条約法条約の逐条コメンタリー(四)
その他のタイトル Article‑by‑Article Commentary on the Vienna Convention on the Law of Treaties (4)
著者 条約法研究会
雑誌名 關西大學法學論集
巻 55
号 3
ページ 739‑756
発行年 2005‑09‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/12067
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か°」 ("'reservation'means
a unilateral statement, however phrased or named, made by a State, when signing, ratifying, accepting,
approving or acceding to a treaty, whereby it purports to exclude or to modify the legal effect of certain provisions of the treaty
in their
application
to that State".)
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も﹁特定の規定﹂に係らない留保である︒ 2
第 五 五 巻 三 号
﹁ 特
定 の
規 定
﹂
次
起草経緯 1 .国際法委員会
① ブ ラ イ ア リ ー 草 案
② フ ィ ッ ツ モ ー リ ス 草 案
③ ウ ォ ル ド ッ ク 草 案
2 .外交会議
第二条 1 項
( d )
の注釈
1 .本項の意義と問題点︵第五十五巻第一号︶
2 .
﹁ 特 定 の 規 定
﹂ 3.﹁排除し又は変更する﹂︵以上︑本号︶
ニ ニ
O
︵ 七
四 O ) 国が︑その管轄下にある一又は二以上の領域に対して︑条約又は条約の規定の適用を排除する声明を出すことがある︒前者の例
として︑デンマークが︑為替手形及び約束手形に関するある種の法の抵触を解決するための条約
( t h e C o n v e n t i o n o f
7 J
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1 9 3 0
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際に mm し
た声明や︑イギリスによる︑ペルシャ湾岸諸国に対して︑領海条約︑公海条約及び漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約の
( 2 )
︵
3
)
適用を排除するとの声明などがある︒また︑後者の例として︑イギリスによる人種差別撤廃条約のフィジーヘの適用に関する留保
( 4 )
や︑ポルトガルによるマカオヘの社会権規約及び自由権規約の適用に関する留保などがある︒特別報告者によれば︑こうした声明 かつて︑このような声明は︑﹁植民地留保﹂と呼ばれ︑施政国が植民地又は植民地の一定範囲に条約又は条約の規定を適用する
関法
目
条約法条約の逐条コメンタリー
︵ 四 ︶
( 5 )
又は適用しない意思を知らしめる宜言であった︒もっとも︑当時︑
の留保ではなく︑植民地に関して適用を排除するものではない﹂ので︑﹁通常︑このような宣言に関して︑他の署名国の同意とい
( 6 )
う問題が発生することはない﹂と述べていた︒また︑今日においても︑ホーン 法条約第二条一項
( d
) にいう﹁留保﹂に当たるのは︑当該条約の趣旨が︑非武装化地帯の創設などのように領域に関わる場合と︑
条約が当事国の領域全体又は条約により明示的に扱われている領域の一部に適用するとの明示の規定を含む場合だけであるとされ
を排除することを意図しているので︑条約法条約第二条一項 る ︒
( d
) しかし︑特別報告者によれば︑かつてはともかく︑この種の宣言は︑条約又は条約の特定の規定の自国への適用上その法的効果
( 8 )
にいう﹁留保﹂である︒また︑ホーンの提唱する区別も正当て はないとする︒条約法条約第二九条によれば︑﹁条約は︑別段の意図が条約自体から明らかである場合及びこの意図が他の方法に よって確認される場合を除くほか︑各当事国をその領域全体について拘束する﹂︒つまり︑適用範囲に関する明示の規定がない場 合には︑原則として︑条約は領域全体に適用されるのである︒
ホーンの説によれば︑条約自体が︑
から﹁排除﹂し︑かつ︑適用領域に関する声明が︑この規定を再現することに限定されている場合にのみ︑何らの法的効果もない したがって︑特別報告者は︑次のようなガイドライン草案を提示した︒
「一•一•八
( F r a n k H o r n ) によれば︑こうした声明が︑条約 いくつかの領域をその適用範囲
