絵本 と親子交流に関する研究
後藤 ヨシ子* 前 田 敦子*
(平成16年3月15日受理)
ASt ud yo nPi c t u r eBo o ksa ndPa r e n 卜Ch i l dI n t e r a c t i o n s
Yo s hi koGOTO*
,At s ukoMAEDA*
(ReceivedMarch15,2004)
は じめに
父母 が子 どもに絵本 を読 み聞かせ (読 み語 り)る。読 み聞かせは単純 な作業 ではあ るが, 子 どもの心 にさまざまな影響 を与 える といえる。現代の親 と子 どもの間 にあたたかい会話 は,一 日の うちに, どれほ ど交 わ され るであ ろ うか。親子の心の交流 にはいろいろな方法 はあ る といえるが,子 どもに楽 しい話 を読 み聞かせ るこ とは, この世 の中で一番気持 ち よ くひび く音 ,それは母親 や父親 の声 であ ろ う。 それがた とえ,美声 でな くとも, どら声 で あ ろ う とも,心 おだやかな,その声 で楽 しい物語 を読 まれ るこ とは,子 どもに とっては気 持 ち よ く楽 しい瞬間であ ろ うと思 える。こうい う瞬間を,幼 い 日か ら何十 回 と繰 りかえ し, 繰 りかえ し読 み語 られ る絵本 か ら,楽 しさや感動 を うけ,また親子 の心の通 い合 う共有時 間 を もっ こ とは,子育 てにおいて,極 めて重要 な こ との中の一 つであ る といえ よう。
幼稚 園や保育所 におけ る集 団保育 では,保育 内容5領域 「言葉」 の領域 において,幼児 期 におけ る絵本や絵本の読 み きかせの大切 さが述 べ られている。幼児は,絵本や物語 な ど で見 た り,聞 いた りした内容 を 自分 の経験 と結 び つけなが ら,想像 した り,表現 した りす るこ とを楽 しむ とい う特徴 があ る。 そ して現実 には 自分の生活 してい る世界 しか知 らない 幼児 に とって,絵本 を読 み きかせ るこ とは①様 々な こ とを想像す る楽 しみ と出会 うこ とが で きる。②登場 人物 にな りきるこ とな どに よ り, 自分の未知 の世界 に出会 うこ とがで き, 想像上 の世界 に思 いを巡 らす こ とがで きろ。③ なぜ, どうして とい う不思議 さを感 じるこ とがで きる。④ わ くわ く, どきどきして驚 いた り,感動 した りす るこ とがで きる。⑤悲 し みや悔 しさな ど様 々な気持 ちに触 れ,他人の痛 みや思いを知 る機会 とな る。 この ように幼 児期 には絵本の世界 に浸 る体験 が大切 であ るこ とが明記 されてい る。
また保育所 の3歳未満児では,生後6ヵ月 か ら 1歳3ヶ月未満児 においては, この時期
*長崎大学教育学部家政教育
76 長 崎大学教育学部紀要 教科教育 No.43(2004)
に与 え られる絵本は,豊 かな応答的環境の一 つ として,興味や好奇心が芽生 える対象 とな るものであ る。そ して1歳3ヶ月か ら2歳未満児では,絵本は子 どもと保育士 との豊 かな 交流の一 つ として,子 どもは保育士 と一緒 に絵本 を見 なが ら,簡単な言葉 の繰 り返 しや模 倣 を した りして楽 しむ ようになる。 この様 な こ とか らも,集団保育 においては子 どもが極 めて幼い頃か ら身近 な ものの絵本が与 え られているこ とが分 かる。
ところで家庭での読 み聞かせは,子 どもに とっては 自分 ひ とりだけ親 を独 占 し,愛情 を ひ とり占めで きる瞬間であ る。 そ して 自分のペースに合わせて話 して もらえ, 自分の興味 のあ るこ とを中心 に見た り,読 んだ りす るこ とがで きる とい う利点がある。
現代 とい う時代は,何 かせかせか と追 いたて られているような時代であ る。 テ レビをみ る時間があ って も,ゆ とりがな く,忙 しい とい うような気特 でせ きたて られ る。不思議 な 時代であ る。一方子 どもの遊び内容は変容 し,ビデオ鑑賞やテ レビゲーム,フ ァミコンの 普及 に伴 って,子 どもたちの 「読書離れ」 がいわれ る。
