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る ウ赤黄色土丘陵や台地上に分布する第三紀層 第四紀洪積層の土壌である 下層土が赤色 ~ 黄色を呈する 粘土含量が高く 腐植に乏しい 土層は極めてち密で 孔隙量は少ない 保水性 透水性が小さいため 多雨時には停滞水が生じやすく 乾燥時には干ばつになりやすい 酸性は強く 石灰 苦土 微量要素が欠乏しや

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1 花き類の栽培土壌の特徴

花き類の主要産地には、水田転換畑のほか、黒ボク土、第三紀の丘陵や洪積台地の赤 黄色土、砂丘地未熟土などが分布している。これら土壌の種類により、保水性、透水性、 通気性、保肥力などが異なる。土壌の機能を十分に活用するには、それらの特徴を知る ことが大切である。 また、同じ場所であっても露地栽培と施設栽培では、土壌の状態は異なっている。露 地土壌は、降雨によって雨水とともに土壌中の肥料成分が下方向へ溶脱される。一方、 施設土壌は、降雨が遮られ雨水による肥料成分の下方向への溶脱はなく、水が上方向へ 移動するため肥料成分は土壌表層に集積しやすい。このため、露地土壌と施設土壌では、 全く違った見方、考え方による土づくりや施肥を行う必要がある。 図2 露地と施設における水と肥料成分の動き (1) 露地土壌 露地土壌は、雨水によって土壌中の肥料成分が溶脱され、土壌が酸性になりや すく、空気の出入りによって酸化的で有機物の分解が速いなどの特徴を持つ。 県内の主要な土壌の特徴は次のとおりである。 ア 灰色低地土(水田転換畑) 河川流域の低地に分布する水田土壌である。水田から畑へ転換した直後は、下 層への透水が不良で、作土も塊状構造で保水性に劣る。このため、排水対策と有 機物施用による物理性の改良が不可欠である。また、畑地化することによって有 機物の分解や塩基類が流亡しやすくなる。土性によって保肥力が大きく異なるの で、土壌の種類に応じた施肥管理が必要である。田畑輪換が可能であるため、連 作障害防止には最も有利な立地条件を持っており、他の土壌に比べて産地の維持 継続には有利である。 イ 褐色低地土 筑後川、矢部川中流域の川沿いの自然堤防上に分布する土壌である。有効土層 が深く、保水牲、透水性が良好で花き類の栽培に最も適している。有機物が消耗 しやすいので、有機質資材の継続的な供給が必要である。また、酸性になりやす いので、石灰質肥料や苦土質肥料を施用するとともに微量要素の欠乏にも留意す

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る。 ウ 赤黄色土 丘陵や台地上に分布する第三紀層、第四紀洪積層の土壌である。下層土が赤色 ~黄色を呈する。粘土含量が高く、腐植に乏しい。土層は極めてち密で、孔隙量 は少ない。保水性、透水性が小さいため、多雨時には停滞水が生じやすく、乾燥 時には干ばつになりやすい。酸性は強く、石灰、苦土、微量要素が欠乏しやすい。 雨による表土流亡や侵食が起こらないような耕種法(等高線作畦、牧草類との輪 作など)、深耕による下層土の改良、有機質資材の供給が必要である。 エ 黒ボク土(火山灰土壌) 筑紫平野、筑後平野の砂礫台地上に分布する土壌である。黒色~黒褐色を呈す る。腐植を多く含み、リン酸の固定力が強い。また、土壌の仮比重が小さく、孔 隙に富み、保水性、透水性が大きい。陽イオン交換容量は大きいが、窒素、石灰、 苦土 な ど の保 肥 力は 小 さく 、 塩 基や ホ ウ素 な どの 微 量 要素 の 欠乏 も 起こ り やす い。このため、塩基、リン酸、有機質資材の供給が必要である。県内の黒ボク土 は、九州中南部のものに比べて時代が古く、ほとんどが長い耕作の経歴をもって いるため、黒ボクとしての性格はおだやかであり、塩基 やリン酸の多量施用の効 果は小さい。 オ 砂丘未熟土 玄海灘に面した海岸平野に分布する土壌である。河川の流域にも類似する土壌 がある。粘土と腐植が極めて少なく、透水性は大きく、保肥力は小さい。このた め、塩基をはじめ各種肥料成分が溶脱されやすい。化学肥料は一回当たりの施用 量を少なくして分施する。有機質肥料や緩効性肥料の施用が効果的である。また、 土壌の緩衝能が弱いので塩基を一度に多量施用すると、マンガンや亜鉛などの欠 乏症がでやすい。有機質資材の継続的な施用に努める必要がある。 (2) 施設土壌 降雨を遮断しているため、土壌水分はかん水 あるいは地下水面からの毛管上昇 によって補給されている。栽培期間中はかん水が行われるため、地表面からの蒸 散は少ない。しかし、休閑期には土壌が乾燥して下層の水分が表層へ移動し、地 表面から蒸発する。このため、土壌溶液に溶解している肥料成分が表層に集積す るとECが上昇し、塩類濃度障害が発生しやすい。塩類濃度障害を防止するには、 土壌診断による残存肥料成分を考慮した適正な施肥を行うとともに、クリーニン グクロップの作付け、混層耕、湛水処理、作土の入れ替えなど除塩対策を行うこ とが重要である。また、副成分を含まない塩類障害回避型肥料の施用も効果的で ある。 (3) 土性別の特徴と施肥上の留意点 ア 砂壌土 粘土含量が 15%以下、砂含量が 65~85%で、砂土と壌土の中間である。触感は 砂の感じが強く粘り気はわずかしかない。砂質の土壌だが、保水性 や保肥力は砂 土ほど小さくない。透水性が良好であるため、肥料成分は溶脱されやすい。壌土 に比べて、水はけは良いが保肥力は小さい。このため、一回当りの施用量を少な くして分施する。

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図3 施設土壌における塩類集積 イ 壌土 粘土含量が0~15%、砂含量が 40~65%である。触感は砂と粘土が同じくらい に感じられる。保水性や透水性は中程度で、耕うんも容易である。花き類の栽培 に適した土壌で、標準的な肥培管理を行う。 ウ 埴壌土 粘土含量が 15~25%で、埴土と壌土の中間である。触感は粘り気が強いが、わ ずかに砂を感じる。透水性は不良で耕うんもやや困難であるが、保水性は大きい。 壌土に比べて、保肥力は強い。透水性が小さいため、排水対策を十分に行う。 表2 土性別土壌の特性 土性 耕うん 保水性 透水性 通気性 保肥力 砂壌土 易 小 大 大 小 壌土 易 中 中 中 中 埴壌土 難 大 小 小 大

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2 土壌診断と土壌改良

(1)土壌改善目標値 ア 土壌改善目標値の考え方 土壌改善目標値(以下、目標値)は、基肥施用前に備えておくべき数値で、施 肥基準に基づいた肥培管理を行うことによって正常な収量をあげうる範囲を示し たものである。土壌分析の結果が下限値を下回る場合は、肥料成分の供給が不十 分であることを意味し、土づくり肥料により肥料成分を別途補う必要がある。一 方、上限値を上回る場合は、肥料成分の過剰が懸念されるかそれ以上施用しても 効果が見込めないことを意味し、肥料等の施用を中止または減らすことができる。 また、この目標値は土壌の種類別に設定しており、非火山灰土壌は土性の違いを、 火山灰土壌は腐植含量の違いを考慮している。 イ 分析項目の見方 (ア)pH(H2O)、土壌pH 水で浸出した土壌の酸性の程度をpH(HO)または土壌pHという。pH は、0~14 の数値で表し(無単位)、7が中性、7より小さいと酸性、大きい とアルカリ性を意味する。作物の生育は土壌pHに影響される。適正範囲でな い場合は、肥料成分の欠乏や過剰、生育不良など様々な障害を引き起こすので 土づくり肥料による矯正が必要である。 (イ)陽イオン(塩基)、陽イオン交換容量(CEC) カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、水素な どプラスに荷電しているイオンを陽イオンという。陽イオンは、マイナスに荷 電している土壌に保持され、塩基ともいう。ただし、水素イオンは、塩基とは いわない。土壌が様々な陽イオンを保持できる最大量を陽イオン交換容量とい い、保肥力の指標として重要な項目である。単位は乾土 100g当たりのミリグ ラム当量(me)で表す。数値が大きいほど多くの陽イオンを保持できる。粘土 質や腐植の多い土壌ほど陽イオン交換容量は大きくなる。 (ウ)交換性陽イオン 土壌に保持される陽イオンは、他の陽イオンと容易に交換されて土壌溶液中 に出てくる。このような陽イオンを交換性陽イオンという。土壌に保持される 力は、水素>カルシウム>マグネシウム>カリウム =アンモニウム>ナトリウ ムの順に大きい。単位は乾土100g当たりのミリグラム(mg)またはミリグラ ム当量(me)で表す。ミリグラム当量で表すと、後述の塩基飽和度や塩基バラ ンスを算出しやすい。 (エ)塩基飽和度 陽イオン交換容量(me/100g)に対し交換性陽イオン(交換性カルシウム、 マグネシウム及びカリのミリグラム当量の合計)が占める割合を塩基飽和度と いう。単位は%で表す。一般的に、数値が大きいほど土壌pHが高く、小さい ほど低くなる。 (オ)石灰飽和度、苦土飽和度、カリ飽和度 交換性陽イオンのうち、陽イオン交換容量に対し交換性カルシウム (me/100 g)が占める割合を石灰飽和度、同様に交換性マグネシウムが占める割合を苦 土飽和度、交換性カリが占める割合をカリ飽和度という。単位はいずれも%で 表す。