国が︑かかる声明がない場合には︑条約が適用される領域への条約又は条約の規定のいくつかの適用を排除す
( 9 )
ることを意図して単独に行う声明は︑付される期日に関係なく︑留保である︒﹂
さて︑特別報告者は︑このガイドライン草案に関する委員会での審議の際に︑改めて趣旨説明を行った︒すなわち︑ガイドライ ン草案一·-•八は、国の領域の一部を条約の適用範囲から除外することを目的として単独に行う声明が、留保であるかという間
( 1 0 )
題を扱っている︒想定しているのは次の二つの場合である︒ かかる声明が︑留保とみなされうることになる︒
~
︵ 七
四 一
︶
マ ル
キ ン
( H . W . M
a l k i n )
などは︑﹁これらは︑通常の意味で
② ①
第 五 五 巻 三 号 国が特定の条約を特定の領域に対して適用しないと決定する声明
た と
え ば
︑
~ ︵
七 四
︶ 二
デンマークが︑特定の条約をフェロー諸島に適用しないとしている場合︑それは︑当該一方的声明が行われな かったならば︑おそらく条約はフェロー諸島に適用されたであろうという意味で︑留保であると考える︒
︱つの条文を除いて︑
フェロー諸島に条約を適用する準備があるとの通告を行ったとする︒これ は︑当該通告の目的は特定の領域に関して条約の規定の適用を変更することなので︑明らかに真の留保である︒それは︑デン マークに関する限り︑条約の適用を変更する留保である︒
この論法の出発点は︑条約法条約第二九条である︒国が︑同条により︑通常各当事国の領域全体に適用していた条約の適用を排 除し又は制限したとき︑条約の﹁法的効果を排除し又は変更する﹂ことになる︒しかし︑草案の﹁行われる期日に関係なく﹂とい う文言については若干議論の余地があるかもしれない︒実際にはこの種の留保は︑二つの時点でのみ起こりうる︒すなわち︑国が 条約に拘束されることについての同意を表明した時と適用領域に関する通告を行った時である︒それゆえ︑当該用語を︑これら二 つの時点への言及に置き換えることができる︒
さて︑この草案に対して︑批判的な見解を示した委員の主たる論拠は以下の通り︒
ガイドライン草案は︑条約全体の適用排除に言及しているが︑たとえ︑領域の一部のみが排除されるとしても︑﹁条約の特 定の規定の﹂法的効果を排除し又は変更することを目的としないという点で︑留保の定義と一致しない︒また︑領域の一部に つき条約の特定の規定の法的効果が排除される場合でさえ︑その他の領域の部分については引き続き同国に対し適用されるの で︑留保の定義の範囲には入らない︒
条約に適用領域の制限に関する特別の規定がないにも関わらず︑国が︑その種の留保を表明した場合︑当該留保は他の締約 国の受諾を要する︒留保が受諾されなければ︑適用領域を制限することはできない︒また︑この種の留保が︑留保に関する一
たとえば︑デンマークが︑
②適用領域の通告の際に特定の領域との関連で行う留保 ① 関法
条約法条約の逐条コメンタリー
ならないと考えている︒したがって︑ ②
︵ 四 ︶
般的制度全体の中でどのように機能するかについて考察する必要がある︒たとえば︑この種の留保が表明されたときに︑当該 留保に対して通常の異議が申し立てられた場合︑当該異議はどのような効果を有するのか︒この場合︑異議国は︑相互主義を 適用することにより︑適用範囲から領域の一部を排除しえないのではないか︒
他方︑ガイドラインザ早案に賛成する委員の論拠は以下の通り︒
委員会が行っていることは︑特定の留保が許容されるか否かを決定するのではなく︑有効であると仮定して︑留保が表明さ れうる現実の枠組みを定義することである︒定義の問題と許容性の間題を混同してはならない︒委員会は︑﹁留保﹂と題され た範疇を定義しているのであって︑留保とみなされる一方的声明の中には︑条約法条約の留保に関する規則が適用されれば許
( 1 5 )
容されると思われる声明もあれば︑許容されないとみなされなければならない声明もある︒
①
条約が︑適用域を制限する可能性について規定していない場合︑その趣旨の一方的声明は許容されないという考えには同意 できない︒その論法によれば︑条約が適用領域の変更を認める特別の規定を含んでいない場合︑その趣旨の留保は許容されず︑
他の諸国により許可又は受諾されなければならないことになる︒究極的には︑許容されない留保が︑他国に受諾されれば許容 されうることになる︒その見解は︑条約法条約第一九条以下の構造に合致しがたい︒実際︑他の留保に適用される基準と同一 の許容性基準に依拠し︑当該声明が条約の趣旨及び目的と両立するか否かを検討する必要があろう︒
結局、ガイドライン草案一・一・八は、起草委員会へ送付されることになった。そして、起草委員会は、新たに一•一•三とし て︑特別報告者の提案したガイドライン草案から﹁付される期日に関係なく﹂との文言を削除したガイドライン草案を提示した︒
