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秋田県の高齢者雇用の現状と課題

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Academic year: 2021

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▼本レポートに関する照会先 日本銀行秋田支店 総務課(堀口、千葉) (TEL)018-824-7802 (E-mail)akita@boj.or.jp ▼本レポートは日本銀行秋田支店のホームページ(http://www3.boj.or.jp/akita/)からもご覧い ただけます。 ▼本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行秋田支店までご 相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

秋田県の高齢者雇用の現状と課題

当店広報キャラクター:どっこい・しょー太郎 当店広報キャラクター:じぇん子ちゃん

2 0 1 4 年 3 月 1 4 日

日本銀行秋田支店

日本銀行秋田支店 金融経済調査シリーズ

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 秋田県では、人口減尐及び尐子高齢化が進行している。こうした現状と向き 合いつつ、経済の活性化を推進するには、高齢者雇用の促進が期待される。  わが国では、近年、高齢者雇用に関する法律や制度が整備されてきたほか、 高齢者の就業意欲は高まっている。こうした中、秋田県では、希望者全員が 65 歳まで働ける企業の割合が、2012 年、2013 年と、2 年連続で全国 1 位とな っており、高齢者が働くことのできる環境が比較的整備されていると考えら れる。実際、県内の 65 歳以上の有業者数は増加傾向にあるほか、有業者全体 に占める割合は全国を上回る水準で上昇しているなど、秋田県の高齢者雇用 は全国に比べて進んでいる。  秋田県の高齢者雇用が進んでいる背景について、新卒採用の競争力が相対的 に低い中小企業が多いほか、県内の大企業での雇用の受け皿が全国に比べ小 さいことから、若年層が県外へ流出しているためだとの指摘がしばしば聞か れている。こうした点について、データを用いて整理した結果、確かに、当 地における大企業の雇用の受け皿の小ささが、若年層の県外流出の一因とな っており、高齢者を活用しようという企業ニーズの拡大につながっているこ とが見受けられた。また、多くの県内企業が、高齢化が全国に先駆けて進展 していることをしっかりと認識し、他地域の企業以上に高齢者雇用に前向き に取り組んでいることが示唆された。  今後は、業種や職種、事業分野・規模等にもよるが、より長く働ける雇用措 置の導入や、多様な雇用形態の整備が推進され、働く高齢者が一層増加する ことが望まれる。県内の高齢者世帯の消費支出額は増加傾向にあるほか、消 費支出額全体に占めるウェイトも上昇していることから、働く高齢者が増加 すれば、収入の維持ないし増加を通じ、県内全体の消費規模縮小を抑制する 効果が期待できる。こうした効果を最大限に享受するためには、企業が高齢 者のニーズを肌理細かく把握し、需要を喚起することで、高齢者の消費活動 がより活発なものとなることも期待される。  高齢者が長年培った経験や技術力は、企業の即戦力となり得る。また、高齢 者自身にとっても、働き続けることによって健康を維持でき、安定した収入 も得られる。このほか、社会全体としても、高齢者の健康寿命の長期化によ って、社会保障コストの抑制を期待できるなど、高齢者雇用の促進は、多方 面でのメリットの享受につながると考えられる。引き続き、民間・行政を問 わず、関係者間の積極的かつ広範な議論や取り組みが進められることを期待 したい。 (概要)

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104 105 106 107 108 109 110 └ 10 ┘└ 11 ┘└ 12 ┘└ 13 ┘└14 (万人) (年) 1.はじめに 秋田県の人口は、毎年約 1 万人ずつ減尐している(図表 1)ほか、尐子高齢化 も進行しており、今後も同様の傾向が続くことが予想されている。また、労働 者数の減尐は、所得減尐を通じ、県全体の消費規模の縮小を引き起こし、中長 期的に秋田県の経済成長率を押し下げる可能性もある1 こうした中で、人口減尐や高齢化と向き合いつつ、経済の活性化を推進する には、生産性の向上や労働人口の増加、県外需要の取り込み等が有益であると の提言が多く聞かれている。 本稿では、秋田県内における高齢者雇用の現状と課題を整理するとともに、 高齢者雇用の促進が県内経済にもたらすプラスの効果について考察する。 【図表 1】秋田県の人口の推移 2.高齢者雇用の現状 本節では、はじめに、高齢者雇用の促進を企図した法律や制度の概要、全国 的に高齢者の就業意欲が高まっていることについて整理する。その上で、秋田 県の高齢者雇用の現状と背景を、データを用いて確認する。 (1)高齢者雇用に関する法律・制度 わが国では、2013 年 4 月以降、老齢厚生年金(定額部分)の支給開始年齢が 65 歳に引き上げられたほか、報酬比例部分の支給開始年齢引き上げも開始され ており、2025 年 4 月には 65 歳となる。これに伴い、定年後に年金支給開始まで 無年金・無収入となる期間が生じる可能性があるため、国は「高年齢者等の雇 用の安定等に関する法律」(以下、高年齢者雇用安定法という)を定め、企業に 1 当店作成の「秋田県の雇用環境に関する現状と課題―人口減尐が続く下での労働需給に関 する考察―」(2012 年 4 月 17 日公表)を参照。また、女性の労働力に着目した調査では、 「秋田県における女性労働参加の現状と課題」(2013 年 3 月 13 日公表)がある。 (資料)秋田県「秋田県の人口と世帯」