本研究 においては,家庭 での絵本の読 み聞かせ (読 み語 り)に焦点 をあて,乳幼児を も つ保護者 に絵本q)読 み聞かせ について どの ように考 え, 日々子 どもと交流 しているか,ま た読 み聞かせを通 して子 どもに何 を伝 えたいか,考察 した。
研究方法
長 崎市 内の保育所 ,幼稚 園 に通 う乳幼児 (0歳〜 6歳) の保護者 283名 (男児147名 , 女児136名) を対象 に,絵本の読 み聞かせの必要性や家庭 での実施状況,絵本の選 び方 , 読 み聞 かせ を通 して子 どもに伝 えた い こ と等 ,質 問紙法 に よ り実施 した。実施時期 は, 平成15年8月か ら10月であ る。
結果
I.親子です る遊び ・ふれあいの中での 「絵本の読み聞かせ」の位置
乳幼児の子 どもたちは家庭 で親 と一緒 に どの ような遊び ・ふれあいを よ くしているか。
11項 目をあげ,多い順 に2つ選 んで もらった。 そ して 「絵本の読 み聞かせ」 は子 どもの遊 びの中で どの位置 にあ るかを調 べた (図1)0
回答 率 (%)
0
10 20 30 40 50テ レビ・ビデ オ テ レビゲー ム 歌 ・楽 器
ゲー ム ごっこ遊 び お しゃべり 絵 本 を読 む 桜 み 木 遊 び 絵 を描 く 外 で遊 ぶ
そ の他 無 回 答
1
l l
l
l
ll I
I
I i 三
図 1.親子の遊び ・ふれあい
男児の親子遊び ・ふれあいで最 も多 かった項 目は 「テ レビ ・ビデオをみ る」 と 「お しゃ べ りをす る」 が ともに42.2%であ った。3番 目は 「ごっこ遊び」 (34.0%),続 いて 「外 で 遊 ぶ」 (25.9%),「絵本 を読 む」 (20.4%)の順 であ った。
女児の親子遊 び ・ふれあいで最 も多か った項 目は 「お しゃべ りをす る」 (40.4%)だ っ た。2番 目は 「ごっこ遊びをす る」 と 「絵本 を読 む」 が ともに33.1%,続 いて 「テ レビ ・ ビデオを見 る」 (29.4%),.「絵 を措 く」(19.9%)の順 であ った。「絵本 を読む」は家庭 で の親子遊び ・ふれあいでは,男児は5位,そ して女児は 2位 に位置 していた。
親子遊び ・ふれあいの性差についてみると,殊 に男児の方 に多かった遊び ・ふれあいは,
「テ レビ ・ビデオを見 る」 (男児42.4%に対 し女児29.4%)や 「外で遊 ぶ」 (男児25.9%に 対 し女児15.4%)にみ られ 一方殊 に女児の方 に多 か った遊 び ・ふれあいは,「絵本 を読 む」 (女児33.1%に対 し男児20.4%)にみ られていた。
2.絵本の読 み聞かせの必要性
家庭 での絵本の読 み聞かせは 「必要 であ る」 と思 っている親 は,全体の97.9%と高 い割 合 を示 して いた。他方家庭 での読 み聞かせは 「必要 でない」と思 ってい る親 は1.4%,そ
して 「どち らで もない」 と思 う親は0.7%といずれ も少なかった。
そ こで絵本の読 み きかせは 「必要であ る」 と答 えた親 を対象 に,読み聞かせが必要であ る理 由を11項 目挙 げ,その中か ら2つ選んで もらった (図2)0
回答率 (%)
0 10 20 30 40 50 60 70
話 し言葉の発達を促し、豊かにしたい 形や数などの知識を豊かにしたい 道徳的価値観 (誠実 ・勇気 ・愛 ・正義 ・善など)を育みたい 美的感覚 ・情操を育みたい よりよい生活習慣 (着脱衣 ・食事 ・おかたづけなど)を身につけたい 子どもの想像力を豊かにしたい 子どもの興味 ・関心のあるものの知識を豊かにしたい 子どもに本を読む楽しさを味あわせたい 子どもとコミュニケーションをとりたい 子どもを寝かせつけるために最適だから その他
た
I
】
l l
図2.家庭での読み聞かせの必要性 (理 由)
家庭での絵本の読 み きかせが必要 な理 由 として,最 も多かった理 由は 「子 どもの想像力 を豊 かに したいか ら」 (57.8%)であ った。 次に 「子 どもに本 を読 む楽 しさを味 あわせた いか ら」(38.8%)であ り,続いて 「話 し言葉の発達 を促 し,豊 かに したいか ら」(22.0%),
