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縦磁界下における臨界電流特性に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

単結晶基板を用いたY系超伝導体の

縦磁界下における臨界電流特性に関する研究

木内研究室 11232026 木戸 竜馬

平成 27 年 2 月 19 日

電子情報工学科

(2)

I

目次

目次 ... I

第 1 章 序論 ... 1

1.1 はじめに... 1

1.2 第一種超伝導体と第二種超伝導体 ... 1

1.3 銅酸化物超伝導体 ... 2

1.4 RE系超伝導体 ... 2

1.5 単結晶基板 ... 3

1.6 超伝導層の成膜方法 ... 3

1.6.1 PLD法による超伝導層の成膜... 3

1.7 磁束ピンニング ... 3

1.8 人工ピン... 4

1.8.1 ターゲット表面修飾法による人工ピンの導入 ... 4

1.9 縦磁界効果 ... 4

1.9.1 Force-Freeトルク ... 5

1.9.2 縦磁界下におけるピンの役割 ... 6

1.10 本研究の目的 ... 7

第 2 章 実験 ... 8

2.1 試料諸元... 8

2.2 試料加工... 9

2.2.1 マイクロブリッジ加工 ... 9

2.3 測定方法... 9

2.3.1 直流四端子法 ... 9

(3)

II

2.3.2 端子の接続 ... 11

2.3.3 測定回路 ... 11

2.3.4 測定準備 ... 13

2.4 測定結果の評価 ... 14

第 3 章 実験結果 ... 15

3.1 𝐸 − 𝐽特性および𝑛値の磁界依存性 ... 15

3.2 𝐽c− 𝐵特性 ... 20

第 4 章 考察 ... 22

第 5 章 まとめ ... 24

謝辞 ... 25

参考文献 ... 26

(4)

III

図目次

図 1-1 上部臨界磁界と不可逆磁界曲線 ... 2

図 1-2 銅酸化物超伝導体の縦磁界下における𝐽c− 𝐵特性 ... 5

図 1-3 縦磁界下での磁束線の剪断歪みとForce-Freeトルクによる磁束線の動き 6 図 1-4 人工ピンを導入したNb3Sn超伝導薄膜の臨界電流特性 ... 6

図 2-1 直流二端子法の回路図 ... 10

図 2-2 直流四端子法の回路図 ... 10

図 2-3 測定回路の全体図 ... 12

図 2-4 磁界印加角度の調整の様子 ... 13

図 2-5 縦磁界および横磁界下における外部磁界Bと電流Iの方向 ... 14

図 3-1 YBCO+4area%Y2O3試料の横磁界下における𝐸 − 𝐽特性... 16

図 3-2 YBCO+4area%Y2O3試料の縦磁界下における𝐸 − 𝐽特性... 16

図 3-3 YBCO+3area%Y2O3試料の横磁界下における𝐸 − 𝐽特性... 17

図 3-4 YBCO+3area%Y2O3試料の縦磁界下における𝐸 − 𝐽特性... 17

図 3-5 YBCO+4area%Y211試料の横磁界下における𝐸 − 𝐽特性 ... 18

図 3-6 YBCO+4area% Y211試料の縦磁界下における𝐸 − 𝐽特性 ... 18

図 3-7 YBCO+2area% Y211試料の横磁界下における𝐸 − 𝐽特性 ... 19

図 3-8 YBCO+2area% Y211試料の縦磁界下における𝐸 − 𝐽特性 ... 19

図 3-9 各試料の縦磁界下における𝑛値 ... 20

図 3-10 各試料の𝐽𝑐− B特性 ... 21

図 3-11 各試料の自己磁場における𝐽𝑐と縦磁界時における𝐽𝑐の差分 ... 21

図 4-1縦磁界に有効と考えられるピンの配置 ... 23

(5)

IV

表目次

表 2-1 試料諸元 ... 8 表 2-2 人工ピンの形状および粒径 ... 8 表 2-3 測定時の条件 ... 14

(6)

