第 2 章 多数決原理
単純多数決原理を中心として
直接民主制
1.単純多数決ルール
N={1,2,…,n}:社会構成員全体の集合 2≦n<+∞
X={x,y,z,…}:選択肢の集合
3≦♯X<+∞ (♯X は集合X の要素の個数)
S,T,…⊂X:実行可能な選択肢の集合
X上の個人i∈Nの二項関係(選好関係)Ri
xRiy ⇔xはyより厳密に望ましいか両者は無差別
⇔xはyより悪くはない
完備性: xRiyあるいはyRix
反射性: xRix
推移性: xR yかつyR zならばxR z
xPiy⇔xRiyかつ¬yRix (¬は否定,not)
xIiy⇔xRiyかつyRix
社会的選択ルールR=f(R)
R=(R1,R2,…,Rn) :プロファイル R:社会的選好
定義2.1(単純多数決ルール):RMD=fMD(R) xRMDy⇔N(xPy)≧N(yPx)
15
人のうち,
6人が
xPy,
5人が
yPx,
4人が
xIyの とき,
xPMDy 15
人のうち,
5人が
xPy,
6人が
yPx,
4人が
xIyの とき,
yPMDx 15
人のうち,
6人が
xPy,
6人が
yPx,
3人が
xIyの とき,
xIMDy
まとめて書くと
xRMDy⇔N(xPy)≧N(yPx)
公理
U(広範性
) 社会的選択ルールの定義域は個人的選好順序の 論理的に可能なあらゆるプロファイルを含む
公理
A(匿名性
) Rの個人的選好順序を並び替えてR’が得られるな ら,R=R’
公理
N(中立性
)⇔ ’wかつ ⇔ ’zが全ての に対して成立
公理PR(正の感応性)
2つのプロファイルR,R’に対して,
∀i∈N:{(xPiy⇒xPi’y)&(xIiy⇒xRi’y)}
∃k∈N:{(xIky⇒xPk’y)∨(yPkx ⇒xRk’y)}
ならば,(xRy⇒xP’y)
記号の注意
∀:任意の ∃:存在する
&:かつ ∨:または
単純多数決ルールの公理化
定理2.1 (メイの定理)
単純多数決ルールは,公理U,A,N,PRを全部満たす 唯一の社会的選択ルールである
(証明)
定義より,単純多数決ルールが4つの公理を満たす のは明らか.
逆を示す.
公理Nで,x=z, y=w とおく.x と y の社会的選好判断 には個人的選好を知れば十分.
公理Aより,N(xPy), N(yPx), N(xIy)のみで決まる.
公理Nより,N(xPy)=N(yPx) ならば,xIy.
公理PRより, N(xPy)>N(yPx) ならば,xPy.
よって,多数決ルールに一致する.
公理
CR(社会的合理性
) 任意のプロファイルR =(R1,R2,…,Rn)に対して,
社会的選好R=f(R)は完備性,反射性,推移性 を満たす
定理
2.2公理
U,A,N,PR,CRをすべて満たす
社会的選択ルールは存在しない
.2.定義域の制限 単峰型選好
個人3
個人2
個人1 効
用
非単峰型選好
個人3
個人2
個人1
x y z 選択肢
効 用
単谷型選好
個人3
個人2
個人1 効
用
3.ブキャナ=タロック 合意の計算
意思決定の費用
決定に必要な人数が多くなると高くなる
外部費用
自分の意見と合わない社会的決定に従わなけれ ばならないことから生じるコスト
決定に必要な人数が多くなると低くなる
最適な意思決定ルール
合計を最小化するルール
⇒
ある多数決ルール
外 部 費 用
意 思 決 定 費 用 総費用
4.レイの定理
自分の賛成する提案が否決される確率
自分の反対する提案が可決される確率
最適なル-ル=
2つの確率の合計を最小化する ルール
⇒
単純多数決ルール
1 2n
n
人の社会
さまざまな規模の集団の数:
f
人で構成される集団の数
可決に必要な最小支持者数=
k否決される集団の数
)!
(
!
