大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
著者 小林 謙一
出版者 法政大学経済学部学会
雑誌名 経済志林
巻 51
号 2
ページ 57‑86
発行年 1983‑10‑25
URL http://doi.org/10.15002/00008443
57
第二次石油ショック後、とくにレーガノミックス不況以後、巨大企業を中心としてさまざまな減量調整が展開ざ(1) れている。そのなかで一般の事務員や不熟練工などを中心とした一厘用調整が強行されている。というのは、労働省
(1)
六五四三二
課題
大企業におけるホワイトカラーの一厘用調整
目次課題と方法ホワイトカラー部門の内部・外部調整大卒の現場投入と大卒女子の活用キャリア形成の総合化・専門化昇進の個人差と賃金構造の展望総括と展望課題と方法
小
林謙一
58
今後の展望をうることにある。 本稿の課題は、このような構造的な戦略のもので展開されている大企業の雇用調整の一側面を実証的に解明することである。ここで一側面と限定するのは、後述のように具体的に論点そのものが限定されているからである。それと同時に、考察の対象が近年とくに企業のなかでその比重を拡大させつつある大学卒のホワイトカラーを中心と(3) しているからでもある。一口でい鯵えば、本稿の課題は、大学卒のホワイトカーを中心とした質量両面の雇用調整、(4) とくに企業内部の労働市場におけるキャリアの形成と再編成、それと昇進管理や賃金管理との関連などを考察し、 「労働経済動向調査」によれば、技術者などの専門職にくらべて事務職の一雇用過剰感が強くなっており、また熟練工にくらべて不熟練工の雇用過剰感が深まっているからである。このような雇用調整に景気の後退による減量要因が作用していることは、到底否定できない。だが、それだけではない。たとえば経済同友会『企業白書』八二年によれば、経営戦略としては短期的な戦略よりもより中長期的な戦略が非常に重視されている。その内容はなにかと(2) いうと、新製口叩・新製法の開発にほかならない。ただし、それだけならば、すでに数年前から〃模倣から独創へ〃の転換として現実に取組まれてきている。それに対しこの一、二年の特徴は、こうした中長期の戦略をきわめて効率的に、つまりさぎの減量を進めながら展開していこう、という点にある、とゑてよい。
(3)大学卒の就業の実態や雇用管理上の問題点については『労働白書』八二年も承よ・(4)ブルーカラーを中心とした日本型企業内労働市場とその変化については、拙著『労働経済の構造変革』(御茶の水書房)、 7国、/■、
Lノ、=ノ21
第二章を承よ・ その実態については、拙稿「第二次減量化と労働市場の展望」、『経済評論』一九八三年八月号を承よ・それを中心とした戦略の内容については、拙稿「雇用・賃金問題と今後の日本経済」、『経済評論』八三年五月号をゑょ。
59大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
本稿の論点はつぎのとおりである。⑪ホワイトカラーの職種・階層別配置の現状はいかに評価されているか。つまり、その過不足状況はどうか。さらに、そうした過不足はいかに調整されようとしているか、その方法を解明することによって、企業内部・
外部労働市場の両面にまたがる調整メカニズムがあきらかになるだろう。
②このような量的調整に対応する質的調整についても問題にしなければならない。それは間接部門の合理化・省力化の実態を解明することであるが、そのなかで事務処理のシステム化やプロジェクト・チームの導入などがいかに展開されつつあるか、それらの今後の展望はどうか。さらに、それらとの関連で、今日急展開しつつあるオフィス・オートメーションにともなう職場の変化にも注目する。
⑧そのような職場の変化にも関連するが、近年増加しつつある大卒の現場配置と大卒女子の活用の実態がつぎの問題となる。はたして大卒の現場配置はいかなる雇用管理上の目的のもとに実施されてきているか、そのなかでいかに教育効果が重視され、現場の職務内容がいかに変化しつつあるか。さらに、大卒女子の活用についても、その採用の実態と一厘用管理上の活用の実態を考察するが、そのなかで女性なりにいかに専門職として位置づけられつつあるかどうかが問われるだろう。四以上でもホワイトカラーのキャリア..ハスとその編成が変化しつつあることがわかるが、こうした実態に対して企業のホワイトカラー管理としてはどのようなキャリア形成を志向しているのか。一部で注目されてきているスペシャリスト育成の志向はどの程度のウエイトを持っているか。これらは、当然、事務・営業部門と技術・研究部門では異なるだろうし、また企業規模やこれまでどのようなキャリア形成を志向してきたかによっても異なってくるだろう。
60
(5) 本稿の資料は、通産省産業政策局の委託によるアンケート調査によって入手した。この調査は、八一年度に実施されたが、証券取引所上場企業一、七○○社と未上場(常用従業員五○○人以上)|、一一一一九社、計三、○’九社を調査対象とした。しかし、このところこの種の調査に対する企業の協力は年々低下してきており、今回の回収率は一一○%に達しなかった。そのことに関連するかも知れないが、集計対象に多少の偏りが攻られる。集計企業の産業分布は、製造業・鉱業五三%、それ以外の第一一一次産業など四七%であり、この点はわれわれが意図したウエイトづけからゑて差支えはなかったが、後述のように企業成長の比較的顕著な企業が多かった。しかし、その偏りは、
前述のように構造的な一雇用調整を分析するうえでは、むしろ好都合だった、といってよい。
(5)その報告書そのものは、全日本能率連盟『高齢化・高学歴化における人事制度』八一一年を糸ょ。私はアンケート調査の総括論文を執筆したが、本稿はさらにそれに手を加えた成果である。
あらかじめ集計企業の経営上重要な特徴に触れておこう。われわれのアンケート調査は約五○○社の企業を集計対象としているが、これらの集計企業の名目売上高の成長
(2)
資
⑤最後にキャリア形成の一環でもある昇進について、いかに個人差が形成されつつあるか、今後の展望はどうかを解明する。さらに今後予想される昇進の停滞に対して、雇用管理としていかに対応しようとしているか。さらに、さきの昇進の個人差の拡大に対応して、ホワイトカラーの賃金構造の内部における個人差がいかに形成されているか。それは産業・企業規模別などでも異なるだろうが、従業員構成の中高齢化や高学歴化の程度
に対応していかに異なるかを解明する。それによって今後の重要な展望がえられるだろう。