1

第 1 章 序論

1.1 はじめに

1911年にオランダのKamerlingh Onnesは液体ヘリウムを用いて水銀を冷却し,極低温 下で電気抵抗値がゼロになることを発見した.このような現象を起こす物質は超伝導体と 呼ばれ,電気抵抗ゼロの性質を持つことから様々な機器への応用が期待された.しかし当 初発見された超伝導体の多くがわずかな磁界で電気抵抗ゼロの性質を失ってしまい,応用 は難しいと考えられた.超伝導体はある温度や磁界の範囲内でのみ電気抵抗ゼロなどの超 伝導特性を示し,これらの超伝導現象を示さなくなる磁界や温度をそれぞれ臨界磁界𝐵c,臨 界温度𝑇cと呼ぶ.その後も超伝導現象の発現機構や性質に関する研究が進められ,1933年 にW.MeissnerとR.Ochsenfeldによって超伝導体の持つ完全反磁性(マイスナー効果)が証明 された.さらに1957年にはJ.BardeenとL.N.CooperおよびJ.R.Shriefferらにより,BCS理 論が提唱され超伝導発現機構が解明された.BCS理論によると𝑇cは30 Kを超えないと予想 されていたが,1986年にJ.G.Bednorz,K.A.MüllerらによってLa-Ba-Cu-Oが発見され30 K を超える温度で超伝導が発現する可能性が示された.この発表以降,世界各国で高温超伝 導の探索が続けられ1年後には液体窒素の沸点である77.3 Kを超える𝑇cを持つ物質が発見さ れた.このような高い𝑇cを持つ超伝導体は高温超伝導体と呼ばれ,その中でも銅酸化物であ るものを銅酸化物超伝導体と呼ぶ.これらの超伝導体は液体ヘリウムに比べて安価な液体 窒素や冷凍機などで超伝導状態となるため,様々な機器への応用の可能性や冷却コストの 低減などの点から大きな注目を浴びた.しかし,これらの高温超伝導体も実用化に向けて の課題が残っているために今日も研究が続けられている状態である.

1.2 第一種超伝導体と第二種超伝導体

超伝導体は臨界温度𝑇cと臨界磁界𝐵cの範囲内で超伝導現象を示すが,このうち磁界に対す る挙動の違いによって第一種超伝導体と第二種超伝導体に分けられる.第一種超伝導体で は磁界の強さが𝐵c以下の時はマイスナー効果を示し,外部からの磁界の侵入を拒む反応を示 す.しかし磁界の強さが𝐵cを超えるとマイスナー効果を示さなくなり,超伝導特性を失って しまう.第二種超伝導体では下部臨界磁界𝐵c1と上部臨界磁界𝐵c2の2種類の臨界磁界が存在 し,磁界の強さが𝐵c1以下の時は第一種超伝導体と同様にマイスナー効果を示す.磁界の強 さが𝐵c1から𝐵c2の間ではマイスナー効果を失うが超伝導状態は保ったままであり,この点が 第一種超伝導体と異なる.この時の超伝導体内部は磁束量子と呼ばれる最小単位で磁束が

(7)

2

存在し,磁束が侵入していながら超伝導体を保つ混合状態となっている.さらに第二種超 伝導体では不可逆磁界𝐵iが存在する.第二種超伝導体では前述した混合状態となることで高 温域でも超伝導状態を保つことができ,外部磁界が𝐵c2に達するまで電気抵抗なしで流すこ とのできる電流が存在するはずである.しかし以下に示す赤色の領域では外部磁界が𝐵c2以 下であっても磁束ピンニングが働くなり,電気抵抗なしに流すことのできる電流はゼロと なる.この時の境界を不可逆磁界𝐵iという.

図 1-1 上部臨界磁界と不可逆磁界曲線

1.3 銅酸化物超伝導体

銅酸化物超伝導体は結晶内にCuO2面を持ち,超伝導層のCuO2面とブロック層が相互に積 み重なった構造を持つ.銅酸化物超伝導体の特徴の一つとして電流特性の異方性が挙げら れる.これは結晶構造に起因するもので,CuO2面に平行な方向には電流が流れやすいが,

CuO2面に垂直な方向には電流が流れにくい特性を示す.高い臨界温度を持つものが多く,

液体窒素の沸点である77.3 Kを超えるものも存在し,安価な液体窒素を用いた運用が可能 であるため,高温超伝導体として今後の応用が期待されている.

