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フライアッシュ外割混合コンクリートの強酸および弱酸性環境下における耐硫酸性に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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フライアッシュ外割混合コンクリートの

強酸および弱酸性環境下における耐硫酸性に関する研究

松本 直樹 1. はじめに 我が国における火力発電所等からの石炭灰発生量は, 2012 年度で約 1266 万トンであり,増加傾向にある1) 現在,石炭灰発生量の約7 割はセメント分野にて有効 利用している。しかしながら,近年セメント生産量は 減少傾向にあり,これに伴って石炭灰の使用量も減少 することが予測される。さらに,2011 年 3 月の東日本 大震災後の原子力発電の停止により,火力発電による 発電量が大幅に増加したため 2),それに伴い石炭灰の 発生量は今後さらに増加することが予測される。 当研究室では,石炭灰を大量かつ有効に利用する方 法として,フライアッシュ(以下,FA)をセメントに 対して外割りで混合したコンクリート(以下,FA 外割 混合コンクリート)を対象として,これまで強酸性の 硫酸環境下における抵抗性について研究を行ってきた。 3)ただし,建築物が建てられる土地では,強酸性よりも 弱酸性の土壌の方が多く存在すること,また,コンク リートの弱酸性の硫酸環境下における抵抗性に関する 研究があまりされていないことから,本研究は,強酸 性環境下に加え,弱酸性環境下におけるFA 外割混合 コンクリートの化学劣化に対する耐久性を明らかにす ることを目的として,モルタル試験体による強酸およ び弱酸性環境下における耐硫酸性に関する実験を実施 した。その結果を報告する。 2. 実験概要 2.1 使用材料および調合 使用材料を表1 に示す。セメントには,普通ポルト ランドセメントを使用し,既往の研究 4)との比較用と して,BB-50,BC-50 にはそれぞれ高炉セメント B 種, C 種を使用した。なお高炉セメント C 種は,高炉セメ ント B 種に C 種相当となるように高炉スラグ微粉末 を混合したものである。FA は JIS 規格Ⅱ種に適合す るものを使用した。細骨材にはセメント強さ試験用の 標準砂を用いた。モルタルの調合および圧縮強度を表 2 に示す。試験体はモルタルとし,W/C を 65,50 お よび35%とした。②から④の試験体は①に対して FA を外割混合した調合となっている。また,②と⑤およ 表 1 使用材料 表 2 モルタルの調合および圧縮強度 ※コンクリート1m3当たりに換算した値 び③と⑧はそれぞれ,FA の内割混合を想定した調合 の組み合わせとなっている。練上がり時の目標空気量 は7.0±1.0%(コンクリート換算で 4.5%)とした。 2.2 実験方法 本研究では,弱酸性環境を想定した pH4 程度の水 溶液(以下,pH4 溶液)と,比較用として強酸性環境 を想定したpH1 程度の水溶液(以下,pH1 溶液)に 試験体を浸漬した。試験体の寸法は40×40×160mm (A 試験体)と 40×88×160mm(B 試験体)の 2 種 類とした。B 試験体は 40×160mm の 1 面のみから 硫酸溶液を浸透させるために,それ以外の面はエポキ シでシールしている。これら試験体は,8 調合分を 1 品  質 N 普通ポルトランドセメント,密度:3.15g/cm3 BB 高炉セメントB種,密度:3.04g/cm3 BC 高炉セメントC種(スラグ混合率65%) フライアッシュ FA JIS規格Ⅱ種,密度:2.29g/cm3 高炉スラグ微粉末 - 密度:2.93g/cm3 細骨材 S 標準砂,密度2.64g/cm3 高性能減水剤(TC-403) AE剤(AE-300) 消泡剤(AFK-2) 硫酸 一級 材  料 混和剤 硫酸 セメント 7日 28日 1年 ①N-65 65 3.02 - 普通 20.1 32.1 41.8 ②65-50 50 2.68 85 普通 22.5 37.1 60.4 ③65-35 35 2.03 244 普通 28.5 44.9 72.9 ④65-25 25 1.18 455 普通 29.0 42.4 73.2 ⑤N-50 2.54 - 普通 34.4 46.5 59.9 ⑥BB-50 2.51 - 高炉B種 31.8 50.7 64.0 ⑦BC-50 2.49 - 高炉C種 25.3 46.5 68.3 ⑧N-35 35 35 1.24 - 普通 55.0 67.7 76.8 記号 W/C (%) W/(C+FA) (%) S/C FA※ (kg/m3) 65 50 セメント種別 圧縮強度(N/mm 2) 50