料
61大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
表1部門・階層別男子ホワイトカラーの過不足感
(点)
若手
1.46 1.52 1.36 1.59 1.69 1.48 1.60
1.64 1.76 1.68
部 門
管理職|中堅
研究.新製品開発I1.931
警子鷺器設設壽1t:訂
生産技術I1.991
=…雫一ジ萱ア川琴IfI::■
セールス.エンジニアリング’1.891
企画.マーケティング’105 財務・経理’2.02
総務.人事’2.02 営業.販売,2.081
(イヤ_’2.04,
3点,適正:2点,不足:1点の平均点を示す。
5452096-38 5657966’78 LLLLLLLlLL
技術・研究事務・営業
1.82
1.82 1.62
1.86 1.70
過剰:
まず最初に男子ホワイトカラーの雇用数が、人事管理の責任者によっていかに評価されているか、その過不足感について問題にする。われわれのアンケート調査では、表1のように部門・階層別に過不足感を問うた。その結果によると、Ⅲ課長以上の管理職では、技術・研究開発部門の生産管理、事務。販売部門の財務・経理、総務・人事、.〈イヤー、とくに営 率は、一九七六’八○年度に年率一四%ちかくに達している。企業別分布としても、年率一○%以上の企業が製造業五四%、非製造業五七%を占めており、逆に年率四%未満の企業が占める割合は一六、一七%に止まっている。ということは、集計企業が成長率の高い企業にある程度偏っていることを意味する。「今後一一’三年の経営見通し」でも四○%以上は「良くなる」と展望しており、逆に「悪くなる」という見通しは一○%内外に止まっているのである。
Ⅲホワイトカラーの雇用過不足感 二ホワイトカラー部門の内部・外部調整
62
業・販売において、適正(Ⅱ二点)を多少上回っているが、エンジニアリング部門を中心として適正よりも不足に傾いている。②中堅層ではより一層不足に傾斜しており、研究・新製品開発と電子・電器設計では一・五五に達している。③さらに若手層ではこれら以上に不足化しており、電子・電器設計では一・四○すら下回っているのである。このように、管理職ですら過剰感は少なく、中堅、とくに若手を中心としてむしろ不足感の方に大きく傾斜しているのは、あきらかに集計対象に成長企業が多かったからであろう。しかも、単に売上げの成長によるだけでなく、(6) これまでわれわれの調査でもあきらかにしてきたように、新規採用が抑制されたり、管理職の増大も抑制されたり、削減されたりした、これまでの〃減量経営〃の所産でもある。もっとも集計企業でも、業種別や企業規模別に若干の差異もふられる。例えば、不足のもっとも顕著な電子・電器設計では若手の不足感が製造業においてより強く、
とくに五、○○○人以上の巨大企業でいちじるしくなっている。これに対しシステム・エンジニアリング部門における若手の不足感は、製造業の五、○○○人以上と非製造業の九九九人以下でとくに強いが、逆に生産管理部門の管理職の過剰への傾斜は、製造業では五、○○○人以上、非製造業では一、○○○’四、九九九人で比較的顕著に
なっている。さらにより過剰への傾斜があきらかな営業・販売部門の管理職の場合は、非製造業、とくに五○○○人以上の巨大企業で強くなっている。
(6)同様の通産省の依託研究のうち、私の担当分は、拙稿『高齢者の雇用保障』(御茶の水書房)第一一、三章を承よ・
いずれにせよ、前述のような成長と減量の二要因が微妙に交錯しているのである。このような全体としてのホワイトカラーの不足への傾斜は、山理科系大学卒を中心とした新規採用の増大、②管理職と中堅層についてはこれまで抑制してきた「内部昇進の促進」をはじめ、「事業所内配転」、「他事業所からの配転」などによって調整されなければならないのである。さらに、このような人員の調整方法について注目されるのは、管理職のヌヵゥト人
63大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
表2産業・部門別合理化・省力化実施・予定事項
(MA,%)
事務・営業 技術・研究
事 項
製造業|非製造業|製造業
非製造業
組織機構の簡素化業務の多角化 職務範囲の拡大
プロジェクトチームの採用
事務処理のシステム化 OA・CADシステムの導入 配転・出向の活発化定型業務の女子化
21171177
●●●●●●●0 87482634 5 448645 87867592
●●●●●●●● 81342414 51348554 80442018
●●●● ● ● 87322125 4 374633
51.9 19.7 27.2 52.7 50.9 52.8 49.1 25.4
女子業務の省力化 パートの活用
外注化・別会社化 人材派遣の活用37.2 31.2 36.1
34.7 45.5 45.0 15.2
22.8 18.2 18.8 16.3 37.8 51.9
18.5 16.1 13.6
事項別企業比率を多回答で示す。
それによると、まず事務・営業部門では、凶「事務処理のシステム化」が八○%以上に達している。このもつ る。 以上のように、集計企業におけるホワイトカラーの不足傾向は「新規採用」と「内部昇進」を中心として調整されているが、そうした量的な調整は事態の半面を示しているに過ぎない。というのは、つぎのような質的な調整も要請されているからである。われわれのアンケート調査では、経営組織などの変革をともなうような合理化と内部・外部労働市場にわたる省力化がいかに実施されているか、予定されているかを質問した。両者に対する回答を合計し、その企業比率を示すと表2のようにな 事」や中堅・若手の「中途採用」、「他企業からの出向受け入れ」、「業務の外注化」という外部型調整が一一○’三○%もふられることである。それにしても内部型調整が中心になっている事実は否定できない。
(2) ホワイトカラー部門の省力化・合理化
64
とも基本的な合理化はいろいろな事項と関連を持つだろうが、とくに「定型業務の女子化」や「女子業務の省力化」などと関連しているに違いない。②ついで多いのは、今日流行のオフィス・オートメーションと自動設計・製造O・皀員のH少匙の」□の巴空の「OA機器・CADシステムの導入」であり、製造業を中心として展開されつつある。これも⑪と密接に関連しているであろう。③つづいて「組織機構の簡素化」であり、これもまた基本的な合理化であり、「業務の多一角化」を大幅に上回っている。いわば古典的な合理化であるだけに「職務範囲の拡大」などとも関連しているであろう。Ⅲそれと関連して外部労働市場の活用も注目されるが、とくに非製造業におけるコートの活用」、「外注化・別会社化」が多くなっており、それぞれ四五%に達している。このように、事務・営業部門では「事務処理のシステム化」を中心として、減量による効率化が展開されているのである。