1.4 RE 系超伝導体

RE系超伝導体の中で,最も研究が進められているのはY-Ba-Cu-O(YBCO)系超伝導体で ある.YBCOの𝑇cは約 90 Kで,液体窒素を冷媒として用いることができる.YBCOの Y を他の希土類元素に置き換えた物質も超伝導状態を示すことが知られている.一般に,置

T 𝑇𝑐

𝐵𝑐2(T)

𝐵i(T) B

(8)

3

き換える希土類元素のイオン半径が大きいほど𝑇cは高くなる.しかし,置き換える元素のイ オン半径が大きいと,超伝導層の成膜過程で別の物質が作られやすくなり,これは制御困 難である.そのため,置き換える元素は,希土類系元素の中で中程度のイオン半径のGdを 用いている.

1.5 単結晶基板

Y系超伝導体は結晶軸に起因する異方性を持ち,結晶軸を揃えることで高い臨界電流特性 𝐽cを得ることができる.縦磁界下での測定では超伝導体に電流通電方向と同じ方向に磁界を 加えるが,このとき電流と磁界の平行具合の高さによって臨界電流特性𝐽cが大きく向上する.

本研究では基板上の粒界などに起因する電流経路の直線性の低下を抑えるため,単結晶基 板上に超伝導層を成膜することで超伝導層の配向度を高め,電流と磁界の平行具合を高め た.

1.6 超伝導層の成膜方法

1.6.1 PLD 法による超伝導層の成膜

PLD(Pulsed Laser Deposition)法は真空チャンバー内に作製する薄膜の原料(以下ターゲ ット)を配置し,その対角の位置に薄膜を作製する基板を配置する.外部よりレーザー光の 照射を受けたターゲットの原子(分子)はプラズマ化してターゲットより剥離され,そのま ま対角の薄膜基板へと体積する.

熱を用いた蒸着法では材料内各成分の蒸発温度の違いなどから材料と同じ組成比での薄 膜作製が難しいが,PLD 法を用いると一瞬でプラズマ化して移動できるため,原料と同じ 組成比の薄膜を作製できる.また用いるレーザー光のパルス比を変えることで薄膜の厚さ を制御することもできる.

1.7 磁束ピンニング

磁界中において超伝導体に電流を流すと,超伝導内部の磁束線は Lorentz 力により運動 を始める.この磁束線の動きによって誘導起電力が生じ,電気抵抗の発生につながる.従 って,誘電起電力を発生させないためには磁束線の動きを止めておく必要がある.この磁 束線の動きを止める作用が磁束ピンニングであり,磁束の動きを止める作用をするものを ピンニングセンターあるいはピンと呼ぶ.ピンニングセンターには超伝導体の生成過程に おいて生じた常伝導析出物,結晶粒界,格子欠陥等がある.ピンニングセンターが磁束線

(9)

4

の動きを止める力をピンニング力と呼ぶ.ピンニング力の大きさがLorentz力以下のとき,

磁束線の動きが生じないため誘導起電力が生じず,結果として電気抵抗無しに電流を流す ことができる.

第二種超伝導体内部に大きさBの磁束線が侵入している状態で,大きさ𝐽 = 𝐽cの電流密度 の電流を流したとき,磁束線に働くピンニング力𝑭PとLorentz力𝑭Lはつり合っており,

𝐹P= 𝐽c𝐵 (1.1) となる.(1.1)式を変形すると

𝐽c=𝐹P

𝐵 (1.2) となり,(1.2)式より𝐹Pを向上させることで𝐽cを向上させることができるとわかる.

1.8 人工ピン

超伝導体内に侵入した磁束線が Lorentz 力によって動き出すことを止めるために,人工 的に導入したピンを人工ピンという.人工ピンは超伝導体内に存在する析出物や欠陥など と同じ常伝導物質が導入される.形状には点状,円柱状,面状などがあり,適切な人工ピ ンを導入することで超伝導線材の𝑭Pを増加させ,磁界中における𝐽cを高めることができる.

特に銅酸化物超伝導体では,結晶構造に起因する異方性から𝑐軸方向と𝑎𝑏面内方向とで臨界 電流特性に差があり,特に𝑐軸方向と平行に磁界が侵入した際に𝐽cが大きく低下する.これ は銅酸化物超伝導体を様々な機器に応用する上で課題となることが,人工ピンの導入によ って𝐽cの低下を抑えることができ,異方性を小さくすることができる.

1.8.1 ターゲット表面修飾法による人工ピンの導入

本研究に用いた超伝導試料は,ターゲット表面修飾法を用いて人工ピンを導入している.

