九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
高速負荷可能な4連式回転曲げ疲労試験機の開発
山本, 泰三
https://doi.org/10.15017/1931889
出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式2)
氏 名: 山 本 泰 三
論 文 名: 高速負荷可能な4連式回転曲げ疲労試験機の開発 区 分: 甲
論 文 内 容 の 要 旨
地球環境問題はいよいよ重大な局面を迎えており,CO2ガス排出を最小限に抑えるような金属材 料の有効利用法の確立も新たな重要テーマになっている.この観点から,従来よりもはるかに長期 間に渡り製品を有効利用するための基盤技術として,近年,繰返し数が 108回を超える高サイクル 疲労に関する研究が,国内外で盛んに進められている.この領域では二重S-N線図として表現され る形態で破壊が起こる場合があり,二重S-N線図における短寿命領域は材料表面を起点とする表面 破壊を生じるのに対し,長寿命領域では材料内部からの破壊であり,両者の破壊機構は異なること が知られつつあることから,さらに様々な条件下でデータを蓄積していく必要がある.
一方,疲労試験の結果は比較的大きなバラツキを示すことが知られていることから,信頼性の高 い疲労試験結果を得るためには,より多くのデータを収集することが必要である.しかしながら現 状の疲労試験でも試験打ち切りレベルの繰返し数は 107回のオーダであるため,多くの疲労試験デ ータを得るためには,できるだけ短期間で試験を実施できる疲労試験機の開発が期待されている.
これを実現できる試験機の1つとして超音波疲労試験機が開発されたが,超音波疲労試験機を用い た疲労試験の結果は,稼働中の実構造物が晒される負荷状況とは大きく異なることが指摘されてい る.超音波疲労試験データと従来手法による疲労試験データとの相違についての検証研究報告はあ るものの,従来の手法で取得された実績あるS-N曲線と等価なS-N曲線を取得できるのか否かに関 して継続的な検討が必要であるとの指摘もある.また,ほとんどの金属で高速負荷による試験片の 発熱が生じるため,超音波疲労試験のように極めて高速の繰返し負荷がなされる試験では,試験片 を素材特性が変化しない程度の温度上昇に抑えるために,実験中に継続して冷却する必要がある.
冷却なしで疲労試験を行った場合,材種によっては数分で試験片が融点に達して溶解した事例もあ る.上述した超音波疲労試験機を用いた疲労試験の課題を考慮すると,高速かつ試験片の温度上昇 が材質変化を及ぼさない程度に抑制できる負荷速度で,108 回オーダの繰返し負荷を与える方法で 疲労試験を実施することは,実構造物の長期信頼性保証の観点から重要である.
一方,このような疲労試験を通常の疲労試験機で実施する場合は,自ずと長期間を要するので,
何らかの工夫が望まれる.この観点から,本研究では一度に複数の試験片が試験できる高速負荷可 能な4連式回転曲げ疲労試験機の開発を行った.さらに,回転中の試験片の温度上昇をモニタリン グできる機器を開発し,これを用いて疲労試験を実施することで,高速負荷時に懸念される試験片 の発熱状況にも注意を払える,信頼性が高い疲労試験方法に資する提案を行った.
本論文は,7章から構成されている.
第 1 章は緒論であり,繰返し数が 108回を超える高サイクル領域の疲労に関する研究の現状や疲 労試験機の現状を中心に,研究背景について説明している.
第2章は従来の疲労試験機として,電気油圧サーボ式疲労試験機,回転曲げ疲労試験機(両持ち 式),超音波疲労試験機,および多連式疲労試験機を説明し,各試験機のそれぞれ問題点を示した.
第3章では,従来の疲労データと整合性が取れる試験機として,著者らが開発した 4連式回転曲
げ疲労試験機の開発について説明した. 4連式にすることで従来の試験機よりも高効率に試験をす ることが可能になったことを示した.しかしながら,108 回オーダの繰返し負荷条件下での疲労強 度評価に供する試験機としては,試験期間の短縮は必ずしも十分とは言えないこともある為,さら に負荷速度を高速にできる試験機の開発の必要性についても述べた.
因みに,開発した4連式回転曲げ疲労試験機に使われているモーターの性能自体は,さらに高速 回転で運用することも可能であるが,超音波疲労試験機の問題点と同様に,高速負荷時の温度上昇 を定量的に把握し,それをコントロールできなければ,いくら負荷速度を向上させることができて も,適切な疲労試験機として活用することはできない.
そこで,第 4章では,実績のある回転切削工具用の無線式温度監視システムを回転曲げ疲労試験 機用に改良し,高速負荷時の塑性仕事に起因する局部温度上昇を定量的に把握する為の回転曲げ疲 労試験機中の試験片温度をモニタリングできるシステム開発について言及した.
そして第5章では,高速回転させる為に最も重要となる主軸ユニットの開発にも触れ,従来機と の精度比較を行いながら,高速負荷可能な4連式回転曲げ疲労試験機の開発について説明した.
また,その疲労試験機にて,第 4章で述べた無線式温度監視システムを活用し,アルミニウム材 とマグネシウム材,そしてステンレス材において JIS 規格の速度制限を超える試験条件で,試験片 の温度上昇について示した.
また第6章では,この度開発した無線式温度監視システムの用途展開として,高温環境ユニット の温度勾配を評価する機器として説明しており,その有用性を述べている.
第7章は結論であり,本研究の総括並びに今後の課題について言及した.