中央大学理工学部情報工学科 卒業研究論文
航空における時空間ネットワークの構築
学籍番号 06D8101030H 髙橋 莉里香
Ririka TAKAHASHI
指導教員 田口 東 教授
2010 年 3 月
i
あらまし
本研究では,はじめに国際航空旅客の需要を分析し,現在の航空ネットワークにおける 問題点を示す.その後,航空時刻表を用いて時空間ネットワークを構築し,既存の旅客便 のフライトを表現する.そして,構築した時空間ネットワークをもとに,Dijkstra 法を用 いて最短経路問題を解き,日本国内とアメリカ国内の空港間の最短パスと最小コストを求 める.そこで,空港間の距離と所要時間,および乗継回数の関係について,求めた最短パ スと最短経路から色分けして地図にプロットすることで比較,考察を行う.また,日本航 空の全路線を廃止した場合の,羽田空港からの最短パスと最小コストについても考察を行 う.
キーワード:航空ネットワーク,時空間ネットワーク,Dijkstra法
ii
目次
第 1 章 序論 ... 1
第 2 章 国際航空旅客データ ... 2
2.1
データ概要 ... 22.2
データの整理 ... 32.2.1
出発都市・到着都市別 ... 32.2.2 2
国間(2都市間) ... 52.2.3
地域別 ... 8第 3 章 航空ネットワーク... 10
3.1
航空時刻表 ... 103.1.1
データ概要 ... 103.1.2
利用する時刻表データ ... 123.1.3
日時の標準化 ... 143.1.4
データの特徴 ... 153.2
時差データ ... 173.3
時空間ネットワークの構築 ... 183.3.1
ノードと着発間リンク ... 193.3.2
飛行リンク ... 203.3.3
待ちリンク ... 203.3.4
乗り継ぎリンク ... 213.4
航空ネットワークの構築 ... 22第 4 章 距離と時間 ... 26
4.1 Dijkstra
法 ... 264.2
日本国内の空港からの最短経路 ... 274.3
羽田空港からの最小コストと最短パス ... 324.4
アメリカ国内の空港からの最短経路 ... 344.5
日本航空の全路線廃止 ... 38iii
第 5 章 結論 ... 40
5.1
まとめ ... 405.2
今後の課題 ... 40謝辞 ... 42
参考文献 ... 43
1
第 1 章 序論
国土交通省の公表している航空輸送統計調査[5]によると,日本の航空需要は年々増加 している(図
1.1).それにもかかわらず羽田空港をはじめとする国内空港の容量は飽和状
態にあり,諸外国や各航空会社からの増便要請,新規乗入要請に十分対応できない状況に ある.また,国際航空需要も年々増加しており,さらなる増加が見込まれている.このよ うな状況に対応するため,新たな空港や滑走路を新設することによる基盤整備とともに,航空ネットワークの拡充,整備が急務とされている.
本研究では,国際航空旅客の需要を分析するとともに,航空時刻表をもとに時空間ネッ トワークを構築することで,旅客便の運航を表す航空ネットワークを再現し,ネットワー クを解析することを目的とする.
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
国内旅客数
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000
国際旅客数
年間国内旅客数 年間国際旅客数
図
1.1 日本の国際航空旅客数と国内航空旅客数
2
第 2 章 国際航空旅客データ
本章では,国際航空旅客データについて集計した結果を示す.利用するデータは,国際 民間航空機関(International Civil Aviation Organization,以下
ICAO)が発行する航空
路線別輸送量統計(Traffic by Flight Stage,以下TFS
統計)である.2.1 データ概要
TFS
統計は出発から最初の到着までの1
航行のデータであり,都市ペア,航空会社,機 材,運航便数[便],提供座席数[席],有償旅客数[人],乗客搭乗率,提供重量[トン], 有償貨物量[トン],有償郵便量[トン]の項目がある.ただし,出発から最初の到着まで の1
航行とは,旅客や貨物の積み下ろしをしない給油目的のみの離着陸は除かれる.往路 と復路は別々であり,国際定期便の路線のみを対象としている.データの集計期間は1
年 間で,本研究では2007
年のデータについて整理する.このデータは図
2.1
のようなHTML
形式で構成されており,これらのデータを図2.2
の ようなデータベースに直してから利用する.図
2.1 TFS
統計データの例 到着都市 航空会社出発都市 年 機材
フライト番号
提供座席数 有償旅客数
乗客搭乗率
総有料荷重
有償貨物輸送量
有償郵便輸送量
3
図
2.2 TFS
統計データの構成2.2 データの整理
TFS
統計の運航便数,提供座席数,有償旅客数,乗客搭乗率のデータに関して,年ごと,都市ごと,航空会社ごとなどに分けて整理する.