「子 どもとの コミュニケーシ ョンを とりたいか ら」 (21.7%),「道徳的価値観 (誠実 ・愛 ・ 正義 ・善 な ど) を育みたいか ら」(18.8%)の順 に,上位5位 にあげ られていた。一方 , 理 由 として割合の少 ないのは,「形 や数 な どの知識 を豊 かに したいか ら」 と 「よ り良い生 活習慣 (着脱衣 ・食事 ・お片付 けな ど) を身 に付 けたいか ら」 は ともに (1.4%),また
「子 どもを寝 か しつけるために最適だか ら」 (0.7%)であ った。
78 長崎大学教育学部紀要 教科教育 No.43(2004) 3.家庭 での読み聞かせの実施状況
1)読 み聞かせの実施状況 について,「父母 ともしている」(47%)家庭 が最 も多か った。
次は 「母のみ している」(42.4%)であ り,「父のみ している」は0%であ った。
一方 ,家庭 で絵本の読 み きかせを していない家庭 は10.6%み られた。
2)絵本の読 み聞かせの回数。
週 に何回読 み聞かせを行 ってい るか,[父母 とも読 み聞かせ を してい る]場合 では,過 1‑ 2回 (35.5%)が最 も多いが,次に週7回以上 (24.4%),続いて週5‑ 6回 (17.7%), 週3‑ 4回は最 も少 なか った (2.6%)0[母のみ読 み聞かせを してい る]場合では,半数 近 い母親 が週 1‑ 2回 (48.7%)と答 えてお り,次 に週3‑ 4回 (21.2%)であ った。
一方回数の多い週5‑ 6回 と7回以上 は ともに15.0%であ った。読 み聞かせを 「父母 とも に している」家庭 の方 が 「母親のみ」 に比 し読み聞かせの回数は多い こ とが伺 える。
4.家庭 での読 み聞かせの開始時期
読 み聞かせは子 どもが何歳 の頃 か ら始 めてい るか。 [父母 とも読 み聞かせ を している]
場合の 「母親」では,最 も多かったのは 1歳未満 (45.4%)か らであ り,次いで 1歳〜 1歳 5ヵ月 (23.8%)であ った。約7割 (69.2%)が 1歳5ヵ月までに開始 してお り,そ して 2歳5ヵ月 までには86.9%が開始 していた。 [父母 とも読 み聞かせをに している]場合の
「父親」では,最 も多 かったのは 1歳未満 (33.3%),次いで 1歳〜 1歳5ヵ月 (23.7%) であ った。 1歳5ヵ月までに57%が開始 してお り,母親 よ りもやや少ないが,2歳5ヵ月 までには82.5%が開始 していた。 [母 のみ読 み聞かせ を している]場合では,最 も多 か っ たのは 1歳〜 1歳5ヵ月 (28.9%)であ り,次 いで 1歳未満 (27.2%)の順 であ った。
1歳 5ヵ月 までには56.1%が開始 してお り,2歳5ヵ月 までには80.7%が開始 していた (図3)0
00004321
(%)掛軸瓦
■父母ともにしている(父親)
□母親のみしている
. 鮎
■
緑
/ ,# 攣 , #
閥 / /♂ ♂浄㌔ 瀞♂ 瀞 浄
図3.家庭での読み聞かせの開始時期
5.家庭での読み聞かせの終了時期
読み聞かせは子 どもが何歳頃まで必要 と思っているか。「父母 とも読み聞かせをしてい る」場合の 「母親」の考 えは,「3歳 か ら6歳頃まで」 が28.3%と約3割 いた。 そ して
「8歳頃まで」では59.1%と約 6割に達 し,さらに 「10歳頃まで」には84.8%に達 してい た。「子 どもが必要 とするまで」いう答えは7.7%み られるが,
1
1歳以上 という考 えも7.7% み られた。[父母 とも読み聞かせをしている]場合の 「父親」の考 えは 「3歳か ら6歳頃まで」が 44.1%,「8歳頃まで」には71.1%に達 し,母親の考 えよりはやや早い終了時期の考 えが み られた。
[母のみ読み聞かせをしている]場合,母親は 「3歳か ら6歳頃まで」は34%と3割強 であった。「8歳頃まで」は61.7%と6割 に達 し,さ らに 「10歳頃まで」は81.3%に達 し ていた。父母 とも読み聞かせをしている家庭の母親の考 え とほぼ同じであることがわかる
(図4)0
0032(.Jo)掛紳亙
団父母ともにしている(母親)父親)
■父母ともにしている(
□母親のみしている
葦 …
長.