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(カ)石灰苦土比(Ca/Mg 比)、塩基バランス 土壌中の交換性カルシウム(me/100g)を交換性マグネシウム(me/100g) で除した当量比を石灰苦土比という(無単位)。土壌中のカルシウムやマグネ シウムは、量とともに成分間のバランスを保つことが重要である。このことを 塩基バランスという。バランスがくずれ数値が高い場合はマグネシウム欠乏の 発生が、逆に低い場合はカルシウム欠乏の発生が懸念される。 (キ)苦土カリ比(Mg/K 比) 土壌中の交換性マグネシウム(me/100g)を交換性カリ(me/100g)で除し た当量比を苦土カリ比という(無単位)。塩基バランスの一つで、バランスが くずれ数値が低い場合はマグネシウム欠乏の発生が、逆に高い場合はカリウム 欠乏の発生が懸念される。 (ク)有効態リン酸(可給態リン酸) 土壌中に存在するリン酸のうち作物が吸収利用しやすい形態のリン酸を有効 態リン酸という。単位は乾土100g当たりのミリグラムで表す。施肥されたリン 酸は、土壌条件によってカルシウム、鉄、アルミニウムのいずれかに吸着 し、 利用し難くなっている。カルシウムに吸着したリン酸(以下、カルシウム型リ ン酸)は、比較的溶出しやすく作物に利用されやすい。目標値は、カルシウム 型リン酸を主に溶出するトルオーグ法で測定された数値である。分析値が目標 値の上限値を上回る場合は、リン酸質肥料の投入効果は見込めないと判断でき る。 (ケ)腐植 有機質資材が土壌中に供給されると、有機物のかなりの部分は微生物の作用 によって炭酸ガス、水、無機物などに分解されるが、一部は難分解性の暗色無 定形の高分子化合物に変化し、土壌に集積する。この高分子化合物を腐植とい い、土壌肥沃度の指標として重要な項目である。腐植は、土壌中の全炭素含量 (T-C)を測定し、その数値に一定の係数を乗じて算出する。単位は%で表 す。 (コ)EC(電気伝導度) 水で浸出される土壌中の陽イオンや陰イオンの濃度をECといい、単位は1 ㎝当たりのミリジーメンスまたは1m当たりのデシジーメンスで表す。数値が 高いほど土壌中に肥料成分が多く、逆に低いほど肥料成分が少ないことを意味 する。 (サ)表土(作土)の深さ 根が容易に伸長できる土層を表土(作土)といい、単位は㎝で表す。表土は、 土壌の最上部に位置し、耕うんや施肥など人為的な影響を直接受け、膨軟で有 機物に富む。 (シ)主要根群域の深さ 養分吸収の主役となる細根が 70~80%以上分布する土層を主要根群域とい い、単位は㎝で表す。 (ス)有効根群域の深さ 根がおよそ 90%以上分布する土層を有効根群域といい、単位は㎝で表す。有 効根群域が浅い場合は、生育や収量の低下が懸念されるので深耕や心土破砕な ど土層改良が必要である。 (セ)容積重、仮比重 土壌 100mL 当たりの乾燥重量を容積重といい、100mL 当たりのgで表す。容

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積重を 100 で除したものが仮比重(無単位)である。火山灰土壌で 80g/100mL、 非火山灰土壌で 140g/100mL 以上の場合は、根の伸長や排水が悪くなるので深 耕や有機質資材の施用により土壌を膨軟にする必要がある。容積重は、施肥設 計のための土量計算時に表土の深さとともに重要な項目である。 (ソ)粗孔隙(pF1.5 の気相率) 土壌は、固相(土壌粒子、動植物遺体、土壌生物等)、気相(空気)、液相 (水)の三相で構成され、気相と液相の和を孔隙という。 また、それぞれの容 積が土壌の全容積に占める割合を固相率、気相率、液相率 、孔隙率という。p F1.5 は、孔隙に満たされた水が重力によって排除された状態で、この状態の 時の気相率を粗孔隙という。単位は%で表す。数値が高い場合は排水性が良好 となるが、高すぎると過乾の恐れや養水分の供給が困難となる。 (タ)ち密度 土層における土粒子のつまり方の程度をち密度といい、土壌硬度の指標とし て重要な項目である。一般的に山中式硬度計を用いて測定し、単位は㎜で表す。 数値が 20 ㎜以上の場合は、根の伸長がかなり制限される。25 ㎜を上回ると根 は伸長できず、29 ㎜以上の層は盤層として扱われる。 (チ)飽和透水係数 孔隙が水に満たされた状態の時に水が浸透する程度を飽和透水係数といい、 排水性の指標として重要な項目である。単位は1秒当たりの㎝で表す。数値が 10-6 ㎝/sec 以下の土層がある場合は、排水不良と判断され、深耕や心土破砕な ど土層改良が必要である。 (ツ)地下水位 地下水(孔隙に水が満たされた状態)と土壌水(孔隙に水が満たされていな い状態)の境界を地下水面という。地表面から地下水面までの深さを地下水位 といい、単位は㎝で表す。地下水位が浅すぎる場合は、湿害が懸念される。

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(2)肥料の種類と肥効 肥料の種類は多種多様であり、その分類方法も様々である。ここでは、植物の 多量要素である窒素、リン、カリウム、カルシウム及びマグネシウムを主成分と する肥料について記載した。また、環境保全型農業の推進や施肥管理の省力化な どの視点から利用が増加している有機質肥料や緩効性肥料についても記載した。 なお、主な肥料名と保証成分は「JA肥料ブック(JA全農ふくれん、平成22年 3月)」に準じた。 ア 窒素質肥料 (ア)硫安 アンモニア態窒素を 21%含むアンモニア態窒素質肥料である。水に溶けやす く、速効的である。土壌に吸着され、作物にもよく吸収される。化学的中性肥 料であるが、アンモニア態窒素が土壌に保持あるいは作物に吸収された後に副 成分の硫酸が残り土壌を酸性にする生理的酸性肥料である。 一度に多量に施用 すると土壌の塩類濃度が高まり作物の根を傷めるので、注意が必要である。 (イ)硝安 アンモニア態窒素を 17.2%、硝酸態窒素を 17.2%含む窒素質肥料である。水 にきわめて溶けやすく、速効的である。特に、冬期において硝酸態窒素の肥効 が期待できる。化学的、生理的中性肥料で、アンモニア態窒素も硝酸態窒素も 作物に吸収されるので、土壌を酸性にしない。アンモニア態窒素は土壌に保持 されるが、硝酸態窒素は土壌に保持されず雨水とともに流亡しやすい。 (ウ)尿素 窒素成分として 46%を含む尿素態窒素質肥料である。水にきわめてよく溶 け、化学的、生理的中性肥料である。土壌に施用後、尿素から炭酸アンモニウ ムを経て硝酸に変化する。尿素から炭酸アンモニウムの変化は、初夏(気温 20 ℃)では2~3日で 50%、5~6日で大部分が変化する。冬期(気温 10℃)で は、5~7日で 50%、10~15 日でほとんど変化する。尿素は、葉面散布にも適 しており、根が傷んだ時に葉面散布して生育を維持回復させるのによい。 (エ)石灰窒素 窒素成分として 20~21%を含むシアナミド態窒素質肥料である。化学的、生 理的アルカリ性肥料で、副成分として石灰、ケイ酸、鉄などを含む。土壌に施 用後、シアナミドから尿素、アンモニウムを経て硝酸に変化する。これに要す 図 4 窒 素 質 肥 料 の 土 壌 中 で の 変 化 硝安 硫安 硝安 土壌 粒子 タンパ ク質 アンモ ニウム イオン 硝酸 イオン シアナ ミド 尿素 アミノ酸 尿素 石灰窒素 有機質肥料 溶脱 保持 NO3 NO3 NH4 NH4 NH4 NO3

