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会 計 情 報 シス テ ム とク ラウ ド コンピューティングに関する一考察

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研究 ノー ト

会 計 情 報 シス テ ム とク ラウ ド コンピューティングに関する一考察

荒 井 義 則

キ ー ワー ド :クラウ ドコンピューティング 会計情報 システム

1 . はじめに

最近 クラウ ドコンピューテ ィングが注 目を集 めている。各企業が独 自に情報システムを所有 す るとい う旧来の概念 を根本的に変 える可能性 があ り、企業の情報 システムに与える影響 も大 きい。政府や地方公共団体にも広が りつつあ り、

その影響 は企業だけに とどま らない。

本稿では、クラウ ドコンピューテ ィングが会 計情報 システムに与 える影響 を考察す る。

そのためまず、クラウ ドコンピューテ ィング の新たな定義 を提 出す る。その定義 に基づき、

現時点での (イ ンターネ ッ トを使用す る)クラ ウ ドコンピューテ ィングと将来構築 され ると思 われ るNGNさ らには新世代ネ ッ トワー クを使 用するクラウ ドコンピューテ ィングを考察す る。

さらに 「境界があいまいな複合的複雑適応系」 を定義 し、この概念を用いてクラウ ドコンピュー テ ィングを使用 した会計情報 システムを解析す

る。

2.

クラウ ドコンピューティング‑5)

「クラウ ドコンピューテ ィング」 とい う概念 は微妙 に異なる意味合いで使用 され ることが多 く、現時点で確定 した唯一の定義があるわけで はない。

『平成21年度情報通信 白書』の 「用語解説」 (290頁)では

データサー ビスやイ ンターネ ッ ト技術 等が、ネ ッ トワーク上にあるサーバ群 (クラウ ド (雲))にあ り、ユーザーは 今までのよ うに 自分のコンピュータで デー タを加 工 ・保 存す るこ とな く、

「どこか らで も、必要 な ときに、必要 なだけ」利用す ることができる新 しい コンピュー タ ・ネ ッ トワークの利用形 態

と定義 してい る。 また、『クラウ ドコンピュー ティング時代のデータセ ンター活性化策に関す る検討会報告書 (総務省

)

』 の 「資料1‑2検討 の背景」では

クラウ ドコンピューティングとは、全 世界 に広がったイ ンターネ ッ トに極め て多数のサーバがつながっていること か ら、サー ビスを提供す るサーバが ど こに存在 しているのかを利用者が把握 できな くなってきている中、イ ンター ネ ッ ト及びそこにつながっているサー バ全体 を 「雲に見立て、 「雲」その ものを手元にあるコンピュータのよ う に利用 しよ う、 とい う考 え方のこと。

したがって、特定の技術、特定の ビジ ネスモデル等を指 し示す概念ではなく、

「通信 の相手方 を意識 しない」 とい う 現象 を表 している。

会計情報システムとクラウドコンピューティングに関する一考察 171

(2)

と説明 し、その特徴 として

(1)クラウ ドコンピューティング化 されたサー ビスにおいては、利用者 はサー ビスを提 供す る 「サーバ」の存在 を意識す る必要 がない。

(2)利用者 とクラウ ドコンピューテ ィングの 接点 となる 「WebBrowser」において、

「サーバ の指定」と 「検索」 の操作方法 が 同一 にな りつつ あ り、今後利 用者 が

「サーバ を意識 しない」傾 向は よ りいっ そ う顕著 になるもの と思われ る。

(3) したがって、 「誰 が提供す るサー ビスを 利用 してい るのか」 「どこにあるサーバ を用いて提供 され るサー ビスを利用 して いるのか」 とい う利用者 の意識が希薄に なる。

をあげ、クラウ ドコンピューテ ィング化の進展 によ り

利用者が、サー ビスが提供 されている 場所 を意識 しない

利用者 が、サー ビス提供者 との権利義 務 関係 を意識 しない

とい う傾 向が顕著になると考 え られ ると述べて いる。

さらに、 「拡張性」 を考慮 した定義 も提唱 さ れている。城 田は注1) (15頁)において

「クラウ ドコンピューティング」 とは、

拡張性 に優れ、抽象化 された巨大なIT リソースを、インターネ ッ トを通 じて サー ビス として提供 (利用)す るとい

うコンピュータの形態である.