ターゲット表面修飾法ではPLD 法に用いる高温超伝導物質(ターゲット)上に,人工ピンと して導入するY2O3またはY211の焼結体を配置し,これを PLD 法に用いるターゲットとし て基板上に超伝導層を成膜する.

1.9 縦磁界効果

超伝導体を流れる電流と磁界が平行の場合を縦磁界,電流に対して磁界が垂直かつ超伝 導体の𝑎𝑏面に対して磁界の向きが平行の場合を横磁界とおく.縦磁界の場合に超伝導体に 電流を流すと,縦方向の常磁性磁化が生じる.このとき磁束線に対して Lorentz 力が働か

ないForce-Free 状態となり,横磁界の場合と比較して臨界電流密度𝐽cが大きく向上するこ

とが報告されている[1].また𝑬を誘導起電力,𝑩を磁束密度,𝒗を磁束線の運動としたとき,

磁束線の運動と電磁現象を結びつけるJosephsonの関係式(𝑬 = 𝑩 × 𝒗)は,磁束線の運動

(10)

5

が異なると考えられるため成り立たない.以上のような現象を総称して縦磁界効果と呼ぶ.

図 1-2 銅酸化物超伝導体の縦磁界下における𝑱𝐜− 𝑩特性

1.9.1 Force-Free トルク

1.9 節で述べたように縦磁界下においては磁束線に対して Lorentz 力が働かない

Force-Free 状態となり,磁束線の運動が生じないことから無限に電流を流すことができる

のではないかと考えられる.しかし実際には𝐽cが存在しており,ローレンツ力とは別の力で 磁束線の運動が生じていると考えられる[2].仮定として,剪断歪みが生じ,それを戻そう

とするForce-Freeトルクが働いていると考えられ,Lorentz力とは異なる力によって磁束線

が運動を始めることから,縦磁界下においても𝐽cが存在していると考えられる[2].横磁界下

においてLorentz力とピンニング力のつり合いから𝐽cが存在していたように,縦磁界下にお

いては Force-Free トルクとピンニングトルクの釣り合いから𝐽cが存在するものと考えられ

る.

(11)

6 磁束線

Force-Free トルク

図 1-3 縦磁界下での磁束線の剪断歪みとForce-Freeトルクによる磁束線の動き

1.9.2 縦磁界下におけるピンの役割

図1-4に異なる量のピンを導入したNb3Snテープ線材の縦磁界下および横磁界下における 外部磁界と𝐽cの関係を示す.縦磁界下においては横磁界下と比較して外部磁界の増加に伴っ て𝐽cが増加するだけでなく,横磁界下の場合と同様にピンの導入量によって𝐽cが増加してい ることがわかる.従って,縦磁界下においても適切なピンの導入によって𝐽cが増加するもの と考えられる.

図 1-4 人工ピンを導入した𝐍𝐛𝟑𝐒𝐧超伝導薄膜の臨界電流特性 (縦磁界(●),横磁界(○))

(12)

7

1.10 本研究の目的

縦磁界効果による𝐽cの大幅な増加を得るには超伝導体内部における電流と磁界の平行具 合と,超伝導層に対して人工ピンを導入することが有効であると考えられる.本実験では 単結晶基板上に超伝導層を成膜し,さらに超伝導層に人工ピンを導入した試料を用いて,

人工ピンの大きさと導入量が銅酸化物超伝導体の縦磁界下における臨界電流特性にどのよ うな影響を及ぼすか調査した.また得られた実験結果より,縦磁界効果による𝐽cの増加には どのようなピンの導入が有効であるか考察した.

(13)

8

第 2 章 実験

2.1 試料諸元

本研究に用いた試料は,SrTiO3基板上にY2O3またはY211の 2 種類のピンを表面修飾した ターゲットを用い,PLD法を用いてYBCO超伝導層を成膜した試料である.各試料のブリ ッジ幅およびブリッジ長,厚さ,自己磁場における𝐽cを表2-1に,各試料に導入したピンの 形状は粒状で,粒径はY2O3が5 − 10 nm,Y211が10 − 20 nmであり,Y2O3の方が小さい.ま た今回は各試料の超伝導層に対して後述するマイクロブリッジ加工を行った.マイクロブ リッジのブリッジ長は1 mm ,ブリッジ幅は80 μm とした.

