古典論から 量子論ヘ
この章では,はじめに量子化学の由来について簡単に述べた後, 19世 紀 末 までに完成したと信じられていた物理学(古典物理学)が,どのような実験事 実によって破綻を来したかを記す.また,この問題を解決するために20世 紀 初頭に Planck,Einstein, Bohrらによって提案された基本的な概念を説明する. なぜ新しい物理学の体系(量子力学)が必要であるかという点に留意された
L
、
~1 ・ 1 量子化学
われわれが科学の研究をする場合,まず感覚を基にして自然現象を観察する であろう.このように,われわれの感覚で直接観測できるような大きさ,時間,
エネルギーなどを対象にし,それらの量の聞の関係を求める立場を巨視的な (macroscopic)立場という.これに対し微視的な(microscopic)立場がある. それは物質を構成する分子,原子さらには素粒子の状態にまで立ち入って考察 する立場である.例えば熱力学は圧力,温度,体積など直接測定できる量の間 の関係を研究する巨視的な立場に立つ学問である.これに対し現代の統計力学 は,熱力学で扱う系を原子や分子の集合としてとらえ,それら個々の構成粒子 の運動の総合的結果として巨視的な世界の法則を導き出すという方法をとって いるので,微視的な考え方から出発している.
前世紀末までの物理学は,主に巨視的な立場で研究されていた.このような 立場に立つ限り,すべての自然現象は古典物理学 (classicalphysics),すなわ ちNewton(ニュートン)の力学と Maxwell(マクスウェル)の電磁気学1)を基
1) N ewton (1643‑1727)は,よく知られているように古典力学の基礎をつくった.Maxwell (1831‑1879)はFaraday(ファラデー, 1791‑1867)の電磁場の考え方を基にして,電磁場 の基礎方程式を導いた.
『量子化学 (上巻)~ (原田義也 著/裳華房)
2 1 古典論から量子論へ
礎にして説明することができる.すなわち当時,物理学は基本的には完成した と信じられていたのである.しかし
2 0
世紀に入ってから(実際には1 9
世紀末 から),微視的な立場に立った研究が開始されるに及んで,古典物理学の法則は 次々と破綻を来すようになった.これを解決するためにつくられた新しい理論 体系が量子力学( q u antum m e c h a n i c s )
である.量子化学
(quantum c h e m i s t r y )
は量子力学の化学への応用である.したがっ て,2 0
世紀に入ってから発展してきた物理化学(理論化学)の一分野である.従 来の古典的な物理化学は,主に熱力学を理論的支柱としていた.例えば熱化学,化学平衡,溶液論,電気化学などはすべて熱力学の原理を用いて論じられてき たのである.
この新しい物理化学的方法一量子化学ーの実際問題への適用は容易ではな い.例えば,量子力学が正確に(解析的に)適用できるのは,水素原子と水素分 子イオン (H2+)のみである.最も簡単な分子である水素分子のエネルギーを求 める際にも,数値計算に頼らなければならないのである.しかし近年のコン ビューターの急激な進歩に伴って,複雑な分子に対する量子力学的計算がよい 精度で行われるようになった.さらに最近ではパソコンで化学反応の経路が推 定されるようになっている.
本書でははじめに量子力学の考え方をできるだけやさしく解説した後,それ を原子および分子の計算に適用する方法を述べることにする.
~1 ・ 2 古 典 物 理 学 の 破 綻
前節で,
2 0
世紀初頭以来,古典物理学で説明できないような現象が見出され るようになったと述べたが,その代表的な例を次に三つあげることにする.( a) 空洞輯射(黒体輯射)
空洞輔射は量子力学の成立の発端となった現象で,
1 9 0 0
年,Planck
(プラン ク)によって説明された.図
1 ・ 1
に示すように,温度 Tの壁で固まれた空洞があるとする.この空洞内 には電磁波が存在していて,空洞の壁との間で、エネルギーのやりとりをしてい波 動 性
前章で述べたように,光電効果の現象や水素のスペク卜ルを説明するため には,光を hνのエネルギーをもっ粒子(光子)と考えなければならない.し かし光を波としなければ説明のつかない現象一回折と干渉ーがある.本章 では,まずこれらの現象が光の粒子像といかに相容れないものであるかを述 べる.量子力学の誕生以来,波と考えられてきた光に粒子性がもち込まれた が,逆に粒子と考えられてきた電子や中性子に波動性が伴わないであろうか.
