卒業研究論文
世界の乗用車排出ガス量の将来予測
学籍番号
02D8101009C高野 泰彦
中央大学理工学部情報工学科 田口研究室
2006年
3月
あらまし
本研究では,乗用車排出ガス量推定モデルを作成し,乗用車排出ガス量の予測を行う.
まず,各国の所得に着目し,1 人当りの
GNI[$]を基準に世界を5つのグループに分け る.グループ毎に人口[人]と乗用車
1台当りの人口[人/台]のデータから乗用車保有台数モデ ルを作成する.次に,乗用車保有台数モデルから乗用車保有台数[台]を求め,乗用車の残存 率から乗用車保有台数を車令別に分ける.そして,年式別の
1km走行時乗用車排出ガス原 単位[g/km]と乗用車年間走行距離[km/year]から
1カ国の乗用車排出ガス量を推定する.こ の作業を,192 の国と地域を対象にして,ヨーロッパ,北米,中南米,アジア,アフリカ,
オセアニアの
6大陸で行い,
6大陸の合計値で表される世界の乗用車排出ガス量を
2000年 から
2050年まで推計する.
キーワード:回帰分析,最小自乗法,ロジスティックモデル,乗用車排出ガス
目次
第
1章 はじめに...1
第
2章 回帰分析...2
2.1 回帰分析の基礎...2
2.2 線形最小自乗法...3
2.3 滑降シンプレックス法...4
2.4 決定係数...6
第
3章 乗用車排出ガス量推定モデル...7
3.1 乗用車排出ガス量推定モデルの全体構成...7
3.2 排出ガス量原単位...8
3.3 ロジスティックモデル... 10
3.4 乗用車保有台数モデル... 11
3.4.1 国の分類... 11
3.4.2 乗用車保有台数モデルの作成... 13
3.4.3 各グループの乗用車保有台数モデル... 17
3.5 乗用車残存率モデル... 21
3.5.1 先進工業国の乗用車残存率... 21
3.5.2 開発途上国への適用... 28
3.6 乗用車販売台数モデル... 29
3.7 乗用車年間走行距離モデル... 31
3.7.1 乗用車年間走行距離データの考察... 31
3.7.2 走行距離別タイプ... 32
第
4章 予測結果と考察
... 344.1 乗用車保有台数... 34
4.2 乗用車年間走行距離... 36
4.3 乗用車排出ガス量... 37
4.3.1 一酸化炭素(CO)... 38
4.3.2 窒素酸化物(NOx)... 40
4.3.3 二酸化炭素(CO2
)
... 424.3.4 炭化水素(HC)... 44
4.3.5 考察... 46
第
5章 おわりに... 47
5.1 まとめ... 47
5.2 今後の課題... 47
謝辞
... 48参考文献
... 48付録
A付録
B第 1 章 はじめに
現在,自動車は我々人間にとって,なくてはならないものとなっている.2003 年末時点 の世界平均で,乗用車は
10.4人に
1台,全
4輪車だと
7.5人に
1台というところまで普及 している.エアバックシステムによる安全性の向上や,カーナビゲーションシステムによ り目的地に迷わず行けるようになったことなど,自動車の高性能化も自動車の普及に影響 を与えていると考えられる.
しかし,自動車が,その便利さとは逆に人体や環境に様々な悪影響を与える有害なガス を排出していることを,我々はもっと意識しなければならない.具体的には,排出ガスが 与える影響は,光化学スモッグの発生,地球温暖化,粘膜の刺激,血液の酸素運搬機能の 阻害などである.また,排出ガス濃度は燃費の悪化に伴い上昇する.燃費が悪い自動車に は中古自動車が多く含まれ,この中古自動車が大量に存在していることも環境に影響を与 える大きな要因である.例えば,日本の自動車は燃費が良く長持ちすると言われており,
大量の安価な中古自動車が中東やアフリカに輸出されている.日本で
10年,
20年使用され た自動車が中古車となり,輸出された国でまた
20年,30 年と使用されるのである.
近年では,京都議定書による温室効果ガス削減や,ハイブリッドカーの普及,アイドリ ングストップの呼びかけなど,環境に対しての取り組みが見て取れるが,やはり,我々一 人ひとりがきちんと意識することが大切である.
そこで,本研究では,我々が普段良く使用する乗用車に着目し,乗用車の排出ガス量を
推定する.乗用車将来推計モデルを構築し,
192の国と地域を対象にして,
2000年から
2050年までの世界の乗用車排出ガス量を推定する.
第 2 章 回帰分析
本章では,本研究でモデル作成のために使用する回帰分析について説明する.なお,本 章で述べる回帰分析の基礎,最小自乗法,決定係数は文献[1],滑降シンプレックス法は文 献[2]にもとづいて述べる.
2.1 回帰分析の基礎
回帰分析は,目的変数(従属変数)と呼ばれる変数 と説明変数(独立変数)と呼ばれ る変数
y
x
の間の関係をとらえる統計手法である.その基本モデルを
ε +
= f (x )
y
(2.1)とする.
関数 f は変数 y, x 間の本来の関係を表し, ε は誤差である.
xの値を決めても の値は 必ずしも に一致せず, だけ食い違う.この差が誤差となる.同じ
y )
(x
f y − f (x )
xの値で実
験・観測を繰り返しても,その都度 ε の値が食い違うことがある.したがって,誤差項をラ ンダムな量と考える必要がある.