表 2-1 試料諸元

Specimen Bridge width [μm]

Bridge length [mm]

Thickness [μm]

𝐽cs.f[GA/m2]

@77.3 K

YBCO+4area%Y2O3 80 1.0 0.17 49.0

YBCO+3area%Y2O3 80 1.0 0.17 40.1

YBCO+4area%Y211 80 1.0 0.30 19.9

YBCO+2area%Y211 80 1.0 0.30 16.2

表 2-2 人工ピンの形状および粒径 Shape size[nm]

Y2O3 Particle 5—10

Y211 Particle 10—20

(14)

9

2.2 試料加工

2.2.1 マイクロブリッジ加工

本研究に使用した試料は,提供していただいた九州工業大学松本研究室においてマイク ロブリッジ加工を行っている.マイクロブリッジ加工とは超伝導層の一部を除去し,ごく 小さな断面積となるように加工することである.超伝導試料は抵抗無しに大電流を流すこ とができるが,それゆえに臨界電流の測定を行うには大規模な実験設備が必要となる.そ こで超伝導試料をごく小さな断面積となるように加工し,臨界電流値を小さくして臨界電 流密度に換算することで,小規模な実験設備でも測定を行うことができる.

2.3 測定方法

2.3.1 直流四端子法

今回の実験では試料の𝐼 − 𝑉測定法として直流四端子法を用いた.直流四端子法の回路図 を図2-1 に示す.また直流四端子法の他に代表的な𝐼 − 𝑉測定法である直流二端子法の回路 図を図2-2に示す.いずれの図においても𝑅sを試料の抵抗,𝑅Aおよび𝑅Vを電流計および電 圧計の内部抵抗とする.また𝑅1,𝑅2,𝑅3,𝑅4は各端子の接触抵抗である.直流二端子法の 回路において,電圧の測定に影響を与える抵抗は𝑅A,𝑅1,𝑅2である.これらの抵抗の和が 試料抵抗𝑅sよりも十分に小さい場合は試料電圧の測定に影響することはないが,試料抵抗 R𝑠は非常に小さい値である.従って直流二端子法による測定では正確な試料電圧を測定す ることが困難である.

次に直流四端子法の回路において,試料電圧の測定に影響を与える抵抗は𝑅V,𝑅3,𝑅4で あるが,これらの値は試料抵抗𝑅sと比較して非常に大きく,影響を無視することができる.

従って今回の実験では直流四端子法を用いて測定を行った

(15)

10

図 2-1 直流二端子法の回路図

図 2-2 直流四端子法の回路図

𝑅 S

𝑅 1 𝑅 2

𝑅 A 𝑅 V

V

A

A V

𝑅 S

𝑅 V

𝑅 A

𝑅 1 𝑅 3 𝑅 4 𝑅 2

(16)

11

2.3.2 端子の接続

表 2-1 に示す各試料の𝐼 − 𝑉特性を四端子法で測定した.試料への電流端子,電圧端子の 取り付け方法としては接触抵抗を抑えるために,ハンダ付けやインジウムを用いた圧着が 挙げられるが,今回用いた試料は熱や圧力に弱く,これらによる試料の破損を防ぐために 銀ペーストを用いた接着にて端子の取り付けを行った.電流リード線は0.8 mm経の導線を 10本より合わせたものを用いた.

2.3.3 測定回路

測定に用いた回路の全体図を図2-3に示す.この回路では前述の四端子法を用いて測定を 行うことができる.外部磁界𝐵は超伝導コイルによって試料に印加され,超伝導コイル用電 源の電流値を制御することによって外部磁界𝐵の大きさを変更することができる.超伝導コ イル用電源および超伝導試料用電源の電流値を確認するために,各電源と超伝導コイルま たは超伝導試料間にはシャント抵抗を直列に接続した.シャント抵抗に発生した電圧を測 定し,この電圧値とシャント抵抗の抵抗値を用いて,オームの法則からシャント抵抗に流 れる電流値を求める.各電源装置および電圧計はGPIBによって測定用PCと接続され,測 定データを記録する.なお本実験では直流四端子法を用いることで電流,電圧端子部の接 触抵抗の影響を抑えているが,超伝導試料の電圧を測定するナノボルトメーターには測定 下限値が存在し,下限値以下の値は正確に記録されずノイズとして記録される可能性があ る.本実験で用いた測定用PCではノイズによって測定値に誤差が生じることを防ぐため,

電流通電前の電圧値を読み取り,その後電流通電時の電圧を読み取って差分を求め,これ を電流通電時の電圧とした.