起草委員会によれば︑留保の表明時期に関わる問題は︑留保の表明に関する章で扱うとのことである︒また︑国が条約全体の適用 を排除することを意図して単独に行う声明が︑留保であるか否かに関して賛否両論があったが︑多くの委員は︑国家実行に照らし て︑﹁条約の特定の規定﹂のみに言及しているガイドライン案一・一における留保の一般的な定義を︑過度に制限的に解釈しては
一定の領域に対して条約全体の適用を排除する一方的声明は︑条約の適用を制限するので︑
~ ︵ 七
四 一 ︱ ‑ ︶
( 2 7 )
この二つの範疇の留保は︑﹁拡張的留保
( e x t e n s i v e r e s e r v a t i o n s ) ﹂と呼ばれている︒この種の﹁留保﹂については︑既に条約の
留保に関する第一報告書の審議中︑若 T
の議論があった︒ある委員は︑留保により︑当事国は︑他の当事国に対する義務の範囲を
②他の当事国の義務を増加させる︒ ① ( l i m i t
o r e s r t r i c t ) ﹂邸田加不に言及していることは間違いない︑という︒なぜなら︑﹁限定
( r e s t r i c t i n g
﹂ )
は ︑
﹁ 変 更
( m o d i f y i n g ) ﹂ の 一方法だからである︒さらに︑条約法に関するウィーン会議中に提案された修正案が︑﹁不要﹂であるとして採択されなかったこ
( 2 6 )
とにも留意するべきである︑という︒
しかし︑特別報告者によれば︑条約の特定の規定の法的効果を変更するには︑さらに次の二つの方法がある︒
付随的な義務を受諾する︒
これに基づき︑特別報告者は︑
﹁条約の特定の規定の法的効果を変更し﹂という表現が︑この効果を﹁制限し又は限定する
④ ③ ② 後者の問題、すなわち、「変更する」の意味については、特別報告者が提案したガイドライン草案一•一•五及び一•一•六、
-•四•一及び一•四・ニで扱われている。
( 2 1 )
特別報告者によれば︑次のような場合に︑﹁法的効果を変更する﹂ことになるとされる︒
( 2 2 )
国内法上の規定の範囲内で︑条約上の規定を適用するとしている場合︒
( 2 3 )
留保が付されている条約の規定の代わりに︑他の国際文書から生ずる義務に従うとしている場合︒
( 2 4 )
条約上の規定を︑留保国が予定していた別の方法で適用するとしている場合︒
( 2 5 )
条約上の規定の拘束力を変更する場合︒
① 委員会が暫定的に採択したガイドライン草案一・一•五、
-•一•六、
3 .
﹁ 排 除 し は 又 変 更 す る
﹂
第五五巻︱二号
ニ ニ 四
︵ 七
四 四
︶
( 2 0 )
留保と同一視することができると結論したとされる︒以上のような経緯で︑ガイドライン草案一・︱.一︱‑は暫定的に採択された︒
関法
南アフリカは︑この規定に対して行った声明により︑﹁関税交渉が開始されているか否かに関係なく︑すべての締約国との関係で︑
( 3 0 )
本協定を適用することを確約した﹂とみなされた︒ブライアリーによれば︑これは︑﹁この協定は︑相互に関税交渉を終えていな い当事国間において︑及びその適用に同意していない当事国間において︑﹃適用されない﹄という規定に対する留保なので︑当該
( 3 1 )
留保は︑南アフリカの義務を制限するというよりも拡大する効果を有することになる﹂︒また︑国際法委員会での審議においても︑
( 3 2 )
この事例に依拠し︑﹁当事国の負っている義務が制限されるのではなく︑拡大する﹂留保が存在することを主張する委員もいた︒
( 3 3 )
しかし︑この声明の評価は︑一様でない︒﹁単なる意思表示であり︑いかなる法的意義もない﹂とする論者もいれば︑﹁留保は︑
( 3 4 )
﹃必ず﹄条約の義務を制限し︑﹃拡張的留保﹄など存在しないから︑南アフリカの声明は留保ではない﹂とする論者もいる︒ る ︒
条約法条約の逐条コメンタリー ( b ) ( a )
︵ 四 ︶
両締約国の一方が締約国となる時にそのいずれかの締約国がその適用に同意しない場合﹂︒ 両締約国が相互間の関税交渉を開始しておらず︑かつ︑
い も
の と
す る
︒
これは︑ブライアリー 縮小することだけができ︑
いかなる状況においても︑条約に規定されていない権利を一方的に拡大させることはできないことを強 調していた︒他方︑権利を拡大することもできると考える委員もいた︒これに対して︑特別報告者は︑宣言国が︑条約が要求して いる以上のことを約束する﹁確約
( c o m m i s s i v e ) 宣言﹂と︑宣言国が他の当事国に対して︑広い義務を課し︑それに応じて自身 の権利をより広く拡大しようとする﹁本来の拡張的留保
( e x t e n s i v e r e s e r v a t i o n s p r o p e r )
﹂とを区別すれば︑この対立を解決する
( 2 8 )
ことができるとする︒
( J .
