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日本工業技術協会の機関誌から 2015 年 6 月 21 日 サプライチェーン途絶時のレジリエンス ( 対応力 ) 評価 一般社団法人レジリエンス協会 黄野吉博 1. サプライチェーンの構造 図 1 は サプライチェーン (SC) の基本図です モノとカネの流れは理解し易く既にご承知と思います 一方

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(1)

サプライチェーン途絶時のレジリエンス(対応力)評価

一般社団法人レジリエンス協会 黄野吉博

1. サプライチェーンの構造

図 1 は、サプライチェーン(SC)の基本図です。モノとカネの流れは理解し易く既にご承知と思い ます。一方情報の流れは大変重要ですが、目に見えずその理解は困難です。この情報の流れが中 断すると、需給バランスを把握できなくなり、供給不足や供給過剰が発生します。SC の途絶や混乱 は情報の流れにおいて最初に発生し、次にモノの流れとカネの流れに波及します。

図中の消費者が、原料メーカーや材料・部品メーカーの動向に着目することは一般的にありませ んが、原料メーカーや材料・部材メーカーは消費者の動向に着目しています。多くの企業が消費者 動向を把握するマーケティング部門や営業部門を置くのは消費者の情報を得るためで、そのために は消費者に近い場所にある方が効率的になります。

生産部門は正確なマーケティング情報があればその所在は生産効率が高いところが望ましく、消 費者に近いところである必要はありません。

図1 サプライチェーンの構造

原 料

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上段の曲線 : 情報の流れ、 → : モノの流れ、 ← : カネの流れ 材

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部 品

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自 社

完 成 品

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販 売 店

消 費 者

(2)

SC の中で災害時に一番早く影響が現れるのも情報の乱れです。これは、国内のみでも、海外を 含めた場合でも同じです。東日本大震災では、食糧・生活必需品などの支援物資の不足が指摘さ れましたが、この背景にはSC情報の混乱と中断がありました。

これを改善するには図2のようにSC情報をグリッド化(SCの前後の企業と協力して、情報を上手く活用 する方法)することです。こうすると一か所から情報がなくとも、その前後の情報を利用して中断してい る情報をある程度補完することが可能になります。公共性の高い道路情報、鉄道運行情報などはグ リッド化が容易ですが、民間企業間では公認会計士などの第三者の参画が求められます。

この考え方では、一か所のセンター(スポーク・ハブ方法とも言います)に情報を集め、そのセンターで 全体の情報調整を行うという現在の方法よりも情報伝達の正確化が計れます。ただ、二次サプライヤ

サプライヤのサプライヤ)、二次ユーザー(顧客企業の顧客)の把握は難しく、特にサプライヤは二次サプ ライヤの情報提供を渋ります。

更に、図 1 と 2 では材料メーカー、部品メーカー、完成品メーカーがそれぞれ一つですが、実際 はそれぞれ複数あり SC はより複雑ですので、不測の事態におけるSC 情報のグリッド化の効果( 報の正確化と迅速化)は大きくなります。

図2 サプライチェーン情報のグリッド化

2. サプライチェーンの途絶事例

東日本大震災では半導体チップの生産中断とそれによる自動車生産の縮小が注目を浴びました が、実は表 1にあるとおり半導体産業も自動車産業も 1995 年の阪神・淡路大震災以降何度も SC 途絶に見まわれています。

原 料

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材 料

#$

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部 品

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%

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自 社

完 成 品

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販 売 店

消 費 者

情報の収集・判断を協力して行うセンター、 → : モノの流れ、 ← : カネの流れ

(3)