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2 セットとして,それぞれ別々のコンテナに浸漬した。 試験体は材齢2 日で脱型後,材齢 4 週まで 20℃水中 養生とし,その後,各硫酸溶液への浸漬試験を20℃に 設定した恒温恒湿室内で開始した。これらの溶液は, 市販の硫酸を所定の pH となるように水道水で希釈 して作製した。浸漬55 週までにおける各溶液の作成 時の pH の平均値は pH4 溶液が 4.02,pH1 溶液が 1.09 である。溶液の交換は,pH1 溶液では 8 週まで 1 週毎,以降は 2 週毎に,pH4 溶液では 8 週まで 2 日毎,16 週まで 1 週毎,以降は 2 週毎に行った。さ らにpH4 溶液に関しては試験体浸漬後の pH の上昇 速度が大きいため,1 日に 2 回,pH が 4 程度となる ように市販の硫酸を 100 倍に希釈した硫酸溶液を添 加することで調整した。pH1 溶液に関しては pH の調 整は行わなかった。 2.3 試験項目 a)質量変化・寸法変化試験 浸漬から1 週毎に試験体の 4 辺の長さおよび質量を 測定した。試験体の長さはノギス(精度0.01mm)で 測定し,試験体長さの初期値に対する浸漬後の変化量 およびその割合を寸法変化量および寸法変化率とした。 また,試験体質量の初期値に対する浸漬後の変化量の 割合を質量変化率とした。 b)劣化深さ試験 試験体をコンクリートカッタで切断し,切断面にフ ェノールフタレイン 1%アルコール溶液を噴霧した後, 呈色域の長さをノギスで測定し劣化深さを求めた。劣 化深さは,高さ方向,横幅方向各3 カ所の呈色域の長 さを測定し,式(1)から算出した。また,浸漬前の試験 体寸法と所定の浸漬日数における試験体寸法の差を侵 食深さとし,劣化度の指数とした。 Dn = (D0−Dh) 2

··· (1) ここで,Dn:中性化深さ(mm) D0:浸漬前の試験体の長さ(mm) Dh:呈色域(未中性化域)の長さ(mm) c)微小硬度試験および蛍光 X 線回析(XRF) 試験体 B を溶液浸透面が 1 辺となるように厚さ 5mm にコンクリートカッタで切断し微小硬度試験を 行った。pH1 溶液に浸漬した試験体は,劣化深さから 試験体中央に向け0.5,1,2,4,6,8,10mm,pH4 溶液に浸漬した試験体は,試験体表面から1,2,4, 6,8,10mm の間隔でセメントペーストの硬度を測定 した。さらにもう一つ同様に試料を作成し,XRF に a)pH1 溶液 b)pH4 溶液 図 1 試験体質量および寸法の経時変化 よって元素分析を行った。 3.実験結果および考察 3.1 質量および寸法変化 図 1 に各溶液に浸漬した試験体の質量変化率および 寸法変化量の経時変化を示す。 1)pH1 溶液浸漬結果(図 1 a) セメント単味の試験体(N-65,N-50,N-35)で は,水セメント比の小さい試験体ほど,質量変化率, 寸法変化量ともに低下が大きくなった。FA を外割混 合した試験体(65-50,65-35,65-25)と同一水セメ ント比でFA を混合していないセメント単味の N-65 と比較すると,質量変化率,寸法変化量は65-50 お

