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教養娯楽サービスの高齢者市場に関するセグメント分析中谷義浩

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教養娯楽サービスの高齢者市場に関するセグメント分析

1.はじめに

日本社会が成熟するに伴い,物質的な豊かさ に加え,趣味・レクリエーション,旅行などの 余暇時間を活用し「精神的な豊かさ」を実現す ることで生活を向上させる動きがある。そうし たなか,企業においては,余暇時間が多い高 齢者層をターゲットとした顧客獲得のための,

ターゲット・マーケティングへの関心が高まっ てきている。

このような状況のもとで,顧客の囲い込み,

新規顧客獲得のための市場開拓へ向けたマーケ ティング戦略立案に際して,高齢者の余暇時間 の諸活動の実態を把握し,ターゲティングのた めの基礎データを整備する。そのうえで余暇時 間を誰がどのように活用しているのかを分析 し,企業が最適に資源配分をするために特定の

セグメントにターゲットを絞る必要性は大きい といえる。

ターゲット・マーケティングの焦点の一つで ある,セグメント化の基準選定は,自然発生的 区分や行政区画,都市部と地方などのジオグラ フィック(地理的)なセグメント化と,年齢,

性別,職業,所得,世代,世帯規模,社会階層 などからなるデモグラフィック(人口統計的)

変数を用いたセグメント化が,データの入手可 能性や客観性などの観点から有用である。

本稿でのセグメントは,家計の経済状況を反 映させるための要因として所得,貯蓄現在高,

負債現在高,住宅の所有の有無,また,ライフ スタイルに大いに関係があると思われる要因と して職業の有無,3 大都市居住の有無,自動車 所有の有無,子供の有無,性別について設定し て対応することとする。

教養娯楽サービスの高齢者市場に関するセグメント分析

中 谷 義 浩

Market segmentation of the aged on recreational services NAKATANI, Yoshihiro

教養娯楽サービス企業において,金融資産と余暇時間が多い高齢者層をターゲットとしたター ゲット・マーケティングへの関心が高まってきている。本稿では,総務省「全国消費実態調査」

の匿名データを利用し,教養娯楽サービスのなかから「国内パック旅行費」「他の教養的月謝」

「映画・演劇・文化施設等入場料」「スポーツ施設使用料」に関連する 4 つのサービス活動をとり あげた。高齢者世帯の 4 つの教養娯楽サービス活動に影響を及ぼすジオグラフィック,デモグラ フィック要因を選び,トービット・モデルによる回帰分析により企業が特化すべきセグメントを 抽出した。4 つのサービス活動項目について共通にいえることは,高齢者 2 人世帯,単身世帯と も貯蓄の係数が有意にプラスで貯蓄が多いほど消費を促進する。また,高齢者 2 人世帯では無職 世帯が大きく係数が有意にプラスとなり,余暇時間が少ない有職世帯とは差が明確である。高齢 者単身世帯では,「他の教養的月謝」を除くと無職世帯と有職世帯に有意に差がない意外な結果 となった。すなわち,お金を多く保有し時間に余裕があるとしても,高齢者 2 人世帯と単身世帯 では教養娯楽サービスに対する消費行動が異なる結果となった。

キーワード: 教養娯楽サービス(recreational services),高齢者(the aged), 

セグメント化(segmentation)

〔レフリー論文 原 著〕

(2)

本稿の目的は,教養娯楽活動について消費支 出の視点から,高齢者市場の明瞭な特徴をもつ セグメントを抽出することである。また,本稿 の特徴は,分析にあたりアグリゲートされた データだけでなく,所定の申請により統計セン ターから使用許諾された公的統計である「全国 消費実態調査」の匿名データ1)を用いること である。匿名データは収入,性別,地域,世帯 状況など個々の属性を反映することができるた め,セグメント情報を個々の世帯で捉えること ができる。さらに,高齢者世帯の対象を 2 人世 帯として捉えることもできる。多くの研究で は,2 人以上世帯を対象としているが,その場 合子供などの同居家族を含み,高齢者世帯の消 費実態を把握するには不適切な点も多い。本稿 では高齢者夫婦を想定し 2 人世帯を抽出する2) 加えて,夫婦であるか単身であるかは消費行動 に大きく影響を与えることが想定されるため,

2 人世帯と単身世帯の世帯別に行うことにす る。高齢者世帯とは,世帯主が 60 歳以上の世 帯とする3)。高齢者の基準を 60 歳としたのは,

60 歳定年が一般的であり,それまでの世代と 比較すると余暇時間など教養娯楽に関連する諸 活動の機会が増えるとみたためである。

2.先行研究

これまでの,高齢者の教養娯楽に関する研究 には一番ヶ瀬他(1994)がある4)。この研究は, 

総務庁長官官房老人対策室の各種調査から,日 本の高齢者はアメリカ,イギリス,韓国と比較 してスポーツ,レクリエーションまた文化・教 養活動などは活発ではないとしている。その理 由として,日本の高齢者の育ってきた歴史的状 況や経済状況が影響しているが,今後の高齢者 については積極化する兆しがあるとしている。

内山5)(1998)は年齢階級別に余暇関連財の 需要を総務庁統計局「家計調査」から分析した。

1980 年から 1994 年の単身世帯を除く全世帯の 年齢階級別データを通常の重回帰分析を利用し て分析したところ,65 歳以上の世帯では旅行

関連費6)の支出増加が所得の増加と強く関係 しているとしている。

有馬7)(2008)は,芸術・文化に関連する諸 活動への消費支出額がどのような要因によっ て影響されるかを調べるために,総務省統計局 2004 年の「全国消費実態調査」の 2 人以上の 一般世帯のリサンプリング・データを使用し,

線形回帰モデルのパラメータを推定した。結 果,芸術・文化に関連する諸活動のうち,「映 画・演劇・文化施設入場料8)」は,大都市地域9)