実際の観測モデルは,複数の説明変数値 に対応する目的変数値 が対で観測されているとすると
x
nx
x
1,
2, L , y
1, y
2, L , y
nn n
n
f x
y
x f y
x f y
ε ε ε
+
=
+
=
+
=
) (
) (
) (
2 2 2
1 1 1
M
(2.2)のように表される.
ここで ε
iは対応する誤差列である.観測式において,データ は既知であり,観測 誤差
) , ( x
iy
iε
i及び関数型 は未知である.この関数型 を求めることが回帰分析の主な目標であ る.関数 は,パラメータ
f f
f θ を除いて概形が分かっているとき f = f
θとする.観測式から
関数 f
θ(つまり関数 f に付随するパラメータ θ の値)を求める基本的な手法が最小自乗法
であり,誤差自乗和と呼ばれる未知パラメータ θ の関数
∑
=−
=
ni
i
i
f x
y S
1
))
2( (
)
( θ
θ (2.3)を最小にするパラメータ を真のパラメータの推定値(最小自乗推定量)とする考え方であ る.
θ
ˆ説明変数が
1つであるときを単回帰モデル,説明変数が複数であるときを重回帰モデル と呼ぶ.さらに関数 f
θ( x ) が
xの線形関数であるとき線形回帰モデルと呼び,それ以外を総 称して非線形回帰モデルと呼ぶ.
2.2 線形最小自乗法
2.1
節で記した通り,回帰分析では最小自乗法を用いて,誤差自乗和を最小にするパラメ ータを推定している.ここでは,回帰分析に用いる関数 が線形関数である場合について 説明する.
f
線形最小自乗法とは, 個のデータ と直線 との
差 の自乗和 の値を最小にするような直線 を「求めたい直線」とする考え方 である.式(3.4)に ,式(3.5)に を示す.
n
{( x
1, y
1), ( x
2, y
2), L ( x
n, y
n)} y = ax + b
d S
y = a ˆ x + b ˆ
d S
) , , 2 , 1 ( )
( ax b i n
y
d
i=
i−
i+ = L
(2.4)2 2
2 2
1
d d
nd
S = + + L +
(2.5)以下では, として, の最小値及び最小値を与えるパラメータを求める方法 について説明する.
b ax
y = +
S上記の
n個のデータが与えられた場合
Sは
∑
=+
−
=
ni
i
i
ax b
y S
1
))
2(
(
(2.6)となる.さらに,この式を展開すると
∑
∑
∑
∑
∑
∑
=
=
=
=
=
=
+
−
− + +
=
+
−
− + +
=
n
i i n
i i i n
i i n
i i n
i i n
i
i i
i i i
i
x ab y
x a y b nb x a y
abx y
ax by b
x a y S
1 1
1 2
1 2 2 1
2 1
2 2 2 2
2 2
2
) 2 2
2 (
(2.7)
となる.
ここで,
bを固定すれば は
aの
2次関数となり の最小値が存在していることが分かる.
パラメータ についても同様に考える.よって, の値を最小にするパラメータ は
S a
b S
a ˆ , b ˆ
∑
∑
∑
∑
∑
=
=
=
=
=
+
−
∂ =
∂
+
−
∂ =
∂
n
i i n
i i
n
i i n
i i i n
i i
x a y b nb
S
x b y x x
a a S
1 1
1 1
1 2
2 2
2
2 2
2
(2.8)
から求めることができる. をパラメータで微分しているのは接線の傾きが
0になるとい う考えからである.
S
2.3 滑降シンプレックス法
本研究では,非線形関数のパラメータ推定を行う際に非線形最小自乗法として滑降シン プレックス法を用いる.ここでは,その滑降シンプレックス法を説明する.
以下では
3変数関数 の最小値を与える座標点 を求める場合について説 明する.
) , , ( x y z
f ( x , y , z )
初期値は,一般にパラメータ数 p の数より
1個多い座標点を設定する.初期値を与える 座標点の個数を としたとき,
nn = p + 1 である.各座標点での関数値を
) , , 2 , 1 ( ), , ,
( x y z i n
f
f
i=
i i i= L
(2.9)とする.この 個の座標の集合がシンプレックスを形成する.このシンプレックスの体積を 最小にすることが目的となる.
n
) , , ( x
iy
iz
if が最大になるパラメータを とし,そのときの関数値を とする.
が最小になるパラメータを とし,そのときの関数値を とする.
) , ,
( x
hy
hz
hf
h) , , ( x
iy
iz
if ( x
s, y
s, z
s) f
sまず, ( x
h, y
h, z
h) を除く p 個の座標点の重心 を中心にして, を対
称移動させた座標点 及び関数値 を
) , ,
( x
0y
0z
0( x
h, y
h, z
h)
), ,
(xr yr zr fr
) 0 ( )
1 (
) 1 (
) 1 (
0 0 0
⎪ >
⎩
⎪⎨
⎧
− +
=
− +
=
− +
=
α α
α
α α
α α
h r
h r
h r
z z z
y y y
x x x
(2.10)
により求める.ここで,重心 ( x
0, y
0, z
0) は,
⎪ ⎪
⎪
⎩
⎪ ⎪
⎪
⎨
⎧
=
=
=
∑
∑
∑
≠
≠
≠
h i
i h i
i h i
i
n z z
n y y
n x x
1 1 1
0 0 0
(2.11)
である.そして,式(2.10)より求まる関数値
frの値によって場合分けを行う.
s
r
f
f i ) <
( の場合
座標点 ( x
e, y
e, z
e) 及び関数値 f
eを
) 0 1
( )
1 (
) 1 (
) 1 (
0 0 0
=
⎪ ≥
⎩
⎪⎨
⎧
− +
=
− +
=
− +
=
γ γ
γ γ
γ γ
γ γ
または
z z
z
y y
y
x x
x
r e
r e
r e
(2.12)
により求める.そして,求めた f
eが f
e< f
rならば, を改善値の候補とし,
ならば, を改善値の候補とする.ここでいう改善値とは, を与える 座標点 に置き換える値のことを言う.
