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現代における幼児期の食生活の諸問題

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222 (222〜224) 小児保健研究

第60回日本小児保健協会学術集会 シンポジウム4

健やかな成育のための食育を考える

現代における幼児期の食生活の諸問題

ちはる (日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部)

1.はじめに

 食べることは生きるための基本であり,子どもの健 やかな心と体の発達には欠かせないものである。とこ ろが,幼児期には「偏食」,「遊び食い」,「むら食い」

など食に関する不安や心配をする保護者が多くみられ る(図1)1)。身近に相談する人がいなかったり,支援 の場がなかったりすると,子どもの食生活に関する悩 み等が解決できずに,子育て不安の一因となることも ある。ここでは幼児期の偏食と遊び食べのとらえ方と その対応について,子育て支援の視点から述べていく。

ll.偏食のとらえ方

 保護者の中には「子どもに適した食事」を「子ども が欲しがるものを食べさせる」という意味に解釈し,

何がその子どもにとって適切かを大人が判断していな いと感じさせられることが多く,気がかりである。例  2歳.792人

3歳 623人

4歳 649人

5〜6歳:931人

合計・2,995人コ■■■■[二二二二二二]■

    0%    20%    40%    60%    80%   100%

       ■はい口いいえX不明

幼児健康度に関する継続的比較研究,平成22年度厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(平成23年3月),研究代表者衛藤隆より作成

図1 偏食・少食・食べ過ぎなどで困っている割合       (2歳以上,平成22年)

えば嫌いな子どもが多いピーマンは,β一カロテンを 含んでいる。しかし,ブロッコリーやほうれん草でも 摂れる栄養素であることから,「嫌いなピーマンを無 理に食べさせる必要はない」と考える人もいる。確か にブロッコリーやほうれん草を食べられるなら,ピー マンにこだわる必要は栄養学的にはほとんどないであ ろう。それでも,いろいろな生活環境に心や体を適応 させる意味で,幼児期は重要な時期であるから,多様 な食材を口にしてもらいたい。そこで,切り方や味付 けを工夫し,「ひと口でもいいから食べてみよう」と 励まし,ほんの少しでも食べたら「すごいね1」と褒 めてあげることが大切である。

 嫌いな食材を食べられたという達成感は,褒められ ることでさらに強められ,自信が生まれる。その自信 がやる気につながり,物事に前向きに取り組めるよう になるであろう。例えば人間関係について考えてみる と,世の中には自分と気の合わない人もいるが,「嫌 いだから付き合わない」と切り捨てるわけにはいか ず,ある程度付き合っていかなければならない。相手

を好きになれなくても「こんな考え方があってもいい」

とその人の個性を受け入れることで,円滑な人間関係 を築くことができる。学問や仕事にも同じことが言え ると思われる。いろいろな食べ物を食べることの意義 は,生活のさまざまな場面にまで広がることを心にと めて,子どもと向き合う姿勢が,保護者をはじめ子ど

もの周囲にいる大人に求められていると考える。

皿.遊び食べについて

「子どもの食事で困っていること」として,一番多 日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部

Tel:03−3473−8344 Fax:03−3473−8408

〒106−8580東京都港区南麻布5−6−8

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第73巻 第2号,2014 223

    遊び食い      偏食する      むら食い

食べるのに時間がかかる     よくかまない     ちらかし食い     ロから出す

      小食     食べ過ぎる     食欲がない      早食い

困っていることは特にない

       0.0      10.0     20.0     30.0     40.0     50.0

      %        坪成17年新規項目

  平成17年度乳幼児栄養調査結果報告,厚生労働省,2006年6月,調査対象者2,241名   図2 子どもの食事で困っていること(1歳以上,複数回答)

いのは「遊び食べ」であり,1歳以上の子どもの保護 者の約45%があげている(図2)2)。「遊iび食べ」の主 な原因として,テレビに気をとられたり,大好きなお もちゃが子どもの視界に入っていたりして,子どもが 食事に集中できないことがあげられる。また,食事時 間が空腹で迎えられないこともあげられる。近年は24 時間営業のコンビニエンスストアや自動販売機等が多 数存在し,子どもが「お腹がすいた」と訴えると,す ぐに食事,間食(おやつ),飲み物など与えることが 可能な環境にある。また,歩きながらや電車内での飲 食が,それほど行儀の悪いことだとは思われなくなっ ており,このような状況に慣れてしまうと,子どもは 少しの空腹感,嫌なこと,不安なことがあると,何か 口に入れてこれらの気持ちを紛らわそうとしたり,保 護者も子どもの気持ちにきちんと向き合おうとしない で,食べ物でその場を処理しようとしがちである。し かし,「お腹がすいた」と子どもが言った時に,空腹 感をある一定時間以上持続させることが大切であると 考える。「あと少しで夕ご飯だから待ってね」,「おう ちに帰ってからみんなで食べよう」などの言葉かけを

して,少しの我慢や辛抱を体験させることで,子ども の食事への期待感と喜びが増す。こうして空腹で迎え

られた食事では,遊び食べをすることなく,食べるこ とに感謝して味わっておいしくいただくことができる であろう。

 遊び食べを防ぐには,食事時間中の配慮にとどまら ず,1日の生活リズム全体を見直して,体を動かして 元気に遊ぶ楽しさを味わわせること,子どもの気持ち を食べ物で紛らわしたり,満たしたりしない子どもと の普段の関わりが重要であり,これらに丁寧に取り組