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る期間は夏期で5~7日、冬期は2週間以上である。主成分のカルシウムシア ナミドは水によく溶け、土壌中で炭酸アンモニウムに変化する。この過程で少 量のジシアンジアミドができる。ジシアンジアミドは硝酸化成を抑えるので、 窒素の流亡が少なく、肥効が持続する。施用に当たっては、全面散布後に耕起 して作土とよく混和し、安全性を考慮して 10~14 日後に播種や植え付けを行 う。 イ リン酸質肥料 (ア)過石(過りん酸石灰) リン酸成分として 17~17.5%を含むリン酸質肥料である。水溶性リン酸を主 成分とし、速効性である。副成分として石こうを含む。化学的酸性肥料である が、土壌pHに対する影響は小さく、生理的中性肥料である。水溶性リン酸は、 土壌中でカルシウム、鉄、アルミニウムに吸着されやすく、肥効の持続期間は 短い。施用に当たっては、土壌との接触を避けるために播種溝や植溝に堆肥や 有機質肥料とともに施用し、薄く覆土するのが望ましい。 (イ)粒状ようりん リン酸成分として 20%を含むリン酸質肥料である。く溶性リン酸を主成分と し、水溶性リン酸を含まないため、土壌中で吸着されにくく緩効的である。副 成分として、く溶性苦土やケイ酸を含む。化学的、生理的アルカリ性肥料であ るため、基肥として施用する場合は、過石のような速効的なリン酸質肥料との 併用が望ましい。BMようりんは、ようりんの製造工程にマンガン、ホウ素原 料を添加したもので、リン酸、苦土と同時にく溶性のマンガンとホウ素を供給 できる。 (ウ)46重焼燐 リン酸成分として 46%を含むリン酸質肥料である。く溶性リン酸と水溶性リ ン酸を含み、緩効性と速効性の双方を持ち合わせている。化学的には微酸性を 示すが、生理的には中性肥料であるため、ようりんのように土壌pHを上昇さ せることがない。主に基肥として施用する。 図5 リン酸質肥料の土壌中での変化 吸着態リン酸 水溶性 リン酸 カルシ ウム型 リン酸 有機態 リン酸 アルミ型 リン酸 鉄型 リン酸 吸着 溶解 無機化 46重焼燐 骨粉 有機化 可溶性 リン酸 く溶性 リン酸 無機態リン酸 粒状ようりん 過リン酸石灰

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ウ カリ質肥料 (ア)硫酸加里 水溶性カリを 50%含む速効性のカリ質肥料である。化学的中性肥料である が、作物がカリウムを吸収した後に副成分の硫酸が残り土壌を酸性にする生理 的酸性肥料である。硫酸イオンは土壌中でカルシウムと反応して硫酸カルシウ ムとなるため、塩化加里よりも濃度障害を起こしにくい。 化学的中性肥料であ るため、どんな肥料とも配合できる。 (イ)塩化加里 水溶性カリを 60%含む速効性のカリ質肥料である。化学的中性肥料である が、生理的酸性肥料である。水に溶けやすく、一度に多量に施用すると濃度障 害の原因になりやすい。化学的中性肥料であるため、どんな肥料とも配合でき る。水稲、麦、露地花き類など湛水や降雨によって土壌に塩素が蓄積しにくい 作物に使われる。 (ウ)けい酸加里 く 溶 性 カ リ を 20% 含 む 緩 効 性 の カ リ 質 肥 料 で あ る 。 副 成 分 と し て 、 ケ イ 酸 、く 溶 性 苦 土 、く 溶 性 ホ ウ 素 を 含 む 。化 学 的 、生 理 的 ア ル カ リ 肥 料 で あ る 。 カ リ の 長 期 的 な 肥 効 が 期 待 で き 、ケ イ 酸 の 供 給 に も 有 効 で あ る 。主に土づく り肥料として使われる。ケイ酸カリウムが主成分であり、雨 水 や か ん が い 水 に よ る 流 亡 が 少 な く 、 河 川 や 地 下 水 へ の 環 境 負 荷 が 少 な い 。 図 6 カ リ 質 肥 料 の 土 壌 中 で の 変 化 エ 石灰質肥料 カルシウムは植物の必須元素であり肥料成分として重要であるが、石灰質肥料 はむしろ土壌の酸性矯正のための土づくり肥料として施用される。このため、石 灰質肥料は酸性矯正の指標であるアルカリ分を保証する。アルカリ分は、肥料中 の石灰成分と苦土成分を石灰成分に換算した合計割合で表示する。 (ア)炭酸苦土石灰 鉱石を砕いたもので、アルカリ分 55%で、苦土も含む。粉状の他、篩い分け により粒径を整えた粒状、細粒、精粒がある。土壌中での反応は緩やかであり、 土壌pHの急激な上昇は起きない。土壌と混合すれば、 基肥施用時に三要素肥 交換性カリ 水溶性カリ 非交換性 カリ 交換 保持 放出 固定 硫酸加里 塩化加里 家畜ふん堆肥等 溶脱 く溶性カリ けい酸加里

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料と一緒に施用できる。 (イ)消石灰 消石灰に水を加えて化合したもので、アルカリ分を 70%含む。アルカリ性が 強く速効性のため、施用後は土壌とよく混ぜて7~10 日放置して作付けする。 空気中の炭酸を吸って炭カルに変化し容量が増大するので、保存中の破袋に留 意する。 (ウ)有機石灰セルカ カキ殻を独自に脱塩、乾燥、粉砕粒度調整してできた動物質のカキ殻有機石 灰である。アルカリ分 46%で、ホウ素とマンガンを含み、粉状である。他にも ク溶性苦土7%を含む苦土セルカ2号、粒状の粒状セルカや粒状苦土セルカ2 号、天然腐植 10%と鉄を含む粒状セルカフミンや粒状苦土セルカフミン があ る。それぞれアルカリ分や含有成分量が異なるので留意する。中和効果は穏や かで、土壌と混合すれば、基肥施用時に三要素肥料と一緒に施用できる。 図7 アルカリ分の換算方法 オ 苦土質肥料 (ア)硫マグ(硫酸マグネシウム) 水溶性苦土を 25%含む苦土質肥料で、水によく溶け速効的である。化学的、 生理的酸性肥料であるため、施用後は土壌を酸性にする。基肥、追肥を問わず、 必要なときに施用で き る。葉面散布用の水 溶 性苦土を 16%含む 葉面 マグもあ る。 (イ)水マグ(水酸化マグネシウム) く溶性苦土を 50%含む苦土質肥料で、水に溶けにくく緩効的である。化学的、 生理的アルカリ肥料であるため、施用後は土壌をアルカリ性にする。土壌中で の反応は緩やかであるので、苦土が欠乏する土壌の土づくり肥料や基肥として 使用することができる。 表3 苦土質肥料の特徴 種類 苦土 (%) 土壌pH 特徴 低い 適正 高い 水マグ (水酸化マグネシウム)

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生理的アルカリ性肥料 肥効は硫マグより緩効的 硫マグ (硫酸マグネシウム)

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生理的酸性肥料 肥効は速効的 葉面散布は2~3%液を散布 種類 苦土 (%) 土壌pH 特徴 低い 適正 高い 水マグ (水酸化マグネシウム)

60

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生理的アルカリ性肥料 肥効は硫マグより緩効的 硫マグ (硫酸マグネシウム)

25

生理的酸性肥料 肥効は速効的 葉面散布は2~3%液を散布 アルカリ分=石灰成分+苦土成分×1.4 ※ 1.4=56(石灰の原子量)÷40(苦土の原子量) 粒状苦土石灰 (CaO:42%、MgO:10%) の場合 アルカリ分=42%+(10%×1.4) =56% (保証成分は55%)