この予見はdeBroglieの鋭い直観により提唱され,電子の波動性を用いた電 子線回折の実験によって証明された.~ 2.4では,次章で量子力学の根本方程 式(Schrodingerの式)を導くための準備として,古典論における波の式を説 明する.
~2 ・ 1 光の波動性
Einsteinの光電効果の説明 (pp.5‑6)によって,光はエネルギーhνの 粒子と
考えなければならないことがわかったが,光を波としなければ解釈できない現 象もある.そ の 代 表 的 な 例 が回 折 (diffraction)と干渉Cinterference)の 現 象 である.
まず回折の例をあげよう.平行光線を幅
d
1)のスリットを通した後,スリット 後方のスクリーン上で観測する場合を考える.光を粒子と考えれば,図2 ・ 1 ( a )
に示すようにスリットの幅に相当する部分A'B'
だけが明るいはずである.と ころが実際には光はスリットAB
の外側にもまわり込み,図2
・l(b )
の 右 に 示 すように明暗の縞模様(回折像)を生じることはよく知られている.この結果は 光を波と考えれば,次のように簡単に説明することができる.波の場合にはス1)スリッ ト幅dは光の波長と同程度とする.
20 2波 動 性
A B
A '
三三三
B'
Y
F
α α , スリット
F
(幅 d) スクリーン (a)
v '
度強の光
ン
川 ノ
︑
lJ
ク 同
ス
因子1 スリットを通過する光.(a)光を粒子と考えた場合, (b) 光を波と考えた場合.右の図はスクリーン上の光の強度 分布を示す.
d sin8
リット
AB 上の
各点からあ
らゆる方向に進む光波(部分波)が出る.
このうち図 2 ・ 2 に示 すように θ方 向に進む光を考えると, B を通る波 と A を通る波の聞には d s i n 8 の光 路差を生じる
.いまこの光路差が,
ちょうど光の波長 A に等 しいとす る
.すなわち図2
・
2 スリットによる光の回折d s i n8
二A
このとき AB の中点 O を通る波と A を通る波の光路差は , ) . / 2 とな
って波の山と谷が重なり合い,
互いに打ち消し合う.同様にAO 聞の任意の点 P を通る波 は , AP = OQ を満足する OB 聞の点 Q を通る波と光路差が
'}/2となり打ち消 し合う
.したが
って AO 聞の各点を通る波は OB 聞の各点を通る波と打ち消し 合い,
全体として強度がO になることになる
.これが図2 ・
l(b ) の強度分布で,
暗部 α を生じる原因である.次の暗部
βは d s i n 8
二2 } ' を満足する O 方向で 生じる
.このときは AB を 4
等分したとき,隣り合った部分の各点を通る波が互いに打ち消し合
うのである
.このようにして一般に
d s i n 8 二 n } . n 二:t 1
,士2,… (2・
1・ 1
)の条件で暗部 α
,a
,βJs '
,… を生じ,その中間は明るいので回折像ができるの
S c h r o d i n g e r の波動方程式
この章では,古典論における波動方程式に粒子性をもち込むことによって,
微 視 的 粒 子 が 従 う べ き 方 程 式‑Schr凸dingerの式ーを導くことにする.
Schrodingerの式は波動方程式を出発点、としているため,その中に波動関数砂 を含む.この砂の物理的解釈(粒子として見たときの)がSchrod i nge rの式を 応用する上で重要な問題となる.次にSchrodingerの式を箱の中の自由粒子と 調和振動子の場合に適用することにする.これらの例を用いて,固有関数,
固有値,固有関数の規格直交性,縮重などの基本的な概念を説明する.
~3 ・ 1 時間に依存しない
S c h r o d i n g e r
方程式電子,原子などの微視的粒子が従うべき方程式を見出すのが,この節および 次の節の目的である.そのために波動の式から出発する.前ページで述べたよ
うに定常波
型T二
砂
(r)e‑i叫 の振幅砂 (r)が満足すべき方程式は( 3
・1
・1)ム砂 (r)
+
k2 tt (r)= 0 ( 3
・1 . 2 )
である.ただし ω,
k
は波の振動数および波数である.微視的粒子には波動性と 粒子性が認められているから,上の古典的な波動の式に粒子性を加味すれば,目的とする方程式に到達すると考えられる.