それに対し技術・研究部門では、Ⅲ事務・営業部門ほど集中してはいないが、製造業を中心として「プロジェクトチームの採用」がもっとも多い。つづいて、やはり製造業を中心として「OA機器・CADシステムの導入」も
広く展開されつつある。これはいずれも前述のような関連を広く示しているに相違ない。②これに対し非製造業の方では、山のような特定の事項への集中はやや低いが、「組織機構の簡素化」、「プロジェクトチームの採用」、「事務処理のシステム化」、「OA・CADシステムの導入」、「配転・出向の活発化」および「外注化・別会社化」がいずれも五○%前後を占めており、多様な展開をみせている。これは、非製造業における多様な産業・企業の実態を反映しているのだろう。③事務・営業部門に比較して外部労働市場の利用は限られているが、前述の「外注化・別
会社化」では製造業でも四○%ちかくの展開を示している。このように、技術・研究部門では、前述した新製品・
新製法の開発が戦略的な課題になっているだけに、そのための「プロジェクトチーム」の編成を中心として、より多様な合理化が展開されているのである。
65大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
なお、アンケート調査では実施中の各事項の「効果」も問うたが、その結果をまとめて承ると表3のようになる。ここでは実施件数に対する「効果あり」の回答数の比率を示した。全体とすれば、それほどまだ効果は高くたい、とふてよい。まず、事務・営業部門では「プロジェクトチームの採用」、「事務処理のシステム化」および「。〈-トの活用」、「外注化・別会社化」が製造業でも非製造業でも二○%を越えており、比較的効果が上っている。とくに非製造業では、「OA・CADシステムの導入」、「配転・出向の活発化」、「定型業務の女子化」および「女子業務の省力化」も二○%を上回っており、多様な合理化・省力化がそれぞれ製造業より以上に効果の上っていることを示している。逆にいうと、製造業の事務・営業部門の合理化はそれだけ遅れており、今後の合理化の要請が強 以上は、実施中と予定を一括して示したが、実施中から実施予定への転換をふると、ほぼつぎのとおりである。⑪事務・営業部門では、「事務処理のシステム化」中心から「OA・CADシステムの導入」中心への展開である。これは転換というよりも、「事務処理システム化」の方法の高度化の一側面を示している。②それに対し技術・研究部門では、やはり製造業を中心とした「プロジェクトチームの採用」から「OA・CADシステムの導入」への転換である。これはプロジェクトチームの開放的、機敏で流動的な組織化が一定の成果を上げたことにもとづく、新しい転換を示しているのだろう。③さらに非製造業の技術・研究部門では、前述のような「プロジェクトチームの採用」や「外注化・別会社化」などの多様な展開から「OA・CADシステムの導入」への集中がいちじるしくなっている。このように、いずれの部門でも「OA・CADの導入」による合理化・省力化が今後の展望となっているのである。
③合理化・省力化の効果
66
表3産業・部門別合理化・省力化の効果率
(%)
事務・営業
技 術・研究実施事項 製造業
15.9 22.7 16.9 24.9 26.0 14.8 19.7 14.3
14.0 22.3 31.5 19.4
非製造業
13.1 17.6 16.6 25.5 38.5 26.5 20.5 25.6
製造
業非製造業 組織機構の簡素化
業務の多角化 職務範囲の拡大
プロジェクトチームの採用
事務処理のシステム化 OA・CADシステムの導入 配転・出向の活発化 定型業務の女子化
13.7 14.1 10.8 11.7 17.0 14.7 30.3 28.8 28.3 31.9 22.5 25.0 19.1 11.0 11.8
--
21.5
女子業務の省力化
パートの活用外注化・別会社化 人材派遣の活用
22.7 23.3 23.6 11.5
22.4 7.6
27.9 30.5 21.9 27.1
34.2 0.0
まっている、とみてよいだろう。
それに対し、技術・研究部門では、逆に製造業の方がより多くの事項について効果を上げている。とくにそれは「女子業務の省力化」、「人材派遣の活用」において顕著であり、効果ありの比率が一一○’三○%台をマークしている。逆に非製造業では、「定型業務の女子化」において製
造業の効果を大きく上回っている。そのほか、技術・研究
部門に多かった「プロジェクトチームの採用」と「事務処理のシステム化」および「OA・CADシステムの導入」、さらには「・ハートの活用」の効果が大きいと同時に、これ
らの戦略的事項ではいずれも事務・営業部門の効果ありの
比率よりも高くなっている。さらに、いずれの産業、部門
においてもかなり共通しているが、「組織機構の簡素化」、「職務範囲の拡大」、「配転・出向の活発化」などは、その
大部分が二○%を下回っている。というのは、それらの典
型的な合理化は、すでに〃減量経営〃のなかで実施されつづけているので、その限界的な効果が逓減してきているか
らであろう。
67大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
前述のように、まだ試験段階に止まっているのを含むにしろ、オフィス・オートメーションの導入によって、すでにさまざまな変化が職場に発生している。表4は、企業比率として二○%を上回る八つの事項についてその比率を示した結果である。まず、さまざまな事項の企業比率の合計をみると、表4のとおりとくに製造業においてあきらかなように大企業ほど合計が大きくなっており、さまざまな変化がすでに発生している事実を如実に示している。