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カ 有機質肥料 植物質肥料、動物質肥料、自給有機質肥料、有機性廃棄物に由来する肥料を総 称して有機質肥料という。肥効は、一般的に緩効的である。また、肥料的効果と 共に土壌物理性の改善効果が期待できる。しかし、肥料成分の利用率が低く、成 分的にアンバランスなものが多い。このため、化学肥料と併用すると 有効である。 広義には、緩効性肥料に含まれる。 (ア)粒状菜種粕 窒素成分を5%、リン酸成分を2%、カリ成分を1%含む植物質肥料である。 窒素成分に比べてリン酸成分とカリ成分が低い。窒素の肥効は、およそ4週間 で窒素成分の 40~50%が無機態窒素に変化する(25℃)。ただし、窒素成分の 肥効は温度によって異なるので施用に当たっては留意する。 (イ)魚粕 窒素成分を7%、リン酸成分を6%含む動物質肥料である。カリ成分をほと んど含まない。分解しやすく比較的速効的で、およそ4週間で窒素成分の 60~ 70%が無機態窒素に変化する(25℃)。ただし、窒素成分の肥効は温度によっ て異なるので施用に当たっては留意する。 (ウ)骨粉 リン酸を主成分とする動物質肥料である。骨粉には、肉骨粉、生骨粉、蒸製 骨粉の3種類がある。肥料成分や肥効は原料の種類や製法によって大きく異な る。リン酸成分の 60~70%は、く溶性であるため肥効は緩効的である。生骨粉 よりも油分の少ない蒸製骨粉の方が肥効は速い。 キ 緩効性肥料 (ア)化学合成緩効性窒素肥料 化学合成によってつくられ、水にほとんど溶けず加水分解や微生物分解によ って肥効を発現する肥料を化学合成緩効性窒素肥料という。ホルム窒素、IB 窒素、CDU尿素、オキサミドなどの窒素質肥料や、これらを含む複合肥料が ある。 a ホルム窒素(ホルムアルデヒド加工尿素) ホルムアルデヒドと尿素の縮合物で、窒素成分を 40%程度含む。縮合の程 度で溶解度、分解性が異なる。肥効の発現は、微生物分解型であり、畑など の酸化状態で速くなる。 b IB窒素(イソブチルアルデヒド縮合尿素) イソブチルアルデヒドと尿素の縮合物で、窒素成分を 31%程度含む。粒の 大きさで溶解度が異なる。肥効の発現は、主に弱い酸などによって緩やかに 加水分解される化学的加水分解型である。 c CDU窒素(アセトアルデヒド縮合尿素) アセトアルデヒドと尿素の縮合物で、窒素成分を 31%程度を含む。肥効の 発現は、加水分解型の側鎖と微生物分解型の環状化合物があり、それぞれ特 有の分解過程を持つ。 ( イ ) 被覆肥料(コーティング肥料) 水溶性の肥料を樹脂などで被覆し、肥効発現の持続期間を調節した肥料 を被 覆肥料またはコーティング肥料という。被覆資材は、硫黄(SCU)、ポリ オレフィン樹脂(エコロング、LPコート、エムコート)、アルギット樹脂

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(セラコート)等で、被膜の厚さや性質を変えることで肥料成分の溶出を調 節している。また、施用直後から肥効が現れるリニア型や一定期間経過して から肥効が現れるシグモイド型など 数種の肥効パターンがある。さらに、そ れぞれの肥効パターンに 40 日タイプや 100 日タイプなど肥効期間が異なるも のがある(図6)。 このため、施用するに当たっては、溶出特性を十分に理解した上で施用時期 や窒素吸収特性に適応した種類を選択する必要がある。利点としては、①施肥 効率が高く環境への負荷が少ない、②施肥回数が削減できる、③多量施用に伴 う濃度障害やガス障害が回避できる、④接触施肥が可能である、ことがあげら れる。一方、欠点としては、①価格が高い、②溶出が気象条件や土壌条件に左 右される、ことがあげられる。 図8 被覆肥料の成分溶出パターン 注)http://sugar.alic.go.jp/japan/example_02/example0912a.htm 図9 被覆肥料の肥効期間別溶出パターン (ウ)硝酸化成抑制剤入り肥料 硝酸化成抑制剤は、土壌中でアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変える微生物作 用を抑える物質をいい、AM(2アミノ4クロロ6メチルピリミジン)、Dd(ジ シアンジアミド)、TU(チオウレア)、ST(2スルファニルアミドチアゾー ル)などがある。これらの物質を配合した肥料を硝化抑制剤入り肥料という。硝 酸化成を抑制することにより、窒素の溶脱防止による肥効率の向上が期待される。

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ツツジのようにアンモニア態窒素を好む作物に適する。 (エ)固形肥料 硫安や燐安、過石、塩加など数種の原料に泥炭を加えて練り混ぜ、成形または 造粒した肥料を固形肥料という。成形複合肥料に属し、窒素、リン酸、カリの三 成分のうちいずれか二成分以上を含む。大型のものは、15~16gの豆炭状で、果 樹や緑化樹木などに施用される。粒径が3~10 ㎜程度のものは、粒状固形肥料と 称し、畑作物に施用される。 ク 液肥 液肥は液体複合肥料の総称で、無機液肥、有機入り液肥、有機液肥に分類される。 水溶液で施用するため、肥効は速効的である。追肥用にチューブやスプリンクラー によるかん水同時施用などが可能で、施設園芸、特に養液栽培を中心に広く普及し ている。 土壌施肥用あるいは養液栽培用の液肥として、OKシリーズ、ピータースなどが あり、窒素、リン酸及びカリ成分の割合を品目、生育ステージ、栽培環境、栽培条 件に合わせて選択する。また、石灰や苦土成分の他、ホウ素やマンガンなどの微量 要素も配合されている。葉面散布用の液肥は、肥料成分の欠乏などに対し速効的な 応急処置として使用される。

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(3)酸度矯正 雨水や施肥、有機物の分解などにより土壌は酸性化する。一方、石灰質肥料の 多施用や用水などにより土壌がアルカリ性化するほ場も少なくない。 土壌pHが極端に酸性やアルカリ性になると、肥料成分が可給化または不可給 化して欠乏症や過剰症、生育障害などを誘発し、様々な障害を引き起こす。この ため、酸度矯正は極めて重要な土壌管理の一つである。 ア 酸性矯正 土壌pHの酸性矯正に必要な土づくり肥料の施用量は下表を目安とする が、土 壌 に よ り 緩 衝 能 が 異 な る た め 緩 衝 曲 線 を 作 成 し て 施 用 量 を 算 出 す る の が 望 ま し い。詳細は「主要農作物の肥料節減指針」を参照する。また、下表の上限量を1 回当たり施用量とし、1年後に再度土壌診断を行い、施用の必要性を検討する。 施用に当たっては、施用後土壌とよく混ぜ、特に消石灰は混ぜた後7~10 日放 置して作付けする。また、塩基バランスに留意し、必要に応じて苦土質肥料を施 用する。 表4 土壌pHを1上げるのに必要な施用量の目安(㎏/10a) 土づくり肥料 砂壌土 壌土 埴壌土 炭酸苦土石灰 100~120 140~180 200~240 消石灰 80~100 120~140 160~200 ケイカル 120~140 160~200 220~260 ミネラルG 140~160 200~240 260~300 表5 石灰質肥料のアルカリ分と換算率 炭酸苦土石灰 消石灰 有機石灰セルカ アルカリ分(%) 55 70 46 炭酸苦土石灰から の換算倍率 1 0.8 1.2 イ アルカリ性矯正 土壌pHが上昇してアルカリ性が強くなると、それを下げるには困難を要する。 土づくり肥料を用いて土壌pHを下げる場合、それぞれの特性を十分に把握して 施用する必要がある。施用に当たっては、施用後土壌とよく混ぜる。 (ア) 硫黄華 黄色粉末で、硫黄が土壌中の微生物により硫酸イオンに酸化されることで土 壌pHが低下する。効果は高いが反応は鈍く、夏期でも2ヵ月を要する。この ため、肥培管理などを踏まえたうえで計画的に施用する。 硫黄華は、土壌pHが一旦低下しても再び上昇したり、土壌pHが目標値よ り低くなり過ぎることがあるので、施用から1ヵ月以降に再度土壌pHを測定

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し、必要に応じた対策を講じる。 (イ)フェロサンド(硫酸第一鉄資材) 硫酸第一鉄を主成分とし、水溶性マンガンと鉄を含む。土壌pHは施用量に 応じて低下する。施用量の増加に伴いECが上昇し、有効態リン酸が減少する 傾向がみられる。また、土壌の緩衝能により効果に差があるので、緩衝曲線を 作成して施用量を算出するのが望ましい。 (ウ)サンドセット 灰色粉末で、土壌に混和すると直ちに土壌pHは低下する。水稲育苗用によ く利用される。硫黄華のように土壌pHが目標値よりも低くなり過ぎる危険性 は少ない。 (エ)ピートモス ミズゴケや草類が土中に堆積したもので、pHが4程度の強酸性を示す。石 灰などで中和したものも市販されているので、pH未調整のものを使用する。 多量に施用しないと効果がでにくい。 図10 フェロサンドの施用量と土壌pHとの関係 (「岡山県平成13年度試験研究主要成果」より) 表6 土壌pHを1下げるのに必要な施用量の目安(㎏/10a) 1,200~1,300 ピートモス 500~1,000 サンドセット 300~1,200 フェロサンド 強 弱 50~80 硫黄華 効 果 施用量の目安 土づくり肥料 1,200~1,300 ピートモス 500~1,000 サンドセット 300~1,200 フェロサンド 強 弱 50~80 硫黄華 効 果 施用量の目安 土づくり肥料

