ドイツにおける既判力の拡張と承継人について : 日本における「口頭弁論終結後の承継人」論への示 唆を求めて
著者 池田 愛
雑誌名 同志社法學
巻 65
号 4
ページ 1025‑1113
発行年 2013‑11‑30
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014591
( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一一一
ド イ ツ に お け る 既 判 力 の 拡 張 と 承 継 人 に つ い て
― ―
日本における﹁口頭弁論終結後の承継人﹂論への示唆を求めて― ―
池 田 愛
第一章 はじめに 第一節 わが国における議論状況 第二節 問題の所在第二章 ドイツにおける学説の紹介と検討 第一節 考察の前提事項――ドイツと日本の承継に関する共通点と相違点―― 第二節 学説の概観 第三節 各学説の整理・検討第三章 ドイツにおける判例の紹介と検討 第一節 考察の視点およびその対象 第二節 判例上妥当している一般的・抽象的な前提
一〇二五
( )同志社法学 六五巻四号一一二ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
第三節 各事例の考察 第四節 判例の整理・検討第四章 終わりに 第一節 日本法への示唆 第二節 今後の課題
第一章 はじめに
第一節 わが国における議論状況 一 民事訴訟法一一五条一項三号は、既判力の拡張を受ける者として、﹁口頭弁論終結後の承継人﹂を定めている。この﹁口頭弁論終結後の承継人﹂とはどのような者を指すのか、すなわち、何を承継した者が﹁口頭弁論終結後の承継人﹂に当たるのかについては、古くから理論上激しい議論がなされており、現在の民事訴訟法学においても未だ混迷を極めている状況にある )1
(。 たとえば、XがYに対して提起した建物収去土地明渡訴訟において、その事実審の口頭弁論終結後に、Yが当該土地もしくは土地上の建物をZに譲渡したという事例を想定する。この場合に、Zは一体何を承継したことによって、﹁口頭弁論終結後の承継人﹂と認められることになるのかが、本稿の理論的な考察の課題である。 学説上、何をもって一一五条一項三号における承継を認めることができるのかという、いわば﹁承継の要件﹂ )2
(に関する代表的な見解としては、当事者と第三者との間に﹁実体法上の依存関係﹂が存在することでもって承継を認める説(依存関係説) )3
(、第三者への﹁当事者適格﹂の移転でもって承継を認める説(適格承継説) )4
(、第三者による﹁紛争の主体たる 一〇二六
( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一一三 地位﹂の取得でもって承継を認める説(紛争の主体たる地位説) )5
(が挙げられる。そして、依存関係説では、当事者であるYの実体法的地位である﹁建物収去土地明渡義務﹂の取得によって、適格承継説では、一般的に、建物収去土地明渡訴訟の被告適格者は目的物の所持者であると解されていることから、﹁土地(の占有)﹂の取得によって、紛争の主体たる地位説では、建物収去土地明渡に関する紛争の主体たる地位の移転によるので、おそらくこれも、﹁土地(の占有)﹂の取得によって、承継が認められることになる。 二 これらの見解のうち、かつては依存関係説が有力とされていた。しかしながら、依存関係説は、右事例のような第三者が訴訟物以外のものを取得した場合(特に占有承継の場合)に、既判力の拡張を説明することができないという難点を抱えていた。依存関係説によれば、前述のように、承継を肯定するための要件として、﹁建物収去土地明渡義務﹂の取得が必要とされる。しかし、右事例においてZが実際に取得するのは、土地または建物の所有権もしくは占有権であるし、また、実体法上、占有承継人は前主より明渡義務を承継するわけではなく、これとは別個独立に明渡義務を負うとの解釈が一般的であるため、占有承継人が﹁建物収去土地明渡義務﹂を伝来的に取得するという解釈は難しい
)6
(。それゆえに承継を肯定することができず、この場合の既判力の拡張も当然肯定できなくなるというのである )7
(。 そこで、占有承継の場合をより容易に説明するために、適格承継説が登場した。右説が提唱された当時は、旧訴訟物論が支持されていたこともあり、当事者適格を要件とする承継の判断については、訴訟法的視点よりも実体法的視点が重視されていた(兼子博士や中田教授の当事者適格説)。たとえば、右事例において、XY間の明渡訴訟が、所有権に基づくもの
― ―
いわゆる物権的請求権に基づくもの― ―
である場合は、既判力の拡張を肯定し、賃貸借契約の解除に基づくもの― ―
いわゆる債権的請求権に基づくもの― ―
である場合は、既判力の拡張を否定するといったように、訴訟物の実体法的性質に応じて、既判力の拡張の可否が決定されていた。一〇二七
( )同志社法学 六五巻四号一一四ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
三 ところが、現在では、新訴訟物論の台頭により、また、判決の紛争解決の実効性の確保といった視点から、承継を訴訟法的に解する見解(山木戸教授以降の適格承継説や紛争の主体たる地位説)が有力となっている。この有力説は、実体的承継関係がない事例でも、当事者との間で一定の利害関係を持つに至った第三者と相手方当事者との間で紛争の実質的解決を期待できるのであれば、これを訴訟法的に評価して当事者適格あるいは紛争の主体たる地位の承継ありとすることで、依存関係説よりも広い範囲で承継人を捉えることを可能にするものである )8
(。その一方で、当事者適格は、﹁訴訟の提起ないし追行を実効あらしめるための要件の一つである﹂ことから、紛争の主体たる地位は基準の明確性を欠くことから、既判力の拡張を根拠づけるに足りるものではないとの指摘 )9
