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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

健康成人における血中ビタミンCと血清コレステロー ルの関係

藤野, 武彦

九州大学健康科学センター

村田, 晃

佐賀大学農学部

金谷, 庄蔵

九州大学健康科学センター

森田, ケイ

九州大学健康科学センター

https://doi.org/10.15017/443

出版情報:健康科学. 7, pp.61-65, 1985-03. 九州大学健康科学センター バージョン:

権利関係:

(2)

健康成人における血中ビタミン C と 血 清 コ レ ス テ ロ ー ル の 関 係

藤 野 武 彦 * 村 田 晃 * * 金 谷 庄 蔵 * 森 田 ケ イ * 宇 都 宮 弘 子 * 本 多 理 恵 *

C o r r e l a t i o n  o f   Serum Ascorbic Acid with Serum L i p i d s  i n   Healthy S u b j e c t s   Takehiko FUJINO*,  Akira MURATA**,  Shozo KANAYA* 

Kei MORITA*,  Hiroko UTSUNOMIY  A* and R i e  HONDA* 

The serum  levels  of  ascorbic  acid  (ASA),  total  cholesterol,  HDL cholesterol  and  tri‑ glyceride were estimated in  82 healthy persons who consisted of 41 men aged 18 to 69 and  41  women aged 32 to 69. 

None of fasting lipid profits correlated with the serum level of ASA in  total subjects. In  young men aged 18 to 23, however, there was significant negative correlation between ASA  and total  cholesterol. 

These findings suggest that ASA may be one of effective drug to  decrease the level  of  cholesterol. 

(Journal of Health Science, Kyushu University, 7: 61,...̲,66,  1985)  はじめに

血中脂質とくにコレステロールが,動脈硬化促進 因子であることは,すでによく知られた事実である が, コレステロールを,安全にかつ完全に正常化させ る方法は,現在まだ確立されていない。薬剤で低下さ せるにしても,長期服用する際の副作用が常に問題に なるがそれ故に,自然に存在し,安全な物質であるビ タミンの中にコレステロール低下作用が見つかれば もっと好都合であろう。この点,かなり前より検討が なされ,とくに,ビタミンCに期待を持たせるような 報告は少なからず見られる。しかし,現在なおその結 論は出ていない状態で,また, 日本人で検討された報 告は見られない。そこで,我々は,健康な一般成人を 対象とし,その血中脂質と血中アスコルビン酸を測定 することにより,両者の関係を検討した。

方 法

対象は,福岡市近郊の健康な成人

8 2

名で男

4 1

( 1 8

オより

6 9

オ),女

4 1

( 3 0

オより

6 7

オ)である。

これらの対象は,いずれも,一般内科検診,胸写,心 電図,心エコー図,検尿,血液生化学検査

( 4 2

項目)

に よ り , 心 疾 患 肝 疾 患 腎 疾 患 な ど の 異 常 を 有 し な いことが確認された。これらの対象において,早朝空 腹時に,採血された血液より,血漿アスコルビン酸濃 度,血清コレステロール,血清中性脂肪,血清HDLコ

レステロールが測定された。アスコルビン酸の測定 は, a, a'‑dipyridyl法によった。なお,採血と測定 は,ほとんどが,

1

月と

2

月に実施された。

結 果 1.  血漿アスコルビン酸の濃度

* Institute of Health Science, Kyushu Universtiy  11,  Kasuga 816, Japan. 

* *  

Department of Agriculture, Saga University. 

(3)

62  健 康 科 学 第

7

男 性 で は2.8μg/dlから 14.6μg/dlまでの分布を示 し,平均士標準偏差は8.9士2.6μg/dlであった。年令 による差はほとんど見られなかった。一方,女性では 8.Qμg/dlから, 15.5μg/dlまでの分布を示し,平均土 標準偏差は11.9土2.3μg/dlで,男性に比し,明らか に高値を示した。女性の中での年令差については, 60 才以上の高令者が比較的高いアスコルビン酸猥度を示

した。

2 .  

