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環動昆 第26巻 第1号:17-28(2015)

原 著

長崎市の人工池周辺におけるツチガエル( Rana rugosa )とニホンヒキガエル

( Bufo japonicus japonicus )の食性

日隈徳子1)2)・大庭伸也1) *・古賀雅夫1)

1) 長崎大学教育学部

2) 現在 信州大学大学院農学研究科

(受領2015年 1月 15日;受理2015年 2月 19日)

Feeding habits of Rana rugosa and Bufo japonicus japonicus around two artificial ponds in an urban environment in Nagasaki.

Noriko Higuma1)2), Shin-ya Ohba1) * and Masao Koga1)1) Faculty of Education, Nagasaki University, Nagasaki 852-8521, Japan 2) Present address:Graduate School of Agriculture, Shinshu University, Nagano 399-4598 Japan

Abstract

To determine the dietary preference of two frog species (Rana rugosa Temminck et Schlegel, 1838, and Bufo japonicus japonicus Temminck & Schlegel, 1838) in an urban environment, we conducted a series of field surveys including analysis of frog feces and prey availability around two ponds at Nagasaki University, Nagasaki, western Japan, from July to October 2013. We also evaluated the dietary choice of the two frog species in laboratory experiments. Fecal analysis showed that R. rugosa fed mainly on Hemiptera in July and August, but the major dietary items shifted from Hemiptera to ants in September and October. By contrast, B. japnocus japonicus fed mainly on ants regardless of differences in prey availability and season. Rana rugosa and B. japonicus japonicus ate more ants than other prey in the laboratory experiments. Although these two frog species preferred ants, B. japonicus japonicus is the more specialized ant-feeder. This difference in dietary preference may allow the coexistence of these species in urban environment.

Key words: Bufo japonicus japonicus, Dietary items, Prey availability, Rana rugosa, Urban ecology

都市環境に棲むツチガエル(Rana rugosa Temminck et Schlegel, 1838)とニホンヒキガエル(Bufo japonicus japonicus Temminck

& Schlegel, 1838)の食性を調べる目的で,長崎大学文教キャンパス内の 2 箇所の人工池周辺で採集した個体の糞分析と餌資源 量調査を含む一連の野外調査を 2013 年 7 月から 10 月まで実施した.さらに,室内実験で両種のカエルの餌選択性を評価した.

糞分析の結果から,ツチガエルは 7 月,8 月に半翅目を主に捕食していたが,9 月と 10 月に半翅目からアリ類へ餌品目が変化す ることが明らかとなった.一方,ニホンヒキガエルは,餌の利用可能性や季節を問わずアリ類を主に食べていた.室内実験では,

ツチガエルもニホンヒキガエルもアリ類を最も多く捕食した.両種共にアリ類を好むが,ニホンヒキガエルはより強いアリ類の スペシャリストであり,こういった餌の好みの違いが,都市環境において 2 種のカエルの共存を可能にしているのかもしれない.

はじめに

水辺生態系において多くのカエル類は昆虫類などの下 位の消費者と爬虫類や哺乳類,鳥類などの上位の消費者と

の間のエネルギー流を連結する中間捕食者として非常に 重要な生態的地位を占める.また,カエル類は水田では害 虫を捕食する有益生物とされてきた.しかし,近年水田の 圃場整備による乾田化,農薬の施用や耕作放棄,埋め立て

(2)

による水辺環境の悪化と消失により,カエル類の生息でき る環境が減少している.また,水稲の栽培型の変化により,

水田を二次的自然環境として利用しているカエル類,特に ト ノ サ マ ガ エ ル (Pelophylax nigromaculatus (Hallowell, 1861))の生息に負の影響を及ぼしていることも明らかに なった(村上・大澤,2008).カエル類の生存をボトムア ップ的に支える下位の動物群集を解明するためには,カエ ル類の食性を解明することが重要である.そして,その情 報をもとにカエル類を包含した水辺生態系の保全を図る 必要がある.

カエル類はため池や水田のような二次的な自然環境の 他に,都市部の水辺にも生息する(前田・松井,1999).

長崎市文教町にある長崎大学文教キャンパス(以下,本キ ャンパスと省略)は自然度の低い都市部に位置するにもか かわらず,構内には多くのツチガエル(Rana rugosa,以 下 R. rugosa と略)やニホンヒキガエル(Bufo japonicus japonicus,以下B. japonicusと略)が生息している.ツチ ガエルは関東を中心に数が減少しており,16 の都道府県 でレッドデータに登録されている.また,ニホンヒキガエ ルについては 20 の都道府県で登録されており,長崎県で も準絶滅危惧種に指定されている(日本のレッドデータ検 索システム,2013).両種は個体数が減少しているカエル であるが,本キャンパスには多数が生息している.したが って,これらのカエル類の個体群を維持できる餌動物が存 在すると予想されるので,これらの保全を図るためには,

本キャンパスでの各カエル類の食性を解明する必要があ る.先行研究(更科ら, 2011)では,緑地化された公園で のツチガエルをはじめとする 7 種のカエルの食性調査が 行われているが,自然度の低い都市部でのカエル類の食性 を明らかにした事例はほとんどない.また,ツチガエルに ついては京都府の貯水池,川,水田で,主にアリ類を捕食 することが明らかにされている(Hirai and Matsui, 2000)

が,都市部での調査は行われていない.ニホンヒキガエル は,本種の亜種であるアズマヒキガエル(Bufo japonicus

formosus)が主にアリ類やコウチュウ目を捕食することが

明らかにされているのみであり(Hirai and Matsui,2002),

ツチガエルと同様に都市部での調査は行われていない.