) , , ( x
ey
ez
er
e
f
f >
(xr,yr,zr)f
h) , , ( x
hy
hz
hh
r
f
f ii ) >
( の場合
座標点 ( x
c, y
c, z
c) 及び関数値 f
cを
) 1 0
( )
1 (
) 1 (
) 1 (
0 0 0
≤
⎪ ≤
⎩
⎪⎨
⎧
− +
=
− +
=
− +
=
β β
β
β β
β β
z
z z
y y
y
x x
x
h c
h c
h c
(2.13)
により求め, ( x
c, y
c, z
c) を改善値の候補とする.
s r
h
f f
f
iii ) > >
( の場合
) , ,
(xr yr zr
を改善値の候補とする.
以上より求めた改善値の候補を, を与える座標点 に置き換える.この操作 をシンプレックスの体積が収束するまで繰り返す.
f
h( x
h, y
h, z
h)
このようにして,関数 f ( x , y , z ) の最小値を与える座標点 ( x , y , z ) を求めることができる.
2.4 決定係数
決定係数は,直線(曲線)回帰の当てはめの善し悪しを判断するために使われる.本研 究でも,この決定係数を用いて,モデルの当てはめの良さを示す.
まず,以下の恒等式を定義する.
2 1 0
1
2 2
1
2 1
1
2 0
ˆ ) (
ˆ ) (
) (
S S S
y y S
y y S
y y S
n
i
i i n
i i n
i i
+
=
−
=
−
=
−
=
∑
∑
∑
=
=
=
(2.14)
S
0と を で割れば,目的変数と,その予測値の標本分散になる.標本分散とはデータ の全体としてのばらつきをとらえる量である.標本回帰式
S1 n
) (
ii
f x
y =
θを仮定すると,目的
変数の見かけ上のばらつき は,式 によって合理的に説明できるばらつき と,そ れでも依然として説明しきれない残差のばらつき に分解できる.ここでいう合理的とは,
説明変数が となると目的変数が となることである.目的変数の見 かけ上のばらつきのうち,回帰式で合理的に説明できる部分が多ければ多いほど,当ては めがうまくいったと言える.そこで決定係数を
S
0f
θ( x
i)
S1S2
x
nx
x
1,
2, L , y ˆ
1, y ˆ
2, L , y ˆ
n1 2 0
S
R = S (2.15)
と定義すれば,決定係数が
1に近ければ近いほど,当てはめが良いと判断できる.
第 3 章 乗用車排出ガス量推定モデル
本章では,第
2章の分析手法を用いて,世界の乗用車排出ガス量の推定モデルの全体構 成と,排出ガス量を推定するために使用する乗用車保有台数モデル,乗用車残存率モデル,
乗用車販売台数モデル,乗用車年間走行距離モデルについて説明する.
3.1 乗用車排出ガス量推定モデルの全体構成
本研究では,乗用車排出ガス量を,乗用車保有台数モデル(以下保有台数モデル),乗用
車残存率モデル,乗用車販売台数モデル(以下販売台数モデル),乗用車年間走行距離モデ
ル(以下年間走行距離モデル)のそれぞれの推計から算出する.まず,1 人当りの
GNIモ
デルから,乗用車
1台当りの人口モデルを決定し,その乗用車
1台当りの人口モデルと人
口から保有台数モデルを作成する.乗用車残存率モデルの
1つのパラメータを決定するパ
ラメータモデルにより推定したパラメータを用いて乗用車残存率モデルを作成する.作成
した保有台数モデル,乗用車残存率モデル,販売台数モデルを用いて車令別保有台数(年
式別保有台数)[台]を求める.続いて,その車令別保有台数[台]に排出ガス原単位[g/km]を
乗算し,走行距離
1km当りの排出ガス量[g/km]を算出する.最後に,
1km当りの排出ガス
量[g/km]に年間走行距離[km/year]を乗算し,年間の排出ガス量[g]を算出する.この作業を
国別に行い世界の排出ガス量を算出し予測する.排出ガス算出までの全体フローを図
3.1に
示す.
図
3.1 乗用車排出ガス量の推定手順3.2 排出ガス量原単位
排出ガス量の算出には,文献
[3]の排出ガス原単位を使用する.この排出ガス原単位は,
日本の排出ガス規制をもとに作成されており,規制年と速度(時速)から,車種別の
1km当りの排出ガス量が分かる.
本研究では,速度
32.5km/hの排出ガス原単位を使用する.ここで,速度
32.5km/hを採 用したのは,文献[4]から日本の平均時速が
35km/hとなっているためである.車種は乗用 車(軽乗用車含む)を考え,全てのガソリン・
LPG乗用車と仮定する.