血清総コレステロール値

男性では, 130 mg/dlから265mg/dlまでの分布を示 し,平均士標準偏差は176士34mg/dlであった。年令 差については,若年群が最低値を,高年群が最高値を 示した。一方,女性では, 142mg/ dlから265mg/dlま での分布を示し,平均土標準偏差は, 196士31mg/dl  で,男性に比しや日高い値を示した。また年令差は,

ほとんど見られなかった。

3 .  

HDLーコレステロール値

男性では32mg/ dlから76mg/dlまでの分布を示し,

その平均士標準偏差は, 52土17mg/dlであった。 ま た,年令差については,ほとんど差は見られなかった

が, 総コレステロールとの比すなわちHDLコレステ ロール/総コレステロールで比較すると, 若年群が最 高値を,老年群が最低値を示した。一方,女性では,

42 mg/ dlから90mg/ dlまでの分布を示し,平均土標準 偏差は61士13mg/ dlで, 男性に比し高値を示した。

その絶対値に年令差は見られなかったが,総コレステ ロ ー ル と の 比 す な わ ちHDLーコレステロール/総コ レステロールでは, 30オ代が最高値を,老年群が最低 値を示した。

4 .  

中性脂肪

男性では, 68mg/ dlから 500rng/dlま で の 分 布 を 示 し,平均土標準偏差は105士83rng/dlであった。年令 差については若年群が最低値を示したが,中年群と高 年群では差が見られなかった。一方,女性では, 75mg  /dlから 182mg/ dlまでの分布を示し,平均土標準偏差 は, 86士34rng/dlであった。 30オ代が最低値を示し たが,他の群間では差が見られなかった。

5 .  

血漿アスコルビン酸と脂質との相関 1)  アスコルビン酸と総コレステロールの関係 男性におけるアスコルビン酸濃度と総コレステロー

‑Fig .1.  Correlation of Ascorbic Acid with  Total Cholesterol in  Male 

300 

• 18 23ys 

2 s o l  

△  △ 3500"'3599yyss  

ほ >

00 

2 0 0  

8

△ 

゜ . 

△ 

゜゜ ゜ ゜゜ ゜

6' △ 

°△  

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~

150

.  . 

•。

.  . 

. . .  . 

● 0 

I  ゜ . 

100 

5.0  10.0  15.0 

Ascorbic Acid  (μg/ dR,) 

(4)

Fig.2.  Correlation of Ascorbic Acid with  Total Cholesterol in Female  300 

• 30 39ys 

40 49ys 

250  △ 50 59ys  j 

△ 

^ 

Fa □ 60 69ys 

△ 

昔 . 

△ 。?月0

F—• 200  0~i △ 

● △ ●   △ ロ ロ

. 

LS)  CIT 

屯ロ

゜ . 

...c:: 

.  . 

● 

口 口 ゜

a...l.,   150  ①  △ 

~

100 

5.0  10.0  15.0  Ase or bic Acid  (μg/ dR,) 

ルの相関をFig.

1

に示す。全体として見ると,両者の なかった。

間には有意な相関は見られなかった。しかし,若年群

( 1 8  , ̲ ,  2 4

オ),中年群

( 3 0

オ代),高年群

( 5 0

オ代)に 分けてアスコルビン酸 濃度とコレステロールとの関係 を見てみると,若年群では両者の間に有意な逆相関(r

= ‑

0 . 5 6 4 )

が見られた。中年群,高年群でも,夫々,

逆相関の傾向が見られたが,若年群程顕著ではなかっ た。一方,女性では,全体として,あるいは,年代別 に見ても,アスコルビン酸濃度と総コレステロールの 間には,有意な相関は見られなかった。