とその他の地域との間で地域差があり,大都市 世帯のほうがプラスの大きな影響を受けてい る。世帯の経済的な属性に関しては,収入と貯 蓄現在高の係数の符号はプラスとなっている。

世帯主の職業では,有職では係数がマイナスと なっている。住宅の所有関係では,持ち家の世 帯の係数がプラスであり,世帯の経済状況と併 せて,可処分所得の違いが支出額に影響を及ぼ していることがうかがえるとしている。

内山(1998),有馬(2008)とも 2 人以上の 世帯を調査対象とした結果であり,単身世帯を 対象としていない。本稿では個々の世帯の情報 を捉えることができるため高齢者 2 人世帯,単 身世帯を研究対象とすることにする。

3.世帯の消費支出の変化 3.1 消費支出項目の変化

企業経営は,その時々の時代状況に密接に関 連している消費支出項目の変化による影響を 大きく受ける。その消費構造の推移をみると,

1955 年には消費支出に占める割合は食料,被 服及び履物の割合が高く,国民は生活必需品に 多くの支出をさいていた。高度経済成長を通 じ,1960 年代の半ばには,生活の程度を中程 度と感じる人々が半数を超えるなど,人々の暮 らしが豊かになると,消費支出における生活必 需品の割合は低下し,教養娯楽や交通・通信の 消費が増加した。時代とともに変わるライフス タイルの変化が,消費費目構成に反映されてい るといえる。

(3)

しかし,その消費支出について世帯主の年齢 階級別消費支出割合の推移をみると,支出構成 は年齢階級ごとに異なっている10)。60 歳以上 の世帯では,食料や保健医療などの支出割合が 他の年齢と比較して高く,2002 年から 2009 年 までの動きをみると,保健医療や教養娯楽の割 合が上昇している。今後増加する 60 歳以上の 世帯で高い割合を示す食料や,増加傾向にある 保健医療や教養娯楽の分野は,消費支出全体で みても拡大分野となる可能性がある。このよう に,消費支出の傾向をその他の年齢と比較する と,教養娯楽は高齢化のなかで消費が増えてい く分野であると思われる。また,世帯主の年齢 階級別世帯分布の推計をみると,今後は 60 歳 以上の世帯割合が上昇すると見込まれ11),高 齢者世帯の支出の影響がより大きくなるものと

考えられる。表 1 より,2005 年を「1」とすると,

2020 年比較では高齢者世帯は 2 人世帯,単身 世帯とも 3 大都市居住が「1.214」「1.576」,そ の他の地域居住が「1.158」「1.541」となりいず れも増加傾向にある。また,単身世帯では男性 が「1.957」,女性が「1.376」となり増加傾向で あるが,男性世帯の増加数が大きいことがわか る。

3.2  「家計調査」から見る教養娯楽消費支出 の変化

図 1 は「家計調査」に基づいて 1985 年から 2009 年にかけての各年の消費支出と教養娯楽 支出金額(名目値)の推移を示しているが,次 のような特徴が読み取れる。

2 人以上の世帯の消費支出は 1985 年から

項  目 世帯数 指数 世帯数 指数 世帯数 指数 世帯数 指数

全国すべての世帯 49,062,530 1.000 50,286,692 1.025 50,599,896 1.031 50,440,621 1.028 3大都市 2,416,729 1.000 2,793,159 1.156 2,944,777 1.218 2,933,492 1.214 その他の地域 3,615,433 1.000 4,027,288 1.114 4,213,186 1.165 4,185,332 1.158 合計 6,032,162 1.000 6,820,447 1.131 7,157,963 1.187 7,118,824 1.180 3大都市 2,106,413 1.000 2,632,740 1.250 3,032,158 1.439 3,320,676 1.576 その他の地域 2,697,898 1.000 3,280,342 1.216 3,785,949 1.403 4,157,125 1.541 合計 4,804,311 1.000 5,913,082 1.231 6,818,107 1.419 7,477,801 1.556 男性 1,492,857 1.000 2,053,411 1.375 2,546,036 1.705 2,921,978 1.957 女性 3,311,454 1.000 3,859,671 1.166 4,272,071 1.290 4,555,823 1.376 2人世帯

60歳以上 単身世帯60歳以上

地域

2020年 2005年

性別 地域

2010年 2015年

単位:世帯数 表 1 高齢者 3 大都市居住世帯・その他の地域世帯別推移

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2008 年 3 月推計)都道府県別     世帯主の男女別 年齢 5 歳階級別 家族類型別 世帯数より筆者作成。

注:2 人世帯とは夫婦のみ世帯,指数は基準年を 2005 年とし 1 とした場合の数値である。

出所:総務省統計局「家計調査」。

図 1 教養娯楽支出と消費支出の推移(年間 2 人以上世帯)

0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000

1985年 1986年 1987年 1988年 1989年 1990年 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 0

500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000 3,500,000 4,000,000 4,500,000 消費支出単位:円 教養娯楽支出単位:円

教養娯楽耐久財 教養娯楽用品

書籍その他の印刷物 教養娯楽サービス

消費支出 教養娯楽支出

(4)

1993 年までは上昇傾向を示している。1993 年 以降は 2009 年にいたるまで,緩やかな下降傾 向を示している。一方,教養娯楽支出は 1985 年から 1993 年までは,大きな上昇傾向を示し,

その後は 1999 年,2004 年,2008 年には前年比 を上回りながら,下降,上昇を繰り返している。

教養娯楽支出12)は教養娯楽耐久財13),教養娯 楽用品14),書籍その他の印刷物15),教養娯楽 サービス16)の 4 つの中項目の支出に分類され る。なかでも,教養娯楽サービスは教養娯楽の 50%以上の構成比であり。ここ 24 年間の前年 伸び率の平均は 4 つの中項目では一番高くなっ ている。 