LPGとは,
LiquefiedPetroleum Gas
の略で液化石油ガスと呼ばれており,主にタクシー用燃料として使われて
いる.表
3.1から表
3.4にガソリン・LPG 乗用車の成分別排出ガス原単位を記す.
面積
[平方
km]人口
[人
]車令別保有 台数
[台
]排出ガス原単位
[g/km]1km
走行時の
排出ガス量
[g/km]年間排出ガス量
[g]:モデル
1人当り
GNI[$]乗用車
1台当り
人口
[人
/台
]保有台数[台]
販売台数
[台
]パラメータ 乗用車残存率
年間走行距離
[km/year]:変数,推定値
表
3.1 窒素酸化物の排出ガス原単位成分 代表速度[km/h]
窒素酸化物 規制年 4 7.5 12.5 20 32.5 50 70
NOx 未規制 3.754866 2.802564 2.83 2.283656 2.285806 2.269772 3.495192 1973 年 3.141023 1.989821 1.798889 1.5675 1.522222 1.611538 2.481586 1975 年 1.888605 1.093 1.032 1.058462 0.965467 0.964737 1.492105 1976 年 1.762901 0.93875 0.724375 0.909444 0.927864 0.900524 1.237249 1978 年 0.506364 0.40875 0.248333 0.280351 0.312368 0.3336 0.545455 1986 年 0.60771 0.358554 0.243805 0.179761 0.143814 0.139428 0.165104 2000 年 0.14404 0.09273 0.069274 0.05608 0.047623 0.042886 0.040373 2005 年 0.064548 0.041555 0.031043 0.025131 0.021341 0.019218 0.018092
単位:g/km
表
3.2 二酸化炭素の排出ガス原単位成分 代表速度[km/h]
二酸化炭素 規制年 4 7.5 12.5 20 32.5 50 70
CO2
未規制 594.0293 365.9336 259.7021 198.3175 159.0425 142.7763 147.6449 1982 年 510.9545 325.3229 237.6113 185.1544 148.4917 128.079 123.1689 1986 年 708.4189 439.8171 317.0277 247.9586 203.6836 178.8896 165.7336 2000 年 571.2507 354.8462 255.9185 200.2716 164.6006 144.6248 134.0254 2005 年 571.2507 354.8462 255.9185 200.2716 164.6006 144.6248 134.0254
単位:g/km
表
3.3 一酸化炭素の排出ガス原単位成分 代表速度[km/h]
一酸化炭素 規制年 4 7.5 12.5 20 32.5 50 70
CO 未規制 77.54794 43.7758 28.33711 19.65284 14.08601 10.96858 9.314433 1973 年 73.65123 39.39822 27.54683 17.10836 10.41702 6.66988 4.681599 1975 年 8.18347 4.914057 3.419468 2.578762 2.039848 1.738056 1.577921 1986 年 4.613373 2.934444 2.166934 2.166934 1.458463 1.303485 1.221251 2000 年 1.931485 1.351956 1.087029 0.938007 0.84248 0.788985 0.7606 2005 年 1.934137 1.353812 1.088521 0.939295 0.843637 0.790068 0.761644
単位:g/km
表
3.4 炭化水素の排出ガス原単位成分 代表速度[km/h]
炭化水素 規制年 4 7.5 12.5 20 32.5 50 70
HC 未規制 9.166336 5.313924 3.552822 2.562201 1.927189 1.571581 1.382892 1973 年 9.029507 5.026544 3.196618 2.167285 1.507456 1.137951 0.941888 1975 年 1.455528 0.716084 0.409975 0.274951 0.231817 0.230971 0.205379 1986 年 0.606219 0.300348 0.160522 0.081869 0.031451 0.031451 0.031451 2000 年 0.08888 0.050937 0.033592 0.023835 0.01758 0.014078 0.01222 2005 年 0.041116 0.023563 0.015539 0.011026 0.008133 0.006512 0.005653
単位:g/km
3.3 ロジスティックモデル
排出ガス量を予測するにあたって本研究では,関数が非線形となる場合は,ロジスティ ックモデルを使用して予測モデルを作成する.ロジスティックモデルは,時点
xにおける の値が何らかの意味で「成長率」と解釈されるデータによく応用される.ここでは,その ロジスティックモデルの説明をする.
y
ロジスティック曲線と呼ばれる関数は,非線形
1階微分方程式
2
d
d y
a cy c x
y = −
(3.1)の解である.この方程式は,経過時間 に伴う対象量 の変化量 が,現在の対象量の
1次相関の増加成分と
2次相関の減少成分を持つことを表している.初期状態
の近傍では,まだ全体の量が少ないため,
1次要素が効いており増加傾向が見られる.全体 量が増加すると
2次項が効いてくるため,次第に増加量が減少し,パラメータで決められ る一定値へ漸近することになる.ロジスティック曲線の一般解は式(3.2)で与えられる.グ ラフ化したものを図
3.2に示す.
x
d
y d y
) 0 , 0 ( x = y =
) exp(
1 b cx
y a
−
= +
(3.2)この曲線の性質を以下に示す.