2.2.1 出発都市・到着都市別
まず,各都市を発着する航空機の
1
年間の年間提供座席数が1000
万人以上である都市と 提供座席数,有償旅客数,乗客搭乗率の関係を図2.3,図 2.4
に示す.図2.3
より,提供座 席数が多い都市の乗客搭乗率は70%から 80%に集中している.図 2.4
の都市ごとの乗客搭 乗率では,シャンハイ,シンガポール,クアラルンプール,大阪などのアジア圏で70%を
割る低い値が見られる.年
ID
都市ペア 年有償旅客数 年別
都市ペア
ID
出発地コード 到着地コード都市ペア
都市コード 都市と国のコード 都市名
都市 国ペア
ID
出発国コード 到着国コード 国ペア
国コード 国名
国
機材
ID
機材名機材 航空会社
ID
航空会社名航空会社 年
ID
都市ペア 年 航空会社 機材 運航便数 提供座席数 有償旅客数 乗客搭乗率 総有料荷重 有償貨物輸送量 有償郵便物輸送量
詳細
航空会社
機材
出発国コード 到着国コード 都市と国のコード
出発地コード 到着地コード 都市ペア
都市ペア
4 0
5000000 10000000 15000000 20000000 25000000 30000000 35000000 40000000 45000000 50000000
L ON DO N P A R IS F R A N KFU R T A M S T E R DA M S E OU L T OK YO HON G KO N G N E W YO R K, NY B A N GK OK
提供座席数と有償旅客数
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
乗客搭乗率
提供座席数 有償旅客数 乗客搭乗率
図
2.3 出発便の年間提供座席数が 1000
万人以上の都市0 10000000 20000000 30000000 40000000 50000000 60000000 70000000 80000000 90000000 100000000
LO N D O N PA R IS FR A N K FU R T S E O U L TO K Y O A M S TE R D A M HO N G K O N G B A N G K O K N E W Y O R K , N Y M A D R ID M U N IC H S HA N G HA I S IN G A PO R E C O PE N HA G E N K U A LA LU M PU R O S A K A B E IJ IN G B A R C E LO N A LO S A N G E LE S , C A LIS B O N C HIC A G O , IL
提供座席数と有償旅客数
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
乗客搭乗率
提供座席数 有償旅客数 乗客搭乗率
図
2.4 到着便の年間提供座席数が 1000
万人以上の都市5
図
2.5
より,1年間の提供座席数が1000
万人以上の航空会社では,マレーシア航空の乗 客搭乗率が63%と低く,キャセイパシフィック航空と日本航空の搭乗率も 70%以下と低く
なっている.このことから,東アジアの航空ネットワークや空港がほかの地域と比べ問題 を抱えていることが推測される.また図2.3
から図2.5
より,提供座席数が多い都市には規 模の大きい航空会社が就航している.例えば,フランクフルトにはルフトハンザドイツ航 空,ロンドンにはブリティッシュ・エアウェイズとイージージェット, パリにはエールフ ランス,アムステルダムにはKLM
オランダ航空などが存在する.0 5000000 10000000 15000000 20000000 25000000 30000000 35000000 40000000 45000000 50000000
LU FTHA N S A B R ITI S H A IR W A Y S A IR FR A N C E E A S Y JE T A IR LIN E K LM C A THA Y PA C IFI C K O R E A N A IR A M E R IC A N JAL THA I A IR W A Y S IB E R IA S A S U N ITE D M A LA Y S IA N A IR LIN E S A S IA N A
提供座席数と有償旅客数
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
乗客搭乗率
提供座席数 有償旅客数 乗客搭乗率
図
2.5 年間提供座席数が 1000
万人以上の航空会社2.2.2 2 国間(2 都市間)
ここまでは,出発国(都市)と到着国(都市)を独立に見たが,ここでは出発国と到着 国の
2
国のペア)から,また出発都市と到着都市の2
都市のペアからデータを整理する.ただし,往路と復路は区別して考える.
図
2.6
より,2
国間の年間提供座席数が500
万人以上では,大韓民国-中国間,中国-日 本間において乗客搭乗率が60%を下回っている.また図 2.7
より,2
都市間の提供座席数が120
万人以上では,上海-ソウル間において乗客搭乗率が60%を下回る.これらから,ア
ジアの国や都市間のフライトでは乗客搭乗率が低いことがわかる.6 0
1500000 3000000 4500000 6000000 7500000 9000000 10500000 12000000 13500000 15000000
M E X IC O → U N ITE D S TA TE S C A N A D A → U N ITE D S TA TE S U N ITE D S TA TE S → U N ITE D K IN G D O M U N ITE D K IN G D O M → U N ITE D S TA TE S U N ITE D K IN G D O M → S PA IN S PA IN → U N ITE D K IN G D O M C H IN A → R E PUB LI C O F K O R E A R E PUB LI C O F K O R E A → C H IN A C H IN A → JA PA N JA PA N → C H IN A JA PA N → R E PUB LI C O F K O R E A R E PUB LI C O F K O R E A → JA PA N U N ITE D S TA TE S → JA PA N JA PA N → U N ITE D S TA TE S U N ITE D K IN G D O M → G E R M A N Y G E R M A N Y → U N ITE D K IN G D O M G E R M A N Y → U N ITE D S TA TE S U N ITE D S TA TE S → G E R M A N Y U N ITE D K IN G D O M → N E TH E R LA N D S N E TH E R LA N D S → U N ITE D K IN G D O M
提供座席数と有償旅客数
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
乗客搭乗率
提供座席数 有償旅客数 乗客搭乗率
図
2.6 年間提供座席数が 500
万人以上(上位20
位)の国のペア0 300000 600000 900000 1200000 1500000 1800000 2100000 2400000 2700000 3000000
LO N D O N → N E W Y O R K , N Y N E W Y O R K , N Y → LO N D O N A M S TE R D A M → LO N D O N LO N D O N → A M S TE R D A M TO K Y O → S E O U L TA IPE I → H O N G K O N G H O N G K O N G → TA IPE I S E O U L → TO K Y O B A N G K O K → H O N G K O N G H O N G K O N G → B A N G K O K TO K Y O → S H A N G H A I S H A N G H A I → TO K Y O LO N D O N → PA R IS PA R IS → LO N D O N S E O U L → S H A N G H A I H O N G K O N G → TO K Y O S H A N G H A I → S E O U L TO K Y O → H O N G K O N G M A D R ID → LO N D O N LO N D O N → M A D R ID