むことも幼児期の食育として重要であると考える。

lV.保護者の食生活への意識

 満1歳から就学前の子どもの保護者に,間食(おや つ)の与え方を調査したところ,「時間を決めて与える」

は全体の約半数であり,残りの人は時間を決めて与え ていない。また,「欲しがる時に与える」,「特に気を つけていない」人は各20%程度と多い。この「気をつ けていない」ことの詳細は不明であるが,おやつの量,

与える時間に無頓着であったり,品質に関心が薄いな ども含まれるであろう。一方,「栄養価に注意している」

人は約10%と少ない(図3)1)。これらの結果は,保護 者が子どもにおやつを与える際の配慮が,十分ではな

いことを示す。

 就学前の子どもは,まだ自分で栄養バランスのよい おやつを取捨選択して準備し,適切な時間に適量を食 べることはできない。そこで,保護者がおやつの重要 性を理解し,子どもに与える際に量,時間,品質への 配慮ができるように,栄養士や保育士等が支援したり,

保育所の毎日のおやつの時間を通して,子ども自身に

  時間を決めて与える   欲しがる時に与える  特に気をつけていない 甘いものは少なくしている     スナック菓子

 栄養価に注意している  甘いものに偏ってしまう

        0      50      100

      %

全国の満1歳から7歳未満(就学前児)5,352名,幼児健康度に関する継続的比較研究,平成22 年度厚生労働科学研究費補助金成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(平成23年3月),研究 代表者衛藤 隆より作成

      図3 おやつの与え方

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224 小児保健研究

「問題意識を品劇と感・る ■【二二]翻

「過剰に心配している」と感じる

       0%     20%    40%    60%    80%    100%

■よくある ロ時々ある 口あまりない mないasわからない ■無回答

「過剰に心配」,「問題意識をもっていない」の    どちらが多いと感じるか

       0%      50%       100%

 園「問題意識をもっていない」が多い 口同じくらい []「過剰に心配」が多いvaわからない ■無回答

堤ちはる他行政栄養士による幼児と保護者への食生活支援に関する調査研究(1),行政栄養士による幼児と保護者の食生活支援 の実態調査,平成22年度こども未来財団「児童関連サーヒス調査研究等事業」,幼児期の食の指針策定のための枠組みに関する調査 研究(主任研究者 堤ちはる),51−70,2011年3月,調査対象日本栄養士会全国行政栄養士協議会会員776名

        図4 保護者の食への意識

適切なおやつの種類適量等が身につけられるように 働きかける食育が重要である。

 保健センター等に勤務する行政栄養士は,栄養相 談等で接する幼児の母親が食生活について「問題意 識をもっていない」と感じることが「よくある」,「時々 ある」のは約90%,一方「過剰に心配している」と 感じることが「よくある」,「時々ある」のは約60%

であった。「問題意識をもっていない」と「過剰に心 配している」のどちらが多いと思うかでは,「問題 意識をもっていない」と感じることが「多い」は約 60%に対して,「同じくらい」は約15%,「過剰に心 配している」と感じることが「多い」のは10%にも 満たなかった(図4)3)。乳幼児期は,自分で食生活 を整えることはまだ難しいことから,母親の影響を 強く受ける。そこでこの時期の食育は,親子をセッ トにして食への興味・関心を高め,適切な食習慣を 身につけられるような支援が重要である。

V.おわりに

 改めて私たちの普段の食生活を振り返ってみると,

食べることは日々繰り返される日常生活の一部である ことから,「一食くらいは,簡単に済ませてもかまわ ない」,「今日一日くらいは,食べ過ぎてもよいだろう」

などとなりがちである。しかし,日常的に何度も繰り 返される行為であるからこそ,食生活の重要性につい て考え,各自の食事を見直したいものである。

 従来,多くの家庭では食事を作ることが当たり前で あった。近年では,インスタント食品,惣菜の多様化 や24時間営業の飲食店やコンビニエンスストアの増加

など,利便性と引き換えに食を取り巻く環境が変化し,

それに伴い家庭における食事の提供方法や食生活に対 する意識も変化している。しかし,環境や意識がどの ように変化しても,子どもと保護者の食をより豊かな ものにしていくために,各分野の専門職の方々が目指 すべきこと,大切にすべきことは,ゆらぐことがあっ てはならない。

 日頃から私は,子どもの身近にいる保護i者や子育て に関わる方々が「食」への興味・関心をもち,各自の 食事を見直し,楽しむことが,子どもの「食」への関 心を引き出すことにつながり,これが心身共に健康な 生活を展開する「食育」の原点になると思っている。

そこで本稿で述べたような幼児期の食生活の諸問題の 解決には,子どもの「食」のみならず大人の「食」へ の興味・関心を高め,その実践力をつけるための支援 が必要不可欠であると考える。

         文   献

1)幼児健康度に関する継続的比較研究.平成22年度厚  生労働科学研究費補助金成育疾患克服等次世代育成  基盤研究事業.研究代表者 衛藤 隆2011年3月.

2)厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課.「平成  17年度乳幼児栄養調査結果報告」.2006年6月.

3)堤ちはる,他.行政栄養士による幼児と保護者への  食生活支援に関する調査研究(1).行政栄養士によ  る幼児と保護i者の食生活支援の実態調査.平成22年  度こども未来財団「児童関連サービス調査研究等事  業」.幼児期の食の指針策定のための枠組みに関する  調査研究主任研究者 堤ちはる.2011:51−70.

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