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3 図 2 単位セメント量と劣化深さ(pH1 溶液) 図 3 1 年圧縮強度と劣化深さ(pH4 溶液) よび65-35 が同程度であり,65-25 において最も低下 が小さくなった。高炉セメントを使用した試験体( BB-50,BC-50)では,同一水セメント比の N-50 と比較 して質量変化率,寸法変化率ともに低下が抑制された。 2)pH4 溶液浸漬結果(図 1 b) セメント単味の試験体では,水セメント比が小さく なるほど質量減少が抑制され,pH1 溶液に浸漬した場 合と逆の傾向になっており,弱酸性環境下ではコンク リートの品質を高めることで硫酸劣化に抵抗できるこ とを示唆する結果が得られた。 FA を外割混合した試験体においてはセメント単味 の試験体と比較して質量変化率は同程度か小さくなっ ているが,FA の外割混合量との関係は明確ではない。 65-25 では浸漬 9 週頃から質量が増加し,浸漬 35 週 頃から減少しており,他と比較して特異な傾向を示し ていることがわかる。 高炉セメントを使用した試験体では,浸漬初期にお ける質量変化率の低下が大きかったが,その後の低下 は比較的緩慢であった。このように,混和材を使用し た試験体では,セメント単味の場合とは異なり,単に 強度が大きいものほど質量変化率の低下が抑制されて いるとはいえない。混和材を使用した場合,混和材自 体の水和反応(ポゾラン反応,潜在水硬性)により, 水酸化カルシウムCa(OH)2が消費され,その一方で組 織が緻密になるという硫酸劣化に大きく影響する反応 が内部で起こり,また水和反応は経過時間的に影響す るため,セメント単味よりも硫酸劣化のメカニズムは a)pH1 溶液浸漬 b)pH4 溶液浸漬 写真 1 フェノールフタレイン溶液による呈色状況 複雑であり,今後,長期材齢でのさらなる測定・検討 により明らかにしたいと考えている。 寸法変化量については低下しているものの浸漬55 週の時点ではごくわずかであり,調合などの影響は 現時点では明確ではなかった。 3.2 劣化深さ試験 図 2 にpH1 溶液に浸漬した試験体の浸漬 55 週にお ける劣化深さと単位セメント量の関係を,図 3 にpH4 溶液に浸漬した試験体の浸漬 55 週における劣化深さ と試験作製1 年後の圧縮強度の関係を示す。また,写 真 1 は浸漬55 週において切断面にフェノールフタレ イン 1%アルコール溶液を噴霧して時の呈色状況を示 したものである。 1)pH1 溶液浸漬結果 図 2 より,セメント単味試験体では単位セメント量 が多く,水セメント比が小さい試験体ほど劣化深さが 大きくなり,高炉セメントを使用した試験体では,同 一単位セメント量の試験体より小さくなり,質量およ び寸法変化と同様の傾向を示した。セメントの水和反 応によって生成される水酸化カルシウム Ca(OH)2が 硫酸と反応し表面から溶解することが強酸性の硫酸に よる劣化の弱点となるため 5),単位セメント量の大き い試験体ほどCa(OH)2の生成量も多くなり,耐硫酸性 は低下する。一方で,FA を外割混合した試験体では, 質量および寸法変化の傾向とは異なり,同一単位セメ ント量のセメント単味試験体より劣化深さは大きくな る結果となった。また,写真 1a)から分かるように, FA を外割混合した試験体は FA の混合量が大きいも のほど侵食部分は小さくなり,呈色部分の周辺に存在