! f n
f C
fn
n
1
)!
(
!
k
!
f n
f
n
1 2n
注:
n人の社会
可能な集団の数を考える
全員が集団に入るか否かを決める
→
の可能性
→ ∅を除く さまざまな規模の集団の数は
)!
(
!
! f n
f C
fn
n
2n
1 2
...
) 1 (
! n n n
f
人で構成される集団の数は、
f人からなる組合せ
n人の並べ方=順列
)!
(
!
...
...
!
f n
f
n
△
〇△△
○○
よって
①自分の支持する提案が否決されるケース 自分を入れて
f人,かつ
f < k)!
( )!
1 (
)!
1
1 (
1
k
f f n f
n P
)!
( )!
1 (
)!
1 (
)!
1 1
( )!
1 (
)!
1 (
1 1
f n
f
n
f n
f C
fn
n
よって,確率は
②自分の反対する提案が可決されるケース 自分を除いて
f人,かつ
f≧
k)!
1 (
!
)!
1 (
1
f n f
C
fn
n
1 2
)!
1 (
!
)!
1
1
(
2
n n
k
f
f n f
n P
よって,確率は
期 待 確 率
.5
.4
.3
.2
.1
期 待 確 率
.5
.4
.3
.2
.1
.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
5.トーナメント方式
あらかじめ決められた順番で二項比較を行う
cf.単純多数決による二項比較
循環が生じない
→
決定できる
問題点
経路独立性を満たさない
劣位勝者のパラドックス
①直線型 ②樹形型
③混合型
x y
z
w
x y z w
v
a, b, c 3人の個人
x, y, z 3つの選択対象 3人の選好(価値判断):
Ra; x f y f z Rb; y f z f x Rc; z f x f y
経路依存性
x y
z
y z
x
劣位勝者のパラドックス(1)
a
,
b,
c3人の個人
x
,
y,
z,
w4つの選択対象 3人の選好(価値判断):
Ra
;
x f y f z f w Rb;
z f w f x f y Rc;
w f x f y f z③’の勝者である
yは全員一致で
xよ
り望ましくない
① ①’
x y
z
w w
y
w
z
x
z
② ②’
w w
③ ③’
x w
y
z z
w
z
y
x
y
④ ④’
w
x w
w w
⑤ ⑤’
y w
x
z z
w
z
x
y
x
⑥ ⑥’
x x
劣位勝者のパラドックス(2)
同じ選好でも,樹形型で は劣位勝者のパラドック スは生じない
y
は
zに勝つが,
xと
wには負ける
1
度だけ最終段階で
zと 対戦するという状況での みパラドックスが生じる
x y z w
x
x z y w
w
6.シュワルツ方式
頂上循環
上位の選択肢間で循環が生じる
シュワルツ方式
勝者集合
S⊂X(普遍集合)
(1)
∀x∈S,∀
y∈X\
S:
xPy(2)
S:最小
x ~ y ~ z f w f t f u ~ v
S1={x,y,z}, S2={x,y,z,w}, S3={x,y,z,w,t}
S1, S2, S3のいずれも(1)を満たす
(2)を満たすのは S1 のみ
S1 がシュワルツ方式の勝者集合
x
y
z w
u
x y
z
w u
一部の選択肢からなる循環
x←y
⇔
xPy頂上循環 top cycle
7.循環の発生頻度
仮定
あらゆる個人的順序(完備性・推移性)は等確率で生 じる
投票者
9人で選択肢
7個
→ 3
回に
1回頂上循環が生じる
投票者
25人で選択肢
11個
→ 2
回に
1回頂上循環が生じる
1414 450 489 319 318 173 83 413 329 104 270 146 114 31 28
リ リ ダ ダ ダ ダ ダ ブ ブ ブ べ ベ ベ ベ ベ ベ ダ ブ ベ リ ブ リ ベ ダ ダ リ ブ ダ ブ ダ ダ ベ ベ リ ベ リ ブ ダ ベ リ ダ ダ リ リ ブ ブ ブ リ ブ ブ ベ ベ リ リ ベ ブ リ ブ ダ リ