(や、これらは、主として訴訟承継を念頭に置いたものであり、弁論終結後の承継人に対する既判力の拡張根拠として妥当な説明かどうかは疑わしいとの指摘がなされている )₁₀
(。 そこで、有力説がどのような理論構成をとっているかに着目してみると、有力説は、主に、何を承継した者を承継人というのかについて探求することを目的とするものであったといえる。しかも、有力説が主眼としていたのは、承継の要件をどのように捉えれば、既判力を拡張すべき者(すなわち承継人とされる者)への既判力の拡張をより適切に説明できるのかということにあったものと思われる。そのため、有力説は、承継人に対する既判力の拡張根拠については特に言及することのないまま、承継の要件を探求する傾向にあり、必ずしも既判力の拡張根拠を承継の要件に反映させることについて、注意を払っていなかったものと評価できる )₁₁
(。 これに対して、依存関係説に分類される論者の中には、承継人に対する既判力の拡張根拠を先に考え、この根拠の充足をもって承継人に対する既判力の拡張を肯定するという理論構成をとる者もいる )₁₂
(。このような理論構成によれば、当然に、既判力の拡張根拠が承継の要件に反映されることになる。すなわち、形式論理上、既判力の拡張根拠と承継の要 一〇二八
( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一一五 件が結合することになる。しかしながら、既判力の拡張根拠として実体法上の依存関係を持ち出すことに対しては、実体法上の処分と訴訟追行を同一視することができないことから )₁₃
(、なにゆえに実体法上の依存関係があれば、訴訟法上の効力である既判力の拡張をもたらすことになるのかという説明が不十分であるとの批判がなされている )₁₄
(。したがって、実際には、既判力の拡張根拠と承継の要件の結合に関する説明が、必ずしも成功しているわけではないと思われる )₁₅
(。
第二節 問題の所在 一 本稿は、以上のように、口頭弁論終結後の承継人に対する既判力の拡張根拠を承継の要件に反映させるということについて、必ずしも十分な議論がなされていないことを問題の出発点とするものである。このことを問題視する理由としては、以下のことが挙げられる。 第一に、既判力が拡張されるということは、既判力の拡張を受ける者の手続保障を侵害しかねない重大な事態であり、したがって、承継が認められるか否かの判断にあたっては、なにゆえ承継人に既判力が拡張されることになるのかということが当然考慮されるべきであると考えられることである。 第二に、もし仮に、有力説のように、どのような者に対して既判力を及ぼすべきなのかを先に考え、これを説明するためには承継の要件をどのように設定すればよいのかということに主軸を置き、承継の要件を考えるにあたって、既判力の拡張根拠を考慮しないとすると、どのような場合に既判力の拡張を認めるべきかという結論が先行することとなり、承継の要件はこの結論を説明づけるもの以上の意義を有しないことになるのではないかと思われることである。 そもそも、明文上、口頭弁論終結後の承継人であることが、既判力の拡張要件として規定されているのであるから、口頭弁論終結後における承継の存在が、既判力の拡張を肯定するための要件ということになる。つまり、一一五条一項
一〇二九
( )同志社法学 六五巻四号一一六ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
三号によって、承継には、既判力の拡張の可否を決定するという重大な役割が与えられているということができる。それにもかかわらず、承継の要件に関するどの見解をとっても、既判力の拡張が肯定される事例の範囲にさしたる差異は生じず、承継は単に既判力の拡張を説明するための概念に過ぎないとさえ指摘する見解もあり )₁₆
(、承継が、既判力の拡張要件として十分に機能していないと評価することができる。これは、右のような理論構成によるところが大きいものと思われる。したがって、このような状況を打破し、承継に与えられた本来の役割を発揮させるためにも、その理論構成を改めて見直す必要があると考えられる。 第三に、承継の要件を設定した後、これとは別に、この結論を正当化するための根拠を考えるという理論構成をとるとするならば、既判力の拡張根拠に、既判力の拡張範囲が広範になりすぎることを抑制するという機能を期待することができなくなり、安易に既判力の拡張が肯定されることになる可能性があることである )₁₇
(。このような事態を防ぐためにも、まずは既判力の拡張根拠を検討し、そこから承継の要件を導き出すべきであると考える。 二 口頭弁論終結後の承継人については既に多くの研究がなされているが、このような問題意識に基づき、口頭弁論終結後の承継人に対する既判力の拡張根拠と承継の要件との関係を改めて問い直し、既判力の拡張根拠を反映させた承継の要件の再構築を志向するという視点から、承継の議論を取り上げることとした。本稿は、まずその準備作業として、日本法における議論の示唆を得るための法比較の基礎資料を得るために、ドイツにおける承継人に対する既判力の拡張に関する学説および判例上の議論を、紹介・検討するものである。 ここでドイツの議論を取り上げるのは、おそらく初めて口頭弁論終結後の承継人に関して詳述したと思われる雉本説 )₁₈
(
が、
H ell w ig
の見解を参照していることからも明らかなように、日本における口頭弁論終結後の承継人に関する議論は、ドイツの議論をもとに発展してきたものであるからである )₁₉(。本稿では今一度、議論の出発点に立ち返り、前述したよう 一〇三〇
( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一一七 な視点から、ドイツの議論を考察してみたい。