上記を踏まえて,本キャンパス構内にある 2 つの人工池周 辺に生息するツチガエルとニホンヒキガエルを対象とし て食性調査を行い,両種が捕食している餌動物の把握を試 みた.そして餌動物相と餌資源量の関係を明らかにし,都 市部におけるカエル類の保全の進め方について考察を行 った.

材料および方法 1. 調査地

Fig. 1 Two study ponds (Pond A and B) at the Bunkyo Campus of Nagasaki University.

本キャンパス構内の 2 つの人工池(A 池,B 池とする)

を調査地として選定した(Fig. 1).両池は,どちらもコ ンクリート製で,多くのカエル類(詳細は後述)が生息し ているが,池の大きさや周囲の状況,土の部分の広さなど に違いがあった.A 池は建物に囲まれ,街灯はないが 22 時ごろまで建物内の照明により明るかった.B 池は建物に 囲まれておらず,周辺に街灯(池より 3.2m 離れている)

が一つあった.A 池と B 池は直線距離で 34.7m 離れている.

池の間はアスファルトの道路で区切られており,人(長崎 大学の教職員,学生,一般の人)が通行するが,自動車の 往来はなかった.

2. 餌資源量調査

調査地 の餌 資源量を 評価 するため に, 電池式掃 除機

(YDC-643,山善(YAMAZEN),大阪)を用いた吸い取り 法によって 2 つの調査地内の動物を採取した.2013 年 8 月 2 日から 10 月 15 日にかけて月に一回ずつ,計 4 回の調 査を行った.各調査地内に 1m×1m の方形区を 4 つ設け,

各方形区内を 2 分かけてくまなく掃除機で吸い取った.方 形区の設置については,各調査地でカエルが多く捕獲され た場所とした.また,ツチガエルとニホンヒキガエルの生 態を考慮し,地面から約 10cm 以下の範囲内を調査対象と し,地中や樹上では餌動物の採集を行わなかった.採集さ れた餌動物を冷凍し,可能な限り細かな分類単位で同定を 行った後,カエルの糞の中から出てくる餌動物の破片と整 合できるように 99%エタノールで液浸標本にした.なお,

(3)

上述のカエルの糞中の餌動物調査で発見できない動物や,

電池式掃除機でもほとんど採取できない動物をその他と してまとめた.また,ハエ目やハチ目の成虫はカエルの糞 中からほぼ確認されず,形態的にも類似し,個体数がわず かであったため,ハエ目・ハチ目として 1 つのカテゴリー にまとめた.

3. カエル類の捕獲法

本キャンパス構内に多く生息していたツチガエルとニ ホンヒキガエルの 2 種を調査対象とした.カエルの捕獲は 2013 年 7 月 18 日から 10 月 15 日にかけて,計 7 回実施し た.原則として 1 月に 2 回実施したが,10 月の捕獲につ いては,カエルの個体数が明らかに減少したため,2 回目 の調査は行わなかった.日中よりも夜間の方がカエルを発 見しやすかったので, 夜間(20~23 時)に捕獲を行った.

ツチガエルについては,両池を調査し,発見した個体を タモ網または素手で捕獲した.1 度の調査につき,各池よ り 5 頭を捕獲した.ニホンヒキガエルについては,ツチガ エルよりも個体数が少なかったため,各池から 10m 以内の 範囲で捕獲できた数(平均 4.5 頭,最大 6 頭,最低 2 頭)

を網または素手により捕獲した.

4. 糞の採取法

捕獲後,2 時間以内に研究室に持ち帰り,捕獲個体の SVL

(頭胴長)を計測した.その後 1 個体ずつに分けて,蓋に 空気穴をあけたプラスティックカップ(直径 13cm×高さ 6cm)に入れ,餌を与えずに原則として 1 週間を上限に脱 糞を待った.カップ内の環境については,各カエルの生態 を考慮し,ツチガエルでは水(約 140ml 又は深さ約 1cm)

を満たした.ニホンヒキガエルについてはガーゼやキッチ ンペーパーに水を含ませたものをカップ内に敷き,カエル が水に浸ることがないようにした(大谷,2010).

カエルの脱糞を確認したら,糞を採取して実体顕微鏡下 で観察を行った.糞の中から出てきた餌動物の破片は,後 日同定するために 99%エタノールで固定,保存した.脱糞 をした個体および捕獲後 1 週間以内に脱糞をしなかった 個体は,捕獲した場所に放逐した.

5. 糞を構成する餌動物の同定法

糞の中から出てきた餌動物については,長田(1985)や

Hirai and Matsui(2002)を参考にして可能な限り細かい分

類単位で同定を行い,カエル 1 個体が捕食した餌の種やそ れぞれの捕食量を推定した.消化が進んでおり同定が不可 能であったもの,ほぼ捕食されていなかった種はその他と して扱った.なお,カエル類の食性調査には強制嘔吐法

(Hirai and Matsui, 2002)が用いられるが,強制嘔吐法に よる個体へのダメージを考慮して,本研究ではダメージが

ほとんどないと考えられる糞分析を採用した.