L .
B r i e r l y )
前者の例として︑南アフリカが︑
一九四七年の関税及び貿易に関する一般協定
( G
A T
T )
第三五条に対して行った声明がある︒
( 2 9 )
の条約法に関する第一報告書でも言及されていた︒第三五条一項は︑次のような規定であ
﹁この協定又はこの協定の第二条の規定は︑次の場合には︑
いずれかの締約国と他のいずれかの締約国との間には適用されな
ニ ニ 五
︵ 七
四 五
︶
からも完全に免除される﹂︒
第 五
五 巻
︱ ︱
︱ 号
特別報告者は︑結論的には最後の立場が妥当とする︒この種の声明は︑条約又は条約の特定の規定の法的効果を変更するという 効果をもちえないからである︒すなわち︑それらは︑確かに条約に拘束されることについての同意の表明時にその一部となるが︑
当該条約には何らの効果も及ばさない約束である︒留保は︑﹁非自律的な
( n o n
, a u
t o n o m o u s )
一方的行為﹂であるが︑かかる声明
( 3 5 )
は︑表明者に自律的な義務を課し︑留保の制度ではなく︑その種の文書に適用される法規則に服する一方的法律行為となる︒しか し︑特別報告者は︑曖昧さを払拭するために︑これらの声明が留保ではないことを説明しておくほうが望ましいとして︑次のよう
( 3 6 )
なガイドライン草案一・一•五を提示する。
「一・一•五 国又は国際機関が︑条約が課している義務の範囲を超える約束を引き受けるもので︑条約に拘束されることに
ついての同意を表明する際に単独に行う声明は︑留保ではない
︵及び一方的法律行為に適用される規則により規律される︶︒
他方︑特別報告者によれば︑本来の拡張的留保
( e x t e n s i v e r e s e r v a t i o n s p r o p e
︑すなわち︑自国の権利を拡大する一方で︑他 r )
の条約当事国の義務を拡大させることを求める声明は︑別途検討の余地があるとされる︒
この種の留保の例としては︑ポーランドが公海条約第九条に対して付した留保がある︒第九条は︑次のように規定している︒
﹁国が所有し又は運航する船舶で政府の非商業的役務にのみ使用されるものは︑公海において旗国以外のいずれの国の管轄権
( 3 8 )
この規定に対して︑ポーランドは︑﹁第九条の規則は︑国が所有し又は運航するすべての船舶に適用される﹂との留保を付した︒
これにより︑留保国は︑旗国以外の管轄権から免除される船舶の範囲を拡大することで︑免除に関する権利義務を拡大すると同時 に︑他の締約国に対しても︑管轄権からの免除義務の範囲を拡大させようとしているので︑﹁拡張的留保﹂である︒ある論者によ
れば︑このような結果をもたらしうる声明は︑実際には︑他の喝
1 1 国を全く拘束しない原則の声明にすぎないので︑留保ではない
( 3 9 )
とされる︒しかし︑特別報告者によれば︑あらゆる留保は︑留保国の権利を拡大させる一方で︑他の締約国の権利を制限すること
( 4 0 )
が意図されているという意味では︑かかる留保は︑通常の﹁変更する留保﹂と阿じように機能する︒ 関法
ニ ︱
一 六
︵ 七
四 六
︶
②
条約法条約の逐条コメンタリー
︵ 四 ︶
から自由に逸脱することができる︒たとえば︑不正に外交免除に依拠することを回避させるために︑ある地域の国は︑各国機 関の免除を制限し︑接受国が外交代表に対して負う義務を制限することに同意することができる︒しかし︑当該国の一が︑当
一般国際法の制度が適用されることになる︒これは︑明らかに留保であるが︑ガイ
( 4 4 )
ドライン草案一・一•五の基準によれば、留保ではないことになってしまう。
ガイドライン i
早案一•一•五の「一方的行為に適用される規則により規律される」との文言は、現段階では、明確に定義さ
該特別の合意に対して留保を付した場合︑ よ
り ︑
① 批判的な見解を示した委員の主たる論拠は︑次の通り︒ 「一•一•六
一般国際法及び多数国間条約に
他方︑特別報告者によれば︑これとは異なる﹁留保﹂︑すなわち︑イスラエルが一九四九年ジュネーブ諸条約の赤十字標章に関 する規定に対して︑ダビデの星を追加することを望んで付した留保が︑真の留保の性質を有しているか否かという疑問が生じると される︒この疑問は︑この﹁留保﹂が︑当該条約の規定の効果を排除し又は変更することを意図するのではなく︑当該条約に一っ の規定を追加することを意図しているという事実から生ずる︒これは︑実際には留保ではなく︑改正案又は補足協定案であり︑他 の諸国はこれを受諾することも拒否することも自由に行えるという︒