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(4)有機質資材の施用 水田に比べて畑地では腐植の消耗が大きくなるため、有機質資材の施用は極めて 重要である。有機質資材を施用することにより、窒素の肥沃度を向上させるととも に、リン酸やカリ、微量要素などの肥料成分を供給することができる。 詳細につい ては、「有機質資材等の利用上の手引(平成 19 年1月、福岡県農政部農業技術課)」 を参照する。 ア 土壌中における分解特性 有機質資材は、その種類により含有する肥料成分量や土壌中における分解過程、 有機質資材からの肥料成分発現パターンは著しく異なる。 土壌中における分解の難易は有機質資材の組成や堆肥化過程の方法などに 影響 され、分解に伴う窒素の発現は有機質資材の炭素率(C/N比)に影響される。 炭素率は、有機質資材に含まれる全炭素量と全窒素量の比率であり、有機質資 材の種類によって大きく異なる。炭素率が概ね 20 を境にして、それより高いほど 分解が遅く、土壌の物理性改良効果は期待できるが、分解時に土壌中の無機態窒 素が微生物に利用され作物は窒素飢餓となる。このため、施用に当たっては注意 表7 主な有機質資材の炭素率(C/N比) 種類 全炭素(%) 全窒素(%) 炭素率 稲わら 40~45 0.7~0.9 50~60 麦桿 40~45 0.5~0.7 60~80 落ち葉 40~45 0.8~1.5 30~50 牛ふん 35~40 1.5~2.0 15~20 豚ふん 40~45 4.5~5.0 8~10 鶏ふん 30~35 5.0~5.5 6~8 図 11 有機質資材等の窒素無機化率 注)無機化率は、資材中の窒素成分が無機態窒素になった割合 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100

窒 素 無 機 化 率 化学肥料 豚ふん 牛ふん 菜種油かす 乾燥鶏ふん 発酵鶏ふん %

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する必要がある。一方、20 より低くなるほど分解が速く、無機態窒素が速やかに 放出され、肥料的効果が高くなる。 イ 主な有機質資材の種類と施用効果 有機質資材は、作物に肥料成分を供給する肥料的効果のほか、土壌の腐植含量 を増大させ、土壌の膨軟化や通気性の確保など土壌の物理性改良効果を持つ。地 力の低下に歯止めをかけ、さらに生産力を安定させるためには、良質な 有機質資 材の施用が必要である。有機質資材の施用効果は、種類によって異なるため、有 機質資材の特徴を十分に把握した上で目的に応じた有機質資材を選択する。 表8 有機質資材の種類と施用効果 (ア)稲わら・麦わら 稲わら、麦わらともにカリ含有率が高く、ほ場に直接すき込むことにより土 壌の物理性改良効果とともにカリの肥料的効果が期待できる。 (イ)牛ふん堆肥 窒素の肥料的効果はあまり高くないが、リン酸やカリの肥料的効果は高く、 微量要素も補給できる。また、家畜ふん堆肥の中で最も土壌の物理性改良効果 は高い。 (ウ)豚ふん堆肥 牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥の中間的な性質を持ち、窒素、リン酸、カリなどの 肥料的効果とともに土壌の物理性改良効果も期待できる。 (エ)鶏ふん堆肥 窒素、リン酸、カリなどの肥料的効果は家畜ふん堆肥の中で最も高いが、土 壌の物理性改良効果はあまり期待できない。 カリ リン酸 窒素 小 大 大 中~大 鶏ふん堆肥 中 大 大 中 豚ふん堆肥 大 大 大 小~中 牛ふん堆肥 大 大 小 無 稲わら・麦わら 土壌の 物理性改良効果 肥料的効果 種類 カリ リン酸 窒素 小 大 大 中~大 鶏ふん堆肥 中 大 大 中 豚ふん堆肥 大 大 大 小~中 牛ふん堆肥 大 大 小 無 稲わら・麦わら 土壌の 物理性改良効果 肥料的効果 種類

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(5)家畜ふん堆肥の施用量 ア 施用基準 表9 施肥基準 区 分 施 用 量 (t/10a/年) 牛 豚 鶏 発酵処理物 乾燥ふん 発酵処理物 乾燥ふん 発酵ふん 切 花 生 産 草花 少肥 1.3~2.6 0.2~0.4 0.3~0.7 0.1~0.2 0.2~0.3 多肥 1.3~2.6 0.4~0.8 0.7~1.4 0.2~0.4 0.3~0.6 球根 少肥 0.7~1.3 0.1~0.2 0.2~0.3 0.1 0.2 多肥 1.3~2.6 0.2~0.4 0.3~0.7 0.1~0.2 0.2~0.3 花木 少肥 1.3~2.6 0.2~0.4 0.3~0.7 0.1~0.2 0.2~0.3 多肥 1.3~2.6 0.4~0.8 0.7~1.4 0.2~0.4 0.3~0.6 種 苗 生 産 草花 少肥 0.7~1.3 0.1~0.2 0.2~0.3 0.1 0.2 多肥 1.3~2.6 0.2~0.4 0.3~0.7 0.1~0.2 0.2~0.3 球根 少肥 0.7~1.3 0.1~0.2 0.2~0.3 0.1 0.2 多肥 1.3~2.6 0.2~0.4 0.3~0.7 0.1~0.2 0.2~0.3 花木 少肥 1.3~2.6 0.2~0.4 0.3~0.7 0.1~0.2 0.2~0.3 多肥 1.3~2.6 0.4~0.8 0.7~1.4 0.2~0.4 0.3~0.6 (ア)施用方法 a 施設栽培ではこの半量とする。 b 植え付け1カ月前にほ場に全面散布し、作土と十分に混和する。 c 生育中に追肥として施用する場合には完熟したものを数回に分ける 。 d ツツジ類に対する鶏ふんの施用は極力避ける。 (イ)施用上の注意 a 少肥、多肥の種類は表 10 のとおりである。 b 施設栽培では、急激な分解によるガス障害が起きる恐れがあり、特に鶏ふ んは著しいので十分に注意する。 c 鶏 ふ ん は 土 壌 p H を 上 昇 さ せ る の で 、 作 物 ご と の 適 正 p H 範 囲 に 注 意 す る。 d 鶏ふんと石灰を同時に施用しない。石灰の施用により土壌pHが上昇 し、 鶏ふん中のアンモニア態窒素が揮散するおそれがある。 イ 窒素肥料の代替として利用 各畜種とも基肥窒素量の 30~50%を代替施用とする。 各 畜 種 別 の 肥 料 成 分 含 有 率 と 化 学 肥 料 に 対 す る 肥 効 率 を 基 に 家 畜 ふ ん 堆 肥 中 に含まれる肥料成分を評価し、家畜ふん堆肥の施用量を算出する。さらに、家畜 ふん堆肥の施用量から化学肥料に相当するリン酸量とカリ量を算出し、基肥基準 量から減肥する。

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化学肥料に対する肥効率は、施用する家畜ふん堆肥中の肥料成分の何%が化学 肥料に相当する肥効を示すかを表す値で、この値を参考として施用量を決定する。 家畜ふん堆肥中の窒素の肥効は、種々の条件(ふん尿の性状、気象、作物の生 育状況等)により変動するので、作物の生育経過により窒素の過不足がみられる 場合には追肥で調整する。詳細については「有機質資材等の利用上の手引」(平 成 19 年1月、福岡県農政部農業技術課)を参照する。 表 10 少肥と多肥の種類 区 分 品 目 名 切 花 生 産 草花 少肥 リンドウ、キンセンカ、ガーベラ、スイトピー、アネモネ、 プリムラ、マーガレット 多肥 キク、カーネーショ ン、 シャクヤク、ストッ ク、 キンギョ ソウ、ハボタン 球根 少肥 カノコユリ、テッポウユリ、アイリス、グラジオラス 多肥 スカシユリ、フリージア 花木 少肥 ヤナギ 多肥 バラ、 種 苗 生 産 草花 少肥 ヤグルマソウ 多肥 球根 少肥 カノコユリ、テッポウユリ、 多肥 アイリス 花木 少肥 クルメツツジ、アザレア、サツキ 多肥 カイズカイブキ、ツ バキ 、クロガネモチ、モ ッコ ク、サザ ンカ 表 11 家畜ふん堆肥の成分含有率 (%) 畜種 種類 水分 窒素 リン酸 カリ 牛 乳牛 58 0.8 0.8 0.8 肉牛 58 0.8 0.9 1.0 豚 副資材あり 36 1.9 3.9 1.9 副資材なし 31 3.3 5.3 2.3 鶏 採卵鶏 24 2.8 5.8 2.9 ブロイラー 41 2.2 3.5 2.5 注)福岡県における平均値(平成5~ 17 年)