ん
RJ ん 長. A/ん ん K ,
ん/
‑/ =
‑‑/ ‑I ‑ I
‑ I̲
̲,二もこ)
・i.'!
図4.家庭での読み聞かせの終了時期
読み聞かせの終了時期は,子 どもの6歳 ・7歳頃まで必要 という考 え,または10歳ごろ まで必要 と考 える双峰の時期が示 されているといえる。
6.絵本の読み聞かせをしている時の子 どもの反応
絵本を読み聞かせをしているとき,子 どもが主にどのような反応を しているか,8項 目 か ら2つ選んで もらった (表1)0
80 長崎大学教育学部紀要 教科教育 No.43(2004)
表 1.読み聞かせを している時の子どもの反応 (2つ選択)
子 ど も の 反 応 父母 ともしている (母親) 父母 ともしている (父親) 母のみしている 黙 って絵本に見入 っている 87 (65.4) 74 (55.6) 74 (61.7) 絵本の文字や絵 を指差す 42 (31.6) 40 (30.1) 31(25.8)
絵本の文字や絵 について 「これ,なにと聞 く
? 」
74 (55.6) 58 (43.6) 64 (53.3)絵本の内容 に関連 して, 自分の身のまわりで起 きた ことを話す 32 (24.1) 24 (18.0) 38 (31.7) じっとしてい られず,立ち上がる 4 (3..0) 9 (6.8) 3 (2.5)
絵本の読み聞かせをする と笑 う .ず っこける 13 (9.8) 26 (19.5) 17 (14.2) 声 をあげる 1(0.8) 0(0.0) 2(1.7)
親 をみる 1(0.8) 4 (3.0) 3 (2.5)
[父母 とも読 み聞かせを している]場合の母親の答 えは,最 も多 かった(7)は
,
「黙 って絵本 に見入 っている」 (65.4%),次に 「絵本の文字や絵 について 「これ 何
? 」
と聞 く」(55.6%)であ った。続 いて 「絵本の文字や絵 を指差す」 (31.6%)
,
「絵本の内容 に関連 して, 自分の身のまわ りで起 きた ことを話す」 (24.1%),
「絵本の読み きかせをす る と笑 う ・ず っこける」 (9.8%)であった。他方少ない反応は 「じっ としてい られず,立ちあが る」 (3.0%),
「声 をあげる」及び 「親 を見 る」は ともに 1名 (0.8%)と少なかった。[父母 とも読み聞かせを している]場合の父親の答 えは,最 も多かった子 どもの反応は, 母親の場合 と同 じ く 「黙 って絵本に見入 っている」 (55.6%),次に 「絵本¢)文字や絵 につ いて 「これ 何
?