と定義 し、定義の中にある 「高度 な拡張性」 と

「抽象化 され た コンピュー タ ・リソース」が 2 172 国際経 営論集 No.38 2009

つの大きな特徴であると述べている。また、定 義 中の 「サー ビス として」 とは利用者 は使用 し た リソース分だけの料金 をサー ビス ・プロバイ ダに支払 えばよい とい うことであるとも述べて いる。

これ らの定義 も含 めて、クラウ ドコンピュー テ ィングの定義に共通 しているものは 「多数の サーバや 巨大なデータセ ンターを備 えたサー ビ ス提供者お よびそのサー ビス提供者 を利用 した 2次的なサー ビス提供者 の存在 を前提 に、IT資 源 が必要な利用者が従来のよ うにIT資源 を購入 す るのではな く、ネ ッ トワークを通 じて必要な IT資源 を利用 し、利用 した分の料金 を支払 うと い うIT資漁 の購入 ・所有か ら利用‑の転換」で ある。すなわち、

クラウ ドコンピューテ ィングの本質は

IT資源 の所有か ら利用‑の転換

である。 この考 え方 をもとに本稿では 「クラウ ドコンピューテ ィング」を

IT資源 の所有か ら利用‑の転換 とそれ によ り派生す る現象

と定義す る。 この定義では

サーバの存在 を利用者 は意識 しない

とい う条件は考 えていない。会計情報や個人情 報 な どの重要な情報は保存場所 を明確 に把握 し てお く必要があ り、クラウ ドコンピューテ ィン グを通 じて保存す る場合 にも保存す る場所 を明 確 に把握す る必要があるか らである。 ただ し、

現時点では安全性や法制面 を考慮す ると、会計 情報や個人情報 な どの重要な情報 をクラウ ドコ ンピューテ ィングを通 じて保存す るのは時期 尚 早である。安全面での強化 と法制面での整備が な された後に実施すべ きである。

しか しなが ら、クラウ ドコンピューテ ィング の利用はIT資源 の投資額や情報システム部門の

(3)

費用 を大幅 に低減 できるので、企業 もコス トダ ウン とい う面 を考 える と無視 はできないシステ ムである。

なお、代表的なクラ ウ ドコンピューテ ィング の形態 には

(∋saas

②HaaS

③paas

がある。 SaaSはSoftwareasaServiceの略で、

アプ リケー シ ョン ・ソフ トをイ ンターネ ッ ト上 で提供す る形態である。HaaSはHardwareasa SeⅣiceの略で、サーバ のCPU能力や ス トレー ジをイ ンターネ ッ ト上で提供す る形態である。

PaaSはPlatfbrm asaSeⅣiceの略で、プラ ッ ト フォーム機 能 をイ ンターネ ッ ト上で提供す る形 態である。本稿 では

④xaas

をクラウ ドコンピューテ ィングの形態 とす る。

ここでXは

X‑ネ ッ トワー クで与 え られ るものすべて

である。XにはIT資源だけでな くアプ リケーシ ョ ン、ハー ドウェア、プ ラッ トフォー ムだけでな く経営指導 な ども含 まれ る。イ ンターネ ッ トと せず ネ ッ トワー ク と した のは、NGNや新 世代 ネ ッ トワー クを念頭 においてい るか らである。

安全性 な どを考慮す ると、 これ らのネ ッ トワー クによ りクラ ウ ドコンピューテ ィングは大いな る進化 を遂 げる と考 え られ る。イ ンターネ ッ ト と比較す ると、安全性 が格段 と高 くな り会計情 報や個人情報の保存 も可能 とな りうるか らであ

る。

3. 会計情報システムとクラウドコンピュー ティング

ここではクラウ ドコンピューテ ィングを用い た会計情報 システムを考察す る。会計情報 シス テム としては大企業で用い られてい る業務統合 型会計情報 システムを対象 とす る。以前投稿 し た論文6ト 7)においては、会計情報システムをジ ョ ン ・ホラン ドの複雑適応系の観点か ら考察 した が、本稿 では新 たに 「複合的複雑適応系」なる 概念 を導入 し、クラウ ドコンピューテ ィングを 用いた会計情報 システムを解析す る。

最初 に、 「複合 的複雑適応 系」 とい う概念 を 説 明す る。 ジ ョン ・ホラン ドの複雑適応系は

①集合的特性

②非線形性

③流れ

④多様性

⑤標識化

⑥ 内部モデル

⑦積木

とい う特徴 を持つエージェン トの集合体であっ た8). これ らの集合体 は標識 の も と一体 となっ て 目標 を達成す る。 しか しなが らクラウ ドコン ピューテ ィングを用いた会計情報 システムは 目 標 の異なる 2つない し3つのグループか ら構成

され る。一つ 目は企業そのものである。企業活 動 を通 じて事業 を成功 させ 目標利益 を達成す る ことを 目的 としてい る。二つ 目はクラウ ドコン ピューテ ィングを行 うサー ビス提供者 である。

サー ビス提供者 の 目的は企業 にサー ビスを提供 して 目標利益 を得 ることであ り、提供先 の企業 の 目標達成 を第一 目的 としているわけではない。

3つ 目は消費者 である。Web2.0以来、集合知 が 無視できな くな り、会計情報 システムも消費者 の意見 を集約す る必要 に迫 られてい るが9)、消 費者 は企業の利益のため参加す るわけではない。

