一次変換 (2020 年 4 月 28 日 )
作成日: April 26, 2020 Updated : April 26, 2020 実施日: April 28, 2020
問題
1. (
ウォーミングアップ)
次の行列計算を行え.
1 2 3 1 3 4 2 3 8
12 − 7 − 1
0 2 − 1
− 3 1 1
定義
1. U , V
を( R
上の)
線形空間とする(
つまりU
とV
には各々和とスカラー倍が 定義されているとする).U
からV
への写像f : U → V
が線形写像であるとは,次の2
つの条件を満たしているときをいう:任意の
⃗a, ⃗b ∈ U
に対してf ( ⃗a +⃗b) = f ( ⃗a) + f ( ⃗b),
任意の⃗a ∈ U
とλ ∈ R
に対してf (λ ⃗a) = λ f (⃗a).
V = U
のとき,
すなわち, f
がU
からU
自身への線形写像であるとき, f
をU
の線形変換
(一次変換)
ともいう. (C
上の場合も同様.)以後,
U = V = R n
とする.
標準基底に関して線形写像f
をn × n
行列A
として表現する ことができる.
このとき線形写像f
をA
により定まる一次変換という.たとえば
n = 2
のとき,
実数係数2 × 2
行列A = (
a b c d
)
に対して,以下のように一次 変換が定まる:
⃗ v = (
x y
)
7→ A ⃗ v = (
a b c d
) ( x y
)
= (
ax + by cx + dy
) .
この変換において
,
行列式det A
は「面積の変化率」を表す.
定義
2.
写像f : U → V
が与えられたとき,
• U
の部分集合C
に対して,f (C) := { v ∈ V | f (u) = v, u ∈ C ⊆ U }
を,f
に よるC
の像という.
特に, f (U)
のことを単に写像f
の像という.
• V
の部分集合D
に対して, f − 1 (D) := { u ∈ U | f (u) = v, v ∈ D ⊆ V }
を, f
によるD
の原像という.像とは写像によって部分集合
C
が写る先の集合のことであり,原像とは部分集合D
へ 写るような点全体の集合のことである. A
による一次変換による像,原像を求めることで 線形写像に対する視覚的なイメージを持つことができる.なお,原像
f −1 (D)
は逆写像(
逆関数)
とは異なる概念である.
: : A 327 E-mail:[email protected] 2
次元平面での一次変換例題
1.
行列A = (
1 2 2 − 1
)
で表される一次変換を考える.
(1) ⃗ e 1 = (
1 0
) , ⃗ e 2 =
( 0 1
)
の
A
による一次変換で写った先の点を求め,
図示せよ.
(2) e ⃗ 1 + e ⃗ 2 = (
1 1
)
の
A
による一次変換で写った先の点を求め,
図示せよ.
また一 般に( x y
)
はどこへ写るか考えよ.
(3) ⃗ e 1 , ⃗ e 2
で張られる平行四辺形の面積を求めよ.
またA⃗ e 1 , A⃗ e 2
で張られる平行 四辺形の面積を求めよ.
さらにdet A
を求めよ.
(4)
直線l : x + y = 1
がA
による一次変換によって写った先の図形L
の方程式 を求めよ.
(5) A
による一次変換によって曲線C : 3x 2 − 8xy − 3y 2 + 25 = 0
へ写る図形H
の方程式を求めよ.
【解答】
(1) A⃗ e 1 = (
1 2 2 − 1
) ( 1 0
)
= (
1 2
)
, A⃗ e 2 = (
1 2 2 − 1
) ( 0 1
)
= (
2
− 1 )
.
(2) A(⃗ e 1 +⃗ e 2 ) = A⃗ e 1 + A⃗ e 2 = (
1 2
) +
( 2
− 1 )
= (
3 1
)
. A(x⃗ e 1 + y⃗ e 2 ) = x (
1 2
) + y
( 2
− 1 )
.
O ⃗ e 1
⃗ e 2 ⃗ e 1 + ⃗ e 2 A⃗ e 1
A⃗ e 2
A⃗ e 1 + A⃗ e 2
[
コメント] n × n
行列A
が具体的に与えられたとき, (
標準的)
単位ベクトル⃗ e 1 , ⃗ e 2 , · · · , ⃗ e n
の像は, それぞれA
の第1, 2, · · · , n
列に等しい. 逆にA
が分からないときは, 単位 ベクトル⃗ e 1 , ⃗ e 2 , · · · , ⃗ e n
の写る先を求めれば,
その情報からA
がすぐに求まることが 分かる.