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対し、①定年制の廃止、②定年の引き上げ、③定年後に改めて雇用する継続雇 用制度の導入のいずれかの措置(以下、雇用確保措置という)を講じるよう義 務付けている。また、企業が一定の要件を満たして高齢者を雇用したり、高齢 者雇用促進のための環境整備を実施した場合に、助成金を支給する制度も設け られている(図表 2)。 【図表 2】高齢者雇用促進のための助成金制度 従業員を新たに雇 い入れる場合の助 成金 ・特定就職困難者雇用開発助成金 高 年 齢 者 等 の 就 職 困 難者を雇用。 ・高年齢者雇用安定助成金 (高年齢者労働移動支援コース) 他 企 業 の 定 年 退 職 予 定者を雇用。 ・高年齢者雇用開発特別奨励金 65 歳以上の高年齢者 を雇用。 従業員の処遇や職 場環境の改善を図 る場合の助成金 ・高年齢者雇用安定助成金 (高年齢者活用促進コース) 高 年 齢 者 の 活 用 促 進 の た め の 雇 用 環 境 整 備を図る。 (2)高齢者の高い就業意欲 高齢者雇用の実態に関する全国調査によれば、65~69 歳の男女のうち、半数 は既にリタイアしている。一方で、約 3 割が「70 歳まで」、あるいは「70 歳を 超えても働ける限り」働き続けたいと回答しており(図表 3)、働く高齢者の多 くは、継続して就業することを希望している。 また、高齢まで働いている理由(図表 4)は、「生きがい・社会参加」、「生活 の糧を得る」、「健康にいい」の割合が高くなっている。健康寿命の長期化に伴 う社会参加意欲の高まりや、年金生活を不安視する経済的な理由、身体的・精 神的な健康維持の意識向上等が、高齢者の就業意欲を一層強めていると考えら れる。 【図表 3】いくつまで働きたいか 【図表 4】高齢まで働いている理由 (複数回答) (資料)厚生労働省 (注)65~69 歳の男女を対象にしたアンケート調査結果。 (資料)労働政策研究・研修機構「高年齢者等の継続雇用等、就業実態に関する調査」(2011 年) 51.9 49.4 49.1 30.1 19.5 4.6 0.8 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 生 き が い ・社 会 参 加 生 活 の 糧 を 得 る 健 康 に い い 時 間 に 余 裕 が あ る 頼 ま れ た そ の 他 無 回 答 (%) 既に引退 52.2% 65~66歳 2.0% 67~69歳 6.9% 70歳まで 12.5% 70歳を超えて も働ける限り 14.9% 引退年齢を 考えたことが ない 8.7% 無回答 2.8%