その内容に立ち入ってふると、つぎのとおりである。まず、山回答数が相対的にもつとも多いのは「補助的事務の減少」であり、最高の製造業五、○○○人以上では九○%以上にも達している。つづいて「意思決定の迅速化」が高率であり、やはり製造業五、○○○人以上で七○%以上に達している。こうした変化がOAによる質・量両面の変化を端的に示しているのであろう。②こうした基本的な変化に関連してさまざまな変化が巻き起されているが、なかでも「女子事務の拡大・高度化」と情報処理や なお、最近流行の「OA機器・CADシステム導入」については、すでに糸たように実施中と予定の企業比率は、製造業では六○%以上、非製造業では五○%以上に達している。だが、実施中に限定すれば、製造業五、○○○人以上の六九%は別として、全体としては四○%以下に止まっている。その効果ありの比率も、非製造業を含めて五、○○○人以上の巨大企業では三○%を優に上回っているが、全体とすれば一一○%台に止まっている。オフィス・オートメーションの導入に限ってふても、さすがに「導入の予定はない」という企業比率は営業部門や技術・研究部門で二○%程度でしかなく、大部分は導入中か導入の計画中なのである。だが、現在導入中でも半数ちかくはまだ試験段階にあり、今後の展開が注目されるところである。
ⅦOAによる職場の変化
68
表4産業・企業規模別OAによる職場の変化
(MA,%)
11lLll‐
一一人下-900 --輪雛州
製 非製造業
職場変化事項
wl蝋#
----- ̄--_---7271705
999人以下 68.3 5,000人
以上
務の減少
の迅速化 拡大・高度化 の向上 員の削減 技能不適応 活性化 の明確化 補助的事
意思決定 女子事務の 信頼性 女子事務 中高年の 職場の 職務分担
94.6
38.5 47.6 63.4 73.0
40.0 47.6 59.1 62.2
30.8 43.8 43.8 54.5 47.9
75.7
38.5 27.3 37.1 27.7
42.7 51.4
21.0 21.2 23.1 22.7
29.2 24.3
|:11::liliI:!:
I47MI3938135M
)た事項の企業比率も含む。
28.6 26.0 27.3
28.6 31.7 18.2
'39M
372.4 354.9合計
合計には表示しなかった事それにもとづく「意思決定」などに対する「信頼性の向上」の指摘率が全体として四○%以上をマークしている。これらのうち、「補助的事務の減少」に関連して、「女子事務員の削減」を招く以上に「女子事務の拡大・高度化」がより高率となっているのは興味深い。これは、女子労働力に対する一雇用管理の対応をも示しているのであろう。③さらに注目されるのは、「中高年の技能不適応」が発生していることである。もっとも企業比率が高い製造業一、○○○’四、九九九人でも三○%を下回っている。しかし、これも中高年そのものの適応のしかたであると同時に、「不適応」を起すような教育訓練などの管理の問題でもある。こうした問題を残す以上、「職場の活性化」も三○%止まる程度にならざるをえないのであろう。
以上のようなOA化によるだけでなく、職場にはさまざまな変化が発生してきている。例えば、OA化にも関連して大卒女子の雇用が増加していることもその一つである。また直接部門の現場に対する大卒の投入もその一つである。今回のアンヶー 三大卒の現場投入と大卒女子の活用
69大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
まず生産現場への大卒の配置率は三六%に達しているが、配置していなかったり、配置すべき職務がない、という回答の方がより多くなっている。製造業の方が配置率がより高くなっているが、九九九人以下のより小規模な企
業でとくに顕著になっている。これに対し営業・販売の現場の配置率は八○%にも達しており、とくに商業などの非製造業においてより高くなっている。というのは、すでに早くから非製造業を中心として大卒のセールスマン化が進行しており、大卒がすでに現場の中心になっている実態を反映している。つづいて、こうした現場投入は一層用管理上いかなる理由にもとづくのかが問題になる。まず生産現場からみていくと、山「将来の管理者のための教育」という理由が圧倒的に多く、複数回答で製造業では九○%以上に達している。②つづいて現場の「職務の高度化」が多く、とくに小規模な企業では六○、七○%に及んでいる。③それらにつづいて「モラール・アップ」が多く、非製造業の四、九九九人以下では四○%内外に達している。Ⅲそれらに比べれば、かつて多かった「高卒の採用難」とか、大卒が「高卒の能力と変わらない」とかの理由は、いずれも一○%程度に過ぎず、少なくなってきている。だが、非製造業の小規模企業で比較的多いのは、雇用管理からゑた高能
力者が容易に採用できないからだろう。 卜調査では、新入社員の短期的配置を別として、大卒の生産や営業・販売の現場への投入を問題にした。もっともこうした大卒者の現場への登場は、雇用管理側の対応だけではなく、大卒者自身の行動として高卒資格で登場しているケースも多いだろう。しかし、ここでは企業調査なので、一雇用管理側の対応が問題になっているのはいうまでもない。
Ⅲ大卒の現場投入
70
こうした大卒の現場投入やOA化による「女子事務の拡大・高度化」、さらに「定型業務の女子化」などには、女子ホワイトカラーの増大も含まれているのであろう。さらに、始めにふた若手を中心とする男子ホワイトカラーの不足傾向も、女子ホワイトカラーの増大を必要としている間接的要因とゑてよい。われわれのアンケート調査では、四年制大卒女子の活用についてもその実態を問うた。 それに対し、現場投入の進んでいる営業・販売現場についてふると、その配置理由はある程度異なっている。しかし、Ⅲ「将来の管理者のための教育」という理由がもっとも多い点はほぼ同様である。だが、それは七○%前後に止まっており、この理由がもっとも多い非製造業の五、○○○人以上でも八○%を下回っている。②つぎに多いのも「職務の高度化」だが、製造業ではさきの生産現場より高く、とくに五、○○○人以上の巨大企業では八○%以上にも及んでいる。③つづいて多いのは「モラール・アップ」であり、全体として生産現場よりもそのウエイトが大きくなっている。Ⅲそれらにつづいて、「高卒の採用難」などの理由はより少なく、それよりも「大卒の仕事の増大」が多く、とくに製造業で顕著になっている。ということは、やはり製造業で多かったように、現場における「職務の高度化」と密接に関連しているのであろう。以上のように、大卒の現場投入は「将来の管理者のための教育」を中心として、それと同時に現場の「職務の高度化」による労働力吸引要因と「モラール・アップ」という労務管理要因が作用している。その反面、電気・ガスや建設などの非製造業や製造業の一部を別として、良質な「高卒の採用難」や「大卒の能力低下」という理由はすでに少なくなってきている。
②大卒女子の活用
71大企業におけるホ
表5ワイトカラーの雇用調整
