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特別企画 TOP INTERVIEW グローバルオペレーターへの足がかりとなる 星のや東京 の開業 持続可能な強みを磨き 世界を目指す 星野リゾート代表星野佳路氏 星のや東京総支配人菊池昌枝氏 2016 年 7 月 20 日 星のや東京が開業をした 同 旅館 の開業は 星野リゾートに新たな施設が加わ

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Academic year: 2021

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Yoshiharu Hoshino

1960 年、長野県軽井沢町生まれ。83 年、慶應義塾大学経済学部卒。米国コーネル大学ホテル経営大学 院修士課程修了。91 年、星野温泉(現在の星野リゾート)社長に就任。所有と運営を一体とする日本 の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、運営サービスを提供するビジネスモデルへ転換。現在、運

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【特別企画】

持続可能な強みを磨き、

世界を目指す

グローバルオペレーターへの

足がかりとなる「星のや東京」の開業

すし屋や日本車が世界中にあるように

日本旅館がホテルのカテゴリーとして

世界にあってもいい

―いよいよ星のや東京が開業を迎えま した。それぞれの視点で、この開業に 寄せる思いについて教えてください。 星野 思いは、日本旅館というスタイ ルを世界の宿泊施設の一つのカテゴ リーとして確立したいというものです。 「日本に来たから」ではなく、「温泉地 に来たから」でもなく、日本旅館とい うスタイルが快適で、機能的だから日 本旅館に宿泊をする。それが確立でき れば日本旅館は海外に出ていくことが できます。この度、開業を迎える星の や東京はそのベースキャンプになれれ ばと考えています。 菊池 現在の東京では宿泊先を選ぶと きにホテルしかないと思うのですね。 そこに旅館があってもいいはずだ、と いう星野の考えには非常に共感をして います。  東京に訪れた日本人でも、海外から のお客さまでも、宿泊先の選択肢とし てホテルのほかに旅館というカテゴ リーとしてつくること、これが私たち の目指す所です。 星野 私は、すし屋が世界中にあり、 日本車が世界中を走っているように、 日本旅館というホテルのスタイルも世 界にあっていいと考えています。ただ し、そのためには “ 勝てる形 ” が重要

TOP INTERVIEW

です。従来のままの日本旅館では西洋 式のホテルには勝てません。高い快適 性と機能性を持ち、さらにマルチタス クを駆使した高い収益性が重要です。  1980 年代、日本にあるホテルが世 界的に高い評価を受けたにもかかわら ず、その後日本のホテル運営会社が世 界に出たとき、全く勝てず撤退するこ ととなりました。それは、西洋式のホ テルをそのまま踏襲したものが日本 にあったからこそ成功をしただけであ り、世界に出る時の “ 勝てる形 ” がで きていなかったからだと考えていま す。つまり、“ 持続可能な強み ” がな かったわけです。  星のやのマルチタスクによる高い収 益性はどこのホテルチェーンにもない、 まさに持続可能な強みであると考えて 2016 年7月 20 日、星のや東京が開業をした。 同 “ 旅館 ” の開業は、星野リゾートに新たな施設が加わったというだけの話ではない。「旅館をホテルの一つのカテゴリーとして 世界の投資家たちから選ばれるものにしたい」という、星野リゾートの大きな目標に向けた第一歩目という大きな意味を持つ。西 洋文化から生まれたホテルに対し、日本生まれの旅館がより高い顧客満足と、そしてより高い収益性を生み出せるのか。 本インタビューでは大きな挑戦を迎えた星野リゾート代表の星野 佳路氏と星のや東京 総支配人の菊池昌枝氏に星のや東京 の開業に寄せる思い、そして今後のビジョンについて聞いた。       聞き手 本誌・岩本 大輝  写真 林 正

星野リゾート

代表 

星野 佳路 氏

星のや東京

総支配人 

菊池 昌枝 氏

(3)