3.3  高齢者世帯の教養娯楽サービス項目別  消費支出状況

表 2 は,「全国消費実態調査」の 2004 年の 60 歳以上の 2 人世帯と単身世帯別の教養娯楽 サービス支出の全世帯平均購入金額,購入世帯 数,購入率,購入世帯平均購入金額の推移であ る。教養娯楽サービスにおける高齢者市場のセ グメントの特定にあたり,世帯における購入の 有無は重要であり,教養娯楽サービスを細分類 した 22 個の小項目の購入率に注目する。パッ

ク旅行費では「国内パック旅行費」の購入率が 2人世帯,単身世帯で「38.9%」「24.9%」と高く,

「海外パック旅行費」は「1.9%」「0.8%」と非 常に小さい。月謝では,「他の教養的月謝」の 購入率が「21.5%」「16.6%」と一番高い。その 他の娯楽サービスでは「映画・演劇・文化施設 等入場料」が「34.3%」「21.5%」と高くなって いる。22 個の小項目の 1989 年から 2004 年の 5 年ごとの調査の購入率の伸び率では「スポーツ 施設使用料」が 2 人世帯,単身世帯では「4.7%」

から「17.7%」と「0.1%」から「8.3%」と一 番伸びている17)

なお,「全国消費実態調査」は,2 人以上の 一般世帯については 9 月から 11 月の 3 ヵ月間,

単身世帯については 10 月から 11 月の 2 ヵ月間 の調査であり,この限られた 3 ヵ月間あるいは 2 ヵ月間に金銭的支出を伴う消費活動を行って いないと,実際には消費活動を行っていても消 費はゼロとして処理され,需要されていないも のとされる。例えば 1 年払いや半年払いの取り 扱いがある「NHK 放送受信料」や「諸会費」は,

この処理の影響を最も大きく受けるため購入率 と実際の購入の有無との乖離がある。また,一 部の小項目については,世帯普及率が低いため

全世帯数 全世帯

平均購入金額 購入世帯数 購入率 購入世帯

平均購入金額 全世帯数 全世帯

平均購入金額 購入世帯数 購入率 購入世帯 平均購入金額

<教養娯楽サービス> 7,486 17,717 6,800 90.8% 19,505 1,719 9,949 1,362 79.2% 12,557

宿泊料 7,486 2,238 1,498 20.0% 11,184 1,719 917 158 9.2% 9,977

パック旅行費 7,486 6,979 2,952 39.4% 17,698 1,719 3,310 437 25.4% 13,019

  国内パック旅行費 7,486 5,517 2,913 38.9% 14,178 1,719 2,699 428 24.9% 10,841

  外国パック旅行費 7,486 1,462 141 1.9% 77,623 1,719 610 14 0.8% 74,946

月謝類 7,486 1,879 2,789 37.3% 5,044 1,719 1,431 480 27.9% 5,124

  語学月謝 7,486 44 62 0.8% 5,321 1,719 11 6 0.3% 3,081

  他の教育的月謝 7,486 206 469 6.3% 3,282 1,719 171 84 4.9% 3,495

  音楽月謝 7,486 323 753 10.1% 3,208 1,719 310 161 9.4% 3,311

  他の教養的月謝 7,486 775 1,612 21.5% 3,600 1,719 665 286 16.6% 3,996

  スポーツ月謝 7,486 296 717 9.6% 3,086 1,719 133 89 5.2% 2,568

  自動車教習料 7,486 47 42 0.6% 8,430 1,719 4 2 0.1% 3,075

  他の月謝類 7,486 189 546 7.3% 2,586 1,719 138 55 3.2% 4,310

他の教養娯楽サービス 7,486 6,621 6,513 87.0% 7,610 1,719 4,292 1,273 74.0% 5,795   NHK放送受信料(BSを含む) 7,486 1,084 2,839 37.9% 2,857 1,719 1,186 598 34.8% 3,410

  ケーブルテレビ受信料 7,486 544 1,277 17.1% 3,187 1,719 236 126 7.3% 3,225

  他の受信料 7,486 44 167 2.2% 1,962 1,719 41 22 1.3% 3,204

  映画・演劇・文化施設等入場料 7,486 641 2,569 34.3% 1,868 1,719 429 369 21.5% 1,997

  スポーツ観覧料 7,486 16 66 0.9% 1,869 1,719 14 8 0.5% 3,015

  スポーツ施設使用料 7,486 1,237 1,326 17.7% 6,984 1,719 369 143 8.3% 4,438

  遊園地入場・乗物代 7,486 34 156 2.1% 1,640 1,719 15 14 0.8% 1,889

  他の入場・ゲーム代 7,486 313 1,252 16.7% 1,869 1,719 340 172 10.0% 3,400

  諸会費 7,486 779 2,451 32.7% 2,379 1,719 478 400 23.3% 2,055

  現像焼付代 7,486 422 2,555 34.1% 1,235 1,719 247 307 17.8% 1,384

  教養娯楽賃借料 7,486 49 427 5.7% 851 1,719 37 58 3.4% 1,105

  インターネット接続料 7,486 647 1,671 22.3% 2,900 1,719 217 136 7.9% 2,738

  他の教養娯楽サービスのその他 7,486 812 2,649 35.4% 2,296 1,719 681 406 23.6% 2,884 2004年 60歳以上  単身世帯

2人世帯

金額単位:円 表 2 高齢者世帯の教養娯楽サービス項目別消費支出状況

出所:総務省統計局「全国消費実態調査 匿名データ 2004 年」より筆者作成。

(5)

に,購入率が極端に低くなり,サンプル数は少 なくなる。このような実際の購入の有無との乖 離がある購入率や極端に少ない購入率について 推計を行うことはデータの信頼性の点から避け るべきである。最終的に分析する項目は,各中 項目のなかから一番購入率の高い小項目であ る「国内パック旅行費」「他の教養的月謝」「映 画・演劇・文化施設等入場料」,とすべての小 項目で近年伸び率が一番高い「スポーツ施設使 用料」項目に限定することとする。

4.業界動向と世帯購入状況 4.1 業界動向

教養娯楽サービスの 4 つの項目に関連の深い 業界の高齢者市場への取り組み動向を概観して おく。

4.1.1 旅行代理店業界18)