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順位 % % 1 秋田県 80.0 島根県 25.1 2 大分県 78.6 富山県 24.8 3 岩手県 76.9 千葉県 24.1 4 岐阜県 76.6 山口県 23.6 5 三重県 76.5 愛媛県 22.8 6 島根県 75.5 秋田県 22.5 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 43  愛媛県 62.5  福島県 15.4 44  大阪府 62.2  熊本県 15.2 45  福岡県 61.6  山形県 14.6 46  沖縄県 61.0  新潟県 14.6 47  東京都 58.3  東京都 14.3 65歳以上 70歳以上 定年制廃止 2.2% 定年引き上 げ 16.7% 継続雇用制 度導入 81.1% <秋田県> 雇用確保措置 導入企業 98.9% 定年制廃止 2.8% 定年引き上 げ 16.0% 継続雇用制 度導入 81.2% <全国> 雇用確保措置 導入企業 92.3% (3)秋田県の高齢者雇用の現状 厚生労働省の調査2によると、秋田県では、雇用確保措置を実施している企業 の割合は 98.9%となっており、全国の 92.3%を上回っている(図表 5)。このう ち秋田県、全国ともに 8 割以上の企業が継続雇用制度の導入によって、高齢者 の雇用を確保している。 【図表 5】高齢者雇用確保措置の導入状況(2013 年 6 月 1 日現在) また、秋田県における、希望者全員が 65 歳以上まで働ける企業の割合3 80.0%(全国:66.5%)で、2012 年、2013 年と、2 年連続全国 1 位となってい るほか、70 歳以上まで働ける企業の割合は 22.5%(全国:18.2%)で、全国 6 位となっている(図表 6)。こうしたことから、秋田県は、全国に比べ高齢者が 働くことのできる環境が比較的整備されていると考えることができる(以下、 希望者全員が 65 歳以上まで働ける企業及び 70 歳以上まで働ける企業を総称し て、「高齢者雇用企業」という)。 【図表 6】希望者全員が 65 歳以上又は 70 歳以上まで働ける企業の割合 (2013 年 6 月 1 日現在) 2 「平成 25 年『高年齢者の雇用状況』」。厚生労働省では、常時雇用する労働者が 31 人以上 の企業を対象に、毎年 6 月 1 日現在の高齢者の雇用状況の報告を求めており、この報告結 果を取りまとめたもの。 3 報告のあった全ての企業のうち、「定年制の廃止」「65 歳以上定年」「希望者全員 65 歳 以上の継続雇用制度」のいずれかの雇用継続措置を講じている企業の割合。 (資料)厚生労働省 「平成25 年『高年齢者の雇用状況』」 (資料)厚生労働省「平成25 年『高年齢者の雇用状況』」

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実際、県内の 65 歳以上の有業者4数は増加傾向5にあるほか、有業者全体に占 める割合は全国を上回る水準で上昇している(図表 7)。また、事業規模別6 の高 齢者雇用企業割合(図表 8)をみると、秋田県は全規模において全国を上回って いるなど、働く高齢者が増加している。 【図表 7】65 歳以上有業者数と 【図表 8】事業規模別の高齢者雇用企業 全有業者数に占める割合 割合(2013 年 6 月 1 日現在) (4)秋田県における高齢者雇用拡大の背景 秋田県での高齢者雇用が全国に比べて進んでいることについて、新卒採用の 競争力が相対的に低い中小企業が多い(…①)ほか、県内の大企業での雇用の 受け皿が全国に比べ小さい(…②)ことなどを背景に、若年層が県外へ流出 (…③)し、労働力の減尐と高齢化率の上昇が一段と加速(…④)していると 指摘する声がしばしば聞かれている(図表 9)。 以下、①~④について、データを用いてみていく。 【図表 9】当地でしばしば指摘される高齢者雇用拡大のイメージ 4 有業者とは、普段収入を得ることを目的として仕事をしており、今後もしていくことにな っている者、及び仕事は持っているが、現在は休んでいる者を指す。これに対し、無業 者とは、普段全く仕事をしていない者、及び臨時的にしか仕事をしていない者を指す。 5 2012 年の 65 歳以上有業者数が、2007 年対比減尐しているのは、団塊の世代(1947~1949 年生まれ)が退職時期に入ったことが一因と考えられる。 6 本稿では、1 事業所当たりの従業員数によって、事業規模の大小をみている。 (注)ここでの「高齢者雇用企業」とは、希望者全員が 65 歳以上まで働ける企業を示す。 (資料)厚生労働省「平成25 年『高年齢者の雇用状況』」 (資料)厚生労働省「就業構造基本調査」 85.6 77.0 67.5 74.3 64.9 48.9 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 31~50人 51人~300人 301人以上 秋田 全国 (%) (従業員数) 中小企業が多い 大企業の雇用の 受け皿が小さい 若年層の県外流出 労働力の減少 高齢化率の上昇 高齢者雇用拡大 6.0 8.0 10.0 12.0 3 4 5 6 7 1992 1997 2002 2007 2012 65歳以上有業者(秋田県、左軸) 秋田県 全国 (%) (年) (万人)