そのための手がかりは,次の
E i n s t e i n
の式(1・2
・4 )
とd eB r o g l i e
の式( 2
・3
・ 9)である.E = h
ν p=す h
( 3
・1
・3 )
(3・1・4)G
・1 . 3 )
,( 3
・I
・4 )
の左辺は粒子に関連したエネルギーと運動量,右辺は波動に34 3 Schrodingerの波動方程式
関連した振動数と波長を表しており,粒子性と波動性を関係づけている.
( 2 ・ 4 ・ 5 )
を用いて上の式を書き直すと,た二h/2
π (p.1 4
(1・3
・1 5 ) )
であるからI E = n w I
I p
= n k
I( 3 ・ 1 ・ 5 )
(3・1・6)
となる.ただし運動量および波数はともにベク トルであるから,
( 3 ・ I ・ 6 )
ではそ れらをベクトル表示にした.( 3
・1 . 2 )
のk
にG
・1 . 6 )
を用いるとム いや =0
となる.これを書き直して
( o 323232 x " ' + で
Oヲ
1/+
"て
'" o 2 z " ) } ) 砂 + u
px x2+
I p~~ y2+
I p} pzo = 0
[p/
+
py2+
p}]o 二 ( [ 子 会 r + ( 子 五 r + ( 予 言r J o
(3・
1・
7)となる.この式は波動の式
G ・ 1 . 2 )
にp二元k
の関係を用いて粒子性をもち 込んだとき得られた式で,両辺の []内を比較すると,粒子に関連した運動量 の各成分px,
Py,
pzがた
3
p x 一一→一ー一‑
o x
為 。
p 一一→一一一‑
y
o y
為 。
p 一z 一→一‑
o z
( 3
・1
・8 )
のように対応することを示している1)(脚注次頁).すなわち,粒子を波動に6直 訳'する関係は
G ・ I ・ 6 )
のp→為k
であるが,粒子性を残して 翻訳'すると│ p‑ ~ V I ( 3 ・ 1 ・ 9 )
量子力学の基礎
この章では前章で述べた議論を一般化して,量子力学(波動力学)の基礎を なしているいくつかの根本仮定と,それから導かれる一般原理を述べること にする.これらの仮定は,幾何学における公理と問機に証明できるものでは ない.それから得られた結論が実験結果と一致するかどうかで,その正当性 が判断されるものである.
この章は他の章に比べて抽象的な記述が多いので,そのような内容に初め て接する読者にはやや難解かも知れない.一読して理解できない場合には,
5章以下の具体的な問題に関連してこの章を何回も読み直し,その物理的意 味を理解するように努めていただきたい.
~4 ・ 1 系の状態
われわれが量子論で考察の対象とする微視的粒子の集まりを一つの系と考え る.このような系の状態は,どのように記述されるであろうか.前章では
1
粒 子の時間に依存しない系を考え,その状態が(規格化された)波動関数砂 (X,y, z) で与えられるとした.また粒子を x~x+dx, y~y 十 dy , z ~ z十dz(二 dv)に見出す確率が│砂(x,ぁz)12dvになると仮定した.これを時間に依存 する一般の系の場合にも拡張して,次の仮定を設ける.
仮 定
I
系 の 座 標 を qと す る と 時 刻tに お け る 系 の 状 態 は 波 動 関 数 lJf (q, t)によって与えられる.なお,I I J f
(q, t) 12dqは系の座標が q ~ q
+
dqをとる確率を表す.上の仮定で qは系を記述するために必要な座標をまとめて表したもので,例 えば n個 の 粒 子 系 の 場 合 に は X1,Y1, ZI,
…
J Xn, Yn, Znを代 表 し て qで表すも のとする.この場合,IIJf(q,t) 12dq
=
II J f
(X1, Y1, ZI,…
, Zn, t) 12 dX1 dY1 dZ1""" dZn
!