今回分析する「国内パック旅行費」とは交通 費,宿泊費など一括記入のものである19)。こ こでは,旅行代理店業界をとりあげる。旅行 代理店業界では高齢者の国内旅行を促進するた め,高齢者の特徴を踏まえ,平日旅行,滞在型 の旅行等に対応した観光地づくりに取り組んで いる。また,定年後に増加すると考えられる夫 婦旅行に対応した旅行商品の開発等が期待され ている20)

クラブツーリズム21)では,会員制を原則と してシニア層を主なターゲットとして気軽に参 加できる日帰りバスツアーをはじめ,ハイキン グ・写真撮影・スケッチ・社交ダンスといった 趣味を楽しむ旅,おひとり参加限定の気ままな 旅,車椅子で参加できるバリアフリーの旅など を販売している。40%以上が 60 歳以上の会員 で性別の構成比は男性 49%,女性 35%となっ ている22)

4.1.2 カルチャー教室業界23)

「他の教養的月謝」とは茶道・華道教室など の月謝,着物着付教室の月謝,日舞・バレエ社

交ダンスなどの月謝,絵画・彫金・革細工・刺 しゅうなどの月謝,洋裁・和裁・編物・料理教 室などの月謝である24)

業界として各種の講座を開催しているカル チャー教室業界をとりあげる。日本生産性本部 の「レジャー白書」25)によると余暇市場全体 は,2010 年は 2009 年比 2.1%減の 67 兆 9,750 億円と 8 年連続で前年を下回ったのに対し,

2010 年のカルチャー教室など「学習・調べも の」の参加人口は 2009 年比 1.8%増の 3,450 万 人だった。60 歳代以降が主な受講者となりカ ルチャー教室市場をけん引している。団塊世代 の大量退職時代を迎え,カルチャー教室の需要 は今後高まるとしている。

NHK 文化センターでは,シニア層の拡大を めざし JR 東日本のシニア会員組織「大人の休 日倶楽部」と 2010 年 4 月に提携し,各種講座 の共同開催を行っている。2010 年 3 月現在「大 人の休日倶楽部」は会員数 123 万人で 113 の講 座を開催している26)

4.1.3 映画施設業界27)

「映画・演劇・文化施設等入場料」とは映画・

演劇・コンサート・落語などの入場料 ディ ナーショー,美術館入場料,博物館入場料,展 覧会入場料,社寺拝観料,動物園入場料であ 28)

映画施設業界の動きをみると,高齢者向けの サービスとしてシニア割引料金が設定されてい るが,将来シニア層となる 50 歳代もターゲッ トとしたサービス夫婦 50 割引を展開している。

「映画館に行こう ! 実行委員会」が実施した 割引サービスで,夫婦どちらかが 50 歳以上な ら映画料金が 1 人 1,000 円になるものである。

かつての映画全盛期の昭和 30 年代に少年少女 だった世代にシネマコンプレックスを体験して もらい,映画に呼び戻そうとして始まったもの である。2004 年に開始され,それまで映画人 口の 4%だった中高年層が 2007 年には 8%にな り成功を収めている。3 年間の期間限定サービ

(6)

ス予定がその後も継続されている29)

4.1.4 スポーツ施設業界

「スポーツ施設使用料」とはスポーツクラブ

(フィットネス,アスレチックジムなど)を利 用した際に支払う利用料で,用具レンタル料込 みを含む。ただし,月謝制のレッスン料は除く,

である30)

2006 年から介護保険制度が改正され,介護を 受ける状態になる前に,その原因を取り除く,

介護予防サービスがより充実されることになっ た。これを受けてスポーツ施設では,高齢社会 の広がりを見据え,健康にいきいきとした毎日 を送れるように高齢者に対する介護予防プログ ラムの開発とサービスの提案を行っている。

全国にスポーツ施設を展開するセントラルス ポーツは,スポーツクラブの知識と経験を活か してプログラムを独自に開発し展開している。

2006 年には 20.6%であった 60 歳以上の会員構 成比が 2011 年には 31.4%と大幅な増加となっ ている31)

4.2 全世帯平均購入金額と購入率の推移 4 つのサービス活動に関する業界の推移を世 帯の購入金額と購入率からみることとする。60 歳以上の 2 人世帯と全年齢層 2 人以上世帯,60 歳以上の単身世帯と全年齢層単身世帯にわけ,

そ れ ぞ れ 1989 年,1994 年,1999 年,2004 年 の 5 年ごとの変化をとらえる(図 2 −(1)〜図 2 −(4)参照)。

4.2.1 国内パック旅行費

高齢者世帯 2 人世帯,単身世帯とも全世帯平 均購入金額は「5,517 円」「2,699 円」,購入率は

「38.9%」「24.9%」と全年齢層世帯よりも高い。

また,全年齢層世帯では,1994 年から 2004 年 は全世帯平均購入金額,購入率とも下落傾向で あるが,高齢者世帯では 2 人世帯,単身世帯と も「5.9%」減,「0.9%」減とその傾向は小さい。

全世帯平均購入金額は教養娯楽サービスの小項

目では「5,517 円」「2,699 円」と一番大きい項 目である。

4.2.2 他の教養的月謝

高齢者世帯 2 人世帯,単身世帯とも全世帯 平均購入金額は「775 円」「665 円」,購入率は

「21.5%」「16.6%」と全年齢層世帯よりも高い。

また高齢者の単身世帯では,1994 年から 2004 年で全世帯平均購入金額が「576 円」から「665 円」,購入率が「14.9%」から「16.6%」と共に 上昇している。

4.2.3 映画・演劇・文化施設入場料

高齢者世帯 2 人世帯,単身世帯とも全世帯 平均購入金額は「641 円」「429 円」,購入率は

「34.3%」「21.5%」と全年齢層世帯よりも総じ て低い。しかし,高齢者世帯では 2 人世帯,単 身世帯で全世帯平均購入金額が,「365 円」か ら「641 円」,「190 円」から「429 円」,購入率