(3) ⃗ e 1 , ⃗ e 2
で張られる平行四辺形の面積: 1. A⃗ e 1 , A⃗ e 2
で張られる平行四辺形の面積: 5.
det A = − 5.
[コメント]
写る前の面積と写った後の面積比は| det A |
であり, detA
の符号は正なら同じ向き
,
負なら反対向きを表す.
(4)
まずは素朴にベクトル表示の式から写る先を求めてみる.
直線l
のベクトル表示は(
x y
)
= (
0 1
) + t
( 1
− 1 )
, t ∈ R
と表される. よって,この点の
A
による一次変換によって写る先(X, Y )
は(
X Y
)
= A (
x y
)
= A (
0 1
) + tA
( 1
− 1 )
= (
2
− 1 )
+ t ( − 1
3 )
であり
, 3X + Y − 5 = 0
を満たす.
よって,
求める図形L
は直線であり,
その方程 式は3x + y − 5 = 0 · · · (
答).
[
別解]
軌跡と領域を求める問題の常道で解いてみる.
直線l
上の点(x, y)
の写った先を(X, Y )
とおくと,
( X Y
)
= A (
x y
)
よって
, (
x y
)
= A − 1 (
X Y
)
= 1 5
( 1 2 2 − 1
) ( X Y
)
= 1 5
(
X + 2Y 2X − Y
) .
これが直線l
上にあるので1
5 (X + 2Y ) + 1
5 (2X − Y ) = 1
すなわち3X + Y − 5 = 0.
したがって求める図形
L
は直線であり,
その方程式は, 3x + y − 5 = 0 · · · (
答).
[
コメント]
こちらの解法の方が一般に応用範囲が広く強力である. (5)
点(x, y)
のA
による一次変換によって写る先を(X, Y )
とおくと,
( X Y
)
= A (
x y
)
= (
x + 2y 2x − y
) .
今
, (X, Y )
が曲線C
上にあるとすると, 3X 2 − 8XY − 3Y 2 + 25 = 0
より,
3(x + 2y) 2 − 8(x + 2y)(2x − y) − 3(2x − y) 2 + 25 = 0
すなわちx 2 − y 2 = 1.
したがって求める図形
H
は双曲線であり, その方程式は,x 2 − y 2 = 1 · · · (答).
問題
2. (
一次変換の像・原像)
行列A = (
1 1 0 1
)
で表される一次変換について以下の問 いに答えよ.
(1)
直線l : 2x + y − 3 = 0
の像の方程式を求めよ.
(2)
曲線C : (x 2 − 2xy + 2y 2 ) 2 = x 2 − 2xy
の原像の方程式を求めよ.
: : A 327 E-mail:[email protected]
問題3. (
一次変換の決定:
相似回転) 2
次元平面を考える.
(1)
点(1, 0)
を点(1, 3)
に写し,
点(0, 1)
を点(2, 4)
に写す一次変換の行列A
を求めよ. (2)
角度θ
の回転を表す一次変換の行列A
を求めよ. (
ヒント:
単位ベクトル⃗ e 1 , ⃗ e 2
がどこに写るかを考察すればよい
.) (3)
行列A =
( 1 − 1 1 1
)
で表される一次変換はどのような変換か
? (4) (3)
のA
による一次変換による楕円C : x 2
4 + y 2 = 1
の像の方程式を求めよ. また その概形を図示せよ.
例題
1 (4)
別解で使った方法ではできない場合がある. それを次の問題で考えてみよう
.
問題
4. (
一次変換の像・原像:
正則行列でない場合)
行列A = (
1 2 2 4
)
で表される一次 変換について
,
以下の問いに答えよ.
(1) det A
を求めよ. (2) A
( x y
)
= (
0 0
)
の解を求めよ
(原点の原像の方程式を求めよ).
(3) R 2
の像の方程式を求めよ.
(4)
直線l : x + y = 1
の像の方程式を求めよ. (5)
直線L : x + 2y = 1
の像の方程式を求めよ.
(6)
円C : x 2 + y 2 = 4
の像の方程式(
あるいは不等式)
を求めよ.