います。これを武器に東京で成功をさ せ、世界に出ていきたいと考えています。

「需要のない場所に需要をつくる」

のは得意だったが、

「すでに需要のある場所での運営」

は未知の領域だった

—東京における “ 日本旅館 ” をどのよ うに表現されていくのでしょうか? 星野 東京にどのような日本旅館があ るべきか、という点では試行錯誤があ りました。  私たちは青森屋とか竹富島のように、 本来 “ 泊まる ”という需要がない場所に いかに需要を呼び起こすかということは これまでも数多くやってきました。とこ ろが、東京には最初から“ 泊まる ”とい う需要はあります。そういった場所での 挑戦というのは未知の領域でした。  最終的に行き着いたのは、日本旅館 らしさを追求していこうということで した。その中の一つの大きな特徴とし て、「お茶の間ラウンジ」があります。  高級ホテルのミニバーでは、さまざ まなドリンクを用意するために、冷蔵庫 がどんどん大きくなっています。そして、 チェックアウトの際の自己申告制という スタイルもずっと変わっていません。私 は、それが高級ホテルのサービスとして 最適だとは思っていませんでした。  それを日本旅館としてどのように解 決していくかとなったときに行き着い た答えが、お茶の間ラウンジだったの です。ここには夜中の時間以外にはス タッフがいます。そのスタッフが時間 ごと、季節ごと、そしてお客さまのお 好みに合わせ、温かいものから冷たい ものまでさまざまなものをご提案いた します。それが日本旅館らしい解決方 法であると考えたのです。   菊池 まずハード面では、旅館という ものを、旅館の良い部分は大切にしな がらも、現代のニーズに合わせて変え る部分は変えていきました。具体的に は、玄関で靴を脱ぐとか、木や畳と いった自然の素材を多く使うとか、そ ういった点は変わらない部分です。  一方で、例えば障子はその裏にロー ルカーテンがあるわけですが、それは 今の時代に必須であると考えたからで す。海外からもお客さまはいらっしゃい ますし、何時にチェックインされるかも 分からない。明るい時間に寝られるお 客さまもいらっしゃると思います。  そういった、今の時代に必要なもの をそろえながらも、今までの日本と同 じもので良ければそれを生かすという 形のハードにはなっています。

日本の素晴らしさを伝える。

スタッフが “ つなぎ役 ”として

重要な役割を果たす

菊池 一方で、「ラグジュアリー=高 いもの」という発想は私たちにはあり ません。結果的にコストがかかってい るところはありますが、こだわってい るのは館内のアイテムや細部にまでお よぶ “ 日本らしさ ” という点です。  アイテムに関しては私たちの考えに 共感をしていただけ、また、お客さま にとって良いものを作っていただける 方にお願いをしました。例えばお茶碗 でも 50 〜 75ml の小さなものにした のですが、それはお客さまにお茶をお かわりしていただき、いろいろと味 わっていただけるようにしたいと考え たためです。  お茶の間ラウンジにもさまざまなも のを用意していますが、それを作ってい ただいた「作る人」、私たちのようなそ れらを使わせいただく「使う人」、そして、 それらを「享受していただける人」であ

TOP INTERVIEW

るお客さま、こういう関係を作り上げて いくことができるのも、旅館ならではな のかなと考えていますね。 —その点ではスタッフのサービスが重 要ですね。 菊池 はい、ご存じの通り星野リゾート では顧客満足度という指標があるので すが、その中でもお客さまとのコミュニ ケーションという点を重視しています。  ハードが完成されている分、スタッ フの接客が満足度に影響をしていくの かなと考えていますね。 —ところで、菊池さんは今回の星の や東京の開業は相当なプレッシャーが あったのではないでしょうか。 菊池 意外と思われるかもしれません が、それほどありませんでした。とい うのは、星野リゾートはこれまで数多 くの施設の開業を経験していますか ら、そのノウハウがシステマチックに できあがっていたからです。やるべき ことは明確になっているので、私はた だそのプロセスに専念をするだけでし たね。  私は以前星のや京都の開業でも総支 配人としてかかわったのですが、当時 はそういったノウハウもありませんで したから、そちらの方が大変だったと いう記憶があります。