「28.2%」から「34.3%」,「15.3%」から「21.5%」

と上昇傾向である。

4.2.4 スポーツ施設使用料

高齢者世帯 2 人世帯の購入率の伸び率が

「4.7%」から「17.7%」と高く,全世帯平均購 入金額は,2004 年には「1,237 円」と全年齢層 世帯よりも多い。高齢者単身世帯では,全世帯 平均購入金額,購入率とも全年齢層世帯よりも 小さい。しかし全年齢層世帯が下降傾向にある のに対し,高齢者単身世帯では「0.1%」から

「8.3%」と著しい上昇傾向を示している。

5.高齢者市場のセグメント分析 5.1 推定式

教養娯楽サービス諸活動への消費支出額がど のセグメントによってどの程度影響されるかを 調べるために,以下の線形回帰モデルのパラ メータを推定し,消費支出金額の変動がどのよ うな変数で説明できるかの検証を試みる。

被説明変数は「国内パック旅行」「他の教養

(7)

的月謝」「映画・演劇・文化施設」「スポーツ施 設」各活動の支出金額,説明変数としてのジオ グラフィック変数とデモグラフィック変数は以 下の通りである。

教養娯楽サービス4つの活動の支出金額(円)

= f{ 所得32)(円),所得 2 乗項(円),世帯 主の有職ダミー,貯蓄現在高(万円),

負債現在高(万円),住宅の所有ダミー,

3 大 都 市 居 住 ダ ミ ー, 自 動 車 所 有 ダ ミー,子供有りダミー,世帯主が女性 ダミー(単身世帯のみ)}

仮説としては,所得,貯蓄現在高,負債現在 高,住宅の所有の有無は家計の経済状況を反映

させるための変数であり,係数の符号は,所得 と貯蓄現在高,住宅の所有についてはプラス,

負債現在高についてはマイナスである。有職高 齢者は余暇時間の制約があり,有職ダミーの係 数の符号はマイナスであると予想される。ま た,ライフスタイルに大いに関係があると思わ れる 3 大都市居住の有無,自動車所有の有無,

子供の有無,女性か男性かについては,ダミー 変数を設定して対応することとした。 

5.2 推定方法

パラメータの推定にあたっては,「全国消費 実態調査」から得られる教養娯楽サービス関連 諸活動への支出金額は活動をしていない世帯の 出所:総務省統計局「全国消費実態調査 匿名データ(1989 年 1994 年 1999 年 2004 年)」より筆者作成。

8,000 (円)

7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0

(%) 50.0 45.0 40.0 35.0 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 2004年 0.0 1989年 1994年 1999年

図 2−(1) 国内パック旅行費

1,200 (円)

1,000 800 600 400 200 0

(%) 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 2004年 0.0 1989年 1994年 1999年

図 2−(2) 他の教養的月謝

(円) 800 700 600 500 400 300 200 100 0

(%) 40.0 35.0 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 2004年 0.0 1989年 1994年 1999年

図 2−(3) 映画・演劇・文化施設等入場料

1,400 (円)

1,200 1,000 800 600 400 200 0

(%) 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 2004年 0.0 1989年 1994年 1999年

図 2−(4) スポーツ施設使用料

60 歳以上 2 人世帯平均購入金額 60 歳以上単身世帯平均購入金額 60 歳以上 2 人世帯購入率 60 歳以上単身世帯購入率

全年齢層 2 人以上世帯平均購入金額

全年齢層単身世帯平均購入金額

全年齢層 2 人以上世帯購入率

全年齢層単身世帯購入率

左軸:全世帯平均購入金額  右軸:購入率

(8)

消費支出をゼロとするため,通常の最小二乗法 ではなく,トービット・モデル33)を適用して 推定を行っている。このようなデータの分布は 0 によってデータが切断されており,最小二乗 法で推計すると,誤差項が正規分布せずに推計 パラメータにバイアスをもたらす。この問題を 解決するために提案されたのがトービット・モ デルである。

また,分析して得られる妥当性はデータの精 度に依存している。そのため,異常値の問題を 避けるために消費支出,所得,貯蓄現在高,負 債現残高について,その値が各サンプル平均か

ら± 4 標準偏差の範囲外となるものは分析から 除いた。対象は勤労者世帯と無職世帯とする。

つまり,自営業者は可処分所得を把握すること ができないため除くこととした。結果,サンプ ル数は 60 歳以上の 2 人世帯は 7,486 世帯,60 歳以上の単身世帯は 1,719 世帯となり,比較す るため 59 歳以下の 2 人以上世帯 22,623 世帯と 59 歳以下の単身世帯 1,578 世帯の分析もあわ せ,4 つのサービスごとに推定を行った。

5.3 推定結果

推定結果は表 3,表 4 の通りである。

係 数 t値 係 数 t値 係 数 t値 係 数 t値

  定数項

‒30523.410 *** ‒19.58 ‒11201.330 *** ‒21.33 ‒4576.566 *** ‒20.31 ‒30699.730 *** ‒21.56