(17)

12

図 2-3 測定回路の全体図

V V

試料

測定用PC 超伝導コイル用電源

超伝導コイル

超伝導試料用電源 シ ャ ン ト 抵

(18)

13

2.3.4 測定準備

今回の測定では超伝導試料に対して縦磁界と横磁界の 2 方向に外部磁界を印加したが,

それぞれの場合において磁界が正確に印加されているかどうかの確認を行った.図2-4に示 すようにc軸方向に超伝導試料の角度を変化させて角度依存性を測定し,この時得られた角 度依存性のピーク時の角度を外部磁界がab面に平行の状態として,縦磁界または横磁界と 設定した.

図 2-4 磁界印加角度の調整の様子

𝐵

𝐽

𝐵

𝐽

縦磁界測定時 横磁界測定時

(19)

14

2.4 測定結果の評価

図 2-3 に示す測定回路を用いて,各試料に対して四端子法を用いて𝑉 − 𝐼特性の測定を行 い,測定結果を測定用PC に記録した.測定用PC に記録された𝑉 − 𝐼特特性の値を,試料 の長さおよび厚さを用いて𝐸 − 𝐽特特性へ変換し,𝐸 = 2.0 × 10−4—2.0 × 10−3 V/m の範囲に プロットされた値について,Log変換した上で最小二乗法を用いて直線近似を行った.次に 求められた近似直線と電界基準𝐸cとの交点を求め,これを𝐽cとした.測定時の条件を表 2-2 に,縦磁界および横磁界下における外部磁界𝐵と電流𝐼の方向を図2-4に示す.

表 2-3 測定時の条件 電界基準𝐸c 1.0 × 10−4 V/m

外部磁界𝐵 0—0.5 T

測定温度 77.3 K

外部磁界の印加方向 縦磁界および横磁界

図 2-5 縦磁界および横磁界下における外部磁界Bと電流Iの方向

(20)

15

第 3 章 実験結果

3.1 𝐸 − 𝐽 特性および 𝑛 値の磁界依存性

図3-1—図3-8に各試料の縦磁界下および横磁界下における𝐸 − 𝐽特性を示す.また𝐸 − 𝐽

特性より求めた各試料の𝑛値を図3-9に示す.

超伝導体の電流-電圧特性測定において,電流-電圧特性(𝐼 − 𝑉特性)の非線形性を示すパラ メータとして𝑛値が用いられる.𝐼 − 𝑉特性から求められた𝐸 − 𝐽特性を

𝐸 ∝ 𝐽𝑛

とした場合の指数𝑛を𝑛値とし,𝑛値が大きいほど臨界電流𝐼𝑐付近での電圧の変化が急激であ り,流す電流を少し小さくするだけで発生する電圧を大きく下げることができるため,一 般に実用超伝導線材では𝑛値が大きいほど優れているとされる.

図3-1—図3-4より,Y211ピンを導入した試料では外部磁場Bの増加とともに𝐽cは低下し

ていることから,縦磁界効果による𝐽cの増加を観測することはできなかった.また縦磁界下 における𝑛値は外部磁場𝐵の増加とともに減少しており,ピンの導入による磁場依存性の向 上も観測できなかった.Y2O3ピンを導入した試料においては,縦磁界下において外部磁場𝐵 の増加に伴う𝐽cの増加が観測された.縦磁界下における𝑛値はピン導入量の少ない試料で0.1

T,多いの試料で0.3 Tをピークに上昇しており,ピンの導入によって磁場依存性が向上し

ていることが観測された.

(21)

16

図 3-1 YBCO+4area%𝐘𝟐𝐎𝟑試料の横磁界下における𝑬 − 𝑱特性

図 3-2 YBCO+4area%𝐘𝟐𝐎𝟑試料の縦磁界下における𝑬 − 𝑱特性

2e+10 4e+10 6e+10

10

−5

10

−4

10

−3

10

−2

0 T 0.1 T 0.2 T 0.3 T 0.4 T 0.5 T

YBCO+4areal.%Y

2

O

3

,B⊥I, B//ab, 77.3 K

J [A/m

2

]

E [ V /m ]

4e+10 5e+10 6e+10 7e+10

10

−5

10

−4

10

−3

10

−2

0 T 0.1 T 0.2 T 0.3 T 0.4 T 0.5 T

YBCO+4areal.%Y

2

O

3

,B//I, B//ab, 77.3 K

J [A/m

2

]