i
4・1系 の 状 態 65はn個の粒子をそれぞれ Xl~ Xl
+
dx, ! Yl ~ Yl+
dy ,! Zl ~ Zl+
dz1,…, Zn ~ Zn+
dZnの領域に見出す確率に相当する.系の状態が lJf(q, t)で決められるという量子力学の仮定は,古典物理学の考 え方と根本的に対立する.古典物理学では系の状態は座標
q
と運動量p
で決定 され,q
もpも時間 tの関数として,各瞬間に明確に定まっている.例えば質 量m
の質点の運動は t二O
における位置座標r o
と速度的を与えれば,運動 方程式F=m dZ d t '
によって自動的に決められる.すなわち r(t), p (t) (=
mv
(t)) が決定する のである.これに対し量子力学では,系の座標qはIlJf(q,t ) 1 2
を通して確率的 にしか決められない.pについても同様な事情があるが,それについては後述 する(~4 ・ 7
参照).なお
p p . 4 1 ‑ 4 2
で述べたいについての三つの要請は, IlJf(q,t )
12を確率と考え る以上,lJf(q,t)についても成立するとしなければならない.すなわちω f │ ψ
判刊ω (
匂ω
仏υ ω
州ω
,刈 q
ttの川仰)川│)( 2 幻 )
型lJfは1
価連続有限ででトある. (3) 11TとlJfe
i8とは同じ状態を表す.次に仮定
I I
に移る.仮 定
H
系の波動関数 lJfはを満足する.
H
lJf二坊主主。
t( 4 ・ 1 ・ 1 )
これは時間に依存する
S c h r o d i n g e r
方程式( 3 ・ 2 ・ 1 0 )
であって, ~3 ・ 2
で最も 1)積分f l
刊 t)' l
dqが収束しない場合もある このときはは)の要請を満たすことができない.との場合,11Jf(q,t) l'は相対確率を表すものとする.
一般の原子
この章では,一般の原子を取り扱う.まず, I電子近似の範囲内で最良の多 電子系の波動関数を求めるための方程式であるHartree‑Fockの式について 解説する.ついで,原子の近似的な│電子波動関数を決める方法‑Slaterの 方法ーを述べる.これらの知識を基にして元素の周期律を説明する.また,
いろいろな電子配置のエネルギーを求める方法を論じる.最後に原子のハミ ル 卜 ニ ア ン 広 軌 道 角 運 動 量
i
,スピン角運動量s
,お よ び 全 角 運 動 量 ] =i+s
の聞の交換関係を用いて原子の量子状態を分類する.~
1 0 ・ 1 Hartree‑ Fock
のSCF
法いま n個 の 電 子 を も っ 原 子 を 考 え る と , そ の ハ ミ ル ト ン 演 算 子 は
n n 02
H = 2 : : H c
(i)+
L:τ壬 ー (10
・1
・1)i=l i>j笠Jl4とorij
となる.ただし
恥 ) 三 五 ム 4 託
(10 ・ 1 ・ 2 )
である.上の二つの式で,
Z
は核の電荷(中性原子ではZ
二 η),r i
は 核 と 電 子i
の 距 離 , 九 は 電 子i
,j聞 の 距 離 を 表 す.また,L:は電子i
,jの す べ て の 組 み 合 せ に つ い て 和 を と る こ と を 意 味 す る l ) 丘 (i)は 電 子i
の 運 動 エ ネ ル ギ ー と 電 子t
と原子核のクーロン エ ネ ル ギーの和で、ある.したがって, (10 ・ 1 ・ 1 )
の 第1) ~は(1/2) ~と書くこともできる. 後者は i=j を除き , Z,}それぞれについて1から
i>j 宇J
nまで加え合わせることを意味する.
198
1 0
一般 の 原子1
項はn個の電子の運動エネルギーと n個の電子と核の聞のクーロンエネルギーの和,第2項はn個の電子相互間のクーロンエネルギーである.