第二章 ドイツにおける学説の紹介と検討
第一節 考察の前提事項
― ―
ドイツと日本の承継に関する共通点と相違点― ―
一 ドイツにおける承継人の議論を概観する前に、ドイツにおける議論状況についてより理解を深めるために、そして、ドイツの議論が日本法にとって有益なものとなりえるのかを確かめるためにも、まず、ドイツと日本の共通点と相違点について、簡単に言及しておきたい。 二 日本との共通点としては、周知の通り、ドイツでも、ZPO三二五条一項 )₂₀(において、権利承継人への既判力の拡張が明文上認められているという点が挙げられる。また、ZPO三二五条一項を根拠に、既判力の相対効原則が一般的に承認されている点 )₂₁
(、さらに、既判力拡張場面における当事者概念として、形式的当事者概念が採用されている点 )₂₂
(も共通である。 三 他方、日本との主要な相違点は以下の三つである。①ドイツでは、ZPO二六五条 )₂₃
(により、当事者恒定主義が採用されていることとの関係で、訴訟係属中に承継人となった者に対しても既判力が拡張されることになる。それゆえに、既判力の拡張根拠を考えるにあたっては、承継が、訴訟係属後で既判力発生前に生じている場合と、既判力発生後に生じている場合で分けて考える説が有力に主張されている )₂₄
(。日本では、既判力の基準時は事実審の口頭弁論終結時とされているので、このような立論はありえない。 ②現在日本では、民訴法一一五条一項三号の﹁承継﹂に権利承継も義務承継も含まれると解するのが一般的である。
一〇三一
( )同志社法学 六五巻四号一一八ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
しかしながら、ドイツでは、ZPO三二五条が、権利承継︹
R ec ht sn ac hf olg e
︺についてのみ規定し、義務承継︹Sc hu ld na ch fo lg e
︺については明記していないため、義務承継の場合に既判力の拡張が認められるか否かについては争いがある )₂₅(。 ③ZPO三二五条一項後段は、権利承継人と並んで、訴訟物の占有承継人に対しても既判力が及ぶと規定している。そのため、学説上占有承継人に関しては、権利承継人に含まれるとする見解 )₂₆
(と、権利承継人と並立して同列に扱われる者であり、権利承継人に該当するわけではないとする見解 )₂₇
(に分かれている。これに対して、日本では、占有承継人について明文上の規定が置かれていないが、占有承継人は法律が規定する﹁承継人﹂に含まれると解するのが一般的である。その背景には、占有承継人に関する明文上の規定が存在しなかったからこそ、法律が規定する﹁承継人﹂にこれを含めるため、承継の要件を工夫する必要があり、その工夫の結果として適格承継説が誕生したという議論の経緯がある。ドイツでは、適格承継説をあまり見かけることはないが、その理由の一つとして、占有承継人が明文をもって規定されているため、日本のように承継の要件を工夫する必要性がなかったということを指摘することができるであろう。 四 このような日本とドイツの相違点のうち、ドイツの議論を日本へ持ち込む際に特に重要となるのは、①の点である。ドイツでは、既判力が拡張される承継人という場合、口頭弁論終結後の承継人だけではなく訴訟係属中の承継人も含まれるため、ドイツにおける既判力の拡張に関する議論を、そのまま日本の議論に持ち込むことはできない。しかしながら、訴訟係属中の承継人に対する既判力の拡張が必要とされるのは、当事者恒定主義の採用に起因するものであり、この当事者恒定主義は、訴訟係属中の場面に係わるものであって、口頭弁論終結後の場面にまで関係するものではない。そうであるとすると、特に承継人に対する既判力の拡張根拠を考えるにあたっては、訴訟係属中の承継の場合と口頭弁論終結後の承継の場合で分けることができるといえよう。実際に、前述の如く、ドイツの有力説は、既判力の拡張根拠 一〇三二
( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一一九 を、承継が訴訟係属後で既判力発生前に生じている場合と、既判力発生後に生じている場合に分けて考えている。そして、後者の場合における既判力拡張の根拠論は、日本の議論と共通するものであり、十分参照に値すると思われる。 以下では、このような違いを意識しつつも、日本の議論にも役立つと考えられる部分に限定して、ドイツの議論状況を概括する。
第二節 学説の概観 ドイツにおける議論を紹介するにあたっては、分かりやすさを重視して、学説を、大別して、実体法上の依存関係を根拠とする見解、訴訟法上の根拠を探究する見解、既判力の第三者効説に分類することとした )₂₈
(。そして、その紹介においては、本稿の目的との関係で、各論者が既判力の拡張根拠を何に求めているのか、何をもって権利承継を認めるのか(承継の要件は何か)、いかなる場合に既判力の拡張を認めるのか(既判力の拡張要件は何か)を重点的に取り上げることとした )₂₉
(。
第一款 実体法上の依存関係を根拠とする見解
(一) Hellwigの見解 )₃₀
(
一 ドイツでは既判力の拡張根拠を、承継が訴訟係属後で既判力発生前に生じた場合と、既判力発生後に生じた場合とで分けて考える見解が有力に主張されている旨は前述したが、これを初めて具体的に説いたのが
H ell w ig
である。彼は、第三者に対する既判力の拡張事例を、大別して、第三者と訴訟を追行している当事者間の民法上の依存関係に基づくものと、このような民法上の根拠を欠き、訴訟法上の考慮にのみ基づくものの二つに分類する )₃₁(。そして、訴訟係属中
一〇三三
( )同志社法学 六五巻四号一二〇ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