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① 中小企業の割合の比較 まず、事業規模別の事業所数割合(図表 10)をみると、秋田県では、全国 に比べ事業規模の小さい事業所の割合が僅かに大きいものの、両者間に大差 はないことがみてとれる。このため、大企業の割合が尐なく、中小企業の割 合が多いことが、当地における若年層の流出を招いているとまでは言いにく い。 【図表 10】事業規模別の事業所数割合(2012 年) ② 雇用の受け皿の大きさ 前述の通り、秋田県と全国とでは、事業規模別の事業所の割合自体には大 差がない一方で、事業規模別の従業員数割合(図表 11)をみると、100 人以 上の事業規模で、両者に大きな差がある。このことから、秋田県では、従業 員数がより多い事業所が全国に比べて尐なく、雇用の受け皿が相対的に小さ いと考えられ、就職の場を求める若年層が県外流出している可能性がある。 【図表 11】事業規模別の従業員数割合(2012 年) (注)法人(会社)事業所に勤務する従業員数の割合。 出向・派遣業者のみの事業所を除くベース。 (資料)総務省「経済センサス」 (注)法人(会社)事業所数の割合。 出向・派遣業者のみの事業所を除くベース。 (資料)総務省「経済センサス」 (%、%P) 秋田県(a) 全国(b) 差(a-b) 41.6 34.7 6.8 1~4人 7.4 6.9 0.5 5~9人 13.9 11.8 2.2 10~19人 20.3 16.0 4.2 38.8 34.8 4.0 20~29人 12.4 10.5 1.9 30~49人 12.9 11.5 1.4 50~99人 13.5 12.8 0.7 19.6 30.4 ▲ 10.8 100~199人 8.5 10.1 ▲ 1.5 200~299人 4.1 4.7 ▲ 0.6 300人以上 7.0 15.7 ▲ 8.7 1~19人 20~99人 100人以上 従業員数 (%、%P) 秋田県(a) 全国(b) 差(a-b) 84.8 84.4 0.4 1~4人 37.4 40.3 ▲ 2.9 5~9人 27.6 26.5 1.2 10~19人 19.7 17.6 2.2 14.0 13.9 0.1 20~29人 6.9 6.6 0.3 30~49人 4.5 4.5 ▲ 0.0 50~99人 2.6 2.8 ▲ 0.2 1.2 1.7 ▲ 0.5 100~199人 0.8 1.1 ▲ 0.3 200~299人 0.2 0.3 ▲ 0.1 300人以上 0.2 0.3 ▲ 0.2 20~99人 100人以上 1~19人 従業員数

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% 順位 % 順位 秋田県 30.7 1 80.0 1 高知県 30.1 2 65.5 33 島根県 30.0 3 75.5 6 山口県 29.2 4 69.9 21 和歌山県 28.4 5 71.2 13 山形県 28.3 6 63.9 39 徳島県 28.0 7 69.0 25 岩手県 27.9 8 76.9 3 愛媛県 27.8 9 62.5 43 大分県 27.6 10 78.6 2 高齢者雇用企業の割合 高齢化率 ③ 若年層の県外流出 前述した通り、県内の雇用の受け皿に限りがあることを背景に、当地の若 年層が県外へ流出している可能性がある。実際、秋田県は、毎年 1 万人超の 人口が減尐しており、このうち約 3 割が社会動態(転出)によるものである。 年齢階級別転出比率(図表 12)をみると、転出の約 7 割が 15~39 歳の人々に よるものとなっており、若年層の県外流出が当地の人口減尐及び高齢化率の 上昇に影響していると考えられる。こうしたこともあって、生産年齢人口は 減尐しており、生産年齢人口比率も低下している(図表 13)。 【図表 12】秋田県の年齢階級別転出比率 【図表 13】秋田県の生産年齢人口と (2012 年 10 月~2013 年 9 月) 生産年齢人口比率の推移 ④ 高齢化率の高い他県との比較 では、生産年齢人口の減尐に伴って高齢化率が高まっていることが、高齢 者雇用の促進に影響しているのか。この点について、全国 47 都道府県の高齢 化率と高齢者雇用企業割合の関係(図表 14)をみると、高齢化率が高いから といって、必ずしも高齢者雇用企業の割合が高くなる訳ではないことがみて とれる。 【図表 14】高齢化率と高齢者雇用企業割合の関係 (注 1)ここでの「高齢者雇用企業」とは、希望者全員が 65 歳以上まで働ける企業を示す。 (注 2)相関係数は、絶対値で 0~1 の間の数値をとり、1 に近いほど 2 つのデータ群の関連性が高く、 0 に近いほど関連性が低いことを示す。 (資料)厚生労働省「平成25 年『高年齢者の雇用状況』」、総務省「人口推計」(2012 年) (注)生産年齢人口とは、15 歳~64 歳の人口を示す。 (資料)総務省「人口推計」 (注)県外への転出を示す。 (資料)秋田県「人口動態」 55.0 60.0 65.0 70.0 75.0 80.0 85.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 (高齢化率、%) (高齢者雇用企業の割合、%) 秋田 相関係数:0.3533 58.0 59.0 60.0 61.0 62.0 60.0 62.0 64.0 66.0 68.0 70.0 72.0 74.0 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 秋田県生産年齢人口(左軸) 同比率(秋田県) (万人) (年) (%) 15歳未満 9.2% 15~29歳 53.2% 30~39歳 17.2% 40~49歳 9.2% 50~64歳 7.3% 65歳以上 4.0%