6. 室内条件における餌選択

ツチガエルとニホンヒキガエルの餌の選択性を調べる ために,上述の捕獲個体から脱糞し終えた 5 個体のツチガ エルとニホンヒキガエルを選び,水槽(幅 42.5×奥 24.5×

高さ 24.5 ㎝)に入れ実験を行った.水槽の中の環境は各 カエルの生息場所を考慮して以下のように設定した.ツチ ガエルは水場を好むので水槽の底面に対する土と水の割 合をそれぞれ1:2とし,ニホンヒキガエルでは陸地を好 むので土と水の割合を2:1とした.また,各調査地の環 境に近付け,くり返し間で環境の違いが最小となるように,

人工植物(プラグリーンリング G039,大創産業,広島)

を各水槽に入れた.水槽に入れる土については,調査地よ り地表から 10m 以内より採取し,餌動物がいないことを目 視で確認 した 上で使用 した .水槽の 壁面 にはフル オン

(Fluon® Insect Ant Slip Barrier, byFormica)を塗り,餌動 物(後述)のアリ類やモリチャバネゴキブリなどが逃げら れないようにした.実験室内の温度は 27.3±0.08 度(平 均±標準誤差,n = 10)に保つようにし,自然日長条件下 に水槽を置いた.

調査地内での餌資源量調査によって採取された餌動物 で,かつカエルの糞中からよく検出された餌動物である 7 品 目 の 動 物 ( カ メ ム シ 目 , ア リ 類 , オ ン ブ バ ッ タ Atractomorpha lata (Mochulsky, 1866),ナナホシテント ウCoccinella septempunctataLinnaeus, 1758,モリチャ バネゴキブリBlattella nipponica Asahina, 1963,クモ 目,サカマキガイPhysa acutaDraparnaud, 1805)を環境 中に占める割合にのっとって各カエルに与えた.アリ類,

オンブバッタ,モリチャバネゴキブリ,クモ目,サカマキ ガイについては 3 頭ずつ,カメムシ目については 2 頭,ナ ナホシテントウについては 1 頭とした.この実験に用いた 餌動物については調査地外より採集した.なお,半翅目に はカメムシやアブラムシ,セミ等が含まれるが,カエルの 糞中からよく発見されたカメムシ目のホソハリカメムシ Cletus punctiger (Dallas, 1852) , ク モ ヘ リ カ メ ム シ Leptocorisa chinensis Dallas, 1852 を代表させて与える ことにした.クモ類については造網性のクモ類ではなく,

網を張らないササグモ Oxyopes sertatus Latrelle を与え た.環境に慣らすため,カエルを水槽に導入後,1 時間静 置した後に餌動物を導入した.明期(9 時~21 時)に観察 を行った.

餌動物を導入後,1時間おきにカエルが餌を捕食してい ないかを確認し,3 品目以上の餌動物を捕食したのを確認 した後,1 個体ずつカップ(大きさは上述と同じ)に入れ,

餌を与えずに脱糞を待った.カエルが脱糞したら時間を記 録し,糞を採取して観察を行った.糞から採集された餌動

(4)

物は,可能な限り細かい分類単位で同定を行った後,カエ ルの糞の中から出てくる餌動物の破片と整合できるよう に 70%エタノールで固定,保存した.捕食から脱糞までの 時間から,消化に要した時間を計算した.

また,ササグモが他の餌動物を捕食した可能性を考慮し,

カエルを入れずに対照実験を行ったが,クモが捕食した場 合は残骸が残ることを確認した.すなわち,餌動物の残骸 が水槽内に残っていない場合は,カエルが丸呑みして捕食 したことになる.

7. 餌の選択性

調査地で捕獲したツチガエルとニホンヒキガエルの糞 の内容物と室内実験のデータを用いて,個体ごとに各餌動 物に対する餌選択度指数を算出した.ほぼ捕食されていな かった餌種についてはその他としてまとめた.選択度指数 として,以下の式によるマンリー指数(Manly,1974)を 用いた.

ここで,riは糞の中から出てきた餌動物に,niは環境中に 現れた餌カテゴリーiの割合である.この指数では,餌カ テゴリーによって利用可能量が異なることによる偏りが 除去され,0(まったく食べられない)から 1(そのカテ ゴリーが専食される)まで変化する.各カエルの糞からま ったく検出されなかった餌動物については,選択度指数を 算出しなかった.

同様に,上記の調査の結果から月別にヤーコフス指数

(Jacobs,1974)を計算した.上位 5 品目の餌についてヤ ーコフス指数を算出し,ほぼ捕食されていなかった餌種に ついてはその他としてまとめた.ヤーコフス指数について は以下の式を用いた.

ここで,Psはカエルの糞中の餌動物の割合,Paはその餌動 物の環境中の割合である.この指数では-1(嫌い)から 1(好き)まで変化する.

また,カエル種間の餌重複度は,以下の比率類似指数に よって示した(Feinsinger et al., 1981).

ここでpiとqiはそれぞれのグループpとグループq(こ れは,2 種のうちのどちらか)における餌カテゴリーi(m

カテゴリーのうちの)の餌動物の個体数の割合である.指 数は 0(重複なし)から 1(完全に重複)までの値をとる.

月ごとのサンプルサイズが小さかったため,調査期間を通 じての合計値で 2 種の比率類似度指数を池ごとに計算し た.

8. 統計解析

カエル類の餌となり得る餌動物の生物群集を評価する ため,環境中から確認された各餌品目の個体数を従属変数,

“月”および“調査地”を独立変数とした二元配置の多 変量分散分析(Two-way MANOVA)を用いて分析した.