に行われた権利承継︹
R ec ht sn ac hf olg e
︺の事例は後者に、判決後︹po st re m ju dic at am
︺に行われた承継︹Su cc es sio n
︺の事例は前者に属するとする )₃₂(。 二 この二つの分類のうち、日本の議論に役立つと考えられる部分は、承継が判決後に行われた場合であると思われるので、以後はこの場合に限り詳しく見てみることとする。
H ell w ig
は、この場合における既判力の拡張の正当化根拠を、実体法上の依存関係に求めると同時に、この依存関係は、あくまで﹁立法理由﹂ )₃₃(という媒介項を通じて初めて訴訟法上に顕出されるものであるとしている )₃₄
(。これは、実体法上の依存関係を訴訟法的に捉え直すことを試みるものである。つまり、
H ell w ig
は、判決後の承継の場合の既判力の拡張根拠を、立法者が実体法上の依存関係を既判力の拡張根拠であるとしていることに求めているといえる。このような理論構成をとるのは、既判力を純然たる訴訟法上の効力とみる訴訟法説の立場からは、実体法上の概念である実体法上の依存関係だけでは、既判力の拡張を正当化する根拠として不十分であることを自覚していたためであると思われる。 三 それでは、ここにいう﹁承継﹂とは、そもそもいかなる場合に認められるのか。これに関してH ell w ig
は、権利承継は、﹁第三者が従来の権利者の法的地位につく︹ein rü ck t
︺場合﹂に存在するという。そして、BGBの意味における権利承継も、CPOの意味における権利承継も、﹁法的地位の伝来的な取得﹂と同じ意味であるとする )₃₅(。 四 権利承継をこのように解した場合、具体的事例に関してどのような帰結となるのかについては、以下のように述べられている。 まず、権利の承継、すなわち、第三者が当事者の権利関係に加入した場合は、当事者に対して確認された権利関係が第三者に移転することから、権利承継が肯定される )₃₆
(。次に、義務承継に関しては、確かにZPO三二五条は、権利承継だけを規定しているけれども、これは義務承継をも意味するべきであると論じる )₃₇
(。ここでは、日本法との関係で、具体 一〇三四
( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一二一 的な事件類型について見た場合に
⒜
存人受引務債的併占⒝、人継承有、承ず はていつに人継ま有占⒜、 ₃₈) 上。るげり取
⒞
責的債務引受人の事免に関する説示のみを例(、前訴が土地の所有権確認の場合は、特に問題なく既判力の拡張が認められるが、前訴が対象物の引渡しを命じる判決の場合は、占有を取得した第三者が、この義務における権利承継人︹
R ec ht sn ac hf olg er in d ie V er pfl ic ht un ge n
︺であることが必要とされる。そして、その﹁引渡義務がそのようなものとして占有者に向けられるものであるとき﹂は、対象物の引渡し(すなわち占有の取得)によって、その義務に関して承継することになるため、占有承継人は、引渡義務における権利承継人︹R ec ht sn ac hf olg er in d ie H er au sg ab ep flic ht
︺となるとする。 次に、⒝併存的債務引受人については )₃₉(、実体法上、引受人の権利関係は従来の債務者の責任にしたがって、それがその時点まで存在していたかのように決定されるため、実体法上の依存関係があるという。そして、この依存関係ゆえに、既判力の拡張が肯定されるとする。 さらに、
⒞
免責的債務引受人についても ₄₀)(、併存的債務引受人と異なる取り扱いをすることができないということから、実体法上の依存関係を肯定し、既判力の拡張を認めている。 五 なお、
H ell w ig
は、判決後の承継の事例を、実体法上の依存関係を理由とする既判力の拡張事例の一つとして位置づけているが、判決後の承継の事例以外でこれに属するものとしては、﹁訴訟追行者が実体法上、他人の訴訟物についての処分権︹V er fü gu ng sm ac ht
︺を有し、それゆえに、実体的な権利関係にある第三者に対して、有効に訴訟追行することが可能とされる事例﹂のみであるとする )₄₁(。それゆえに、この二つの事例以外で、実体法上の依存関係があるとされる事例(たとえば、合名会社の社員、基準時前の転借人、保証人など)については、既判力の拡張の事例ではなく、反射効︹
R efl ex w irk un g
︺の事例に分類する )₄₂(。したがって、
H ell w ig
は、実体法上の依存関係はあるが承継の枠を超え一〇三五
( )同志社法学 六五巻四号一二二ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
ている事例については、原則として既判力の拡張を認めない立場であるといえる。
(二) Bettermannの見解 )₄₃
(
一
B et te rm an n
もまた、既判力の拡張根拠について、H ell w ig
と同様、承継が発生した時期が、訴訟係属後で既判力発生前である場合と、既判力発生後である場合に分けて論じている。より具体的には、第三者に対する既判力の拡張事例を、①権利承継によるものと、②権利承継によらないものに分類している。 まず、①の事例は、権利承継を理由とする既判力の拡張事例であるとされる。ここにいう権利承継とは、﹁伝来的な︹ab ge le ite te r
︺権利取得﹂であり、この伝来的な権利取得は、﹁前権利者の法的地位の依存における取得﹂を意味する。これに対応させると、権利承継による既判力の拡張は、前権利者の法的地位の依存における取得による既判力の拡張ということになる。そして、この権利承継による既判力の拡張は、承継が既判力の発生後に行われる場合にのみ生じるとする )₄₄(。以上のことから、承継が既判力の発生後に行われた場合の既判力の拡張根拠は、実体法上の依存関係にあるとされる。このように見ると、
