第68巻 第2号,2009(177~179) 177
シンポジウム3 小児保健とプレパレーション ~子どもの力と共に~
順天堂大学における ン」の取り組み
「入院生活プリバレイショ
早田典子(順天堂大学医学部小児科偲春期科)
L順天堂医院小児病棟の紹介
当院の小児病棟には,小児外科病棟,小児科 病棟,NICU・新生児病棟の3病棟がある(各 35床,計105床)。そのうち,平日は小児外科病 棟と小児科病棟で,土曜日には小児外来でチャ イルド・ライフの活動が半日ずつ行われている。
どちらの病棟にも0歳~中学生までの子どもた ちが入院し,小児外科病棟にはヘルニアや泌尿 器系疾患などの子どもたちが主に手術目的に,
小児科病棟には眼科や耳鼻科の手術目的の子ど もや血液腫瘍や心臓疾患,消化器系疾患等の子 どもがいる。
当院は,もともと家族支援の重要性に対する 小児科教授をはじめとした病棟スタッフの理解 があった。2000年置は,医師や看護i師を中心に,
入院中の子どもや家族の方々が少しでもリラッ クスし,治療に前向きになれるような環境ア メニティ(癒しの環境)づくりを目標に「病棟 アメニティ委員会」が設置され,2004年1月に は,英国ホスピタル・プレイ・スペシャリスト の資格を有する医師が復職し,病棟における遊 びを通じた癒しの促進とプリパレイションの推 進が図られた。
さらに,さまざまな病棟行事の実施やおうた の会,アートセラピーや遊びなどのボランティ アによる活動も行われてきた。このような活動 を受けて,子どもの健全な部分への介入を目的 に,2005年から当院でのチャイルド・ライフの 活動が始まった。
当院でのチャイルド・ライフの活動は,遊び の支援(術前のストレスを軽減するための遊び,
長期入院児のための通常の遊び,発達支援のた めの遊び等)を中心にプリパレイションや診療 後支援(メディカル・プレイ),家族支援を行っ ている。本稿では,「入院生活プリパレイション」
について報告する。
ll.入院生活プリパレイション
1.概 要
チャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下,
CLS)は,2007年から「入院生活プリパレイショ ン」を始めた。これは,病棟という見知らぬ環 境へのスムーズな適応を促し,これから起きる ことへの不安やストレスを軽減することを目的 に,カンファレンスルームまたはプレイルーム の一角で,毎日午後1時から30分程度(お話15 分,ツアー15分)実施している。3歳から10 歳で入院したばかりの子どもたちとその保護者
を対象とし,各回1~3,4人の個人またはグ ループに行っている。小児外科病棟と小児科病 棟に入院する子どもを対象としているので,ヘ ルニアや泌尿器系疾患をもち手術を控えている 子ども,眼科や整形などの手術を控えた子ども,
心疾患,消化器系,内分泌系疾患をもち検査や 治療の目的で入院してきた子どもが参加してい
る。
内容は2部構成で,お話と病棟ツアーを行っ ている。お話では,病院の1日のスケジュール や病院で働くスタッフ,病院でのルールを写真 付きのファイルを使って紹介している(図1)。
また誰もが経験する医療器具について実物を 用いてCLSがデモンストレーションをしたり,
子どもが実際にその医療器具に触れたりしなが 順天堂大学医学部小児科・思春期科 〒113-8421
Tel:03-3813-3111 Fax:03-5800-0216
東京都文京区本郷2-1-1
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178 小児保健研究
ら理解を深めている。お話の時には,一方的に CLSが情報を提供するのではなく,質問をし
ながら子どもの反応を見つつ進めている。
病棟ッアL一一一pでは,小児科病棟の看護師が作成 した「たんけんマップ」を配布し,案内した部 屋ごとに1つずつシールを配り,シールラリー
を行っている。その他には,「ごほうびシール」
を実施している。入院中に経験することは,子 どもにとって初めての出来事が多く,痛みや恐
怖,不安を伴うものである。そうした出来事を 克服できたことを評価し,入院生活が子どもに とってプラスになるように,またその達成感を 視覚的に訴えるために導入している(図2)。
手術を控えた子どもにはその後写真を用い て病棟から手術室への行き方を話したり,手術 室の様子やそこにいるスタッフの服装を見せな がら,どこまで両親と一緒にいられるか,いつ 両親に会えるかも話している。
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図2 たんけんマップ&ごほうびシール表
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第68巻 第2号,2009 179
この「入院生活プリパレイション」は,小 児看護専門看護師のアドバイスを受けながら CLSが立案した。その後小児外科,小児科 の師長と議論し,日常の看護ケアに差し障りの ない時間帯や内容を検討した。内容を決定した 後病棟医長に実施の許可を得て,さらに病棟 会または全体カンファレンスで看護師にプレゼ
ンテーションをし,「入院生活プリパレイショ ン」の理解と協力を求めた。
2.評価と課題
入院生活プリバレイショ?は,グループを対 象にしたプリパレイションなので,これを機会 に友だち作りの場にもなっている。また,土日 に入院したなどの理由で,入院日の最初に参加 できなかった子どもでも,後日このプリパレイ ションに参加し,すでにいろいろなことを経験 した子どもが新たに入院した子どもに自分が経 験したことを話す場にもなっている。CLSが 話す内容に,子ども自身の感覚が加わること で,より効果的なプリパレイションが行われて
いる。
この入院生活プリパレイションは,実施前 の看護師によるアセスメントも活かされてい る。そして,入院生活プリパレイションをしな
がらCLSの立場から子どもをアセスメントす る場になる。何に対して不安に思っているかを CLSがアセスメントしていき,それをまた看 護師にフィードバックしている。例えば,入院 に対して特に不安が強い子どものようだと看護 師からのアセスメントを受け,CLSが観察し ながら話を進めると,子どもが病院に連れてこ られた理由を知らないでいて,これから何が起 こるのか不安に思っていたり,手術室の写真を 見せた途端,親に寄り添ったりという反応が見 られる。そうした反応を口頭で看護師に伝え,
また記録を残して,その後の看護のケアにつな がるようにしている。
さらに,入院生活プリパレイションで得られ た情報は,その後の個別のプリパレイションの 必要性やその他の遊びの介入に活かせている。
一方で課題もあり,手術を控えた子どもへの プリパレイションでは,手術室での話が主に なっており,点滴や麻酔のマスクなどは,実物 ではなく看護師や麻酔科医から口頭で伝えられ るので,年齢や発達段階によっては理解しにく い現状がある。今後さまざまな場面において 可能な限りチャイルド・ライフの視点で介入し ていきたいと考えている。
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