E [ V /m ]

(22)

17

図 3-3 YBCO+3area%𝐘𝟐𝐎𝟑試料の横磁界下における𝑬 − 𝑱特性

図 3-4 YBCO+3area%𝐘𝟐𝐎𝟑試料の縦磁界下における𝑬 − 𝑱特性

7e+09 1e+10 2e+10 5e+10

10

−5

10

−4

10

−3

10

−2

0 T 0.1 T 0.2 T 0.3 T 0.4 T 0.5 T

YBCO+3areal.%Y

2

O

3

,B⊥I, B//ab, 77.3 K

J [A/m

2

]

E [ V /m ]

4e+10 10

−5

10

−4

10

−3

10

−2

0 T 0.1 T 0.2 T 0.3 T 0.4 T 0.5 T

YBCO+3areal.%Y

2

O

3

,B//I, B//ab, 77.3 K

J [A/m

2

]

E [ V /m ]

(23)

18

図 3-5 YBCO+4area%𝐘𝟐𝟏𝟏試料の横磁界下における𝑬 − 𝑱特性

図 3-6 YBCO+4area% 𝐘𝟐𝟏𝟏試料の縦磁界下における𝑬 − 𝑱特性

3e+09 7e+09 1e+10 2e+10

10

−5

10

−4

10

−3

10

−2

0 T 0.1 T 0.2 T 0.3 T 0.4 T 0.5 T

YBCO+4areal.%Y211 ,B⊥I, B//ab, 77.3 K

J [A/m

2

]

E [ V /m ]

1e+10 2e+10

10

−5

10

−4

10

−3

10

−2

0 T 0.1 T 0.2 T 0.3 T 0.4 T 0.5 T

YBCO+4areal.%Y211 ,B//I, B//ab, 77.3 K

J [A/m

2

]

E [ V /m ]

(24)

19

図 3-7 YBCO+2area% 𝐘𝟐𝟏𝟏試料の横磁界下における𝑬 − 𝑱特性

図 3-8 YBCO+2area% 𝐘𝟐𝟏𝟏試料の縦磁界下における𝑬 − 𝑱特性

6e+09 8e+09 1e+10 2e+10

10

−5

10

−4

10

−3

10

−2

0 T 0.1 T 0.2 T 0.3 T 0.4 T 0.5 T

YBCO+2areal.%Y211,B⊥I, B//ab, 77.3 K

J [A/m

2

]

E [ V /m ]

7e+09 1e+10 2e+10

10

−5

10

−4

10

−3

10

−2

0 T 0.1 T 0.2 T 0.3 T 0.4 T 0.5 T

YBCO+2areal.%Y211,B//I, B//ab, 77.3 K

J [A/m

2

]

E [ V /m ]

(25)

20

図 3-9 各試料の縦磁界下における𝒏値

3.2 𝐽

c

− B 特性

各試料の𝐽c− 𝐵特性を図3-10に示す.また各試料において縦磁界下における𝐽cと自己磁場 における𝐽cの差を図3-11に示す.人工ピンとしてY2O3を導入した試料では縦磁界下において,

外部磁場の増加に伴う𝐽cの増加が観測された.人工ピンとしてY211を導入した試料におい ては縦磁界下において,外部磁場の増加に伴って自己磁場における𝐽cを超えるような𝐽cは観 測されなかった.しかしピン導入量が多い試料において,0.03 T付近で𝐽cが増加し,その後 減少するような傾向が観測された.従ってピンの導入によって縦磁界下における磁場依存 性は向上しつつあるものの,他の要因によってピンの効果が妨げられていると考えられる.

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

20 30 40

B[T]

n value

4 areal.% Y2O3 3 areal.% Y2O3 4 areal.% Y211 2 areal.% Y211

(26)

21

図 3-10 各試料の𝑱𝐜− 𝐁特性

図 3-11 各試料の自己磁場における𝑱𝐜と縦磁界時における𝑱𝐜の差分

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

0 10 20 30 40 50 60 70

J

c

[G A /m

2

]

B [T]

B⊥I

4 areal.% Y2O3

ab−plane, 77.3 K

3 areal.% Y2O3 4 areal.% Y211 2 areal.% Y211 B//I

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

−15

−10

−5 0 5 10 15

JcB//I − Jcs.f [GA/m2 ]

B [T]