表1 自動車・半導体関係のサプライチェーン途絶例

1995年 1月17日 阪神・淡路大震災による自動車部品工場および

半導体用材料工場の被災

1997年 2月 1日 自動車部品工場(愛知県)の火災による

自動車製造の中断

1999年 9月21日 台湾集集地震による

半導体工場(台湾・新竹市)の被災

2000年 3月17日 米国アルバカーキーの半導体工場の火災による

携帯電話製造の中断

2000年 6月10日 半導体用材料工場(群馬県)の爆発火災

2002年 9月27日

~ 10月8日

米国西海岸の港湾労働紛争による 米国自動車工場での部品不足

2003年 9月 8日 タイヤ工場(栃木県)の火災

2004年10月23日 新潟県中越地震による

半導体工場の被災

2007年 7月16日 新潟県中越沖地震による

自動車部品工場の被災

2011年 3月11日 東日本大震災による

自動車部品工場および半導体工場の被災 2011年 10月11日

~ 12月22日

タイの大洪水

自動車部品工場および電子部品工場などの被災

3. サプライチェーンのレジリエンス評価

SC のレジリエンス評価は、二つの要素があります。ひとつは自社からサプライヤおよび二次サプ ライヤのレジリエンスをチェックすることですが、現実的には二次サプライヤのチェックは直接せずに、

一次サプライヤに二次サプライヤのチェックを委託することになります。

今一つは、自社から顧客のレジリエンスを評価することです。素材メーカーのようにサプライヤ側 が巨大な場合は、顧客企業の協力を得られ易いですが、一般的には「顧客に失礼になる」との配慮 からチェックは簡単ではありません。ただ、このチェックをしないことは、顧客の災害・事故・事件のリ スクを自社が抱えることになりますから、顧客が被災した場合は自社の業務も中断し最悪の場合は 倒産にいたる可能性があることを認識する必要があります。

3.1

サプライヤのレジリエンス

(4)

表2は、サプライヤのレジリエンスの手法です。この表は、2001年9月11日の米国同時多発テ ロの翌年(2002年)春から米国の半導体企業が日本のサプライヤに求めた資料を基に作成しました。

この表を全サプライヤに対応することは現実的でなく、この評価が必要と思われる重要なサプライ ヤにのみ実施します。

表2 サプライヤのレジリエンス

項目 評価

ポイント 1. 妥当な経営資源の一覧表が装備されている

2. 経営資源の一覧表には敷地と建物の評価項目が含まれている

3. 経営資源の一覧表には、知財、ノウハウ、ブランドイメージ、経営意欲、勤労意欲 の評価項目が含まれている

4. 経営資源の一覧表には、人材の評価項目(知識、経験、資格など)が含まれてい る

5. 経営資源の一覧表には、有形財(設備、材料、部品、仕掛品)の在庫一覧表が含 まれている

6. 経営資源の一覧表には全ての有形財の認定基準が明記されている

7. 経営資源の一覧表には全ての有形財の発注から納品までの期間(リードタイム)

が明記されている

8. 経営資源の一覧表には、単一源材料一覧表が含まれている

9. 単一源材料一覧表には代替材料と代替材料の認定基準が明記されている 10. 単一源材料一覧表には代替材料と代替材料のリードタイムが明記されている 11. 毎年一回以上代替材料を実際に活用し、評価している

12. 経営資源の一覧表には、代替装置値がない特殊な装置の一覧表が明記されてい る

13. 各特殊な装置の運転マニュアルが整備され、毎年更新されている 14. 各特殊な装置の保守マニュアルが整備され、毎年更新されている 15. 各特殊な装置の部品マニュアルが整備され、毎年更新されている

16. 各特殊な装置の運転と保守の担当者・次席担当者が明確になっており、毎年教 育と訓練を受けている

17. 経営資源一覧表にはデータの保管順位、保管期間、保管場所、保管責任者・次 席責任者が明記されている

18. 経営資源一覧表にはバックアップデータの保管順位、保管期間、保管責任者・次 席責任者が明記されている

19. データの保管場所とバックアップデータの保管場所は同じ災害で被災しない程度 に離れている

(5)

