九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
フローサイトメトリークロスマッチ TB 陽性患者に 対する生体腎移植
寺坂, 壮史
http://hdl.handle.net/2324/1806921
出版情報:Kyushu University, 2016, 博士(医学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)
(別紙様式2)
氏 名 寺坂 壮史 論 文 名
Living-Donor Kidney Transplant in T-Cell and B-Cell Flow Cytometry Crossmatch-Positive Patients
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 江藤 正俊 副 査 九州大学 教授 塩瀬 明 副 査 九州大学 教授 新納 宏昭
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
生体腎移植において、細胞傷害性試験(Complement-dependent cytotoxic crossm atch: CDC)が移植の適応の重要な指標であることはよく知られている。 しかし、フ ローサイトメトリークロスマッチ(Flow cytometry crossmatch: FCXM)陽性患者に ついての治療方針について、明確なコンセンサスは得られていない。そこで著者らは 2007年5月から2011年7月にかけて、所属施設で生体腎移植を行った127名を対象とし て後方視的に解析を行った。127名の患者を、115名のFCXM T-B-群と12名のFCXM T+B +群に分けた。両群とも移植手術当日と術後4日目にバシリキシマブ 20㎎の投与を行 った。両群とも経口の免疫抑制剤はタクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メ チルプレドニゾロンの3剤を用いた。FCXM T-B-群はこれらの免疫抑制剤の内服を手 術の7日前より、FCXM T+B+群は14日前より開始した。FCXM T+B+群には手術の1週間 前にリツキシマブ200㎎を投与し、その後移植までの間に3回の血漿交換(PEX)を行 い、さらに手術中から術後5日間にわたり20g/日のγグロブリン経静脈的投与を行っ た。FCXM T+B+患者については手術直前にFlow-panel reactive antibody(Flow-PR A)の測定を行い、減感作の効果について確認した。両群について患者生存率、グラ フト生着率、グラフト機能、拒絶反応と感染症の発症率について検討した。
その結果、患者生存率、グラフト生着率は両群ともに100%であった。FCXM T-B-群 には拒絶反応の発症を認めたのに対し、FCXM T+B+群には一例も発症しなかった。感 染症の発症率やグラフト機能について、両群に統計学的有意差を認めなかった。FCX M T+B+群全例において、減感作療法によるFlow-PRAの改善を認めた。
生体腎移植においてFCXM T+B+患者はいまだハイリスクとされている。今回の検討 は短期的な観察ではあるが、FCXM T+B+患者であっても、適切な周術期管理を行うこ とにより全例良好な結果を得ることができることを示した 。本論文についての試験 はまず論文の研究目的、方法、実験成績などについて説明を求め、各調査員より専門 的な観点から論文内容及びこれに関連した事項について種々質問を行ったがいずれ についてもほぼ適切な解答を得た。よって調査委員合議の結果、試験は合格と決定し た。