カエル類の食性の違いを評価するため,糞中から確認され た各餌品目の個体数を従属変数,カエルの“種の違い”お よび“調査地”を独立変数としたtwo-way MANOVAを用 いて分析した.上述の多変量分散分析を行う際には,変量 の正規性を得るため,Log10(x+1)に変換したデータを使用 した.

また,先行研究でツチガエル(Hirai and Matsui, 2000)

とニホンヒキガエルと近縁のアズマヒキガエル(Hirai and

Matsui,2002)がアリ類を多く捕食しているという報告が

あったため,アリ類が糞中に占める割合についてカエルの 体サイズ(SVL)と月ごとの変動の影響を調べるために,

糞中の全餌動物に占めるアリ類の割合を従属変数,“カエ ルの体サイズ(SVL)”および“月”を独立変数とし,カ エ ル の 種 ご と に 一 般 化 線 形 モ デ ル (Generalized Linear Model:GLM)で解析を行った.モデルのあてはめには二 項分布を仮定した.以上のすべての分析には,統計解析ソ フトウェア R version 3.1.2 (R Core Team, 2014)を用い た.

結 果

1.糞中の餌の同定

ツチガエルとニホンヒキガエルの糞からは昆虫の頭や 触角,破れた翅や貝殻など様々な餌動物の破片が検出され た.カメムシの前翅やアリの頭部など堅いキチン質ででき た部分は検出されやすかったが,消化が進んでおり同定が 不可能なものもあったため,これらの破片のすべてを種

(species),科(family)レベルまで同定することは困難で

あった.しかし,できるだけ多くの破片を拾い集め,目

(order)まで同定した.ツチガエルとニホンヒキガエル で出てくる破片の消化具合はほぼ変わらなかった.以下に その結果を示す.

半翅目(カメムシ類,Hemiptera)については小楯板,

前翅 2 枚,頭部,前胸背板が検出されたが,一番多く検出 された小楯板と前翅 2 枚を同定に用いた.小楯板 1 個また は前翅 2 枚で 1 頭のカメムシを捕食したとみなした(Fig.

(5)

2a,b).セミ類については幼虫を食べている個体がいたた め,前脚が検出されることが多かった.よって,前脚 2 本でセミ 1 頭を捕食したとみなした.アブラムシ類につい てはほぼ消化されていない状態で検出されたため,容易に 同定することができた.

バッタ目(Orthoptera)では,前翅,後脚が検出された が,後脚の方が多く検出されたので後脚 2 本で 1 頭のバッ タ目を捕食したとみなした.まれにバッタの卵が検出され ることがあった.バッタ目については消化されやすいよう

で,後脚と前翅以外の破片はほぼ検出されなかった(Fig.

2c).

アリ科(Formicidae)については,頭部,胸部,腹部が

検出された.消化されずにそのまま検出されることもあっ たが,ほとんどは頭部,胸部,腹部がバラバラになって検 出された.頭部 1 つで 1 個体のアリ類とみなした(Fig. 2d). ゴキブリ目(Blattodea)については,腹部,胸部が検出さ れた.腹部についてはバラバラになっていたり,半分にな っていたりするものが多かったが,胸背部は比較的そのま Fig. 2 Body parts of prey animals in frog feces. Scutellum (a) and fore wings (b) of Hemiptera, hind leg of Orthoptera (c),

head of ant (d), a part of thorax of Blattaria, Blattella nipponica (e), fore wings of the ladybird beetle Coccinella septempunctata (f), fore wings of Diptera or Hymenoptera (g), whole body (h) and leg (i) of spider, snail shell (Pulmonata) (j). Scale bars=1.0mm.

(6)

ま検出されることが多かったため,これを同定に用いた.

胸部は前胸,中胸,後胸の 3 節からなるので,3 枚で 1 頭 のゴキブリ類を捕食したとみなした(Fig. 2e).

コウチュウ目(Coleoptera)については,全身が消化さ れない状態で検出されることもあったが,左右の上翅が一 枚ずつ検出されたため,上翅 2 枚で 1 頭のコウチュウを捕 食したとみなした(Fig. 2f).

ハエ目(Diptera)とハチ目(Hymenoptera)の成虫につ いては,成虫はカエルの糞中からほとんど確認されなかっ た.ハエ目またはハチ目の翅が 2 枚検出された場合,1 頭 のハエ目またはハチ目の昆虫を捕食したとみなした(Fig.

2g).

クモ目(Araneae)については,一番消化が進んでおり

同定が困難であった.まれに消化されていない状態で検出 されたこともあったが,脚のみが検出されることが多かっ

た.脚が 8 本で 1 頭のクモを捕食したとみなすべきである が,8 本以上の脚が検出されることはなかったため,1 本 でも検出された場合,1 頭のクモを捕食したとみなした

(Fig. 2h,i).

有肺目(貝類,Pulmonata)については,貝殻がほぼ消 化されていない状態で検出されたので,貝殻 1 個で 1 頭の 有肺目を捕食したとみなした(Fig. 2j).

ダニ目(Acariana)についてはほぼ消化されていない状

態で検出された.

2.餌動物資源量

掃除機による吸い取り法での調査の結果,3 綱 12 目に わたる 560 頭の餌動物が検出された.両方の調査地に共通 したのは,昆虫綱では半翅目,バッタ目,アリ類,コウチ ュウ目,ハエ目とハチ目の成虫,ゴキブリ目,ハサミムシ

Fig. 3 Dynamics of prey abundance (No. Prey Individuals / m2) during the study period in Pond A and B.