提供座席数と有償旅客数
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
乗客搭乗率
提供座席数 有償旅客数 乗客搭乗率
図
2.7 年間提供座席数が 120
万人以上(上位20
位)の都市のペア7
図
2.8
は運航便数が年間1000
回以上あるフライト便を挙げたものである.運航便数が多 いにもかかわらず,乗客搭乗率が50%を下回る都市のペアもあり,それらのペアは同じ地
域間のフライトであることが多い.0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
TO R O N TO → C H IC A G O , I L LO N D O N → B R U S S E LS B R U S S E LS → LO N D O N PH U K E T → S IN G A PO R E S IN G A PO R E → PH U K E T PA R IS → FR A N K FUR T G O TH E N B U R G → C O PE N H A G E N TO R O N TO → W A S H IN G TO N , D C LO N D O N → D E TR O IT, M I M U N IC H → C O PE N H A G E N JA K A R TA → K U A LA LUMPUR TO K Y O → S H A N G H A I M A D R ID → PA R IS PA R IS → M A D R ID TO U LO U S E → M A D R ID M A D R ID → TO U LO U S E B A R C E LO N A → LI S B O N A M S TE R D A M → LO N D O N LI S B O N → B A R C E LO N A S E O U L → H O N G K O N G LO N D O N → A M S TE R D A M LO N D O N → D U S S E LD O R F S H A N G H A I → TO K Y O LY O N → M A D R ID FR A N K FUR T → M A D R ID JE JU → S H A N G H A I M A D R ID → FR A N K FUR T M A D R ID → LY O N S H A N G H A I → JE JU Z U R IC H → S TUTTG A R T V E R O N A → FR A N K FUR T Z U R IC H → M ILA N
運航便数
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
乗客搭乗率
運航便数 乗客搭乗率
図
2.8 年間運航便数が 1000
回以上で乗客搭乗率が60%以下の都市のペア
8
2.2.3 地域別
外務省の公表している地域分類[4]にしたがって,各国を北米,南米,アジア,オセア ニア,中東,ヨーロッパ,アフリカの
7
つの地域に分類して運航便数,有償旅客数,1機あ たりの有償旅客数について集計する.ここで,出発地としては主要な地域である北米,ア ジア,ヨーロッパの3
つの地域を扱うこととする.図
2.9,図 2.10
より,年間の運航便数と有償旅客数はアジアからアジアへ,ヨーロッパからヨーロッパへの数が多い.また,北米から南米へのフライトが多いことから,北米の おそらくアメリカが南米へのハブ空港として利用されていることが推測される.
図
2.11
から,同地域間の1
便あたりの有償旅客数はアジアが158
人,ヨーロッパが85
人,北米が63
人でアジア間の1
便あたりの有償旅客数が最も多い.0 200000 400000 600000 800000 1000000 1200000 1400000 1600000
アフリカ着 アジア着 ヨーロッパ着 北米着 オセアニア着 南米着 中東着
運航便数
アジア発 ヨーロッパ発 北米発
図
2.9 地域ごとの年間運航便数
9 0
20000000 40000000 60000000 80000000 100000000 120000000 140000000
アフリカ着 アジア着 ヨーロッパ着 北米着 オセアニア着 南米着 中東着
有償旅客数
アジア発 ヨーロッパ発 北米発
図
2.10 地域ごとの年間有償旅客数
0 50 100 150 200 250 300 350 400
アフリカ着 アジア着 ヨーロッパ着 北米着 オセアニア着 南米着 中東着
1
便あたりの有償旅客数アジア発 ヨーロッパ発 北米発
図
2.11 地域ごとの 1
便あたりの年間有償旅客数10
第 3 章 航空ネットワーク
航空機の移動をネットワークで表現するためには,空港間の移動における空間の変化と,
それに伴う時間の変化を考慮する必要がある.そこで,空間で表されるネットワークを時 間軸方向に拡張した静的なネットワーク(時空間ネットワーク)を利用して,時間の経過 を表現する.時空間ネットワークは,空港毎にノードを定義するのではなく,航空機の発 着毎にノードを定義し,ネットワークを時間方向に拡張するため,元のネットワークに比 べ大規模であるが,構造が単純であり,また旅客の流れを正確に再現できる[2].そこで,
本章では[2,
3]を参考に,航空ネットワークを拡張し,時空間ネットワークを構築する.
3.1 航空時刻表
時間の概念を導入した航空ネットワークを構築するためには時刻表が必要である.そこ で,本節では利用する時刻表のデータについて説明する.
本研究では,Official Airline Guide(以下,OAG)から提供されている航空時刻表デー タを用いる.OAGとは,世界中の航空情報を提供する企業で,世界で最も多くの航空業関 連データを保有している企業であり,世界中の流通システム,旅行会社や代理店,航空会 社の運営,航空交通管制システム,航空機メーカー,空港計画業者,および政府機関など の活動に必要なデータを提供している.
3.1.1 データ概要
データは固定長のテキスト形式で構成されている.本研究では
2007
年4
月1日から2007
年9
月30
日までの航空時刻表データを利用する.レコードは2,675,957
件あり,1件につ き43
の項目がある.表3.1
は元データの項目一覧である.11
表
3.1 データ項目一覧
Field
説明1
航空会社コード2
フライト番号3
出発空港コード4
出発空港名5
出発都市のコード6
出発都市名7
出発都市が属している州のコード(限定地域に適用)8
出発都市が属している州名9
出発都市が属している国のコード10
出発都市が属している国名11
到着空港コード12
到着空港名13
到着都市のコード14
到着都市名15
到着都市が属している州のコード(限定地域に適用)16
到着都市が属している州名17
到着都市が属している国のコード18
到着都市が属している国名19
現地出発時刻20
現地到着時刻21
現地到着日(出発日と現地到着日が違う場合に表示)22
出発曜日23
到着曜日24
機体のサービスタイプ(旅客便,貨物便など)25
総座席数26
フライト便の有効期間開始日27
フライト便の有効期間終了日28
出発から最終到着空港までにかかる時間の総計29
飛行時間30
乗り継ぎ時の空港待機時間31
乗り継ぎ回数32
乗り継ぎする空港のコード33
乗り継ぎする空港が属している都市のコード34
乗り継ぎする空港が属している国のコード35
出発便の機体タイプ(シリーズ)36
出発便の機体タイプ(シリーズの中の詳細モデル)37
貨物積載許容量38
最大15
空港までの全ルート表示39
出発空港から最終到着空港までの合計距離40
自社便かコードシェア便かを見分けるコード41
機体が飛行できる標準的距離(法定飛行マイル)42
標準的機体スピード(法定飛行マイル/1時間)43
サービス/交通機関(旅客便,地上交通機関など)12
3.1.2 利用する時刻表データ
本研究では,旅客便の移動を表現するための航空ネットワークを構築することを目的と している.そのため,サービスの種類を表す「サービス/交通機関」の項目から旅客便を 表すデータを抽出する.