・ パラメータ :極限値を表し,
ay はパラメータ を超えない.
a・ パラメータ :
b曲線が,線形領域から飽和領域に移行する境界に影響を与える(図
3.3).・ パラメータ :曲線の傾きを表す.
c0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21
x y
b = 5 b = 50 b = 500
x y
図
3.2 ロジスティック曲線図
3.3 a=1,c=0.5として
bを変化させた時の
ロジスティック曲線
3.4
乗用車保有台数モデル
3.4.1 国の分類世界の乗用車保有台数の予測を行う.世界には多数の国が存在しているが,それぞれの 国ごとに特徴があり,世界共通のモデルを作成することは困難であると考えられる.そこ で世界各国を先進工業国と開発途上国の
2つに大きく分ける.先進工業国については,経 済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)に加盟している国々が一般的に先進 工業国とされている.開発途上国については,DAC が
1人当りの国民総所得(GNI)を基 準に,開発途上国(援助国)を「後発開発途上国」, 「後発開発途上国以外の低所得国」, 「低
−中所得国」,「中−高所得国」,「高所得国」に分けている.また,上記の国々とは援助の 形態が異なる国々として「中・東欧諸国,旧ソ連諸国の経済移行国(その中の高所得国)」,
「より進んだ途上国」がある.1 人当りの
GNIの基準値は文献[5]を参考にした.
本研究では, 「後発開発途上国」と「後発開発途上国以外の低所得国」を新たに「低所得
国」とし,さらに,「高所得国」と「中・東欧諸国,旧ソ連諸国の経済移行国(その中の高
所得国)」及び「より進んだ途上国」を新たに「高所得国及び先進途上国」とする.これに
よって上記の開発途上国の
7つの分類を
4つにし,それに先進工業国を加えた
5つのグル
ープの各々のモデルを作成する(表
3.5).これらのモデルは1人当りの
GNIをもとに作成
するため,1 人当りの
GNIの推移とともにモデルを変更していく必要がある.ただし,先
進工業国は
1人当りの
GNIで決まるわけではなく,また,先進工業国となる国を予測する
ことも困難なので,先進工業国は不変なものとして考える.よって,1 人当りの
GNIによ
るモデルの変更は開発途上国のみとなる.
表
3.5 国のグループとその特徴国 特
工 業 国
O
て
徴
先進
ECDの
DACに加盟し いる国
高
及
先
1
人当
の国 又
「中・
諸
( 国
途 れ
ている国
りの
GNIが$9206 以上
は
東欧諸国,旧ソ連 国 の 経 済 以 降 国 そ の 中 の 高 所 得
)」,「より進んだ 上国」に分類さ
中 1 人
$2
〜$9205 の国 当 り の
GNIが
976
低 1人当
〜
75の国 りの
GNIが$746
$29
開発途上国
低 1人当
45以下の国
りの
GNIが$7
3.
保有台数モデル(以下保有台数モデル)を作成する.この保有台数モデルは車令 別
ず,乗用車
1台当りの人口モデルを 作成し,各国の乗用車
1台当りの人口を予測する.そして,乗用車保有台数は,人口を乗 用車
14.2 乗用車保有台数モデルの作成
乗用車
保有台数の算出に使用するだけでなく,販売台数モデル,年間走行距離モデルにも使用 する.
乗用車の保有台数は国ごとに大きく異なるため,ま
台当りの人口で除算して求める(式(3.3)).
台当り人口[人/台]
乗用車1
モデルの作成方法については,先進工業国の乗用車
1台当りの人口のデータを用いて説 明する.乗用車
1台当りの人口のデータは,文献[6]〜[13]から取得した.図
3.4は
1979年 から
1999年までの乗用車
1台当りの人口を国ごとにプロットした図である.経過年数とと もに乗用車
1台当りの人口が減少していることは分かるが,先進工業国共通のモデルを作 成するには不向きな図である.そこで,西暦を基準にグラフ化するのではなく,乗用車
1台当りの人口を基準にグラフ化する.つまり,それぞれの国ごとに,乗用車
1台当りの人 口の推移を,乗用車
1台当りの人口を基準にして移動させていくということである.具体 的な手順としては,まず,1979 年の乗用車
1台当りの人口を使用して各国を降順にソート する.ここで,説明のため,ソート後の国々を先頭から
A国,B 国,…として考える.そ して,
A国の
1979年から
1999年の乗用車
1台当りの人口の中から
B国の
1979年の乗用 車
1台当りの人口に最も近い値を見つけ,B 国の乗用車
1台当りの人口のデータを移動す る(図
3.5).これを順次行っていく.ただし,C 国以降に関して
人口[人]
乗用車保有台数[台]
= (3.3)は,C 国より前の国々の 乗用車
1台当りの人口の,同一の
x値での平均値を算出し,その中から
1979年の乗用車
1台当りの人口に最も近い値を見つけ移動させていく(図
3.6).図
3.6の先進工業国の乗用車
1台当りの人口と経過年数を使用して,先進工業国の乗用車
1台当りの人口モデルを作成する.図
3.6から経過年数の増加とともに,乗用車
1台当りの 人口が減少し,飽和していることが分かる.これは図
3.2のロジスティック曲線を
x軸に関 して対称移動させた図と同じ形 を成す.よって,ロジスティックモデルの逆数をとった
op
a
cX
Y = 1000 ( 1 + b exp( −
t))
(3.4):パラメータ
:経過年数,
台当り人口,
:乗用車
X a bcYop 1 t , ,
を使用し,パラメータを推定する.推定したパラメータの値を表
3.6に示す.そして,実際
のデータと本モデルで得られた乗用車
1台当りの人口の推移を図
3.7に示す.決定係数は
0.]から取得
した.この図から
GNIと経過年数には高い相関があることが分かるので,このデータをも とにロジスティックモデルのパラメータ推定を行い,
949
となり高い相関がある.よって,先進工業国以外の国のグループに対しても式(3.4) を乗用車
1台当りの人口モデルとして使用する.