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以上みてきた①~④を踏まえ、当地での高齢者雇用が全国に比べて進んでい る背景を整理すると、以下の 2 点が考えられる。  ①~③から考えられる背景 事業規模別の事業所割合は、秋田県と全国とで大差はないものの、当地に おける大企業の雇用の受け皿が全国対比小さいこともあって、若年層が県外 へ流出し、労働力が減尐している。そのため、豊富な経験を有する高齢者を 雇用し、即戦力として活用しようという企業ニーズが高い。  ④から考えられる背景 高齢化率の高い他県において、必ずしも秋田県と同様に高齢者雇用企業の 割合が高くなっているわけではないことから、県内企業が、秋田県の高齢化 が全国に先駆けて進展していることをしっかりと認識し、他地域の企業以上 に高齢者雇用に前向きに取り組んでいる。 3.今後の課題と高齢者雇用の促進により期待される需要面の効果 (1)今後の課題 ―高齢者雇用企業の増加、働きやすい環境の整備― 全有業者に占める 65 歳以上の有業者の割合(前掲図表 7)は、全国を上回る 水準で上昇していることを前述した。しかしながら、当地では高齢化が全国を 上回るペースで進展していることもあって、65 歳以上人口に占める無業者の割 合(図表 15)が全国水準を上回って増加傾向にあることも事実である。 可能な限り働き続けることを希望する高齢者も相応にいる(前掲図表 3)こと や、秋田県は 70 歳以上の人口比率が全国に比べ高い(図表 16)ことを踏まえ、 業種や職種、事業分野・規模等にもよるが、企業による以下のような取り組み が可能な限り実践され、高齢者雇用が一層促進されることが望まれる。 ① より長く働ける雇用措置の導入 継続雇用制度の導入(前掲図表 5)に限らず、定年の引き上げや定年制の廃 止といった雇用措置を取り揃える企業が増え、より長く働ける企業が一層増 加すること。 ② 多様な雇用形態の整備 高齢者の就労意欲が高い状態にあるとはいえ、体力の低下等によって生産 性が低下する懸念もある。そのため、高齢者の多様な希望に沿えるよう、雇 用形態のバリエーションを充実させ、豊富なノウハウやスキルを有する高齢 者を人材育成面で活用するなど、高齢者の労働力を効果的に活用すること。

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20.0 22.0 24.0 26.0 28.0 30.0 32.0 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 高齢者世帯 64歳以下世帯 高齢者世帯の消費比率(右軸) (千億円) (%) (年) 【図表 15】65 歳以上人口に占める無業者 【図表 16】年齢別人口構成比 の割合 (2010 年) (2)高齢者雇用の促進により期待される需要面の効果 ―消費規模縮小の抑制― 前述のような企業の取り組みが奏功し、働く高齢者が増加すれば、収入の維 持ないし増加を通じ、県内全体の消費支出の縮小を抑制する効果が期待できる。 実際、秋田県の年間家計最終消費支出額(除く持ち家の帰属家賃)を世帯主 の年齢階級別にみると、人口減尐を背景に総額は減尐傾向にある。一方、高齢 者世帯の消費支出額は増加傾向にあるほか、消費支出額全体に占めるウェイト も年々上昇しており、2011 年時点では全体の 3 割超となっている(図表 17)。 今後も高齢化の進展に伴い、高齢者による消費活動が県内経済に与える影響は 一段と高まっていくものと考えられる。 【図表 17】秋田県の家計最終消費支出額の推移 (資料)厚生労働省「就業構造基本調査」 (資料)総務省「国勢調査」 72.0 74.0 76.0 78.0 80.0 82.0 84.0 1992 1997 2002 2007 2012 秋田県 全国 (%) (年) 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 15 ~ 19 歳 20 ~ 24 歳 25 ~ 29 歳 30 ~ 34 歳 35 ~ 39 歳 40 ~ 44 歳 45 ~ 49 歳 50 ~ 54 歳 55 ~ 59 歳 60 ~ 64 歳 65 ~ 69 歳 70 ~ 74 歳 75 ~ 79 歳 80 ~ 84 歳 85 歳以上 秋田県 全国 (%) 団塊の世代 (注)県民経済計算の家計最終消費支出額(除く持ち家の帰属家賃)を、当該年の「家計調査」の年 齢階級別消費支出規模(1 世帯当たりの消費支出額<二人以上の世帯>×世帯分布数)の比率で 按分し、日銀秋田支店で推計。なお、「家計調査」では、年齢階級別消費支出額の都道府県別デー タがないことから、全国データを使用。 (資料)秋田県「県民経済計算」、総務省「家計調査」