B et te rm an n
のとる理論構成は、まず権利承継とは何かを述べた後に、そこから権利承継による既判力の拡張根拠を導き出すものであると解される。しかし、そもそも権利承継が既判力の拡張根拠であることを前提に、権利承継とは何かを論じているのだとすれば、既判力の拡張根拠と権利承継(の要件)のうち、どちらか一方を先に決めて、他方をそこから導き出すとするのではなくて、両者を一体のものとして同時に探究しているとも解しうる。 これに対し、②の事例は、この伝来的な権利取得に、第三者への既判力拡張の正当化を見出すことのできない事例であるとされる。B et te rm an n
によれば、この事例の場合の既判力の拡張は、権利承継が行われると、前権利者はその権 一〇三六( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一二三 利に関する当事者適格を喪失するにもかかわらず、ZPO二六五条に基づき、その失われた権利に関する裁判を続行するための権限が与えられたままであるということによって正当化される )₄₅
(。すなわち、ここでの既判力の拡張根拠は、実体法上の依存関係ではなくて、訴訟法上の根拠に求められている。そして、訴訟の間に行われた承継の事例は、こちらの事例に属するとされる )₄₆
(。 二 以下では、日本法との関係により、承継が既判力発生後になされた場合に限定して紹介する。 まずは、第三者に対する既判力の拡張根拠に関する彼の具体的な論述を敷衍しておきたい。
B et te rm an n
は、既判力の拡張根拠を考察するにあたり、第三者に有利な拡張の場合と、不利な拡張の場合を区別する。 そして、第三者に有利な拡張の場合、既判力の拡張から第三者を保護する必要はないため、既判力の拡張は第三者保護の原則から否定されることはなく、ただ第三者の相手方(第三者の前主との間で判決を得た者)の利益(すなわち既判力の拡張を制限することについての利益)の考察からのみ否定されうるとする。そこでこの場合には、既判力の制限に関する相手方の利益が、既判力が拡張される第三者の利益よりも優先するか否かの問題となる。これを判断する際には、特に、同じような訴訟問題の繰り返しに関する国家の利益と、その矛盾した判断を避けることに関する国家の利益も含めて判断すべきであるが、少なくとも、実体法に基づいて、前訴当事者間で行われた法律行為が第三者との関係に影響を与える場合、相手方の利益は保護を受けるに値しない。したがって、第三者が、前訴当事者間における法律行為から利益を引き出すことができる場合、すなわち、第三者の法的地位が当事者の法的地位に依存する場合には、相手方は、第三者によって、その訴訟行為の効力を持ち出されることを承認しなければならなくなるとする )₄₇(。 一方、第三者に不利な拡張の場合、第三者の法的地位が当事者の行為に依存する場合は、既判力の制限に関する第三者の利益を保護する必要がないとして、第三者に対する既判力の拡張が承認されるとする )₄₈
(。
一〇三七
( )同志社法学 六五巻四号一二四ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
このような記述から、
B et te rm an n
は、既判力の拡張根拠を考えるにあたり、既判力を拡張することあるいは既判力の拡張を制限することに関する、第三者と第三者の相手方の利益を比較衡量していると解することができる。そして、その比較衡量をする中で、少なくとも、実体法上の依存関係がある場合は、その利益を保護する必要がないとして既判力の拡張が認められるとすることから、実体法上の依存関係は、第三者と第三者の相手方の利益を比較衡量する際の考慮要素であると同時に、その要素の中でも最も重要なものとの位置づけがなされていると評価することができるであろう。 三 次に、B et te rm an n
が想定する権利承継とは何かについてであるが、上述の如く、彼は権利承継を﹁伝来的な権利取得、すなわち、前権利者の法的地位の依存における取得﹂と解している。これに加えて、権利承継が肯定されるためには、承継の時点において、承継される権利に関して前権利者に対する判決が既に存在し、既判力が生じていることが必要であるとする )₄₉(。これをまとめると、権利承継は、﹁既に前権利者に対して判断されている権利を伝来的に取得した場合﹂に認められることになる。 四 その具体的な帰結に関して、承継の対象が権利の場合については、当然に認められるものと解されているためか、あまり詳しく述べられてはいない。 これに対し、承継の対象が義務である場合には、ZPO三二五条の文言との関係で問題となるが、
B et te rm an n
は、義務承継の場合も権利承継と同様に取り扱うとして、義務承継であることから直ちに既判力の拡張を否定することはしない。義務承継の場合に既判力の拡張を認めるか否かは、義務承継を権利承継ということができるかどうかではなく、義務承継の場合の利益状況が、権利承継の事例の場合と異なるのかどうかということだけから判断されるとする )₅₀(。 そして、まず、⒜占有承継人に関しては )₅₁
(、ZPO三二五条が権利承継人と並んでこれを規定していることより、前訴 一〇三八
( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一二五 の訴訟物が物権的請求権であるか債権的請求権であるかにかかわらず、既判力の拡張を肯定する。このことから、占有承継人は権利承継人に含まれないとする説を支持するものと解される。しかし、これに付言して、被告側の占有承継の場合には、訴訟物に関する義務承継が行われているのであるから、法は占有承継を既判力の拡張の要件とすることで、その他の義務承継の事例における既判力の拡張を認めたものであると述べていることが、占有承継人も承継人に含めるとする日本の議論との関係では注目される。 次に、