」と聞 く」(43.6%)であった。続いて 「絵本の文字や絵を指差す」(30.1%),「絵本の読み きかせをする と笑 う ・ず っこける」,(19.5%)
,
「絵本の内容 に関連 して, 自 分の身のまわ りで起 きた ことを話す」(18.0%)であった。他方反応の少ないのは 「じっ としてい られず,立 ちあがる」 (6.8%),
「親 を見 る」 (3.0%)は少な く,
「声 をあげる」は0%であった。
「母のみ読み聞かせを している」場合では,最 も多かった子 どもの反応は
,
「黙 って絵 本 に見入 っている」 (61.7%)であ り,次に 「絵本の文字や絵 について 「これ,何? 」
と 聞 く」 (53.3%)であ った。続 いて 「絵本の内容 に関連 して, 自分の身のまわ りで起 きた ことを話す」 (31.7%),
「絵本の文字や絵 を指差す」 (25.8%),
「絵本の読み きかせをする と笑 う ・ずっこけ (14.2%),一方,
「じっ としてい られず,立ち上 がる」及び 「親 を見 る」は ともに (2.5%)
,
「声 をあげる」は (1.7%)少なかった。いずれの場合 も子 どもの主な 反応は特 に上位2位は共通 してお り 「絵本に見入る」,
「文字や絵 について これ なに ?と 聞 く」。一方,
「立ち上がった りする」 ことは少ない ことがわかる。7.読み聞かせに使 う絵本の選び方
読み聞かせをする時, どの ような絵本を選ぶかを調べた。絵本の選び方 を13項 目挙げ,
当てはまるものを2つ選んで もらった (表2)0
表2.読み聞かせの絵本の選び方 (2つ選択)
選 び 方 父母 ともしている (母親) 父母 ともしている (父親) 母のみしている 子 どもが読みたい と思 う絵本 106 (79.7) 90 (67.7) 92 (76.7) 親が良い と思 う一絵本 29 (21.8) 29 (21.8) 24 (20.0) 話題 (売れている)にな っている絵本 1(0.8) 3 (2.3) 1(0.8)
人 (め られた絵本保育所 .幼稚園の先生な ど)か ら薦 ll(8.3) 5 (3.8) 12 (10.0) 専門家が 「良い絵本」 としている絵本 8 (6.0) 3 (2.3) 5 (4.2) 何を物語 ろうとしているかがわかる 4 (3.0) 12 (9.0) 4 (3.3) 登場人物が鮮やかに描 きわけ られている 1(0.8) 1(0.8) 1(0.8) 絵の色使 いが きれい 16 (12.0) 8 (6.0) 15 (12.5) 文字 と絵がマ ッチ している 1(0.8) 3 (2.3) 2 ( 1 .7 )
話 しの内容が良い 27 (20.3) 17 (12.8) 25 (20.8)
子 どもに適 した用語 と,親 しみやすい文
章である 32 (24.1) 30 (22.6) 28 (23.3) 絵が子 どもに親 しめる .10 (7.5) 19 (14.3) ll(9.2)
[父母 ともに読み聞かせを している]場合の 「母親」の考 え方では,最 も多かったのは,
「子 どもが読みたい と思 う絵本」 (79.7%)が8割 と高 くみ られ 次に 「子 どもに適 した 用語 と,親 しみやすい文章 であ る」 (24.1%)であ った。疲 いて 「親が良い と思 う絵本」
(21.8%),「話 の内容 が良い」 (20.3%)の順 であ った。一方考 え方 として少 ないのは
「専 門家 が良い絵本 としている絵本」 (6.0%),「何 を物語 ろ うとしているかが分 かる」
(3.0%)
,
「話題 にな っている (売れている)絵本」・
「文字 と絵がマ ッチ している」・
「登 場人物が鮮やかに描 き分け られている」はいずれ も少なかった (0.8%)0[父母 とも読み聞かせを している]場合,父親の考 え方で最 も多かったのは,母親同様 に 「子 どもが読みたい と思 う絵本」 (67.7%)であった。次に 「子 どもに適 した用語 と, 親 しみやすい文章である」 (22.6%),「親が良い と思 う絵本」 (21.8%)の順であった。一 方,考 え方 として少ないのは 「話題 になっている (売れている)絵本
十
「専門家が良い絵 本 としている絵本」・
「文字 と絵 がマ ッチ している」はいずれ も (2.3%),