前節のヘリウムの例からわかるとおり, 立の正確な解は ruを変数として含 む関数であるが,多電子系では計算が複雑になるため次の
1
電子近似から出発 する. すなわちlJf (n,乃,… ,rn)
=
仇(n)仇(η)… 仇(rn) (10・
1・
3) ただし,め (r i )
は規格直交化しているものとする.f c t ; * (
山( r l )d V l = O u
(10・
1・
4)上 式 で 仇
( r i )
の変数をr i
からn
に変えたのは,上式が(空間全体にわたる) 定積分であるため,変数を自由に選べるからである.(10・1・3)を用いてエネル ギ一期待値を求めるとE
二f
1Jf*f l
lJfd v
二tlf
1Jf*前 )lJfdv 十 会 frd ず d v
となる.上式でふ (i)が規格化されているので
f
1Jf*f I C υ
f c t n * ( r n ) c t n ( r n ) d V n
二
f c t ; * ( r ; )
良(i)め(r;)d V i
となる. 同様にf
1Jf*ポポ d r = f c t ; * ( r
川 ( η ) 4 z oz(rz)め
(η)ωV j
以上の諸式から,次式が得られる.E 二 三 i f c t ; *
(n)在日
)φi ( n ) ぬ + 会 f c t ; * ( n ) 山 ) £d iW J(η)叫
(10
・
1・
5) ただし,定積分の変数をr i
,rjからr
J,r 2
に変えた.水 素 分 子
この章では,まず量子化学の理論計算に用いられる単位(原子単位)を導入 する.次に原子・分子の近似波動関数を求めるこつの方法,分子軌道法
( M O
法)と原子価結合法
( V B
法)について解説する.そしてV B
法とMO;
去を水素 介子の電子状態の計算に応用する.また,これらの方法を出発点として近似 を高める手段を考察する.最後に電子相関まで含めた水素分子の正確な波動 関数について述べる.水素介子で用いた方法は一般の分子にも適用されるの で,この章の近似法の意味を十分理解しておくことが必要である.~
1 1 . 1
原 子 単 位量 子化学 の 理 論 計 算 で は , 質 量,電 荷 な ど の物 理量 に つ い て,以下で述べる
原 子 単 位
( a t o m i cu n i t
,a . u . )
を 使 う . 原 子 単 位 を 用 い る と 式 が 簡 単 に な る ので,本書ではこの章以降この単位を使うことにする.
原 子 単 位 系 は ガ ウ ス
( G a u s s )
単 位 系1)において 質 量の 単 位 = 電 子の 静 止 質量電荷 の 単 位 二 電 子 の 電 荷 の絶 対 値
角 運 動量の 単 位 二
Plank
の 定 数 の1 / ( 2 π )
rYle
= 9 . 1 0 9 3 8 2
X1 0 ‑
31kg e
=1 . 6 0 2 1 7 6
X1 O ‑
19C
元
= h / ( 2 π ) = 1 . 0 5 4 5 7 2
X1 0 ‑
34J s
とする.すなわち rYle二E二h二1で あ る . し た が っ て , 水 素 原 子 の ハ ミ ル トニアン(ただし原子核の質 量 を ∞, す な わ ち 原 子 核 は 静 止 と す る ) は 通 常 の
ガ ウ ス 単 位 系 か ら 原 子 単 位 系 に 移 る と
1) p.10注1)参照.真空中でァの間隔にある電荷eとdの聞にはたらくカは, SI単位系で はee'/ (47rEo r')であるのに対し,ガウス単位系ではee'/〆とする.ガウス単位系はSI 単位系で4π'Eo= 1とおいたことに相当する.
254 11水 素 分 子
H=
一 義 ム ー デ 伽 田 ) →2 ~~ム iω( 山.
となる.水素類似原子のエネルギーは
S I
単位(p.1 2 4 ( 6
・1
・2 6 )
参照),ガウス単 位,原子単位で次のようになる.一一
Z 2 m e e 4 Z 2 m e e 4
2
( S
I) 百五弓弓吉一 (471EO) 2初 旬→ Z 2 2 n 盟 ' 主 n ( G a u s s ) → ‑ζ(a . u . )
水素原子の基底状態のエネルギーは,上式で z=η二
1
とおいてE
1S二t a u
同様に
B o h r
半径は(1・3
・1 9 )
からε
Oh2一( 4 π
EO)克2 た2a o
二二二ァ一言一一一一一m e e " m e e " r(S
I)→一一‑::zm e e ( G a u s s )
→1 a . u .
となる.このようにして原子単位系で
( 1 1 ・ 1 ・ 2 )
長さの単位 二
B o h r
半径 ぬ =5 . 2 9 1 7 7 2 X 1 0 ‑
11m = 0 . 5 2 9 1 7 7 2 A
エネルギーの単位1)二
H
原子(核は静止)の基底状態のエネルギーの絶対値 の2
倍( h a r t r e e
と呼び,記号E h
を使う)= ‑2E
1S= E h
二4 . 3 5 9 7 4 4
X1 0 ‑
18J = 2 7 . 2 1 1 38eV
となる.また,角運動量は
l = mrv
と表されるから,原子単位では 速度の単位 =角運動量の単位/(質量の単位・長さの単位)=克
/ ( m e a o ) = 2 . 1 8 7 6 9 1 X 1 0
6m C 1時間の単位 二長さの単位/速度の単位
二ぬ/{た
/ ( m e
ぬ)}= m e a o 2 /
克二2 . 4 1 8 8 8 4
X1 0 ‑
17s
である.