⒝
併存的債務引受人については ₅₂)(、債務引受後も旧債務者の責任は存在し、債務の訴えについては旧債務者が被告適格を有したままであるので、ZPO二六五条は適用されないとする。それゆえに、既判力の拡張は依存関係の観点のもとでのみ問題になるとし、
H ell w ig
と同様に、債務引受が既判力発生後に行われた場合にのみ、実体法上の依存関係を理由に、既判力の拡張を肯定する。そして、この結論は、法政策的にも正当化されるとする。なぜならば、債務を引き受けようとする者が、すでに確定的に判断された他人の債務を争えないことを拒否する場合は、債務引受を拒めばよく、債務引受に同意する場合は、他人の債務について争う権利を放棄していると見ることができるからであると説く。 これに対して、⒞免責的債務引受人については )₅₃(、債務引受がなされると、旧債務者は当事者適格を喪失するが、それにもかかわらず旧債務者はZPO二六五条により訴訟追行権を有したままであることを理由に、債務引受が訴訟係属後になされている場合であっても、既判力が拡張されるとする )₅₄
(。この結論を正当化するものとして、①債権者が、新たな債務者(引受人)に対して訴えを提起することよりも、従来の債務者に対する訴えを続行することに関して、より多くの利益を有していると考えられること、②ある者が、債務の存在を争っているにもかかわらず、その債務を引き受けること、および債務者がそのような債務を他者によって引き受けさせることについての利益を有していることはありえないということ。すなわち、右のような事例においては、債権者によって従来の債務者に対して訴求されている債務が、
一〇三九
( )同志社法学 六五巻四号一二六ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
裁判所により認められる場合に備えて、そして認められることを前提として、債務引受が行われることが挙げられている。 五 このように、
B et te rm an n
は権利承継の事例を、実体法上の依存関係による既判力の拡張事例であると解するのであるが、H ell w ig
がこれに属する事例を前述した二つの場合に限定するのに対して、B et te rm an n
はより広い範囲でこれを想定する。すなわち、この依存関係が、承継人の権利もしくは債務の根拠づけの時点においてのみ存在する場合(すなわち権利承継の事例)と、この依存関係が永続している場合(B et te rm an n
はこれを付従性︹A cc es so rie tä t
︺が存在する場合と表現する)とで、区別をもたらすことはできないとして、付従性がある場合にも既判力の拡張が行われることを肯定する。したがって、彼の見解では、承継の枠を超えた事例(たとえば、保証人、合名会社の社員や、連帯債務者、基準時前の転借人)についても既判力の拡張が認められることになる )₅₅(。そのことを、
B et te rm an n
は以下のように説明する。 すなわち、承継による既判力拡張の規定でもって、法律は、依存関係による既判力拡張の原則を認める。それは既判力拡張のための法的根拠︹R ec ht sg ru nd
︺として、依存関係を認めていることを意味する。このことから、依存関係のある権利もしくは義務の全ての事例において、その依存関係の程度にしたがって既判力の拡張が生じるという一般原則が導き出されるからである )₅₆(。 六 ところで、このような、第三者の法的地位が当事者の法的地位に依存させられるがゆえに、第三者は当事者の受けた判決の既判力を拡張されるという立論に対しては、法律行為と訴訟行為を同一に扱うことはできないとの指摘がなされるところである。それゆえに、依存関係説に対しては、訴訟法説との関係で、なにゆえ実体法上の依存関係があれば、訴訟法上の効力である既判力が及ぶことになるのかの説明が不十分であるとの批判がなされている )₅₇
(。 一〇四〇
( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一二七 この点について
B et te rm an n
は、法律行為と訴訟行為が同列に扱われることはなく、訴訟行為が、民法の意味における処分であるということを主張するわけではないとしている。ただし、彼は続けて、訴訟追行もしくは訴えの提起の処分的な性格は否定されるけれども、判決の既判力によって、﹁当事者の下で、権利の変更と同じように作用する状態が生じること )₅₈(﹂が認められると述べる。とはいえ、これは、既判力の本質論で主張されている実体法説を支持するわけではないことも、重ねて述べられている。さらに、法律行為と判決、法律行為と訴訟行為の類似が、法律上許容されていることを指摘し )₅₉
(、結論として、﹁既判力は訴訟法の制度としてみなされ、そしてその本質は専ら訴訟法上定められるが、同時に、この訴訟法上の効力が第三者に拡張されるための前提条件は、実体法から推測できる﹂とする )₆₀
(。
(三) Blomeyer )₆₁
(、Grunskyの見解 一
B lo m ey er
もまた、H ell w ig
やB et te rm an n
の流れを汲み、既判力の拡張場面については、﹁訴訟法上の根拠﹂による既判力の拡張と、﹁民法上の依存関係﹂による既判力の拡張の二つに分けられるとする。そして両者と同じく、既判力発生後に生じた権利承継の場合は、後者に属すると解している )₆₂(。 二 ここでも、既判力発生後に生じた権利承継の場合についてのみ、詳しく見てみることとする。