上の問題でみたように
,
一般には,
直線(
平面)
は直線(
平面)
上に写るが,
直線(
平 面)
全体に写るとは限らない(
直線が点に,
平面が直線や点に,
など).
本当は例題1
& 問題2,3
においても調べる必要があったのだが,
実はA
が正則な場合はこのような ことが起こらないので特に述べていなかった.
正則でない場合は特に注意すること.
3
次元空間での一次変換問題
5. (
一次変換の像・原像:
正則行列の場合)
行列A =
1 2 3 1 3 4 2 3 8
で表される一次変換について以下の問いに答えよ
. (1) det A
を求めよ.
(2)
直線l : x − 1
2 = y + 1 = − z
をベクトル表示し,
像の方程式を求めよ. (3)
平面π 1 : y + z = 1
の像の方程式を求めよ.
(4)
平面π 2 : x + y − z = 1
の原像の方程式を求めよ.
問題
6. (一次変換の像・原像:
正則行列でない場合) 行列A =
1 2 3 1 3 4 2 3 5
で表される一次変換について
,
以下の問いに答えよ. (1) det A
を求めよ.
(2)
原点の原像の方程式を求めよ. (3) R 3
の像の方程式を求めよ.
(4)
球面S : x 2 + y 2 + z 2 = 4
の像の方程式(あるいは不等式)
を求めよ.問題
7. (
一次変換の線形性) 2
次元平面上に原点O
を重心とする三角形PQR
がある.
行 列A
による一次変換がP
をQ
に, Q
をP
に写すとき,
この一次変換は直線OR
上の点をす べてそれ自身に写すことを証明せよ.
今週の宿題
(
提出期限は5
月11
日(
月) 24
時です(
時間厳守!))
:詳細は略解プリント参照 問題8.
行列A =
− 3 2 2
− 2 2 1 2 − 1 − 1
で表される一次変換について以下の問いに答えよ.
(1) det A
を求めよ. (2)
直線l : x − 1 = y + 2
− 2 = z − 3
2
の像の方程式を求めよ. (3)
平面π : 5x + y + 2z = 0
の原像の方程式を求めよ.問題
9.
以下の問いに答えよ. ((1)
と(2)
は独立した問題です.)
(1)
ある青年が,
曽祖父の遺品の中から,
宝物を埋めてある場所を書いた紙片を見つけ た:「広大な草原に桜の木と梅の木と松の木が一本ずつさびしく立っている.
松から 桜に向かって歩数を数えながら歩け.
桜の木に着いたら右へ90
度向きを変え,
さら に同じ歩数だけ歩け.
そしてそこに棒A
を立てよ.
また,
松から梅に向かって歩数 数えながら歩け.
梅の木に着いたら左へ90
度向きを変え,
さらに同じ歩数だけ歩け.
そしてそこに棒B
を立てよ. 2
本の棒の中点に宝が埋めてある.
」青年が草原に来てみると, 松の木は松食い虫に枯らされたか, 跡形もなかった. 青年 は宝探しをあきらめた
.
この青年に代わって宝のありかをつきとめよ.
(
ヒント:例えば桜を起点として,
桜松 を用いずに
−→
桜梅 を用いて−→
桜宝 を表す−→ ,
を目 標としてみよう. まず, 桜を起点とした梅, 松の位置べクトルをそれぞれ⃗ u, ⃗ m
とし,90
度回転を表す一次変換の行列をR
とする.
棒A, B
の位置ベクトルをそれぞれ,
⃗
u, ⃗ m, R
で表せ.
次に,
宝のありかの位置ベクトル⃗ x
を( m ⃗
を用いず) ⃗ u, R
のみで表し,
宝のありかを説明せよ. (R− 1 ⃗ v = − R⃗ v
に注意.)(2) 2
次元平面において,
直線y = mx (
ただしm = tan(θ/2))
に関する折り返しを表す 一次変換の行列B
を求めよ. (
ヒント:
単位ベクトル⃗ e 1 , ⃗ e 2
がどこに写るかを,
与え られた直線・単位円と一緒に図を書いて考察すればよい.): : A 327 E-mail:[email protected]
今週のボーナス問題(
提出期限は5
月11
日(
月) の24
時です(
時間厳守!))
n
次方程式の一般解の研究には長い歴史があり,
現代数学の発展にも深く関係している.