  所 得

0.058 *** 7.52 0.014 *** 6.48 0.005 *** 4.91 0.008 1.47

  所得2乗

‒5.10E-08*** ‒4.66 -7.88E-09 *** ‒2.74 ‒1.55E-09 ‒1.17 4.21E-09 0.60

  有 職

‒3661.555 *** ‒3.56 ‒2118.672 *** ‒6.42 ‒278.638 ‒1.88 ‒2501.390 *** ‒2.97

  貯 蓄

2.178 *** 9.30 0.681 *** 9.64 0.337 *** 9.99 1.386 *** 7.45

  負 債

‒2.095 ‒1.60 ‒0.402 ‒0.99 0.319 1.78 -0.154 ‒0.15

  持ち家

5103.694 *** 4.51 1414.083 *** 3.85 401.927 ** 2.46 3185.715 *** 3.29

  3大都市

3596.109 *** 4.91 1014.689 *** 4.50 853.276 *** 8.06 4015.629 *** 6.78

  車有り

5124.794 *** 5.99 1010.721 *** 3.81 899.612 *** 7.14 7375.711 *** 9.77

  子なし

‒3745.747 *** ‒2.92 ‒136.747 ‒0.35 ‒303.691 ‒1.66 1129.372 1.14

購入世帯数 2,913 1,612 2,569 1,326

国内パック 他の教養的月謝 映画・演劇・文化施設 スポーツ施設   2004年 2人世帯 60歳以上 サンプル数 7,486世帯

係 数 t値 係 数 t値 係 数 t値 係 数 t値

  定数項

‒34334.860 *** ‒22.02 ‒17565.140 *** ‒23.85 ‒86.466 ‒0.82 ‒16814.480 *** ‒23.40

  所 得

0.037 *** 9.58 0.018 *** 9.82 0.001 *** 4.84 0.017 *** 9.86

  所得2乗

‒1.72E-08*** ‒4.86 ‒1.13E-08 *** ‒6.98 ‒4.87E-10 ‒1.85 ‒8.20E-09*** ‒5.25

  有 職

1039.630 1.58 1052.701 *** 3.81 79.846 1.75 124.388 0.41

  貯 蓄

1.622 *** 9.14 0.636 *** 8.25 0.070 *** 5.04 0.576 *** 7.25

  負 債

‒1.851 *** ‒8.06 ‒0.189 ‒1.92 ‒0.027 ‒1.64 0.208 ** 2.14

  持ち家

5081.964 *** 10.43 1207.092 *** 5.53 ‒11.047 ‒0.32 ‒317.775 ‒1.51

  3大都市

‒2045.651 *** ‒5.28 1004.035 *** 5.96 160.995 *** 5.69 787.308 *** 4.71   車有り 1412.469 1.73 462.344 1.29 ‒51.965 ‒0.93 2715.041 *** 7.15   子なし 2209.792 *** 3.71 80.891 0.30 249.809 *** 5.72 459.509 1.73

購入世帯数

5,512 2,855 8,309 4,695

国内パック

  2004年 2人以上世帯 59歳以下 サンプル数 22,623世帯

他の教養的月謝 映画・演劇・文化施設 スポーツ施設 表 3−(1)2 人世帯 60 歳以上

表 3−(2)2 人以上世帯 59 歳以下

注:表中の

***

は 1%有意水準 **は 5%有意水準 *は 10%有意水準で有意であることを示す。

注:トービット・モデルでは,通常の最小二乗法と異なり,自由度調整済み決定係数は算出されない。

(9)

5.3.1 国内パック旅行費  ① 2 人世帯

所得,貯蓄は有意にプラスであり係数は

「0.058」「2.178」と 59 歳以下世帯よりも大きい。

有職はマイナス,持ち家,3 大都市居住,車有 りは有意にプラスであり,子なしは有意にマイ ナスとなり,子供がいる世帯が消費を刺激する 結果となった。

 ② 単身世帯

所得,貯蓄,持ち家,車有り,女性は有意に プラスとなった。有職は 60 歳以上の世帯では

有意な結果は得られなかった。59 歳以下の単 身世帯では有職は有意にプラスで働く世帯のほ うが支出は多く,60 歳以上の 2 人世帯は逆に 無職世帯の支出が多く対照的な結果であった。

5.3.2 他の教養的月謝  ① 2 人世帯

所得,貯蓄は有意にプラスであり係数は

「0.014」「0.681」と 59 歳以下世帯との差はほと んど見られない。有職は有意にマイナスであり 無職世帯が消費をしている。持ち家,3 大都市

係 数 t値 係 数 t値 係 数 t値 係 数 t値

  定数項 ‒41141.210 *** ‒11.11 ‒19741.320 *** ‒11.68 ‒7234.465 *** ‒10.47 ‒17573.620 *** ‒7.14   所 得 0.094 *** 3.67 0.026 *** 2.71 0.005 1.02 ‒0.012 ‒0.80   所得2乗 ‒1.29E-07 ** ‒1.92 ‒1.79E-08 ‒0.73 8.19E-09 0.74 7.60E-08 ** 2.18   有 職 ‒2027.378 ‒0.87 ‒1974.371 ** ‒2.06 ‒559.383 ‒1.23 ‒88.955 ‒0.06   貯 蓄 1.791 *** 2.65 1.011 *** 3.85 0.929 *** 7.04 1.917 *** 4.11   負 債 9.794 0.70 ‒0.801 ‒0.12 3.756 1.36 0.474 0.05   持ち家 7321.453 *** 3.92 1787.356 ** 2.46 83.212 0.24 ‒1095.229 ‒0.87   3大都市 1042.826 0.71 1563.734 *** 2.74 892.336 *** 3.13 1457.010 1.43   車有り 3466.803 ** 2.04 1183.089 1.76 783.468 ** 2.35 5510.508 *** 4.86   子なし ‒3066.320 ‒1.71 237.505 0.35 95.247 0.28 ‒189.613 ‒0.16   女 性 8325.093 *** 3.90 6469.775 *** 6.31 1509.823 *** 3.66 ‒2523.381 ** ‒2.05