「自社便かコードシェア便か」の項目については,自社便のみを抜き出す.コードシェ ア便では,複数の航空会社が
1
機体の座席を分けてチケット販売するため,1
便の中に多数 の航空会社が存在することになり,物理的なネットワークを張る際に不要な混乱を避ける ためである.「乗り継ぎ回数」,「乗り継ぎする空港のコード」の項目については,乗り継ぎ回数が
0
回のものを抽出する.乗り継ぎ回数が1
回以上のフライトは,飛行ルートが他のデータと 重複してしまうためである.例えば,表
3.2
のような3
つのデータを見てみる.このフライトは出発空港がSFO,到
着空港が
CDG,乗り継ぎ空港が DFW
であり,すべて同じフライトを表している.データ1
はSFO→DFW
のフライトを表し,データ2
はSFO→DFW→CDG
を表し,データ3
はDFW→CDG
を表している.空港間のネットワークを作成する際には,重複しているデータ2
は取り除いて考えたいので,乗り継ぎ回数が0
回のデータのみを抽出することで飛行ルー トの重複を避ける(図3.1)
.表
3.2 データ例
データ
1
データ2
データ3
航空会社コード
AA AA AA
フライト番号
48 48 48
出発空港コード
SFO SFO DFW
到着空港コードDFW CDG CDG
現地出発時刻9:25 9:25 17:10
現地到着時刻14:45 9:40 9:40
現地到着日
1 1
有効期間開始日
2007/9/5 2007/9/5 2007/9/5
有効期間終了日2007/9/30 2007/9/30 2007/10/26
かかる時間
3:20 15:15 9:30
飛行時間3:20 12:50 9:30
空港待機時間
0 2:25 0
乗り継ぎ回数
0 1 0
乗り継ぎ空港
DFW
飛行ルート(コード)
SFO SFO SFO
DFW DFW DFW
CDG CDG CDG
自社かコードシェアか 自社便 自社便 自社便
13
図
3.1 フライト便と飛行ルートの関係
以上より,利用するデータ項目は以下のようになる.
3
時間20
分 空港SFO
空港
DFW
9:25 14:45
データ
1
空港待機時間
2
時間25
分 空港SFO
空港
DFW
空港
CDG
9:25 9:40
15
時間15
分 データ2
9
時間30
分 空港DFW
空港
CDG
17:10 9:40
データ
3
14
表
3.3 利用するデータ項目
Field
説明1
航空会社コード2
フライト番号3
出発空港コード11
到着空港コード19
現地出発時刻20
現地到着時刻21
現地到着日(出発日と現地到着日が違う場合に表示)22
出発曜日23
到着曜日25
総座席数26
フライト便の有効期間開始日27
フライト便の有効期間終了日28
出発から最終到着空港までにかかる時間の総計29
飛行時間30
乗り継ぎ時の空港待機時間35
出発便の機体タイプ(シリーズ)36
出発便の機体タイプ(シリーズの中の詳細モデル)38
最大15
空港までの全ルート表示39
出発空港から最終到着空港までの合計距離3.1.3 日時の標準化
OAG
の航空時刻表は時刻が現地時刻で表現されている.世界の航空ネットワークを作成 するためには現地時刻を世界標準時に変更する必要がある.そこで,空港の時差データを 元に空港コードをマッチングし,現地時刻をグリニッジ標準時へと変更する.例として,
OAG
の航空時刻表から抜粋したデータを表3.4
と表3.5
に示す.このフライ トは出発空港コードがLAX,到着空港コードが JFK
である.グリニッジ標準時とLAX
は8
時間の時差があり,JFKは5
時間の時差があるので,それらを現地時刻に加味するとグ リニッジ標準時が求められる.また,出発(到着)時刻を世界標準時に変更することで
0
時をまたいだ場合は,日付を 変更する必要が出てくる.例えば,下の到着空港がJFK
では20
時35
分から時差5
時間を 加味して1
時35
分になっているので,ここで0
時をまたいでいる.そこで,到着曜日を1
日遅らせなければならない.このように,すべてのデータに対して日時を標準化する.