(7)

目,チョウ目の 8 品目が含まれていたことである.トンボ 目成虫については A 池のみで検出された.蛛形綱ではクモ 目とダニ目の 2 目が含まれ,腹足綱では有肺目が含まれて いた.

A 池では 292 頭の餌動物が検出された.昆虫綱の餌動物 が最も多く,餌動物の総個体数の 66.1%を占めた.次いで 蛛形綱は 29.1%,腹足綱は 4.8%であった.そして,これら の餌動物のうち最も多かったのはアリ類で,全体の 37.7%

を占めた.次に多かったのはクモ目の 15.1%,次いでダニ 目が 14.0%,半翅目が 13.4%であったが,それ以外は 6%以 下だった.

B 池では 268 頭の餌動物が同定された.昆虫綱の餌動物 が最も多く,餌動物の総個体数の 95.5%を占めた.次いで 蛛形綱が 4.1%,腹足綱が 0.4%であった.A 池同様,昆虫 綱の餌動物が最も大きな割合を占めたが,A 池よりも昆虫 綱の餌動物の占める割合は大きかった.そして,これらの 餌動物のうち最も多かったのは,A 池と同様にアリ類で全 体の 63.4%を占めた.次いで半翅目が 10.8%,バッタ目が 10.4%であった.それ以外は 6%以下だった(Fig. 3).

カエル類の餌となり得る各餌品目の個体数を従属変数,

“ 月 ” お よ び “ 調 査 地 ” を 独 立 変 数 と し た two-way

MANOVAを用いて分析した結果,“月”,“調査地” およ

び “月×調査地の交互作用”のすべてが有意であった

(月:F1, 28 = 4.24, P = 0.003,調査地:F1, 28 = 13.50,

P < 0.001,月×調査地:F1, 28 = 4.75, P = 0.002).ゆえ に,調査地ごとに餌動物の資源量が異なり,季節によって も変動していることが明らかとなった.

3.カエルの餌構成と種による季節変動

上記の分析の結果,ツチガエルについては捕獲した 73 個体の 62 個の糞塊から,3 綱 10 目にわたる 363 頭の餌動 物が検出された(Table 1).昆虫綱には半翅目,バッタ目,

アリ類,コウチュウ目,ハエ目とハチ目の成虫,ゴキブリ 目の 6 品目が含まれていた.蛛形綱にはクモ目が,腹足綱 では有肺目が含まれていた.餌動物の大部分を占めたのは 昆虫綱で,総個体数の 97.0%を占めた.クモ目と有肺目は 2%以下の小さな割合にすぎなかった.また,昆虫綱のうち 最も多く捕食されていたのは半翅目で,検出された餌総数 の 56.5%を占めていた.これに次いで大きな割合を占めた のは,アリの 29.5%であり,次いでハチ目とハエ目の成虫 が 6.1%を占めていたが,それ以外は 3%以下だった.

ニホンヒキガエルについては捕獲した 35 個体の 26 個の糞 塊から昆虫綱の 2996 頭の餌動物が検出された(Table 2).

昆虫綱については,半翅目,アリ類,コウチュウ目,ハ エ目とハチ目の成虫,ゴキブリ目,ハサミムシ目の 6 品目 が含まれていた.蛛形綱ではダニ目が含まれていた.ツチ ガエルとは異なり,バッタ目や腹足綱が検出されない一方 で,ハサミムシ目とダニ目が少量であるが検出された.餌

Table 2. Prey animals found in the feces of B. japonicus.

Table 1. Prey animals found in the feces of R. rugose.

Prey animals n % n % n % n % n %

Hemiptera 47 73.4 102 77.9 55 38.5 1 4.0 205 56.5

Orthoptera 1 1.6 0 0.0 0 0.0 2 8.0 3 0.8

Ant 1 1.6 17 13.0 73 51.0 16 64.0 107 29.5

Coleoptera 2 3.1 1 0.8 1 0.7 2 8.0 6 1.7

Diptera & Hymenoptera 10 15.6 8 6.1 4 2.8 0 0.0 22 6.1

Dermaptera 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0

Blattaria 1 1.6 1 0.8 4 2.8 3 12.0 9 2.5

Spider 0 0.0 0 0.0 4 2.8 1 4.0 5 1.4

Acarina 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0

Pulmonate 2 3.1 2 1.5 2 1.4 0 0.0 6 1.7

Total 64 131 143 25 363

Total

July August September October

Prey animals n % n % n % n % n %

Hemiptera 6 27.3 15 4.8 16 1.5 6 0.4 43 1.4

Orthoptera 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0

Ant 13 59.1 293 93.9 1006 97.4 1619 99.4 2931 97.8

Coleoptera 0 0.0 1 0.3 3 0.3 3 0.2 7 0.2

Diptera & Hymenoptera 0 0.0 2 0.6 0 0.0 0 0.0 2 0.1

Dermaptera 3 13.6 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0

Blattaria 0 0.0 0 0.0 6 0.6 1 0.1 7 0.2

Spider 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0

Acarina 0 0.0 1 0.3 2 0.2 0 0.0 3 0.1

Pulmonate 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0

Total 22 312 1033 1629 2996

July August September October Total

(8)

動物の大部分を占めたのは昆虫綱で,餌動物の総個体数の 99.8%を占めた.そのうち最も多く摂取されていたのはア リ類(97.8%)で,その他の餌種は 2%以下だった.