77.3 K

3areal.%Y2O3 4areal.%Y211 2areal.%Y211 4areal.%Y2O3

(27)

22

第 4 章 考察

図 3-10 に示す各試料の𝐽c− 𝐵のグラフより,人工ピンとしてY2O3を導入した試料におい て,自己磁界における𝐽cを超えるような大幅な𝐽cの増加が観測された.一方で人工ピンとし てY211を導入した試料では𝐽cが増加する傾向は見られるものの,自己磁界における𝐽cを超え るような大幅な増加は見られなかった.導入したピンの粒径と𝐽cの増加量を比較すると,ピ ンの粒径が小さなY2O3を導入した試料で𝐽cが大きく増加していることがわかる.人工ピンと してY211を導入した試料で𝐽cの大幅な増加は観測されなかった原因として,Y2O3ピンと比較 してY211ピンは粒径が最大4倍程度大きく,これが電流路の妨げとなって縦磁界効果による𝐽cの 増加が観測されなかった可能性が挙げられる.またY211ピンを導入した試料は超伝導層の厚 さがY2O3ピンを導入した試料よりも大きく,超伝導層の厚さに起因する配向度の低下が電流 の直線性に影響を与えた可能性も挙げられる.人工ピンとしてY2O3を導入した試料では,

自己磁場における𝐽cと縦磁界下における𝐽cを比較するとピンの導入量が多い試料おいて約 20 %,ピン導入量が少ない試料において約2 %の増加が見られ,人工ピンの導入量が多い 試料の方が増加量が多いことがわかる.従って,ピンの導入に伴って縦磁界下における磁 場依存性が向上していると考えられる.

本研究に用いた試料では,導入したピンの粒径の違いによる𝐽c増加量を比較することがで きたが,超伝導層内部でのピンの配置方法の違いによる比較はできなかった.縦磁界効果 による𝐽cの増加をさらに高めるためのピンの配置として,図4-1に示すようにピンを導入し た超伝導層と導入していないpure層を交互に成膜した多層膜構造による成膜や,図4-2に 示すようにピンを導入した層の内部でピンを整列させることにより,直線的な電流経路の 確保と人工ピンの導入を両立させ,さらなる𝐽cの増加を実現できると考えられる.

(28)

23

図 4-1縦磁界に有効と考えられるピンの配置

𝑐 𝑱

𝑱

𝑎𝑏 -plan e

(29)

24

第 5 章 まとめ

本研究では単結晶基板上に超伝導層を成膜し,さらに超伝導層に対して人工ピンを導入 した試料を用いて,ピンの特性が縦磁界効果に及ぼす影響を調査した.第 3 章に示す結果 のように,人工ピンとして粒径の小さなY2O3ピンを導入した試料において𝐽cの大幅な増加が 観測され,ピンの導入量が多いほど𝐽cの増加量も大きくなることがわかった.しかし粒径の 大きなY211ピンを導入した試料では𝐽cが一部で増加する傾向が見られたものの,自己磁界に おける𝐽cを超えるような大幅な増加は見られなかった.今回の実験では人工ピンの配置方法 が𝐽cの増加に及ぼす影響は調査できなかった.超伝導層内で人工ピンを導入した層と pure 層を交互に成膜する多層膜構造や,人工ピンを導入した層内部で人工ピンを整列させる構 造などを用いて電流経路の直線性と人工ピンの導入を両立させることが可能であれば,さ らに高い𝐽cの増加を観測できる可能性がある.

(30)

25

謝辞

本研究を行うにあたり,多大なご指導を頂いた九州工業大学情報工学部電子情報工学科 松下照男名誉教授,小田部荘司教授,木内勝准教授に深く感謝いたします.また本研究に 用いた超伝導試料を提供頂きました九州工業大学工学部マテリアル工学科 松本要教授,

Dr.Alokに深く感謝いたします.最後に,公私共々お世話になりました小田部・木内研究室

の皆様に感謝いたします.

(31)

26

参考文献

[1] A.Tsuruta, S.Watanabe, Y.Ichino, and Y.Yoshida,Jpn. J. April. Phys. 53, 078003(2014) [2] 松下 照男:「磁束ピンニングと電磁現象」, 産業図書, 1994年

図  3-1    YBCO+4area%
図  3-3    YBCO+3area%
図  3-5    YBCO+4area%
図  3-7  YBCO+2area%
+2

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