1860 年アメリカ大統領選挙
リンカーン,ベル,ブレキンリッジ,ダグラス
選好分布の推定(単位:1000人)
1864 1382 846 589
1860年アメリカ大統領選挙での循環 (単位:1000人)
リンカーン ベル ブレキン リッジ
ダグラス リンカーン * 2,542 * 2,968 2,165
ベル 2,139 * 3,090 * 2,416
ブレキン リッジ
1,713 1,591 1,023
ダグラス * 2,516 2,265 * 3,658
は二項比較での勝者
リンカーン・ベル・ダグラスが頂上循環をなしてい た
最多数投票で選挙に勝ったリンカーンは,二項
比較ではダグラスに敗れていた
8.多次元空間での多数決
空間モデル
至福点(理想点,飽和点)
:Ii
xRiy ⇔ |x-Ii| ≦ |y-Ii|
至福点に近いほど望ましい
単峰型選好
単峰型選好でも投票のパラ ドックス
u
x2
2 次元空間内の単峰型選好 (1)
政 策 2
I *
• 1
次元から
2次元へ
•
クレマーの研究
– 1次元が本質的で あることを示した
•
右図
• I *
が個人
1にとって 最善の組み合わせ
• I*
から遠ざかるほど
効用水準が低下
2 次元空間内の単峰型選好 (2)
• 3
人の選好 1:
x f y f z2:
y f z f x3:
z f x f y•
この選好ではサイク ルが生じる
政 策 2
x I1*
y z
I2*
I3*
政策1
I2
I1
契約曲線(パレート最適点の集まり)
=
接点の奇跡
a b c
I3
I2
I1
3
人の契約曲線:均衡の非存在
均衡の存在条件
均衡の存在条件(十分条件)
3
人の至福点(理想点)が一直線上にある
→ 3
人の契約曲線が1点で交わる
→
均衡点(コンドルセ勝者)
a b I3
I2
I1
3
人の契約曲線:均衡の存在
I2がコンドルセ勝者 aにも,bにも勝つ
プロットの対称性条件
プロットの一般化条件
(1) 無差別の個人は棄権する
(2-1) 投票者数が奇数である場合には,1人またはより
多くの奇数人が特定のe点を理想点とする
(2-2) 偶数の場合は誰もe点を理想点としないか,偶数
の人が理想点とする
(3) 残りの投票者はe点を挟んで対極にある2つの点を
それぞれ理想点とするペアを作る
2 つの選択肢のどちらが勝つ?
a,b を通る垂直二等分線 を引く
個人1は b に投票
個人2,3は a に投票
垂直二等分線上に至福 点のある個人4は無差別
→ 棄権する
a b
I3 I2
I1 I4
多数決の勝者は?
e:e を通る任意の直線が、
e を至福点とする人々を 除いて残りの人の至福点 を均等に分割する点
e は任意の x ≠ e に多数 決で負けることはない。
なぜなら、 e に賛成する する人の数は常に過半 数を超えるから。
a e
人いる:奇数 2
1 n
少なくとも
I6 I4
I2
I3 I1
I’1
I5
I7=e
プロットの対称性条件
マッケルヴィの定理
いかなる選択肢のペアについても,それらを含 んだ包括循環を引き起こすトーナメント方式の決 定順序が存在する
次の図
3人とも,aPi b → aPb
bPa となる手順がある
aI1a’ かつ aI3a’
(無差別)
αP1a’ かつ αP3a’
推移性より αP1a,αP3a → αPa (トーナメント)
αI1α’ かつ αI2α’
多数決
βP1α’ かつ βP2α’
推移性より βP1α,βP3α → βPα
βI2β’ かつ βI3β’
bP2β’ かつ bP3β’
推移性より bP2β かつ bP3β → bPβ
aPb かつ αPa かつ βPα かつ bPβ
→ bPa
a
・b α
I3
I2
I1
・
・
・
・
a’
l2
I2
I3
I1
l1
l3
α a’
a α’
β
b
垂直二等分線による対称点
β’