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表 12 家畜ふん堆肥の化学肥料に対する肥効率(%) 畜種 種類 窒素 リン酸 カリ 牛 単年施用 15 60 90 5年程度連用 20~25 長期間連用 30 豚 副資材あり 20~30 70 90 副資材なし 40~50 鶏 窒素含有率:2.0%未満 20~30 70 90 窒素含有率:2.0~4.0% 30~50 窒素含有率:4.0%以上 50~60 注)1.炭素率( C/N比 )が 25 以上では、化学肥料に対する肥効率の換算 を行わない。 2.鶏ふんの 窒素含有率が不明な場合は、窒素肥効率を概ね発酵鶏ふんで 30~40%、乾燥鶏ふんで 50~60 とする。 (ア) 施用量の計算方法 a 家畜ふん堆肥の施用量 基肥窒素量×基肥窒素代替率/100÷窒素含有率/100÷窒素肥効率/100 b 化学肥料に相当するリン酸量 家畜ふん堆肥施用量×リン酸含有率/ 100×リン酸肥効率/100 c 化学肥料に相当するカリ量 家畜ふん堆肥施用量×カリ含有率/100×カリ肥効率/100 (イ)施用方法 上記「ア 施用基準」に準ずる。 (ウ)施用上の注意 上記「ア 施用基準」に準ずる。また、家畜ふん堆肥のカリ含有率が高い場 合や土壌中の塩基バランスを重視する場合は、カリを基準として同様に施用量 を算出する。 基肥窒素基準量 10kg/10a に対して、基肥窒素の 30%を乳牛ふん堆肥(窒素 0.8%、 リン酸 0.8%、カリ 1.1%)で施用する場合、 a 乳 牛ふん堆 肥 の施 用量 =10kg×30/100÷0.8/100÷15/100=2,500kg b 乳牛ふん堆肥中のリン酸量=2,500kg×0.8/100×60/100=12kg c 乳牛ふん堆肥中のカリ含量=2,500kg×1.1/100×90/100≒25kg

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ウ 有機物補給を目的として利用 牛ふん堆肥 10a当たり2~3t施用する場合にも家畜ふん堆肥中に含まれる 肥料成分を評価し、化学肥料の代替として活用する。 (ア)肥料成分の計算方法 家畜ふん堆肥の施用量から化学肥料に相当する窒素量、リン酸量、カリ量を 算出し、基肥基準量から減肥する。 a 化学肥料に相当する窒素量 家畜ふん堆肥施用量×窒素含有率/100×窒素肥効率/100 b 化学肥料に相当するリン酸量 家畜ふん堆肥施用量×リン酸含有率/ 100×リン酸肥効率/100 c 化学肥料に相当するカリ量 家畜ふん堆肥施用量×カリ含有率/100×カリ肥効率/100 (イ)施用方法 上記「ア 施用基準」に準ずる。 (ウ)施用上の注意 上記「ア 施用基準」に準ずる。 乳牛ふん堆肥(窒素 0.8%、リン酸 0.8%、カリ 1.1%)を 10a当たり 2,000 ㎏施用する 場合、 a 乳 牛ふん堆 肥 中 の窒素 量 =2,000kg/10a×0.8/100×15/100=2.4kg b 乳牛ふん堆肥中のリン酸量=2,000kg/10a×0.8/100×60/100=9.6kg c 乳牛ふん堆肥中のカリ含量=2,000kg/10a×1.1/100×90/100=19.8kg

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(6)除塩対策 除塩対策は、施設の種類、立地条件、導入作物、作型などを考慮して、効果的 かつ可能な手法を組み合わせて実施するのが望ましい。 ア 基肥の減肥 塩類集積を防止するには、肥料を過剰に施用しないことが基本である。土壌分 析によって土壌中の肥料成分を測定し、前作の残存量に相当する肥料を減肥する。 減肥診断では、「福岡県適正施肥設計プログラム」の診断結果を基に、使用する 肥料や施肥量を決定する。 イ クリーニングクロップの導入 休閑期に吸肥性の強いイネ科作物を栽培し、収穫物を施設外へ持ち出すことに より、除塩効果が期待できる。クリーニングクロップとして利用する作物の中で、 デントコーンやソルゴーはカリの吸収量が多く、ブロッコリーは石灰の吸収量が 多い特徴がみられる。栽培期間が短くて十分な生育量が確保できなかったり、E Cが著しく高くて生育不良になると、効果は低下する。 表 13 クリーニングクロップによる肥料成分の吸収量(福岡農総試) 作物名 部位 窒素 リン酸 カリ 石灰 苦土 デントコーン 葉 10.2 2.4 11.1 3.4 1.5 茎 8.3 3.1 27.9 2.9 2.5 全体 18.5 5.5 39.0 6.3 4.0 ソルゴー 葉 9.2 3.5 7.5 1.8 1.4 茎 6.3 2.6 22.8 2.8 2.5 全体 15.5 6.1 30.3 4.6 3.9 ブロッコリー 葉 8.6 1.8 4.7 10.9 1.7 茎 3.8 1.4 8.0 3.4 0.9 花らい 2.9 0.8 2.7 0.6 0.2 全体 15.3 4.0 15.4 14.9 2.8 注)単位は、10a当たり㎏。 ウ 混層耕 トレンチャや深耕ロータリ等を用いて作土と下層土を混合することにより、作 土中の塩類濃度が希釈され、除塩される。下層土が硬い場合は、土壌の物理性改 良効果も期待できる。実施に当たっては、下層土の肥料成分量が少ないことを確 認する必要がある。混層耕は希釈による一時的な除塩であるため、施設では再集 積に留意する必要がある。 エ 湛水・かん水処理 周囲を波板等で囲い水位を 10~20 ㎝に保って 30 日以上湛水状態で放置すると、 水に溶解した肥料成分を排水とともに除去できる。湛水期間中に1~2回荒く代 かきすると効果はさらに高まる。また、湛水処理はクリーニングクロップの作付 けに比べて表層において効果が優る。 かん水処理は、かん水回数よりもかん水量が多いほど効果は高くな り、排水性 が不良なほ場では効果が劣る。

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休閑期にビニルを除去し、雨水にあてるとかん水処理と同等の効果が期待でき る。ただし、降雨量に左右され、降雨量の多い時期に効果が高くなる。 オ 作土の入れ替え 作土を山土等と入れ替える。除塩効果は極めて高いが、多量の土が必要であり、 労力と費用がかかる。 図 12 除塩処理とその効果(愛知農総試園試) 表 14 処理水量と除塩効果(高知農林技研、一部修正) 処理区 EC (dS/m) 硝酸態窒素 (mg/100g) 交換性陽イオン(mg/100g) 石灰 苦土 無処理区 1.83 (100) 19.3 (100) 466 (100) 105 (100) 200mm 湛水区 1.26 (69) 7.9 (41) 413 (89) 102 (97) 200mm かけ流し区 1.50 (82) 13.8 (71) 406 (87) 101 (96) 1,000mm 湛水区 0.76 (41) 6.0 (31) 389 (76) 78 (74) 図 13 かん水量及び回数と除塩率(景山ら)