「登場人物 が鮮 やかに描 き分け られている」 (0.8%)であった。[母のみ読み聞かせを している]場合,母親の考 え方で,最 も多かったのは 「子 どもが 読 みたい と思 う絵本」 (76.7%)が8割近 くみ られた。次いで 「子 どもに適 した用語 と, 親 しみやすい文章である」 (23.3%),続いて 「話の内容が良い」 (20.8%),「親が良い と 思 う絵本」 (20.0%),であった。一方,考 え方 として少ないのは 「専門家が良い絵本 とし ている絵本」 (4.2%),「何 を物語 ろうとしているかが分かる」 (3.3%),「文字 と絵がマ ッ
82 長崎大学教育学部紀要 教科教育 No.43(2004)
チ してい る
」
(1.7%),
「話題 にな って い る (売 れてい る)絵本」・
「登場人物 が鮮 や かに描 き分 け られてい る」 (0:8%)は少数 であ った。8.絵 本 の読 み聞 かせ に よって子 どもは絵 本 が好 きにな った か
絵本 の読 み聞 かせ を行 ってい る親 を対 象 に,子 どもが絵 本 を好 きにな ったかを尋 ねた。
「好 きにな った」 と答 えた親 は87.9%と高 い割合 がみ られた。「いい え」 は 1名 であ り,
「どち らで もな い」 とい う答 えは11.7%み られた。
9.家庭 で絵 本 の読 み聞 かせ を して いな い理 由
家庭 で読 み聞 かせは必要 であ る と思 って はい るが,実際読 み聞 かせ を していない と答 え た30家庭 (10.6%)について,その理 由を調 べた。理 由 として13項 目挙 げ ,当ては ま る も の2つ選 んで も らった。
母親 の理 由は 「自分 の仕事 が忙 し くて,なかなか時間が取 れない」 (60.0%)をあげてい た。 次 に 「子 どもが 自分 で絵本 を読 んでい る (見 てい る)」 (50.0%),続 いて 「下 の子 が生 れたので,なかなかかまってあげ る時間が取 れない」 (26.7%)が上位3位q)理 由であ った。
父親 の理 由 も,「自分 の仕事 が忙 し くて,な かなか時 間 が取 れない」 (75.0%)があげ ら れて お り,母親 よ りも多 く7割 を超 え る高 い割合 を示 して いた。 次 に 「子 どもが 自分 で絵 本 を読 んで (見 て い る)」 (27.8%)であ った。
続 いて 「自分 以外 の家族 (大人) が絵 本 の読 み 表3.絵本の読み聞かせを通して子どもに伝えたいこと きかせ をお こな ってい る」 (25.0%)であ った。
「無理 強 いは した くな いか ら」 とい う理 由は父 母 ともに 1割 ほ どみ られ て い るが,「下 の子 が 生 れたの で,な かなかかま ってあげ る時 間 が取 れない」 (5.6%)の理 由は母親 と比 し理 由 とし ては少 な い割合 を示 していた。
10.絵本 の読 み聞 かせ を通 して子 どもに伝 え たいこと
絵本 の読 み きかせ を通 して子 どもに伝 えた い こ とを 自由記述 して もらった (表 3)0
その結果 ,多 い順 に示 す と,「絵 本 の楽 しさを 伝 えた い」 (25.6%)
,
「想 像 力 が豊 か にな って ほ しい」 (25.0%),「豊 かな感性 を もった子 ど もにな って ほ しい」(18.1%),「道徳的価値観 (命 の大切 さ ・物事 の善悪 の判 断 ・正義感) を 持 って ほ しい」(16.9%),「親子 の コ ミュニ ケー シ ョン」
(10.0%),「優 しさを もった子 ど もに な ってほ しい」及 び 「思 いや りを もった子 ども にな って ほ しい」.(8.8%),「知識 を豊 かに して は しい」 (8.1%),「子 どもの頃 のあたた かい思 い出 (親 のぬ くも り ・安心感 ・家族愛 ) を残 し たい」 (6.9%),言語 能 力を高 めて ほ しい (6.3%)等 が述 べ られて いた。
(自由記述)
語 種 人数 (%)
絵 本 の楽 しさ 41(25.6) 想 像 力 40 (25.0) 豊 かな感性 29 (18.1) 道徳的価値観 27 (16.9) コ ミュニ ケー シ ョン 16 (10.0)
優 しさ 14 (8.8) 思 いや り 14 (8.8) 知識 13 (8̀1) あたたかい思 い出 ll(6.9) 言語 力 10 (6.3) 絵 本 の世 界 8 (5.0)