15
表
3.4 データ例 1
表3.5 データ例 2
時差を加味する前 時差を加味した後
航空会社コード
AA
航空会社コードAA
フライト番号
4
フライト番号4
出発空港
LAX
出発空港LAX
到着空港
JFK
到着空港JFK
現地出発時刻
12:00
出発時刻20:00
現地到着時刻20:35
到着時刻1:35
現地到着日 到着日
1
出発曜日 月火 土日 出発曜日 月火 土日 到着曜日 月火 土日 到着曜日 月火水 日
サービスタイプ
J
サービスタイプJ
総座席数
165
総座席数165
有効期間開始日
2007/9/1
有効期間開始日2007/9/1
有効期間終了日2007/9/4
有効期間終了日2007/9/4
かかる時間
5:35
かかる時間5:35
飛行時間
5:35
飛行時間5:35
空港待機時間
0
空港待機時間0
機体シリーズ
767
機体シリーズ767
機体モデル
762
機体モデル762
飛行ルート
LAX
飛行ルート
LAX
JFK JFK
距離
2467
距離2467
3.1.4 データの特徴
本項では,OAGの航空時刻表データについて,2007年
4
月1
日から2007
年9
月30
日 の期間でのフライト便数について整理する.なお,ここで集計するデータはすべて現地時 刻で処理したものである.出発日ごとのデータ
データの中にフライト便がある日付を直接表す項目がないので,その他のデータ項目か ら日付を割り出して集計する.「有効期間開始日」,「有効期間終了日」というのは,そ のフライト便が時刻表の中に組み込まれている期間を表している.つまり,この期内であ ればフライトがあることを表している.ある
1
日が,フライト便の有効期間内にあり,か つ「出発曜日」であるときのデータを集計し,その後,出発曜日別,月別にフライト便数 を集計する.図
3.2
は,出発曜日ごとのフライト便数を表している.土曜日が3,478,319
便と尐なく,2
番目に日曜日が3,786,064
便と尐ない.月曜日から金曜日までは約4,000,000
便とほぼ等 しいことから,ビジネスなどで平日に航空便を使う人が多いのではないかと考えられる.時差
16 3100000
3200000 3300000 3400000 3500000 3600000 3700000 3800000 3900000 4000000 4100000 4200000
日 月 火 水 木 金 土
便数
図
3.2 出発曜日ごとのフライト便数
図
3.3
は月ごとのフライト便数を表している.7
月と8
月は4,600,000
便以上と多い.多 くの国で年度の区切りとされている9
月前の休暇を利用して航空便を使う人が多いのでは ないかと考えられる.4250000 4300000 4350000 4400000 4450000 4500000 4550000 4600000 4650000 4700000 4750000
4月 5月 6月 7月 8月 9月
便数
図
3.3 月ごとのフライト便数
17
時間ごとのデータ次に出発時刻と到着時刻に着目し,
1
時間ごとのフライト便数を集計した結果が以下の図3.4
である.出発時刻ごとのフライト便数をみると,6 時台から大幅に増え,17 時台をピークに減っ ていく.22時台から
5
時台までは50,000
便以下と極端に尐なくなっていることがわかる.到着時刻ごとのフライト便数では,6 時台から徐々に増えて夕方をピークに減っている.
しかし,それでも
23
時台まで60,000
便以上飛んでいることがわかる.0 20000 40000 60000 80000 100000 120000 140000 160000
0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00
便数
現地出発時刻 現地到着時刻
図
3.4 時間ごとのフライト便数
3.2 時差データ
世界の航空ネットワークを扱うために,時刻表で表された現地時刻をグリニッジ標準時 に直す.そこで必要となる時差のデータについて説明する.
利用するデータは,
ADC WorldMap Version 5.2
である.これは世界中の地形や構造物の 情報を保有するデジタル地図データである.このデータのタイムゾーンポリゴン(図3.5)
の座標系列と各空港の経緯度より,空港がどのポリゴンに含まれるのかを求め,そのポリ ゴンの時差を空港の時差とする.このようにして得られる時差を現地時刻と合わせてグリ ニッジ標準時へと変換する.
18
図
3.5 タイムゾーンポリゴン
3.3 時空間ネットワークの構築
旅客が航空機に乗ってから降りるまでの行動の流れをネットワーク上で表現するため,
空港をノードで表し,ノード間を結ぶ各リンクが航空機による空港間の移動を表すように ネットワークを構築する.この
2
次元で表される空間ネットワークに時間軸を設けること によって,ネットワークを3
次元的に拡張し,時空間ネットワークを構築する.本節では,3.1
節の航空時刻表をもとに時空間ネットワークを構築する.航空機の利用を開始してから終了するまでの利用者の行動は,以下の行動に分類できる.
航空機に乗って空港間を移動する行動
空港で次の航空機を待つ行動
空港で別の路線へ乗り継ぐ行動これら一連の利用者の行動をノードとリンクとして以下のように定義し,ネットワーク の要素として表現する.
出発ノード :各空港における各航空機の出発
到着ノード :各空港における各航空機の到着
着発間リンク :各空港に到着した経由便で出発を待つ行動
飛行リンク :航空機に乗って空港間を移動する行動
待ちリンク :空港で次の航空機を待つ行動
乗継リンク :空港で別の路線へ乗り継ぐ行動19
時空間ネットワークへの拡張の様子を図
3.6
に示す.図
3.6 時空間ネットワークへの拡張
3.3.1 ノードと着発間リンク
航空時刻表には,空港に航空機が到着する時刻(到着時刻)と空港から出発する時刻(出 発時刻)が分単位で記載されている.したがって,ネットワークの時刻の基本単位は[分]
とする.
ノードには空港における航空機の出発を表す出発ノードと,空港における航空機の到着を 表す到着ノードを定義する.到着ノードは到着時刻と到着する空港の情報を,出発ノード は出発時刻と出発する空港の情報を持つ.
また経由便において,空港に到着した航空機が出発を待つ行動を着発間リンクと定義す る.すなわち,フライト番号が同一の航空機が経由空港に到着してから出発するまでの待 機する行動を表している.