2)  HDLコレステロールとの関係

男女共,全体としてあるいは年代別に見ても,アス コルビン酸濃度とHDLコレステロールの間に有意な 相関は見られなかった。また, HDLコレステロール/

総コレステロールについても, HDLコレステロール 絶対値の場合と同様に,アスコルビン酸濃度との間に

は,有意な相関は見られなかった。

3)  中性脂肪との関係

男女共,全年令群あるいは年代別に見てもアスコル ビン酸濃度と中性脂肪との間には有意な相関は見られ

考 案

アスコルビン酸と脂質との関係についてはかなり古 くから検討されているが1)11), いまだに結論は得られ ていない。Ginter切が,

0 . 1

g/日のアスコルビン酸を 投与して47日後に総コレステロールが減少すること を報告して以来, アスコ)・レビン酸が, コレステロール を低下させるのに有効であるとする研究がいくつも見 られるようになった1),2),12)。Cernaら2)は, 白血球中の アスコルビン酸濃度と血清コレステロール,血清中性 脂肪との間に逆相関が見られることを報告し, Bates 

切は,血漿アスコルビン酸と総コレステロールの間 には相関はないが男性において血漿アスコルビン酸と HDLコレステロールとの間には有意な相関を認めた。

なお, この対象の年令が72,̲, 86オである点が注目さ れる。

一方, Spittle12)は,動脈硬化を有する患者群と各年 令の健常者にアスコルビン酸を

1g /

日投与して

7, . . . ̲ ,  

(5)

64  健 康 科 学

7

Fig .3.  Correlation of Ascorbic Acid with  Total Cholesterol in  Female 

50 

4 3 2 1  

10

.m

is

a1

ol

J:

o 

p :1 +

0 J,  

¥ I O

0+

s0

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'1

CT

H

• 30 39ys  ••

40 49ys 

. 

△ 50"‑'59ys  △  △  △ 

□ 60""69ys 

  . . 口

9

. 

0 0  

□ 

・ ︒

△ 

□ △ 

△ 

△口唇

△ 

● 

5.0  10.0  15.0 

Ascorbic Acid  (μg/ d

1 2

週間経過観察した結果,

2 5

オ以下の若年健常群の みが有意な総コレステロールの低下を示したが,動脈 硬化を有する患者群では,アスコルビン酸投与により むしろ総コレステロールが上昇するという結果を報告

した。この患者群での総コレステロールの上昇を,彼 は,動脈壁のコレステロールが血中に遊出した為と考 察している。また, Ginter6)は,

4 5 0

mg/

6

週間のア スコルビン酸投与により,総コレステロールは,高値 を示すもの程高率に低下を示したが, HDLコレステ ロールには変化が見られなかったと報告した。この点 は,アスコルビン酸は脂質を低下させるとする研究の 中で,前述のBatesらの報告と少し趣きを異にするも のと言える。

ところで, これらのアスコルビン酸がコレステロー ル低下に有効とする報告の一方で,無効であったとい う報告3),7), 8)もかなり見られる。 Khanら8)は若年健康 女性で, Hooper切は,老人で,いずれも大量のアス コルビン酸 (1

g /

日)を投与しても総コレステロール に 変 化 が 見 ら れ な い こ と を 報 告 し た 。 ま たElliott3) も,

2 5, . . . , ̲ ,   7 6

オの高脂血症の患者群に

3g/

日のアスコ

ルビン酸を投与しても総コレステロール,中性脂肪に 変化がなかったとしている。

以上のアスコルビン酸とコレステロールに関する報 告 は , 結 果 だ け 見 る と 極 め て 混 乱 さ せ る 状 況 と 言 え る。しかし, これらの混乱を解く一つの鍵は,年令差 と性差にあると思われる,すなわち,今回の我々の結 果は,アスコルビン酸を投与する前の血漿アスコルビ ン 酸 濃 度 と コ レ ス テ ロ ー ル の 関 係 を 見 た も の で あ る が,全年令群で見ると,男女共,アスコルビン酸濃度 とコレステロールの間に有意な相関は見られないが,