B lo m ey er
は、第一に、既判力が第三者に拡張されるためには、当事者の訴訟における訴訟物と、第三者との訴訟における訴訟物との間に、どのような関係が存在しなければならないかを問題とする。この問いに対し、彼は、(前訴)判決で確認されている法的状態は、当事者間の法的状態であり、既判力の拡張によって影響を受ける第三者の法的状態とは異なることを指摘する。そして、右の理由により、訴訟物の同一性が考慮の対象から外されるため、先決性︹P rä ju diz ia lit ät
︺ )₆₃(だけが残ると答える )₆₄
(。したがって、第三者に対する既判力の拡張のために、まずは、訴訟で争われた
一〇四一
( )同志社法学 六五巻四号一二八ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
当事者間の法的状態と第三者の法的状態との間に、先決性が要求されることになる。 三 しかしながら、既判力を拡張するためには、この先決性だけでは十分ではなく、さらに、訴訟上︹
pr oz es su ale
︺、既判力の拡張を正当化する根拠が必要であるとする。これについてB lo m ey er
は、﹁既判力の拡張は、訴訟上、要求しうるもの(あるいは期待可能であるもの)︹pr oz es su al zu m ut ba r
︺でなければならない﹂と述べており )₆₅(、この点から、右の根拠は﹁訴訟上の期待可能性︹
Z um ut ba rk eit
︺﹂と呼ばれている。B lo m ey er
は、この﹁訴訟上の期待可能性﹂について詳細な定義づけをしていないため、この概念がどのようなものであるのかはやや抽象的である。この概念の中身を把握するためにも、以下では、B lo m ey er
が、具体的には、どのような場合になにゆえ﹁訴訟上の期待可能性﹂を認めるのかについて見ておくことにする。 これについてB lo m ey er
は、第三者に有利な場合と不利な場合に分けて考察する。 まず、第三者に有利な場合は、前訴判決の既判力を後訴に拡張する必要があること(B lo m ey er
によれば﹁裁判の調和﹂︹E nt sc he id un gs ha rm on ie
︺)と勝訴当事者の利益が、敗訴当事者の利益と対立することになるが、﹁敗訴当事者は、訴訟において、自分の意見を聞いてもらうための機会を有しており、そしてそれゆえに、彼は、判断された問題について、共に争ったか、争うことができた﹂ため、敗訴当事者の利益は特に問題にはならないとして、第三者の法的地位が判決の法律状況に依存する場合に、敗訴当事者は、第三者に対して、勝訴した当事者に対するのと同じように、先決的な法律状態の確認を承認することを要求される(すなわち、訴訟上の期待可能性がある)とする )₆₆(。 次に、第三者に不利な場合は、第三者がその先決的な法律関係について共に争ってはいないため、特に問題になるという。そして、この場合をさらに身分関係手続のように職権探知主義が妥当する場合と、手続が弁論主義に従属している場合とに分けて考察している。ここでは、後者の場合に関する記述のみを紹介する。
B lo m ey er
は、弁論主義が妥当 一〇四二( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一二九 している場合には、訴訟に参加していない第三者に対する既判力の拡張は排除されなければならないとしつつも、全ての場合に排除が認められるわけではないと主張する。 そして、第三者の法的地位が、前提とされる権利関係について確定的に判断された時点において根拠づけられている場合は、第三者の法的地位は、前訴で確定された法律状態を前提に成立したものであるため、第三者は、前提とされる法律状態を承認しなければならなくなるという。なお、この場合における敗訴当事者の承継人に対する既判力の拡張は、前訴当事者の訴訟追行の態様に関係なく )₆₇
(生じるとされる )₆₈
(。 他方、第三者の法的地位が、前提とされる権利関係についての判決前に根拠づけられている場合は、原則的に既判力の拡張を否定しつつも、﹁第三者が、いずれにせよ、先決的な法律関係の法律行為上の変更によって、その地位の悪化を受け入れなければならない場合﹂には、既判力の拡張を要求しうるとする。その理由は、当事者がその訴訟追行によって適した処分を行った場合、第三者は、それについて異議を唱えることができないからであるという。このような場合に該当する事例として、たとえば合名会社の社員(HGB一二八条、一二九条)や、基準時前の転借人(BGB五五六条)が挙げられている )₆₉
(。 以上、
B lo m ey er
が﹁訴訟上の期待可能性﹂を肯定する場合を具体的に見てきたので、今一度、この概念が一体どういうものであるのかを検討しておきたい。まず、訴訟上の期待可能性の有無については、第三者に有利な場合と不利な場合、後者はさらに、職権探知主義と弁論主義が妥当する場合、弁論主義が妥当する場合には、第三者の法的地位が、判決確定後に成立した場合と判決確定前に成立した場合に分けて考察されている。そして、その有無に関しては、第三者に有利な場合には、裁判の調和という観点と、勝訴当事者と敗訴当事者間の利益の対立をどう捉えるのかという点から、第三者に不利な場合には、手続に関与していない第三者の不利益をどう根拠づけるのかという点から検討されてい一〇四三
( )同志社法学 六五巻四号一三〇ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
る。 これらを総合すると、﹁訴訟上の期待可能性﹂という概念は、具体的な状況に合わせて、裁判の調和という既判力の一般的な利益と、効力を有利に受ける者の利益および不利に受ける者の不利益(逆にいえば、既判力の拡張を制限することの利益)を比較衡量して決定されるものであることが窺える。そして、いずれの場合も、実体法上の依存関係が存在する場合に訴訟上の期待可能性が認められるとすることから、