このモデルを使用して長期予測を行うには
1人当りの
GNI(以下GNI)に応じてモデルの変更をする必要がある.そのため,GNI の将来予測をする.図
3.8は
171カ国の
2000年から
2004年までの
GNIを,上記の乗用車
1台当りの人口の移動(図
3.5)と同様に西暦ではなく
GNIを基準にプロットした図である.各国の
1人当りの
GNIは文献[14
GNI
の予測モデルとして
) exp(
1 + b − cX
t (3.5)境が約
9,000ドルとなっているためである(表
3.5).推定したパラメータの値を
3.7
に示す.そして,実際のデータと本モデルで得られた
1人当りの
GNIの推移を図
3.9og
Y = a
:パラメータ
:経過年数,
,
:1人当り
GNI X a bcYog t , ,
を使用する.ここで,
GNIが
10,000ドル未満のデータ(
2000年時)のみを使用している のは,
GNIによるモデルの変更は開発途上国のみであり, 「高所得国」と「中−高所得国」
の
GNIの 表
に示す.
0
1979
1981 83 85
1987 1989
1991 1993
1995 97 1999
乗用 車1台 当 り人口 [人]
2 4 6 8 10
12 Greece Portugal
Spain Japan
Ireland Finland
U.K Denmark
Austria Norway
Netherlands Italy
Belgium Germany
Switzerland France Sweden Australia New Zealand
19 19 19
年
Canada Luxembourg U.S.A
図
3.4先進工業国の乗用車
1台当りの人口推移(移動前)
1979
年
1979年
図
3.5 グラフ移動の考え方表
3.6先進工業国の乗用車
1台当りの人口予測モデル(式
(3.4))のパラメータ推定値と決定係数
a
b
c
決定係数
推定値 563.5629 5.8227 0.0583 0.949
1999
年
1999年
乗用車一台当り人口 乗用車一台当り人口
移動前 移動後
0 2 4 6 8 10 12
1 6 11 16 21 26 31 36 41 46 51 56 61 66 71 76 81 86 91 経過年数[年]
乗用車1台当り人口[人]
Greece Portugal
Spain Japan
Ireland Finland
U.K Denmark
Austria Norway
Netherlands Italy
Belgium Germany
Switzerland France Sweden Australia New Zealand Canada Luxembourg U.S.A
図
3.6 先進工業国の乗用車1台当りの人口推移(移動後)
0 2 4 6 8 10 12 14
1 6 11 16 21 26 31 36 41 46 51 56 61 66 71 76 81 86 91 経過年数[年]
乗用車 1台当り 人口[ 人]
Greece Portugal
Spain Japan
Ireland Finland
U.K Denmark
Austria Norway
Netherlands Italy Belgium Germany Switzerland France Sweden Australia New Zealand Canada Luxembourg U.S.A MODEL
図
3.7 先進工業国の乗用車1台当りの人口モデル
表
3.7 1人当りの
GNIモデル(式(3.5))のパラメータ推定値と決定係数
a
b
c
決定係数
推定値 22722500000 161463700 0.0337 0.928
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000
1 11 21 31 41 51 61 71 81 91 101 111 121 131 経過年数[年]
1 人当り G N I[ $ ]
図
3.81
人当りの
GNIの国別推移
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000
1 11 21 31 41 51 61 71 81 91 101 111 121 131 経過年数[年]
1人 当 り G N I[ $]
図
3.91
人当り
GNIモデル
3.4.3 各グループの乗用車保有台数モデル
3.4.2
節で先進工業国の乗用車
1台当りの人口モデルのパラメータ推定(表
3.6)を行っ
たので,先進工業国以外の国のグループ(表
3.5)に対しても,先進工業国と同様にして,乗用車
1台当りの人口モデルのパラメータを推定する.各グループに対して乗用車
1台当 りの人口モデルを使用して推定したパラメータの値を表
3.8から表
3.11に示す.そして,
実際のデータと本モデルから得られた乗用車
1台当りの人口を図
3.10から図
3.17に示す.
パラメータを推定した結果,3.4.2 節の先進工業国の乗用車
1台当りの人口モデルのパラメ ータ推定結果(表
3.6)と合わせて考えると,「先進工業国」,「高所得国及び先進途上国」,「中−高所得国」,「低所得国」では決定係数が
0.9以上と高い値が得られたが, 「低−中所
得国」では決定係数がおよそ
0.62となり,あまり良い相関は得られなかった.また,極限
値を表すパラメータ の値は,
a「先進工業国」から「低所得国」まで順に小さくなっており,
所得が低い国のグループほど乗用車
1台当りの人口が多くなっていることが分かる.乗用 車
1台当りの人口モデルの極限値は,1000 をパラメータ の値で除算することによって求 める.
a
表
3.8高所得国及び先進途上国の乗用車
1台当りの人口予測モデルのパラメータ推定値と決定係数
a
b
c
決定係数
推定値 404.1142 81.6739 0.1314 0.962
表
3.9 中−高所得国の乗用車1台当りの人口予測モデルのパラメータ推定値と決定係数
a
b
c
決定係数
推定値 175.6687 21.9988 0.0659 0.980
表
3.10 低−中所得国の乗用車1台当りの人口予測モデルのパラメータ推定値と決定係数
a
b
c
決定係数
推定値 93.0154 15.3770 0.0256 0.616
表
3.11 低所得国の乗用車1台当りの人口予測モデルのパラメータ推定値と決定係数
a
b
c
決定係数
推定値 30.3143 91.7022 0.0274 0.948
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
1 5 9 13 17 21 25 29 33 37 41 45 49 53 57 61 65 69 73 経過年数[年]
乗用車1台当り人口[人]
Korea Rep. Romania Bulgaria Poland Singapore Hungary
Israel Bahrain
Libya Cyprus
U.A.E Brunei D.