男性において,若年,中年,高年の三群に分類すると,

夫々の群の中では,アスコルビン酸とコレステロール の間に逆相関の傾向が見られるようになり, とくに,

1 8  , . . . , ̲ ,   2 4

オの若年群では, 統計的に有意な逆相関が見 られた。このことは, Spittleの結果と一脈通じる所が あり興味深い点と思われる。また,我々の今回の結果 で,女性においては, 20オ前後の対象がない為,推測 に過ぎないが,男性のような傾向は見られなかった。

この点も, Khanらの結果と類似した点である。これ らの事実から,アスコルビン酸とコレステロールの関

(6)

係について考察するとアスコルビン酸がコレステロー Ascorbic acid and serum cholesterol. Lancet ii・  ルを低下させなかったという報告があるにしても,両 1197,  1970. 

者は極めて密接な関連 アスコルビン酸濃度が高い 5)  Ginter, E.  G.  : Vitamin C and plasma lipids.  程コレステロールが低い関係が存在すると考える方が New Eng. 

J .  

Med., 294 : 559,  1976. 

妥当なように思われる。年令差,性差の矛盾は,現在 6)  Ginter, E.  G.  : Natural  hypocholesterolemic  の所,明解に説明することは困難であるが,少くとも, agent:pectin  plus  ascorbic  acid.  Int. 

Vit.  コレステロールの生成,代謝の複雑さと女性の性周期 Nutr. Res. 49 : 406‑412, 1979. 

の問題に起因する点があることは確かと思われる。ア 7)  Hooper,  P. L., Hooper,  E.M.,  Hunt,  W. C.,  スコルビン酸がコレステロールを低下させる機序も, Garry, P. 

J .  

and Goodtin, 

J .  

S.  : Vitamins, lipids  まだ十分には解明されていないがcyclic AMPを経 and lipoproteins  in  a healthy  elderly  popula‑ 由してコレステロールの生成を抑制し, コレステロー tion.  Int. 

J .  

Vit.  Nutr. Res.,  53: 412‑419, 1983.  ルの異化作用を促進するとする考え9)は,重要と思わ 8)  Khan, A. R. and Seedarne, F. A. : Effect of  れる。 ascorbic acid on plasma lipids and lipoprotein  今後,今回の対象にアスコルビン酸を投与して, コ in  healthy young women. Atherosclerosis 39・  レステロールの変動を観察することと,若年群の対象 89‑95,  1981. 

をより多くして検討することが必要であろう。 9)  Lewin, S.  : Vitamin C : Its molecular biology  and  medical  potential,  Academic  Press,  文 献 London, 1976, pp. 98. 

1 0 )  

Pauling, L (村田晃訳):ビタミンCとかぜ,イ 1)  Bates, C. 

J . ,  

Mandal, A. R., Cole, T. 

J .   : 

HDL  ンフルエンザ公共立出版東京1977,pp.  24. 

cholesterol  ; and vitamin C status.  Lancet ii:  11)  Peterson,  V.  E.,  Crapo, P. A., Weininger, 

J . ,  

611,  1977.  Ginsberg, H. and Olefsky, 

J .   : 

Quantification of  2)  Carna, 0.  and Ginter,  E.  : Blood lipids  and  plasma cholesterol and  triglyceride  levels  in  vitamin C status.  Lancet ii:  1055‑1056, 1978.  hypercholesterolemic subjects receiving ascor‑ 3)  Elliott,  E.  C.  : Effects  of  vitamin C loading  bic  acid  supplements. Amer. 

J .  

Cli.  Nutr.  28: 

on serum constituents in  man. Proc. Soc. Exp.  584‑587, 1975. 

Biol.  Med.,  169: 363‑367, 1982. 

1 2 )  

Spittle,  C. R.  : Atherosclerosis  and vitamin  4)  Elwood, P.  C.,  Hughes, R. E.,  Hurley, R. 

J .   : 

C Lancet ii: 1280‑1281, 1971. 

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