購入世帯数 428 286 369 143

  2004年 単身世帯 60歳以上 サンプル数 1,719世帯

国内パック 他の教養的月謝 映画・演劇・文化施設

係 数 t値 係 数 t値 係 数 t値 係 数 t値

  定数項 ‒49276.540 *** ‒7.14 ‒37981.470 *** ‒7.12 ‒11078.600 *** ‒8.55 ‒20437.720 ‒7.28   所 得 0.104 *** 2.87 0.059 ** 2.32 0.037 *** 4.30 0.062 *** 3.55   所得2乗 ‒1.54E-07 ** ‒2.39 ‒5.67E-08 ‒1.25 ‒5.28E-08 ‒3.44 ‒7.08E-08 ** ‒2.36   有 職 11232.470 ** 2.07 ‒5709.463 ‒1.95 ‒1191.932 ‒1.10 ‒1721.784 ‒0.71   貯 蓄 2.554 ** 2.26 0.035 0.04 0.722 ** 2.38 1.459 ** 2.50   負 債 -8.738 ‒1.01 ‒7.878 ‒1.07 3.350 1.62 2.631 0.70   持ち家 6310.891 *** 2.60 5089.975 *** 2.73 ‒1207.054 ‒1.74 ‒2842.107 ** ‒2.10   3大都市 ‒4420.119 ** ‒2.50 ‒78.797 ‒0.06 667.078 1.58 824.594 1.04   車有り 2364.324 1.26 796.909 0.55 ‒192.531 ‒0.44 923.306 1.11   子なし ‒2588.917 ‒1.04 4946.837 ** 2.19 2046.041 *** 2.95 3560.924 ** 2.49   女 性 4034.509 ** 2.25 14406.330 *** 6.52 2408.927 *** 5.60 ‒3949.775 *** ‒4.66

購入世帯数 206 74 508 346

  2004年 単身世帯 59歳以下 サンプル数 1,578世帯

他の教養的月謝 映画・演劇・文化施設 国内パック

スポーツ施設

スポーツ施設 表 4−(1)単身世帯 60 歳以上

表 4−(2)単身世帯 59 歳以下

注:表中の

***

は 1%有意水準 

**

は 5%有意水準 

*

は 10%有意水準で有意であることを示す。

注:トービット・モデルでは,通常の最小二乗法と異なり,自由度調整済み決定係数は算出されない。

(10)

居住,車有りは有意にプラスとなった。

 ② 単身世帯

所得,貯蓄は有意にプラスとなり,2 人世帯 と比べ係数が「0.026」「1.011」と大きく単身世 帯の場合,所得,貯蓄の経済的要因が習いごと に影響すると推定される。有職は有意にマイナ ス,持ち家,3 大都市居住,車有り,女性は有 意にプラスとなった。

5.3.3 映画・演劇・文化施設等入場料  ① 2 人世帯

所得,貯蓄は有意にプラスであり係数は 59 歳以下世帯よりも大きい。有職は有意にマイナ ス,持ち家,3 大都市居住,車有りは有意にプ ラスであり,子なしは有意にマイナスとなり,

子供がいる世帯が消費する結果となった。

 ② 単身世帯

所得は有意な結果とならなかった。貯蓄は有 意にプラスで 2 人世帯に比べ係数が大きい。3 大都市居住,車有り,女性は有意にプラスと なった。

5.3.4 スポーツ施設使用料  ① 2 人世帯

所得は有意な結果とならなかった。貯蓄は有 意にプラス,係数は「1.386」と 59 歳以下世帯 と比較し大きく,貯蓄の影響が大きいといえ る。有職は有意にマイナス,持ち家,3 大都市 居住,車有りは有意にプラスとなった。

 ② 単身世帯

所得は有意な結果とならなかった。貯蓄は有 意にプラスで,係数は「1.917」と他の 3 つの サービスと比較し大きい。60 歳以上 2 人世帯 同様に,貯蓄の影響は大きいといえる。車有り は有意にプラス,これまでの 3 つのサービスと 違い女性は有意にマイナスとなり,男性がより 消費をする。

2 人世帯では,4 つのサービス活動項目につ いて共通にいえることは,貯蓄が有意水準 1%

でプラスとなり,貯蓄高が多い世帯ほど高額な サービスの購入や購入頻度が高いことを示して いる。また,有職世帯が大きく係数がマイナス,

つまり無職世帯では係数が大きく有意にプラス となり,余暇時間が少ない有職世帯とは差が明 確である。ただし,今後は定年制延長など有職 世帯が増えることが予測されることから,高齢 者の世帯数の増加がそのまま消費を促進すると は限らない可能性がある。持ち家,3 大都市居 住,車所有も有意にプラスであり有望なセグメ ントである。負債については有意な結果を得る ことができなかった。

単身世帯では,所得が有意にプラスに働くの は「国内パック旅行費」「他の教養的月謝」で あり,他の 2 つのサービスに関しては有意に差 があるとは推測できなかった。一方で貯蓄は 4 つのサービスにおいて有意水準 1%でプラスで あり,ストックである貯蓄の経済的要因が大き く影響すると考えられる。また,無職であるか 有職であるかは 2 人世帯と異なり「他の教養的 月謝」を除くと各サービスへの影響を確認する ことはできなかった。性別については,60 歳 以上世帯,59 歳以下世帯とも「国内パック旅 行費」「他の教養的月謝」「映画・演劇・文化施 設等入場料」サービスは女性世帯,「スポーツ 施設使用料」サービスは男性世帯が有意にプラ スであった。高齢者特有ではないが,有意水準 が「国内パック旅行費」サービスで 5%,その 他の 3 つのサービスで 1%と明瞭に特化するセ グメントである。4 つのサービスで車所有は有 意にプラスであり,負債は有意な結果を得るこ とができなかった。

6.おわりに

本稿では,消費支出からみる高齢者世帯の教 養娯楽に関連する 4 つのサービス活動に影響を 及ぼすジオグラフィック,デモグラフィック要 因を明らかにすることで,企業が特化すべきセ グメントを抽出した。すでに,先行研究におい て推定されていた点と同様の結果となった点も

(11)

少なくない。

内山(1998)の 65 歳以上の世帯では旅行関 連費の支出増加が所得の増加と強く関係してい るとしている点では,年齢基準,世帯人数が違 うものの,「国内パック旅行費」では 60 歳以上 の 2 人世帯でも同様の結果となった。また,有 馬(2008)の「映画・演劇・文化施設等入場料」

は,大都市地域,収入と貯蓄現在高の係数の符 号はプラスで,有職では係数がマイナスとなっ ている。住宅の所有関係では,持ち家の世帯の 係数がプラスである。有馬の全年齢層の世帯で の分析でも,本稿の 60 歳以上の 2 人世帯でも 全く同じ結果となった。