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また、世帯主が 55 歳以上の 1 世帯当たり 1 か月間の消費支出額(全国ベース、 図表 18)をみると、二人以上の全世帯(=勤労者世帯+非勤労者世帯)よりも 勤労者世帯において消費支出額が高くなっている。こうした傾向は秋田県にお いても同様と推察されることから、働く高齢者の増加が、消費の積極化を通じ て県内経済にプラスの効果をもたらす余地は十分にあると考えられる。 【図表 18】1 世帯当たり 1 か月間の消費支出額(全国、2012 年) (3)高齢者需要の喚起 働く高齢者の増加に伴う、高齢者の消費増加といったプラスの効果を最大限 に得るためには、企業が高齢者層のニーズを的確に把握し、消費意欲が高まる ような財やサービスを提供することも求められる。県内企業では、既に高齢者 需要の獲得を企図した取り組みが行われており(図表 19)、今後も積極的な需要 喚起策が展開されることを期待したい。 【図表 19】高齢者需要獲得を企図した取り組み事例(主に小売業) ・自治体等と小売業者との連携による、高齢者の安否確認サービスと宅配サービ スを融合した新サービスの提供。 ・店舗―自宅間の送迎サービスの実施。 ・自宅を訪問して注文を受け付け、商品を配達する「御用聞き」の実施。 ・シニア層向けの商品(飲み込みやすい食品等)の充実化。 ・惣菜の尐量化や和食の品揃えの充実、シニア層向けの味付け。 ・高齢者でも買い物をしやすい店舗作りを意識。 4.おわりに 本稿では、高齢者雇用の現状を整理した上で、高齢者雇用の拡大が県内経済 の活性化に寄与し得ることについて考察した。 その結果、①若年層の県外流出による労働力の不足や、県内企業による高齢 者雇用への積極的な取り組みを背景に、秋田県は全国に比べ高齢者が働くこと のできる環境が整備されていること、②秋田県の年間家計最終消費支出額は減 20 25 30 35 55~64歳 65歳~ 二人以上の世帯 うち、勤労者世帯 (万円) (世帯主の年齢階級) (資料)総務省「家計調査」

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尐傾向にあるものの、高齢化の進展に伴って、高齢者消費が県内経済に与える 影響が高まっていること、③高齢者雇用の促進によって、高齢者の収入が維持 されることを通じ、県内消費の縮小を抑制できる可能性があることを指摘した。 高齢者雇用の促進のためには、より長く働ける企業が一層増加するとともに、 高齢者のニーズに応じた多様な雇用措置・形態が提供されることが望まれる。 また、需要面では、企業による高齢者のニーズの把握によって需要が喚起され、 高齢者による消費活動がより活発なものとなることが期待される。 高齢者は長年培った経験や技術力を有しており、業種や職種、事業分野・規 模等によっては、企業の即戦力となるほか、若年層の従業員等の育成にも貢献 し得る。また、高齢者にとっては、働き続けることによって身体的かつ精神的 な健康維持を図れるほか、安定した収入を得られる。更には、高齢者の社会参 加による健康寿命の長期化は、社会保障コストの抑制につながることが期待で きるなど、様々な面でメリットを享受できる。引き続き、民間・行政を問わず、 関係者間の積極的かつ広範な議論や取り組みが進められることが期待される。 以 上

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意向調査実施世帯 233 世帯 訪問拒否世帯 158/233 世帯 訪問受け入れ世帯 75/233 世帯 アンケート回答世帯 50/233 世帯 有効回答数 125/233

のうちいずれかに加入している世帯の平均加入金額であるため、平均金額の低い機関の世帯加入金額にひ