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(7)土壌消毒(病害虫防除の手引きから引用、一部修正) 農業生産場面で土壌病害虫の防除に幅広く使用されてきた臭化メチル剤は、フ ロン、ハロンに続いてオゾン層破壊物質として指定された。それに伴い、検疫用 途ならびに不可欠用途(代替剤が全くなく、極めて重要な用途として認められた もの)を除く土壌処理等において、平成 17 年(2005 年)以降使用できなくなっ た。 代替薬剤としては、クロルピクリン剤、ダゾメット剤(ガスタード微粒剤、バ スアミド微粒剤)、D-D剤、MITC剤(メチルイソチオシアネート:ディト ラペックス、トラペックサイド)、カーバム剤(キルパー、NCS)、DCIP 剤(ネマモール)、ホスチアゼート剤(ネマトリン)等の既存剤がある。これま での試験結果では有効範囲、効果の安定性、処理労力、刺激性、経済性等に長所、 短所がある。 なお、現時点では臭化メチルに匹敵するような新規薬剤の開発は困難という見 解が多く、先進国等の取り組みも、既存薬剤と耕種的 あるいは物理的防除技術を 併用した総合防除の試みが主体となっている。 ア 土壌消毒にあたっての注意事項 土壌消毒を行うと土壌の生物性、化学性に大きな影響を及ぼす。土壌の生物性 の面では土壌中の微生物相が貧困化することになる。これは土壌の持つ生物的緩 衝機能の一つが低下することにつながり、処理後に生き延びた微生物あるいは消 毒後に外部から侵入してきた微生物が爆発的に増殖する可能性が生じる。また、 作物にとって重要な無機態窒素を供給する窒素代謝微生物なども大きな影響を受 ける。畑作物や野菜は硝酸態窒素を吸収して生育するが、土壌消毒により硝酸化 成菌などの微生物が貧弱になり、アンモニア態窒素が蓄積して、生育障害が発生 することがある。 土壌の化学性の面では可溶性マンガンが増加することが知られている。また、 土壌の物理性も日頃の土づくりを怠っていると、確実に悪化する。 以上のように、土壌消毒を行うと土壌の性質に大きな影響をおよぼすため、適 切な手当が必要である。特に良質の堆肥、有機質肥料の供給により微生物相を豊 富にすることが重要である。 イ 主な薬剤の特徴、処理方法と注意事項 (ア)クロルピクリンくん蒸剤 本剤は刺激性や催涙性が強いため、作業者や周辺環境への影響を配慮して従 来の液剤に加え、乳剤、錠剤やテープ剤が開発されている。液剤と錠剤は適用 病害虫、処理方法がほぼ同じである。 a クロルピクリン液剤 薬剤注入後直ちに土壌表面を被覆する。被覆しなければ十分な効果を得ら れないばかりか、周辺作物や人畜へ被害を及ぼすおそれがある。液剤の処理 方法については、土壌への注入と同時にマルチを行う「全面マルチ土壌消毒 法」も新たに開発されている。処理時のガス放出がほとんどなく、施設内で も処理が可能である。 b クロルピクリン乳剤(クロピクフロー) クロピクフローは土壌くん蒸剤クロルピクリンを乳剤化した製剤である。 この製剤は、被覆後に潅水チューブを利用して処理するため、処理時の強い 刺激から解放される。処理作業は、まず潅水チューブを土壌表面に置き、次 にポリエチレン等で被覆する。被覆後、液肥混合器で注入する。作業は簡単

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で省力的である。 c クロルピクリンテープ剤 水溶性の特殊フィルムに粉状の薬剤を封入した製剤である。耕起整地後に 90cm 間隔に畝立て後、畝中央部に深さ 15cm の溝を掘り、溝内に設置後覆土 して、ポリエチレンやビニルで被覆する。 d クロルピクリン錠剤 水溶性の特殊フィルムに真空包装された錠剤で、床土や圃場に 30×30cm ご とに深さ約 15cm の穴をあけ、1穴当たり1錠を施用する。水溶性フィルムは 施用後に土壌水分と接触して徐々に溶解するため、施用時にはガス放出がほ とんどなく、ハウス内でも使用が可能である。また、手作業でも処理できる ため、ハウスのサイドや谷部など、機械処理が困難な場所にも簡便に使用で きる。なお、圃場を良く耕起し、錠剤を手散布( 10 個/㎡)したあとロータ リーで混和して、被覆するという簡便法も可能である。 e クロルピクリン・D-D混合剤(ソイリーン) 本剤はクロルピクリン 40%、D-D52%の混合剤で、線虫、土壌病害に登録 がある。クロルピクリン単剤より成分量が少ないため、刺激臭が少ない。 f クロルピクリン・DCIP油剤(ルーテクト、ルートガード) クロルピクリンと殺線虫剤DCIPの混合剤で、線虫、土壌病害に登録が ある。クロルピクリン 25%、DCIP70%剤とクロルピクリン 60%、DCIP 20%剤の2剤がある。 (イ)ダゾメット粉粒剤(バスアミド微粒剤、ガスタード微粒剤) 両剤は、ダゾメット 98%を有効成分とする類似の薬剤である。ダゾメットは、 処理後 土壌水分によって速やかに加水分解され、MITC(メチルイソチオ シアネート)、二硫化炭素などのガスに分解して土壌病原菌やセンチュウ類に 効果を発揮する。このため、適度の土壌水分(容水量 50~60%)が不可欠で、 不足すると分解が遅延し、効果の低下や薬害の原因となる。また、活性ガスが 早く抜けて効果が低下する恐れがある。土壌が乾燥している場合は、土壌混和 後ただちに散水し、ポリエチレンやビニルなどで被覆を行う。 また、本剤の土壌混和後に一定の間隔で小畝を作り、溝部分に湛水して太陽 熱利用土壌消毒を併用すると効果を高めることができる。 (ウ)カーバムナトリウム塩液剤(キルパー) 本剤は普通物・魚毒性A類相当の液剤で、センチュウ類、糸状菌病に有効で ある。また、ウリ科、ナス科、アブラナ科、イチゴ、ニンジン、ゴボウ、ショ ウガ等の畑地一年 生雑草に対しては、播種または定植前 10~20 日までの 40 ~80l/10a処理が登録されている。多雨直後や土壌水分が多すぎる場合にはガ ス化効率が悪くなり、土壌が乾燥しているとガスが抜けやすく効果が出にくく なるので、適切な土壌水分の確保が重要である。なお、クロルピクリンと接触 すると化学反応を起こして発熱するので、クロルピクリン処理後の注入機を使 用する場合は、十分に洗浄してから使用する。 (エ)メチルイソチオシアネート油剤、メチルイソチオシアネート・D-D油剤(ト ラペックサイド油剤、デイトラペックス油剤) いずれも油剤で、土壌注入後すみやかにガス化し、センチュウ類や土壌病原 菌に効果を発揮するが、デイトラペックス油剤は D-D剤の混合によりセンチュ ウ類に対する効果を高めた薬剤である。両剤は刺激臭が比較的少ないため使い やすい薬剤である。処理は土壌水分を適当(30%前後:軽く握って割れ目が出

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来る程度)に保って行い、処理後は直ちに覆土、鎮圧するが、できるだけビニ ル等で被覆を行う。なお、処理前にアルカリ性肥料、特に石灰等を施用すると 薬害を生じる恐れがあるので、肥料はガス抜き後に施用する。 表 15 主な土壌消毒剤の特性 薬剤 名 (一般 名) 処理 日 数 最低 処 理温 度 被覆 方 法 ガス抜き 適用 範 囲 (登録 範囲) ク ロ ル ピ ク リ ン と 混合 剤 25~30℃:約10日 15~25℃:10~15日 10~15℃:15~20日 7~10℃::20~30日 7℃ ポ リ エ チ レ ン 、 ビ ニ ル 等で必ず被 覆 する。 臭 気 が 残 っ て い る 場 合は耕 起 して行 う。 糸状 菌 類 細菌 類 センチュウ類 土壌 害 虫類 一年 生 雑草 D-D 25~35℃:約7日 20~25℃:7~10日 10~20℃:10~15日 5~10℃:15~20日 5℃ 覆土 、鎮圧 を行う。 処 理 7~20 日 後 から 播 種 、 定 植 ま で 5 ~ 20日間 行 う。 センチュウ類 土壌 害 虫類 バレイショの青 枯病 そうか病 ダゾメット ( 処 理 か ら 播 種 、 定 植 ま での期 間) 18℃以 上:10~12日 15~18℃:12~18日 12~15℃:18~25日 8~12℃:25~30日 0~8℃:30~40日 10℃ ビ ニ ル 等 で 必 ず 被 覆 する。 2回以 上 必ず行 う。 糸状 菌 類 細菌 類 センチュウ類 一年 生 雑草 メ チ ル イソ チ オ シ アネート(MITC) 7~10日 15℃ 作 物 の 種 類 に よ っ て ポ リ エ チ レ ン 、 ビ ニ ル 等で被 覆する。 処理 7~10 日 後に耕 起して行 う。 糸状 菌 類 細菌 類 センチュウ類 カーバ ムナ トリ ウ ム塩 7~10日 ( 処 理 か ら 播 種 、 定 植 ま では15~20日 ) - 土 壌 病 害 、 雑 草 に 対 し て は ビ ニ ル 等 で 被 覆する。 処理 7~10 日 後に耕 起して行 う。 糸状 菌 類 センチュウ類 一年 生 雑草 ホスチアゼート 播 種 、 定 植 直 前 に 全 面 土壌 混 和 - 不要 不要 センチュウ類 注)①本表の記載内容 は目安であり、処理日数 、ガス抜き期間等は処理 条件によって延長、 短縮されるので注意する。 ②適用範囲(登録範囲)は概略であるので、各農薬の要覧等を確認し正確を期する。 ウ 熱利用による土壌消毒の特徴と処理方法 (ア)陽熱消毒 a 高温期の7~8月中旬にかけて、約 30 日間実施する。 b 切りわらを 10a当たり1~2t施用し、土壌微生物の増殖、土壌改良を図 る。 c 石灰窒素 100kg 程度施用し、土壌酸度の矯正、わら分解の促進を図る。濃