しかし,新たなファインディングスも判明し た。2 人世帯では無職世帯がいずれのサービス 支出でも消費を刺激する結果であった。単身世 帯では,「他の教養的月謝」を除くと無職世帯 と有職世帯に有意に差がない意外な結果となっ た。すなわち,お金を多く保有し時間に余裕が あるとしても,2 人世帯と単身世帯では消費行 動が異なる結果となった。

本稿は,総務省「全国消費実態調査」の匿名 データを利用し,教養娯楽サービス活動をとり あげ,企業がターゲットとすべき高齢者世帯の セグメントを抽出した。マーケット・セグメン テーションは,異質な欲求の集合体である市場 を一定基準によって選定し,標的とされたセグ メントに対応した商品・サービスを的確に提供 することである。そのためには,抽出されたセ グメント間の関係性を明らかにすることができ れば,さらなるセグメント特定の向上をはかる ことができる。また,セグメントにおけるサイ ズや需要のパターンなども考慮されなければな らない。これらの分析は今後の課題としたい。

1) 学術研究や高等教育への利用を図るため「平成 21 年 4 月に全面施行された改正統計法(平成 19 年法律第 53 号)によって,所定の申請・手続 きを行い承認されれば,調査データを個人が研 究目的で利用が可能となった。今回,筆者が個

人の研究目的で申請し,独立行政法人統計セン ターからデータの提供を受けたものである。

2) 世帯主が 60 歳以上 2 人以上世帯データから世帯 人員 2 人を抽出し,18 歳以下の世帯員を含むも のは除外することで,擬似的に夫婦世帯を想定 するものとする。

3) 高齢者の線引きは主観的な部分がある。定年退 職年齢,老齢年金給付開始年齢で言えば 60 歳以 上が妥当である。しかし,国連の世界保健機関 の定義では,65 歳以上の者を高齢者としている。

高年齢者雇用安定法では「高年齢者」とは,55 歳以上の者と定義している。

4) 一番ケ瀬康子・薗田碩哉・牧野暢男(1994)『余 暇生活論』有斐閣。

5) 内山敏典(1998)『余暇関連財の需要の計量分析』

晃洋書房。

6) 総理府「観光白書」で定義されている分類にし たがって,家計調査の品目を独自に集計した宿 泊費,パック旅行費,交通費及び旅行かばん費 用である。

7) 有馬昌宏(2008)「消費支出と行動実態から見 た芸術・文化の需要構造」『季刊家計経済研究』

No.79。

8) 映 画・ 演 劇・ コ ン サ ー ト・ 落 語 な ど の 入 場 料 ディナーショー,美術館入場料,博物館入 場料,展覧会入場料,社寺拝観料,動物園入場 料である。

9) 人口 15 万人以上の都市。

10) 厚生労働省平成 22 年版「労働経済の分析」第 2 章産業社会の変化と勤労者生活第 2 −(1)−

12図 世帯主の年齢階級別消費支出割合の推移。

11) 厚生労働省平成 22 年版「労働経済の分析」第 2 章産業社会の変化と勤労者生活 付 2 −(1)− 3 表 世帯主の年齢階級別世帯分布の推計。

12) 総務省統計局家計調査「収支項目分類表」によ る定義で,教養,娯楽,趣味などのために必要 な商品及びサービスへの支出である。

13) 総務省統計局家計調査「収支項目分類表」によ る定義で,教養,娯楽,趣味などのために用い る耐久財支出である。

14) 総務省統計局家計調査「収支項目分類表」によ る定義で,教養,娯楽,趣味などのために用い る半耐久財及び非耐久財支出である。

15) 総務省統計局家計調査「収支項目分類表」によ る定義で,書籍及び書籍以外の印刷物支出であ る。

16) 総務省統計局家計調査「収支項目分類表」によ る定義で,教養,娯楽,趣味などのためのサー ビスに関するものの支出である。

17) 4 − 1 図表 2 −(4)を参照。

(12)

18) 交通・宿泊・その他の旅行商品を仲介(あるい は自社で企画・催行)して販売する会社で,第 1 種旅行業,第 2 種旅行業,第 3 種旅行業およ び旅行業者代理業者である。 

19) 総務省統計局全国消費実態調査「付録 1 収支項 目分類表」による定義。

20) 観光庁「平成 20 年度観光の状況」参照。

21) クラブツーリズムとは,近畿日本鉄道の子会社 で,レジャー事業のなかの旅行事業を担うグ ループ会社。

22) クラブツーリズム発表資料「2010 年エリア別・

年齢別・性別会員数」より引用。

23) 民間が設置している生涯学習施設で,全国民間 カルチャー事業協議会の 53 団体。

24) 総務省統計局全国消費実態調査「付録 1 収支項 目分類表」による定義。

25) 公益財団法人日本生産性本部(2011)『レジャー 白書 2011』生産性出版参照。

26) 2010 年 4 月 6 日新聞発表「JR 東日本(大人の休 日倶楽部)と NHK 文化センターとの提携につ いて」参照。

27) 映画館施設で全国興行生活衛生同業組合連合会 に加入している施設。

28) 総務省統計局全国消費実態調査「付録 1 収支項 目分類表」による定義。

29) 「映画館に行こう!」実行委員会「夫婦 50 割引」

ホームページ参照。

30) 総務省統計局全国消費実態調査「付録 1 収支項 目分類表」による定義。

31) セントラルスポーツ 22 年 3 月期及び 23 年 3 月 期「決算説明会資料」参照。

32) 所得は可処分所得とする。可処分所得=実収入

−非消費支出。

33) トービット・モデルとは,被説明変数は欠けて いるが,説明変数はすべてのサンプルについて わかっているような打ち切り(censored)デー タの場合の需要関数の推定に用いることができ る。

参考文献

Calantone, R. J. and A. G. Sawyer (1978),  The Sta- bility of Benefit Segmentation,  

  , August, pp.395-404.

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