夢 .希望 6 (3.8)
興味 6 (3.8)
読 書習慣 5 (3.1)
生 きる力 4 (2.5)
言葉 の楽 しさ 4 (2.5) 絵 本 の美 しさ 3 (1.9) 表現 力 3 (1.9) 集 中力 2 (1.3) 思考 力 2( 1.3)
絵本好 き 1(0.6)
好奇心 1(0.6)
探 究心 1(0.6)
教訓 1(0.6)
人 の話 を聞 く態度 1(0.6) 自然 の不 思議 さ .偉 大 さ 1(0.6)
親 が絵本の読 み聞かせ を通 して子 どもに伝 えたい こ とは,「この ような子 どもにな って ほ しい」 とい う子 どもの成長への思いや期待が多 く述べ られている といえよう。
おわ りに
家庭での絵本の読み聞かせは必要であると思い,実際に読み聞かせを している家庭は9割 を超 える高 さであ った。しか も父母 ともに読 み聞かせを している家庭 が半数近 く(47.0%) み られてお り,父親 も子育ての一環 として読 み聞かせを している家庭 が思いのほか多い こ
とが分 か った。 しか し読 み聞 かせは必要 であ る と思 っていて も
,
「自分 の仕事 が忙 しいか ら」「第2子 の誕生で,なかなかかまってあげ るこ とがで きないか ら」な どの理 由で実施 で きていない家庭 も 1割はみ られていた。絵本の読 み聞かせを通 して,子 ども達へ伝 えたい ことを 自由記述 して もらった。親の思 いを見てみ る と 「この ような子 どもにな ってほ しい」とい う親の願 いや期待が多 く見 られ た。最 も多 かったのは 「絵本の楽 しさを伝 えたい」で,楽 しさを知 ることで絵本が好 きに な って,習慣化 す るこ とを願 う親 は多 か った。 また,「想像力豊 かな子 どもにな ってほ し い」 とい う答 えも 「絵本の楽 しさを伝 えたい」 と大差な く多か った。これ らの上位2位は, 絵本の読み きかせが必要 であ る理 由を尋 ねた時の回答 と同 じであ り,絵本が子 どもの想像 力を豊 かにす るもの,読書の楽 しさを伝 えるものであ る と考 える親 は多い。絵本の世界 を 想像す るこ とは子 どもに とって楽 しい経験 であ り,想像す る楽 しさは絵本の楽 しさの 1つ であ るので, この2つの回答は密接 な関係であ る と考 え られ る。少数 ではあ ったが,「子 どもの頃のあたたかい思い出を残 したい」 と記述 している親 もみ られ,印象 に残 った。あ たたかい思い出 とは,親のぬ くもりであ った り,安心感,家族愛であ った りと詳 し く記述 している親 もいた。
特 に乳児は,母親 に抱 かれ,愛 され ることに よって人を信 じる とい う基本的信頼感 を育 んでい く。乳児期の親 (養育者) との触れ合 いは,その後の子 どもの成長 に欠 かせない も のである。乳児期 に子 どもを膝 の上 に乗せて同 じ時間を共有 し, くつろいだ気持ちで読 み 語 るこ とは,子 どもに とって も心楽 し く気持 ち よい瞬間であ ろ う。「子 どもの頃のあたた かい思い出を残 したい」 と述べ られた親は, きっ と乳幼児期 におけ る親子 との触れ合いを 重視 し, コミュニケーシ ョンの一 つ と‑して絵本の読 み きかせを しているように思 える. さ らに言葉の発達 が著 しい乳幼児期 に,子 どもが充実 した言語生活を送 るためには,家族や 友達 な どの周囲の人 々 との会話や触れ合 い,子 どもの物事 に対す る興味や関心,色 々な経 験 が必要である。絵の発す る言葉 を視覚で受け取 るこ とで絵本の世界 を楽 しむ ことがで き, 乳幼児の言語生活 において も大事 な経験 であ る と考 える。幼い幼 い 日か ら,親の読み聞か せが もた らすであろう感動 との出会 いが,読書の習慣形成や親子間の心の交流 に とって も,
日々の子育ての重要 な ものの中の一 つ として大事 に とらえてい きたい と考 える。
文 献
1.椋 鳩十 :童話 と子育て論 教育 と医学 27巻1号,41‑46,1979.
2.派木井や よい :読み聞かせのすすめ一子 どもと本の出会いのために‑ 国土社 1994.
3.全国保育団体連絡会編 :絵本 ・紙芝居 ・お話 ・劇 草土文化 1989.
4.伊藤 淳一 :現代の子 どもたち と 「昔ばな し」小児保健研究,61巻 1号,28‑33,2002.