これ ら3つの 目的の異なるグループ (場合 によっ ては消費者 を除 く2つ)が集合体 をな し一体 と 会計情報システムとクラウドコンピューティングに関する一考察 173

(4)

なって活動 しそれぞれ の 目的 を達成す る。す な わち、ジ ョン ・ホラン ドの複雑適応系が複数集 ま り、互いに異 なった 目的 を持 ちなが ら、共同 してそれぞれ の 目的 を達成す る とい う新 たな集 合体が現れ る。 この集合体 を 「複合的複雑適応 系」 と呼ぶ ことにす る。 この複合 的複雑適応系 もジ ョン ・ホラン ドの複雑適応 系の特徴① か ら

⑦ を持つ。標識化 、内部モデル 、積木 について は各 グループが固有 の ものを持つが、各 グルー プを協働 させるための機能は主 として企業が持つ。

また、サー ビス提供者 と提供 され る資源 お よ び消費者 は一時的に企業の会計情報 システムに 参加す るので、かつての よ うな企業が所有す る IT資源 で企業 に属す る人 間のみが関与す る会計 情報 システム (完全 に企業が所有す る) とは異 な り、時間的に範 囲が変化す る 「境界があいま いな複合 的複雑適応 系 (会計情報 システ ム)」

となってい る。

次 に、 クラウ ドコンピューテ ィングを用いた 会計情報 システムを考 える。

現時点では、安全性や法制面で、会計情報や 個人情報などの重要な情報をクラウ ドコンピュー テ ィングを用いて加 工 ・保存す るのは適切 では ない。比較的重要性 の低い もの、企業の中核 に はならないものを中心に徐々にクラウ ドコンピュー テ ィングに移行 してい き、 コス トダ ウンを図 る べ きである。 この場合 は、現在 の会計情報 シス テム と大差がない と思われ る。

これ に対 して、NGNさ らには新 世代 ネ ッ ト ワー クが将来主要 なネ ッ トワー ク として登場 し た場合、 これ らのネ ッ トワー クを用いたクラ ウ ドコンピューテ ィングは安全性 ・信頼性 におい て格段 に進歩 してい るので、会計情報 な どの重 要な情報 も (保存す る場所 は明確 に した上で) 保存す ることが可能 となる。 サー ビス提供企業 は一般 の企業 に比べてITに関 しては非常に優れ た技術 を有 してい るので、一般 の企業が管理す るよ りもはるかに安全 であ り、情報 システムに 投入 していた人 と資金 を中核業務 に投入できる。

情報 システムのハー ド ・ソフ ト両面お よび人 的資源 (ITの運用管理要員)をクラウドコンビュ‑

174国際経営論集 No.38 2009

テ ィングでまかな うことになるので、複雑適応 系 としてはます範囲があいまいになる。 また、

サー ビス提供者 、企業、消費者 の3グループの 協働 も必要 となるので、複合的複雑適応系に も なってい る。 したが って、 「境界 のあいまい さ がかな り強い複合的複雑適応系」 を形成 してい

る。

4.

おわ りに

本稿 ではクラウ ドコンピューテ ィングを用い た会計情報 システムを考察の対象 とした。 とく に 「境界があいまいな複合的複雑適応系」 とい う概念 を提 出 し、 この概念 を用いて解析 した。

「クラウ ドコンピューテ ィング」は 「所有」

か ら 「利用」‑の転換 を図 る概念であるか ら、

企業 に与 える影響 は会計情報 システムだけに と どま らず、かな り広範 囲に及ぶであろ う。実際 に変化が起 きるのはこれか らであ り、今後 もク ラウ ドコンピューテ ィングに注 目してい く必要 がある。

1)城 田真琴 (2009)『クラウ ドの衝撃』東洋経 済新報社。

2) 小池 良次 (2009)『クラ ウ ド』 イ ンプ レス R&D。

3)日経BP社 出版局編 『クラウ ド大全』 日経BP 社。

4)ェ リック ・松永 『クラウ ドコンピューティン グの幻想』技術評論社。

5)西田宗千住 『クラウ ドコンピューティング』

(朝 日新書)朝 日新聞社。

6)拙稿 (2000)「会計情報 システム と複雑適応 系に関す る一考察『神奈川大学経営学部国 際経営論集』第19号、75頁。

7)拙稿 (2000)「複雑適応系 としての会計情報 システム『神奈川大学経営学部国際経営論 集』第20号、113頁。

8)JohnH.Holland(1992)HiddenOrder,Addison

Wesley.

9)拙稿 (2008)「会計情報システム とweb2.0に 関す る一考察Ⅱ『神奈川大学経営学部国際 経営論集』第35、77頁。

参照

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