( 4 2 )
以上に基づき︑特別報告者は︑次のようなガイドライン草案を提示した︒
国又は国際機関が︑条約が課している義務及び条約が他の当事国に対して創設している権利を制限することを 意図して︑条約に拘束されることについての同意を表明する際に単独に行う声明は︑留保である︒ただし︑当該声明が︑当該
条約に新たな規定を追加する場合は︑この限りでない﹂︒
さて︑これらのガイドラインザ早案に対しては︑﹁表明者が義務を拡大させることを目的として単独に行う宣言は︑自律的な行為
( 4 3 )
であり、他の諸国の受諾を要しない」として、賛同する委員もいたが、批判的な見解が大勢を占めた。まず一・一•五に対して、
この種の宜言も︑留保になりうる場合がある︒たとえば︑外交関係に関する分野において︑
一定の規範が設定されているが︑これらは強行規範ではないので︑特別の合意を結ぶことにより︑国家はこれらの規範
ニ ニ 七
︵ 七
四 七
︶
結 局
︑
③
第五五巻三号
留保が︑留保国と他の国の義務を変更する声明であるとすれば︑表明者の義務を増加させることを H 的とする声明を︑なぜ
排除しなければならないのか︒たとえば︑多数国間条約の当事国は︑自らの義務を拡大すると同時に︑相互主義的な行為によ
( 4 6 )
り︑他の当事国の義務を拡大することを希望する留保を表明することができる︒なぜ︑留保は︑条約の規定の法的効果を縮小
することだけしかできないとしなければならないのか︒
次に一•一•六に対して、批判的な見解を示した委員の主たる論拠は、次の通り。
( 4 8 )
ガイドライン草案一•一•六は、相互主義の原則によれば、自明のことなので、不要である。
﹁ただし︑当該声明が︑当該条約に新たな規定を追加する場合は︑この限りでない︒﹂との文言は︑古典的な留保の範囲を
( 4 9 )
超える声明を持ち出している︒ 一方的宣言により︑﹁新たな規定を追加する﹂ことはできない︒
( 5 0 )
うることは︑新たな規定を提案することである︒ ② ① ③
国際刑事裁判所規程第︱二四条は︑次のように規定している︒
﹁第ニ一条︱及び一︱の規定にかかわらず︑国は︑この規程の締約国になる際に当該国に対するこの規程の効力発生から七年の
間︑第八条に定められた犯罪類型の犯罪が︑当該国の国民によって又は当該国の領域内で行われたと申し立てられる場合につ
いて︑裁判所の管轄権を受諾しない旨宣言することができる︒⁝⁝﹂︒
この規定によれば︑国は︑批准の際に︑条約により課せられた義務の範囲と性質を縮小する宣言を行うことができる︒ガイドライ
ン草案一・一•六によれば、それは留保となるが、規程第一― -0 条は、「この規程には、
して︑留保を禁止している︒留保に適用される制度と規程第︱二四条に基づく宜言に適用される制度が存在することになるのでは
ないヵ
-•一•五と一•一·六はさらに検討を加えるために、起草委員会へ差し戻されることになった。そして、 れているわけではないので︑ 関法
( 4 5 )
削除されるべきである︒
いかなる留保も行うことができない﹂と
一 九
九 九
年 の
一方的宜言により︑国が行い
ニ ニ 八
︵ 七
四 八
︶
条約法条約の逐条コメンタリー
条約を署名した︒その折り︑署名者は︑
︵ 四 ︶
イン草案一•一•六をその基礎とするものである。
一•一•五が、義務の増減がない場合には、
「一·-•六 起草委員会によれば︑
-•一•五は、「制限する
( 5 2 )
会期で︑起草委員会は︑次のようなガイドライン草案を提示した︒
まず一•一•五
するものであり︑次のような案であった︒
「-.-•五
項
( d
)
-.-•六が適用される。
︵表明者の義務を制限することを意図する声明︶
ての同意を表明する際に単独に行う声明は︑留保である﹂︒
は、特別報告者の提案したガイドライン草案一•一•六に対応
( l i m i t )
ことを意図して︑条約に拘束されることについ
( l i m i t
)
﹂という用語を含んでいる点で︑有益と考えられた︒条約法条約第二条︱
( 5 3 )
は︑制限的な意味を有すると解釈されてきたが︑﹁排除し又は変更する﹂という用語のみが用いられているからである︒
次に一・一•六(同等の手段により義務を履行することを怠図する声明)は、新条文であるが、特別報告者の提案したガイドラ