産業・企業規模別大卒女子の活用状況
鹸川瓠WiJ董論
86517MI600177818001M5
緋三ドiMi菫I1iil:ill lOOとするパーセントを示す。
ョに大○非○でlは 短み部つ%製○い四非そ 大た分づほ造人る、製の
・よはいど業以商九造結 高う弓てにも上業九業果 卒な短採止含での九のは 並良大用まめは採人方表 永質・しって八用でが5
 ̄な高てて九七比はその の→卒いし、九%率八のと 活高並るる九にが○採お 用卒糸企。人’も高%用り はの ̄業以達くに比で
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のL-して規るいい少主 よなて、模のるる高ず うどいい企Iまか。く採
|このるか業大らそな用 大事に1こでいでれつ状 卒情過活Iまにあはて況 女がぎ用採注るとお力創
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採用比率
:囑灘、
活用状況は企業規模別小計を
る非製造業で特に多くなっている。これに対し製造業では、男女差はつけているが、「専門分野」で活用している比率は採用企業の三○%ほどに達している。その反面、「男女同等」の活用は一○%ほどに止まっており、むしろその点では非製造業の五、○○○人以上の巨大企業の方が進んでいる、とみてよい。というのは、小売業とサービス業において「男女同等」の比率が特に高くなっているからである。このように現状の活用状況は「男女同等」視角からゑて、まだ大きな問題が残されている。
72
このこと自体はかなり伝統的な管理である、とゑてよい。したがって、むしろジェネラリストとしてもそのキャリア・・ハスが現場にも拡大されてきている、というキャリアの内容の変化がより重要であろう。またスペシャリストとしての技術・研究者のぱあいも、さまざまな部門に所属するスペシャリストによって編成されたプロジェクトに参加することによって、従来より幅広いスペシャリストが育成される、というようなキャリアの内容の変化がより重要であろう。このような方法でこそ、経済同友会調査があきらかにしたような独創的な開発が進められてきて これまでホワイトカラー部門における合理化、OA化による職場の変化、大卒の現場投入などについてふてきた。これらのうち、「将来の管理者のための教育」などの理由によって大卒が現場に配置されるということは、大卒として、したがってまたホワイトカラーとしても、従来のキャリア・・ハスがかなり変化しつつあることを示している。このようなキャリアの形成について、われわれのアンケート調査では大卒男子のホワイトカラーに対して企業はどのような基本方針を持っているかを解明した。それに対する回答は、事務・営業部門では「多くの部門の業務あるいは多くのテーマやプロジェクトを経験させ、ジェネラリストの資質を育成する」という回答が六四%を占めている。これに対し技術・研究部門では、「あまり部門間移動は行なわず、特定のテーマやプロジェクトに携わらせ、スペシャリストとしての資質を育成する」という回答が四七%を占めている。このように、事務・営業部門では前述のような具体的なキャリア.、ハスの変化をも含めてジェネラリストの育成を目標としているのに対し、技術・研究部門ではスペシャリストの育成が主流を占めている。 四キャリア形成の総合化・専門化
73大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
表6産業・企業規模別キャリア育成方針
□抓一『トー肌一剛剛肌一川一川川肺一このような事務・営業におけるジェネラリスト育成は表6のよ
(%) ―いるのだろう。一術一ススーー
ーうに製造業と非製造業では異なるが、いずれもとくに五、○○○ 》・「『『川諦川1M・軒一‐獅川》州・舛幽皿舳鑪硅琲淵埣蓉細附帆鮎矼朏詠い栓。辱い辨溺秬欣汪辮 |より大規模な官僚組織を統合する必要が強いうえに、とくに新し ■■・■|L■ |リー6’454’2705|い経営環境のもとで、いわば日本的な部門セクショナリズムを克 一洲・》トゴnl5nm-9l48n三服していることが要請されているからだろう。それと同時に、そ 三》一(T‐・剛・稀伽剛一四|川剛l川一》峠》垰潅》卜糾帰》》「)蜀独率隷》》恥や》峠』》》》碑》 。I戸口「11’1111’ように中高齢化した企業タイプほどジェネラリスト育成の比率が 一一上叺下一上叺下|高く、逆に若齢化した企業のタイプほどスペシャリスト育成の比 模一一以川以一一以川以一率が高くなっているからである。つまり、従業員構成が若齢化し 規二計二川咀川壬計一Ⅲ咀川―ている段階ではスペシャリストの育成を重視し、高齢化した段階 》」し川ⅢⅧ’1Ⅷ、川J飛維枇箆舳燗蝿壇鱒川牌幽Ⅲ禰厩一献酎 一製造業一非製造業一かつたが、ある段階からジェネラルコースとスペシャルコースに
74
表7産業・高齢化類型別キャリア育成方針
(%)
…|ii環IiHflJr纂料 鵜l1iハル;Ⅱ譲
鵜■;1訂轄|塞口蓬
産
製造業一非製造業
企業の高齢化類型はつぎの区分による。ホワイトカラーのうち40歳以上の比率 が40%以上(高齢型),20~40%(中間型),20%未満(若齢型)。
分けて育成するコースもある。この分離育成はとくに研究。技術部門における製造業の五、○○○人以上で大きなウエイトを占めているが、それ以外ではそれほど一般的ではない。もっとも、産業。部門別に立ち入ってふると、事態はそれほど単純ではない。上記のライフ・サイクル仮設がもっとも単純に当てはまるのは、非製造業の事務・営業部門だけであり、製造業の事務・営業部門ではむしろ中高齢化が中位の企業においてジェネラリストの育成がより多く強調されている。さらに技術・研究部門では、逆により若齢化しているタイプでジェネラリストの育成がより多くなっている。したがって、技術。研究部門ではむしろ逆に中高齢化するのにつれてジェネラリスト↓スペシャリストのように変化するのかも知れない。というのは、若齢型のぱあい、ジェネラリスト志向とはいえ、スペシャリストとして育成されていない技術者などが多いのだから、前述のようなプロジェクトのなかで大学での専攻を超えたような総合的な能力の育成が目的になっているのだろう。それを前提として中高齢化とともにスペシャリスト↓ジェネラリストの育成が展開されるのかも知れ(7) ない。こうしたモデルは、事務・営業部門にも当てはまるだろう。いずれにせよ、こうしたキャリア形成の管理については、もっと動態的、
75大企業におけるホワイトカラ の雇用調整
表8階層別教育訓練の目的
(MA