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4 する変色層が厚くなっており,このことが何らかの影 響を及ぼしている可能性も考えられる。よって本実験 では,劣化深さの面から見ると,FA 混合が劣化抑制に 必ずしも効果的であるとは限らないという結果が得ら れた。 2)pH4 溶液浸漬結果 図 3 よりpH4 溶液に浸漬した場合では,浸漬 55 週 の時点での劣化深さは大きいもので2mm 程度と pH1 溶液の場合と比べると小さい。また,その傾向は,pH1 溶液の場合と逆に,セメント単味試験体では強度が高 くなるほど,水セメント比が小さいものほど劣化が小 さくなり,質量変化の傾向と同様であった。また,FA や高炉セメントを使用した試験体でも同一水セメント 比の試験体と比較して強度が高くなれば劣化が抑制さ れる結果となった。弱酸性の硫酸による劣化では,表 面からの溶解によるものではなく,コンクリート内部 に硫酸イオンが侵入しエトリンガイトを生成すること による膨張破壊が劣化の原因となると考えられる 6)7) ため,低水セメント比による硬化体内部の緻密化,FA を混合することによって,FA のポゾラン反応により Ca(OH)2を消費しエトリンガイトの生成を抑制する と同時に,組織を緻密化して内部に硫酸イオンが侵入 するのを防ぐことで耐硫酸性が向上したと考えられる。 3.3 微小硬度および XRF 結果 図 4 に微小硬度の一例として,65-50 試験体の深さ 方向の微小硬度,写真 2 にXRF 結果の一例として, 65-50 試験体の硫黄元素マッピングの結果を示す。図 4 中の黒破線は劣化深さを,写真 2 中の青破線と黄破 線はそれぞれ試験体の表面と劣化深さを表している。 pH1 溶液に浸漬した試験体は,写真 1a)から表面部 分は白く変色していることが分かり,さらに,写真 2 から,その部分に硫黄元素が濃集していることから, 表面部分は硫酸により劣化していると考えられる。し かしながら,劣化領域より内部には硫黄元素は侵入し ておらず,図 4 から,微小硬度の減少は見られないの で内部は健全であると考えられ,既往の文献8)9)と同様 の結果が得られた。 pH4 溶液に浸漬した試験体は,図 4 より,劣化境界 の外側では微小硬度が減少しているが,内部にいくに つれて硬度は上昇しており,劣化境界内は健全である と考えられる。しかしながら,pH1 の場合と異な り,写真 2 からも分かるように内部にも硫黄元素が侵 入している。既往の文献7)から,内部に侵入した硫黄 元素はエトリンガイトとして存在し,組織に膨張破壊 a)pH1 溶液浸漬 b)pH4 溶液浸漬 図 4 試験体の深さ方向の微小硬度の一例 (浸漬 55 週 65-25) a)pH1 溶液浸漬 b)pH4 溶液浸漬 写真 2 XRF による硫黄元素マッピングの一例 (浸漬 55 週 65-50) を引き起こすので,今後これらの硫黄が劣化の要因に なるのではないかと考えられる。本稿に掲載したもの は試験結果の一部であるが,現段階で結果が得られて いる試験体も同様の結果が得られた。 4. まとめ pH1 程度の強酸性の硫酸溶液と pH4 程度の弱酸 性の硫酸溶液に浸漬した硬化体の耐硫酸性に及ぼす水 セメント比の影響は,セメント単味の場合は強酸性環 境と弱酸性環境では逆の傾向となり,弱酸性の環境下 では水セメント比を小さくし組織を緻密化することで 耐硫酸性が向上することが分かった。 また,FA の混合により,強酸性では,組織の溶解を 抑制することはできたが,脆弱化は抑制することはで きなかったという結果が得られた。一方で,弱酸性で は,ポゾラン反応によるCa(OH)2の消費および組織の 緻密化により劣化を抑制した。 〈参考文献〉 1)一般財団法人石炭エネルギーセンター:石炭灰全国実態調査報告書(平成 24 年度実績) 2)経済産業省資源エネルギー庁:電力調査統計 3)伊藤是清ほか:フライアッシュ外割混合コンクリートの耐硫酸性および耐硫 酸塩性に関する研究,都市・建築学研究,九州大学大学院人間環境学研究院 紀要,第28 号,pp.95-100,2015.7 4)伊藤是清ほか:高炉スラグ高含有セメントを用いたモルタルの耐硫酸および 耐硫酸塩性に関する研究,日本建築学会九州支部研究報告,第53 号,pp.157-160,2014.3 5))松本匡司ほか:混和剤混入による耐酸性モルタルの開発,コンクリート工学 年次論文報告集,Vol.27,No.1,pp.883-888,2005 6)原田志津男ほか:硫酸酸性地盤に 10 年間暴露された高品質コンクリートの 物理性状,日本建築学会構造系論文集,第604 号,pp.1-8,2006.6 7)小山智幸ほか:弱酸性の硫酸酸性地盤に接するコンクリートの劣化モデルに 関する一考察,都市・建築学研究 九州大学大学院人間環境学研究院紀要,第 10 号,pp.91~101,2006.7 8) 上田洋ほか:セメントペーストと酸の反応特性,コンクリート工学年次論 文報告集,Vol.17,No.1,pp.991-996,1995 9)上田洋ほか:酸の影響を受けたセメントペーストの劣化メカニズム,コンク リート工学年次論文報告集,Vol.18,No.1,pp.879-884,1996

参照

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