これら
3
つの要素を図3.7
のように表現する.航空ネットワーク 時空間ネットワーク
:出発ノード
:到着ノード
:飛行リンク
:着発間リンク
A
空港B
空港C
空港t 1
時出発フライトt 2
時出発フライト時間
20
図
3.7 ノードと着発間リンク
3.3.2 飛行リンク
航空機に乗って空港間を移動する行動を飛行リンクとして定義する.飛行リンクは,図
3.8
のように移動元の空港の出発ノードから移動先の空港の到着ノードへのリンクとして 表現する.図
3.8 飛行リンク
3.3.3 待ちリンク
空港で次の航空機を待つ行動を待ちリンクとして定義する.待ちリンクは,図
3.9
のよう に各空港における各出発ノードから次にその空港を出発する航空機の出発ノードへのリン クとして表現する.到着ノードのみの空港では,同様に各到着ノードから次にその空港に 到着する航空機の到着ノードへリンクを張る.出発ノード
着発間リンク 到着ノード
出発ノード
飛行リンク 着発間リンク
到着ノード
21
図
3.9
待ちリンク3.3.4 乗り継ぎリンク
空港で別のフライト便へ乗り継ぐ行動を乗り継ぎリンクとして定義する.図
3.10
のよう に,乗り継ぎができる空港での乗り継ぎは,乗り継ぎ元の空港の到着ノードから乗り継ぎ 先の空港の出発ノードのうち,乗り継ぎをして間に合う時刻の出発ノードへのリンクとし て表現し,このリンクを乗り継ぎリンクとする.ただし,ここでの乗り継ぎというのはフ ライト番号の異なるフライト便に乗り換えることと考える.同じフライト番号のフライト は経由便と考え,経由する空港では着発間リンクを張る.乗り継ぎにかかる時間は各空港内の構造に依存するが,ここでは一律に
60[分]と定義
する.図
3.10 乗り継ぎリンク
時間
出発ノード
フライト 3
フライト 2
フライト 1 到着ノード
待ちリンク 着発間リンク
飛行リンク
乗り継ぎリンク 時間
出発ノード
フライト 3
フライト 2
フライト 1 到着ノード
待ちリンク
着発間リンク 飛行リンク
22
3.4 航空ネットワークの構築
世界の航空ネットワークを時間軸方向に拡張し,時空間ネットワークを構築する.対象 とするフライト便は
2007
年4
月1
日の58,769
本である.地表面に垂直な方向に時間軸を とり,世界の航空ネットワークを時空間ネットワークで表現すると,図3.11
のようになる.この時空間ネットワークの総ノード数は
133,680,総リンク数は 191,724
である(表3.6)
. アメリカ国内,日本国内においても,同じように航空の時空間ネットワークを表現する と図3.12
から図3.15
のようになる.図3.12
と図3.14
は上空から見た航空ネットワークを 表現しており,図3.13
と図3.15
はそれら航空ネットワークに時間軸を設けた時空間ネット ワークを表している.構築した時空間ネットワーク中のある1
つの空港に着目し,一部を 拡大したものが図3.16
と図3.17
である.これらの図は,リンクの種類により色を分けて表示している.青色が飛行リンク,黄色 が着発間リンク,緑色が待ちリンク,橙色が乗り継ぎリンクを表している.
図
3.11 航空時空間ネットワーク(2007
年4
月1
日のデータ)表
3.6 時空間ネットワークの規模
フライト便数
58,769
飛行リンク66,598
空港数
2,416
着発間リンク7,678
ノード数
133,680
待ちリンク64,469
リンク数191,724
乗り継ぎリンク52,979
時間23
図
3.12 アメリカの航空ネットワーク
図
3.13 アメリカの時空間ネットワーク
24
図
3.14 日本の航空ネットワーク
図
3.15 日本の時空間ネットワーク
25
図
3.16 時空間ネットワークの一部を拡大
図
3.17 時空間ネットワークの一部を拡大
時間 時間
26
第 4 章 距離と時間
第
3
章で構築した航空時空間ネットワークをもとに,各空港からの所要時間をコストと して最短経路探索を行う.そこで最短経路問題を解く手法のひとつであるDijkstra
法を用 いて,航空ネットワークの最短時間経路を求め,各空港までの所要時間について考察する.ここでの所要時間とは,飛行時間と乗継の際の空港での待ち時間を加えたものである.そ の最短経路をもとに各空港への最小コストを求める.そして,出発空港と到着空港の距離 や乗継回数との関係を示す.
4.1 Dijkstra 法
本節では,ネットワーク上のある
2
つのノード間の最短経路を探索する方法であるDijkstra
法について[1]をもとに説明をする.本研究では,起点ノードを定め,起点ノードから近いノード順に全方向に向かって最短経路を列挙していく方法で,
1
つの起点から全 ての終点までの最短経路と最小コストを同時に求めることができる.まず有向グラフ
G
の各辺e ( u , v ) E ( G )
に対し,実数の長さlength (e )
が割り当てられ たネットワークN ( G , length )
があるとする.Dijkstra法では,ネットワーク) ,
( G length
N
の各辺の長さlength (e )
がすべて非負のとき,全ての点への最短パスを求め ることができる.Dijkstra
法のアルゴリズムを以下に示す(VP
はスタート点s
からの最短 パスが確定した点の集合,VP ( G ) VP
は最短パスが未確定の点を表す).s
からの最短パス木を求めるDijkstra
のアルゴリズム1.