また,糞中から確認された各餌品目の個体数を従属変数,

カエルの“種の違い”および“調査地”を独立変数とし た two-way MANOVA を用いて分析した結果,“種の違い”

が有意(F1, 84 = 6.77, P < 0.001)となったが,“場所”

(F1, 84 = 1.52, P = 0.138)および“種の違いと場所の交

互作用”(F1, 84 = 1.04, P = 0.426)は有意ではなかった.

ゆえに,調査地ごとに 2 種のカエルの食性は変わらなかっ たが,カエルの種によって,食性が異なることが明らかに なった.

次に,糞中に占めるアリ類の割合を GLM で解析を行った 結果,ツチガエルでは,糞中のアリ類の割合に対して,SVL が有意な負の効果を持っていた。同様に月による変動(7 月を基準とした場合,8 月,9 月,10 月との間)に有意差 があり,7 月は他の月に比べて有意にアリ類の割合が低か った.また,ニホンヒキガエルでSVLと月による変動(7 月を基準とした場合,9 月,10 月との間に)有意差があり,

7 月は 9 月、10 月に比べて有意にアリ類の割合が低かった

(Table 3).両種ともに,SVL と負の推定値が得られた ことから,ツチガエル,ニホンヒキガエルともに小さな個 体ほどアリ類をよく捕食していることを示している.また,

9 月と 10 月の推定値が正の値を示したことから,7 月と 8 月に比べてアリ類をより多く捕食していたということが 分かった.比率類似度指数 PS をそれぞれの池で算出した ところ,A 池では 0.129,B 池では 0.812 となり,B 池で餌 重複度が高かった.

4. 餌の選択性について

マンリー指数について,ツチガエルでは,半翅目の調査 期間を通じた平均値が 0.48±0.07(平均±標準誤差,n = 33)でもっとも好んで捕食されていた.次いでアリ類の 0.23±0.07 で,その他の餌種は 0.1 以下となり,あまり 好んで捕食されていなかった.半翅目は 7 月に 0.73±0.11,

8 月に 0.90±0.05 と非常に好んで捕食されていたが,9 月 に は 0.27±0.11 と 低 く な っ た . そ し て 10 月 に は 0.15±0.11 とあまり好まれなかった.アリ類については,

全く好んで捕食されておらず,7 月に 0,8 月に 0.04±0.02 となった.しかし,9 月になると 0.20±0.10 と徐々に好 んで捕食されるようになり,半翅目に次いで二番目に好ん で捕食されていた.10 月には 0.57±0.17 と好んで捕食さ れており,全体の中で半翅目を抜いて一番好んで捕食され ていた(Fig. 4).ヤーコフス指数については,調査期間 を通じた半翅目の平均値が 0.09±0.16 でもっとも好んで 捕食されていた.次いでアリ類の-0.36±0.15 で,半翅 目以外の餌種はマイナスの値を示し,好んで捕食されてい なかった.半翅目は 7 月に 0.79±0.12,8 月に 0.88±0.05 と非常に好んで捕食されていたが,9 月には-0.14±0.28,

10 月には-0.80±0.20 となり,避けられるようになった.

アリ類については,7 月は全く好んで捕食されておらず-

1.0 を示した.8 月に-0.89±0.06,9 月に-0.35±0.25 と避けられていたが,10 月には 0.51±0.29 と好んで捕食 されており,全体の中で半翅目を抜いて一番好んで捕食さ れていた(Fig. 4).

ニホンヒキガエルにおいては,調査期間を通じたアリ類 の平均値が 0.76±0.05(平均±標準誤差,n = 23)で最 Table 3. Generalized linear model results for ant proportions in frog feces.

(9)

も好んで捕食されていた.次いで半翅目の 0.14±0.04 で あった.その他の餌種ついては 0.06 以下となり,あまり 好んで捕食されていなかった.アリ類については 7 月に 0.59±0.06,8 月に 0.82±0.15,9 月に 0.68±0.10,10 月に 0.85±0.05 とすべての月において最もマンリー指数 が高く,非常に好んで捕食されていた.半翅目については,

7 月には 0.41±0.06 と好んで捕食されていたが 8 月には 0.16±0.16 と 低 く な り , 9 月 に 0.09±0.04, 10 月 に 0.10±0.04 と徐々に低くなった(Fig. 4).ヤーコフス指 数 に つ い て は , 調 査 期 間 を 通 じ た ア リ 類 の 平 均 値 が 0.76±0.06 で最も好んで捕食されていた.次いでコウチ ュウ目の-0.52±0.13 で,アリ類以外の餌種はマイナス の値を示し,好んで捕食されていなかった.アリ類につい

て は 7 月 に 0.49±0.16, 8 月 に 0.73±0.19, 9 月 に 0.79±0.09,10 月に 0.93±0.04 とすべての月において高 く,非常に好んで捕食されていた.半翅目については,7 月には 0.18±0.09 であったが,8 月には-0.68±0.10 と 避けられるようになり,9 月に-0.74±0.10,10 月に-

0.86±0.10 と徐々に避けられるようになった(Fig. 4).

5.室内実験

カエルが捕食した後,脱糞までの時間を測定し,それぞ れのカエルの脱糞までの平均時間を算出した.その結果,

ツチガエルでは 40.6±2.9 時間(平均±標準誤差,n = 13)

であり,日数に換算すると 1.7±0.1 日であった.一方二 ホンヒキガエルでは,173.5±92.0 時間(平均±標準誤差,

Fig. 4 Proportion of each prey animal found in frog feces (A), Manly index (B) and Jacobs index (C) during the study period under field conditions in R. rugosa and B. japonicus.