国又は国際機関が︑条約が課している方法とは異なるが同等の方法で︑条約に従って義務を履行することを意 図して︑条約に拘束されることについての同意を表明する際に単独に行う声明は︑留保である﹂︒
起草委員会は︑日本が食糧援助協定に対する留保を行ったときの実行に関心を寄せた︒
一定の諸国に食糧援助を提供することを約束した︒しかし︑日本国内に小麦の生産者はい なかったので︑日本は︑提供しなければならない小麦の量と同等の金額の米の量を提供するとの留保を付した︒当該留保は︑日本
( 5 4 )
に対して条約の法的効果を変更するものではなかったが︑小友を提供する義務の代わりに︑米を提供する義務を設定した︒この場 合︑条約上の義務は︑依然として同一であるが︑国は同等の手段により当該義務を履行することを意図している︒かかる声明は︑
まさにその性質上︑条約の特定の規定の宜言国への適用上その法的効果を変更することを意図している︒たとえ︑他の当事国︑特 に当該義務の履行により直接影響を受ける当事国に受諾されなければ効果を生じ得ないとしても︑これは留保であるとされる︒
起草委員会によれば︑義務の減少を意図する宣言には︑
︱ ︱ ︱ 一
九
︵ 七
四 九
︶
国又は国際機関が︑条約が課している義務を制限する
一九七一年︑日本は︑他の諸国と食糧援助
ま ず
︑
第五五巻三号 そして、義務が増加する場合を対象とするガイドライン草案として、新たに一•四•一
「一•四•一
一方的な約束であり︑この実行へのガイドの適用範囲外である﹂︒
このガイドライン草案は︑国又は国際機関が︑条約が課している範囲を超える約束を引き受けることによって︑その義務を﹁増 加させる﹂ことを意図する声明を扱っている︒起草委員会は︑かかる声明の性質決定を行わず︑このガイドの適用範囲外であると するに留めた︒
最後に、特別報告者が提案したガイドライン草案一·-•六にあった最後の文言に対応するものとして、新たにガイドライン草 案一•四・―-(条約に新たな要素を追加することを意図する一方的声明)が提案された。
「一•四・ニ
国又は国際機関が︑条約が課している範囲を超える義務を引き受けることを意図して︑条約に関して単独に行 国又は国際機関が︑条約に新たな諸要素を追加することを意図して単独に行う声明は︑条約の内容を変更する
提案であり︑この実行へのガイドの適用範囲外である﹂︒
特別報告者と同様︑起草委員会も︑これに該当する事例として︑イスラエルが︑ジュネーブ諸条約の下での赤十字及び赤新月の 標章にダビデの盾を追加しようとして行った﹁留保﹂を挙げている︒
さて︑これらの起草委員会案の中で︑
( 5 8 )
-•一•六は全く異論なく採択された。また、
( 5 9 )
を求める意見が提起されただけで︑原案通り採択された︒他方︑
-•四•一に対して、「約束 (commitments)
」は、必ず法的義務を伴うわけではないので、この用語を用いれば、本ガイ
( 6 0 )
ドライン草案の対象が法的義務であることが不明確になってしまうのではないかとの疑問が提起された︒起草委員会委員長の説明 によれば、「約束」という用語は、特別報告者が第三報告書で提案したガイドライン草案一・一•五のフランス語版で用いられて
いたば ngagements"
の翻訳であり、特別な意味を意図していたわけではないとされる。ただし、ガイドライン草案一•四•一は、
う 声
明 は
︑
声明︶が提案されている︒
関法
-•四•一と一•四·―一に関しては、若千の議論があった。
-•一•五についても、細かい字句の修正 ︵一方的約束を引き受けることを意図する
ニ ︱
︱
1 0
︵ 七
五
O )
が提案したガイドライン草案では︑﹁新たな規定
( a n e w r p o v i s i o n )
﹂とされていた︒﹁新たな諸要素
( f u r t h e r e l e m e n t s
﹂に対し )
て︑批判的な見解を述べた委員によれば︑留保は︑条約に新たな要素を追加すると考えられるので︑この表現では明確性に欠け︑
それゆえ︑元の﹁新たな規定
n ( a e w r p o v i s i o n )
﹂のほうが望ましい︒この見解には︑何人かの委員が賛意を示した︒しかし︑結
次 に
︑
せ ば
︑ 条約法条約の逐条コメンタリー
他 方
︑
︵ 四 ︶
本文で﹁義務﹂という用語を用いているように︑宣言国が︑条約上の義務に加えて新たな法的義務を負うことを意図して︑単独に 声明を行う場合を想定しているので︑﹁約束﹂
