実 践 紹 介
61 1.授業概要
総合科目群の漢字授業では,同レベル複数クラスが既定の共通シラバスで授業を進め る。筆者が担当した「漢字
4」では,『 INTERMEDIATE KANJI BOOK
〜漢字1000 PLUS
〜VOL. 1
改訂第3
版』の1
課から5
課までを学習する。アウトプット学習は,教科書内に ある練習問題の他に,各課の学習漢字を使った活動の提出課題があり,学生には1
人1
冊 ずつ「活動冊子」が配布される。内容は「語彙マップ」と「短作文」の2
種類である。2.活動の内容
2-1.各クラス共通課題の活動
ここでは「語彙マップ」について紹介する。「語彙マップ」とは,各課
20
字程度の学習 漢字の中から自分で1
字選び,マインドマップの要領で,その漢字から様々な語彙を派生 させて書いていく活動である(図1
参照)。筆者のクラスでは,作成時間を授業内に取ら ず宿題とし,返却時のフィードバック(以下FB
)に重点を置いた。グループワークでお 互いに自分のマップの説明と相手へのFB
をした後,提出時に教師が予めピックアップし ておいた独創性のあるマップをPPT
で全体共有した。例えば,同じ音記号や同じ形の部 分を持つ漢字でつなげてあるもの,反意語を取り入れたものなど,授業で学習した内容を 絡めたアイデアで書かれたものを,漢字の特徴を理解して表現している好例として全体共 有した。意味の面では,趣味や専攻など,書いた本人の好みや背景が色濃く反映さ れた語彙が連なるものを積極的に取り上げ た。このようなマップは独創性に優れるだ けでなく,語彙数も多く書かれる傾向にあ る。本人が作業を楽しむ様子が窺われ,学 習効果も高いと思われる。
早稲田日本語教育実践研究 第 8 号
漢字学習を主体的にする教室活動
―教室外での自律学習のために―
山下 恵美子
科目名:漢字 4
レベル:初級 1・2 /中級 3・ 4 ・5 /上級 6・7・8 履修者数:22 名
図 1 「活動冊子」の語彙マップ作成例
早稲田日本語教育実践研究 第 8 号/ 2020 / 61―62
62 2-2.授業内での独自の活動
筆者のクラスでは,スマホやパソコンを用いる活動も随時行った。例えば,同音の接尾 辞が付く語(5課),同音異義語(5課)を検索してグループ化する活動や,長い漢字熟語
(3課),漢語の形容詞性と名詞性(4課)を調べる活動などを行った。活動は
3
〜4
人の グループで行い,答えを板書発表で全体共有した。活動のねらいは,普段使っているスマ ホのアプリや学習サイトを共有し,お互いの学習法を学び合うことにある。思い込みによ る誤字を他者の目で修正できるのもグループ活動の良さである。活動時の教師の指導は,語彙の意味を文脈で理解することを促すことである。多くの学生は調べる際に,語彙とそ の語訳だけを知ろうとする傾向にある。しかし,文章の中で漢字を見て,正しい意味と使 い方で覚えることの重要性を学習者自身が認識し,習慣化することが大切である。
学生にとって身近で手軽な
IT
ツールを使った活動は,楽しみながら作業が進み,効率 も良かったと感じる。また,活動中には普段より積極的に質問が出たのも良かった点だ。学生は板書発表時に正答が書けることを気にしがちで,それが活動中の質問につながるの だが,質問によって正答へのプロセスを教師とともに考えることができる。この活動の本 来の目的は,そのプロセスにある。求める答えをどうやって導き出すかを,教師や仲間と ともに授業内で考え,それを自身のものとして体得していくための活動である。
3.まとめと今後の課題
課題に対する教師からの個別
FB
は,ピンポイント指導には適するが,別の視点からの 気づきを促すことには限界もある。他者のアイデアや成果物から様々な学習方法を学ぶこ とで自己の学習内容の幅を広げ,自分に合った学習方法を見つけていく。その手助けとし て教室活動は有効であると考える。ただ,教室空間と時間の制約からグループメンバーが 固定化してしまいがちなため,いかに効率的に全体共有をしていくかは課題でもある。
IT
ツールの発達,普及により,直接文字を書くことは減ってはいるが,正しい変換を するためには,豊かな漢字知識が必要である。だからこそ,その身近にある便利なツール を利用して,随時,即時,調べる習慣をつけ,少しの学習を気負わず繰り返すことで日常 的に語彙力を高めていくのも,実用的な漢字自律学習方法の一つではないかと考える。参考文献
加納千恵子・清水百合・竹中弘子・石井恵理子・阿久津智(2014)『
INTERMEDIATE KANJI BOOK
〜漢字1000PLUS
〜VOL.
1 改訂第3版』凡人社川口義一(2016)『もう教科書は怖くない
!!
日本語教師のための初級文法・文型 完全「文脈 化」・「個人化」アイディアブック第1巻』ココ出版(やました えみこ,早稲田大学日本語教育研究センター)