企業人としての態度 育成
%)
、
、 目可総ヨ ニI室::
済社会 内外経 的動向
の一般60.4 34.8 14.4 10.3
営方針 自社経
計画・経営
事務処|部下指 専門知
国際感 理能力|導力 識
覚階層
172.6 167.7
)44.8
127.8
部長クラス 課長クラス 係長クラス
中堅社貝 一般男子社員 女子社貝 中高年社員 専門スタッフ 新入社員
1.4 7.7
38.9 13.9 11.1 24.0 78.5 25.2 13.0 84540192 ●●●□●●●0 61970990
237.5 24.2 81.2 51.0 17.8
223.4 46.3 33.4 73.0 26.7
209.1 7.6 3.0
22.0 62.8 3.8 3.6
65.7 42.5
183.9 11.2 68.1 28.6 69.4
171.7 19.8 26.4 24.5 19.8 60.4 18.9 166.0 13.0 23.5 13.0 3.7
0.9
95.1 8.0 193.3 7.5 34.0 42.1 19.7 87.1
前述のようなキャリア形成の一側面を示す昇進の管理についても、今回の調査は重要なアプローチを試ゑている。まず、山管理各階層 かつ内部のキャリア.。〈スのあり方を中心として立ち入った解明が必要であろう。
(7)その実例については、前掲、拙著『高齢者の雇用保障』第三章第一一節も承ょ。
なお、このようなホワイトカラーのキャリア形成に関連して、今
回の調査ではホワイトカラーのOFF・JTを中心とした教育訓練についても立ち入った調査を試ふた。その結果は、表8のとおりで
ある。部課長などの階層・職能別教育訓練の内容についてはそれな
りに有意義な情報がえられたが、能力開発そのものとしては、前述のようなキャリア形成の内部におけるさまざまなキャリア.。〈スの
遍歴がより重要だとふられる。その意味でも、前述のとおりキャリア形成そのものの解明が要請されるのである。
Ⅲ昇進の停滞と個人差の展望 五昇進の個人差と賃金構造の展望
76
表9課長昇進の個人差とスピードの今後の展望
(%)
…戦■鞠幹
製|高学歴’64.117.917.6110264.1120.57.67.61100.0
造■罪高学農|;鯛■鶏filiU:::|重引i:■Ⅲ:ill:88
調灘I繊蝿鰯いI;lilIi :匿''1M蝿雛蝋|雛l1IMi 辨劇鯛;蝿;輔i縢|
%以上(高学歴型),30~70%(中間型),30%未満(非高学歴型)。
企業の高学歴化類型はつぎの区分による。ホワイトカラーのうち大卒比率が70
然、それほど大きな違いは認められなかった。②それより重要なのは、標準よりも早いぱあいと遅いばあいの年数の差である。
もちろん係長クラスでは早い遅いで二’六年程度の差に止まるが、部長クラスともなると六’’○年にもなるのである。③しかも今後の展望としては、標準そのものが遅
くなるとする企業が五○%内外にも達しており、表9のように高齢化、とくに高学歴
化した企業ほど、遅くなる展望がより強く
なっている。四さらに個人差が拡大する、という展望が支配的になっている。この展望は高学歴化の程度ではあまり違いはないが、今後の中高齢化によってますます強く
なっている。つまり、現在中高齢化している企業ではこれ以上個人差が拡大すること 差異も予想されたが、標準については、当 ごとの昇進所要年数は、産業・企業規模別
77大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
役職十僻|職|■干
鱈難|蓑聯|菫lIIM辮;雛 繕縢|鱗にlllll鱗舳iII :1ljilj;i』Lliiilhヨ劃雛ヨ辮繩
業でより多く専門職制度の導入が展望されているのである。 造業ではより少なくなっているが、今後は、とくに非製造 職制度が実施されている企業は五○%内外に止まり、非製 ているわけである。また今回の調査によれば、現在、専門 進の個人差の拡大は、こうした対応の所産として展望され ーション制」も考えられている。またに、前述のような昇 ようとしている。そのほか「役職定年制」や「役職ローテ は「能力主義」と「専門職制」の強化を中心として対応し 「系列会社への出向」を中心として対応しているが、今後 調査によれば、図1,2のとおり現在は「資格制度」と 企業はいかに対応しようとしているか。今回のアンケート このような今後の昇進の停滞や個人差の拡大に対して、 上の企業が個人差の拡大を展望しているのである。 ど多くはないが、課長、とくに部長のクラスでは七○%以 Ⅲのとおり、係長クラスでは個人差の拡大の展望はそれほ り拡大することが展望されているわけである。もっとも表 は少ないのに対して、現在若齢化している企業では今後よそのなかで、現在は「ポスト不足対策」に止まっている面
78
図1製造業における昇進停滞への対応
%妬
(A7雑灰)
20
15
10 7
5
5 10 15 20 25%
9Mi
なお、今回の調査では大卒男子の標準採
用者についてどの程度の管理職への昇進か
ら個人差が発生するのかをあきらかにしている。それは表、のとおり、産業・企業規模別などによって多少異なるが、「課長昇
進段階」という、答が半数近くの企業をカヴァーしている。もちろん、すでに中高齢
化した企業では「部長昇進段階」のウェイトが大きくなるし、より非高学歴、若齢型の企業や管理職比率のより低い企業では、
部課長よりも低い段階から個人差が発生している。およそこのような昇進構造に対応
して、大卒男子の標準採用者の個人別賃金 が強いのを今後は調整し、いかに本格的な専門職制度が確立されるのかどうかが問われるであろう。
②個人別賃金構造の展望
79大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
図2非製造業における昇進停滞への対応
25 %(今後)
20
15
合 ,
10
5
7)t田
5 10 2025%
(現在)
15
表11男子大卒標準採用者の昇進に個人差の生じる時期
部長昇進に 際して Ⅱ’’1111口一 (%)際して係長昇進 際して課長昇進に
無| 回|計 容I oDI1ooo
o、01,o0.0
採用時から
巷』嶢僻醐二麩一
産業・規模
|にl
l2a41
1釜11 l2M1
1lill1
,’
総
上人下上人下9 9 計一以的以一以卵以
一人刈人一人劃人
-000’009川川朋一川川的
51 -51 8’006090 ●}●●●●●● 0’01100045.6
51.3 5.5
8.1 7.3 4.8