( 6 1 )
変更に柔軟な姿勢を示した︒
の代わりに﹁義務﹂という用語を︑表題で用いるに足る根拠はあるとして︑用語の -•四•一の趣旨は、条約が表明者に課している義務以上の義務を引き受けることは、委員会が作成している「実行への
ガイド﹂が適用されない約束であることを明らかにすることてあり︑表題の﹁約束﹂と本文の﹁義務﹂は︑それぞれ異なる役割を 果たすので︑両方維持すべきである︑との意見も出された︒また︑整合性を保っために︑本文の﹁義務﹂を﹁約束﹂に変えるべ彦
( 6 3 )
であるとの意見もあった︒
( 6 4 )
こうした議論を受けて︑起草委員会委員長は︑本文の﹁約束﹂を﹁声明﹂
( s t a t e m e n t ) へと変更する修正案を提起した︒しかし︑
( 6 5 )
この案は︑﹁約束﹂の範囲を定義していない段階で︑﹁声明﹂と同一視することは適当でない︑表題にだけ﹁約束﹂という文言を残
( 6 6 )
ガイドライン草案の均衡を失することになる︑などの批判を受け︑ほとんど支持を得ることがでぎなかった︒そこで︑起草 委員会委員長は︑本文の﹁約束﹂を﹁声明﹂に置き換えるとともに︑表題で用いられている﹁約束﹂を﹁義務﹂
~
へと変更する修正
案を提起した︒本ガイドライン草案に関する議論は︑義務︑すなわち約束というよりもむしろ法的義務を増加させることを意図し た声明について行われてきたのであって︑この変更により︑約束と義務の法的相違に関して議論をする必要はなくなる︑とされる︒
( 6 8 )
︵
6 9
)
ところが︑この案に理解を示す委員もいたものの︑特別報告者が︑﹁断固として反対する﹂と述べ︑委員会議長がこれに留意する
( 7 0 ) ( 7 1 )
よう促したことから︑結局は︑起草委員会の原案通り採択されることになった︒
一•四・―一に関しては、「新たな諸要素
(further
e l e m e n t s
) ﹂という表現をめぐって︑若干の議論があった︒特別報告者
︵ 七
五 一
︶
( 4
)
M u l t i l a t e r a l T r e a t i e s
D 念
o s i t e d w i t h t h e S e c r e
t ミ
r y , G e n e r a l ' S t a t u s a s t a 1 3 e D c e m b e r 1 9 9 6 ( h e r e i n a f t e r i c t e d a
s M u t l i , l a t e r a l T r e a t i e s ) , c h a p .
I I .
8 , p .
969
( 2
)
I b i d , c h a p s .
X X
I .
1 ,
p .
8 0 3 ;
X X
I .
2
,
p .
809
a n d
X X
I .
3
,
p .
8 1 3 .
珍しい例として︑一九六五年に南ローデシアが﹁独立﹂
を宣言してから︑ジンバブエとして独立する一九八 0 年までの間に︑イギリスが︑多くの条約への参加の際に付した留保が
ある︒たとえば︑社会権規約及び自由権規約の批准の際に︑規約の諸規定は︑﹁南ローデシアが国連事務総長へ︑当該領域
に関して規約が課している義務を︑完全に実施することができると通知するまで︑南ローデシアには適用されない︒﹂との
留保を付していた︒
i b i
今
c h a p s .
I V .
3
a n d
I V .
4 , p p .
1 1 5
,
129
a n d
1 3 7 .
( 3
)
I b i d , c h a p .
I V
. 2
,
p .
1 0 1 .
イギリスは︑フィジーにおける選挙に関する法律により︑第五条
( C )
に言及されている諸義
務を実施できない場合︑フィジーにおける土地に関する法律が︑先住民による士地の譲渡を禁止し又は制限していることか
ら︑第五条
( d
)
︵
V )
に言及されている諸義務を実施できない場合︑フィジーの学校制度により︑第二条︑三条又は五条
( e ) ( V )
に言及されている諸義務を実施できない場合に︑人種差別撤廃条約を﹁フィジーに適用しない権利を留保する﹂
としていた︒なお︑フィジーは︑同条約の承継を宣言した際に︑これらの留保を確認している︒
i b i d , p .
9 7 .
I b i d , c h a p .
I V .
3 ,
f
o o t n o t
e 1
6 , p .