スタート点s
を選び,VP : distance [ s ] : 0 ; { path [ s ] : 0 ; }
とする.s
以外の点に対しては,distance [ v ] : ; { path [ v ] : 1 ; }
とする.2. VP V (G )
である限り以下の(a),(b)を繰り返す.(a)
VP ( G ) VP
の点の内でdistance
の値の最小な点w
を求める.(b)
VP : VP { w }
とする.さらにw
を始点とする各辺e ( w , v )
に対して,) ( ]
[ ]
[ v distance w length e
distance
ならば,} : ] [ ){;
( ]
[ :
]
[ v distance w length e path v e
distance
とする.27
4.2 日本国内の空港からの最短経路
国内便発着回数が多い空港,上位
10
空港と,国際便も発着している成田空港を合わせた 全11
空港から他の空港への最短経路を求める.利用するデータは2007
年4
月1
日のもので ある.図
4.1
は,国内便において11
空港からそれ以外の空港への最短経路を求めたときの所要 時間と実際の空港間の距離の関係を乗継回数別に表したものである.乗継をしないもの青 色,乗継を1
回するものを赤色,乗継を2
回するものを緑色で表している.全ての空港において,乗継回数が
0
回のものに関しては時間と空港間の距離に正の相関 が見られる.しかし,乗継回数が1
回以上では相関関係が弱まる.これは,空港での所要 時間に待ち時間が含まれているため,乗継がある場合,距離は変わらないが時間だけが増 えてしまうためである.28
(a)新千歳空港 (b)仙台空港
(c)成田空港 (d)羽田空港
(e)中部国際空港 (f)伊丹空港
図
4.1 各空港からの時間と距離の関係
乗継
0
回 乗継1
回 乗継2
回29
(g)関西国際空港 (h)福岡空港
(i)熊本空港 (j)鹿児島空港
(k)那覇空港
図
4.1 各空港からの時間と距離の関係(つづき)
乗継
0
回 乗継1
回 乗継2
回30
図
4.2
は,出発空港からその他の各空港への所要時間別に色分けし,日本地図上にプロッ トしたものである.各空港を日本時間の6
時に出発する場合を示している.桃色の点が出 発空港を表している.所要時間が120[分]以下の空港が青色,121[分]以上 240[分]
以下の空港が水色,241[分]以上
360[分]以下の空港は緑色,361[分]以上 480[分]
以下の空港は黄色,481[分]以上
600[分]以下の空港は橙色,601[分]以上の空港は
赤色,航空機の乗継だけでは到達できない空港は白色で表している.図
4.2
より,桃色の出発空港の近くであっても暖色系の空港が見られ,近い空港ほど所要 時間が短いとは限らないことがすぐに見てとれる.これは,前述の通り乗継が必要となる 空港では,乗継のときに待つ時間がかかってしまうためである.一方で,出発空港から遠 いが,寒色系の空港というのは乗継のない直行便である可能性が高い.(a)新千歳空港
6
時発 (b)仙台空港6
時発(c)成田空港
6
時発 (d)中部国際空港6
時発図
4.2 各空港への所要時間
31
(e)伊丹空港
6
時発 (f)関西国際空港6
時発(g)福岡空港
6
時発 (h)熊本空港6
時発(i)鹿児島空港
6
時発 (j)那覇空港6
時発図
4.2 各空港への所要時間(つづき)
32
4.3 羽田空港からの最小コストと最短パス
次に,日本で最も国内便の発着回数が多い羽田空港に着目する.羽田空港からその他の 各空港へ出発する時間を
6
時から21
時まで3
時間ごとに変え,その所要時間によって空港 を色分けし,日本地図上にプロットしたものが図4.3
である.桃色の点が羽田空港を表して いる.所要時間が120[分]以下の空港が青色,121[分]以上 240[分]以下の空港が水
色,241[分]以上360[分]以下の空港は緑色,361[分]以上 480[分]以下の空港は
黄色,481[分]以上600[分]以下の空港は橙色,601[分]以上の空港は赤色,航空機
の乗継だけでは到達できない空港は白色で表している.出発時間が遅くなるにつれて,空港数が減り,青い空港が増えているのがわかる.これ は,時間が遅くなればなるほどフライト便の数が減ってしまい,その日の中に到着するフ ライト便がなくなっているためである.
(a)6時発 (b)9時発
(c)12時発 (d)15時発
図
4.3 羽田空港からの所要時間の変化
33
(e)18時発 (f)21時発
図
4.3 羽田空港からの所要時間の変化(つづき)
表
4.1
は,羽田空港を出発したときに乗継なしでは行けない空港の最短経路を示している.最後の行の羽田空港から福島空港までの経路は
545
[分]かかっていることを表す.しかし,実際に羽田空港から福島空港まで行くためは新幹線などの他の交通機関を利用すると考え られる.
表
4.1 羽田空港から乗継して到着する空港
1 2 3
所要時間[分] 距離[km
] 羽田 伊丹 高知205 601
羽田 伊丹 新潟210 272
羽田 福岡 対馬260 963
羽田 松山 中部国際275 259
羽田 伊丹 仙台280 304
羽田 福岡 福江
305 1058
羽田 伊丹 山形
345 320
羽田 伊丹 花巻355 447
羽田 函館 札幌370 851
羽田 那覇 久米島
415 1609
羽田 福岡 成田
450 61
羽田 新千歳 松本455 179
羽田 伊丹 福島545 195
34
4.4 アメリカ国内の空港からの最短経路
図
4.4
は,アメリカ国内の出発空港からその他の各空港への所要時間によって,色別にア メリカ地図上にプロットしたものである.出発時刻は世界標準時の0
時としている桃色の点が出発空港を表している.所要時間が
240[分]以下の空港が青色,241[分]
以上
480[分]以下の空港が水色,481[分]以上 720[分]以下の空港は緑色,721[分]
以上
960
[分]以下の空港は黄色,961
[分]以上1200
[分]以下の空港は橙色,1201
[分]以上の空港は赤色,航空機の乗継だけでは到達できない空港は白色で表している.
アメリカ本土では,東側の空港は黄色が多く,西側の空港は橙色が多いことがわかる.
つまり,出発空港がどこであっても,到着空港が東側にある方が西側にあるのに比べ,小 さいコストで行ける.このことから,東側の方が西側に比べて航空のアクセスが良いと推 測できる.ただし,ここでは出発時刻を世界標準時の
0
時としている.35
(a)ニューヨーク
0
時発(b)アトランタ
0
時発図
4.4 アメリカ国内の空港への所要時間
36
(c)シカゴ
0
時発(d)ダラス
0
時発図
4.4 アメリカ国内の空港への所要時間(つづき)
37
(e)デンバー0時発
(f)ロサンゼルス
0
時発図
4.4 アメリカ国内の空港への所要時間(つづき)
38
4.5 日本航空の全路線廃止
日本航空(以下,JAL)のフライト便を除いた場合を適用する.本来のネットワークでの 羽田空港から各空港への所要時間と,JAL のフライト便を除くネットワークでの羽田空港 から各空港への所要時間の比較を行う.