(10)

Fig. 5 Manly index (A) and Jacobs index (B) of each prey animal under laboratory conditions in two frog species.

n =13)であり,日数に換算すると 7.2±3.8 日であった.

ツチガエルの脱糞までに要する時間は 29.5~51.5 時間で あったが,二ホンヒキガエルは 48~1272 時間と,ツチガ エルに比べばらつきがあり,53 日後に脱糞する個体もい た.

ツチガエルが最も多く捕食していたのはアリ類で,1 頭 を除いてすべてのカエルが,餌として与えたすべてのアリ 類を捕食しており,全体の 46.7%を占めた.次いでゴキブ リ目の 19.6%,クモ目の 17.4%であった.一方でバッタ目 は,調べたツチガエル 15 頭のうち 1 頭しか捕食しておら ず,1.1%とわずかな割合を占めるにすぎなかった.また,

有肺目についてはまったく捕食されていなかった.ニホン ヒキガエルが最も多く捕食していたのはツチガエルと同 様にアリ類で,全体の 34.4%を占めた.続いてゴキブリ目 の 28.7%,カメムシ目の 13.9%であった.他の餌種につい てもあまり差がなかったが,バッタ目は 1.6%とほぼ捕食 されておらず,有肺目については 0%とまったく捕食され ていなかった.

上記の実験の結果からマンリー指数を計算すると,ツチ ガエルで最も高かったのはアリ類で,15 匹の平均値は 0.44±0.05(平均±標準誤差)であった.中には 0.75 と 非常に高い指数を示す個体もおり,最も好んでアリ類を捕

食していた.次いでクモ目の 0.16±0.03,コウチュウ目 の 0.14±0.05 であった.一方バッタ目では,0.01±0.01 であった(Fig. 5).ヤーコフス指数が最も高かったのは,

マンリー指数と同様にアリ類で,平均値は 0.62±0.05 で あった.0.87 と非常に高い指数を示す個体もおり,アリ 類 は 好 ん で 捕 食 さ れ て い た . 次 い で ゴ キ ブ リ 目 の - 0.07±0.13,クモ目の-0.20±0.16 であったが,アリ類 以外の餌種についてはすべてマイナスの値を示し,あまり 好んで捕食されていなかった.バッタ目はほぼ捕食されて おらず,有肺目は全く捕食されていなかったので,バッタ 目では-0.93±0.07,有肺目では-1.0 であり,避けられ ているという結果になった(Fig. 5).

ニホンヒキガエルではツチガエルと同様にアリ類が一 番高く,15 匹の平均値は 0.31±0.02 であった.次いでゴ キブリ目の 0.24±0.02,カメムシ目の 0.18±0.04 であっ た.ツチガエルと同様,バッタ目を捕食したのは 15 頭中 2 頭だけであり,マンリー指数の平均値は 0.01±0.01 で あった(Fig. 5).ヤーコフス指数ではツチガエルと同様 にアリ類が最も値が大きく,平均値は 0.38±0.11 であっ た.次いでゴキブリ目の 0.34±0.03,カメムシ目の-

0.08±0.16 であった.ヒキガエルについては,アリとゴ キブリ目以外の餌種はマイナスの値を示した.また,ツチ ガエルと同様バッタ目と有肺目を避けていた(Fig. 5).

考 察

今回の調査より,ツチガエルとニホンヒキガエルで食性 が異なることが分かった.一般に,動物の食性は環境中の 餌の利用可能性とその動物自身の餌の好み,採餌行動が影 響している(Begon et al., 2006).本研究で行った野外調 査から,調査地間で餌資源量が異なり,その月ごとの変動 の仕方も異なることが分かった(Fig. 3)が,カエルの糞 塊から出てきた餌動物は, 2 種のカエルの食性は調査地 ごとに変わらずに,カエルの種によってのみ食性が異なる ことを示した.どちらの調査地でもツチガエルは 7,8 月 に半翅目を好んで捕食していたが,9,10 月に半翅目の糞 中の餌動物の割合の値が下がり,アリ類の値が上がってい た(Fig. 4).そして選択度指数(マンリー指数とヤーコ フス指数)を算出すると,糞中の割合と同じように 7 月,

8 月は半翅目を最も好んで捕食していたが,9 月から徐々 にアリ類を好むようになり 10 月にはアリを最も好んで捕 食していた(Fig. 4).また,小さな個体ほど多くアリ類 を捕食していたということも分かった(Table 3).室内実 験の結果では,アリ類が最も多く捕食されていた.選択度 指数を算出しても,マンリー指数,ヤーコフス指数ともに 非常に高い値を示した(Fig. 5).このことから,ツチガ エルはアリ類を最も好んで捕食しているということが分

(11)

かった.京都府の水田におけるツチガエルの調査(Hirai and Matsui, 2000)でもツチガエルはアリ類を非常に好ん で捕食していることから,ツチガエルは今回調査を行った 都市環境や水田などの環境の違いに関係なく,アリ類を非 常に好んで捕食していると言えるだろう.

これらのことから,ツチガエルは基本的にはアリ類を好 むが,餌動物の割合が異なる場合,すなわち今回の野外調 査の結果で示されたように,7,8 月には環境中に高い割 合で存在する半翅目を食べていたが,アリ類が増加する 9,

10 月にはアリ類を好んで捕食していることが分かった

(Fig. 4).なぜ野外調査で 7,8 月に半翅目を好んで捕食 していたのかは明らかではないが,環境中の餌動物の割合 に応じて餌動物を変えているのではないかと考えられる.