F. Polynesia Qatar
Bahamas Malta
Slovakia Bermuda N.Antilles Gibraltar N.Caledonia Kuwait Czech Rep. Slovenia
図
3.10高所得国及び先進途上国の乗用車
1台当りの人口推移
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
1 5 9 13 17 21 25 29 33 37 41 45 49 53 57 61 65 69 73 経過年数[年]
乗用車1台当り人口[人]
Korea Rep. Romania Bulgaria Poland Singapore Hungary
Israel Bahrain
Libya Cyprus
U.A.E Brunei D.
F. Polynesia Qatar Bahamas Malta Slovakia Bermuda N.Antilles Gibraltar N.Caledonia Kuwait Czech Rep. Slovenia MODEL
図
3.11高所得国及び先進途上国の乗用車
1台当り人口モデル
0 20 40 60 80 100 120 140 160
1 6 11 16 21 26 31 36 41 46 51 56 61 66 71 76 81 86 経過年数[年]
乗用 車1台当り 人 口 [人 ]
Botswana Gabon Mauritius Chile Costa Rica Malaysia
Panama Mexico
Uruguay Saudi Arabia
Brazil Oman
Barbados Venezuela Lebanon Argentina T. & Tobago Antigua & B.
図
3.12 中−高所得国の乗用車1台当りの人口推移
0 20 40 60 80 100 120 140 160
1 6 11 16 21 26 31 36 41 46 51 56 61 66 71 76 81 86 経過年数[年]
乗用 車1台当り 人 口 [人 ]
Botswana Gabon Mauritius Chile Costa Rica Malaysia
Panama Mexico
Uruguay Saudi Arabia
Brazil Oman
Barbados Venezuela Lebanon Argentina T. & Tobago Antigua & B.
MODEL
図
3.13 中−高所得国の乗用車1台当り人口モデル
0 50 100 150 200 250 300
1 9 17 25 33 41 49 57 65 73 81 89 97 105 113 経過年数[年]
乗用車1台当り人口[人]
Bolivia Honduras
Syria Sri Lanka
Thailand Ecuador
Egypt Iraq
Philippines Paraguay El Salvador Guatemala
Turkey Dominican
Tunisia Peru
Morocco Colombia Algeria Swaziland
Jordan Iran
Namibia Guyana
Fiji Jamaica
Belize Surinam
S.Africa
図
3.14低−中所得国の乗用車
1台当りの人口推移
0 50 100 150 200 250 300
1 9 17 25 33 41 49 57 65 73 81 89 97 105 113 経過年数[年]
乗用車1台当り人口[人]
Bolivia Honduras
Syria Sri Lanka
Thailand Ecuador
Egypt Iraq
Philippines Paraguay El Salvador Guatemala
Turkey Dominican
Tunisia Peru
Morocco Colombia Algeria Swaziland
Jordan Iran
Namibia Guyana
Fiji Jamaica
Belize Surinam
S.Africa MODEL
図
3.15 低−中所得国の乗用車1台当りの人口モデル
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
1 16 31 46 61 76 91 106 121 136 151 166 181 196 211 経過年数[年]
乗用 車1台 当 り人 口[ 人 ]
Bangladesh Vietnam
Myanmar India
Ethiopia Burundi
Somalia Rwanda
Chad Guinea
Sudan Laos
Uganda Tanzania
Niger Afghanistan
Malawi Pakistan
Mali Indonesia
Haiti Mauritania
Ghana Nigeria
Benin C.Africa
Sierra L. Madagascar
Gambia P.N.Guinea
Togo Cameroon
Kenya Mongolia
Mozambique Liberia
Senegal Congo Rep.
Yemen Nicaragua
Zambia Angola
Zimbabwe Vanuatu
図
3.16 低所得国の乗用車1台当りの人口推移
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
1 16 31 46 61 76 91 106 121 136 151 166 181 196 211 経過年数[年]
乗用 車1台 当 り人 口[ 人 ]
Bangladesh Vietnam Myanmar
India Ethiopia Burundi
Somalia Rwanda Chad
Guinea Sudan Laos
Uganda Tanzania Niger
Afghanistan Malawi Pakistan
Mali Indonesia Haiti
Mauritania Ghana Nigeria
Benin C.Africa Sierra L.
Madagascar Gambia P.N.Guinea
Togo Cameroon Kenya
Mongolia Mozambique Liberia
Senegal Congo Rep. Yemen
Nicaragua Zambia Angola
Zimbabwe Vanuatu MODEL
図
3.17 低所得国の乗用車1台当り人口モデル
3.5
乗用車残存率モデル
3.5.1
先進工業国の乗用車残存率
ここでは,乗用車残存率モデルを作成する.この乗用車残存率モデルは車令別保有台数 の算出に使用する.