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度障害、土壌pHが高い場合には石灰窒素は減量する。 d わら、石灰窒素を土壌に混和して、うねを幅 50 ㎝位にできるだけ高めに立 てる。 e 地表面全面を透明ビニルまたはポリエチレンフィルムで覆い、畝間に湛水 する。水がたまらないハウスでは効果が上がらない場合がある。水が少し漏 水するハウスでは、処理中1~2回水を入れる。水入れを度々行なうと、地 温が低下し効果も上がらない。 f ハウスを隙間のないよう目張りなどをして密閉し、 25~30 日間放置する。 g 地表下 20 ㎝で、45℃以上の地温が持続するよう努める。 h 処理終了後は、外張りと地表面の被覆ビニルを除去して風雨にさらし、有 機物の分解を促進させ、土づくりの一助とする。 i 本法は地温の上昇と、その持続によって殺菌、殺虫を行うものである。従 って、冷夏などの場合は効果が上がりにくいので、処理期間を延長するのが 望ましい。一般的には、センチュウ類や糸状菌病には比較的効果が高いが、 青枯病、軟腐病などの細菌病にはやや不安定といわれている。 表 16 各種病原菌、微生物等の死滅温度 病原菌、微生物等 病名 死滅温度 糸状菌 Fusarium oxysporum Rhizoctonia solani Pythium spp. Botrytis cinerea Sclerotinia sclerotiorum Sclerotium rolfsii Colletotrichum spp. Didymella bryoniae Alternaria spp. 細菌 Erwinia carotovora Ralstonia solanacearum Clavibacter michiganensis Pseudomonas syringae Xanthomonas campestris Agrobacterium tumefaciens ウイルス TMV CGMMV、KGMMV センチュウ類 ネコブセンチュウ 硝酸化成菌 アンモニア化成菌 雑草種子 萎黄病、萎凋病、つる割病 苗立枯病 苗立枯病、根茎腐敗病 灰色かび病 菌核病 白絹病 炭そ病 つる枯病 黒斑病 軟腐病 青枯病 かいよう病 斑点細菌病 黒腐病 根頭がんしゅ病 モザイク病 緑斑モザイク病 55℃、40分 52℃、10分 52℃、10分 55℃、10分 50℃、5分 49℃、10分 45℃、10分 55℃、10分 48℃、10分 50℃、10分 52℃、10分 58℃、10分 50℃、10分 53℃、10分 51℃、10分 90~93℃、10分 90℃、10分 48~60℃、5分 60~70℃ 100℃以上 70~98℃

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図 14 ハウス密閉による土壌消毒 注 )http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070109/dojouhiryou/sankou12.htm (イ)蒸気消毒 a 消毒蒸気の種類 無加圧蒸気:ボイラーは軽量安価、蒸気は大気圧程度。 加圧蒸気 :無加圧より僅かに熱量が大きいがボイラーは高価 。 過熱蒸気 :熱量が大きいがボイラー代価に見合うほどではない。蒸気が 乾燥状態になる利点がある。 b 蒸気の噴出方法 床土の上にホースを置き、畦全体にシートをかけ蒸気を噴出させる方法と 深さ 25~30cm に埋設したパイプに小穴を開けて蒸気を噴出させる方法があ る。 c 蒸気消毒の利点 ① 消毒が時間が短く、隔離床などでは比較的効果が高い。土壌中のほとん どの生物(病原菌、害虫、雑草種子)を死滅させる。 ② いつでも消毒でき、地温が下がれば直ちに播種・定植できる。 ③ 隣接の作物にも無害である。 ④ 消毒の効果は地温の測定で確認できる。 ⑤ 蒸されるため、土地は膨潤となり孔隙量が増大し、通気性、保水性及び 透水性が向上する。 d 蒸気土壌消毒の問題と対策 ① 土壌中の窒素の形態と変化 主要野菜・花木では、アンモニア態窒素と硝酸態窒素の比は1:2~5 で生育がよい。 80℃30 分間消毒の土壌では、アンモニア化成菌が生き残り、硝酸化成菌 は死滅する。このため、消毒後に硝酸化成菌の接種または自然復活が必要 となる。 消毒後の施肥は窒素のアンモニア化が進み、アンモニア態窒素の過剰害 を招きやすので、アンモニア態窒素肥料、有機質肥料の混入を避け、硝酸 態窒素肥料を施用する。 ② マンガン、アルミニウムの多量遊離 低土壌pHは、アンモニア化成を促進するが、硝酸化成に対しては著し く抑制するので、マンガン、アルミニウムの溶出を促進し、過剰吸収害を 生じる。

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リン酸肥料(過石、ようりんなど)を施用し、土壌pHを 6.8 程度に調 整する。ようりんは消毒後の土壌pHが安定しやすい。 (ウ)熱水土壌消毒 a 熱水土壌消毒の方法 圃場に熱水(70~95℃)を注入することで地温を上げ、有害微生物の防除 を行うものである。圃場に熱水を注入すると、表面は容易に高温となるが、 冷め易い。一方、深部は高温となり難いが、いったん到達した温度は長く維 持される。この土壌の持つ温度特性を利用し、高温による瞬間的殺菌と比較 的低温(50~60℃)による緩効的殺菌の組み合わせで、土壌消毒を行う方法 である。熱水土壌消毒を実施するには、熱水調整用のボイラーと熱水注入装 置が必要である。 b 熱水土壌消毒の特徴 ① 消毒効果が安定している。 ② 雑草防除効果を併せ持つ。 ③ 比較的多様な土壌微生物が残存。 表 17 熱水土壌消毒により良好な防除効果が得られた試験例 作物名 対象病害虫 文献 ホウレンソウ ハクサイ ダイコン トマト 〃 〃 〃 〃 スイカ メロン ダイズ 〃 萎凋病 根こぶ病 根腐線虫病 青枯病 萎凋病 褐色根腐病 根腐萎凋病 根こぶ線虫病 黒点根腐病 黒点根腐病 黒根腐病 シストセンチュウ病 国安(1993) 森谷ら(1994) 森谷ら(1994) 竹内・福田(1993) 国安・竹内(1986) 竹内・福田(1993) 国安・竹内(1986) 竹内・福田(1993) 酒井ら(1998) 中山(1999) 西ら(1990) 百田ら(1991) 表 18 熱水土壌消毒により土壌中の病原菌密度が低下した試験例 作物名 対象病害虫 文献 キュウリ 〃 〃 トマト 〃 ダイズ 緑斑モザイク病 苗立枯病 ホモプシス根腐病 モザイク病 半身萎凋病 白絹病 中山(1999) 北・植草(1999) 北・植草(1999) 中山(1999) 北・植草(1999) 西ら(1991) 注)1.表 にあげたものは省略。 2.ウイルス類は土壌表面においてのみ活性の低下が認め られている。

表 12  家畜ふん堆肥の化学肥料に対する肥効率(%)   畜種  種類  窒素  リン酸  カリ  牛  単年施用  15  60  90 5年程度連用  20~25  長期間連用   30  豚  副資材あり  20~30  70  90  副資材なし  40~50  鶏  窒素含有率:2.0%未満  20~30  70  90 窒素含有率:2.0~4.0% 30~50  窒素含有率:4.0%以上  50~60  注)1.炭素率( C/N比 )が 25 以上では、化学肥料に対する肥効率の換算   を行わ
図 14  ハウス密閉による土壌消毒   注 )http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070109/dojouhiryou/sankou12.htm   (イ)蒸気消毒            a  消毒蒸気の種類                無加圧蒸気:ボイラーは軽量安価、蒸気は大気圧程度。                加圧蒸気  :無加圧より僅かに熱量が大きいがボイラーは高価 。                過熱蒸気  :熱量が大きいがボイラー代価に見合うほどでは
表 19  主 な 土 壌 消 毒 剤 の 処 理 方 法 及 び 特 徴 平 成 23年 9月 30日 現 在   一 般 名   処 理 方 法   ( 注 意 事 項 ・ 特 性 等 )備       考    商 品 名 ・ 有 効 成 分 量   ク ロ ー ル ピ ク リ ン く ん 蒸 剤   (1) 処 理 前 に ア ル カ リ 性 肥 料 ( 特 に 消 石 灰       等 ) を 施 用 す る と 有 害 物 質 を 生 じ 、 薬 害       の 危 険 が あ る

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