1)単位距離ぬだけ離れたこつの単位電荷eの聞にはたらくポテンシャルエネルギーはガウ ス単位系で
e
2/ぬ==m e e ' / t i
2であるが,これは原子単位で1となるので,これをエネル ギーの単位と考えてもよい.2 原子分子
この章では一般の
2原子分子の│電子波動関数を
LCAO近似で求めて,等
核2原子分子と異核2原子分子の基底状態の電子配置を明らかにする.異核 2原子分子では電子介布に偏りがあるため,結合に極性を生じる.結合の極性とそれに伴う電気双極子モーメ
ン卜を
MO関数と
VB関数で説明する.最後 に電気陰性度を定める方法を述べる.
~
1 2 ・ 1 LCAO M O
この節では,はじめに一般の分子の分子軌道
(MO)
を原子軌道(AO)
の一次 結合でつくる方法を述べた後,それを2
原子分子に適用することにする.分子中に η個の電子と, N個の原子核が含まれているとし, それらの番号 をそれぞれ
i = 1
,2 , …, n
,A = 1
,2
,…,N とする.
またA番目の原子核の 電荷をZ A e
とすると,ハミルトニアンは原子単位で次のようになる.企 二
一土 7 L
ムι一会 会主 + 土 よ( 1 2・ 1・ 1 )
i=l L. i=JA =1 TiA i>j Tij
右辺の各項は順に電子の運動エネルギー, 電 子 核, および電子一電子聞の ポテンシャルエネルギーである. なお,核が動かないとすれば,核聞のポテン シャルエ ネ ル ギ ー 土
A > B Z A Z B I R A B
は一定値となるので,上式か
ら除いた(立に付
け加えても,各固有値を一定値ずらすだけである).原子核の運動を含めた取り扱いについては,下巻 1 6
章で述べる.上式を書き直して
企
=土 庁
c( i ) +去よ
i=l i>J rij
( 1 2 ・ 1 ・ 2 )
とする.
ただし,~ 12・1LCAO MO 287
息(i)
三 一 ι
ムz一 堂 A
(12
・1
・3 )
~ A=l TiA
は電子
t
の運動エネルギーと電子i
にN
個の核が及ぼすポテンシャルエネル ギーである.いま,電子i
に着目してi
以外の他の電子からのポテンシャル を電子雲による平均的な場(例えば,p . 2 0 0
で述べたH a r t r e e
のつじつまの合 う場)で置き換えるとすれば,電子i
と他の電子の聞のポテンシャルエネlレ ギーはV( η)
の形になるであろうi
以外の電子についても同様に考えると,( 1 2 . 1 ・ 2 )
の第2
項はn n
2 ナ =
~ V(r;)l >J 'U 1=1
(1
2
・1
・4 )
で近似できる.(1
2 . 1 ・ 2 )
と(12 ・ 1 ・ 4 )
より次式が得られる.企二土五(i) (1
2 ・ 1 ・ 5 )
お(i)三庄三(i)
+
V(ri) (12・1・6)f 1
が(12 ・ 1 ・ 5 )
のように各電子の座標の関数の和に分離されると,立の固有関 数型Tと固有値E
はlJf二 ψ1(1)仰 (2)
…
rpn(η))E
二 ε1十ε2+…
+εnとなる.ただし rpi,eiは五の固有関数と固有値で hrpi=εi rpi
(12・1・7)
(1
2 ・ 1 ・ 8 )
が成立する (p.1 5 6 ( 8 ・ 2 ・ 4 )
~( 8 ・ 2 ・ 6 )
参照).ここで約は分子全体に拡がっ た1
電子軌道であるからM O
で,ε z
はそれに対応するエネルギーである.(1
2 . 1 ・ 8 )
を解けばV
が決まるから, (12 . 1 ・ 4 )
の近似によって,多電子問題が1
電子問題に還元されたことになる.次に(1