車令別保有台数のデータは存在しているが,車令別保有台数は販売台数に依存している ため,車令別保有台数を直接推定するモデルの作成は困難である.そこで,間接的に車令 別保有台数を予測するために,乗用車残存率モデルを考える.乗用車残存率とは,ある年 に販売された乗用車が経過年数とともにどのように減少していくかを表すものである.先 進工業国では中古車の輸出が同車の輸入を大きく上回っていると考えられるため,乗用車 は増加せず減少していくだろうという考えから残存率としている.車令別保有台数はデー タ数が少なく,データを入手できた国は,日本,イギリス,アメリカ,ニュージーランド の
4カ国である.これらのデータのうち日本,イギリス,アメリカについては文献[8],
[10],[11],[15],[16]から取得し,ニュージーランドのデータは 2004
年のものを中央大学理工
学部土木工学科の鹿島茂教授からいただいた.この
4カ国のうち複数年の車令別保有台数 データを取得できたのは日本,イギリス,アメリカである.この
3カ国のデータを使用し て乗用車残存率モデルを作成する.モデル作成のために,1980 年〜2000 年までの
5年毎 のデータを使用する.乗用車残存率は車令別保有台数を販売台数で除算することによって 求める.具体的には,
T年の車令別保有台数のデータを使用して乗用車残存率を求める場合,
車令
1年の乗用車を
T年に販売された乗用車であるとして,車令(T−S+1)年の保有台
数を
S年の販売台数で除算して求める.例えば,2000 年の保有台数に占める車令
5年の保
有台数では,T は
2000年,S は
1996年となる.しかし,実際には,除算だけで乗用車残
存率を求めることはできない.その原因は車令別保有台数のデータにある.表
3.12は各国
の
2000年の「車令別保有台数」データと「保有台数」データの詳細である.「車令別保有 台数」データには,各年の車令別の保有台数が記されており,「保有台数」データには,各 年の保有台数が記されている.この表から分かるように,本来同じでなければならない車 令別保有台数の総和と保有台数には誤差がある.また,「車令別保有台数」データには「車 令
X年〜」という項目も含まれている.この
Xは,1 カ国で毎年同じ値をとるわけでもな い.さらに,日本の「車令別保有台数」データは
3月末時点のもので,車令
1年の保有台 数が少ない(すなわち,4 月から
12月に販売される乗用車保有台数が数えられていない)
など,これらの誤差や特徴を踏まえて乗用車残存率を考えなければならない.実際にこれ らを踏まえて乗用車残存率を作成する.
はじめに,単年の乗用車残存率を考える.例として
2000年の日本のデータを考え,それ と同様の方法で各国の乗用車残存率を求める.まず,2000 年のデータの特徴から「車令
1年」と「車令
20年〜」の項目の車令別保有台数は乗用車残存率を求めるためには使用でき ない.ここで, 「車令
1年」の項目が使用できないのは,日本が
3月末時点のデータとなっ ているためである.そこで,車令
1年の乗用車は減少しないと考え,車令
1年の乗用車残 存率は
1と仮定する.次に,車令
2年から車令
19年までの総和が車令別保有台数の総和に 占める割合を求め,その割合を実際の保有台数に乗算する.これは,実際の保有台数に占 める車令
2年から車令
19年までの車令別保有台数の総和であり,
Vとする.この
Vの値に,
車令
2年から車令
19年(1999 年から
1982年)までの販売台数に乗用車残存率を乗算した ときの販売台数の総和
Wが近づくようにする.つまり,
Vと
Wの差が
0に十分近くなるよ うに乗用車残存率を調整し,乗用車残存率を求める.モデルはロジスティックモデル
)) 31 ( exp(
1
asr
b c X
Y a
−
−
= +
(3.6):パラメータ
:車令,
:乗用車残存率,
X ab cYsr a , ,
を使用する.パラメータの決定,調整については,まず,車令
2年から車令
19年までの車 令別の保有台数を販売台数で除算した値に対してパラメータを推定する(図
3.18).続いて,本来の曲線の特徴を残すため,式(3.6)のパラメータ
cを固定し,パラメータ 及びパラメー タ を変更して乗用車残存率を調整する(図
3.19).これで2000年の日本の乗用車残存率 を求めることができる.各国,各年に対しても同様の考え方から乗用車残存率を求める(図
3.20〜図
3.22).販売台数と保有台数のデータは,文献
[6]〜
[22]より取得した.
a b
表
3.12 2000年の「車令別保有台数」の総和と「保有台数」
国名 日本 アメリカ イギリス
車令別保有台数の総和[台] 42,055,756 127,721,000 27,184,607
保有台数[台] 52,437,375 133,621,420 27,959,691
0 1000000 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000
2000 1999
1998 1997
1996 1995
1994 1993
1992 1991
1990 1989
1988 1987
1986 1985
1984 1983
1982 1981 年
台
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20〜
車令[年]
残存率
車令別保有台数 販売台数 車令別保有台数/販売台数 回帰モデル
図
3.18 日本(2000年)の販売・車令別保有台数
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25
車令[年]
残存 率
調整後 調整前
図
3.19 日本(2000年)の乗用車残存率曲線
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25
車令[年]
残存 率
2000年 1995年 1990年 1985年 1980年