4.5 2.9 7.0
製造業一非製造業一
13.50.01100.0
22.1 42.1
39.0 0.0’100.0
6126.0
0136.3
:|蓋:
50.0 45.0 54.5 0.0’100.0 0.0’100.0 0.0 100.080
構造も形成されている、とゑてよい。その考察に先立って、所定内平均賃金プラス賞与の年齢別賃金格差についてふておくと、それは図3の上段のとおりである。一三歳の初任給を一としてふると、五五歳段階でほぼ一一一・五以上の格差が承られる。このような年齢間格差は企業規模別にかなり異なっており、九九九人以下の五五歳の倍数は一一一・三に止まるが、五、○○○人以上では四・五近くにも達している。そのほか、高学歴化よりも中高齢化の程度やとくにポスト不足の程度によっても、ある程度の差異が承られる。このような年齢間賃金も、いわゆる年功賃金の一側面を示すのだろう。だが、年功賃金にとってより重要なのは、同期の標準採用者の個人賃金にもばらつきがあり、しかもそうした分散の要因がこれまで十分に明確化されていなかったことにある。今回の調査では、こうした個人間賃金格差をも解明している。それは、年齢別最高・最低の差をその年齢の平均賃金で割った.ハーセントで示されているが、その結果は図3の下段のとおりである。さらに表皿のように、製造業
においてよりいちじるしいように、大企業ほど中年段階からかなり大幅になっている。製造業の五、○○○人以上と非製造業の一、○○○’四、九九九人では四○歳以上の段階で個人間格差が三○%以上に達している。もっとも
製造業の五、○○○人以上では四五歳の三五%が最大で、より高齢化するとむしろ縮小しており、逆に九九九人以下の五五歳の四○%が最大となっている。こうした実態の規定要因は複雑であろうが、より小規模の企業では中年層まで格差が小さい反面、高齢段階で拡大させているかも知れないし、巨大企業では現在の高齢者まではそれほど
大きくない反面、今後肥大化する中年層で拡大させているかも知れない。
それ以上に重要なのは、中高齢化や高学歴化などの企業タイプによる差異である。表Ⅲによれば、⑪高学歴化するほど個人差が拡大する。高学歴者間の競争が激しくなるのであろう。②だが、中高齢化した企業ほど、逆に個人
81大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
図3企業規模別に承た年齢別賃金格差と個人差 年齢間賃金格差
450
/
5,000人以上 400
ハⅡ>L…=“ ////、999人以下
〉'1
99人 350
300
3口。
250
200
150
~4,999人
[)OC DOC
%
30 ロロ皿 下
20
10
303540455055歳
上段の指数は22歳を100とする。
82
表12産業・企業規模別個人間賃金格差
(%)
産 業・規 模 30歳 35歳
40歳 45歳 50歳
55歳 製造業5,000人以上
1,000~4,999人 999人以下
18.8 24.4 31.9 34.9 32.0 30.7 11.0 14.6 21.1 24.7 29.1 33.2 17.2 21.2 25.4 28.4 31.3 39.7
非製造業 5,000人以上
1,000~4,999人 999人以下
16.5 21.8 27.6 34.0 38.4 37.5 25.0 28.8 35.2 34.6 42.9 40.7 14.5 18.0 20.9 23.8 28.4 29.3
(最高年間賃金一最低年間賃金)÷平均年間賃金×100のパーセントを示す。
表13企業類型・年齢別個人間賃金格差
(%)
40歳 45歳
30歳
35歳 50歳55歳
類 型
高学歴 中間 非高学歴
30.9 36.0
21.4 25.2 29.6 35.7
25.3 28.5 35.0
15.2 19.4 32.1
24.8 29.6 33.3 36.8 18.3 21.8
高中若 齢間齢
菱I
13.2 17.3 24.2 29.3 26.7
25.6 31.0 33.1 19.5 21.1
21.3 30.9 34.6 37.9
16.7
差は小さくなっている。ということは、中高齢化している企業ほど、前述のように昇進の
個人差がより上位の職位において拡大するように、同期昇進・昇給の傾向が比較的強いの
かも知れない。しかし、今後はこうした同期
昇進・昇給はかなり大幅に見直されることに
なるだろう。それは、年功制度の見直しの進んでいる若齢型の企業タイプで個人別賃金格差がより大きくなっていることからも類推で
きるであろう。③いずれにせよ、前述のような「能力主義」・「専門職制」下の昇進・昇給
がいかなる構造を持つのか、より立ち入った検討がなされるべきであろう。
本稿の考察はつぎのように総括できる。第一に、男性を中心とした調査時点の雇用状況はいかに人事担当者によって判断されて 六総括と展望
83大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
第二に、ホワイトカラーの省力化・合理化にしぼって、より具体的に立ち入った調整方法を問題にした。その結果は、事務・営業部門はやはり事務処理のシステム化が中心となっている。それによって省力化・合理化を進め、個戈人の職務の拡大・多角化を進めることによって、組織の簡素化も実施しよう、というのである。これに対し技術・研究部門では、製造業と非製造業においてつぎのような差異がふられる。まず製造業のぱあいは、異種の技術・研究者を含めたプロジェクトチームの再編成が中心となっている。それによって、すでに触れたような新製品などの開発を進めているのだろう。非製造業の方は組織の簡素化を始め、多様な展開を示しており、これまでのような基軸となる方法への集中はふられない。それは産業が多様な事態を反映しているのだろう。
以上は、現在実施中と今後の予定をまとめてゑたが、実施中から今後の予定への動態を承ると、オフィスオートメーションと自動設計・製造コンピューターの導入による省力化・合理化に集中している。とくに巨大企業におい ぱならない。 いるか。今回の調査では、管理職・中堅・若手について部門別に雇用の過剰・不足感を問うた。その結果によると、さすがに事務・営業部門の管理職の過剰感はある程度あきらかだが、全体とすればむしろ不足基調となっている。とくにエレクトロニクス関係の若手の設計マンなどはかなり不足している、と承てよい。このようなエレクトロニクスの需要超過はやや特殊だろうが、全体として不足感が強いのは、前述のようにレーガノミックス不況の影響がまだ本格化していなかったことと集計企業に成長企業が多かったためだろう。問題は、こうした雇用の過不足がいかに調整されようとしているかにある。その点は、若手の不足が顕著な事実から想像されるように、新卒採用l配転l内部昇進という内部調整が中心となっている。ということは、日本型の内部労働市場の反映でもあるが、しかし一部には管理職のスカウト人事などの中途採用や業務の外注化などの外部調整が承られることにも注意したけれ