稼働率や ADR は

外的環境の影響を受ける

しかし、マルチタスクによる

高い収益性は

他社との大きな差となる

—あらためてグローバルオペレーター へという観点でお聞きしたいと思いま す。世界に出て行く、となると収益性

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Masae Kikuchi

(5)

は非常に重要になると思います。今 回の東京でも周辺の外資系ラグジュア リーホテルの数字などは意識されたの でしょうか? 星野 当然意識をしました。ただ、私 たちの強みはマルチタスクによる高い 収益性にあると考えています。稼働率 や ADR というのは市場環境など外的 環境の影響を大きく受けます。そのよ うな中でも、他社と比較し て大きな利益を生み出せる のが星のやの強みであると 考えています。 「マルチタスク=利益を外 に出さない」ということです。 客室清掃を例にあげると、 外資系のホテルでは、客室 清掃は外注へ依頼をしてい ます。私たちは客室清掃も 正社員が行ない、手待ち時 間なく生産性の高い仕事が できるようにしています。そ のノウハウが私たち星野リ ゾートにはあります。  ですから、84 室の星のや東京を、約 100 名の正社員スタッフが全て運営し ていきます。これが世界のホテル運営 会社のノウハウとはまったく違うもので あり、これこそが海外の投資家にアピー ルできる点だと考えています。

「ちょっとヘルプに」は

マルチタスクではない。

10 年かけて培った独自の強みを

さらに磨いていく

星野 マルチタスクは皆さままねされよ うとしますが、結果としてできていませ ん。「ちょっとヘルプに…」というのは マルチタスクとは全く異なります。そも そも、フロントがレストランにヘルプに 行くという考え自体が違うのです。部門 間の垣根をすべて取り払うことがマル チタスクを達成する上で重要です。  ホテルはどうしても縦割り型組織の 傾向があり、それが長く根付いている 文化的な背景がマルチタスクの実現を 難しくしているのだと思います。それ だけ簡単ではないということです。私 たちも 10 年以上をかけてつくり上げ た仕組みですから。  星野リゾートではマルチタスクの仕 組みをシステム化していますが、現在 はさらにその仕組みを強固にするとい う実験も始めています。マルチタスク は私たちの大きな強みだと考えていま すので、そこには今後も積極的な投資 を行なっていきます。

さらなる展開の礎をつくる

—お二人のこれからのチャレンジにつ いて教えてください。 星野 まずは、この星のや東京が国内・ 海外、レジャー・ビジネス双方のお客 さまに快適で機能的であるとご満足を いただけるようにしていくことです。 特に海外への展開を考える場合、ここ は金融街・大手町ですので、海外から

TOP INTERVIEW

のビジネスのお客さまに選ばれること も重要だと思っています。  また、星野リゾートとしては、来年 から旭川グランドホテルを運営いたし ますが、この地方都市観光の領域も今 後の国内の展開では重要です。まだ具 体的には何も決まっていませんが、観 光客のニーズに応えるという点に現地 スタッフとしっかり取り組んでいきた いと思います。リゾナーレ八ヶ岳のと きも、子供連れファ ミリーでここまでリ ゾートを再生できる のだと自分たちも含 めて気付かされまし た。青森屋の再生や トマムの雲海のとき もそうですね。そう いった成功体験は自 信を与えてくれます。 菊池 冒頭の旅館を ホテルのセグメント の一つとするという ミッションを達成す ることですね。遠くない未来に、「海 外に出るきっかけは東京だったね」と 皆で言えるようにしたいです。  また、星のや東京は社内異動と中途 採用が約半数ずつで、いろいろなス タッフがいます。まずはそのスタッフ たちが一年内に星のや東京のおもてな しができるようにすることですね。  「守破離」をテーマに掲げていまし て、まずはやるべきことをできるよう になる(=守)、そこからほかのスタッ フの知識や経験を織り交ぜ実践してい く(=破)、最後に、向かうべき方向 性と許容範囲の中で自由にやれるよう にすること(=離)というものなので すが、皆で協力をし合いながら自由に 活躍できるスタッフがどんどん出てく るようにしていきたいと思います。

参照

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