図
4.5
は,羽田空港からその他の各空港への所要時間によって色分けし,日本地図上にプ ロットしたものである.桃色の点が羽田空港を表している.所要時間が120[分]以下の空
港が青色,121[分]以上240[分]以下の空港が水色,241[分]以上 360[分]以下の
空港は緑色,361[分]以上480[分]以下の空港は黄色,481[分]以上 600[分]以下
の空港は橙色,601[分]以上の空港は赤色,航空機の乗継だけでは到達できない空港は白
色で表している.図
4.5(a)は,JAL
を含む時空間ネットワークで羽田空港を6
時に出発する場合に,Dijkstra
法を用いた場合である.図の左下の空港(日本最西端の与那国空港)のみ白くなっている.つまり,それ以外の空港は乗継によって到達できることがわかる.一方,図
4.5
(b)は
JAL
を除く時空間ネットワークで羽田空港を6
時に出発する場合を表している.こちらでは,ところどころに白い空港が見られる.これらの空港は,JAL が撤退したこと によって航空機を乗り継いでも到達できないことを表す.
また,北海道の一部空港では,(a)では水色の空港が(b)で緑色や黄色になっている.
これらの空港では,JAL のフライト便がなくなったために出発空港や乗継空港での待ち時 間が増えたために所要時間が増えたと考えられる.
(a)JALを含むネットワーク (b)JALを除くネットワーク
図
4.5 羽田空港 6
時発の所要時間39
図
4.6
では,原点から右斜め45
度に基準となる線を引いている.この図はJAL
を含む場 合とJAL
を除く場合の所要時間が等しければ基準となる線上に点がプロットされる.また,JAL
を含む場合の所要時間がJAL
を除く場合に比べて大きいとき,点は線の右下の領域に プロットされ,JALを含む場合の所要時間がJAL
を除く場合に比べて小さいとき,点は線 の左上の領域にプロットされる.図
4.6
では,左上の領域に点が複数プロットされているが,右下の領域には点がないこと から,JAL の全路線を廃止させた場合の所要時間は本来の路線での所要時間に比べ,同じ であるか,または大きくなっている.つまり, JALを撤退させても,ほとんどの空港では 所要時間は変わらないが,一部の空港では所要時間が増すことがわかる.0 100 200 300 400 500 600 700
0 100 200 300 400 500 600 700
JALありのときの所要時間[分]
JAL
なしのときの所要時間[分]図
4.6 JAL
が含んだ場合と除いた場合の所要時間40
第 5 章 結論
5.1 まとめ
本研究では,国際航空の輸送量に関する統計データを整理することで,現在の航空ネッ トワークは東アジアの航空整備に問題があることを示した.
また,航空時刻表にデジタル地図データより時差を与えたものを用いて,航空の時空間 ネットワークを構築することにより,既存のフライトを表現した.そして,構築した時空 間ネットワークに対して
Dijkstra
法を用いて,日本の国内便について最短経路問題を解き,各空港への最短パスと最小コストを求めた.そこで,出発空港からの最小コストと距離の 関係では,乗継回数が
0
回のフライト便については正の相関が見られたが,乗継回数が1
回以上のときは関係性がみられなかった.アメリカの国内便に関しても同様にDijkstra
法 を用いて最短経路問題を解いたところ,アメリカ本土の東側と西側では空港間の所要時間 に差が表れ,西側に比べ東側の方が,所要時間が尐ない傾向が見られた.さらに,日本国 内の航空ネットワークに関して,日本航空の全路線を廃止した場合の羽田空港から各空港 への所要時間と乗継回数について考察し,一部の空港では航空機の乗継だけでは到達でき ないことを表し,所要時間の増える空港があることを示した.5.2 今後の課題
今後の課題としては以下のことが挙げられる.
・ 利用者の待つ行動と航空機に乗る行動の重み付け
・ 競合する交通機関の考慮
・ ネットワークを構築する期間の延長
・ 航空旅客のデータを加味
Dijkstra
法を解く際に,利用者の待つ行動よりも航空機に乗る行動のコストにわずかに重みを付けたが,実際の利用者の行動として,最短時間よりも数分遅いくらいならば航空 機を乗り継ぐよりも空港内で待って直行便に乗るなど,利用者ごとに時間に重みを置いて いるのか,運賃に重みを置いているのかによっても経路選択が変わってくる.このような 利用者の行動を表すことができれば,より再現性の高い経路が選ばれ,様々な問題を解く うえで有効な手段になると考えられる.
本研究では,航空ネットワークのみで最短経路を求めたが,実際は他の交通機関と組み
41
合わせて利用することが多い.そこで,他の交通機関も加味した最短経路問題を解くこと でより現実に近い経路を求められる.
航空ネットワークでは,
1
日のデータのみを扱ったが,航空時刻表では1
週間に1
日しか フライトしないものもあるので,尐なくでも1
週間分のデータを扱い時空間ネットワーク を構築することで,より正確なネットワークが構築できると考えられる.42
謝辞
本研究を進めるにあたり,中央大学理工学部情報工学科 田口 東教授に多大なるご指導,
ご助言を頂きました.心から深く感謝いたします.
また,研究を進めていく上で,さまざまな場面で貴重なご助言とご協力を頂いた中央大 学理工学部情報工学科 鳥海 重喜助教に心から感謝いたします.また,時空間ネットワー クに関して多くのご助言を頂いた小澤 勇紀氏をはじめとする,田口研究室の皆様には大変 お世話になりました.心から感謝いたします.
最後に,いつも私を励まし,応援してくれた両親ならびに,ここには記しきれない多く の先生,先輩,友人の皆様にも大変お世話になりました.心から感謝いたします.
43
参考文献
[1] 浅野孝夫,今井浩,計算とアルゴリズム,オーム社,東京,2000.
[2] 田口東,首都圏電車ネットワークに対する時間依存通勤交通配分モデル,日本オペ レーションズ・リサーチ学会和文論文誌,48巻,pp.85-108,2005.
[3] 中村幸史,通勤電車運行スケジュールにおける遅延計算モデルの構築,中央大学大 学院理工学研究科情報工学専攻修士論文,2004.
[4] 外務省,“各国・地域情勢”,(オンライン),
入手先<http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html>,(参照
2010
年1
月20
日).[5] 国土交通省,“航空輸送統計調査年報”,(オンライン),
入手先<http://www.mlit.go.jp/k-toukei/koukuu/koukuu.html>,(参照