20. 経営資源の一覧表には、情報処理量が1/2、1/4になった場合の対策と対策責任 者・次席責任者が明記され、毎年教育と訓練を受けている

21. 経営資源の一覧表には、情報処理量が 2 倍、4 倍、10 倍になった場合の対策と 対策責任者・次席責任者が明記され、毎年教育と訓練を受けている

22. 妥当なリスクアセスメント一覧表がある

22-00. リスクアセスメント一覧表には、以下の災害等について、対策の概要と対策

責任者・次席責任者が明記され、毎年教育・訓練を受けている ―

22-01 地震・液状化

22-02 水害

22-03 風害(特に、風速50m/秒対策)

22-04 新型感染症

22-05 ICT障害

22-06 防犯(特に、ケミカルテロ、バイオテロ)

22-07 インフラ中断(特に、120時間以上の停電対策)

22-08 サプライヤの事業中断

22-09 物流障害

23. 妥当な緊急時のファイナンスがある

24. 緊急時ファイナンスには処理金額の範囲と処理責任者・次席責任者が明記され、

毎年教育・訓練を受けている

25. 緊急時ファイナンスには従業員・関係者への支援金がある 26. 緊急時ファイナンスには部材の購入資金がある

27. 緊急時ファイナンスには重機の賃料がある

28. 緊急時ファイナンスにはIT部材の購入資金がある 合計ポイント

【評価ポイント、参考例】

ポイント 5 : 十分条件を満たしている ポイント 3 : 概ね条件を満たしている ポイント 1 : ある程度条件を満たしている ポイント 0 : 全く条件を満たしていない

3.2

顧客のレジリエンス

日本では各種の配慮が働き顧客をチェックすることは難しいと思いますが、自社の連鎖倒産を防 ぐためにもチェックは必要です。表3 はそのサンプルです。

(6)

表3 顧客のレジリエンス

項目 評価

ポイント 1. 事業が特定の商品や取引先に過度に依存していない

2. 特定のサプライヤに依存していない 3. 妥当な経営資源の一覧表を作成している 4. 妥当なリスクアセスメント一覧表を作成している 5. 妥当な緊急時ファイナンス計画書を作成している 6. 妥当なICT対策書を作成している

7. 従業員・関係者への災害等に対する教育、研修プログラムは充実している 8. 顧客の財務基盤は安定している

9. 1か月間程度の事業継続(代替)対策を持っている 10. 3か月間程度の事業継続(代替)対策を持っている

合計ポイント

【評価ポイント、参考例】

ポイント 5 : 十分条件を満たしている ポイント 3 : 概ね条件を満たしている ポイント 1 : ある程度条件を満たしている ポイント 0 : 全く条件を満たしていない

3.3

自社のサプライチェーン対策

自社のSC対策とは、自社が使っている単一源部品・材料・装置・サービスへの対策のことです。

単一源部品材料には2種類あります。ひとつは東日本大震災で注目された車載用半導体チップ のように国際市場を見ても代替品がないものです。この場合は、サプライヤを選べません。

この種の事例は、半導体や航空機産業などのハイテク関係の部品・材料・装置・サービスに数多く あります。この場合一番良いのは、そのサプライヤが距離の離れた別拠点で同一のものを生産する、

または緊急時には別拠点で生産可能なことです。また、開発・設計段階で、できるだけ特注部品を 使わずに汎用品を採用する工夫も有効です。

次が、当該部品材料の在庫の積み増しです。そして将来的には代替品または代替サプライヤに ある部品材料を使う製品(商品)への設計変更を考えます。「在庫量の増加」は、「保管場所の増加」、

「保管費用の増加」など、コスト増に繋がりますが、国際市場を見ても代替品がない場合に、企業の レジリエンスを強化するためにはこれ以外の方法が見つかっていません。

表4 自社のSC対策

(7)