よって,ツチガエルは体サイズが小さい時はアリ類を好ん で捕食するが,他の昆虫も多く生息している場合には,環 境中に多く生息している昆虫を捕食しているゼネラリス ト的な捕食者であると考えられる.

ニホンヒキガエルでは,A 池,B 池の両方で糞中にアリ 類の占める割合が最も高かったことから,ニホンヒキガエ ルは調査地の違いに関係なく,アリ類を最も好んで捕食し ているということが分かった(Fig. 4).また,環境中に 存在するアリ類の割合よりも,糞中に存在するアリ類の割 合の方が高いこと,体サイズの小さな個体ほどアリ類を多 く捕食していることが分かった(Table 3).選択度指数を 算出した結果,全調査期間(7~10 月)でアリ類が最も好 んで捕食されていた(Fig. 4).他の餌種についてはマイ ナスの値を示し,アリ類のみがプラスの値を示したことか らも,アリ類を最も好んでいるといえよう(Fig. 4).室 内実験でもマンリー指数,ヤーコフス指数の両方でアリ類 が最も高い値を示した(Fig. 5)ため,野外調査の結果と 併せてもニホンヒキガエルがアリ類を最も好んで捕食す ることは間違いないだろう.ニホンヒキガエルについては,

環境中の餌の利用可能性の違いに関わらずアリ類を捕食 していることから,ツチガエルと違い,環境中の餌資源量 の違いに影響されずにアリ類を選択的に捕食しているス ペシャリストであると結論付けることができる.過去にニ ホンヒキガエルにおける食性調査は行われていないが,山 地に棲むアズマヒキガエルは,アリ類とコウチュウ目を多

く捕食すると報告されている(Hirai and Matsui, 2002).

今回の調査結果からもニホンヒキガエルはアリ類を選 択的に捕食しているということが分かったが,アズマヒキ ガエルの調査結果(Hirai and Matsui, 2002)と異なり,コ ウチュウ目はほとんど確認されなかった.この理由につい ては,コウチュウ目がより多く生息する場所でニホンヒキ ガエルの食性調査を行うなど,さらなる調査が必要である.

またニホンヒキガエルの成長に対して,アリ類がどのよう に寄与するのかを調べることも今後の課題の一つである。

本研究は,ツチガエル,ニホンヒキガエルの食性を都市 部で調査し,アリ類が非常に重要な餌資源になっているこ とがわかった.そして,本研究では自然度の低い都市部で のカエル類の食性調査を行ったが,なぜこういった環境で もツチガエルとニホンヒキガエルの個体群が存続できて いるのかについて考察する.ツチガエルは水辺のすぐ近く に生息し,繁殖場所が水田,池,沼,溝,用水路,湿地の 水たまり,広い河川の川原にある水たまりなどの浅い止水 や,ゆるい流れである(前田・松井,1999)。卵は水草な どに産み付けることから,ツチガエルが生存するためには,

卵を生みつけることができる水草などが存在する水たま りなどの止水やゆるい流れの水辺が必要であると考えら れている(前田・松井,1999).また,本研究の調査で陸 上に生息する昆虫類の餌動物を多く捕食していたことか ら,昆虫類が生息できる下草や木の生えている陸地が必要 であると考えられる.ニホンヒキガエルは森林内やその周 辺の比較的下草などが多い環境に生息すること,地中で冬 眠すること,繁殖場所が山道の水たまり,溝,池,湿原,

高山の尾根に転がる巨岩のくぼみの水たまり,水田などの 止水でなされることから,餌を捕食できる下草の多い陸地 と,繁殖ができる浅い止水やゆるい流れのある水辺が必要 であると考えられる(前田・松井,1999).また,ニホン ヒキガエルの成体は,基本的には同一場所に定住し,その 行動範囲は 2 年以内で平均 30~35m,3~7 年間で平均 45m である(奥野,1985).このことから,陸地と水辺が近く に存在する必要があるだろう.そして,両種ともにカエル 類の天敵であるヘビや鳥類などから身を守るためには,カ エルが隠れることのできる土,下草,落ち葉,木などが必 要である.

今回調査を行った本キャンパス構内の2つの人工池に ついて考えると,以上の条件をすべて満たしている(Fig.

1).A 池,B 池ともに浅い止水であり池のすぐ近くに下草 が比較的多く,木が生えている陸地がある.両池にはオオ カナダモ(Egeria densa Planch.)などの多くの水草が生え ており,ツチガエルの産卵場としても適していると考えら れる.また,両池はカエル類が隠れることのできる下草も 比較的多く,実際に,B 池近くの人工物の物陰で越冬して いるニホンヒキガエルも観察されている(日隈・大庭,

2014).こういった場所の確保はカエル類を捕食している 天敵からの逃避や越冬場所としても重要であろう.よって,

両池に生息するツチガエルとニホンヒキガエルの個体群 が存続するためには,現状のまま両池の環境を維持し続け ることが必要であると考えられる.

謝 辞

カエルや昆虫の捕獲に快く協力していただいた長崎大

(12)

学教育学部の竹山翠さん,長崎大学教育学部附属農場での 餌動物の採集を御快諾頂いた末弘百合子さんをはじめ,長 崎大学教育学部の学生諸氏に心より感謝申し上げる.

引用文献

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参照

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