複素数係数のn
次方程式は一般にf (x) = a 0 x n + a 1 x n − 1 + a 2 x n − 2 + · · · + a n − 1 x + a n = 0, (a 0 , a 1 , a 2 , · · · , a n ∈ C , a 0 ̸ = 0)
と表されるが, 両辺を
a 0
で割ることで最高次の係数を1
にすることができ, また,x 7→
x − 1 n
a 1
a 0
の置き換えでx n − 1
の係数を0
にすることができる.
したがって以後,以下の形 のものを考えることにしよう.f(x) = x n + a 2 x n − 2 + · · · + a n − 1 x + a n = 0
問題10. (3
次・4
次方程式の解法)
(1)
次の形の3
次方程式を考える.
f (x) = x 3 + 3px + 4q = 0, (p, q ∈ C )
(a)
下準備として以下の恒等式を示せ. (
ただし, ω
は1
の3
乗根のうち虚部が正の ものを表す. 1 + ω + ω 2 = 0
は既知としてよい.)
α 3 + β 3 + γ 3 − 3αβγ = (α + β + γ )(α + ωβ + ω 2 γ)(α + ω 2 β + ωγ)
(b) 3
次式f (x)
が以下のように因数分解できたと仮定する.f (x) = (x + β + γ)(x + ωβ + ω 2 γ )(x + ω 2 β + ωγ)
x
の各べきの係数を比較することで, β 3 + γ 3
およびβγ
をp, q
を用いて表せ. (c) β 3
とγ 3
はある2
次方程式の解である.
その2
次方程式を書き下せ.
以上のようにして, 3次方程式を解く問題が
2
次方程式を解く問題に帰着さ れ, 2
次方程式の解の3
乗根をとることでβ, γ
が求まり, x = − β − γ, − ωβ − ω 2 γ, − ω 2 β − ωγ
として3
次方程式の解が得られる.
(2)
次の形の4
次方程式を考える.
f (x) = x 4 + px 2 + qx + r = 0, (p, q, r ∈ C )
(a)
前問同様,f(x)
が以下のように因数分解できたと仮定して,α, β, γ
とp, q, r
の 関係式を書き下せ.
f (x) = (x + α + β + γ)(x + α − β − γ)(x − α + β − γ)(x − α − β + γ) (b) 3
次方程式の解と係数の関係を考察することで, α 2 , β 2 , γ 2
が ある3
次方程式の解であることが分かる. その
3
次方程式を書き下せ.こうして
, 4
次方程式を解く問題が3
次方程式を解く問題に帰着され,
前問の解 法を利用して4
次方程式の解が求まる.
[
コメント]
他にもさまざまな解法が知られている.
興味がある人は自分でいろいろと調べ てみるとよい.
例えば以下の本にいくつかの例が詳しく紹介されている:• [
永田・吉田]
永田雅宜,
吉田憲一「代数学入門」(
培風館)
なお著者の永田さん
(
最近お亡くなりになられました)
は名大理学部数学科を卒業され,
不 変式論,
可換環論の分野で著しい成果を挙げられた大数学者です.
永田さんのドキュメン タリーが以前インターネットで配信されています(
私の授業のホームページからもリンク があります)
:•
サイエンスチャンネル 科学の殿堂(4)
「数学の巨人 永田雅宜 〜ひたむきに歩き続けた人生〜」
問題
11. (Wallis
の公式とその応用) J n =
∫
π2
0
sin n xdx
とするとき,次の問いに答えよ.(1) J 0 , J 1
の値を求めよ.
(2)
部分積分によりJ n = n − 1
n J n − 2 (n ≥ 2)
を示し,
一般項J 2n , J 2n+1
を求めよ. (3)
前問の結果より以下が成り立つことが分かる:π
2 J 2n+1
J 2n = 2 · 2 1 · 3
4 · 4
3 · 5 · · · 2n · 2n
(2n − 1) · (2n + 1) . 0 < J 2n+1 < J 2n < J 2n − 1 < 1
を示し, limn →∞
J 2n+1
J 2n = 1
を示せ. (注:J 2n − 1
J 2n+1 = 2n + 1 2n .)
以上により,
以下の公式が導かれた. (
ただし∏ n k=1
a k := a 1 × a 2 × · · · × a n .) π
2 =
∏ ∞ n=1
2n · 2n
(2n − 1) · (2n + 1) ⇔ 2 π =
∏ ∞ n=1
(
1 − 1 (2n) 2
) .
これをウォリス