項目 評価 ポイント 1. 外部から調達する全ての経営資源について要件、仕様、認定手順が整備され、

定期的に更新されている

2. 外部から調達する全ての経営資源について、代替品が明記されている

3. サプライヤごとの全ての部品材料表(BOM: Bill of Materials)を明確にして ある

4. 単一源部品材料を明記している

5. 納品までのリードタイムが長い部品材料を明記している

6. 単一源部品材料の必要性を認定する手順が整備され、検証されている 7. 単一源部品材料とそのサプライヤのリストが整備され、検証されている 8. 単一源部品材料の供給履歴や需要予測が利用可能

9. 単一源部品材料のサプライヤの供給能力が調査され、検証されている

10. 単一源部品材料のサプライヤの長期および短期的な供給能力について増減の 柔軟性が調査され、検証されている

11. 単一源部品材料のサプライヤは在庫保管場所を複数維持している

12. 代替サプライヤについての認定方法、認定時間が明確になっており、代替サプ ライヤの認定が継続的に行なわれている

13. 新製品開発時に、必要とする材料・部品・装置・工具・サービスなどの安定供給 についてサプライヤ及びサプライヤ候補の能力評価をするための手順と文書が 整備されている

14. サプライヤの安定供給能力を評価するよう、全社的に技術者や製品開発者に指 示が出されている

15. 購買や設計の発注以前に、事業継続性に関する要求事項が、材料・部品・装 置・工具・サービスなどのサプライヤに通知され、確認されている

16. 代替品及び代替サプライヤについての認定方法、認定時間が明確になってお り、代替品及び代替サプライヤの認定が継続的に行なわれている

17. サプライヤに災害・事故や禁輸・労働争議等が発生した場合も、必要な資源の 納品に滞りが出ないような計画を策定している

18. 潜在的な材料の安定供給の問題点と解決策または代替案を明確にするための 体系的な手法が整っている

合計ポイント

【評価ポイント、参考例】

ポイント 5: 十分条件を満たしている ポイント 3: 概ね条件を満たしている ポイント 1: ある程度条件を満たしている

(8)

ポイント 0: 全く条件を満たしていない

4. 災害時のサプライチェーン

サプライチェーンのレジリエンス評価には含めていませんが、被災した顧客・サプライヤに対する 支援のレベルを決める必要があります。これは冷静に判断できる平時に決めた方が良いですが、多 くは被災後に決めているようです。以下は支援の内容とレベルの参考例で、この組合せから選びま す。

【支援の内容】

l 資金 l 物資 l 労働力 l 情報

【支援のレベル】

l 自社の業務を全て停止して支援する l 自社の業務を半分程度停止して支援する l 支援内容のごく一部を実施する

l なにもしない

また、被災時に顧客企業やサプライヤで代替生産や代替販売をする場合があります。この代替契 約は平時に締結しておく方が良いですが、東日本大震災での事例は被災後に締結しています。

同震災では、サプライチェーンの一部を除いて業務を再開する事例もあります。例えば、業務を 中断している問屋を除いて生産者が直接店舗に納品する事例や生産者が今まで実施していなかっ たインターネット販売を実施する事例です。

※ 本稿は、2011年6月30日付で『社団法人日本工業技術振興協会機関誌(Web.)』に掲載した ものに加筆修正しました。なお、同法人は2013年11月に解散しました。

表 2 は、サプライヤのレジリエンスの手法です。この表は、2001 年 9 月 11 日の米国同時多発テ ロの翌年(2002 年)春から米国の半導体企業が日本のサプライヤに求めた資料を基に作成しました。  この表を全サプライヤに対応することは現実的でなく、この評価が必要と思われる重要なサプライ ヤにのみ実施します。  表 2  サプライヤのレジリエンス  項目  評価  ポイント  1
表 3    顧客のレジリエンス  項目  評価 ポイント  1.  事業が特定の商品や取引先に過度に依存していない  2.  特定のサプライヤに依存していない  3.  妥当な経営資源の一覧表を作成している  4

参照

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