いは、先に説明したとおりである。

(24)

   同志社法学 六八巻二号五一六四五 とりわけ、制定法では取消期間が限定されており、その期間より前に行われた社員貸付けの弁済を取り消せないことが指摘されている。その上で、本判決は、判例による社員貸付規制もまた債権者保護に役立つと指摘して、従来の判例を引き続き適用することは、債権者保護という立法目的に矛盾しないと述べた。

  以上のように、本判決は、一九八〇年の社員貸付規制に関する立法とは別に、従来の判例が引き続き有効であることを認めた。その理由は、立法では必ずしも十分に対応できない場合があり、債権者保護という目的からすれば、従来の判例を適用することもまた必要とされるというものであった。これによって、従来どおり、たとえ倒産手続開始申立の一年以上前に行われた社員貸付けの弁済であっても、その行為は取消される可能性がある。このことは、個別の事案に柔軟に対応できるというメリットはあるものの、弁済を受けた社員にとって不安定な状態が続くというデメリットもあった ₆₁

第三節  資金調達結果責任

  これらの判例や立法による社員貸付規制は、﹁自己資本補充法(

E ig en ka pit ale rs at zr ec ht

)﹂とも呼ばれる。そして、この自己資本補充法について、﹁資金調達結果責任(

F in an zie ru ng sfo lg en ve ra nt w or tu ng

)﹂という考え方が、判例において次第に用いられるようになった ₆₂

。この考え方は、たとえば、社員は﹁危機時において、解散に成熟した会社を継続し、定款の資本金額を超えて資金を提供するといった会社に帰せられる決定に関する結果についての責任﹂を負うと説明される ₆₃

。この考え方によれば、社員は、追加の資金提供を拒否したり、既に提供されていた社員貸付けを回収することによって会社を清算するのではなく、新たな資金調達によって会社を継続させたという決定の結果についての責任を

(25)

   同志社法学 六八巻二号五二六四六

負わなければならないとされる ₆₄

。ここでも、倒産状態にある会社を継続したことそれ自体が、責任を負う前提とされている。

  こうした考え方のもとでは、必要な自己資本の代わりに、社員から会社に対して貸付けが行われた場合、その社員貸付けは、自己資本として扱われなければならない。また、社員は、資本金および債務超過が回復するまで、自己のリスクで貸付けを会社に置いておかなければならないとされる ₆₅

  以下では、この考え方を詳細に述べた判決をみていこう。

・BGH一九九四年一一月七日判決 ₆₆

実 < 事

  Yは、有限会社A社の単独社員であり、唯一の業務執行者である。Yは、一九八九年六月に、B銀行のA社に対する貸付け三〇〇〇〇〇マルクについての連帯保証(

se lb st sc hu ld ne ris ch e B ür gs ch aft

)を引き受けた。従来からの保証も含めて、増額された与信枠に対する連帯保証の総額は、五四〇〇〇〇マルクにまで達していた。

  Yは、一九八九年一一月にA社の倒産手続開始申立を行ったものの、財産が足りないことから裁判所に拒絶された。そこで、総額一八七二七五マルクの債権を有するXは、一九九〇年九月に、清算中にあるA社に対して、A社のYに対する出資請求権五〇〇〇〇マルクおよび銀行に対するYの保証債務のうち、A社の担保処分により弁済された金額(一九九五八五マルク)を差し押さえた。さらに、残りの保証債務についても、一九九二年四月に差し押さえている。Xは、当時のA社の財産状況を考慮すれば、Yの自己資本補充的な保証債務の性質から、A社からB銀行に弁済された金額は、YによってA社に返還されなければならないと述べた。また、Yが一九八九年六月に保証を引き受けた時点で、A社は

(26)

   同志社法学 六八巻二号五三六四七 すでに危機時にあったことを指摘した。これに対して、Yは、A社が危機時にあったことは認識することができなかったなどと主張した。

旨 < 判

  本判決は、資金調達結果責任および会社が危機時にあることについての社員の認識について、次のように述べた。

。﹂せ明に合わ確る決がある判 きとがでうないいこるこです続継やはもをしな助援にとと見か分定決のそるれさ求要らに員れ社なけけばならない :ら注者筆(⋮。るじ生れか況状るうらめ認が拠根くいでつ一か的来将社会、で針方のが同引)判のを例用した上 的充補本な資、ていのおに任責員社の員て社務貸につな要主のていつ債付た似に本資己自のけいに結の定決うい果 に算りに、社間近の会代わ清るす算継てっよ収回のけを清続てとうしを達調金資の加追行え、超定の資款本金額を 間会はいるあ接直を社継な能可不続やはもで力の的接資にに自付貸員社たれさ供提で更す、か絶拒の供提金るな身   ﹁で筆識認の時機危:注者(の素要な的観主なうよの)必況わ状なうよのそ、たれ行要に時機危の社会、は性そ aもないてれらい用てしのな社的充補本資初当、てっいと員社資三、条一三、条〇三法二会のの追加金債務を有限 資社会、かるす収回を金開でともの始清の時機危に的をす算立よとこういとるあに場にるルーロトンコでとこるす 決金調達さ定が要求の資な真ので況状うよのそらるれが。、観客もとくな少が員社員そ例判の去過、はとこのか社 調で供提にらさも置放、きのれとこるす類分に定決達さるたと貸てっあで付件条ういもる後うけの劣付化に導かれ でのけ付貸員社たし供提資加追に金本のそに社会が客観的さ社金資、ろしむ。いなだなにい合き引を化変の能機員   ﹁、自い︱は法充補本資己、れてじ応に解理なうよのずにた、れわ行に時機危の社会︱せがいなはでけだれそよそ

参照