84
ては、このようなOAとCADなどがかなり導入されており、それにともなう職場の変化が相当起っている。なによりも、山補助的事務の減少があげられる。例えばOAの導入などが高卒女子への需要を大幅に削減させつつあることは、すでに周知の事実である。②意思決定のスピード化やそれへの信頼性の向上も顕著である。もっとも、さぎの経済同友会の調査によれば、独創的な戦略を立案するシステムの開発が今後の戦略になっているのだが、両者の関連は今回の調査ではわからない。③さきの高卒女子とはむしろ逆にOAなどの導入は、大卒女性の業務を拡大したり高度化したりしている側面もふられる。側だが、OAやCADなどの導入は中高齢者の不適応も発生させており、今後の教育・訓練などへの取組糸が注目される。
第三に、コンピュータリゼイションの効果については以上のとおりだが、ほかの省力化・合理化の効果はどうだろうか。全体とすれば、予想されるほどの効果はまだ上っていない、と判断されている。そのなかで多少とも目立つのは、山事務・営業部門における、さぎの事務処理のシステム化とプロジェクトチームの再編成であり、それとともにパート化、外注化、別会社などの外部調整の効果も目立っている。②とくに非製造業では、さぎのOA・CADの導入による省力化のほか、配転、出向、女子化などが目立っている。③これらに対し、技術・研究部門における効果は製造業を中心としていちじるしくなっており、とくにOA・CADの導入のほか、プロジェクトチームの編成、事務処理のシステム化が目立っている。さらに、この部門でも.ハート化や人材派遣事業の活用などの外部調整も一定の効果をあげている。
第四に、近年の大卒ホワイトカラーの変化として、大卒のいわゆる現場投入や大卒女性の活用が注目されてきて
いる。まず、販売・営業部門ではすでに早くからセールスなどが高卒から大卒に転換しており、今回の集計企業でも八○%前後が大卒を現場に配置している。これに対し、最近注目され始めている製造現場などでは、建設業や電
85大企業におけるホワイトカラーの雇用調整
こうした大卒の現場投入やさきのOAなどの導入が大卒女性の活用を拡大させてきている。それはとくに巨大企業において顕著である。だが、そうした活用の実態には、まだ大きな問題が残されている。というのは、四年制の大卒を短大・高卒並永にしか活用していない企業がきわめて多いからである。なかには、製造業などで専門職として活用している事例も承られるが、そのぱあいも女性の専門職として活用しているに過ぎない。男女同等に活用しているのは、大企業のなかでも小規模のサービス業などでごく一部にふられるに止まっている。このような状況は、需要・供給双方の要因に規定されているのだろうが、今後の展開が注目される。第五に、これまでも触れてきたように大卒を中心としたホワイトカラー部門の雇用は内部・外部の両面から合理化・省力化されてきているわけだが、そのなかで展開している職務の拡大や多様化によるキャリアの変化は、結局
いかに総括されようとしているのだろうか。本稿では主として総合化と専門化の志向について問うた。その結果によると、事務・営業部門ではとくに巨大企業を中心としてジェネラリスト志向が顕著なのに対し、技術・研究部門ではいずれかといえばスペシャリスト志向である、とゑてよい。そのぱあい、非製造業の事務・営業部門では、スペシャリスト↓ジェネラリストのようなライフサイクルが承られる。これに対し技術・研究部門では、逆にジェネラリスト↓スペシャリストのようなライフサイクルもふられる。ただし、より立ち入った考察は今後の課題としておこう。第六に、このようなキャリアの形成に対応して、大卒を中心としたホワイトカラーはいかに役職の昇進を経験し しては、管理者(ている。その反壺あげられている。 気・ガス業は六○%台にも達しているが、全体とすればまだ三○%台に止まっている。こうした現場投入の理由としては、管理者への昇進のための教育がもっとも多く、そのほかに職務の高度化やモラールアップなどが指摘されている。その反面、大企業のなかでも小規模の企業では、高卒の採用難とか能力的に高卒と変らないとかの理由も
86
てきているのか、とくに今後どうなるか。労働力構成の中高齢化と低成長化によって、今後、昇進の停滞が大幅に(8) 発生することが予想されているが、今回の調査ではどのような結果が塗えられたか。今後の展望としては、とくに高齢化・高学歴化した企業において昇進が遅れる、という予想が顕著になっている。しかも、ホワイトカラーのぱあいは年功的な同期昇進が支配的だとはいえ、すでにより上位への昇進ほど個人差が大きかったのだが、今後それがさらに拡大しようとしている。そして、今後の昇進の停滞に対して、人事管理側ではこれまでの資格制度の導入や系列会社への出向などに対し、今後は能力主義による選別や専門職制度の導入を始め、役職のローテーションや定年制の導入などによって対応しようとしているのである。
(8)労働省高齢化問題懇談会の報告S労働統計調査月報』八○年八月号)を象よ・
すでに触れたように、ホワイトカラーのぱあいはとくに大卒のぱあいほど、年功的な同期昇進がいちじるしく、個人別賃金カーヴも顕著の右上りの形を維持してきた。その格差はしだいに縮小してきていたが、巨大企業ほど大きかった。ただし、標準カーヴはそうだとして、昇進の個人差がかなり承られたことに対応して、給与総額のとくに中年からの個人差も大きかった。とくに重要なのは、高学歴化した企業ほど個人差がより大きく、高学歴者の内部競争が激化していることである。だが、逆に高齢化した企業ほど、個人別賃金格差は小さくなっている。というのは、高齢化した企業ほど、前述のように昇進が全体として遅れているために、賃金の個人差も開ぎょうがないのかも知れない。このような個人別賃金構造を前提として考えれば、今後の高齢化、高学歴化は、個人別賃金格差の
拡大と縮小の相反する二つの要因を作動させることになるだろう。はたしてその実態がどうなるか、その結果、いわゆる日本的経営を支えるホワイトカラーの企業別集団志向やモ
ラールの高さにいかなる影響をあたえるか、今後十分注目していかねばならぬだろう。