B et te rm an n
同様、実体法上の依存関係を、比較衡量における最も重要な要素として位置づけているといえるだろう。 四 このように見てくると、B lo m ey er
の見解は、基本的にB et te rm an n
の見解を基礎に置くものと評価できる。ただ、B et te rm an n
が既判力の拡張根拠を実体法上の依存関係にのみ見出しているのに対して、B lo m ey er
は、それだけでは足りず、訴訟上の根拠も必要であるとする点に大きな違いがある。依存関係説と訴訟法説の関係という視点から眺めると、B lo m ey er
の見解の方が、B et te rm an n
の見解よりも、一歩進んでいるといえよう。 五 さて、﹁訴訟上の期待可能性﹂なる概念は、そもそも既判力の拡張根拠として想定されたものであるが、B lo m ey er
は、これをそのまま既判力の拡張要件として用いている。そして、既判力の拡張要件(﹁先決性﹂と﹁訴訟上の期待可能性﹂)を満たす一事例として、権利承継が挙げられている。具体的に、何をもって権利承継とするのかについては、論文の冒頭部分において、﹁当事者の権利承継人、すなわち、訴訟における係争物︹st re itb ef an ge ne S ac he
︺を取得した者﹂と述べているだけで )₇₀(、詳しい記述はない。 六 具体的な事例として義務承継に関する事例のみを紹介すると、まず、債務引受については )₇₁
(、既判力が生じた後の場合に限りこれを肯定する。免責的債務引受と併存的債務引受を特に区別せず論じているので、どちらの場合であっても、既判力が生じた後のものであれば、既判力の拡張を肯定するものと思われる。その理由として、債務引受人が債権 一〇四四
( )ドイツにおける既判力の拡張と承継人について同志社法学 六五巻四号一三一 者と前主の間でなされた判決の存在を知っていた場合は、確定的に認められた請求権を引き受けると同時に、判決の内容が契約の内容となることを挙げる。これに対して、引受人がその判決を知らなかった場合は、債務引受人が既判力の拡張から優先的な保護を受けるに値する利益を有しないこと、また、それゆえに債務引受人の利益よりも、判決の調和の要請の方に傾くことを理由に、債務引受人は引き受けられた債務が存在していることを前提としなければならないと述べる。 占有承継に関しては、特に言及されていないので、どのように解するのかは不明である。そして、付従性の事例(たとえば、保証人 )₇₂
(、合名会社の社員、基準時前の転借人)に関しては )₇₃
(、﹁権利承継の概念は、完全に除外される﹂としながらも、既判力の拡張を肯定する。すなわち、
B lo m ey er
もまた、B et te rm an n
と同じく、権利承継の枠を超えた事例について、付従性を理由に既判力の拡張を認めるのである。 七 この他、B lo m ey er
と見解を同じくする者として、G ru ns ky
が挙げられる。彼は、第三者の法的地位が当事者の法的地位に依存する場合で、さらに第三者に対しその者が判決に拘束されることを要求することができる場合(すなわちB lo m ey er
のいう期待可能性がある場合)に、権利承継を肯定する )₇₄(。そして特に、前権利者に対して出された判決に拘束されることを権利承継人に要求することができるか否かという問題が、重要な位置を占めるとして、承継人に有利な場合と不利な場合に分けてこの問題を考察している。 まず、承継人に不利な場合には、承継人の利益保護のために、既判力の拡張を承継が訴訟係属後に生じた場合に制限し、承継が訴訟係属前に行われている場合には、既判力の拡張を否定する。これに対して、譲渡人(ひいては、承継人)に有利な場合には、承継人ではなくて、敗訴当事者の利益が問題となるが、この敗訴当事者の利益は保護する価値のあるものではないと解して、承継が訴訟係属前に行われている場合であっても、既判力の拡張を肯定する )₇₅
(。
一〇四五
( )同志社法学 六五巻四号一三二ドイツにおける既判力の拡張と承継人について
具体的に何を基準に、期待可能性の有無を判断するのかに関する詳述はないが、右のような記述と、権利承継人に対する既判力の拡張は、﹁承継人が、このような解決策を妨げるような、保護する価値のある利益を有していないこと﹂でもって正当化されると述べられていることから、承継人あるいは敗訴当事者の利益が、既判力の拡張から保護するに値するものであるか否かが基準とされているものと思われる。 八 さらに、
G ru ns ky
は、法律上規定されている既判力の拡張事例(すなわち承継事例)から、共通の原則を導き出すこと、そして、この原則から、第三者が判決の効力を受けるさらなる事例を導き出すことができると主張する。それゆえに、実体法上の依存関係と訴訟上の期待可能性がある場合には、承継の枠を超えた事例であっても既判力の拡張を肯定する )₇₆(。 より具体的には、﹁第三者の権利が、訴訟当事者の実体法上の処分によって侵害されることができないという考慮から﹂、既判力の拡張を要求できないこと︹
U nz um ut ba rk eit
︺になるとするのに対して、﹁第三者が実体法上当事者の処分権に服する場合、彼が判決効から解放されるための根拠は存在しない﹂と述べている。先の期待可能性の判断基準と照らし合わせると、期待可能性は、承継人あるいは敗訴当事者が、既判力の拡張から保護するに値する利益を有するか否かにより判断されるが、その判断にあたっては、第三者が当事者の実体法上の処分権に服するか否かという観点を重視するのではないかと推測される )₇₇(。
(四) Häsemeyerの見解 一