1 1 8
( 1
)
局は︑この点について起草委員会で長時間に渡って審議がなされたこと︑及び︑曖昧な点については︑
( 7 4 )
足りることを理由に︑これも起草委員会の原案通り採択されることになった︒
本稿では︑第二条 1 項(d)
特徴と考えられる﹁条約の特定の規定の自国への適用上その法的効果を排除し又は変更することを意図する﹂という要素に関連す るガイドライン草案を紹介した︒このほかにも︑解釈宣言の定義︑留保と解釈宣言の区別などの重要な論点についても︑
のガイドライン i
早案が暫定的に採択されているが︑紙幅の関係上取り上げることができなかった︒また︑同じく紙幅の関係上︑
イドラインザ早案の紹介に重点を置かざるを得なかったため︑暫定的に採択されたガイドライン草案の妥当性にまで踏み込んだ検討
を行うことができなかった︒これらの点については︑他日を期することにしたい︒ 関法
第 五 五 巻 三 号
~
に規定されている諸要素のなかで︑留保をそれ以外の宜言又は声明と区別するに足る最も本質的な
ヽ~
っ カ
ヽ
し `
V
ガ コメンタリーで説明すれば ︵ 七 五 一 一 ︶
(LO) Pellet, "Third report on
reservations
to
treaties",
Addendum,
A/CN.4/
491/ Add.l, para. 184, p. 18.
(<D) H. W.
Malkin,
"Reservations
to
Multilateral
Conventions",
British
Yearbook
of
International
Law, 1926, p. 103.
(t‑) Frank Horn,
Reservations
and
Interpretative
Declarations
to
Multilateral
Treaties,
T. M. C. Asser
Instituut,
Swedish
In‑
stitute of
International
Law, Studies in
International
Law, vol. 5, 1988, p. 101.
(oo) Pellet, supra. note 5, para. 185, p. 19.
(m) Ibid, para. 190, p. 20.
ぼ) Pellet (2545 th
meeting,
para. 11.),
Yearbook
of the
International
Law
Commission
(hereinafter
cited as Yb. I. L. C.),
1998, Vol. I, p. 182.
(二) Pellet (ibid, para. 41.), ibid, p. 186.
(;:::l) Pellet (2545 th
meeting,
para. 12.), Yb. I. L. C., 1998, Vol. I, p. 182.
心)
Mikulka
(2545 th
meeting,
paras. 24‑25.), Yb. I. L. C, 1998, Vol. I, p. 184;
Pambou‑Tchivounda
(ibid., paras. 26‑27.),
ibid
(;::!:;) Hafner (ibid, para. 19.), ibid;
Bennouna
(ibid, para. 29.), ibid., pp.
184‑185;
Economides
(ibid, para. 35.), ibid, p. 185.
ぼ)
Rosenstock
(ibid, para. 22.), ibid., p. 184; Pellet (ibid, para. 37.), p. 185.
ぼ) Simma (ibid, paras. 34, 36.), ibid
(~) Yb. I. L. C, 1998, Vol. I, p. 189.
(芝) Ibid, p. 257.
ぼ) Simma (2556 th
meeting,
para. 73.), Yb. I. L. C, 1998, Vol. I, p. 257.
環) Ibid
ば) Pellet, supra. note 5, para. 200, pp. 22‑23.
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Multilateral
Treaties,
supra. note 1,
chap. IV. 4, p. 121.
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(巨) I 1111111 (ギば 111)
翌坦 綜ばヰ恕 111 口如 I 1111 回 (‑¥J ば回)
ぼ) ど斗心, ;.L";'-~ 竺’四 -m~ < Q~ 呂 Q 藍旦'「}只諄饂 Q 翠 l 墨寄心 Q 室削や'綜 1 ‑R 忍翠 I I 母忍る翠 Ii 1~ 翌ざ 1 ‑R ば〇母 1 1 rn::: 互二 0‑< 送忍も苺社宕 ill1 王旦翌ヤ成叙芦 l 奴侶這宝包や痢王怜 l‑00 」心詞琴如字,̲) ¥‑‑':,, l‑0°ibid, p. 124.
(苫) 以知心, ;.L ";'-這’四王送瞑姦〈 Q~ 呂 0 経江「乖湿〇踪 l 回巡屡 ('"O) 竺, ~Q 知"旦痢正 1"'l-0 0 玉嘩旦将士 頭恒恥将ニピ虞託 Q 鉛 n‑<@ ふ足王控怜か J 刈旦 0:.C,¥JQ 芦 D 廷'縣写志茶却赳怜 l‑0 0 」刈詞率如字⇒ ¥‑‑':.C,i‑00
ibid
ぼ) ¥知心, 1'¥ ー K ,.L IJ'¥ ::--~ 竺'皿壬送認露厨 0 忍 l西 ((-:I) 以裳⇒立蔚ロ -<.A.J~
吾〇写走只心¥袖→竺令菱ゃ菜肉
如